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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】凍結式の不断流工法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/00 20060101AFI20250321BHJP
   F16L 55/103 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
F16L55/00 C
F16L55/103
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023146806
(22)【出願日】2023-09-11
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】399130348
【氏名又は名称】株式会社水研
(73)【特許権者】
【識別番号】598084666
【氏名又は名称】株式会社第一テクノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】弁理士法人山村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 俊一
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨 清和
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】小長井 俊秀
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-141473(JP,A)
【文献】特開2009-047244(JP,A)
【文献】特開2018-080823(JP,A)
【文献】特開2012-172704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/00-55/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の管路が本管部10と前記本管部10の径方向Rに突出した枝管部11とを有するT字状管部1を有し、前記T字状管部1の前記枝管部11に設置された既設の配管要素12を新設の配管要素Nに交換する不断流工法であって、
前記T字状管部1の本管部10に流体Lが流れた状態で前記枝管部11内の流体Lを凍結する凍結工程と、
前記流体Lが凍結した状態で、前記既設の配管要素12を取り外す取り外し工程と、
前記流体Lが凍結した状態で、前記既設の配管要素12の呼び径よりも呼び径の小さい新設の配管要素Nを前記枝管部11に取り付ける工程とを備え、
前記枝管部11のフランジ11Fに適合する下面S1と、前記新設の配管要素NのフランジNFに適合する上面S2とを有するアダプタAを前記流体Lが凍結した状態で、前記枝管部11に結合する第1結合工程と、
前記アダプタAの上面S2に前記新設の配管要素NのフランジNFを結合する第2結合工程とを更に備える、不断流工法。
【請求項2】
請求項1において、
前記アダプタAが円環状の板状フランジである、不断流工法。
【請求項3】
請求項2において、
前記既設の配管要素12が既設の補修弁121および空気弁122で、かつ、前記新設の配管要素Nが前記既設の補修弁121および空気弁122よりも呼び径が小さい補修弁N1および空気弁N2である、不断流工法。
【請求項4】
請求項2において、
前記既設の配管要素12が既設の空気弁122で、かつ、前記新設の配管要素Nが前記既設の空気弁122よりも呼び径が小さい補修弁N1および空気弁N2である、不断流工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凍結式の不断流工法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設のT字管の枝管部内の流体を液体チッソなどにより凍結し、アイスプラグで流体の流れを遮断して、配管要素を交換する工法は公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】JP2018-141473A(第3図)
【文献】JP2006-329227A(要約)
【文献】JP2007-187204A(要約)
【発明の概要】
【0004】
前記特許文献1の発明では、既設の配管要素と新設のそれとが同じ呼び径のものであり、不経済である場合がある。
【0005】
空気弁は一般にT字管の枝管部に設置されている。この空気弁は長い管路を配管した後に、長い管路に充満している膨大な量のエアを抜くためのものである。したがって、ある程度大きな空気弁が配置される。
管路内のエアが一坦抜かれ、管路内が所定の水や油で満たされると、前記大きな空気弁は不必要で、メンテナンス用の空気弁は小さな呼び径で十分である。
【0006】
しかし、前記特許文献1では、既設のものと同じ呼び径の空気弁に交換しており不経済である。
【0007】
また、空気弁の交換が必要な管路は、古く、そのため、本管の頂点から地面までの距離が小さく、弁室の天井の高さが低い。そのため、空気弁を設置する際に、高さの制限上、補修弁を介挿することができず、本管の枝管部にレデューサを介して空気弁を設置している場合がある。
この場合、新設の空気弁が劣化した際には、再び、凍結工法で工事を行う必要が生じる。
【0008】
一方、特許文献3には呼び径を小さくするためのアダプタフランジが開示されている。しかし、設置されている消火栓の呼び径を小さなものに交換することを開示するものではない。
【0009】
本発明の目的はアイスプラグにより枝管部を凍結した後に新たに設置される配管要素の呼び径を既設のそれよりも小さくすることで弁室内において新設の配管要素の頂部までの高さを小さくして弁室内に収まるようにすると共に、コストを安価にする不断流工法を提供することである。
【0010】
本発明の不断流工法は、既設の管路が本管部10と前記本管部10の径方向Rに突出した枝管部11とを有するT字状管部1を有し、前記T字状管部1の前記枝管部11に設置された既設の配管要素12を新設の配管要素Nに交換する不断流工法であって、
前記T字状管部1の本管部10に流体Lが流れた状態で前記枝管部11内の流体Lを凍結する凍結工程と、
前記流体Lが凍結した状態で、前記既設の配管要素12を取り外す取り外し工程と、
前記流体Lが凍結した状態で、前記既設の配管要素12の呼び径よりも呼び径の小さい新設の配管要素Nを前記枝管部11に取り付ける工程とを備える。
【0011】
本発明によれば、既設の配管要素12の呼び径よりも小さい呼び径の新設の配管要素Nを設置するのでコストが安価になる。
【0012】
好ましくは、前記枝管部11のフランジ11Fに適合する下面S1と、前記新設の配管要素NのフランジNFに適合する上面S2とを有するアダプタAを前記流体Lが凍結した状態で、前記枝管部11に結合する第1結合工程と、
前記アダプタAの上面S2に前記新設の配管要素NのフランジNFを結合する第2結合工程とを更に備える。
この場合、アダプタAを用いることで、新設の配管要素Nとして規格品をそのまま用いることができ、コストが安価になる。
【0013】
更に好ましくは、前記アダプタAが円環状の板状フランジである。
アダプタAとして板状フランジを用いることで、管軸方向に長いレデューサを用いるのに比べ弁室内に収まり易い。
【0014】
好ましくは、前記既設の配管要素12が既設の補修弁121および空気弁122で、かつ、前記新設の配管要素Nが前記既設の補修弁121および空気弁122よりも呼び径が小さい補修弁N1および空気弁N2である。
この場合、施工後の新設の補修弁および空気弁の呼び径が小さくなるので、コストが安くなると共に空気弁の頂部までの高さが小さくなりコンパクトになる。
【0015】
好ましくは、前記既設の配管要素12が既設の空気弁122で、かつ、前記新設の配管要素Nが前記既設の空気弁122よりも呼び径が小さい補修弁N1および空気弁N2である。
この場合、新設の呼び径が小さくなるので、空気弁と枝管部との間に補修弁を介挿しても、空気弁の頂部までの高さを小さく抑え弁室内に収納できるから、補修弁を介挿することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の不断流工法により交換が完了した状態を示す配管構造の一例を示す正面図である。
図2】アダプタを示す平面図、断面図および底面図である。
図3】アダプタを示す斜視図である。
図4】既設の配管構造の一例を示す正面図である。
図5】不断流工法の実施例1を示す要部の正面図である。
図6】不断流工法の実施例1を示す要部の正面図である。
図7】不断流工法の実施例1を示す要部の正面図である。
図8】不断流工法の実施例2を示す要部の正面図である。
図9】不断流工法の実施例2を示す要部の正面図である。
図10】不断流工法の実施例2を示す要部の正面図である。
【実施例
【0017】
以下、本発明の実施例を図面にしたがって説明する。本工法の説明に先立って既設および新設の配管構造について説明する。
【0018】
図4は既設の配管構造を示す。
図4において、既設の管路のT字状管部1は本管部10と前記本管部10の径方向Rに突出した枝管部11とを有する。前記T字状管部1の前記枝管部11には既設の配管要素12が設置されている。
後述するように、既設の配管要素12は前記既設の管路から取り外される。
【0019】
本例の場合、既設の枝管部11は、本管部10から分岐した分岐部11Bと、この分岐部11Bにフランジ接合されたレデューサ(径落ち管)11Rとからなる。
【0020】
また、本例の場合、既設の配管要素12は、既設の補修弁121および空気弁122からなる。前記補修弁121はレデューサ11Rにフランジ接合され、前記空気弁122は補修弁121にフランジ接合されている。
【0021】
図1図7は実施例1を示す。
図1は工事が完了した後の配管構造を示す。
図4の既設の配管要素12は図1の新設の配管要素Nに交換される。
【0022】
図1において、前記新設の配管要素Nは前記既設の補修弁121および空気弁122(図4)よりも呼び径が小さい補修弁N1および空気弁N2である。
【0023】
図1の前記レデューサ11Rと新設の補修弁N1との間にはアダプタAが介挿されている。図2および図3のようにアダプタAは円環状の板状フランジで、図1の前記枝管部11のフランジ11Fに適合する図2の下面S1と、図1の新設の配管要素NのフランジNFに適合する図2の上面S2とを有する。
【0024】
本工法は不断流工法であり、図4の本管部10には流体Lが流れたままの状態で、以下の各工程が実行される。
【0025】
アイスプラグの形成に先立って、図5(a)に示すように枠組工程を実行する。図5(a)の枠組工程では、レデューサ11Rを囲うように型枠状の枠3をレデューサ11Rに組み付ける。枠3としては例えば発泡スチロール製であってもよく、また、枠3とレデューサ11Rとの隙間を湿式のパテで埋めてもよい。
【0026】
図5(b)の充填工程においては、前記枠3内に液体チッソのような冷媒4を流し込み、枠3内に凍結用の冷媒4を充填する。本冷媒4によりレデューサ11R内の流体Lが凍結する。
【0027】
すなわち、図4の本管部10に流体Lが流れた状態で前記枝管部11内の一部の流体Lを凍結する凍結工程が実行される。なお、本例の場合、流体Lの凍結する部位は、少なくとも枝管部11内の一部であればよい。
【0028】
前記凍結状態で、図6(a)に示すように、古い配管要素12を取り外す。
【0029】
この取り外し後、図6(b)に示すように、アダプタAを前記流体Lが凍結した状態で、前記レデューサ11Rのフランジ11Fに結合する第1結合工程を実行する。この後、前記アダプタAの上面S2に図7の前記新設の配管要素Nの一部である補修弁N1のフランジNFを結合する第2結合工程を実行する。
【0030】
その後、図7(b)の前記補修弁N1の上に空気弁N2を取り付ける。なお、この取り付けは補修弁N1が閉にしてあるので、前記凍結状態が解除されていてもよい。
【0031】
前記交換後、冷媒4を回収すると共に、枠3を撤去する。
【0032】
こうして、図4に示す既設の配管要素12が図1の新設の配管要素Nに交換される。
【0033】
図1および図7図10は実施例2を示す。
図1は工事が完了した後の配管構造を示す。
図8の既設の配管要素12は図1の新設の配管要素Nに交換される。
【0034】
図1において、前記新設の配管要素Nは前記既設の空気弁122(図8)よりも呼び径が小さい補修弁N1および空気弁N2である。
【0035】
図1の前記レデューサ11Rと新設の補修弁N1との間にはアダプタAが介挿されている。図2および図3のようにアダプタAは円環状の板状フランジで、図1の前記枝管部11のフランジ11Fに適合する図2の下面S1と、図1の新設の配管要素NのフランジNFに適合する図2の上面S2とを有する。
【0036】
本工法は不断流工法であり、図8の本管部10には流体Lが流れたままの状態で、以下の各工程が実行される。
【0037】
アイスプラグの形成に先立って、図9(a)に示すように枠組工程を実行する。図9(a)の枠組工程では、レデューサ11Rを囲うように型枠状の枠3をレデューサ11Rに組み付ける。枠3としては例えば発泡スチロール製であってもよく、また、枠3とレデューサ11Rとの隙間を湿式のパテで埋めてもよい。
【0038】
図9(b)の充填工程においては、前記枠3内に液体チッソのような冷媒4を流し込み、枠3内に凍結用の冷媒4を充填する。本冷媒4によりレデューサ11R内の流体Lが凍結する。
【0039】
すなわち、図8の本管部10に流体Lが流れた状態で前記枝管部11内の一部の流体Lを凍結する凍結工程が実行される。なお、本例の場合、流体Lの凍結する部位は、少なくとも枝管部11内の一部であればよい。
【0040】
前記凍結状態で、図10(a)に示すように、古い配管要素12を取り外す。
【0041】
この取り外し後、図10(b)に示すように、アダプタAを前記流体Lが凍結した状態で、前記レデューサ11Rのフランジ11Fに結合する第1結合工程を実行する。この後、前記アダプタAの上面S2に図7の前記新設の配管要素Nの一部である補修弁N1のフランジNFを結合する第2結合工程を実行する。
【0042】
その後、図7(b)の前記補修弁N1の上に空気弁N2を取り付ける。なお、この取り付けは補修弁N1が閉にしてあるので、前記凍結状態が解除されていてもよい。
【0043】
前記交換後、冷媒4を回収すると共に、枠3を撤去する。
【0044】
こうして、図8に示す既設の配管要素12が図1の新設の配管要素Nに交換される。
【0045】
なお、本発明においては、新設の配管要素Nを取り付ける際に、アダプタA、補修弁N1および空気弁N2を予め一体に組み付け(サブアッセンブリ)た後に、これらのサブアッセンブリされた新設の配管要素Nをレデューサ11Rに取り付けてもよい。
【0046】
また、アイスバルブを形成する部位は、レデューサ11Rではなく、分岐部11Bであってもよい。更に、レデューサ11Rに配置する枠3の位置を本実施例よりも上方にしてもよい。
【0047】
また、アダプタAは内径が上方に向って径小となるレデューサのような構造にしてもよい。
【0048】
また、図5(b)の凍結工程に先立って、レデューサと補修弁121とを締結しているボルトナットを予め交換しておいてもよい。
【0049】
更に、アイスバルブに係合する係止具としてのタッピングビスを予めレデューサに設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の工法は水道用の管路の他に、原油などの管路に採用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:T字状管部 10:本管部 11:枝管部 11B:分岐部 11R:レデューサ
11F,NF:フランジ
12:既設の配管要素 121:補修弁 122:空気弁
3:枠 4:冷媒
A:アダプタ S1:下面 S2:上面
N:新設の配管要素 N1:補修弁 N2:空気弁
L:流体 R:径方向
【要約】
【課題】アイスプラグにより枝管部を凍結した後に新たに設置される配管要素の呼び径を既設のそれよりも小さくすることでコストを安価にする不断流工法を提供することである。
【解決手段】既設の管路が本管部10と本管部10の径方向Rに突出した枝管部11とを有するT字状管部1を有し、T字状管部1の枝管部11に設置された既設の配管要素12を新設の配管要素Nに交換する不断流工法であって、T字状管部1の本管部10に流体Lが流れた状態で枝管部11内の流体Lを凍結する凍結工程と、流体Lが凍結した状態で、既設の配管要素12を取り外す取り外し工程と、流体Lが凍結した状態で、既設の配管要素12の呼び径よりも呼び径の小さい新設の配管要素Nを枝管部11に取り付ける工程とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10