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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250321BHJP
【FI】
H01L21/304 651
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023138194
(22)【出願日】2023-08-28
(65)【公開番号】P2025032737
(43)【公開日】2025-03-12
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】墨 周武
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-135942(JP,A)
【文献】特開2020-017618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記予備有機溶剤供給処理で使用する前記有機溶剤、前記置換処理で使用する前記有機 溶剤、および前記液盛り処理で使用する前記有機溶剤は同一種類である、基板処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記予備有機溶剤供給処理で使用する前記有機溶剤、前記置換処理で使用する前記有機 溶剤、および前記液盛り処理で使用する前記有機溶剤は、イソプロピルアルコール(IPA)である、基板処理方法。
【請求項6】
パターンが形成されたパターン形成面を有する基板を処理する基板処理システムであって、
前記パターン形成面への薬液の供給による前記基板の薬液処理、前記パターン形成面への有機溶剤の供給による予備有機溶剤供給処理、前記パターン形成面へのリンス液の供給によるリンス処理、前記パターン形成面への前記有機溶剤の供給による置換処理、および前記パターン形成面に前記有機溶剤を盛った液盛り状態を作り出す液盛り処理を、この順序で実行する湿式処理装置と、
前記液盛り状態の前記パターン形成面に超臨界状態の処理流体を接触させることで、前記基板を乾燥させる超臨界処理装置と、
前記液盛り状態のまま、前記湿式処理装置から前記基板を超臨界処理装置に搬送する基板搬送装置と、
を備えることを特徴とする基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理チャンバ内で基板を乾燥させる技術に関するものであり、特に液膜で覆われた基板を超臨界状態の処理流体で処理するプロセスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、表示装置用ガラス基板等の各種基板の処理工程には、基板の表面を各種の処理流体によって処理するものが含まれる。処理流体として薬液やリンス液などの液体を用いる湿式処理が従来から広く行われている。近年では、当該湿式処理後の基板を乾燥させるために、超臨界状態の処理流体を用いた処理も実用化されている。特に、微細パターンが形成されたパターン形成面を有する基板の乾燥処理においては、有益である。というのも、超臨界状態の処理流体は、液体に比べて表面張力が低く、パターンの隙間の奥まで入り込むという特性を有しているからである。当該処理流体を用いることで、効率よく乾燥処理を行うことが可能である。また、乾燥時において表面張力に起因するパターン倒壊の発生リスクを低減させることも可能である。
【0003】
例えば特許文献1に記載の基板処理システムでは、本発明の「湿式処理装置」の一例として基板現像装置が設けられている。この基板現像装置では、当該装置内での最終処理として、リンス液により濡れている基板に対し、本発明の「有機溶剤」の一例であるIPA(イソプロピルアルコール:isopropylalcohol)液が供給される。これにより、IPA置換が実行され、基板の表面からリンス液が除去される。また、基板の表面にIPA液を盛った液盛り状態が作り出される。つまり、IPA液を含む液膜がパドル状に形成される。その結果、基板の表面はIPA液で濡れた状態で維持される。そして、液盛り状態が維持されたまま基板は基板搬送装置により本発明の「超臨界処理装置」の一例に相当する基板乾燥装置に搬送され、超臨界状態の処理流体による乾燥処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-201302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板現像装置や基板洗浄装置などの湿式処理装置において、IPA置換によりリンス液などの液体がパターンの内部から完全に排出されるのが望ましい。しかしながら、パターンの内底面に液体が残留することがある。このように残留する液体(以下「残留液」という)を残したまま基板を基板乾燥装置(超臨界処理装置)に搬入し、超臨界乾燥処理を実行すると、次のような問題が発生することがある。つまり、液膜を構成する液体成分と超臨界状態の処理流体との置換が不完全になりやすい。そのため、それをカバーするために、処理流体の使用量を増大させるという対応策が考えられる。しかしながら、これはランニングコストの増大を招くとともに、大きな環境負荷を社会に与えてしまう。
【0006】
また、処理流体の使用量を増大させたとしても、パターンの内底面に残留液がそのまま残り、これがパターン倒壊の要因となることもあった。このため、残留液の存在が製品歩留まりの低下の主要因のひとつになっている。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、湿式処理を受けた基板の表面に有機溶剤を盛った状態の基板を湿式処理装置から超臨界処理装置に搬送し、超臨界状態の処理流体を用いて基板を乾燥させる基板処理システムにおいて、処理流体の消費量を削減して環境負荷を軽減しながら歩留まりの向上を図ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一の態様は、パターンが形成されたパターン形成面を有する基板を処理する基板処理方法であって、(a)湿式処理装置において、パターン形成面への薬液の供給による基板の薬液処理、パターン形成面への有機溶剤の供給による予備有機溶剤供給処理、パターン形成面へのリンス液の供給によるリンス処理、パターン形成面への有機溶剤の供給による置換処理、およびパターン形成面への有機溶剤の液盛り処理を、この順序で実行する工程と、(b)液盛り処理によりパターン形成面上において有機溶剤が液盛り状態となっているまま、湿式処理装置から基板を超臨界処理装置に搬送する工程と、(c)超臨界処理装置において、液盛り状態のパターン形成面に超臨界状態の処理流体を接触させることで、基板を乾燥させる工程と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、この発明の他の態様は、パターンが形成されたパターン形成面を有する基板を処理する基板処理システムであって、パターン形成面への薬液の供給による基板の薬液処理、パターン形成面への有機溶剤の供給による予備有機溶剤供給処理、パターン形成面へのリンス液の供給によるリンス処理、パターン形成面への有機溶剤の供給による置換処理、およびパターン形成面に有機溶剤を盛った液盛り状態を作り出す液盛り処理を、この順序で実行する湿式処理装置と、液盛り状態のパターン形成面に超臨界状態の処理流体を接触させることで、基板を乾燥させる超臨界処理装置と、液盛り状態のまま、湿式処理装置から基板を超臨界処理装置に搬送する基板搬送装置と、を備えることを特徴としている。
【0010】
従来では、湿式処理装置において、パターン形成面への薬液の供給により薬液処理が実行された後で、リンス処理、置換処理および液盛り処理がこの順序で実行されていた。このため、パターンの内底面にリンス液が残留することがあった。この残留液が処理流体の消費増大や製品の歩留まり低下を招く要因となる。そこで、本発明では、薬液処理とリンス処理との間で、予備有機溶剤供給処理が実行される。このため、パターン内にリンス液が残留したとしても、リンス液の残留位置はパターンの内底面ではなく、後で説明する図7(b)に示すように、鉛直方向において2種類の液層に挟まれた位置となる。この2種類のうち鉛直下方側の液層は、予備有機溶剤供給処理で使用された有機溶剤の層または当該有機溶剤とリンス液との混合層である。もう一方の液層は置換処理で使用された有機溶 の層または当該有機溶剤とリンス液との混合層である。したがって、液盛り状態の基板が超臨界処理装置に搬送され、超臨界状態の処理流体を接触するまでに残留液を構成するリンス液は鉛直方向に隣接する2つの液層との間で相互拡散され、有機溶剤に混合される。その結果、パターンの内底面での残留液が存在しない状態、いわゆる残留液フリーで、超臨界状態の処理流体による乾燥処理が実行される。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、本発明によれば、残留液フリーで超臨界乾燥処理を実行することができる。その結果、処理流体の消費量を削減しながら歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る基板処理システムの第1実施形態の概略構成を示す図である。
図2A】湿式処理装置の全体構成を示す側面図である。
図2B】湿式処理装置の動作を説明するための図である。
図3】チャックピンの構成および動作を模式的に示す図である。
図4】超臨界処理装置の構成を示す側面図である。
図5】支持トレイの構造を示す斜視図である。
図6】第1実施形態に係る基板処理システムにより実行される処理の概要を示すフローチャートである。
図7】予備有機溶剤供給処理の有無に起因する液膜構成の違いを模式的に示す図である。
図8】処理チャンバ内の圧力変化を示す図である。
図9】本発明に係る基板処理システムの第2実施形態の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る基板処理システムの第1実施形態の概略構成を示す図である。この基板処理システム1は、例えば半導体ウエハなどの各種基板の表面に処理液を供給して基板を湿式処理し、その後に基板を乾燥させるための処理システムであり、本発明に係る基板処理方法を実施するのに好適なシステム構成を有している。基板処理システム1は、その主要構成として、湿式処理装置2、基板搬送装置3、超臨界処理装置4および制御装置9を備えている。
【0014】
湿式処理装置2は、被処理基板を受け入れて所定の湿式処理を実行する。処理の内容は特に限定されない。湿式処理には、上記従来装置で実行される薬液による現像処理や基板を洗浄する洗浄処理などが含まれるが、基板のパターン形成面にIPA液などの有機溶剤を盛った液盛り状態が作り出される。基板搬送装置3は、液盛り状態が維持されたまま基板を湿式処理装置2から搬出して搬送し、超臨界処理装置4に搬入する。超臨界処理装置4は、搬入された基板に対し超臨界状態の処理流体を用いた乾燥処理(超臨界乾燥処理)を実行する。これらはクリーンルーム内に設置される。したがって、基板搬送装置3は大気雰囲気、大気圧下で基板Sを搬送することとなる。
【0015】
制御装置9は、これらの各装置の動作を制御して所定の処理を実現する。この目的のために、制御装置9は、CPU91、メモリ92、ストレージ93、およびインターフェース94などを備えている。CPU91は、各種の制御プログラムを実行する。メモリ92は、処理データを一時的に記憶する。ストレージ93は、CPU91が実行する制御プログラムを記憶する。インターフェース94は、ユーザや外部装置と情報交換を行う。後述する装置の動作は、CPU91が予めストレージ93に書き込まれた制御プログラムを実行し、装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0016】
CPU91が所定の制御プログラムを実行することにより、制御装置9には、湿式処理装置2の動作を制御する湿式処理制御部95、基板搬送装置3の動作を制御する搬送制御部96、超臨界処理装置4の動作を制御する超臨界処理制御部97などの機能ブロックがソフトウェア的に実現される。なお、これらの機能ブロックの各々は、その少なくとも一部が専用ハードウェアにより構成されてもよい。
【0017】
本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として円盤状の半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明する。しかしながら、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。また基板の形状についても各種のものを適用可能である。
【0018】
また、以下の説明において、一方主面のみにパターンが形成されている基板を例として用いる。ここで、パターン等が形成されている主面の側を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた基板の主面を「下面」と称し、上方に向けられた基板の主面を「上面」と称する。尚、以下においては上面を表面として説明する。
【0019】
図2Aおよび図2Bは湿式処理装置の構成例を示す図である。より具体的には、図2Aは湿式処理装置の全体構成を示す側面図であり、図2Bは湿式処理装置の動作を説明するための図である。この湿式処理装置2は、基板Sの表面に処理液を供給して基板を処理する装置である。湿式処理装置2の動作は、制御装置9の湿式処理制御部95により制御される。
【0020】
湿式処理装置2は、基板Sの表面(パターン形成面)Saに処理液を供給し、後で詳述する各種処理(薬液処理、予備有機溶剤供給処理、リンス処理、置換処理および液膜形成処理など)を行う。この目的のために、湿式処理装置2は、処理チャンバ200の内部に、基板保持部21、スプラッシュガード22、処理液供給部23,24を備えている。これらの動作は制御装置9に設けられる湿式処理制御部95より制御される。基板保持部21は、基板Sとほぼ同等の直径を有する円板状のスピンチャック211を有し、スピンチャック211の周縁部には複数のチャックピン212が設けられている。
【0021】
図3はチャックピンの構成および動作を模式的に示す図であり、同図(a)はチャック状態(挟み込み状態)のチャックピンを示し、同図(b)は非チャック状態(開放状態)のチャックピンを示している。図示を省略しているが、本実施形態では、12個のチャックピン212がスピンチャック211の回転軸線AXを中心として放射状に設けられている。各チャックピン212は、スピンチャック211の周縁部の上面において、径方向Dに移動自在に配置されている。ここでいう「径方向D」とは、回転軸線AXとチャックピン212とを結んだ仮想線の長手方向を意味している。
【0022】
複数のチャックピン212はいずれも同一の構成を有している。したがって、以下においては、一のチャックピン212の構成について説明し、その他のチャックピン212の各部については、同一符号を付して説明を省略する。チャックピン212は、図3に示すように、チャック当接面212aを有している。このチャック当接面212aは、スピンチャック211の周縁部の上面を径方向Dに沿って移動可能となっている。チャックピン212では、チャック当接面212aの上方に下側当接面212bが設けられている。下側当接面212bは回転軸線AX側に向かう方向(+D)に進むにしたがって下方に傾斜している。この下側当接面212bの(-D)方向側の端部から湾曲当接面212cが上方に設けられている。この湾曲当接面212cは、回転軸線AX側を向く曲面に仕上げられている。さらに、湾曲当接面212cの上方端から上側当接面212dが上方に延設されている。この上側当接面212dは、回転軸線AX側に向かう方向(+D)に進むにしたがって上方に傾斜している。より詳しくは、図3に示すように、湾曲当接面212cは、上側当接面212dと下側当接面212bとの間に配置された状態で、上側当接面212dと下側当接面212bとに直接的に連続している。したがって、上側当接面212d、湾曲当接面212cおよび下側当接面212bが繋がって基板Sと当接する基板当接部位212eを径方向Dと直交する水平方向から見ると、基板当接部位212eは略C字形状を有している。つまり、チャックピン212は、基板当接部位212eを回転軸線AXに向けた状態で、径方向Dに沿って往復移動可能となっている。
【0023】
チャックピン212はチャック駆動部215と接続されている。チャック駆動部215は、湿式処理制御部95からの指令に応じて、チャックピン212を径方向Dに移動させる。例えば基板搬送装置3との間で基板Sの受渡しを行う際には、図3(b)に示すように、チャック駆動部215はチャックピン212を方向(-D)に移動させ、非チャック位置に位置決めする。このとき、湾曲当接面212cおよび上側当接面212dは回転軸線AXから基板Sの半径よりも若干離れている。一方、下側当接面212bは基板Sの下方に位置している。したがって、基板Sは、同図(b)に示すように、下側当接面212bのみで、しかも下側当接面212bのうち湾曲当接面212cから(+D)方向側に離れた位置で支持される。
【0024】
一方、基板Sをチャックする際には、図3(a)に示すように、チャック駆動部215はチャックピン212を方向(+D)に移動させ、チャック位置に位置決めする。このようにチャックピン212を非チャック位置からチャック位置に移動させることで、下側当接面212bでの基板Sの支持位置が(-D)方向にシフトする。このチャックピン212のチャック位置への移動が完了すると、基板Sが下側当接面212b、湾曲当接面212cおよび上側当接面212dで支持される。つまり、基板チャックが完了する。
【0025】
基板Sのチャックを開放する際には、上記とは逆の手順でチャックピン212が移動するとともに、下側当接面212bでの基板Sの支持位置が(+D)方向にシフトする。
【0026】
また、下側当接面212bでの基板Sの支持位置が径方向Dに移動することで、鉛直方向Zにおける基板Sの高さ位置が距離dzだけ変位する。したがって、湿式処理制御部95がチャック駆動部215に往復移動指令を与えると、チャックピン212が径方向Dに往復移動するとともに、それに同期して基板Sの昇降が繰り返される。つまり、基板Sに対して上下方向の振動を与えることが可能となっている。なお、本実施形態では、振動付与が可能なチャックピン212を用いているが、振動付与機能を有しない従前のチャックピンを用いてもよい。
【0027】
図2Aおよび図2Bに戻って、湿式処理装置2の構成説明を続ける。スピンチャック211はその下面中央部から下向きに延びる回転支軸213により上面が水平となるように支持されている。回転支軸213は処理チャンバ200の底部に取り付けられた回転機構214により回転自在に支持されている。回転機構214は図示しない回転モータを内蔵しており、制御装置9からの制御指令に応じて回転モータが回転することで、回転支軸213に直結されたスピンチャック211が1点鎖線で示す回転軸線AXまわりに回転する。図2においては上下方向が鉛直方向である。これにより、基板Sが水平姿勢のまま回転軸線AXまわりに回転される。
【0028】
基板保持部21を側方から取り囲むように、スプラッシュガード22が設けられる。スプラッシュガード22は、スピンチャック211の周縁部を覆うように設けられた概略筒状のカップ221と、カップ221の外周部の下方に設けられた液受け部222とを有している。カップ221は制御装置9からの制御指令に応じて昇降する。カップ221は、図2Aに示すようにカップ221の上端部がスピンチャック211に保持された基板Sの周縁部よりも下方まで下降した下方位置と、図2Bに示すようにカップ221の上端部が基板Sの周縁部よりも上方に位置する上方位置との間で昇降移動する。
【0029】
カップ221が下方位置にあるときには、図2Aに示すように、スピンチャック211に保持される基板Sがカップ221外に露出した状態になっている。このため、例えばスピンチャック211への基板Sの搬入および搬出時にカップ221が障害となることが防止される。
【0030】
また、カップ221が上方位置にあるときには、図2Bに示すように、スピンチャック211に保持される基板Sの周縁部を取り囲むことになる。これにより、後述する液供給時に基板Sの周縁部から振り切られる処理液が処理チャンバ200内に飛散することが防止され、処理液を確実に回収することが可能となる。すなわち、基板Sが回転することで基板Sの周縁部から振り切られる処理液の液滴はカップ221の内壁に付着して下方へ流下し、カップ221の下方に配置された液受け部222により集められて回収される。複数の処理液を個別に回収するために、複数段のカップが同心に設けられてもよい。
【0031】
処理液供給部23は、処理チャンバ200に固定されたベース231に対し回動自在に設けられた回動支軸232から水平に伸びるアーム233の先端にノズル234が取り付けられた構造を有している。回動支軸232が制御装置9からの制御指令に応じて回動することによりアーム233が揺動し、アーム233先端のノズル234が、図2Aに示すように基板Sの上方から側方へ退避した退避位置と、図2Bに示すように基板S上方の処理位置との間を移動する。
【0032】
ノズル234は処理液供給源238に接続されており、処理液供給源238から適宜の処理液が送出されると、ノズル234から基板Sに向けて処理液が吐出される。図2Bに示すように、スピンチャック211が比較的低速で回転することで基板Sを回転させながら、基板Sの回転中心の上方に位置決めされたノズル234から処理液L1を供給することで、基板Sの表面Saが処理液L1により処理される。処理液L1としては、薬液(現像液、エッチング液、洗浄液など)およびリンス液等の各種の機能を有する液体を用いることができ、その組成は任意である。また複数種の処理液が組み合わされて処理が実行されてもよい。
【0033】
もう1組の処理液供給部24も、上記した第1の処理液供給部23と対応する構成を有している。すなわち、第2の処理液供給部24は、ベース241、回動支軸242、アーム243、ノズル244等を有しており、これらの構成は、第1の処理液供給部23において対応するものと同等である。回動支軸242が制御装置9からの制御指令に応じて回動することによりアーム243が揺動する。アーム243先端のノズル244は、基板Sの表面Saに対して処理液を供給する。
【0034】
この実施形態において、第2の処理液供給部24は、予備有機溶剤供給処理、置換処理および液膜形成処理を実施する目的に使用される。すなわち、湿式処理後の基板Sは超臨界処理装置4に搬送されて超臨界乾燥処理を受けるが、搬送の間に基板Sの表面が露出して酸化したり、表面に形成された微細パターンが倒壊したりするのを防止するために、基板Sは表面がパドル状液膜で覆われた状態で搬送される。
【0035】
液膜を構成する液体としては、薬液処理に用いられる処理液の主成分である水よりも表面張力の小さい物質、例えばイソプロピルアルコール(IPA)またはアセトンなどの 機溶剤が用いられる。当該有機溶剤は有機溶剤供給源248から供給される。
【0036】
また、本実施形態では、当該有機溶剤は、単に液膜形成処理時のみならず、予備有機溶 供給処理時にも第2の処理液供給部24から基板Sに供給される。この目的を残留液の除去を目的とするものであり、その詳細については、後で図6および図7を参照しつつ詳述する。
【0037】
ここでは、湿式処理装置2に2組の処理液供給部が設けられているが、処理液供給部の設置数やその構造、機能についてはこれに限定されるものではない。例えば、処理液供給部は1組のみであってもよく、また3組以上設けられてもよい。また、1つの処理液供給部が複数のノズルを備えてもよい。例えば1つのアームの先端に複数のノズルが設けられてもよい。また、上記のようにノズルが所定の位置に位置決めされた状態で処理液を吐出する態様のみでなく、例えば基板Sの表面Saに沿ってノズルが走査移動しながら処理液を吐出する態様が含まれてもよい。
【0038】
図1に戻って、説明を続ける。基板搬送装置3には、伸縮・回動自在のアームの先端にハンド31が設けられた搬送ロボット30が設けられる。ハンド31は基板Sの裏面に部分的に当接することで基板を支持可能であり、図1に点線で示すように、湿式処理装置2および超臨界処理装置4の双方に対し進退移動自在となっている。これにより、湿式処理装置2および超臨界処理装置4のそれぞれに対して、基板の搬入および搬出を行うことができる。搬送ロボット30の動作は制御装置9の搬送制御部96により制御される。この種の搬送ロボットとしては多くの公知技術があり、本実施形態でもそれらを適宜選択して用いることができるので、詳しい説明を省略する。
【0039】
図4は超臨界処理装置の構成を示す側面図である。超臨界処理装置4は、湿式処理後の基板Sに対し超臨界状態の処理流体を用いた乾燥処理を施す装置である。より具体的には、超臨界処理装置4は、湿式処理後の基板Sを受け入れて、超臨界状態の処理流体によって基板Sに残留する液体を置換した後、処理流体を排出することで、最終的に基板Sを乾燥状態に至らせるための装置である。
【0040】
超臨界処理装置4は、処理ユニット41、移載ユニット43および供給ユニット45を備えている。処理ユニット41は、超臨界乾燥処理の実行主体となるものである。移載ユニット43は、基板搬送装置3により搬送されてくる湿式処理後の基板Sを受け取って処理ユニット41に搬入し、また処理後の基板Sを処理ユニット41から外部の搬送装置に受け渡す。供給ユニット45は、処理に必要な化学物質、動力およびエネルギー等を、処理ユニット41および移載ユニット43に供給する。これらの動作は制御装置9、特に超臨界処理制御部97により制御される。
【0041】
処理ユニット41は、台座411の上に処理チャンバ412が取り付けられた構造を有している。処理チャンバ412は、いくつかの金属ブロックの組み合わせにより構成され、その内部が空洞となって処理空間SPを構成している。処理対象の基板Sは処理空間SP内に搬入されて処理を受ける。処理チャンバ412の(-Y)側側面には、X方向に細長く延びるスリット状の開口421が形成されている。開口421を介して、処理空間SPと外部空間とが連通している。処理空間SPの断面形状は、開口421の開口形状と概ね同じである。すなわち、処理空間SPはX方向に長くZ方向に短い断面形状を有し、Y方向に延びる空洞である。
【0042】
処理チャンバ412の(-Y)側側面には、開口421を閉塞するように蓋部材413が設けられている。蓋部材413が処理チャンバ412の開口421を閉塞することにより、気密性の処理容器が構成される。これにより、内部の処理空間SPで基板Sに対する高圧下での処理が可能となる。蓋部材413の(+Y)側側面には平板状の支持トレイ415が水平姿勢で取り付けられている。支持トレイ415の上面は、基板Sを載置可能な支持面となっている。蓋部材413は図示を省略する支持機構により、Y方向に水平移動自在に支持されている。
【0043】
蓋部材413は、供給ユニット45に設けられた進退機構453により、処理チャンバ412に対して進退移動可能となっている。具体的には、進退機構453は、例えばリニアモータ、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダ等の直動機構を有している。このような直動機構が蓋部材413をY方向に移動させる。進退機構453は制御装置9からの制御指令に応じて動作する。
【0044】
蓋部材413が(-Y)方向に移動することにより処理チャンバ412から離間し、点線で示すように支持トレイ415が処理空間SPから開口421を介して外部へ引き出されると、支持トレイ415へのアクセスが可能となる。すなわち、支持トレイ415への基板Sの載置、および支持トレイ415に載置されている基板Sの取り出しが可能となる。一方、蓋部材413が(+Y)方向に移動することにより、支持トレイ415は処理空間SP内へ収容される。支持トレイ415に基板Sが載置されている場合、基板Sは支持トレイ415とともに処理空間SPに搬入される。
【0045】
図5は支持トレイの構造を示す斜視図である。支持トレイ415は、トレイ部材416と、複数の支持ピン417とを有している。トレイ部材416は、例えば平板状の構造体の水平かつ平坦な上面に、基板Sの平面サイズに対応した、より具体的には円形の基板Sの直径より僅かに大きい直径を有する窪み418を設けた構造を有している。
【0046】
窪み418は部分的にトレイ部材416の側面まで延びている。つまり、窪み418の側壁面は円形ではなく、部分的に切り欠かれている。このため、この切り欠き部分では、窪み418の底面418aの一部は直接側面に接続している。この例では、支持トレイ415のX側両端部および(+Y)側端部にこのような切り欠き部分が設けられており、これらの部位において、底面418aが側面に直接接続している。
【0047】
また、底面418aのうち移載ユニット43のリフトピン437に対応する位置には、リフトピン437を挿通させるための貫通孔419が穿設されている。貫通孔419を通ってリフトピン437が昇降することで、基板Sが窪み418に収容された状態と、これより上方へ持ち上げられた状態とが実現される。
【0048】
窪み418の周縁部には複数の支持ピン417が配置されている。支持ピン417の配設数は任意であるが、基板Sを安定的に支持するという点からは3以上であることが望ましい。本実施形態では、3つの支持ピン417が、上方からの平面視で底面418aを取り囲むように、トレイ部材416に取り付けられている。図5中の部分拡大図に示すように、支持ピン417は高さ規制部位417aと水平位置規制部位417bとを有している。
【0049】
高さ規制部位417aは、上面が平坦となっており、基板Sの裏面の周縁部に当接することで、基板Sを支持するとともにその鉛直方向Zにおける位置(以下「高さ位置」という)を規制する。一方、水平位置規制部位417bは、高さ規制部位417aの上端よりも上方まで延びており、基板Sの側面に当接することで、基板Sの水平方向(XY方向)における位置を規制する。このような支持ピン417により、基板Sは窪み418の底面418aと対向しながら底面418aから上方に離間した水平姿勢で支持される。
【0050】
蓋部材413が(+Y)方向に移動し開口421を塞ぐことにより、処理空間SPが密閉される。蓋部材413の(+Y)側側面と処理チャンバ412の(-Y)側側面との間にはシール部材422が設けられ、処理空間SPの気密状態が保持される。シール部材422は例えばゴム製である。また、図示しないロック機構により、蓋部材413は処理チャンバ412に対して固定される。このように、この実施形態では、蓋部材413は、開口421を閉塞して処理空間SPを密閉する閉塞状態(実線)と、開口421から大きく離間して基板Sの出し入れが可能となる離間状態(点線)との間で切り替えられる。
【0051】
処理空間SPの気密状態が確保された状態で、処理空間SP内で基板Sに対する処理が実行される。この実施形態では、供給ユニット45に設けられた流体供給部457が、処理流体として、超臨界処理に利用可能な物質の処理流体、例えば二酸化炭素を送出し、さらに処理流体を処理チャンバ412内で加圧することで超臨界状態に至らせる。処理流体は気体または液体の状態で処理ユニット41に供給される。二酸化炭素は、比較的低温、低圧で超臨界状態となり、また基板処理に多用される有機溶剤をよく溶かす性質を有するという点で、超臨界乾燥処理に好適な化学物質である。二酸化炭素が超臨界状態となる臨界点は、気圧(臨界圧力)が7.38MPa、温度(臨界温度)が31.1℃である。
【0052】
処理流体が処理空間SPに充填され、処理空間SP内が適当な温度および圧力に到達すると、処理空間SPは超臨界状態の処理流体で満たされる。こうして基板Sが処理チャンバ412内で超臨界状態の処理流体により処理される。供給ユニット45には流体回収部455が設けられており、処理後の流体は流体回収部455により回収される。流体供給部457および流体回収部455は、超臨界処理制御部97により制御されている。
【0053】
処理空間SPは、支持トレイ415およびこれに支持される基板Sを受け入れ可能な形状および容積を有している。すなわち、処理空間SPは、水平方向には支持トレイ415の幅よりも広く、鉛直方向には支持トレイ415と基板Sとを合わせた高さよりも大きい概略矩形の断面形状と、支持トレイ415を受け入れ可能な奥行きとを有している。このように処理空間SPは支持トレイ415および基板Sを受け入れるだけの形状および容積を有している。ただし、支持トレイ415および基板Sと、処理空間SPの内壁面との間の隙間は僅かである。したがって、処理空間SPを充填するために必要な処理流体の量は比較的少なくて済む。
【0054】
流体供給部457は、基板Sの(+Y)側端部よりもさらに(+Y)側で、処理空間SPに対して処理流体を供給する。一方、流体回収部55は、基板Sの(-Y)側端部よりもさらに(-Y)側で、処理空間SPのうち基板Sよりも上方の空間および支持トレイ415よりも下方の空間を流通してくる処理流体を排出する。これにより、処理空間SP内では、基板Sの上方と支持トレイ415の下方とのそれぞれに、(+Y)側から(-Y)側に向かう処理流体の層流が形成されることになる。
【0055】
制御装置9の超臨界処理制御部97は、図示しない検出部の検出結果に基づいて処理空間SP内の圧力および温度を特定し、その結果に基づき流体供給部457および流体回収部455を制御する。これにより、処理空間SPへの処理流体の供給および処理空間SPからの処理流体の排出が適切に管理され、処理空間SP内の圧力および温度が予め定められた処理レシピに応じて調整される。
【0056】
移載ユニット43は、基板搬送装置3と支持トレイ415との間における基板Sの受け渡しを担う。この目的のために、移載ユニット43は、本体431と、昇降部材433と、ベース部材435と、複数のリフトピン437とを備えている。昇降部材433はZ方向に延びる柱状の部材であり、図示しない支持機構により、本体431に対してZ方向に移動自在に支持されている。昇降部材433の上部には、略水平の上面を有するベース部材435が取り付けられている。ベース部材435の上面から上向きに、複数のリフトピン437が立設されている。リフトピン437の各々は、その上端部が基板Sの裏面に当接することで基板Sを下方から水平姿勢に支持する。基板Sを水平姿勢で安定的に支持するために、上端部の高さが互いに等しい3以上のリフトピン437が設けられることが望ましい。
【0057】
昇降部材433は、供給ユニット45に設けられた昇降機構451により昇降移動可能となっている。具体的には、昇降機構451は、例えばリニアモータ、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダ等の直動機構を有しており、このような直動機構が昇降部材433をZ方向に移動させる。昇降機構451は制御装置9からの制御指令に応じて動作する。
【0058】
昇降部材433の昇降によりベース部材435が上下動し、これと一体的に複数のリフトピン437が上下動する。これにより、移載ユニット43と支持トレイ415との間での基板Sの受け渡しが実現される。より具体的には、図5に点線で示すように、支持トレイ415がチャンバ外へ引き出された状態で基板Sが受け渡される。この目的のために、支持トレイ415にはリフトピン437を挿通させるための貫通孔419が設けられている。ベース部材435が上昇すると、リフトピン437の上端は貫通孔419を通して支持トレイ415の上面よりも上方に到達する。この状態で、搬送ロボット30により搬送されてくる基板Sが、搬送ロボット30のハンド31からリフトピン437に受け渡される。リフトピン437が下降することにより、基板Sはリフトピン437から支持トレイ415へ受け渡される。基板Sの搬出は、上記と逆の手順により行うことができる。
【0059】
図6は第1実施形態に係る基板処理システムにより実行される処理の概要を示すフローチャートである。この基板処理システム1は、処理対象の基板Sを受け入れて、薬液、リンス液および有機溶剤などの処理液を用いた湿式処理、湿式処理済の基板Sを湿式処理装置2から超臨界処理装置4に搬送する搬送処理および超臨界処理流体を用いた超臨界乾燥処理を順番に実行する。具体的には、処理対象の基板Sが基板処理システム1を構成する湿式処理装置2に収容される(ステップS10)と、湿式処理(ステップS20)、搬送処理(ステップS30)および超臨界乾燥処理(ステップS40)がこの順序で実行される。
【0060】
ここで、基板Sの搬入は、外部の搬送装置により直接行われてもよく、また外部の搬送装置から搬送ロボット30を介して搬入される態様でもよい。
【0061】
湿式処理装置2は、所定の処理液を用いて基板Sに対し湿式処理を施す(ステップS20)。本実施形態では、従来の薬液処理(ステップS21)、リンス処理(ステップS23)、置換処理(ステップS24)および液膜形成処理(ステップS25)に加え、上記有機溶剤を供給する予備有機溶剤供給処理(ステップS22)が実行される。予備有機溶 供給処理は薬液処理とリンス処理との間で実行される。つまり、湿式処理では、ステップS21で現像液や洗浄液などの薬液を供給して所定の薬液処理を行った後に、例えばIPAやアセトンなどの有機溶剤が基板Sの表面Saに供給される(ステップS22)。それに続いて、DIW(脱イオン水:De-ionized water)などのリンス液が基板Sの表面Saに供給され、さらに例えばIPAなどの有機溶剤を基板Sに供給することで、基板Sの表面Saに付着しているリンス液が有機溶剤に置換される(ステップS24)とともに、有機溶剤を盛った液盛り状態が作り出される。つまり、液膜LFが基板Sの表面Saに形成される(ステップS25:液膜形成処理)。
【0062】
ここでは、液膜形成処理および予備有機溶剤供給処理の技術的意義について、図7を参照しつつ説明する。図7は予備有機溶剤供給処理の有無に起因する液膜構成の違いを模式的に示す図であり、同図の(a)欄は予備有機溶剤供給処理を実行しない従来技術を示し、(b)欄は予備有機溶剤供給処理を実行した実施形態を示している。例えば図7に示すように、基板Sの表面Saに形成されたパターンPTの内部にDIWが存在すると、DIWの表面張力によってパターンPTの倒壊が生じるおそれがある。また、不完全な乾燥によって基板Sの表面Saにウォーターマークが残留する場合がある。さらに、基板Sの表面Saが外気に触れることで酸化等の変質を生じる場合がある。このような問題を未然に回避するために、基板Sの表面Saを、有機溶剤で覆っている。有機溶剤としては、DIWより表面張力が低く、かつ基板Sに対する腐食性が低い液体、例えばIPAやアセトン等のDIWに対して相溶性を有するものを用いるのが好適である。以下においては、リンス液としてDIWを用いるとともに、有機溶剤としてIPAを用いたケースについて説明する。
【0063】
ここで、IPAへの置換が良好に行われると、液膜LFはIPAのみ、あるいはIPAとDIWとの混合物で構成される。この場合、パターンPTの内底面にDIWが残留することはない。しかしながら、現実には、従来例においては図7(a)に示すように、パターンPTの内底面に残留液(DIW)が残留することがある。この残留液の比重は有機溶 のそれよりも重く、パターンPTの内底面に残り易い。
【0064】
そこで、本実施形態では、薬液処理(ステップS21)とリンス処理(ステップS22)との間でIPAを基板Sの表面Saに供給している。これにより、パターンPT内では、その内底面側から順に、以下の5つの液層LL1~LL5、
液層LL1=予備有機溶剤供給処理で使用されたIPAにより構成されるIPA層、
液層LL2=予備有機溶剤供給処理で使用されたIPAとDIWとの混合層、
液層LL3=DIWで構成される残留液の層、
液層LL4=置換処理で使用されたIPAとDIWとの混合層、
液層LL5=置換処理で使用されたIPAにより構成されるIPA層、
が積層されている。なお、液層LL5には、液膜形成処理で使用されたIPAが一部含まれることもある。
【0065】
このように、パターンPT内の液層LL3、つまり残留液(DIW)はIPAを含む液層LL2、LL4で挟まれた状態で存在している。残留液を構成するDIWは、次に説明するように基板搬送装置3により超臨界処理装置4に搬送される間に液層LL2、LL4との間で相互拡散する。その結果、残留液のみで構成されていた液層LL3は除去される。こうして、基板Sの表面Saに残留液フリーの液膜LFが形成される。そして、液盛り状態のまま、基板搬送装置3により、湿式処理装置2から超臨界処理装置4に搬送される(ステップS30)。
【0066】
超臨界処理装置4に搬送されてきた基板Sは、液盛り状態にまま、処理チャンバ412に収容される。具体的には、基板Sはパターン形成面(表面Sa)を上面にして、しかも該パターン形成面が薄い液膜LFに覆われた状態で搬送されてくる。図4に点線で示すように、蓋部材413が(-Y)側へ移動し支持トレイ415が引き出された状態で、リフトピン437が上昇する。搬送装置は基板Sをリフトピン437へ受け渡す。リフトピン437が下降することで、基板Sは支持トレイ415に載置される。支持トレイ415および蓋部材413が一体的に(+Y)方向に移動すると、基板Sを支持する支持トレイ415が処理チャンバ412内の処理空間SPに収容されるとともに、開口421が蓋部材413により閉塞される。
【0067】
この状態で、処理流体としての二酸化炭素が、気相の状態で処理空間SPに導入される(ステップS41)。基板Sの搬入時に処理空間SPには外気が侵入するが、気相の処理流体を導入することで、これを置換することができる。さらに気相の処理流体を注入することで、処理チャンバ412内の圧力が上昇する。
【0068】
なお、処理流体の導入過程において、処理空間SPからの処理流体の排出は継続的に行われる。すなわち、流体供給部457により処理流体が導入されている間にも、流体回収部455による処理空間SPからの処理流体の排出が実行されている。これにより、処理に供された処理流体が処理空間SPに滞留することなく排出され、処理流体中に取り込まれた残留物などの不純物が基板Sに再付着することが防止される。
【0069】
処理流体の供給量が排出量よりも多ければ、処理空間SPにおける処理流体の密度が上昇しチャンバ内圧が上昇する。逆に、処理流体の供給量が排出量よりも少なければ、処理空間SPにおける処理流体の密度は低下しチャンバ内は減圧される。このような処理流体の処理チャンバ412への供給および処理チャンバ12からの排出については、予め作成された給排レシピに基づいて行われる。すなわち、制御装置9が給排レシピに基づき流体供給部457および流体回収部455を制御することによって、処理流体の供給・排出タイミングやその流量等が調整される。
【0070】
図8は処理チャンバ内の圧力変化を示す図である。処理流体が二酸化炭素である場合、その臨界温度は室温とあまり変わらないため、処理中の温度変化もさほど大きくない。ここで、より変化が顕著であるチャンバ内圧力に着目して現象を説明する。処理空間SPが大気開放され内部の気圧が大気圧Paである状態から、処理空間SPが密閉された後の時刻T1に処理流体の導入が開始され、内部の圧力は上昇し始める。
【0071】
処理空間SP内で処理流体の圧力が上昇し臨界圧力Pcを超過するまで(ステップS42)、加圧は継続される。チャンバ内が臨界圧力Pcに到達する時刻T2において、処理流体はチャンバ内で超臨界状態となる。すなわち、処理空間SP内での相変化により、処理流体が気相から超臨界状態に遷移する。処理空間SPが超臨界状態の処理流体で満たされることで、基板Sを覆うIPA(あるいはIPAとDIWの混合流体)が超臨界状態の処理流体により置換される。基板Sの表面から遊離したIPA等は処理流体に溶け込んだ状態で処理流体と共に処理チャンバ412から排出され、基板Sから除去される。すなわち、超臨界状態の処理流体は、基板Sに付着するIPA(あるいはIPAとDIWの混合流体)を置換対象液としてこれを置換し、処理チャンバ412外へ排出する機能を有する。
【0072】
処理流体が確実に超臨界状態に遷移している時刻T3以降、処理空間SPが超臨界状態の処理流体で満たされた状態を所定時間継続することで(ステップS43、S44)、基板Sに付着していた置換対象液を完全に置換しチャンバ外へ排出することができる。なお、図8では超臨界状態でのチャンバ内圧力Pmを一定として示しているが、臨界圧力Pc以下とならない範囲で圧力の変動があってもよい。
【0073】
時刻T4において、処理チャンバ412内での超臨界状態の処理流体による置換対象液の置換が終了すると(ステップS44で「YES」)、処理空間SP内の処理流体を排出して基板Sを乾燥させる。具体的には、処理空間SPからの流体の排出量を増大させることで、超臨界状態の処理流体で満たされた処理チャンバ12内を減圧する(ステップS45)。
【0074】
減圧プロセスにおいて、処理流体の供給は停止されてもよく、また少量の処理流体が継続して供給される態様でもよい。処理空間SPが超臨界状態の処理流体で満たされた状態から減圧されることで、処理流体は超臨界状態から相変化して気相となる。気化した処理流体を外部へ排出することで、基板Sは乾燥状態となる。このとき、急激な温度低下により固相および液相を生じることがないように、減圧速度が調整される。すなわち、時刻T4において減圧を開始した後、圧力が臨界圧力Pcを確実に下回る時刻T5までは、比較的低い減圧速度で減圧が実行される。これにより、処理空間SP内の処理流体は超臨界状態から直接気化して外部へ排出される。
【0075】
処理流体が完全に気化した時刻T5以降は減圧速度が高められ、これにより短時間で大気圧Paまで減圧することができる。こうすることで、減圧が開始される時刻T4からチャンバ内が大気圧Paまで低下する時刻T6までの期間の全てにおいて、処理流体が液化することはなく、乾燥後の表面が露出した基板Sに気液界面が形成されることは回避される。
【0076】
このように、この実施形態の超臨界乾燥処理では、処理空間SPを超臨界状態の処理流体で満たした後、気相に相変化させて排出することにより、基板Sに付着する液体を効率よく置換し、基板Sへの残留を防止することができる。しかも、不純物の付着による基板の汚染やパターン倒壊等、気液界面の形成に起因して生じる問題を回避しつつ基板を乾燥させることができる。
【0077】
処理後の基板Sは後工程へ払い出される(ステップS50)。すなわち、蓋部材413が(-Y)方向へ移動することで支持トレイ415が処理チャンバ412から外部へ引き出され、移載ユニット43を介して外部の搬送装置へ基板Sが受け渡される。このとき、基板Sは乾燥した状態となっている。後工程の内容は任意である。こうして1枚の基板Sに対する処理が完結する。次に処理すべき基板がある場合には、ステップS101に戻って新たな基板Sが受け入れられ、上記処理が繰り返される。
【0078】
以上のように、第1実施形態によれば、湿式処理装置2において、薬液処理(ステップS21)の後で、予備有機溶剤供給処理(ステップS22)、リンス処理(ステップS23)、置換処理(ステップS24)および本発明の「液盛り処理」の一例に相当する液膜形成処理(ステップS25)が、この順序で実行される。ここで、液盛り状態の基板Sのパターン形成面(表面Sa)のパターンPT内にDIWが残留したとしても、図7(b)に示すように、残留液で構成される液層LL3は鉛直方向においてIPAとDIWとの混合層である液層LL2、LL4に挟まれている。このため、当該液層LL3を構成するDIWは液層LL2、LL4との間で相互拡散する。特に、液盛り状態の基板Sが超臨界処理装置4に搬送され、超臨界状態の処理流体を接触するまでに、残留液(DIW)が上記液層LL2、LL4との間で相互拡散するのに十分な時間が存在している。このことから、上記相互拡散により、残留液はIPAに混合される。したがって、いわゆる残留液フリーで、超臨界状態の処理流体による乾燥処理が実行される。このことは、超臨界状態の処理流体を過剰に使用することなく、超臨界乾燥処理を高品質で実行することを意味する。その結果、処理流体の消費量を削減しながら歩留まりの向上を図ることができる。
【0079】
上記したように、第1実施形態では、DIWが本発明の「リンス液」の一例に相当している。また、IPAが本発明の「有機溶剤」の一例に相当するとともに、予備有機溶剤供給処理(ステップS22)、置換処理(ステップS24)および液膜形成処理(ステップS25)においてIPAが「有機溶剤」として使用されている。基板Sの表面Saが本発明の「パターン形成面」に相当している。また、ステップS20、S30、S40がそれぞれ本発明の「工程(a)」、「工程(b)」、「工程(c)」の一例に相当している。
【0080】
ところで、上記第1実施形態では、残留液に相当する液層LL3を液層LL2、LL4で挟み込んだ、いわゆるサンドイッチ構造を有した状態のまま基板Sを湿式処理装置2から超臨界処理装置4に搬送している。ここで、搬送前、搬送中および/または超臨界処理装置4での処理流体の供給前において、基板Sに振動を加えてもよい。この振動付加によって、液層LL3を構成するDIWと液層LL2、LL4との相互拡散が促進され、残留液をより短時間で除去することができる。
【0081】
図9は本発明に係る基板処理システムの第2実施形態の動作を示すフローチャートである。上記第1実施形態では、チャックピン212は、基板Sの側端部を挟み込んで基板Sを保持するという機能以外に、振動付与機能を有している。そこで、第2実施形態では、例えば図9に示すように、液膜形成処理(ステップS25)後でかつに基板搬送(ステップS30)の前に、基板Sに振動を付与してもよい(ステップS60)。より具体的には、湿式処理装置2において液盛り状態が作り出された後で、湿式処理制御部95がチャック駆動部215に往復移動指令を与える。すると、図3(a)に示すチャック状態と、図3(b)に示す非チャック状態とが交互に繰り返される。つまり、径方向Dにおけるチャックピン212の往復移動に伴って基板Sの昇降が繰り返される。これによって、図9の左下図に示すように、基板Sに対して鉛直方向Zの振動が与えられ、液層LL3を構成していた残留液(DIW)が液層LL2、LL4に移流拡散されるとともに、液層LL2、LL4に含まれるDIWもそれぞれ液層LL1、LL5に移流拡散される。こうして液層LL3が第1実施形態よりも短時間で消失するとともに、DIWが液膜LF全体に広がる(ステップS60)。なお、本明細書では、このように振動付加により残留液を除去する処理を「残留液除去処理」と称する。
【0082】
また、第2実施形態では、残留液除去処理を実行するために振動付与機能が必須となるが、チャックピン212がその機能を担っている。そのため、振動付与機能を専門的に担う構成を追加する必要がないため、装置コストの低減を図ることができる。
【0083】
また、第2実施形態では、残留液除去処理を実行するために基板Sを鉛直方向Zに振動させているが、振動の付与態様はこれに限定されるものではない。例えばチャックピン212で基板Sを保持した状態で、湿式処理制御部95が回転機構214に正逆回転指令を与えてもよい。この場合、正逆回転指令を受けた回転機構214は基板Sを回転軸線AXまわりに所定角度だけ正逆回転させる動作、つまり回動動作を繰り返す。このように基板Sを周方向に回動させる動作によって基板Sに振動を付与してもよい。
【0084】
また、チャックピン212による鉛直方向Zに沿った振動付与(以下「上下振動付与」という)や回転機構214による周方向に沿った振動付与(以下「回動振動付与」という)を行うことなく、別途追加した構成により基板Sに振動を付与してもよい。例えば液膜形成処理(ステップS25)に続いて湿式処理制御部95が基板保持部21から離れた位置に設置された超音波振動子を作動させ、超音波振動子で発生した超音波により基板Sを振動させてもよい。また、振動子を基板保持部21に予め取り付けておき、液膜形成処理(ステップS25)に続いて湿式処理制御部95が振動子を作動させてもよい。これらの実施形態では、振動子の設置態様によって基板Sの振動方向を制御することができる。なお、振動子や超音波振動子については、従来周知のものを使用することができる。したがって、本明細書において詳しい構成説明は省略する。
【0085】
また、上記第2実施形態では、湿式処理装置2において液盛り状態の基板Sに振動を付与しているが、基板搬送装置3や超臨界処理装置4において振動を付与してもよい。例えば第1実施形態および第2実施形態では、搬送ロボット30は液盛り状態の基板Sを裏面側から支持しながら湿式処理装置2および超臨界処理装置4の双方に対し進退移動自在となっている。したがって、搬送ロボット30は、単に湿式処理装置2および超臨界処理装置4のそれぞれに対して、基板Sの搬入および搬出を行う機能のみならず、基板Sを支持しているハンド31を水平方向に往復移動させたり、回動させたりすることが可能である。つまり、ハンド31の往復移動や回動動作を繰り返すことで基板Sに水平方向に沿った振動を付与することが可能となっている。そこで、湿式処理装置2から超臨界処理装置4への搬送工程(ステップS30)が次の3つのサブ工程、
・ハンド31が液盛り状態の基板Sを受け取る工程、
・液盛り状態の基板Sを保持したままハンド31が水平面内で所定距離だけ往復移動したり、正逆方向に回動したりして基板Sに振動を付与する工程、
・液盛り状態の基板Sを超臨界処理装置4の処理ユニット41に搬送する工程、
をこの順序で実行するように、搬送制御部96が搬送ロボット30を制御してもよい。なお、ここでは、ハンド31が湿式処理装置2に進入して液盛り状態の基板Sを受け取った時点で残留液除去処理を実行しているが、残留液除去処理の実行タイミングはこれに限定されるものではない。例えばハンド31が超臨界処理装置4に移動している途中や、ハンド31が超臨界処理装置4の近傍で停止して待機している間に残留液除去処理を実行してもよい。
【0086】
また、超臨界処理装置4の稼働状況に応じて超臨界処理装置4への基板Sの搬送を待機するために、上記のように超臨界処理装置4の近傍を待機位置として設定する以外にも、別の待機位置を設ける場合がある。例えば基板搬送装置3が液盛り状態の基板Sを一時的に載置して待機させる載置台を有する場合には、当該載置台が待機位置として機能する。したがって、当該載置台に振動子を取り付け、当該載置台で待機している基板Sに振動を付与してもよい。つまり、載置台が設けられた待機位置で残留液除去処理を実行してもよい。
【0087】
また、残留液除去処理を実行するために、ハンド31を水平方向に沿って振動させる、または水平面内で回動させているが、搬送ロボット30の構成によっては別の態様で振動を付与してもよい。例えば搬送ロボット30がハンド31を鉛直方向Zに移動可能に構成されていることがある。このような場合、液盛り状態の基板Sを保持したハンド31を鉛直方向Zに昇降させることで、基板Sに振動させてもよい。
【0088】
第1実施形態および第2実施形態では、超臨界処理装置4に搬送されてきた基板Sは、液盛り状態にまま、処理チャンバ412に収容される。具体的には、基板Sはパターン形成面Saを上面にして、しかも該パターン形成面Saが薄い液膜LFに覆われた状態で搬送されてくる。図4に点線で示すように、蓋部材413が(-Y)側へ移動し支持トレイ415が引き出された状態で、リフトピン437が上昇する。搬送装置は基板Sをリフトピン437へ受け渡す。リフトピン437が下降することで、基板Sは支持トレイ415に載置される。こうして、基板Sの受け取りが完了する。
【0089】
この時点で、超臨界処理制御部97が、液盛り状態の基板Sを保持したまま、支持トレイ415および蓋部材413をY方向に沿って往復移動させてもよい。この往復移動により基板Sに振動を付与することで、第2実施形態と同様に、残留液が移流拡散される(残留液除去処理)。この実施形態によれば、超臨界状態の処理流体を基板Sに接触させる前に、超臨界処理装置4内で残留液除去処理が実行される。したがって、第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0090】
また、この実施形態では、残留液除去処理を実行するために、支持トレイ415および蓋部材413をY方向に沿って振動させているが、支持トレイ415または蓋部材413に振動子を取り付けてもよい。つまり、超臨界処理制御部97からの振動指令に応じて振動子が作動して基板Sを振動させてもよい。
【0091】
また、処理チャンバ412内の圧力が上昇する前に、残留液除去処理を実行しているが、超臨界条件に達する前であれば、圧力上昇中において残留液除去処理を実行してもよい。例えば亜臨界状態で残留液除去処理を実行してもよい。特に、残留液除去処理を実行してから超臨界状態の処理流体との接触開始までの経過時間を考慮すると、亜臨界状態に近いタイミングで残留液除去処理を実行するのが好ましい。つまり、DIWの比重がIPAのそれよりも大きいなどの理由により、上記経過時間が長くなるにしたがって、IPAに拡散したDIWの一部がパターンPTの内底面に沈降してDIW濃度が上昇する可能性がある。この点を考慮して残留液除去処理の実行タイミングを設定するのが好適である。
【0092】
また、上記振動付与の代わりまたは上記振動付与のほかパターン内を温める工程を設けても良い。例えば以下の手段、つまり、
(a)40℃以上でかつ液盛り状態を維持することができる上限温度以下を有するリンス液を用いる
(b)薄膜形成処理(液盛り処理)と並行して、パターン形成面Saと反対の基板Sの裏面Sbに対し、高温DIWや代加熱した流体(これらを総称して「加熱媒体」という)を供給する、なお、加熱媒体は、80℃以上でかつ液盛り状態を維持することができる上限温度以下を有するものが好適である
(c)薄膜形成処理(液盛り処理)と並行して、パターン形成面Saと反対の基板Sの裏面Sbに対向して配置されたヒーター(図示省略)により基板Sを加熱する
(d)搬送ロボット30のハンド31に設けられたヒーター(図示省略)により湿式処理装置2から受け取った基板Sを加熱しながら、当該ハンド31により超臨界処理装置4に渡す
(e)超臨界処理装置4において、超臨界状態の処理流体を基板Sと接触させて超臨界乾燥させる前に、支持トレイ415に設けられたヒーター(図示省略)により基板Sを加熱する、
という手段の少なくとも1つを実行してもよい。
【0093】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。上記実施形態では、予備有機溶剤供給処理(ステップS22)、置換処理(ステップS24)および液膜形成処理(ステップS25)のいずれにおいてもIPAを有機溶剤として使用している。ただし、各処理で使用する有機溶剤の組み合わせはこれに限定されるものではなく、複数種類を組み合わせてもよい。例えばこれら3つの処理のうちの一の処理においてアセトンを使用する一方、残りの処理においてIPAを使用してもよい。
【0094】
また、上記実施形態の処理で使用される各種の化学物質は一部の例を示したものであり、上記した本発明の技術思想に合致するものであれば、これに代えて種々のものを使用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
この発明は、液膜で覆われた基板を超臨界状態の処理流体で処理する基板処理方法および基板処理システム全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1…基板処理システム
2…湿式処理装置
3…基板搬送装置
4…超臨界処理装置
9…制御装置
95…湿式処理制御部
96…搬送制御部
97…超臨界処理制御部
AX…回転軸線
LF…液膜
LL2、LL4…液層(=IPA+DIW)
LL3…液膜(=DIW)
PT…パターン
S…基板
Sa…表面(パターン形成面)
Z…鉛直方向
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9