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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】中空糸膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20250321BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20250321BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20250321BHJP
【FI】
B01D63/02
B01D63/00 500
H01M8/04 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023525688
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2022019905
(87)【国際公開番号】W WO2022255046
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2021092955
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】伊東 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】山下 松喜
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-143347(JP,A)
【文献】特開2007-212076(JP,A)
【文献】国際公開第2005/034272(WO,A1)
【文献】特開2011-141083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22
B01D61/00-71/82
C02F1/44
H01M8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の部材である内ケースと、
該内ケースを空間を空けて外周側から覆う筒状の部材である外ケースと、
前記内ケースと前記外ケースとの間の前記空間に設けられる複数の中空糸膜とを備え、
前記内ケースは、前記内ケース及び前記外ケースの延び方向の一方の端の側に、前記内ケースの内部と前記内ケースの外部との間を連通する部分である導入部を有しており、
前記外ケースは、前記延び方向の他方の端の側に、前記外ケースの内部と前記外ケースの外部との間を連通する部分である排出部を有しており、
前記内ケースは、前記延び方向の他方の端の側に、前記内ケースの内部と前記内ケースの外部との間を連通する部分であるバイパス部を有しており、
前記バイパス部は、前記内ケースを前記内部と前記外部との間で貫通する開口を少なくとも1つ有しており、
前記内ケースは、前記一方の端の側の部分である筒状の一端部と、該一端部に前記他方の端の側において接続する前記他方の端の側の部分である筒状の他端部とを有しており、
前記導入部は、前記一端部に設けられており、
前記バイパス部は、前記他端部に設けられており、
前記一端部は、前記延び方向において前記一方の側から前記他方の側に向かうに連れて縮径しており、
前記他端部は、前記延び方向に沿って延びていることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記バイパス部と前記排出部とは、前記延び方向に直交する方向において少なくとも部分的に対向していることを特徴とする請求項に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
前記内ケースの内部を前記他方の側に開放する前記内ケースの開口を密閉する部材である内ケース封止部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記導入部は、前記内ケースを前記内部と前記外部との間で連通する開口を複数有して
いることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】
前記内ケースと前記外ケースとの間の前記空間の前記一方の側に開放された開放部を密閉する一端側封止部と、
前記内ケースと前記外ケースとの間の前記空間の前記他方の側に開放された開放部を密閉する他端側封止部とを備え、
前記複数の中空糸膜は、前記延び方向に沿って延びており、前記一端側封止部及び前記他端側封止部を貫通していることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の中空糸膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュールに関し、特に、除加湿装置に用いられる中空糸膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池には、その発電に用いられる反応ガスを加湿することにより電解質膜を加湿するために加湿装置が設けられている。このような燃料電池の加湿装置には、従来から中空糸膜を備える中空糸膜モジュールが用いられている。このような中空糸膜モジュールは、筒状の内ケースと、この内ケースを外周側で覆う外ケースと、この内ケースと外ケースとの間に形成される環状の空間に沿って延びる複数の中空糸膜とを備えており、内ケースの内部から環状の空間を通って外ケースの外部に気体が流れるようになっている。このような中空糸膜モジュールにおいては、発電に用いられた後の水分を含む反応ガス(オフガス)が中空糸膜モジュール内を内ケースの内部から環状の空間を通って外ケースの外部に流れ、中空糸膜の内部を使用前の反応ガスが流れることにより、中空糸膜を介して湿潤なオフガスと乾燥した反応ガスとが接し、中空糸膜による膜分離作用によって湿潤なオフガス中の水分が乾燥した反応ガス側に移動し、反応ガスが加湿される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-265196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような中空糸膜モジュールの加湿性能には、上述のような中空糸膜モジュール内における湿潤ガスの流れが関連しており、湿潤ガスが中空糸膜モジュール内を淀みなく流れることにより、中空糸膜モジュールの加湿性能を向上させることができる。このため従来から、中空糸膜モジュールの加湿性能の向上を図るために、中空糸膜モジュール内を流れる気体の圧力損失を抑制できる構成が求められている。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、中空糸膜モジュール内を流れる気体の圧力損失を抑制することができる中空糸膜モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る中空糸膜モジュールは、筒状の部材である内ケースと、該内ケースを空間を空けて外周側から覆う筒状の部材である外ケースと、前記内ケースと前記外ケースとの間の前記空間に設けられる複数の中空糸膜とを備え、前記内ケースは、前記内ケース及び前記外ケースの延び方向の一方の端の側に、前記内ケースの内部と前記内ケースの外部との間を連通する部分である導入部を有しており、前記外ケースは、前記延び方向の他方の端の側に、前記外ケースの内部と前記外ケースの外部との間を連通する部分である排出部を有しており、前記内ケースは、前記延び方向の他方の端の側に、前記内ケースの内部と前記内ケースの外部との間を連通する部分であるバイパス部を有しており、前記バイパス部は、前記内ケースを前記内部と前記外部との間で貫通する開口を少なくとも1つ有していることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る中空糸膜モジュールにおいて、前記内ケースは、前記一方の端の側の部分である筒状の一端部と、該一端部に前記他方の端の側において接続する前記他方の端の側の部分である筒状の他端部とを有しており、前記導入部は、前記一端部に設けられており、前記バイパス部は、前記他端部に設けられており、前記一端部は、前記延び方向において前記一方の側から前記他方の側に向かうに連れて縮径しており、前記他端部は、前記延び方向に沿って延びている。
【0008】
本発明の一態様に係る中空糸膜モジュールにおいて、前記バイパス部と前記排出部とは、前記延び方向に直交する方向において少なくとも部分的に対向している。
【0009】
本発明の一態様に係る中空糸膜モジュールは、前記内ケースの内部を前記他方の側に開放する前記内ケースの開口を密閉する部材である内ケース封止部を備える。
【0010】
本発明の一態様に係る中空糸膜モジュールにおいて、前記導入部は、前記内ケースを前記内部と前記外部との間で連通する開口を複数有している。
【0011】
本発明の一態様に係る中空糸膜モジュールは、前記内ケースと前記外ケースとの間の前記空間の前記一方の側に開放された開放部を密閉する一端側封止部と、前記内ケースと前記外ケースとの間の前記空間の前記他方の側に開放された開放部を密閉する他端側封止部とを備え、前記複数の中空糸膜は、前記延び方向に沿って延びており、前記一端側封止部及び前記他端側封止部を貫通している。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る中空糸膜モジュールによれば、中空糸膜モジュール内を流れる気体の圧力損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る中空糸膜モジュールの概略構成を示す、延び方向に沿う断面における断面図である。
図2図1に示す中空糸膜モジュールの延び方向に交差する断面における断面図である。
図3図1に示す中空糸膜モジュールの内ケースの延び方向に沿う断面における断面図である。
図4図3に示す内ケースの平面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る中空糸膜モジュールの作用を説明するための図であり、本発明の実施の形態に係る中空糸膜モジュールを備える加湿装置の概略構成を示す図である。
図6図1に示す中空糸膜モジュールにおける導入部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る中空糸膜モジュール1の概略構成を示す、延び方向(軸線x)に沿う断面における断面図である。図2は、中空糸膜モジュール1の延び方向に交差する断面(A-A断面)における断面図である。以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a方向側を上流側、矢印b方向側を下流側とする。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(図1の矢印c方向)側を外周側とし、軸線xに近づく方向(図1矢印d方向)側を内周側とする。
【0016】
本発明の実施の形態に係る中空糸膜モジュール1は、除加湿装置の除湿モジュール又は加湿モジュールとして用いられる。例えば、燃料電池の加湿装置の加湿モジュールとして用いられる。具体的には、燃料電池の電解質膜を加湿するための加湿装置の加湿モジュールとして用いられる。例えば、発電のために供給される反応ガスを、発電ための化学反応によって生成された水分を含む発電に用いられた後の反応ガス(オフガス)を用いて、中空糸膜の膜分離作用を利用して加湿する。発電のために供給される反応ガスは、水素等の燃料ガス、及び酸素等の酸化剤ガスである。
【0017】
中空糸膜モジュール1は、図1に示すように、筒状の部材である内ケース10と、内ケース10を空間(空間S)を空けて外周側から覆う筒状の部材である外ケース20と、内ケース10と外ケース20との間の空間Sに設けられる複数の中空糸膜31とを備えている。内ケース10は、内ケース10及び外ケース20の延び方向(軸線x方向)の一方(上流側)の端の側に、内ケース10の内部と内ケース10の外部との間を連通する部分である導入部13を有している。外ケースは、延び方向の他方(下流側)の端の側に、外ケース20の内部と外ケース20の外部との間を連通する部分である排出部23を有している。内ケース10は、延び方向の他方の端の側に、内ケース10の内部と内ケース10の外部との間を連通する部分であるバイパス部14を有している。バイパス部14は、内ケース10を内部と外部との間で貫通するバイパス口15を少なくとも1つ有している。以下、本願発明の実施の形態に係る中空糸膜モジュール1の構成について、具体的に説明する。
【0018】
図3は、内ケース10の延び方向(軸線x)に沿う断面における断面図であり、図4は、内ケース10の平面図であり、内ケース10を上流側から見た図である。内ケース10は、上述のように、筒状の部材であり、例えば、図1,3に示すように、軸線xに沿って延びる筒状の部材である。具体的には、内ケース10は、上流側の部分である筒状の一端部としての上流本体部11と、上流本体部11に下流側において接続する下流側の部分である筒状の他端部としての下流本体部12とを有しており、内ケース10は、上流本体部11と下流本体部12とによって形作られている。
【0019】
上流本体部11は、軸線xに沿って延びており、軸線x方向において上流側から下流側に向かうに連れて縮径しており、例えば、下流側に向かって細くなる円錐台筒状又は略円錐台筒状の形状を有している。上流本体部11は、中空となっており、上流本体部11の内部には軸線xに沿って空間が延びており、上流本体部11は、上流側の端部である上流端部11aに開口16を有している。開口16は、上流側に向かって上流本体部11の内部空間を上流本体部11の外部に開放している。つまり、上流本体部11の内部は、開口16を介して外部に連通している。また、上流本体部11の下流側の端部である下流端部11bは、後述する下流本体部12の上流端部12aに接続しており、上流本体部11の内部空間は、下流本体部12の内部に連通している。
【0020】
下流本体部12は、軸線xに沿って延びており、軸線x方向に亘って径方向の幅が一定又は略一定となっており、例えば、軸線xに沿って延びる円筒状又は略円筒状の形状を有している。下流本体部12は、中空となっており、下流本体部12の内部には軸線xに沿って空間が延びており、下流本体部12は、下流側の端部である下流端部12bに開口17を有している。開口17は、下流側に向かって下流本体部12の内部を下流本体部12の外部に開放している。つまり、下流本体部12の内部は、開口17を介して外部に連通している。また、上述のように、下流本体部12の上流側の端部である上流端部12aは、上流本体部11の下流端部11bに接続しており、下流本体部12の内部は、上流本体部11の内部に連通している。
【0021】
上述の内ケース10の内部と外部との間を連通する導入部13は、上流本体部11に設けられている。具体的には、図3に示すように、上流本体部11において開口16よりも下流側に導入部13は設けられており、導入部13は、中空糸膜モジュール1において内ケース10の内部と外ケース20の内部(空間S)とを連通している。また、導入部13は、複数の導入口13a~13cを有しており、これら複数の導入口13a~13cから構成されている。導入口13a~13cは、内ケース10を内部と外部との間で貫通する開口である。
【0022】
具体的には、図3,4に示すように、導入部13は、軸線x方向において同じ位置又は略同じ位置に、周方向に等角度間隔又は略等角度間隔に並べられた複数の導入口13aを有している。導入口13aは、テーパ状の上流本体部11の形に倣って、上流側から下流側に向かうに連れて周方向の幅が狭くなっている。また、導入部13は、導入口13aよりも下流側であって、軸線x方向において同じ位置又は略同じ位置に、周方向に等角度間隔又は略等角度間隔に並べられた複数の導入口13bを有している。導入口13bは、導入口13aと同様に、テーパ状の上流本体部11の形に倣って、上流側から下流側に向かうに連れて周方向の幅が狭くなっている。また、導入部13は、導入口13bよりも下流側であって、軸線x方向において同じ位置又は略同じ位置に、周方向に等角度間隔又は略等角度間隔に並べられた複数の導入口13cを有している。導入口13cは、導入口13a,13bと同様に、テーパ状の上流本体部11の形に倣って、上流側から下流側に向かうに連れて周方向の幅が狭くなっている。また、導入口13bの周方向の幅は導入口13aの周方向の幅よりも小さく、導入口13cの周方向の幅は導入口13bの周方向の幅よりも小さくなっており、下流側に向かうに連れて、導入部13の有する導入口13a~13cの周方向の幅は小さくなっている。このように、導入部13は、周方向に夫々並べられた複数の導入口13a,13b,13cの列が、軸線x方向に並べられて形成されている。
【0023】
なお、導入部13の形態は上述の形態に限られず、内ケース10の内部と外部との間を連通するものであればよい。例えば、導入部13は、周方向に複数の導入口13a,13b,13cが夫々並べられた3列の導入口群が、軸線x方向に並べられて形成されているとしたが、導入部13は、3列の導入口群によって形成されるものに限られず、1列の導入口群や、他の複数列の導入口群から形成されるものであってもよい。また、各列は複数の導入口13a、導入口13b又は13cから構成される導入口群でなくてもよく、1つの導入口13a、導入口13b又は13cから構成されていてもよい。また、各導入口13a~13cの形状は上述の上流側から下流側に向かうに連れて周方向の幅が狭くなっている形状に限られず、上流側から下流側に向かうに連れて周方向の幅が広くなっている形状や、上流側から下流側に亘って周方向の幅が一定の形状等、円形等の他の形状であってもよい。また、各列における複数の導入口13aは互いに同じ形状や大きさでなくてもよく、同様に複数の導入口13b,13cは夫々互いに同じ形状や大きさでなくてもよい。導入部13の形態は、中空糸膜モジュール1の使用態様に応じて種々の形態を有し得る。
【0024】
上述の内ケース10の内部と外部との間を連通するバイパス部14は、下流本体部12に設けられている。具体的には、図3に示すように、下流本体部12において下流端部12b又はその近傍に設けられている。また、バイパス部14は、外ケース20の排出部23に、径方向において少なくとも部分的に対向する位置に設けられている。例えば図1,3に示すように、バイパス部14は、下流端部12bの上流側近傍に設けられており、外ケース20の排出部23に径方向において対向する位置又はこの対向する位置の近傍に設けられている。内ケース10の下流本体部12においてバイパス部14が設けられる位置はこれに限られない。
【0025】
バイパス部14は、内ケース10を内部と外部との間で貫通する開口であるバイパス口15を少なくとも1つ有している。例えば、図2に示すように、バイパス部14は、軸線x方向において同じ位置又は略同じ位置に、周方向に等角度間隔又は略等角度間隔に並べられた複数のバイパス口15を有している。図示の例では、バイパス部14は、径方向において対向又は略対向する2つのバイパス口15を有している。バイパス口15は、例えば矩形の開口である。複数のバイパス口15は互いに同じ形状や大きさであってもよく、互いに同じ形状や大きさでなくてもよい。また、バイパス部14が有するバイパス口15の数は図示の例に限られず、1つであっても3つ以上であってもよい。また、複数のバイパス口15は、周方向に等角度間隔に並べられていなくてもよく、他の所定のパターンで並べられていてもよく、また、不規則に並べられていてもよい。また、複数のバイパス口15は、例えば周方向にジグザグを描くように配置される等、軸線x方向において同じ位置に設けられていなくてもよい。また、バイパス口15の形状は矩形に限られず、円形や他の形状であってもよい。
【0026】
バイパス部14は、図示のように、周方向の複数のバイパス口15が並べられたバイパス口列を1つ有するものに限られず、複数のバイパス口列が軸線x方向に並べられて形成されているものであってもよい。この場合、バイパス部14は、互い同じ形状や大きさのバイパス口15を有していてもよく、互い同じ形状や大きさではないバイパス口15を有していてもよい。
【0027】
内ケース10は上述の構造となっており、内ケース10の内部には、上流側の開口16から下流側の開口17まで軸線xに沿って空間がつながっており、内ケース10の内部の空間を分断する壁部等の部材が形成されていない。また、内ケース10内部の空間は、上流本体部11に形成されている導入部13の導入口13a~13cを介して、外ケース20の内部の空間である空間Sに連通するようになっている。また、内ケース10の内部の空間は、下流本体部12に形成されているバイパス部14のバイパス口15を介して、外ケース20内部の空間Sに連通するようになっている。このように、中空糸膜モジュール1において、内ケース10の内部の空間は、上流側において導入部13の導入口13a~13cを介して、また、下流側においてバイパス部14のバイパス口15を介して、外ケース20内部の空間Sに連通するようになっている。
【0028】
内ケース10の形態は、上述の形態に限られず、他の形態であってもよい。例えば、内ケース10は、上流本体部11がテーパ状になっておらず、下流本体部12と同様に円筒状又は略円筒状になっており、内ケース10が全体として軸線xに沿って円筒状又は略円筒状に延びていてもよい。
【0029】
外ケース20は、上述のように、延び方向に延びる筒状の部材であり、例えば、図1に示すように、軸線xに沿って延びる筒状の部材である。具体的には、外ケース20は、内ケース10に対応した形態となっており、軸線xに関して内ケース10と同心状に又は略同心状に延びており、軸線x方向の長さが、内ケース10の軸線x方向の長さと同じ又は略同じとなっている。具体的には、図1に示すように、外ケース20は、上流側の部分である筒状の上流本体部21と、上流本体部21に下流側において接続する下流側の部分である筒状の下流本体部22とを有している。
【0030】
上流本体部21は、軸線xに沿って延びており、軸線x方向において上流側から下流側に向かうに連れて縮径しており、例えば、下流側に向かって細くなる円錐台筒状又は略円錐台筒状の形状を有している。上流本体部21は、中空となっており、上流本体部21の内部には軸線xに沿って空間が延びており、上流本体部21は、上流側の端部である上流端部21aに開口24を有している。開口24は、上流側に向かって上流本体部21の内部を上流本体部21の外部に開放している。つまり、上流本体部21の内部は、開口24を介して外部に連通している。また、上流本体部21の下流側の端部である下流端部21bは、後述する下流本体部22の上流端部22aに接続しており、上流本体部21の内部は、下流本体部22の内部に連通している。
【0031】
下流本体部22は、軸線xに沿って延びており、軸線x方向に亘って径方向の幅が一定又は略一定となっており、例えば、軸線xに沿って延びる円筒状又は略円筒状の形状を有している。下流本体部22は、中空となっており、下流本体部22の内部には軸線xに沿って空間が延びており、下流本体部22は、下流側の端部である下流端部22bに開口25を有している。開口25は、下流側に向かって下流本体部22の内部を下流本体部22の外部に開放している。つまり、下流本体部22の内部は、開口25を介して外部に連通している。また、上述のように、下流本体部22の上流側の端部である上流端部22aは、上流本体部21の下流端部21bに接続しており、下流本体部22の内部は、上流本体部21の内部に連通している。
【0032】
外ケース20の上流本体部21の軸線x方向の長さは、内ケース10の上流本体部11の軸線x方向の長さと同じ又は略同じになっており、外ケース20の下流本体部22の軸線x方向の長さは、内ケース10の下流本体部12の軸線x方向の長さと同じ又は略同じになっている。このため、中空糸膜モジュール1において、外ケース20の上流本体部21の上流端部21a、上流本体部21の下流端部21b、下流本体部22の上流端部22a、及び下流本体部22の下流端部22bと、内ケース10の上流本体部11の上流端部11a、上流本体部11の下流端部11b、下流本体部12の上流端部12a、及び下流本体部12の下流端部12bとは、夫々、軸線x方向において同じ又は略同じ位置に位置するようになっている。
【0033】
また、外ケース20は、内ケース10に対応した形態となっており、外ケース20の上流本体部21は、内ケース10の上流本体部11に平行に又は略平行に軸線x方向に延びており、外ケース20の下流本体部22は、内ケース10の下流本体部12に平行に又は略平行に軸線x方向に延びている。このため、中空糸膜モジュール1において、外ケース20と内ケース10とが間に形成する中空筒状の断面環状又はドーナツ状の空間Sは、半径方向の幅が軸線x方向の幅に亘って一定又は略一定となっている。
【0034】
外ケース20の形態は、上述の形態に限られず、他の形態であってもよい。例えば、外ケース20は、上流本体部21がテーパ状になっておらず、下流本体部22と同様に円筒状又は略円筒状になっており、外ケース20が全体として軸線xに沿って円筒状又は略円筒状に延びていてもよい。また、外ケース20の上流本体部21は、内ケース10の上流本体部11に平行に軸線x方向に延びていなくてもよく、外ケース20の下流本体部22は、内ケース10の下流本体部12に平行に軸線x方向に延びていなくてもよい。
【0035】
上述の外ケース20の内部と外部との間を連通する排出部23は、下流本体部22に設けられている。具体的には、図1に示すように、下流本体部22において下流端部22b又はその近傍に設けられており、開口25よりも上流側に排出部23は設けられている。排出部23は、中空糸膜モジュール1において外ケース20の内部(空間S)と外ケース20の外部とを連通している。また、排出部23は、軸線x周りに無端環状の帯状に延びる開口を形成している。例えば図1に示すように、排出部23は、内ケース10のバイパス部14に径方向において対向する位置又はこの対向する位置の近傍に設けられている。外ケース20の下流本体部22において排出部23が設けられる位置はこれに限られない。
【0036】
また、排出部23の形態は、軸線x周りに無端環状の帯状に延びる開口を形成するものに限られない。例えば、排出部23は、外ケース20を内部と外部との間で貫通する複数の開口から構成されているものであってもよい。この場合、排出部23を構成する複数の開口は、例えば、軸線x方向において同じ位置又は略同じ位置において、周方向に等角度間隔又は略等角度間隔に並べられる。排出部23を構成する複数の開口の配置は他の配置であってもよい。
【0037】
上述のように、内ケース10と外ケース20との間の空間Sには、複数の中空糸膜31が設けられている。具体的には、中空糸膜31の束である中空糸膜束30が空間Sに充填されている。中空糸膜束30は、例えば図1,2に示すように筒状である。中空糸膜束30において、各中空糸膜31は、軸線x方向に沿って延びており、中空糸膜束30の上流側に面する端である上流端30aに各中空糸膜31の一端側(上流側)の開口(上流開口31a)が位置しており、中空糸膜束30の下流側に面する端である下流端30bに各中空糸膜31の他端側(下流側)の開口(下流開口31b)が位置している。中空糸膜束30は、例えば図1に示すように、内周側の境界を形成する中空糸膜31が内ケース10の外周面10aに沿って延びており、また、外周側の境界を形成する中空糸膜31が外ケース20の内周面20aに沿って延びており、中空糸膜束30は、内ケース10の外周面10a及び外ケース20の内周面20aに沿った形となっている。中空糸膜束30の形状は、このように内ケース10の外周面10a及び外ケース20の内周面20aに沿った形状に限られず、他の形状であってもよい。例えば、中空糸膜束30は、軸線xに沿って延びる円筒状又は略円筒状の形状であってもよく、軸線xに沿って延びる円錐筒状又は略円錐筒状の形状であってもよい。
【0038】
中空糸膜束30において、互いに隣接する中空糸膜31の間には、図2に示すように、流体が通過できるような間隔が形成されている。また、中空糸膜束30の内周側の境界を形成する中空糸膜31と内ケース10の外周面10aとの間には、液体又は気体が通過できるような間隔が形成されていることが好ましく、中空糸膜束30の外周側の境界を形成する中空糸膜31と外ケース20の内周面20aとの間には、液体又は気体が通過できるような間隔が形成されていることが好ましい。なお、互いに隣接する中空糸膜31の間には、軸線x方向の全体に亘って、流体が通過できるような間隔が形成されていることが好ましいが、軸線x方向の全体に亘って、流体が通過できるような間隔が形成されていなくてもよい。
【0039】
中空糸膜31は、中空糸膜31の内部と外部との間で、湿潤な気体中の水分を乾燥した気体側に移動させる膜分離作用を有するようになっており、中空管状に作られている。中空糸膜31の材料には、例えば、孔径制御による毛管凝縮機構により水分を透過する特性を有するPPSU(ポリフェニルスルホン)等を好適に用いることができる。なお、PPSUと親水性高分子(ポリビニルピロリドン)を添加した製膜溶液を用いて紡糸を行うことで親水性を有する中空糸膜を得ることができる。また、中空糸膜31の材料には、溶解拡散により水分を透過する特性を有するナフィオン(登録商標)を用いることができる。
【0040】
また、図1に示すように、中空糸膜モジュール1は、外ケース20の開口24,25が夫々形成する空間Sを中空糸膜モジュール1の外部に開放する開口の密閉を図るための封止部35,36(一端側封止部及び他端側封止部)を有している。具体的には、封止部35は、外ケース20の上流側の開口24に設けられており、外ケース20の開口24において、外ケース20の内周面20aに全周に亘って接触しており、また、外ケース20の開口24において、内ケース10の外周面10aに全周に亘って接触している。また、封止部35は、外ケース20の開口24において、各中空糸膜31の外周面31cに全周に亘って接触している。また、各中空糸膜31は、上流側の端部において封止部35を貫通しており、各中空糸膜31の上流開口31aは、封止部35の外側の空間に中空糸膜31の内部を開放している。封止部36は、同様に、具体的には、外ケース20の下流側の開口25に設けられており、外ケース20の開口25において、外ケース20の内周面20aに全周に亘って接触しており、また、外ケース20の開口25において、内ケース10の外周面10aに全周に亘って接触している。また、封止部36は、外ケース20の開口25において、各中空糸膜31の外周面31cに全周に亘って接触している。また、各中空糸膜31は、下流側の端部において封止部36を貫通しており、各中空糸膜31の下流開口31bは、封止部36の外側の空間に中空糸膜31の内部を開放している。
【0041】
このように、封止部35によって空間Sを上流側において開放する開口(開口24)の密封が図られており、封止部36によって空間Sを下流側において開放する開口(開口25)の密封が図られており、一方、各中空糸膜31の内部の空間は、上流開口31a及び下流開口31bを介して中空糸膜モジュール1の外部に開放されている。また、各中空糸膜31は、上流側及び下流側の端部において夫々封止部35,36によって内ケース10及び外ケース20に対して固定されている。この封止部35,36による中空糸膜31の固定によって、中空糸膜31が束状に固定され、中空糸膜束30が形成されている。封止部35,36は、例えばエポキシ樹脂等のポッティング材料が硬化することにより形成される部材である。
【0042】
また、図1,3に示すように、中空糸膜モジュール1は、内ケース10の下流端部12bの開口17の密閉を図る封止部18(内ケース封止部)を有している。封止部18は、内ケース10の開口17において内ケース10の内周面10bに全周に亘って接触している。封止部18は、例えばエポキシ樹脂等のポッティング材料が硬化することにより形成される部材である。封止部18は、内ケース10において、バイパス部14のバイパス口15よりも下流側に位置している。
【0043】
中空糸膜モジュール1は、上述の構成を有しており、外部と連通する流体経路を2つ有している。一方は第1流体経路F1であり、各中空糸膜31が形成する流体経路であり、上流開口31a、中空糸膜31の内部、及び下流開口31bによって形成される流体経路である。他方は第2流体経路F2であり、内ケース10の上流側の開口16と外ケース20の排出部23との間に延びる流体経路であり、内ケース10の開口16、内ケース10の内部空間、内ケース10の導入部13、空間Sにおける互いに隣接する中空糸膜31の間の空間G、及び外ケース20の排出部23によって形成される。
【0044】
また、中空糸膜モジュール1の内ケース10には、下流側にバイパス口15から成るバイパス部14が設けられており、下流側において、内ケース10の内部と空間Sとがバイパス部14を介して連通している。このため、中空糸膜モジュール1は、内ケース10の内部、内ケース10のバイパス部14、空間Sにおける互いに隣接する中空糸膜31の間の空間G、及び外ケース20の排出部23によって形成される第3流体経路F3を有する。
【0045】
次いで、上述の構成を有する中空糸膜モジュール1の作用について説明する。図5は、中空糸膜モジュール1の作用を説明するための図であり、使用状態における中空糸膜モジュール1が断面で示されている。図5には、第1,2,3流体経路F1,F2,F3が概略的に示されている。
【0046】
上述のように、中空糸膜モジュール1は、除加湿装置の除湿モジュール又は加湿モジュールとして用いられる。図示の例においては、中空糸膜モジュール1は、燃料電池の加湿装置の加湿モジュールとして用いられ、燃料電池の加湿装置50に取り付けられて使用状態となっている。
【0047】
図5に示すように、加湿装置50は、中空糸膜モジュール1と、湿潤ガス供給装置51と、乾燥ガス供給装置52とを備えている。湿潤ガス供給装置51は、中空糸膜モジュール1の第2流体経路F2に湿潤ガスを供給するようになっている。また、乾燥ガス供給装置52は、各中空糸膜31の形成する第1流体経路F1に、湿潤ガス供給装置51から供給される湿潤ガスよりも湿度の低い乾燥ガスを供給するようになっている。湿潤ガス供給装置51が供給する湿潤ガスは、燃料電池において発電のために供給された反応ガスが化学反応をした後のオフガスであり、乾燥ガス供給装置52が供給する乾燥ガスは、発電のために供給される反応ガスである。本実施の形態においては、乾燥ガス供給装置52から供給される乾燥ガスは、反応ガスの内の、酸素等の酸化剤ガスであり、湿潤ガスは、オフガスの内の、酸素等の酸化剤ガスが発電のために用いられた後の酸化剤オフガスである。
【0048】
加湿装置50が駆動されると、湿潤ガス供給装置51から中空糸膜モジュール1の第2流体経路F2に湿潤ガスが供給され、また、乾燥ガス供給装置52から中空糸膜モジュール1の第1流体経路F1に乾燥ガスが供給される。これにより、各中空糸膜31の内部には乾燥ガスが流れ、空間Sにおける互いに隣接する中空糸膜31の間の空間Gには湿潤ガスが流れ、中空糸膜31を介して乾燥ガスと湿潤ガスとが接触する。この際、中空糸膜31による膜分離作用によって、湿潤ガス中の水分が乾燥ガス側に移動する。これにより、第1流体経路F1を流れる乾燥ガスは加湿されて、各中空糸膜31の上流開口31aから排出され、中空糸膜モジュール1から排出される。この加湿された乾燥ガス(酸化剤ガス)は、燃料電池の反応ガスとして燃料電池の電解質膜に供給される。これにより、燃料電池の電解質膜が加湿される。一方、乾燥ガスを加湿した湿潤ガスは、中空糸膜モジュール1から排出される。
【0049】
中空糸膜モジュール1は、上述の構成を有しており、外部と連通する流体経路を2つ有している。一方は第1流体経路F1であり、各中空糸膜31が形成する流体経路であり、上流開口31a、中空糸膜31の内部、及び下流開口31bによって形成される流体経路である。他方は第2流体経路F2であり、内ケース10の上流側の開口16と外ケース20の排出部23との間に延びる流体経路であり、内ケース10の開口16、内ケース10の内部空間、内ケース10の導入部13、空間Sにおける互いに隣接する中空糸膜31の間の空間G、及び外ケース20の排出部23によって形成される。
【0050】
湿潤ガス供給装置51から供給される湿潤ガスは、具体的には、内ケース10の上流側の開口16から内ケース10の内部に入り、内ケース10の内部を下流側に進む。そして、内ケース10の内部を下流側に進む湿潤ガスの一部は、導入部13の各導入口13a~13cを介して空間Sに流れる。導入部13から空間Sに流入した湿潤ガスは、空間Sにおいて互いに隣接する中空糸膜31の間の空間Gを流れて中空糸膜31に接触し、中空糸膜31による膜分離作用によって中空糸膜31内を流れる乾燥空気を加湿し、外ケース20の排出部23を介して空間Sから排出され、中空糸膜モジュール1から排出される。
【0051】
内ケース10の上流本体部11は、上流側から下流側に向かうに連れて縮径しており、この上流本体部11に導入口13a~13cが形成されている。このため、導入口13a~13cから空間Sに流出する気体は、軸線xに対して傾斜した方向に流出する傾向を有する。これにより、導入口13a~13cから空間Sに流出した湿潤ガスは、空間Sにおいて互いに隣接する中空糸膜31の間の空間Gを軸線xに対して傾斜した方向に流れ易くなっており、湿潤ガスが中空糸膜31の内部を通る乾燥ガスに対向して流れ易くなっている。また、各導入口13a~13cは、周方向の幅が上流側から下流側に向かうに連れて狭くなっている。これによっても、導入口13a~13cから空間Sに流出する気体が、軸線xに対して傾斜した方向に流出する傾向を有するようにできる。
【0052】
また、湿潤ガスは、導入部13を介して空間Sの内周側及び上流側の領域に流入し、排出部23を介して空間Sの外周側及び下流側の領域から排出される。このため、空間S内に流入した湿潤ガスが、中空糸膜束30の中空糸膜31全体に接触するようにでき、中空糸膜束30の中空糸膜31全体が膜分離作用を奏するようにできる。
【0053】
このように、中空糸膜モジュール1においては、導入口13a~13cから空間Sに流出した湿潤ガスが、中空糸膜31の内部を通る乾燥ガスに対向して流れ易くなっており、中空糸膜束30の中空糸膜31全体が膜分離作用を奏するよう図られている。このため、中空糸膜モジュール1においては、中空糸膜束30による膜分離作用が効率的に行なわれるようになっており、高い加湿性能となっている。
【0054】
一方、乾燥ガス供給装置52から供給される乾燥ガスは、具体的には、各中空糸膜31の下流開口31bから中空糸膜31の内部に入り、中空糸膜31の内部を上流側に進む。そして、中空糸膜31の内部を上流側に進む乾燥ガスは、中空糸膜31による膜分離作用によって中空糸膜31に接触する湿潤空気により加湿され、中空糸膜31の上流開口31aから排出され、中空糸膜モジュール1から排出される。
【0055】
また、湿潤ガス供給装置51から供給されて内ケース10の内部を下流側に進む湿潤ガスの一部は、第3流体経路F3に供給される。具体的には、湿潤ガス供給装置51から供給されて内ケース10の内部を下流側に進む湿潤ガスの一部は、導入口13a~13cから空間Sに流出せずに内ケース10の内部を下流側に進み続ける。この内ケース10の内部を下流側に進み続ける湿潤ガスの一部は、内ケース10の下流側に形成されたバイパス部14のバイパス口15を介して空間Sに流出する。このバイパス部14から空間Sに流出した湿潤ガスは、空間Sにおいて互いに隣接する中空糸膜31の間の空間Gを流れて中空糸膜31に接触し、中空糸膜31による膜分離作用によって中空糸膜31内を流れる乾燥空気を加湿し、外ケース20の排出部23を介して空間Sから排出され、中空糸膜モジュール1から排出される。
【0056】
バイパス部14は内ケース10の下流側に設けられており、バイパス部14から空間Sに流出する湿潤ガスは、空間Sの下流側の領域に流出される。また、排出部23は外ケース20の下流側に設けられており、バイパス部14から空間Sに流出した湿潤ガスは、空間Sの下流側の領域において、径方向に直線的に流れ易くなっている。このため、バイパス部14から空間Sに流出する湿潤ガスは、中空糸膜31との接触が少なく、中空糸膜31との接触により受ける抵抗が低く、圧力損失が抑制されている。このため、空間Sの下流側の領域において、内ケース10の導入部13から出た第2流体経路F2を通る湿潤ガスの動圧よりも、内ケース10のバイパス部14から出た第3流体経路F3を通る湿潤ガスの動圧は高くなっている。
【0057】
内ケース10の導入部13から出た第2流体経路F2を通る湿潤ガスの動圧が、中空糸膜31との接触により受ける抵抗等により、下流側で低くなった場合、空間Sの下流側において第2流体経路F2を流れる湿潤ガスが滞留してしまう。これに対し、中空糸膜モジュール1は、内ケース10の下流側にバイパス部14を有しており、バイパス部14から空間S内を排出部23に流れる気体の圧力損失は低く、動圧低下が抑制された気体を空間Sの下流側における第3流体経路F3に流すことができる。この第3流体経路F3における湿潤ガスの流れに第2流体経路F2における湿潤ガスの流れは引きずられ、第2流体経路F2を流れる湿潤ガスの動圧が下流側で低くなることが抑制される。これにより、第2流体経路F2を流れる湿潤ガスが空間Sの下流側で滞留することの防止が図られている。これにより、空間Sの下流側における、第2流体経路F2の湿潤ガスに対する中空糸膜31の膜分離作用を向上させることができ、乾燥空気の加湿効率を向上させることができる。
【0058】
また、湿潤ガス供給装置51から供給された湿潤ガスは、内ケース10の上流側の開口16から内ケース10の内部に入り、第2流体経路F2のみから排出部23に流れるのではなく、第3流体経路F3からも排出部23に流れる。このため、過剰に供給される湿潤ガスが導入部13のみから空間Sに流入する場合に対して、空間Sにおいて互いに隣接する中空糸膜31の間の空間Gを流れる湿潤ガスの圧力損失を低下させることができる。この点においても、第2流体経路F2の下流側において湿潤ガスが滞留することを抑制でき、加湿性能を向上させることができる。
【0059】
また、内ケース10において、テーパ状の上流本体部11に対して、下流本体部12は、上流本体部11の径の小さい側から続き、一定又は略一定の径となっている。このため、下流本体部12の外周側に空間を確保し易くなっており、空間Sにおける下流本体部12の外周側の部分を大きくし易くなっている。これにより、空間Sにおける中空糸膜31の充填率が高くなることを抑制でき、空間Sの下流本体部12の外周側の領域における流体の圧力損失の抑制を図ることができる。このため、第2流体経路F2を流れる湿潤ガス、及び第3流体経路F3を流れる湿潤ガスの圧力損失を抑制でき、第2流体経路F2を流れる湿潤ガスが空間Sの下流側で滞留することの抑制をより図ることができる。
【0060】
このように、本発明の実施の形態に係る中空糸膜モジュール1によれば、中空糸膜モジュール1内を流れる気体の圧力損失を抑制することができる。これにより、乾燥空気の加湿効率の向上を図ることができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態に係る中空糸膜モジュール1について説明したが、本発明に係る中空糸膜モジュールは上述の中空糸膜モジュール1に限定されるものではなく、本発明の概念及び請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様に応じて適宜変更され得る。
【0062】
例えば、中空糸膜モジュール1の内ケース10には封止部18が設けられていなくてもよい。例えば、内ケース10の下流端部12bを先細にし、開口17を小さくすることにより開口17の密封又は開口17からの気体の流出の抑制を図ってもよい。また、例えば、内ケース10の下流端部12bを変形させることにより、開口17を小さくし、又は開口17をつぶして、開口17の密封又は開口17からの気体の流出の抑制を図ってもよい。封止部18が設けられていない中空糸膜モジュール1においても、上述の課題が生じている場合は、上述の本発明の実施の形態に係る中空糸膜モジュール1の場合と同様に、本発明はその作用効果を奏することができる。また、内ケース10と同じ材料又は異なる材料から形成された封止部18を、接着剤によって又は嵌着によって内ケース10の下流側の端に固定し、開口17の密封を図ってもよい。また、内ケース10には封止部18が取り付けられておらず、内ケース10に開口17が形成されておらず、内ケース10の下流側の端に底部を一体的に形成してもよい。つまり封止部18を内ケース10の他の部分と同一の材料から一体的に形成してもよい。
【0063】
また、中空糸膜モジュール1の使用状態において、気体は第1流体経路F1を上流側から下流側に流れるとしたが、気体は第1流体経路F1を下流側から上流側に流れるものとしてもよい。
【0064】
また、中空糸膜モジュール1の使用状態において、第1流体経路F1を乾燥ガスが、第2及び第3流体経路F2,F3を湿潤ガスが流れるとしたが、第1流体経路F1を湿潤ガスが、第2及び第3流体経路F2,F3を乾燥ガスが流れるようにしてもよい。
【0065】
また、上述の説明において、中空糸膜モジュール1は燃料電池の加湿装置の加湿モジュールに適用されるとしたが、本発明に係る中空糸膜モジュールの適用対象は燃料電池の加湿装置の加湿モジュールに限られず、また、燃料電池に限られない。また、本発明に係る中空糸膜モジュールの適用対象は加湿モジュールに限られず、除湿装置の除湿モジュールであってもよい。本発明に係る中空糸膜モジュールは、その作用効果を利用できるあらゆるものに適用可能である。
【0066】
また、上述の説明において、乾燥ガスは、反応ガスの内の、酸素等の酸化剤ガスであり、湿潤ガスは、オフガスの内の、酸素等の酸化剤ガスが発電のために用いられた後の酸化剤オフガスであるとしたが、乾燥ガスは、反応ガスの内の、水素等の燃料ガスであってもよく、また、湿潤ガスは、オフガスの内の、水素等の燃料ガスが発電のために用いられた後の燃料オフガスであってもよい。
【0067】
また、上述の内ケース10の内部と外部との間を連通する導入部13は、上述の形態に限られない。例えば、内ケース10は、導入部13に変えて、図6に示すような導入部19を有するものであってもよい。具体的には、図6に示すように、導入部19は、内ケース10を内部と外部との間で貫通する開口(貫通孔)である大導入口19aを少なくとも1つ有しており、また、内ケース10を内部と外部との間で貫通する開口(貫通孔)である小導入口19bを少なくとも1つ有している。大導入口19aの開口面積は、小導入口19bの開口面積よりも大きくなっている。大導入口19a及び小導入口19bの夫々の開口面積は、大導入口19a及び小導入口19bが夫々内ケース10に形成する空間における面の大きさを示すものであり、例えば、内ケース10の外周面10a又は内周面10bに沿って延びる面の大導入口19a及び小導入口19bの夫々領域における面積である。大導入口19aは、小導入口19bに対して、上流側及び下流側のいずれかの側に設けられている。
【0068】
具体的には、図6に示すように、導入部19は、軸線x方向において同じ位置又は略同じ位置に、周方向に等角度間隔又は略等角度間隔に並べられた複数の大導入口19aを有している。各大導入口19aは、円弧に沿って延びており、例えば図6に示すように、軸線x方向の幅が一定又は略一定に周方向に延びる部分と、その両端の曲面の端部を形成する部分とを有している。大導入口19aは他の形状であってもよい。また、導入部19は、大導入口19aが周方向に複数並べられて成る大導入口19a群を複数有している。例えば、図6に示すように、内ケース10には、軸線x方向に等間隔又は略等間隔に3つの大導入口19a群が並べられている。
【0069】
また、図6に示すように、導入部19は、具体的には、軸線x方向において同じ位置又は略同じ位置に、周方向に等角度間隔又は略等角度間隔に並べられた複数の小導入口19bを有している。各小導入口19bは、径方向に見た際の形状が楕円形、略楕円形、又は周方向に広がった円形の形状を有している。小導入口19bは、大導入口19aと同様に、円弧に沿って延びており、軸線x方向の幅が一定又は略一定に周方向に延びる部分と、その両端の曲面の端部を形成する部分とを有していてもよい。小導入口19bは他の形状であってもよい。また、導入部19は、このように、小導入口19bが周方向に複数並べられて成る小導入口19b群を複数有している。例えば、図6に示すように、内ケース10には、軸線x方向に等間隔又は略等間隔に3つの小導入口19b群が並べられている。
【0070】
また、図6に示すように、内ケース10において、小導入口19bは、大導入口19aが形成されている内ケース10の部分よりも軸線x方向において下流側の部分に形成されている。内ケース10において、小導入口19bは、大導入口19aが形成されている内ケース10の部分よりも軸線x方向において上流側の部分に形成されていてもよい。また、内ケース10において、小導入口19bが形成されている部分と大導入口19aが形成されている部分は、軸線x方向において分かれておらず、導入部19において、大導入口19aと小導入口19bとは混在していてもよい。
【0071】
なお、導入部19の形態は上述の形態に限られない。例えば、導入部19は、夫々1列の大導入口19a群及び小導入口群19bや、夫々1列又は複数列の大導入口19a群及び小導入口群19bから形成されるものであってもよい。また、各大導入口19a群及び各小導入口群19bは夫々複数の大導入口19a及び小導入口19bから構成される導入口群でなくてもよく、1つの大導入口19a及び1つの小導入口19bから構成されていてもよい。また、各大導入口19a群及び各小導入口群19bの一方が1つの大導入口19a又は1つの小導入口19bから構成されていて、各大導入口19a群及び各小導入口群19bの他方が複数の大導入口19a又は複数の小導入口19bから構成されていてもよい。導入部19の形態は、中空糸膜モジュール1の使用態様に応じて種々の形態を有し得る。
【0072】
内ケース10の上流本体部11は、上流側から下流側に向かうに連れて縮径しており、この上流本体部11に大導入口19a及び小導入口19bが形成されている場合、大導入口19a及び小導入口19bから空間Sに流出する気体は、軸線xに対して傾斜した方向に流出する傾向を有する。これにより、大導入口19a及び小導入口19bから空間Sに流出した湿潤ガスは、空間Sにおいて互いに隣接する中空糸膜31の間の空間Gを軸線xに対して傾斜した方向に流れ易くなり、湿潤ガスが中空糸膜31の内部を通る乾燥ガスに対向して流れ易くなる。
【0073】
また、導入部19において、上流側に設けられた大導入口19aの開口面積は、下流側に設けられた小導入口19bの開口面積よりも大きくなっている。このため、開口面積の大きい上流側の大導入口19aから空間Sに流れ出る気体の流量を、開口面積の小さい下流側の小導入口19bから空間Sに流れ出る気体の流量よりも多くすることができる。このように、導入部19における位置に応じて、空間Sに流れ出る気体の流量を調整することができ、これにより、空間Sの位置に応じて互いに隣接する中空糸膜31の間の空間Gを流れる気体の流量を調整することができる。中空糸膜モジュール1においては、上述のように導入部19において上流側の部分から空間Sに流れ出る気体の流量が多く、空間Sにおいてより外周側に気体が流れ入るようにでき、空間Sにおいて外周側の空間Gを流れる気体の流量の増大を図ることができる。一方、上述のように導入部19において下流側の部分から空間Sに流れ出る気体の流量は上流側の部分から空間Sに流れ出る気体の流量よりも少なく、空間Sにおいて内周側の空間Gを流れる気体の流量と、空間Sにおいてより外周側の空間Gに達してそこを流れる気体の流量との平衡を図ることができる。また、この導入部19から流れ出る気体の流量の上流側と下流側との差からも、導入部19から空間Sに流出する気体が、軸線xに対して傾斜した方向に流出する傾向を有するようにできる。
【符号の説明】
【0074】
1…中空糸膜モジュール、10…内ケース、10a…外周面、10b…内周面、11…上流本体部、11a…上流端部、11b…下流端部、12…下流本体部、12a…上流端部、12b…下流端部、13,19…導入部、13a~13c…導入口、14…バイパス部、15…バイパス口、16,17…開口、18…封止部、19a…大導入口,19b…小導入口、20…外ケース、20a…内周面、21…上流本体部、21a…上流端部、21b…下流端部、22…下流本体部、22a…上流端部、22b…下流端部、23…排出部、24,25…開口、S…空間、30…中空糸膜束、30a…上流端、30b…下流端、31…中空糸膜、31a…上流開口、31b…下流開口、31c…外周面、35,36…封止部、50…加湿装置、51…湿潤ガス供給装置、52…乾燥ガス供給装置、F1…第1流体経路、F2…第2流体経路、F3…第3流体経路、G,S…空間、x…軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6