(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】内視鏡的粘膜下層剥離術のためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20250321BHJP
A61B 17/3205 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
A61B17/22 528
A61B17/3205
(21)【出願番号】P 2022573234
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 US2021033999
(87)【国際公開番号】W WO2021242727
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2024-04-25
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】カミーサ, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】フサール, ヒラリー ケー.
(72)【発明者】
【氏名】アールクィスト, エリー ケー.
(72)【発明者】
【氏名】バートウェル, ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル, ショーン シー.
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0279869(US,A1)
【文献】特開2019-154978(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0216463(US,A1)
【文献】特開2017-176335(JP,A)
【文献】特表2019-524276(JP,A)
【文献】国際公開第2021/021987(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡的粘膜下層剥離術を行うための外科用システムであって、
前記外科用システムは、第1の外科用クリップと第2の外科用クリップとを備え、
前記第1の外科用クリップ
は、
第1のジョー部材および第2のジョー部材であって、前記第1のジョー部材および前記第2のジョー部材は、開放構成と閉鎖構成との間を移動
することにより、前記第1のジョー部材と前記第2のジョー部材との間に組織
を把持するように構成され
ている、第1のジョー部材
および第2のジョー部材と、
前記第1のジョー部材
または前記第2のジョー部材のうちの一方に取り付けられ
ている弾性部材であって、前記弾性部材は、格納状態と展開状態との間を移行するように構成され
ており、前記展開状態では、
前記弾性部材が外向きに曲がる、弾性部材
と
を含
み、
前記第2の外科用クリップは、第1のジョー部材
および第2のジョー部材を含
み、前記第2の外科用クリップの前記第1のジョー部材および前記第2のジョー部材は、開放構成と閉鎖構成との間を移動
することにより、前記第2の外科用クリップの前記第1のジョー部材と前記第2の外科用クリップの前記第2のジョー部材との間に組織
を把持するように構成され
ており、
前記第2の外科用クリップ
の前記第1のジョー部材
および前記第2のジョー部材の
それぞれの遠位先端は、平面状または弓形の最遠位縁を有し
、前記遠位先端には、組織を損傷し得るいかなる鋭利な点も急な突起もない、外科用システム。
【請求項2】
前記第2の外科用クリップ
の前記第1のジョー部材
および前記第2のジョー部材の
それぞれの前記遠位先端
は、平面状の最遠位縁を有する、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項3】
前記第2の外科用クリップ
の前記第1のジョー部材
および前記第2のジョー部材の
それぞれの前記遠位先端
は、弓形の最遠位縁を有する、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項4】
前記第2の外科用クリップ
の前記第1のジョー部材
および前記第2のジョー部材の
それぞれは、
近位端部と、
前記遠位先端を有する遠位端部
と
を含む、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項5】
前記第2の外科用クリップ
の前記第1のジョー部材
および前記第2のジョー部材の
それぞれの前記遠位先端
は、互いに向かって内向きに湾曲する、請求項4に記載の外科用システム。
【請求項6】
前記第2の外科用クリップ
の前記第1のジョー部材
および前記第2のジョー部材の
それぞれの前記近位端部
は、面取りされた近位端を有する、請求項4に記載の外科用システム。
【請求項7】
前記第2の外科用クリップ
は、近位本体部
を含み、前記第2の外科用クリップの前記第1のジョー部材
および前記第2のジョー部材
は、前記近位本体部に結合されており、前記近位本体部の遠位縁
と前記第2の外科用クリップ
の前記第1のジョー部材
および前記第2のジョー部材の
それぞれの前記面取りされた近位端との間
には、間隙
が画定されている、請求項6に記載の外科用システム。
【請求項8】
前記第1の外科用クリップの前記第1のジョー部材
は、一対の穴を画定する近位端部を有し、前記弾性部材
は、前記一対の穴を介して前記第1の外科用クリップの前記第1のジョー部材に取り付けられ
ている、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項9】
前記一対の穴の
それぞれは、前記弾性部材の直径よりも大きい直径を有する、請求項8に記載の外科用システム。
【請求項10】
前記弾性部材は、互いに圧着された第1の端部
および第2の端部を有す
るモノリシックに形成され
ているワイヤである、請求項8に記載の外科用システム。
【請求項11】
前記ワイヤは、形状記憶材料から製造されている、請求項10に記載の外科用システム。
【請求項12】
前記第1の外科用クリップは
、近位本体部を含
み、前記第1の外科用クリップの前記第1のジョー部材
および前記第2のジョー部材
は、前記近位本体部に移動可能に
結合されており、前記第2の外科用クリップは
、近位本体部を含
み、前記第2の外科用クリップの前記第1のジョー部材
および前記第2のジョー部材
は、前記第2の外科用クリップの前記近位本体部に移動可能に
結合されている、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項13】
前記第1の外科用クリップの前記第1のジョー部材
または前記第2のジョー部材のうちの少なくとも一方は、尖った遠位先端を有する、請求項1に記載の外科用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年5月29日に出願された米国仮特許出願第63/031,620号の利益及び優先権を主張し、その開示内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本技術は、一般的に、内視鏡的粘膜下層剥離術で使用される外科用組織クリップに関連する。
【背景技術】
【0003】
内視鏡的除去術は、低侵襲性であること及びコストがより低いことにより、早期の消化管(GI)がんの治療のための第1の選択肢として受け入れられてきた。内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、サイズ、粘膜下層における重篤な線維症の存在、及び病変の位置にかかわらず、一括除去及び正確な組織病理学的診断を可能にする。ESDの利点のうちの1つは、内視鏡的粘膜切除術(EMR)と比較して、より低い再発率である。一部のESD手術ではその施術中、止血クリップのジョー部材が、組織に係合される。除去を実施した後、ジョー部材は、組織から分離される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本開示は、内視鏡的粘膜下層剥離術を行うための外科用システムを提供する。外科用システムは、各々が第1及び第2のジョー部材を有する第1及び第2の外科用クリップを含み、第1及び第2のジョー部材の各々は、開放構成と閉鎖構成との間を移動して、両部材間に組織を把持するように構成されている。第1の外科用クリップの第1及び/又は第2のジョー部材は、尖った遠位先端を有する。第1の外科用クリップは、第1又は第2のジョー部材のうちの一方に取り付けられた弾性部材を有する。弾性部材は、格納状態と、弾性部材が外向きに曲がる展開状態との間を移行するように構成されている。第2の外科用クリップの第1及び第2のジョー部材の各々は、鈍い遠位先端を有する。
【0005】
いくつかの態様では、第2の外科用クリップの第1及び第2のジョー部材の各々の遠位先端は、平坦な最遠位縁を有することができる。
【0006】
いくつかの態様では、第2の外科用クリップの第1及び第2のジョー部材の各々の遠位先端は、弓形の最遠位縁を有することができる。
【0007】
いくつかの態様では、第2の外科用クリップの第1及び第2のジョー部材の各々は、近位端部と、遠位先端を有する遠位端部とを含み得る。
【0008】
いくつかの態様では、第2の外科用クリップの第1及び第2のジョー部材の各々の遠位先端は、互いに向かって内向きに湾曲していてもよい。
【0009】
いくつかの態様では、第2の外科用クリップの第1及び第2のジョー部材の各々の近位端部は、面取りされた近位端を有し得る。
【0010】
いくつかの態様では、第2の外科用クリップは、近位本体部を含むことができ、第2の外科用クリップの第1及び第2のジョー部材は、近位本体部に結合され得る。間隙が、近位本体部の遠位縁と、第2の外科用クリップの第1及び第2のジョー部材の各々の面取りされた近位端との間に画定され得る。
【0011】
いくつかの態様では、第1の外科用クリップの第1のジョー部材は、一対の穴を画定する近位端部を有し得る。弾性部材は、一対の穴を介して、第1の外科用クリップの第1のジョー部材に取り付けられ得る。
【0012】
いくつかの態様では、一対の穴の各々は、弾性部材の直径よりも大きい直径を有し得る。
【0013】
いくつかの態様では、弾性部材は、互いに圧着された第1及び第2の端部を有する、モノリシックに形成されたワイヤであり得る。
【0014】
いくつかの態様では、ワイヤは形状記憶材料から製造され得る。
【0015】
いくつかの態様では、第1及び第2の外科用クリップの各々は、それぞれの第1及び第2のジョー部材が移動可能に連結された近位本体部を含み得る。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
内視鏡的粘膜下層剥離術を行うための外科用システムであって、
第1の外科用クリップであって、
開放構成と閉鎖構成との間を移動して、組織をその間に把持するように構成された、第1のジョー部材及び第2のジョー部材と、
前記第1のジョー部材又は前記第2のジョー部材のうちの一方に取り付けられ、格納状態と展開状態との間を移行するように構成された弾性部材であって、前記展開状態では、外向きに曲がる弾性部材と、
を含む、第1の外科用クリップ、及び
開放構成と閉鎖構成との間を移動して、組織をその間に把持するように構成された、第1のジョー部材及び第2のジョー部材を含む、第2の外科用クリップ、
を備え、
前記第2の外科用クリップの、前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材の各々が、鈍い遠位先端を有する、外科用システム。
(項目2)
前記第2の外科用クリップの、前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材の各々の前記遠位先端が、平面状の最遠位縁を有する、項目1に記載の外科用システム。
(項目3)
前記第2の外科用クリップの、前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材の各々の前記遠位先端が、弓形の最遠位縁を有する、項目1に記載の外科用システム。
(項目4)
前記第2の外科用クリップの、前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材の各々が、
近位端部と、
前記遠位先端を有する遠位端部と、
を含む、項目1に記載の外科用システム。
(項目5)
前記第2の外科用クリップの、前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材の各々の前記遠位先端が、互いに向かって内向きに湾曲する、項目4に記載の外科用システム。
(項目6)
前記第2の外科用クリップの、前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材の各々の前記近位端部が、面取りされた近位端を有する、項目4に記載の外科用システム。
(項目7)
前記第2の外科用クリップが、前記第2の外科用クリップの前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材が連結された近位本体部;及び前記近位本体部の遠位縁と、前記第2の外科用クリップの、前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材の各々の前記面取りされた近位端との間に画定された間隙と、を含む、項目6に記載の外科用システム。
(項目8)
前記第1の外科用クリップの前記第1のジョー部材が、一対の穴を画定する近位端部を有し、前記弾性部材が、前記一対の穴を介して前記第1の外科用クリップの前記第1のジョー部材に取り付けられる、項目1に記載の外科用システム。
(項目9)
前記一対の穴の各々が、前記弾性部材の直径よりも大きい直径を有する、項目8に記載の外科用システム。
(項目10)
前記弾性部材は、互いに圧着された第1の端部及び第2の端部を有する、モノリシックに形成されたワイヤである、項目8に記載の外科用システム。
(項目11)
前記ワイヤは、形状記憶材料から製造されている、項目10に記載の外科用システム。
(項目12)
前記第1の外科用クリップは、前記第1の外科用クリップの前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材が移動可能に連結された近位本体部を含み、前記第2の外科用クリップは、前記第2の外科用クリップの前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材が移動可能に連結された前記第2の外科用クリップの近位本体部を含む、項目1に記載の外科用システム。
(項目13)
前記第1の外科用クリップの前記第1のジョー部材又は前記第2のジョー部材のうちの少なくとも一方は、尖った遠位先端を有する、項目1に記載の外科用システム。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示の外科用システムの目的及び特徴は、添付の図面を参照して様々な実施形態の説明を読むことにより、当業者には明白になるであろう。
【
図1】第1の外科用クリップを有する第1の手持ち式外科用器具と、第2の外科用クリップを有する第2の手持ち式外科用器具とを含む、外科用システムを示す側面図である。
【
図2A】その弾性部材が展開状態にある、
図1の第1の外科用クリップを示す側面斜視図である。
【
図2B】その別のタイプの弾性部材が展開状態にある、
図1の第1の外科用クリップを示す側面斜視図である。
【
図3A】弾性部材なしで示される、
図2Aの第1の外科用クリップの上面図である。
【
図3B】開放状態にあるジョー部材示す、
図3Aの第1の外科用クリップの側面図である。
【
図3C】閉鎖状態にあるジョー部材を示す、
図3Aの第1の外科用クリップの側面図である。
【
図4】
図1の第2の外科用クリップの上面図である。
【
図5】
図4の第2の外科用クリップの一対のジョー部材を示す正面図である。
【
図6】第2の外科用クリップのジョー部材の、別の一実施形態を示す上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、概して、内視鏡的粘膜下層剥離術を行う際に使用される、それぞれ別個の第1及び第2の外科用クリップを含む、外科用システムに関する。第1の外科用クリップは、細長い本体と、細長い本体内に受容され、そこから展開可能である一対のジョー部材と、ジョー部材のうちの1つに連結される弾性ワイヤと、を有する。弾性ワイヤは、外科手術部位で第1の外科用クリップが展開されたときに、予め定義された湾曲形状をとるように構成されている。第2の外科用クリップは、第1の外科用クリップとは異なり、弾性ワイヤがなく、組織を外傷を与えることなく把持して保持するように設計された、鈍い遠位先端を有する。一部の態様では、第1及び第2の外科用クリップの各々が、鈍い遠位先端を有してもよい。
【0018】
使用中、標的組織(例えば、病変)は、第1の外科用クリップのジョー部材の間に把持され、弾性ワイヤ(展開状態にある)は、標的場所においては上向きに(例えば、標的組織から離れる向きに)なっている。第2の外科用クリップのジョー部材が、弾性ワイヤの端部を把持するために使用されてもよく、第2の外科用クリップが、第1の外科用クリップから離れるように移動されて、弾性ワイヤを真っ直ぐにする。ジョー部材は、第2の標的組織(例えば、健康な組織)の周囲では閉鎖される一方で、同時に弾性ワイヤを把持している。弾性ワイヤが病変を、胃壁から離間させて保持した状態で、その病変が切り離され得る。本開示の外科用システムは、任意の好適なタイプの組織(例えば、食道組織、結腸直腸組織など)に処置を行うために使用され得るということが企図される。本開示のこれらの態様及び他の態様が、以下に、より詳細に説明される。
【0019】
図1は、第1の手持ち式外科用器具10と、第2の手持ち式外科用器具50と、を含む外科用システム1を示す。第1の手持ち式外科用器具10は、例えば、第1の外科用クリップ100(
図2A)を展開させるための主要な組織把持カテーテルなどであり、第2の手持ち式外科用器具50は、例えば、第2の外科用クリップ200を展開させるための副次的な組織把持カテーテルなどである。第1の外科用クリップ100は、組織を把持するように構成され、第2の外科用クリップ200は、後ほど説明されるように、組織と、第1の外科用クリップ100の弾性部材108とを同時に把持するために使用される。
【0020】
外科用器具10、50の各々は、一般的に、ハンドルアセンブリ又はアクチュエータ11、51と、ハンドルアセンブリ11、51から遠位方向に延出するシャフト12、52と、を含む。第1の外科用クリップ100は、第1の外科用器具100のシャフト12の遠位端部14に、取り外し可能に連結され、第2の外科用クリップ200は、第2の外科用器具50のシャフト52の遠位端部54に、取り外し可能に連結される。一部の態様では、クリップ100、200が、手持ち式器具から展開可能である代わりに、クリップ100、200が、外科用ロボットアームから展開され得る。
【0021】
外科用器具10、50の各々は、例えば、シャフト12、52内で軸方向に移動可能な牽引具(図示せず)などの、作動機構を含む。牽引具は、ハンドルアセンブリ11、51のトリガ15、55に動作可能に連結された近位端を有し得るが、それにより、トリガ15、55を作動すると、牽引具が近位方向に並進するようになっている。牽引具は、外科用クリップ100、200に取り外し可能に連結された遠位端を有し得るが、それにより、牽引具が近位方向に並進すると、外科用クリップ100、200が開放構成から閉鎖構成に移動し、最終的には、外科用クリップ100、200が、外科用器具10、50の残りの部分から外れるようになっている。外科用器具10、50は、例えば、駆動ロッド又は駆動チューブなどの、外科用クリップ100、200を展開させるための、任意の好適な作動機構を含み得るということが想定されている。
【0022】
図2Aを参照すると、第1の外科用クリップ100は、近位本体部102(例えば管状の本体)と、近位本体部102に受容された、第1のジョー部材104及び第2のジョー部材106と、近位本体部102に連結された弾性部材108と、を有する。第1の外科用クリップ100の弾性部材108は、例えば、銅-アルミニウム-ニッケル又はニッケル-チタンなどの、形状記憶材料から製造され得る。一部の態様では、弾性部材108は、所定の形状を維持するように構成された、任意の好適な材料から製造され得る。弾性部材108は、第1及び第2の遊離端116a、116bを有する形状記憶材料(例えば、ニッケル-チタン)のモノリシックワイヤから製造されてもよく、これら第1及び第2の遊離端116a、116bは、第1のジョー部材104内の一対の穴118a、118bをそれぞれ通過させられ、弾性部材108が第1のジョー部材104とスナップ係合するまで近位方向に引っ張られる。第1のジョー部材104の穴118a、118bは、遊離端116a、116bの直径よりも大きい直径を有しているので、弾性部材108の形状を変更することなく、その中に弾性部材108を収容するようになっている。弾性部材108の遊離端116a、116bは、金属管120とともに圧着されるか又は他の方法で接合されるが、接着性充填材が追加されてもよい。弾性部材108を折り畳まれたワイヤから製造する代わりに、弾性部材108は、弾性材料の薄い細長いシートであってもよい。弾性部材108をジョー部材104に連結するための他の手段(例えば、接着剤、タブなど)もまた、企図される。
【0023】
弾性部材108の直径は、十分な上方への持ち上げを提供するのに十分に大きく(例えば、約0.005インチ~約0.01インチ、一部の態様では、約0.008インチ)、しかし筋肉層を切断平面内に強く引っ張りすぎないように十分に小さいということが企図される。弾性部材108の曲率半径は、ユーザが第2の外科用クリップ200を用いて弾性部材108のループの内側を把持して、第1の外科用クリップ100を完全に展開することができるように十分に大きく(例えば、約7mm)、適切な牽引力を提供するのに十分な程度に小さい。いくつかの態様では、弾性部材108は、十分に大きな幅(例えば、約9mm及び約10mm)を有するので、弾性部材108は、組織上にぴったりと伏せた状態になり、動かす必要がない。弾性部材108には、他の構成もまた考えられる。
【0024】
図2Bは、
図2Aの弾性部材108と同様の弾性部材122の別の一実施形態を示す。弾性部材122は、弾性部材108とは異なり、弾性部材108よりも長い(例えば、弾性部材108の長さが約2cmであるのに対して、約3.5cm)ので、弾性部材108の場合と比較して、より大きい病変に対して手術するために使用される。
【0025】
図3A~
図3Cを参照すると、第1の外科用クリップ100の近位本体部102は、シャフト12の遠位端14(
図2A及び
図2B)に取り外し可能に連結されるように構成されている。いくつかの態様では、シャフト12は、近位本体部102に連結された解放ラッチ(図示せず)と、解放ラッチを作動させてシャフト12から外科用クリップ100を展開させるための作動機構(例えば、牽引ロッド、図示せず)とを有し得る。
【0026】
第1のジョー部材104及び第2のジョー部材106は各々、近位本体部102に結合されている。第1のジョー部材104及び第2のジョー部材106の各々は、近位本体部102の中空の内部に摺動可能に受容された近位端部104a、106aと、近位本体部102の遠位側に配設された遠位端部104b、106bとを有する。第1のジョー部材104の近位端部104aは、それを貫通する一対の穴118a、118bを画定し、これらの穴は、弾性部材108を受容するための寸法となっている。
【0027】
ジョー部材104、106のそれぞれ対応する遠位端部104b、106bは、ジョー部材104、106どうしの間に組織を把持するのを支援するための尖った遠位先端104c、106cを有する。尖った遠位先端104c、106cは、ジョー部材104、106が組織の周りで閉じた状態にあるときに組織に突き刺さるように構成され得る。ジョー部材104、106は、付勢部材(図示せず)によって、開放構成に向かって弾性的に付勢され得る。あるいは、ジョー部材104、106は、弾性付勢を有しない場合がある。ジョー部材104、106は、ジョー部材104、106の遠位端部104b、106bどうしが互いに接近している近位位置と、ジョー部材104、106の遠位端部104b、106bどうしが互いに離間している遠位位置とから、近位本体部102に対して軸方向に移動可能である。
【0028】
図4及び
図5を参照すると、外科用システム10の第2の外科用クリップ200は、第2の外科用器具50(
図1)の可撓性シャフト52(
図1)に取り外し可能に連結された近位本体部202と、近位本体部202に連結された一対のジョー部材204、206とを含む。第2の外科用クリップ200は、第1の外科用クリップ100とは異なり、弾性部材108がなく、組織に外傷を与えずに把持するように構成されている。第2の外科用クリップ200の第1及び第2のジョー部材204、206の各々はまた、第1の外科用クリップ200のジョー部材104、106よりも長くてもよく、近位端部204aと、遠位先端204c、206cを有する遠位端部204bとを含む。第2の外科用クリップ200の第1及び第2のジョー部材204、206の各々の近位端部204aは、面取りされた近位端210を有する。間隙212が、近位本体部202の遠位縁207と、第2の外科用クリップ200の第1及び第2のジョー部材204、206の各々の面取りされた近位端210との間に画定される。面取りされた近位端210は、使用中に間隙212内に牽引ワイヤを捕捉することを防止及び/又はそれに抵抗するように構成されている。いくつかの態様では、近位端210は、面取りされる代わりに、内部に溝を画定してもよい。
【0029】
第2の外科用クリップ200の第1及び第2のジョー部材204、206のそれぞれ対応する遠位先端204c、206cは、互いに向かって内向きに湾曲する。第2の外科用クリップ200の第1及び第2のジョー部材204、206のそれぞれ対応する遠位先端204c、206cは、湾曲した横方向端217a、217bの間に配設された、平坦な最遠位縁214、216を有する。横方向端217a、217bは、比較的大きい曲率半径(例えば、約0.05mm~約0.4mm)を有し、それによって、概ね平面状の湾曲を呈する。湾曲した横方向端217a、217bは、打ち抜き加工、又はバリ取りもしくは研磨等の二次加工によって形成されてもよい。最遠位縁214、216は、組織が遠位先端204c、206cの間に把持されるときに、組織を貫通したり又は別様に損傷したりすることを防止するように構成される。遠位先端204c、206c間のクランプ力は、遠位先端204c、206c間の、約1mmの間隙で約1.9ポンドを超えないことが企図される。
【0030】
予期せぬことに、遠位先端204c、206cの最遠位縁214、216を鈍くすることによって(例えば、平面状及び/又は湾曲状で、組織を損傷し得る、いかなる鋭利な点も急な突起もない)、ジョー部材204、206は、それらの間に組織を効果的に把持することが依然として可能でありながら、把持されている健康な組織にいかなる損傷も引き起こさないという追加の利点も有することが判明している。従来の止血クリップは、組織に突き刺さるか、又は別様に組織を損傷する、尖った又は鋭い先端を有する。典型的な止血クリップは、処置後にも除去されない。むしろ、それらは組織上に残される。
【0031】
一部の態様では、
図6に示すように、遠位先端204c、206cの最遠位縁214、216は、平面状ではなく弓形であってもよく、及び/又はそれに沿って連続的な湾曲を有してもよい。例えば、遠位先端204c、206cの全長にわたって湾曲していてもよく、遠位先端204cの幅の約半分から約0.05mmの間の曲率半径を有してもよい。
【0032】
使用時には、第1の外科用クリップ100が取り付けられた第1の外科用器具10は、内視鏡(明示的には図示せず)の作業チャネルに挿入され、そこを通過する。一部の態様では、第1の外科用クリップ100は、内視鏡の作業チャネルを通過する導入器に受け入れられてもよい。内視鏡を通過した後、第1の外科用クリップ100は、内視鏡及び第1の外科用器具10の操作によって、標的胃腸組織に向けられる。
【0033】
第1の外科用クリップ100がシャフト12に連結され、かつジョー部材104、106が開放構成である状態では、第1の外科用クリップ100は、組織(例えば病変)に隣接して位置決めされる。組織は、ジョー部材104、106の間に位置決めされ、その後、外科器具10の牽引具が、ジョー部材104、106を近位方向に近位本体部102を通して後退させる。近位本体部102の内壁が、ジョー部材104、106に作用して、ジョー部材104、106を組織の周りで閉鎖構成になるように移動させる。組織がジョー部材104、106の間に把持された状態で、牽引具を更に後退させると、ジョー部材104、106から牽引具が外れて、第1の外科用クリップ100の近位本体部102をシャフト12から分離させて、第1の外科用クリップ100を手術部位に残す。シャフト12から第1の外科用クリップ100を分離させるための他の機構も想定される。
【0034】
第1の外科用クリップ100をシャフト12から分離させると、第1の外科用クリップ100の弾性部材108は、弾性部材108がシャフト12内に拘束される格納状態から、展開状態に移行することが可能になる。格納状態では、弾性部材108は、概ね直線状の形状をとり、展開状態では、弾性部材108は、その事前定義された弓形の形状になるように移動して、弾性部材108が、近位本体部102から外方向にたわむ。
【0035】
第2の外科用クリップ200が取り付けられた第2の外科用器具50は、内視鏡内に導入され、第2の外科用クリップ200の遠位端が見えるようになるまで、作業チャネルを通して前進させられ得る。第2の外科用クリップ200の第1のジョー部材204及び第2のジョー部材206が開かれる。次に、第2の外科用器具50又は内視鏡を操作して、第1の外科用クリップ100の弾性部材108を、第2の外科用クリップ200のジョー部材204、206で把持する。第1の外科用クリップ100の弾性部材108を、第2の外科用クリップ200のジョー部材204、206で保持しながら、弾性部材108が平らになり(例えば、格納状態に移行し)、組織に押し付けられるまで、第2の外科用器具50を、第1の外科用クリップ200から離れるように移動させる。弾性部材108を平らにすることによって、弾性部材108の外向きの付勢が、病変に取り付けられた第1の外科用クリップ100を持ち上げて、病変を組織壁から分離させる。組織壁からの病変の分離は、病変の切除術中に役立つ。第2の外科用クリップ200のジョー部材204、206は、第2の標的組織(例えば、健康な組織)の周囲で閉じられ、それによって、第2の外科用クリップ200は、健康な組織と第1の外科用クリップ100の弾性部材108とを同時に把持する。適切な位置決めが確認されると、第2の外科用クリップ200は、第2の外科用器具50の残りの部分から取り外される。
【0036】
システム1の使用が完了すると、鉗子又は他の利用可能な内視鏡ツールを用いて第2の外科用クリップ200を引っ張ることによって、第2の外科用クリップ200が、組織から分離され得る。第2の外科用クリップ200のジョー部材204、206の遠位先端204c、206cは鈍いので、第2の外科用クリップ200を引っ張ることでは、組織を裂くことも、あるいは別様に損傷することもない。第2の外科用クリップ200を組織から分離した後、第2の外科用クリップ200、第1の外科用クリップ100、及び切除された組織は、一緒にまとめられて、患者から取り除かれる。
【0037】
本明細書に開示される様々な態様は、説明及び添付図面に具体的に提示される組み合わせとは異なる組み合わせで組み合わせ得ることを理解されたい。また、実施例に応じて、本明細書に記載された任意のプロセス又は方法の特定の行為又は事象は、異なる順序で実行され得、追加、結合、又は完全に省略され得ることも理解されたい(例えば、全ての記載された行為又は事象が、技術を実行するために必要でない場合がある)。