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特許7653453鉛蓄電池、ストラップ、ストラップ部品、ストラップ製造用型、及びストラップ製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】鉛蓄電池、ストラップ、ストラップ部品、ストラップ製造用型、及びストラップ製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/06 20060101AFI20250321BHJP
   H01M 50/529 20210101ALI20250321BHJP
   H01M 50/541 20210101ALI20250321BHJP
   H01M 50/114 20210101ALI20250321BHJP
【FI】
H01M10/06 Z
H01M50/529
H01M50/541
H01M50/114
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022567915
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2020045578
(87)【国際公開番号】W WO2022123643
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】322013937
【氏名又は名称】エナジーウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】三代 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】柴原 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】原 佑輔
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-026463(JP,A)
【文献】実開平03-019256(JP,U)
【文献】特開平09-147828(JP,A)
【文献】特開2020-064731(JP,A)
【文献】特開2007-087871(JP,A)
【文献】特開平09-082306(JP,A)
【文献】特開昭61-171053(JP,A)
【文献】特開2016-181339(JP,A)
【文献】特開昭61-045561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/50-50/598
H01M10/00-10/04
H01M10/06-10/34
H01M50/114
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液と、
複数の極板が接続されたストラップ部と、前記ストラップ部の端部に立設されたセル間接続部と、前記ストラップ部と前記セル間接続部とを接続する導電部と、を有するストラップと、を備える鉛蓄電池であって
前記電解液の液位は、前記ストラップよりも下方であ
前記ストラップは、複数の正極が接続された正極ストラップと、複数の負極が接続された負極ストラップと、を有し、
前記鉛蓄電池は、
隔壁により区画された複数のセル室を有する電槽と、
前記隔壁を貫通して、隣り合う前記セル室に収容された前記正極ストラップと前記負極ストラップとを接続する貫通接続部と、を更に備え、
前記貫通接続部により接続された前記正極ストラップ及び前記負極ストラップのそれぞれが前記導電部を有し、
前記ストラップ部に対する前記セル間接続部の立設方向において、前記セル間接続部と前記導電部との接続部の上端位置は、前記貫通接続部の上端位置よりも低い、
鉛蓄電池。
【請求項2】
前記ストラップ部に対する前記セル間接続部の立設方向において、前記セル間接続部と前記導電部との接続部の上端位置は、前記貫通接続部の下端位置よりも高い、
請求項に記載の鉛蓄電池。
【請求項3】
前記ストラップ部は、前記ストラップ部に対する前記セル間接続部の立設方向側に面して前記導電部が接続されるストラップ部接続面を有し、
前記セル間接続部は、前記セル間接続部に対する前記ストラップ部の延在方向側に面して前記導電部が接続されるセル間接続部接続面を有し、
前記セル間接続部接続面が面する方向から見て、前記導電部は、前記立設方向と直交する方向における前記貫通接続部の側方に配置されている、
請求項1又は2に記載の鉛蓄電池。
【請求項4】
前記セル間接続部は、前記セル間接続部に対する前記ストラップ部の延在方向側に面して前記導電部が接続されるセル間接続部接続面を有し、
前記セル間接続部接続面が面する方向から見て、前記貫通接続部は、前記ストラップ部に対する前記セル間接続部の立設方向と直交する方向に長い楕円状である、
請求項の何れか一項に記載の鉛蓄電池。
【請求項5】
前記電槽は、前記複数のセル室の一部が第一方向に配列された第一セル室群と、前記複数のセル室の残りが前記第一方向に配列された第二セル室群と、を有し、
前記第一セル室群と前記第二セル室群とは、前記第一方向と直交する第二方向に並設されており、
前記第一セル室群及び前記第二セル室群のそれぞれでは、前記第一方向に隣り合う前記セル室を区画する前記隔壁に貫通孔が形成されて、前記第一方向に隣り合う前記セル室のそれぞれに収容された前記正極ストラップと前記負極ストラップとが、前記貫通孔に配置された前記貫通接続部により接続されており、
前記第一セル室群及び前記第二セル室群のそれぞれの、前記第一方向における一方側端部に配置される前記セル室を第一セル室及び第二セル室とし、前記第一セル室及び前記第二セル室のそれぞれに収容された前記正極ストラップ又は前記負極ストラップに極柱が取り付けられており、
前記第一セル室群及び前記第二セル室群のそれぞれの、前記第一方向における他方側端部に配置される前記セル室を第三セル室及び第四セル室とし、前記第三セル室及び前記第四セル室を区画する前記隔壁に前記貫通孔が形成されて、前記第三セル室及び前記第四セル室に収容された前記正極ストラップと前記負極ストラップとが、前記貫通孔に配置された前記貫通接続部により接続されている、
請求項の何れか一項に記載の鉛蓄電池。
【請求項6】
前記ストラップ部に対する前記セル間接続部の立設方向における前記導電部の高さは、前記セル間接続部から離れるに従って低くなる、
請求項1~の何れか一項に記載の鉛蓄電池。
【請求項7】
前記導電部は、前記ストラップ部に対する前記セル間接続部の立設方向において局所的に低くなる凹部を有する、
請求項1~の何れか一項に記載の鉛蓄電池。
【請求項8】
制御弁式鉛蓄電池である、
請求項1~の何れか一項に記載の鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池、ストラップ、ストラップ部品、ストラップ製造用型、及びストラップ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
隔壁により区画された複数のセル室のそれぞれに極板群及び電解液が収容されて、隣り合うセル室に収容された極板群のストラップが隔壁を貫通して接続された鉛蓄電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような鉛蓄電池は、産業用又は民生用の二次電池として広く用いられており、特に、電気車用鉛蓄電池(いわゆるバッテリー)、又は、UPS(Uninterruptible Power Supply)、防災(非常)無線、電話等のバックアップ用鉛蓄電池の需要が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-109965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、隣り合うセル室のストラップは、隔壁を貫通する貫通接続部により接続される。そして、鉛蓄電池を高出力化して鉛蓄電池に流す電流を上げると、貫通接続部に電流が集中して、貫通接続部の発熱が大きくなる。電解液がセル室で自由に流動可能となっている液式鉛蓄電池のように、貫通接続部が電解液に浸かっている鉛蓄電池では、貫通接続部が電解液の熱容量により冷却される。このため、鉛蓄電池を高出力化して鉛蓄電池に流す電流を上げても、隔壁が変形及び溶融する程度まで貫通接続部は昇温しない。しかしながら、電解液が電解液保持体(リテーナ)に保持された制御弁式鉛蓄電池のように、電解液がセル室で自由に流動化可能となっていない鉛蓄電池、又は、電解液の液面がストラップよりも下方に位置する鉛蓄電池では、貫通接続部が電解液により冷却されない。このため、鉛蓄電池を高出力化して鉛蓄電池に流す電流を上げると、隔壁が変形及び溶融する程度まで貫通接続部が昇温する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、貫通接続部の昇温を抑制することができる鉛蓄電池、ストラップ、ストラップ部品、ストラップ製造用型、及びストラップ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、貫通接続部における電流経路を分散させることで、貫通接続部の昇温を抑制できるとの知見を見出した。
【0007】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池は、電解液と、複数の極板が接続されたストラップ部と、ストラップ部の端部に立設されたセル間接続部と、ストラップ部とセル間接続部とを接続する導電部と、を有するストラップと、を備え、電解液の液位は、ストラップよりも下方である。
【0008】
一般的に、電流は最短経路を通ろうとする。このため、従来のように導電部を備えない場合、セル室を区画する隔壁を貫通する貫通接続部において電流が通る電流経路は、貫通接続部のストラップ部側の小さな領域に集中する。このため、貫通接続部では、局部的に電流密度が高くなって、発生するジュール熱が大きくなる。その結果、隔壁が変形及び溶融する程度まで貫通接続部が昇温する可能性がある。これに対して、この鉛蓄電池では、ストラップが、ストラップ部とセル間接続部とを接続する導電部を有する。このため、複数の極板と貫通接続部との間を流れる電流の一部が導電部を通ることで、貫通接続部における電流経路が導電部側に分散する。これにより、貫通接続部では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部の昇温が抑制される。その結果、隔壁が変形及び溶融するのを抑制することができる。なお、電解液の液位がストラップよりも下方とは、ストラップが電解液に浸かっていないことを意味し、表面張力、毛細管現象等による電解液の這い上がりによりストラップに電解液が付着しているだけのことまでは意味しない。
【0009】
ストラップは、複数の正極が接続された正極ストラップと、複数の負極が接続された負極ストラップと、を有し、鉛蓄電池は、隔壁により区画された複数のセル室を有する電槽と、隔壁を貫通して、隣り合うセル室に収容された正極ストラップと負極ストラップとを接続する貫通接続部と、を更に備え、貫通接続部により接続された正極ストラップ及び負極ストラップのそれぞれが導電部を有してもよい。貫通接続部により接続された正極ストラップ及び負極ストラップのそれぞれが導電部を有することで、貫通接続部の昇温が更に抑制される。
【0010】
ストラップ部に対するセル間接続部の立設方向において、セル間接続部と導電部との接続部の上端位置は、貫通接続部の上端位置よりも低くてもよい。最短経路を通ろうとする電流の性質に鑑みると、電流は、貫通接続部の上端位置よりも高い位置を通りにくい。このため、セル間接続部と導電部との接続部の上端位置が、貫通接続部の上端位置よりも低いことで、導電部による貫通接続部の昇温抑制効果を確保しつつ、導電部の小型化によるコスト削減を図ることができる。
【0011】
ストラップ部に対するセル間接続部の立設方向において、セル間接続部と導電部との接続部の上端位置は、貫通接続部の下端位置よりも高くてもよい。セル間接続部と導電部との接続部の上端位置が、貫通接続部の下端位置よりも高いことで、貫通接続部における電流経路を貫通接続部の側方に分散させることができる。これにより、貫通接続部の電流密度をより低くして、貫通接続部の昇温をより抑制することができる。
【0012】
ストラップ部は、ストラップ部に対するセル間接続部の立設方向側に面して導電部が接続されるストラップ部接続面を有し、セル間接続部は、セル間接続部に対するストラップ部の延在方向側に面して導電部が接続されるセル間接続部接続面を有し、セル間接続部接続面が面する方向から見て、導電部は、立設方向と直交する方向における貫通接続部の側方に配置されていてもよい。導電部が貫通接続部の側方に配置されていることで、貫通接続部における電流経路を貫通接続部の側方に分散させることができる。これにより、貫通接続部の電流密度をより低くして、貫通接続部の昇温をより抑制することができる。
【0013】
セル間接続部は、セル間接続部に対するストラップ部の延在方向側に面して導電部が接続されるセル間接続部接続面を有し、セル間接続部接続面が面する方向から見て、貫通接続部は、ストラップ部に対するセル間接続部の立設方向と直交する方向に長い楕円状であってもよい。セル間接続部接続面が面する方向から見て、貫通接続部が立設方向に直交する方向に長い楕円状であることで、貫通接続部における電流経路を、立設方向に直交する方向に分散させることができる。これにより、貫通接続部の電流密度をより低くして、貫通接続部の昇温をより抑制することができる。
【0014】
電槽は、複数のセル室の一部が第一方向に配列された第一セル室群と、複数のセル室の残りが第一方向に配列された第二セル室群と、を有し、第一セル室群と第二セル室群とは、第一方向と直交する第二方向に並設されており、第一セル室群及び第二セル室群のそれぞれでは、第一方向に隣り合うセル室を区画する隔壁に貫通孔が形成されて、第一方向に隣り合うセル室のそれぞれに収容された正極ストラップと負極ストラップとが、貫通孔に配置された貫通接続部により接続されており、第一セル室群及び第二セル室群のそれぞれの、第一方向における一方側端部に配置されるセル室を第一セル室及び第二セル室とし、第一セル室及び第二セル室のそれぞれに収容された正極ストラップ又は負極ストラップに極柱が取り付けられており、第一セル室群及び第二セル室群のそれぞれの、第一方向における他方側端部に配置されるセル室を第三セル室及び第四セル室とし、第三セル室及び第四セル室を区画する隔壁に貫通孔が形成されて、第三セル室及び第四セル室に収容された正極ストラップと負極ストラップとが、貫通孔に配置された貫通接続部により接続されていてもよい。第一セル室及び第二セル室のそれぞれに収容された正極ストラップ又は負極ストラップに極柱が取り付けられており、第三セル室及び第四セル室に収容された正極ストラップと負極ストラップとが貫通接続部により接続されていることで、第三セル室及び第四セル室に収容されて貫通接続部により接続された正極ストラップと負極ストラップとが発熱し易くなる。しかしながら、上述したように、貫通接続部における電流経路が導電部側に分散する。これにより、貫通接続部では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部の昇温が抑制される。このため、第三セル室と第四セル室とを区画する隔壁が変形及び溶融するのを抑制することができる。
【0015】
ストラップ部に対するセル間接続部の立設方向における導電部の高さは、セル間接続部から離れるに従って低くなっていてもよい。最短経路を通ろうとする電流の性質に鑑みると、導電部において電流が通る電流経路は、セル間接続部から離れるに従って低くなり易い。このため、立設方向における導電部の高さが、セル間接続部から離れるに従って低くなることで、導電部による貫通接続部の昇温抑制効果を確保しつつ、導電部の小型化によるコスト削減を図ることができる。
【0016】
ところで、鉛蓄電池を製造する際は、隣り合うセル室のうちの一方に収容された正極ストラップと他方に収容された負極ストラップとを貫通溶接することで、正極ストラップと負極ストラップとを接続する貫通接続部を形成する。貫通溶接では、貫通溶接用電極によりセル間接続部を隔壁側に加圧変形することで、ストラップ部に対してセル間接続部が倒れるようにセル間接続部を加圧変形させる。このため、セル間接続部に導電部が接続されていると、セル間接続部の加圧変形が難しくなる。しかも、貫通溶接用電極によるセル間接続部の加圧変形は、セル間接続部がストラップ部に対して倒れるように行われる。このため、セル間接続部と導電部との接続位置が、立設方向におけるストラップ部とは反対側にいくほど、セル間接続部の加圧変形が難しくなる。
【0017】
そこで、導電部は、ストラップ部に対するセル間接続部の立設方向において局所的に低くなる凹部を有してもよい。導電部が立設方向において局所的に低くなる凹部を有することで、鉛蓄電池を製造する際の貫通溶接において、ストラップ部に対して倒れるようなセル間接続部の加圧変形を行い易くなる。
【0018】
鉛蓄電池は、制御弁式鉛蓄電池であってもよい。鉛蓄電池が制御弁式鉛蓄電池であることで、貫通接続部は電解液により冷却されないが、上述したように、貫通接続部における電流経路が導電部側に分散する。これにより、貫通接続部では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部の昇温が抑制される。
【0019】
本発明の一側面に係るストラップは、複数の極板を接続するためのストラップ部と、ストラップ部の端部に立設されたセル間接続部と、ストラップ部とセル間接続部とを接続する導電部と、を備える。
【0020】
このストラップでは、ストラップ部とセル間接続部とを接続する導電部を備える。このため、このストラップを用いた鉛蓄電池では、複数の極板と貫通接続部との間を流れる電流の一部が導電部を通ることで、貫通接続部における電流経路が導電部側に分散する。これにより、貫通接続部では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部の昇温が抑制される。その結果、このストラップを用いた鉛蓄電池の隔壁が変形及び溶融するのを抑制することができる。
【0021】
セル間接続部は、鉛蓄電池の隔壁に形成された貫通孔に配置された貫通接続部と接続される接続予定領域を有し、ストラップ部に対するセル間接続部の立設方向において、セル間接続部と導電部との接続部の上端位置は、接続予定領域の上端位置よりも低くてもよい。このストラップを用いた鉛蓄電池では、最短経路を通ろうとする電流の性質に鑑みると、電流は、貫通接続部の上端位置よりも高い位置を通りにくい。このため、セル間接続部と導電部との接続部の上端位置が、接続予定領域の上端位置よりも低いことで、このストラップを用いた鉛蓄電池では、導電部による貫通接続部の昇温抑制効果を確保しつつ、導電部の小型化によるコスト削減を図ることができる。
【0022】
ストラップ部に対するセル間接続部の立設方向において、セル間接続部と導電部との接続部の上端位置は、接続予定領域の下端位置よりも高くてもよい。セル間接続部と導電部との接続部の上端位置が、接続予定領域の下端位置よりも高いことで、このストラップを用いた鉛蓄電池では、貫通接続部における電流経路を貫通接続部の側方に分散させることができる。これにより、貫通接続部の電流密度をより低くして、貫通接続部の昇温をより抑制することができる。
【0023】
ストラップ部に対するセル間接続部の立設方向において、セル間接続部と導電部との接続部の上端位置は、セル間接続部の中央位置より低くてもよい。このストラップを用いた鉛蓄電池では、貫通接続部はセル間接続部の中央部に接続される場合が多い。そして、最短経路を通ろうとする電流の性質に鑑みると、電流は、貫通接続部の上端位置よりも高い位置を通りにくい。このため、セル間接続部と導電部との接続部の上端位置が、セル間接続部の中央位置より低いことで、導電部による貫通接続部の昇温抑制効果を確保しつつ、導電部の小型化によるコスト削減を図ることができる。
【0024】
ストラップ部は、ストラップ部に対するセル間接続部の立設方向側に面して導電部が接続されるストラップ部接続面を有し、セル間接続部は、セル間接続部に対するストラップ部の延在方向側に面して導電部が接続されるセル間接続部接続面を有し、セル間接続部接続面が面する方向から見て、導電部は、立設方向と直交する方向における接続予定領域の側方に配置されていてもよい。導電部が接続予定領域の側方に配置されていることで、このストラップを用いた鉛蓄電池では、貫通接続部における電流経路を貫通接続部の側方に分散させることができる。これにより、貫通接続部の電流密度をより低くして、貫通接続部の昇温をより抑制することができる。
【0025】
ストラップ部に対するセル間接続部の立設方向における導電部の高さは、セル間接続部から離れるに従って低くなっていてもよい。このストラップを用いた鉛蓄電池では、最短経路を通ろうとする電流の性質に鑑みると、導電部における電流が通る電流経路は、セル間接続部から離れるに従って低くなり易い。このため、立設方向における導電部の高さが、セル間接続部から離れるに従って低くなることで、導電部による貫通接続部の昇温抑制効果を確保しつつ、導電部の小型化によるコスト削減を図ることができる。
【0026】
導電部は、ストラップ部に対するセル間接続部の立設方向において局所的に低くなる凹部を有してもよい。導電部が立設方向において局所的に低くなる凹部を有することで、鉛蓄電池を製造する際の貫通溶接において、ストラップ部に対して倒れるようなセル間接続部の加圧変形を行い易くなる。
【0027】
セル間接続部は、セル間接続部に対するストラップ部の延在方向側に面して導電部が接続されるセル間接続部接続面を有し、セル間接続部接続面が面する方向から見て、接続予定領域は、ストラップ部に対するセル間接続部の立設方向と直交する方向に長い楕円状であってもよい。セル間接続部接続面が面する方向から見て、接続予定領域が立設方向に直交する方向に長い楕円状であることで、このストラップを用いた鉛蓄電池では、貫通接続部における電流経路を、立設方向に直交する方向に分散させることができる。これにより、貫通接続部の電流密度をより低くして、貫通接続部の昇温をより抑制することができる。
【0028】
本発明の一側面に係るストラップ部品は、複数の極板を接続するためのストラップ部の一部となる基部と、基部の端部に立設されたセル間接続部と、基部とセル間接続部とを接続する導電部と、を備える。
【0029】
このストラップ部品では、基部とセル間接続部とを接続する導電部を備える。このため、このストラップ部品を用いた鉛蓄電池では、複数の極板と貫通接続部との間を流れる電流の一部が導電部を通ることで、貫通接続部における電流経路が導電部側に分散する。これにより、貫通接続部では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部の昇温が抑制される。その結果、このストラップ部品を用いた鉛蓄電池の隔壁が変形及び溶融するのを抑制することができる。しかも、ストラップ部品は、基部及びセル間接続部に導電部が接続された状態となっているため、このストラップ部品を用いてストラップを製造することで、容易にストラップを製造することができる。
【0030】
セル間接続部は、鉛蓄電池の隔壁に形成された貫通孔に配置された貫通接続部と接続される接続予定領域を有し、基部に対するセル間接続部の立設方向において、セル間接続部と導電部との接続部の上端位置は、接続予定領域の上端位置よりも低くてもよい。このストラップ部品を用いた鉛蓄電池では、最短経路を通ろうとする電流の性質に鑑みると、電流は、貫通接続部の上端位置よりも高い位置を通りにくい。このため、セル間接続部と導電部との接続部の上端位置が、接続予定領域の上端位置よりも低いことで、このため、このストラップ部品を用いた鉛蓄電池では、導電部による貫通接続部の昇温抑制効果を確保しつつ、導電部の小型化によるコスト削減を図ることができる。
【0031】
基部に対するセル間接続部の立設方向において、セル間接続部と導電部との接続部の上端位置は、接続予定領域の下端位置よりも高くてもよい。セル間接続部と導電部との接続部の上端位置が、接続予定領域の下端位置よりも高いことで、このため、このストラップ部品を用いた鉛蓄電池では、貫通接続部における電流経路を貫通接続部の側方に分散させることができる。これにより、貫通接続部の電流密度をより低くして、貫通接続部の昇温をより抑制することができる。
【0032】
基部に対するセル間接続部の立設方向において、セル間接続部と導電部との接続部の上端位置は、セル間接続部の中央位置より低くてもよい。このストラップ部品を用いた鉛蓄電池では、貫通接続部はセル間接続部の中央部に接続される場合が多い。そして、最短経路を通ろうとする電流の性質に鑑みると、電流は、貫通接続部の上端位置よりも高い位置を通りにくい。このため、セル間接続部と導電部との接続部の上端位置が、セル間接続部の中央位置より低いことで、導電部による貫通接続部の昇温抑制効果を確保しつつ、導電部の小型化によるコスト削減を図ることができる。
【0033】
基部は、基部に対するセル間接続部の立設方向側に面して導電部が接続される基部接続面を有し、セル間接続部は、セル間接続部に対する基部の延在方向側に面して導電部が接続されるセル間接続部接続面を有し、セル間接続部接続面が面する方向から見て、導電部は、立設方向と直交する方向における接続予定領域の側方に配置されていてもよい。導電部が接続予定領域の側方に配置されていることで、このストラップ部品を用いた鉛蓄電池では、貫通接続部における電流経路を貫通接続部の側方に分散させることができる。これにより、貫通接続部の電流密度をより低くして、貫通接続部の昇温をより抑制することができる。
【0034】
基部に対するセル間接続部の立設方向における導電部の高さは、セル間接続部から離れるに従って低くなっていてもよい。このストラップ部品を用いた鉛蓄電池では、最短経路を通ろうとする電流の性質に鑑みると、導電部における電流が通る電流経路は、セル間接続部から離れるに従って低くなり易い。このため、立設方向における導電部の高さが、セル間接続部から離れるに従って低くなることで、導電部による貫通接続部の昇温抑制効果を確保しつつ、導電部の小型化によるコスト削減を図ることができる。
【0035】
導電部は、基部に対するセル間接続部の立設方向において局所的に低くなる凹部を有してもよい。導電部が立設方向において局所的に低くなる凹部を有することで、鉛蓄電池を製造する際の貫通溶接において、基部に対して倒れるようなセル間接続部の加圧変形を行い易くなる。
【0036】
セル間接続部は、セル間接続部に対する基部の延在方向側に面して導電部が接続されるセル間接続部接続面を有し、セル間接続部接続面が面する方向から見て、接続予定領域は、基部に対するセル間接続部の立設方向と直交する方向に長い楕円状であってもよい。セル間接続部接続面が面する方向から見て、接続予定領域が立設方向に直交する方向に長い楕円状であることで、このストラップ部品を用いた鉛蓄電池では、貫通接続部における電流経路を、立設方向に直交する方向に分散させることができる。これにより、貫通接続部の電流密度をより低くして、貫通接続部の昇温をより抑制することができる。
【0037】
本発明の一側面に係るストラップ製造用型は、上記の何れかのストラップの少なくとも一部に対応するキャビティを備える。
【0038】
このストラップ製造用型では、上記のストラップの少なくとも一部に対応するキャビティを備えるため、このストラップ製造用型により製造されたストラップを用いた鉛蓄電池では、貫通接続部における電流経路が導電部側に分散する。これにより、貫通接続部では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部の昇温が抑制される。その結果、隔壁が変形及び溶融するのを抑制することができる。
【0039】
キャビティは、ストラップ部に対応していてもよい。キャビティがストラップ部に対応するため、例えば、複数の極板のそれぞれの集電部と、セル間接続部及び導電部を備えたストラップ部品と、をキャビティに配置し、鉛材料を溶融する等してこれらを接続することで、複数の極板のそれぞれの集電部が接続されたストラップを製造することができる。これにより、例えば、セル間接続部及び導電部を備えたストラップ部品を大量に製造して、複数のセル間、又は複数の鉛蓄電池間で、セル間接続部及び導電部を共通化することで、製造コストを低減することができる。
【0040】
本発明の一側面に係るストラップ製造方法は、複数の極板を接続するためのストラップ部と、鉛蓄電池の隣のセル室に配置される隣接ストラップと接続されるためにストラップ部に立設されたセル間接続部と、ストラップ部とセル間接続部とに接続された導電部と、を備えるストラップに対応するストラップキャビティに溶融鉛を注入する鉛注入工程と、複数の極板のそれぞれの集電部をストラップキャビティに配置する集電部配置工程と、を備える。
【0041】
このストラップ製造方法では、鉛注入工程において、ストラップキャビティに溶融鉛を注入するとともに、集電部配置工程において、複数の極板のそれぞれの集電部をストラップキャビティに配置することで、複数の極板のそれぞれの集電部が接続されたストラップ部と、鉛蓄電池の隣のセル室に配置される隣接ストラップと接続されるためにストラップ部に立設されたセル間接続部と、導電性を有してストラップ部とセル間接続部とに接続された導電部と、を備えるストラップを製造することができる。このため、製造されたストラップを用いた鉛蓄電池では、貫通接続部における電流経路が導電部側に分散する。これにより、貫通接続部では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部の昇温が抑制される。その結果、隔壁が変形及び溶融するのを抑制することができる。
【0042】
ストラップキャビティは、上方に開放されており、集電部配置工程は、鉛注入工程の後に行ってもよい。ストラップキャビティは上方に開放されているため、鉛注入工程の前に集電部配置工程を行うと、ストラップキャビティに溶融鉛を注入し難いが、鉛注入工程の後に集電部配置工程を行うことで、ストラップキャビティに溶融鉛を注入し易くなる。
【0043】
本発明の別の一側面に係るストラップ製造方法は、複数の極板を接続するためのストラップ部に対応するストラップ部キャビティに、複数の極板のそれぞれの集電部を配置する集電部配置工程と、ストラップ部の一部となる基部と、鉛蓄電池の隔壁に形成された貫通孔に配置された貫通接続部と接続されるために基部に立設されたセル間接続部と、基部とセル間接続部とに接続された導電部と、を有するストラップ部品の基部をストラップ部キャビティに配置する基部配置工程と、ストラップ部キャビティに、ストラップ部の一部となる鉛材料を配置する鉛材料配置工程と、集電部配置工程、基部配置工程、及び鉛材料配置工程の後に、鉛材料を溶融する溶融工程と、を備える。
【0044】
このストラップ製造方法では、集電部配置工程、基部配置工程、鉛材料配置工程、及び融工程を行うと、鉛材料配置工程においてストラップ部キャビティに配置された鉛材料が溶融される。すると、鉛材料が溶解された溶融鉛により、集電部配置工程においてストラップ部キャビティに配置された複数の極板のそれぞれの集電部と、基部配置工程においてストラップ部キャビティに配置されたストラップ部品の基部と、が接続されるとともに、ストラップ部が形成される。これにより、複数の極板のそれぞれの集電部が接続されたストラップ部と、鉛蓄電池の隣のセル室に配置される隣接ストラップと接続されるためにストラップ部に立設されたセル間接続部と、導電性を有してストラップ部とセル間接続部とに接続された導電部と、を備えるストラップを製造することができる。このため、製造されたストラップを用いた鉛蓄電池では、貫通接続部における電流経路が導電部側に分散する。これにより、貫通接続部では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部の昇温が抑制される。その結果、隔壁が変形及び溶融するのを抑制することができる。
【0045】
本発明の別の一側面に係るストラップ製造方法は、複数の極板を接続するためのストラップ部に対応するストラップ部キャビティに、複数の極板のそれぞれの集電部を配置する集電部配置工程と、ストラップ部の一部となる基部と、鉛蓄電池の隔壁に形成された貫通孔に配置された貫通接続部と接続されるために基部に立設されたセル間接続部と、基部とセル間接続部とに接続された導電部と、を有するストラップ部品の基部を、ストラップ部キャビティに配置する基部配置工程と、集電部配置工程及び基部配置工程の後に、ストラップ部キャビティに溶融鉛を注入する鉛注入工程と、を備える。
【0046】
このストラップ製造方法では、集電部配置工程、基部配置工程、及び鉛注入工程を行うと、鉛注入工程においてストラップ部キャビティに注入された溶融鉛により、集電部配置工程においてストラップ部キャビティに配置された複数の極板のそれぞれの集電部と、基部配置工程においてストラップ部キャビティに配置されたストラップ部品の基部と、が接続されるとともに、ストラップ部が形成される。これにより、複数の極板のそれぞれの集電部が接続されたストラップ部と、鉛蓄電池の隣のセル室に配置される隣接ストラップと接続されるためにストラップ部に立設されたセル間接続部と、導電性を有してストラップ部とセル間接続部とに接続された導電部と、を備えるストラップを製造することができる。このため、製造されたストラップを用いた鉛蓄電池では、貫通接続部における電流経路が導電部側に分散する。これにより、貫通接続部では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部の昇温が抑制される。その結果、隔壁が変形及び溶融するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明の一側面によれば、貫通接続部の昇温を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、実施形態に係る鉛蓄電池を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すII-II線における横断面図である。
図3図3は、図1に示すIII-III線に示す縦断面図である。
図4図4は、図3の一部拡大図である。
図5図5(a)は、電流密度を説明するための比較例のストラップの例を示す斜視図であり、図5(b)は、電流密度を説明するための比較例のストラップの例を示す正面図である。
図6図6(a)は、電流密度を説明するための実施形態のストラップの例を示す斜視図であり、図6(b)は、電流密度を説明するための実施形態のストラップの例を示す正面図である。
図7図7は、図5に示す比較例のストラップを用いた鉛蓄電池及び図6に示す実施形態のストラップを用いた鉛蓄電池の、鉛蓄電池の放電時間と貫通接続部の温度との関係の一例を示すグラフである。
図8図8(a)及び図8(b)のそれぞれは、ストラップの他の例を示す縦断面図である。
図9図9(a)及び図9(b)のそれぞれは、ストラップの他の例を示す縦断面図である。
図10図10(a)及び図10(b)のそれぞれは、ストラップの他の例を示す縦断面図である。
図11図11(a)及び図11(b)のそれぞれは、ストラップの他の例を示す縦断面図である。
図12図12(a)及び図12(b)のそれぞれは、ストラップの他の例を示す縦断面図である。
図13図13(a)は、ストラップの他の例を示す縦断面図であり、図13(b)は、図13(a)に示すストラップの横断面図である。
図14図14は、ストラップの製造方法の例を説明するための側面図である。
図15図15は、ストラップの製造方法の例を説明するための側面図である。
図16図15は、ストラップの製造方法の例を説明するための側面図である。
図17図17は、ストラップの製造方法の例を説明するための斜視図である。
図18図18は、ストラップの製造方法の他の例を説明するための斜視図である。
図19図19は、ストラップの製造方法の他の例を説明するための側面図である。
図20図20は、ストラップの製造方法の他の例を説明するための側面図である。
図21図21は、ストラップの製造方法の他の例を説明するための側面図である。
図22図22は、ストラップの製造方法の他の例を説明するための斜視図である。
図23図23は、ストラップの他の例を示す縦断面図である。
図24図24は、ストラップの他の例を示す縦断面図である。
図25図25は、ストラップの他の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面を参照して、本発明の一側面に係る鉛蓄電池の実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。また、上下の方向は、鉛蓄電池における上下の方向をいう。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
【0050】
<鉛蓄電池>
図1図3に示すように、鉛蓄電池1は、電槽2と、複数の極板群3と、を備える。鉛蓄電池1は、例えば、制御弁式鉛蓄電池である。
【0051】
電槽2は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ABS及びポリフェニレンエーテル(PPE)で形成されている。電槽2の上面部(蓋部)には、正極端子4と、負極端子5と、過剰なガスを電槽2外に排出するための制御弁6と、が設けられている。電槽2の内部には、隔壁7により区画された複数のセル室8が形成されている。本実施形態では、一例として、電槽2は、隔壁7により6つのセル室8に区画されているものとして説明する。
【0052】
図2及び図3に示すように、電槽2は、複数のセル室8の一部である3つのセル室8が第一方向D1に配列された第一セル室群20と、複数のセル室8の残りである3つのセル室8が第一方向D1に配列された第二セル室群30と、を有する。第一セル室群20と第二セル室群30とは、第一方向D1と直交する第二方向D2に並設されている。第一方向D1及び第二方向D2は、鉛蓄電池1の上下方向である第三方向D3と直交する方向である。第二方向D2は、極板群3における複数の正極11及び複数の負極12の積層方向でもある。
【0053】
第一セル室群20の、第一方向D1における一方側端部(図2における右側の端部)に配置されるセル室8を、第一セル室21といい、第二セル室群30の、第一方向D1における一方側端部に配置されるセル室8を、第二セル室31という。第一セル室群20の、第一方向D1における他方側端部(図2における左側の端部)に配置されるセル室8を、第三セル室22といい、第二セル室群30の、第一方向D1における他方側端部に配置されるセル室8を、第四セル室32という。第一セル室群20の、第一セル室21と第三セル室22との間に配置されるセル室8を、第五セル室23といい、第二セル室群30の、第二セル室31と第四セル室32との間に配置されるセル室8を、第六セル室33という。
【0054】
複数のセル室8のそれぞれには、極板群3及び電解液が収容されている。電解液は、例えば、硫酸を含有している。極板群3は、複数の正極11と、複数の負極12と、複数のセパレータ(不図示)と、正極ストラップ14と、負極ストラップ15と、を備える。複数のセル室8のそれぞれにおいて、電解液の液位は、正極ストラップ14及び負極ストラップ15よりも下方となっている。つまり、鉛蓄電池1が正常な使用態様で設置された状態において、電解液の液位が、正極ストラップ14及び負極ストラップ15よりも下方となっている。例えば、電解液が複数のセル室8のそれぞれで自由に流動化可能となっていないことで、電解液の液面がストラップよりも下方に位置している。この場合、例えば、電解液は、電解液保持体(リテーナ)に保持されていてもよい。また、電解液は、顆粒シリカ等のゲル化剤によりゲル化されていてもよい。また、電解液は、電解液保持体(リテーナ)に保持されているとともに、顆粒シリカ等のゲル化剤によりゲル化されていてもよい。なお、電解液の液位が正極ストラップ14及び負極ストラップ15よりも下方とは、正極ストラップ14及び負極ストラップ15が電解液に浸かっていないことを意味し、表面張力、毛細管現象等による電解液の這い上がりにより正極ストラップ14及び負極ストラップ15に電解液が付着しているだけのことまでは意味しない。
【0055】
正極11は、正極集電体(不図示)と、正極集電体に保持される正極材(不図示)とを有する極板である。正極集電体は、板状の金属板または合金板であり、格子部分を有する。正極材は、例えば正極集電体の格子部分に充填される部材であり、正極活物質と、添加物とを有する。
【0056】
負極12は、負極集電体(不図示)と、負極集電体に保持される負極材(不図示)とを有する極板である。負極集電体は、板状の金属板または合金板であり、格子部分を有する。負極集電体は、正極集電体と同様に形成される。負極材は、例えば負極集電体の格子部分に充填される部材であり、負極活物質と、添加物とを有する。
【0057】
セパレータは、正極11と負極12との短絡を防止するために設けられる。セパレータは、例えば、電解液を保持する電解液保持体(リテーナ)として用いることができる。セパレータは、例えばガラス繊維を含む。セパレータは、例えば無機充填剤、有機系バインダー等を含んでもよい。
【0058】
正極ストラップ14は、複数の正極11の集電を行うために、複数の正極11のそれぞれの集電部16に接続されている。つまり、複数の正極11のそれぞれに設けられた集電部16同士が正極ストラップ14を介して接続されることにより、複数の正極11は互いに電気的に接続されている。集電部16は、耳部ともいう。
【0059】
負極ストラップ15は、複数の負極12の集電を行うために、複数の負極12のそれぞれの集電部17に接続されている。つまり、複数の負極12のそれぞれに設けられた集電部17同士が負極ストラップ15を介して接続されることにより、複数の負極12は互いに電気的に接続されている。集電部17は、耳部ともいう。
【0060】
複数のセル室8のそれぞれに収容された極板群3は、正極ストラップ14と負極ストラップ15とが第一方向D1に対向するように配置されている。第一セル室群20では、正極ストラップ14が第一方向D1における一方側(図2における右側)に配置されており、負極ストラップ15が第一方向D1における他方側(図2における左側)に配置されている。第二セル室群30では、正極ストラップ14が第一方向D1における他方側(図2における左側)に配置されており、負極ストラップ15が第一方向D1における一方側(図2における右側)に配置されている。
【0061】
第一セル室21に収容された極板群3の正極ストラップ14には、正極端子4に接続される正極柱18が取り付けられており、第二セル室31に収容された極板群3の負極ストラップ15には、負極端子5に接続される負極柱19が取り付けられている。正極柱18は、正極ストラップ14に立設されて棒状に延びており、負極柱19は、負極ストラップ15に立設されて棒状に延びている。
【0062】
そして、隣り合うセル室8のうちの一方に収容された正極ストラップ14と他方に収容された負極ストラップ15とが、隔壁7に形成された貫通孔10に配置された貫通接続部40により接続されている。貫通接続部40は、正極ストラップ14と負極ストラップ15とに接続されて、正極ストラップ14と負極ストラップ15とを導通する。また、貫通接続部40は、貫通孔10を塞ぐことで、貫通孔10を介して隣り合う各セル室8の気密を保持する。貫通接続部40は、例えば、隔壁7を挟んで対向する正極ストラップ14と負極ストラップ15とを貫通溶接することにより形成される。
【0063】
具体的に説明すると、第一セル室群20及び第二セル室群30のそれぞれでは、第一方向D1に隣り合うセル室8を区画する隔壁7に貫通孔10が形成されており、第一方向D1に隣り合うセル室8のそれぞれに収容された正極ストラップ14と負極ストラップ15とが、貫通孔10に配置された貫通接続部40により接続されている。
【0064】
つまり、第一セル室群20では、第一セル室21と第五セル室23とを区画する隔壁7に貫通孔10が形成されており、第一セル室21に収容された負極ストラップ15と第五セル室23に収容された正極ストラップ14とが、第一セル室21と第五セル室23とを区画する隔壁7に形成された貫通孔10に配置された貫通接続部40により接続されている。同様に、第五セル室23と第三セル室22とを区画する隔壁7に貫通孔10が形成されており、第五セル室23に収容された負極ストラップ15と第三セル室22に収容された正極ストラップ14とが、第五セル室23と第三セル室22とを区画する隔壁7に形成された貫通孔10に配置された貫通接続部40により接続されている。
【0065】
第二セル室群30では、第二セル室31と第六セル室33とを区画する隔壁7に貫通孔10が形成されており、第二セル室31に収容された正極ストラップ14と第六セル室33に収容された負極ストラップ15とが、第二セル室31と第六セル室33とを区画する隔壁7に形成された貫通孔10に配置された貫通接続部40により接続されている。同様に、第六セル室33と第四セル室32とを区画する隔壁7に貫通孔10が形成されており、第六セル室33に収容された正極ストラップ14と第四セル室32に収容された負極ストラップ15とが、第六セル室33と第四セル室32とを区画する隔壁7に形成された貫通孔10に配置された貫通接続部40により接続されている。
【0066】
また、第三セル室22及び第四セル室32を区画する隔壁7に貫通孔10が形成されており、第三セル室22に収容された負極ストラップ15と第四セル室32に収容された正極ストラップ14とが、第三セル室22及び第四セル室32を区画する隔壁7に形成された貫通孔10に配置された貫通接続部40により接続されている。
【0067】
<ストラップ>
図2図4に示すように、貫通接続部40により接続された正極ストラップ14及び負極ストラップ15の少なくとも一方は、導電部53を有する。本実施形態では、一例として、貫通接続部40により接続された正極ストラップ14及び負極ストラップ15の双方が、導電部53を有するものとして説明する。なお、正極ストラップ14の導電部53と負極ストラップ15の導電部53とは、同じであっても異なっていてもよいが、本実施形態では、一例として、同じであるものとして説明する。また、貫通接続部40により接続されない正極ストラップ14及び負極ストラップ15は、導電部53を有していても有していなくてもよいが、本実施形態では、一例として、導電部53を有していないものとして説明する。貫通接続部40により接続されない正極ストラップ14及び負極ストラップ15とは、第一セル室21に収容された正極ストラップ14及び第二セル室31に収容された負極ストラップ15である。
【0068】
ここで、貫通接続部40により接続された正極ストラップ14と負極ストラップ15とは、大きさ等に多少の違いはあるものの、基本的には同じ構成である。このため、特に分けて説明する場合を除き、貫通接続部40により接続された正極ストラップ14と負極ストラップ15とを、ストラップ50として纏めて説明する。
【0069】
ストラップ50は、ストラップ部51と、セル間接続部52と、導電部53と、を有する。ストラップ50は、鉛を主原料としており、導電性を有する。鉛を主原料とするとは、鉛のみで構成されていてもよく、鉛に様々な添加剤等が含有されていてもよいことを意味する。
【0070】
ストラップ部51は、第二方向D2に延びて、複数の正極11又は複数の負極12が接続されている。ストラップ部51は、例えば、第一方向D1及び第二方向D2に延びる平板状に形成されている。
【0071】
セル間接続部52は、ストラップ部51の端部に立設されて、貫通接続部40に接続されている。つまり、ストラップ部51は、隔壁7から離れる方向に延びており、セル間接続部52は、ストラップ部51の隔壁7側の端部に立設されている。ストラップ部51に対してセル間接続部52が立設する方向を、立設方向D4といい、セル間接続部52に対してストラップ部51が延在する方向、つまり、隔壁7から離れる方向を、延在方向D5という。
【0072】
立設方向D4は、第三方向D3と同じである。なお、セル間接続部52は、鉛蓄電池1の製造時の貫通溶接において隔壁7側に加圧変形されるため、厳密には、立設方向D4は第三方向D3と異なる場合がある。しかしながら、この加圧変形は微小であるため、本実施形態では、立設方向D4は第三方向D3と同じであるものとして説明する。
【0073】
延在方向D5は、立設方向D4と直交する方向である。なお、第一セル室21に収容される負極ストラップ15、第五セル室23に収容される正極ストラップ14及び負極ストラップ15、第三セル室22に収容される正極ストラップ14、第二セル室31に収容される正極ストラップ14、第六セル室33に収容される正極ストラップ14及び負極ストラップ、第四セル室32に収容される負極ストラップ15の延在方向D5は、第一方向D1である。また、第三セル室22に収容される負極ストラップ15及び第四セル室32に収容される正極ストラップ14の延在方向D5は、第二方向D2である。
【0074】
セル間接続部52は、平板状に形成されて、隔壁7に密着している。つまり、第一セル室21に収容される負極ストラップ15、第五セル室23に収容される正極ストラップ14及び負極ストラップ15、第三セル室22に収容される正極ストラップ14、第二セル室31に収容される正極ストラップ14、第六セル室33に収容される正極ストラップ14及び負極ストラップ15、第四セル室32に収容される負極ストラップ15のそれぞれでは、セル間接続部52は、第一方向D1に隣り合うセル室8を区画する隔壁7に密着している。また、第三セル室22に収容される負極ストラップ15及び第四セル室32に収容される正極ストラップ14では、セル間接続部52は、第二方向D2に隣り合うセル室8を区画する隔壁7に密着している。
【0075】
延在方向D5から見て、貫通接続部40と接続されるセル間接続部52の領域を、接続予定領域52Aという。接続予定領域52Aは、鉛蓄電池1においては、貫通接続部40と接続されている領域であり、貫通接続部40が形成される前のストラップ50においては、貫通接続部40と接続される予定の領域である。
【0076】
導電部53は、貫通接続部40における電流密度を分散させるために、導電性を有して、ストラップ部51とセル間接続部52とを接続している。具体的には、ストラップ部51は、立設方向D4側に面して導電部53が接続されるストラップ部接続面51Bを有する。セル間接続部52は、延在方向D5側に面して導電部53が接続されるセル間接続部接続面52Bを有する。つまり、導電部53は、ストラップ部51のストラップ部接続面51Bと、セル間接続部52のセル間接続部接続面52Bと、に接続されている。この場合、セル間接続部接続面52Bが面する方向から見て、導電部53は、立設方向D4と直交する方向における貫通接続部40の側方に配置されていてもよい。なお、セル間接続部接続面52Bが面する方向は、延在方向D5である。
【0077】
図5及び図6を参照して、貫通接続部40における電流密度について説明する。図5(a)及び図5(b)は、比較例のストラップの例を示す図であり、図6(a)及び図6(b)は、実施形態のストラップの例を示す図である。図5及び図6に示した線Cは、電流の流れを模式的に示した線である。
【0078】
図5に示すストラップ150は、上述したストラップ部51に対応するストラップ部151と、上述したセル間接続部52に対応するセル間接続部152と、を備えるが、上述した導電部53に対応する部位を備えていない。ストラップ150を用いた鉛蓄電池においては、貫通接続部140において電流が通る電流経路140Aは、貫通接続部140のストラップ部151側の小さな領域に集中する。このため、貫通接続部140では、局部的に電流密度が高くなって、発生するジュール熱が大きくなる。その結果、隔壁が変形及び溶融する程度まで貫通接続部140が昇温する可能性がある。
【0079】
これに対して、図6に示す実施形態のストラップ50は、ストラップ部51と、セル間接続部52と、導電部53と、を備える。このため、ストラップ50を用いた鉛蓄電池においては、複数の正極又は複数の負極と貫通接続部40との間を流れる電流の一部が導電部53を通ることで、貫通接続部40における電流経路40Aが導電部53側に分散する。これにより、貫通接続部40では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部40の昇温が抑制される。その結果、隔壁が変形及び溶融するのを抑制することができる。
【0080】
ここで、図5に示す比較例のストラップ150を用いた鉛蓄電池及び図6に示す実施形態のストラップ50を用いた鉛蓄電池のサンプルを作製し、鉛蓄電池の放電時間と貫通接続部の温度との関係を計測した。計測結果を図7に示す。図7において、線Aは、図5に示す比較例のストラップ150を用いた鉛蓄電池の計測値であり、線Bは、図6に示す実施形態のストラップ50を用いた鉛蓄電池の計測値である。図7の線Aに示すように、図5に示す比較例のストラップ150を用いた鉛蓄電池では、放電開始直後から貫通接続部140が勢いよく昇温した。そして、2分半程度で、基準温度である120℃を超えた。一方、図7の線Bに示すように、図6に示す実施形態のストラップ50を用いた鉛蓄電池では、放電開始直後から、図5に示す比較例のストラップ150を用いた鉛蓄電池よりも貫通接続部140の昇温が大幅に抑制された。そして、6分半程度経過しても、基準温度である120℃を超えなかった。このことから、導電部53を備えることで、貫通接続部40の発熱が抑制されることが分かる。
【0081】
導電部53は、貫通接続部40における電流経路40Aを分散することができれば、その数、位置、形状、大きさ、構造等は、特に限定されない。
【0082】
例えば、図8(a)、図8(b)、図9(a)、及び図9(b)のそれぞれに示すように、立設方向D4及び延在方向D5と直交する方向から見た導電部53の形状は、台形(図8(a)参照)であってもよく、矩形(図8(b)参照)であってもよく、三角形(図9(a)参照)であってもよく、四分円形(図9(b)参照)であってもよい。
【0083】
また、図10(a)、及び図10(b)のそれぞれに示すように、立設方向D4及び延在方向D5と直交する方向から見た導電部53の形状は、複数の台形を延在方向D5に並べた形(図10(a)参照)であってもよく、高さの異なる複数の矩形を延在方向D5に並べた形(図10(b)参照)であってもよい。
【0084】
また、図6(a)及び図6(b)に示すように、セル間接続部接続面52Bが面する方向(延在方向D5)から見て、導電部53は、立設方向D4と直交する方向における貫通接続部40又は接続予定領域52Aの片側に配置されていてもよい。また、図13(b)及び図23のそれぞれに示すように、セル間接続部接続面52Bが面する方向(延在方向D5)から見て、導電部53は、立設方向D4と直交する方向における貫通接続部40又は接続予定領域52Aの両側に配置されていてもよい。
【0085】
また、図11(a)、及び図11(b)のそれぞれに示すように、立設方向D4及び延在方向D5と直交する方向から見て、導電部53は、セル間接続部52の一部に接続されていなくてもよく、ストラップ部51の一部に接続されていなくてもよい。
【0086】
ここで、最短経路を通ろうとする電流の性質に鑑みると、電流は、貫通接続部40の上端位置P2よりも高い位置を通りにくい。このような観点から、図11(a)に示すように、立設方向D4において、セル間接続部52と導電部53との接続部60の上端位置P1は、貫通接続部40又は接続予定領域52Aの上端位置P2よりも低くてもよい。なお、貫通接続部40の上端位置P2と接続予定領域52Aの上端位置P2とは同じ位置である。接続部60は、セル間接続部52と導電部53とが接続されている部分である。
【0087】
また、図11(a)に示すように、立設方向D4において、セル間接続部52と導電部53との接続部60の上端位置P1は、貫通接続部40又は接続予定領域52Aの下端位置P3よりも高くてもよい。
【0088】
ここで、鉛蓄電池1では、貫通接続部40はセル間接続部52の中央部に接続される場合が多い。また、上述したように、最短経路を通ろうとする電流の性質に鑑みると、電流は、貫通接続部40の上端位置P2よりも高い位置を通りにくい。このような観点から、図11(b)に示すように、立設方向D4において、セル間接続部52と導電部53との接続部60の上端位置P1は、セル間接続部52の中央位置P4より低くてもよい。
【0089】
また、図9(a)、図9(b)、図11(a)、及び図11(b)のそれぞれに示すように、導電部53は、立設方向D4における高さがセル間接続部52から離れるに従って低くなる形状であってもよい。
【0090】
また、図10(a)、図12(a)、及び図12(b)のそれぞれに示すように、導電部53は、立設方向D4において局所的に低くなる凹部62(図10(a)参照)、凹部63(図12(a)参照)、及び凹部64(図12(b)参照)を有してもよい。凹部62、凹部63、及び凹部64は、導電部53の、立設方向D4におけるストラップ部51とは反対側の一部が切り欠かれたものである。図12(b)に示すように、凹部64の下端は、尖っておらずに曲面になっていてもよい。
【0091】
ところで、鉛蓄電池1を製造する際は、隣り合うセル室8のうちの一方に収容された正極ストラップ14のセル間接続部52と他方に収容された負極ストラップ15のセル間接続部52とを貫通溶接することで、貫通接続部40を形成する。貫通溶接は、貫通溶接用電極を、それぞれのセル間接続部52の貫通孔10と対向する位置に押し当てることにより行う。このため、導電部53は、貫通溶接の際に貫通溶接用電極と干渉しない位置に形成されていることが好ましい。
【0092】
このような観点から、図13(a)及び図13(b)に示すように、貫通孔10の中心軸線Dに沿って貫通孔10を延長した領域を貫通孔延長領域Eとした場合、導電部53は、貫通孔延長領域Eの外側に配置されていてもよい。
【0093】
<ストラップの製造方法>
次に、図14図17を参照して、ストラップの製造方法の一例について説明する。
【0094】
まず、図14に示すように、鉛注入工程を行う。鉛注入工程では、ストラップ製造用型70を用意する。ストラップ製造用型70は、ストラップ50を製造するための型である。ストラップ製造用型70には、ストラップ50に対応するストラップキャビティ71が形成されている。ストラップキャビティ71は、上方に開放されている。ストラップキャビティ71は、ストラップ部51に対応するストラップ部キャビティ72と、セル間接続部52に対応するセル間接続部キャビティ73と、導電部53に対応する導電部キャビティ74と、を有する。ストラップ部キャビティ72は、ストラップ部51の外形と同じ形状をした空間である。セル間接続部キャビティ73は、セル間接続部52の外形と同じ形状をした空間である。導電部キャビティ74は、導電部53の外形と同じ形状をした空間である。
【0095】
そして、鉛注入工程では、ストラップ製造用型70のストラップキャビティ71に、溶融鉛75を注入する。つまり、ストラップ部キャビティ72、セル間接続部キャビティ73、及び導電部キャビティ74に、溶融鉛75を注入する。溶融鉛75は、鉛を主原料としたものであり、鉛のみであってもよく、鉛に様々な添加剤等が含有されていてもよい。
【0096】
次に、図15及び図16に示すように、集電部配置工程を行う。集電部配置工程では、複数の正極11のそれぞれの集電部16、又は複数の負極12のそれぞれの集電部17を、溶融鉛75が注入されたストラップ製造用型70のストラップキャビティ71に配置(挿入)する。このとき、集電部16又は集電部17は、ストラップキャビティ71のストラップ部キャビティ72に挿入する。なお、本実施形態では、ストラップキャビティ71に溶融鉛75を注入した後に、ストラップキャビティ71に集電部17を配置するが、ストラップキャビティ71に集電部17を配置した後に、ストラップキャビティ71に溶融鉛75を注入してもよい。
【0097】
その後、溶融鉛75が硬化すると、図16及び図17に示すように、ストラップ製造用型70から複数の正極11又は複数の負極12を脱離する。これにより、ストラップ50が製造される。つまり、複数の正極11のそれぞれの集電部16が正極ストラップ14(ストラップ50)に接続されるとともに、複数の負極12のそれぞれの集電部17が負極ストラップ15(ストラップ50)に接続された、極板群3が製造される。
【0098】
次に、図18図22を参照して、ストラップの製造方法の他の例について説明する。
【0099】
まず、図18に示すように、ストラップ部品50Aを用意する。ストラップ部品50Aは、ストラップ50の一部を成す部品である。ストラップ部品50Aは、基部51Aと、セル間接続部52と、導電部53と、を有する。ストラップ部品50Aは、ストラップ50と同様に、鉛を主原料としており、導電性を有する。
【0100】
基部51Aは、複数の極板を接続するためのストラップ部51の一部となる部位である。基部51Aは、例えば、ストラップ部51よりも小形で、第一方向D1及び第二方向D2に延びる平板状に形成されている。
【0101】
セル間接続部52は、鉛蓄電池1の隣のセル室8に配置される隣接ストラップと接続されるために、基部51Aの端部に立設されている。つまり、セル間接続部52は、基部51Aに対して立設方向D4に立設されており、基部51Aは、セル間接続部52に対して延在方向D5に延びている。なお、ストラップ部品50Aのセル間接続部52は、ストラップ50のセル間接続部52と同じであるが、製造容易性等の観点から、ストラップ50のセル間接続部52と異なっていてもよい。
【0102】
導電部53は、基部51Aとセル間接続部52とを接続している。具体的には、基部51Aは、基部51Aに対するセル間接続部52の立設方向D4側に面して導電部53が接続される基部接続面51ABを有する。セル間接続部52は、セル間接続部52に対する基部51Aの延在方向D5側に面して導電部53が接続されるセル間接続部接続面52Bを有する。つまり、導電部53は、基部51Aの基部接続面51ABと、セル間接続部52のセル間接続部接続面52Bと、に接続されている。なお、ストラップ部品50Aの導電部53は、ストラップ50の導電部53と同じであるが、製造容易性等の観点から、ストラップ50の導電部53と異なっていてもよい。
【0103】
次に、図19及び図20に示すように、集電部配置工程、基部配置工程、及び鉛材料配置工程を行う。本実施形態では、集電部配置工程、基部配置工程、及び鉛材料配置工程の順に行うが、これらの工程を如何なる順序で行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0104】
集電部配置工程では、ストラップ製造用型80を用意する。ストラップ製造用型80は、ストラップ50を製造するための型である。ストラップ製造用型80には、ストラップ部51に対応するストラップ部キャビティ81が形成されている。ストラップ製造用型80は、正極用櫛状型82と、負極用櫛状型83と、当金84と、を備える。
【0105】
正極用櫛状型82は、複数の正極11のそれぞれの集電部16を位置決めするために櫛状に形成された櫛部(不図示)と、正極ストラップ14に対応するストラップ部キャビティ81の一部と、を有する。負極用櫛状型83は、複数の負極12のそれぞれの集電部17を位置決めするために櫛状に形成された櫛部(不図示)と、負極ストラップ15に対応するストラップ部キャビティ81の一部と、を有する。
【0106】
当金84は、正極ストラップ14に対応するストラップ部キャビティ81の残りの部分を有する。また、当金84は、正極ストラップ14に対応するストラップ部キャビティ81の残りの部分を有する。つまり、当金84は、正極用櫛状型82に当接されることで、正極ストラップ14に対応するストラップ部キャビティ81を形成し、負極用櫛状型83に当接されることで、負極ストラップ15に対応するストラップ部キャビティ81を形成する。当金84は、例えば、正極用櫛状型82に当接される部分と負極用櫛状型83に当接される部分とに分割されていてもよい。
【0107】
そして、集電部配置工程では、ストラップ製造用型80のストラップ部キャビティ81に、複数の極板のそれぞれの集電部を配置する。つまり、正極用櫛状型82の櫛部に複数の正極11のそれぞれの集電部16を挿入することで正極11のそれぞれの集電部16の位置決めを行うとともに、当金84を正極用櫛状型82に当接する。これにより、正極ストラップ14に対応するストラップ部キャビティ81が形成されるとともに、このストラップ部キャビティ81に複数の正極11のそれぞれの集電部16が配置される。また、負極用櫛状型83の櫛部に複数の負極12のそれぞれの集電部17を挿入することで負極12のそれぞれの集電部17の位置決めを行うとともに、当金84を負極用櫛状型83に当接する。これにより、負極ストラップ15に対応するストラップ部キャビティ81が形成されるとともに、このストラップ部キャビティ81に複数の負極12のそれぞれの集電部17が配置される。
【0108】
基部配置工程では、ストラップ部品50Aの基部51Aをストラップ部キャビティ81に配置する。集電部配置工程及び基部配置工程は、何れを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0109】
鉛材料配置工程では、ストラップ部キャビティ81に、ストラップ部51の一部となる鉛材料85を配置する。鉛材料85は、鉛を主原料とした固体状のものであり、鉛のみであってもよく、鉛に様々な添加剤等が含有されていてもよい。鉛材料85は、後工程で溶融されるため、鉛材料配置工程では、鉛材料85の少なくとも一部がストラップ部キャビティ81に配置されていればよい。また、鉛材料85の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、ストラップ部キャビティ81に挿入し易い形状とすることができる。
【0110】
次に、図20に示すように、溶融工程を行う。溶融工程では、鉛材料85の少なくとも一部を溶融する。鉛材料85の溶融は、例えば、溶接トーチにより行うことができる。鉛材料85が溶融されることで、複数の極板のそれぞれの集電部とストラップ部品50Aとが接続される。また、鉛材料85の溶融により形成された溶融鉛により、ストラップ部キャビティ81の隙間が埋められる。
【0111】
その後、溶融鉛が硬化してストラップ部51が形成されると、図21及び図22に示すように、ストラップ製造用型80を解体する。これにより、ストラップ50が製造される。つまり、複数の正極11のそれぞれの集電部16が正極ストラップ14(ストラップ50)に接続されるとともに、複数の負極12のそれぞれの集電部17が負極ストラップ15(ストラップ50)に接続された、極板群3が製造される。なお、ストラップ部51は、ストラップ部品50Aの基部51A、複数の極板のそれぞれの集電部、及び鉛材料85(溶融しなかった部分及び溶融した後に硬化した部分)により形成される。
【0112】
<鉛蓄電池の製造方法>
鉛蓄電池1の製造においては、電槽2の複数のセル室8のそれぞれに極板群3を挿入し、隣り合うセル室8のうちの一方に収容された正極ストラップ14のセル間接続部52と他方に収容された負極ストラップ15のセル間接続部52とを貫通溶接する。貫通溶接では、貫通溶接用電極を、セル間接続部52の貫通孔10と対向する位置に押し当てて通電することにより行う。このとき、貫通溶接用電極の押圧により、セル間接続部52を隔壁7側に加圧変形させてセル間接続部52を隔壁に密着させる。これにより、正極ストラップ14と負極ストラップ15とを接続する貫通接続部40が形成され、貫通孔10が貫通接続部40で塞がれ、セル間接続部52が隔壁7に密着する。
【0113】
以上説明したように、本実施形態に係る鉛蓄電池1では、貫通接続部40により接続されたストラップ50が、ストラップ部51とセル間接続部52とを接続する導電部53を有する。このため、複数の極板と貫通接続部40との間を流れる電流の一部が導電部53を通ることで、貫通接続部40における電流経路が導電部53側に分散する。これにより、貫通接続部40では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部40の昇温が抑制される。その結果、隔壁7が変形及び溶融するのを抑制することができる。
【0114】
また、本実施形態に係る鉛蓄電池1では、貫通接続部40により接続された正極ストラップ14及び負極ストラップ15のそれぞれが導電部53を有することで、貫通接続部40の昇温が更に抑制される。
【0115】
また、本実施形態に係る鉛蓄電池1では、セル間接続部52と導電部53との接続部60の上端位置P1が、貫通接続部40の上端位置P2よりも低いことで、導電部53による貫通接続部40の昇温抑制効果を確保しつつ、導電部53の小型化によるコスト削減を図ることができる。
【0116】
また、本実施形態に係る鉛蓄電池1では、セル間接続部52と導電部53との接続部60の上端位置P1が、貫通接続部40の下端位置P3よりも高いことで、貫通接続部40における電流経路を貫通接続部40の側方に分散させることができる。これにより、貫通接続部40の電流密度をより低くして、貫通接続部40の昇温をより抑制することができる。
【0117】
また、本実施形態に係る鉛蓄電池1では、導電部53が貫通接続部40の側方に配置されていることで、貫通接続部40における電流経路を貫通接続部40の側方に分散させることができる。これにより、貫通接続部40の電流密度をより低くして、貫通接続部40の昇温をより抑制することができる。
【0118】
また、本実施形態に係る鉛蓄電池1では、第一セル室21に収容された正極ストラップ14に正極柱18が取り付けられており、第二セル室31に収容された負極ストラップ15に負極柱19が取り付けられており、第三セル室22及び第四セル室32に収容された正極ストラップ14と負極ストラップ15とが貫通接続部40により接続されている。このため、第三セル室22及び第四セル室32に収容されて貫通接続部40により接続された正極ストラップ14と負極ストラップ15とが発熱し易くなる。しかしながら、上述したように、貫通接続部40における電流経路が導電部53側に分散する。これにより、貫通接続部40では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部40の昇温が抑制される。このため、第三セル室22と第四セル室32とを区画する隔壁7が変形及び溶融するのを抑制することができる。
【0119】
また、本実施形態に係る鉛蓄電池1では、立設方向D4における導電部53の高さが、セル間接続部52から離れるに従って低くなることで、導電部53による貫通接続部40の昇温抑制効果を確保しつつ、導電部53の小型化によるコスト削減を図ることができる。
【0120】
ところで、鉛蓄電池1を製造する際は、隣り合うセル室8のうちの一方に収容された正極ストラップ14と他方に収容された負極ストラップ15とを貫通溶接することで、正極ストラップ14と負極ストラップ15とを接続する貫通接続部40を形成する。貫通溶接では、貫通溶接用電極によりセル間接続部52を隔壁7側に加圧変形することで、ストラップ部51に対してセル間接続部52が倒れるようにセル間接続部52を加圧変形させる。このため、セル間接続部52に導電部53が接続されていると、セル間接続部52の加圧変形が難しくなる。しかも、貫通溶接用電極によるセル間接続部52の加圧変形は、セル間接続部52がストラップ部51に対して倒れるように行われる。このため、セル間接続部52と導電部53との接続位置が、立設方向D4におけるストラップ部51とは反対側にいくほど、セル間接続部52の加圧変形が難しくなる。
【0121】
そこで、本実施形態に係る鉛蓄電池1では、導電部53が立設方向D4において局所的に低くなる凹部62、凹部63、又は凹部64を有することで、鉛蓄電池1を製造する際の貫通溶接において、ストラップ部51に対して倒れるようなセル間接続部52の加圧変形を行い易くなる。
【0122】
また、本実施形態に係る鉛蓄電池1は、制御弁式鉛蓄電池であることで、貫通接続部40は電解液により冷却されないが、上述したように、貫通接続部40における電流経路が導電部53側に分散する。これにより、貫通接続部40では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部40の昇温が抑制される。
【0123】
本実施形態に係るストラップ50又はストラップ部品50Aでは、ストラップ部51又は基部51Aとセル間接続部52とを接続する導電部53を備える。このため、このストラップ50又はストラップ部品50Aを用いた鉛蓄電池では、複数の極板と貫通接続部40との間を流れる電流の一部が導電部53を通ることで、貫通接続部40における電流経路が導電部53側に分散する。これにより、貫通接続部40では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部40の昇温が抑制される。その結果、このストラップ50又はストラップ部品50Aを用いた鉛蓄電池1の隔壁7が変形及び溶融するのを抑制することができる。しかも、ストラップ部品50Aは、基部51A及びセル間接続部52に導電部53が接続された状態となっているため、このストラップ部品50Aを用いてストラップ50を製造することで、容易にストラップ50を製造することができる。
【0124】
また、本実施形態に係るストラップ50又はストラップ部品50Aでは、セル間接続部52と導電部53との接続部60の上端位置が、接続予定領域52Aの上端位置P2よりも低い。このため、このストラップ50又はストラップ部品50Aを用いた鉛蓄電池1では、導電部53による貫通接続部40の昇温抑制効果を確保しつつ、導電部53の小型化によるコスト削減を図ることができる。
【0125】
また、本実施形態に係るストラップ50又はストラップ部品50Aでは、セル間接続部52と導電部53との接続部60の上端位置P1が、接続予定領域52Aの下端位置P3よりも高い。このため、このストラップ50又はストラップ部品50Aを用いた鉛蓄電池1では、貫通接続部40における電流経路を貫通接続部40の側方に分散させることができる。これにより、貫通接続部40の電流密度をより低くして、貫通接続部40の昇温をより抑制することができる。
【0126】
また、本実施形態に係るストラップ50又はストラップ部品50Aでは、セル間接続部52と導電部53との接続部60の上端位置P1が、セル間接続部52の中央位置P4より低いことで、導電部53による貫通接続部40の昇温抑制効果を確保しつつ、導電部53の小型化によるコスト削減を図ることができる。
【0127】
また、本実施形態に係るストラップ50又はストラップ部品50Aでは、導電部53が接続予定領域52Aの側方に配置されていることで、このストラップ50又はストラップ部品50Aを用いた鉛蓄電池1では、貫通接続部40における電流経路を貫通接続部40の側方に分散させることができる。これにより、貫通接続部40の電流密度をより低くして、貫通接続部40の昇温をより抑制することができる。
【0128】
また、本実施形態に係るストラップ50又はストラップ部品50Aでは、立設方向D4における導電部53の高さが、セル間接続部52から離れるに従って低くなることで、導電部53による貫通接続部40の昇温抑制効果を確保しつつ、導電部53の小型化によるコスト削減を図ることができる。
【0129】
また、本実施形態に係るストラップ50又はストラップ部品50Aでは、導電部53が立設方向D4において局所的に低くなる凹部62、凹部63、及び凹部64を有することで、鉛蓄電池1を製造する際の貫通溶接において、ストラップ部51又は基部51Aに対して倒れるようなセル間接続部52の加圧変形を行い易くなる。
【0130】
本実施形態に係るストラップ製造用型70又はストラップ製造用型80では、上記のストラップ50の少なくとも一部に対応するストラップキャビティ71又はストラップ部キャビティ81を備えるため、このストラップ製造用型70又はストラップ製造用型80により製造されたストラップ50を用いた鉛蓄電池1では、貫通接続部40における電流経路が導電部53側に分散する。これにより、貫通接続部40では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部40の昇温が抑制される。その結果、隔壁7が変形及び溶融するのを抑制することができる。
【0131】
また、本実施形態に係るストラップ製造用型80では、キャビティがストラップ部51に対応するため、例えば、複数の極板のそれぞれの集電部と、セル間接続部52及び導電部53を備えたストラップ部品50Aと、をキャビティに配置し、鉛材料を溶融する等してこれらを接続することで、ストラップ50を製造することができる。これにより、例えば、セル間接続部52及び導電部53を備えたストラップ部品50Aを大量に製造して、複数のセル室8間、又は複数の鉛蓄電池1間で、セル間接続部52及び導電部53を共通化することで、製造コストを低減することができる。
【0132】
本実施形態に係るストラップ製造方法では、鉛注入工程において、ストラップキャビティ71に溶融鉛75を注入するとともに、集電部配置工程において、複数の極板のそれぞれの集電部をストラップキャビティ71に配置することで、複数の極板のそれぞれの集電部が接続されたストラップ部51と、鉛蓄電池1の隣のセル室8に配置される隣接ストラップと接続されるためにストラップ部51に立設されたセル間接続部52と、導電性を有してストラップ部51とセル間接続部52とに接続された導電部53と、を備えるストラップ50を製造することができる。このため、製造されたストラップ50を用いた鉛蓄電池1では、貫通接続部40における電流経路が導電部53側に分散する。これにより、貫通接続部40では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部40の昇温が抑制される。その結果、隔壁7が変形及び溶融するのを抑制することができる。
【0133】
また、本実施形態に係るストラップ製造方法では、ストラップキャビティ71は上方に開放されているため、鉛注入工程の前に集電部配置工程を行うと、ストラップキャビティ71に溶融鉛75を注入し難いが、鉛注入工程の後に集電部配置工程を行うことで、ストラップキャビティ71に溶融鉛75を注入し易くなる。
【0134】
本実施形態に係る別のストラップ製造方法では、集電部配置工程、基部配置工程、鉛材料配置工程、及び融工程を行うと、鉛材料配置工程においてストラップ部キャビティ81に配置された鉛材料85が溶融される。すると、鉛材料85が溶解された溶融鉛により、集電部配置工程においてストラップ部キャビティ81に配置された複数の極板のそれぞれの集電部と、基部配置工程においてストラップ部キャビティ81に配置されたストラップ部品50Aの基部51Aと、が接続されるとともに、ストラップ部51が形成される。これにより、複数の極板のそれぞれの集電部が接続されたストラップ部51と、鉛蓄電池1の隣のセル室8に配置される隣接ストラップと接続されるためにストラップ部51に立設されたセル間接続部52と、導電性を有してストラップ部51とセル間接続部52とに接続された導電部53と、を備えるストラップ50を製造することができる。このため、製造されたストラップ50を用いた鉛蓄電池1では、貫通接続部40における電流経路が導電部53側に分散する。これにより、貫通接続部40では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部40の昇温が抑制される。その結果、隔壁7が変形及び溶融するのを抑制することができる。
【0135】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0136】
例えば、図23に示すように、セル間接続部接続面52Bが面する方向から見て、貫通接続部40及び接続予定領域52Aは、ストラップ部51に対するセル間接続部52の立設方向D4と直交する方向に長い楕円状であってもよい。このように、セル間接続部接続面52Bが面する方向から見て、貫通接続部40又は接続予定領域52Aが立設方向D4に直交する方向に長い楕円状であることで、貫通接続部40における電流経路を、立設方向D4に直交する方向に分散させることができる。これにより、貫通接続部40の電流密度をより低くして、貫通接続部40の昇温をより抑制することができる。
【0137】
また、図2及び図24に示すように、隣り合うセル室8を区画する隔壁7に複数の貫通孔10が形成されており、隣り合うセル室8のうちの一方に収容された正極ストラップ14と他方に収容された負極ストラップ15とは、隔壁7に形成された複数の貫通孔10のそれぞれに配置された貫通接続部40により接続されていてもよい。第三セル室22と第四セル室32とを区画する隔壁7は、極板群3における複数の正極11及び複数の負極12の積層方向である第二方向D2に長い。このため、例えば、第三セル室22と第四セル室32とを区画する隔壁7のみに、複数の貫通孔10を形成してもよい。なお、隔壁7に形成される貫通孔10の数は、例えば、2つ、又は、3つであってもよい。
【0138】
また、図2及び図25に示すように、隣り合うセル室8のうちの一方に収容された正極ストラップ14と他方に収容された負極ストラップ15とは、隔壁7に形成された貫通孔10に配置された貫通接続部40により接続されるだけでなく、隔壁7の上側を跨ぐ上側接続部41によっても接続されていてもよい。この場合、例えば、電槽2の蓋(不図示)を取り外した状態において、貫通接続部40及び上側接続部41を形成し、上側接続部41を樹脂で封止し、その後、電槽2に蓋を取り付ける。
【0139】
また、鉛蓄電池は制御弁式鉛蓄電池でなくてもよい。また、セル室の数、配置、形状、大きさ等は、特に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0140】
また、図18図22に示すストラップの製造方法では、鉛材料配置工程においてストラップ部キャビティ81に鉛材料85を配置し、溶融工程において鉛材料85を溶融するものとして説明したが、鉛材料配置工程を備えず、溶融工程の代わりに、ストラップ部キャビティ81に溶融鉛を注入する鉛注入工程を備えるものとしてもよい。このようなストラップの製造方法では、集電部配置工程、基部配置工程、及び鉛注入工程を行うと、鉛注入工程においてストラップ部キャビティに注入された溶融鉛により、集電部配置工程においてストラップ部キャビティに配置された複数の極板のそれぞれの集電部と、基部配置工程においてストラップ部キャビティに配置されたストラップ部品の基部と、が接続されるとともに、ストラップ部が形成される。これにより、複数の極板のそれぞれの集電部が接続されたストラップ部と、鉛蓄電池の隣のセル室に配置される隣接ストラップと接続されるためにストラップ部に立設されたセル間接続部と、導電性を有してストラップ部とセル間接続部とに接続された導電部と、を備えるストラップを製造することができる。このため、製造されたストラップを用いた鉛蓄電池では、貫通接続部における電流経路が導電部側に分散する。これにより、貫通接続部では、電流密度が低くなってジュール熱が抑制されるため、貫通接続部の昇温が抑制される。その結果、隔壁が変形及び溶融するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0141】
1…鉛蓄電池、2…電槽、3…極板群、4…正極端子、5…負極端子、6…制御弁、7…隔壁、8…セル室、10…貫通孔、11…正極、12…負極、14…正極ストラップ、15…負極ストラップ、16…集電部、17…集電部、18…正極柱、19…負極柱、20…第一セル室群、21…第一セル室、22…第三セル室、23…第五セル室、30…第二セル室群、31…第二セル室、32…第四セル室、33…第六セル室、40…貫通接続部、40A…電流経路、41…上側接続部、50…ストラップ、50A…ストラップ部品、51…ストラップ部、51A…基部、51B…ストラップ部接続面、52…セル間接続部、52A…接続予定領域、52B…セル間接続部接続面、53…導電部、60…接続部、62…凹部、63…凹部、64…凹部、70…ストラップ製造用型、71…ストラップキャビティ、72…ストラップ部キャビティ、73…セル間接続部キャビティ、74…導電部キャビティ、75…溶融鉛、80…ストラップ製造用型、81…ストラップ部キャビティ、82…正極用櫛状型、83…負極用櫛状型、84…当金、85…鉛材料、140…貫通接続部、140A…電流経路、150…ストラップ、151…ストラップ部、152…セル間接続部、C…電流の流れ、D…中心軸線、E…貫通孔延長領域、D1…第一方向、D2…第二方向、D3…第三方向、D4…立設方向、D5…延在方向、P1…上端位置、P2…上端位置、P3…下端位置、P4…中央位置。
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