(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】画像処理装置、マニピュレータシステム及び画像処理装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/045 20060101AFI20250321BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20250321BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20250321BHJP
B25J 18/06 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
A61B1/045 623
A61B1/00 V
A61B1/00 552
G02B23/24 B
B25J18/06
(21)【出願番号】P 2023529259
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2021023516
(87)【国際公開番号】W WO2022269736
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【氏名又は名称】西河 宏晃
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(72)【発明者】
【氏名】柳川 涼太
(72)【発明者】
【氏名】岸 宏亮
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-532467(JP,A)
【文献】特開2017-205292(JP,A)
【文献】特開2009-056238(JP,A)
【文献】特開2004-180940(JP,A)
【文献】国際公開第2005/039401(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 - 23/26
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲角度が変化可能な湾曲部を有し、先端部に撮像部が設けられるマニピュレータの前記湾曲角度の情報を取得する取得部と、
前記湾曲角度の情報に基づいて、オブジェクト空間における仮想カメラから見たマニピュレータモデルのCG画像を、ディスプレイに表示する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記湾曲角度に応じた回転角度で前記仮想カメラの視線方向を回転させる回転処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記マニピュレータは、軟性部を含み、
前記湾曲部は、前記軟性部の先端に接続され、
前記撮像部は、前記湾曲部の先端に設けられ、
前記処理部は、前記湾曲角度に応じた前記回転角度で前記視線方向を回転させた前記仮想カメラから見たときの、前記軟性部の先端側の少なくとも一部と前記湾曲部とを示す前記マニピュレータモデルの前記CG画像を、前記ディスプレイに表示することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記処理部は、
前記回転角度を前記湾曲角度に同期して変化させることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記処理部は、
前記湾曲角度が閾値を超えるまで前記回転角度を第1角度に固定し、
前記湾曲角度が前記閾値を超えたとき、前記回転角度を、前記第1角度より大きい第2角度に切り替えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記処理部は、
前記湾曲角度が第1閾値より小さいとき、前記回転角度を第1固定角度に固定し、
前記湾曲角度が、前記第1閾値から、前記第1閾値より大きい第2閾値までの間のとき、前記湾曲角度に応じて前記回転角度を、前記第1固定角度から、前記第1固定角度より大きい第2固定角度まで変化させ、
前記湾曲角度が前記第2閾値より大きいとき、前記回転角度を前記第2固定角度に固定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記処理部は、
前記回転処理を行う回転モードと、前記湾曲角度に関わらず前記回転角度を固定する固定モードとを、切り替え可能であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記取得部は、
第1軸周りの第1湾曲角度と、前記第1軸に交差する第2軸周りの第2湾曲角度との情報を取得し、
前記処理部は、
前記第1湾曲角度と前記第2湾曲角度のうち大きい方の湾曲角度に応じた前記回転角度で前記回転処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記湾曲部は、
第1湾曲部と、前記第1湾曲部より基端側に設けられる第2湾曲部と、を含み、
前記処理部は、
前記第2湾曲部の湾曲角度である第2湾曲部湾曲角度、又は、前記湾曲部の全体としての湾曲角度である全体湾曲角度に応じた前記回転角度で前記回転処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記処理部は、
前記第2湾曲部湾曲角度に応じた前記回転角度で前記回転処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項8において、
前記処理部は、
前記第1湾曲部の湾曲方向が、前記第2湾曲部の湾曲方向と同方向又は逆方向に制御される場合に、前記全体湾曲角度に応じた前記回転角度で前記回転処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
請求項8において、
前記処理部は、
前記第2湾曲部が湾曲制御される第1湾曲モードのとき、前記第2湾曲部湾曲角度に応じた前記回転角度で前記回転処理を行い、
前記第1湾曲部の湾曲方向が、前記第2湾曲部の湾曲方向と同方向に制御される第2湾曲モード、又は、前記第1湾曲部の湾曲方向が、前記第2湾曲部の湾曲方向と逆方向に制御される第3湾曲モードのとき、前記全体湾曲角度に応じた前記回転角度で前記回転処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記回転処理は、前記マニピュレータモデル上に設定された設定点を中心として前記仮想カメラの前記視線方向を回転させる処理であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
湾曲部を有し、先端部に撮像部が設けられるマニピュレータと、
画像処理装置と、
ディスプレイと、
を含み、
前記画像処理装置は、
前記撮像部の撮像方向に追従する仮想カメラの視線方向におけるマニピュレータモデルのCG画像を、前記ディスプレイに表示し、
前記湾曲部の湾曲角度に応じて、前記仮想カメラの前記視線方向を変化させることを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項14】
請求項13において、
前記マニピュレータは、軟性部を含み、
前記湾曲部は、前記軟性部の先端に接続され、
前記撮像部は、前記湾曲部の先端に設けられ、
前記画像処理装置は、前記湾曲角度に応じて前記視線方向を前記撮像方向に追従させた前記仮想カメラから見たときの、前記軟性部の先端側の少なくとも一部と前記湾曲部とを示す前記マニピュレータモデルの前記CG画像を、前記ディスプレイに表示することを特徴とする
マニピュレータシステム。
【請求項15】
請求項13において、
前記画像処理装置は、
前記視線方向を前記湾曲角度に同期して変化させることを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項16】
請求項13において、
前記湾曲部は、
第1湾曲部と、前記第1湾曲部より基端側に設けられる第2湾曲部と、を含み、
前記画像処理装置は、
前記第2湾曲部の湾曲角度である第2湾曲部湾曲角度、又は、前記湾曲部の全体としての湾曲角度である全体湾曲角度に応じて、前記仮想カメラの前記視線方向を変化させることを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項17】
画像処理装置の作動方法であって、
前記画像処理装置が、湾曲角度が変化可能な湾曲部を有し、先端部に撮像部が設けられるマニピュレータの前記湾曲角度の情報を取得するステップと、
前記画像処理装置が、前記湾曲角度の情報に基づいて、オブジェクト空間における仮想カメラの視線方向を前記湾曲角度に応じた回転角度で回転させる回転処理を行うステップと、
前記画像処理装置が、前記オブジェクト空間における前記仮想カメラから見たマニピュレータモデルのCG画像を、ディスプレイに表示するステップと、
を行うことを特徴とする画像処理装置の作動方法。
【請求項18】
請求項17において、
前記マニピュレータは、軟性部を含み、
前記湾曲部は、前記軟性部の先端に接続され、
前記撮像部は、前記湾曲部の先端に設けられ、
前記画像処理装置が、前記湾曲角度に応じた前記回転角度で前記視線方向を回転させた前記仮想カメラから見たときの、前記軟性部の先端側の少なくとも一部と前記湾曲部とを示す前記マニピュレータモデルの前記CG画像を、前記ディスプレイに表示するステップを行うことを特徴とする画像処理装置の作動方法。
【請求項19】
画像処理装置の作動方法であって、
前記画像処理装置が、湾曲部を有するマニピュレータの先端部に設けられた撮像部の撮像方向に追従する仮想カメラの視線方向におけるマニピュレータモデルのCG画像を、ディスプレイに表示するステップと、
前記画像処理装置が、前記湾曲部の湾曲角度に応じて、前記仮想カメラの前記視線方向を変化させるステップと、
を行うことを特徴とする画像処理装置の作動方法。
【請求項20】
請求項19において、
前記マニピュレータは、軟性部を含み、
前記湾曲部は、前記軟性部の先端に接続され、
前記撮像部は、前記湾曲部の先端に設けられ、
前記画像処理装置が、前記湾曲角度に応じて前記視線方向を前記撮像方向に追従させた前記仮想カメラから見たときの、前記軟性部の先端側の少なくとも一部と前記湾曲部とを示す前記マニピュレータモデルの前記CG画像を、前記ディスプレイに表示するステップを行うことを特徴とする画像処理装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、マニピュレータシステム及び画像処理装置の作動方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内視鏡画像と共に、内視鏡の湾曲部の仮想的な3Dモデルを表示するナビゲーション技術が開示されている。操作部に対してアングル操作を行うと、その操作入力に基づいて、3Dモデルにおける湾曲部の湾曲角度が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
術者が3Dモデルを見ながらアングル操作を行ったとき、直感的な操作が難しい場合があるという課題がある。例えば、湾曲角度が大きいときには、内視鏡先端が手前を向くように3Dモデルが表示され、内視鏡画像と3Dモデルで撮像方向が一致しないため、直感的な操作が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、形状が変化可能なマニピュレータの前記形状に関する形状情報を取得する取得部と、前記形状情報に基づいて、オブジェクト空間における仮想カメラから見たマニピュレータモデルのCG画像を、ディスプレイに表示する処理部と、を含み、前記処理部は、前記形状に応じた回転角度で前記仮想カメラの視線方向を回転させる回転処理を行う画像処理装置に関係する。
【0006】
本開示の他の態様は、先端部に撮像部が設けられるマニピュレータと、画像処理装置と、ディスプレイと、を含み、前記画像処理装置は、前記撮像部の撮像方向に追従する仮想カメラの視線方向におけるマニピュレータモデルのCG画像を、前記ディスプレイに表示するマニピュレータシステムに関係する。
【0007】
本開示の更に他の態様は、形状が変化可能なマニピュレータの前記形状に関する形状情報を取得し、前記形状情報に基づいて、オブジェクト空間における仮想カメラの視線方向を前記形状に応じた回転角度で回転させる回転処理を行い、前記オブジェクト空間における前記仮想カメラから見たマニピュレータモデルのCG画像を、ディスプレイに表示する画像処理方法に関係する。
【0008】
本開示の更に他の態様は、マニピュレータモデルのCG画像を表示する表示方法であって、マニピュレータの先端部に設けられた撮像部の撮像方向に追従する仮想カメラの視線方向における前記マニピュレータモデルの前記CG画像を、ディスプレイに表示する表示方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】内視鏡の湾曲部の基端を固定した状態で3Dモデルを表示した場合の表示例。
【
図5】第1実施形態における湾曲角度と視線方向の回転角度との関係。
【
図7】第1実施形態における処理のフローチャート。
【
図8】第2実施形態における湾曲角度と視線方向の回転角度との関係。
【
図10】第2実施形態における処理のフローチャート。
【
図11】第3実施形態における湾曲角度と視線方向の回転角度との関係。
【
図13】第3実施形態における処理のフローチャート。
【
図14】第5実施形態を第2実施形態に組み合わせたときのフローチャート。
【
図15】第5実施形態を第3実施形態に組み合わせたときのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本開示の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
例えば、以下では内視鏡システムにおいて内視鏡の3Dモデルを表示する例を説明するが、本実施形態の手法はマニピュレータシステムにおいてマニピュレータモデルのCG画像を表示する場合に適用可能である。マニピュレータモデルは、操作により形状が変化するマニピュレータの3次元モデルである。マニピュレータは、撮像部が設置される又は撮像部を保持しており、その撮像部の撮像方向が、マニピュレータの形状変化によって変化する。CG画像は、マニピュレータの3次元モデルから生成された画像である。CG画像は2次元情報であるが、3次元モデルを画像化したものという意味で3Dモデル又は3D画像とも呼ぶ。
【0012】
1.画像処理装置、及び内視鏡システム
図1に、内視鏡の湾曲部の基端を固定した状態で3Dモデルを表示した場合の表示例を示す。画面左側に内視鏡画像が表示され、画面右側に内視鏡のCG画像が表示されているとする。なお、CGはComputer Graphicsの略である。
【0013】
図1において、Xr、Yr、Zrは、実際の内視鏡が存在する実空間において内視鏡先端に固定された座標系を示しており、Zrが撮像方向に対応している。x、y、zは、3Dモデルが構築されるオブジェクト空間に固定されたワールド座標系である。オブジェクト空間において、湾曲部の基端がz方向を向くように固定されており、撮像方向は湾曲角度に応じて変化する。
【0014】
表示画像IMA1には、湾曲部がストレートで湾曲していない例を示す。内視鏡画像においては、画面奥行方向が常に撮像方向に一致する。湾曲部がストレートである場合には、3Dモデルにおいても撮像方向が画面奥行方向となり、内視鏡画像における撮像方向と3Dモデルにおける撮像方向とが一致している。この場合には、3Dモデルを見た状態において直感的な湾曲操作が可能である。即ち、湾曲させたい方向と、操作方向とが直感的に一致する。
【0015】
表示画像IMA2には、湾曲部が左にJターンした例、即ち内視鏡先端が画面手前方向を向いた例を示す。3Dモデルにおいて撮像方向が画面手前方向となるので、内視鏡画像における撮像方向と3Dモデルにおける撮像方向とが逆になる。この場合には、湾曲させたい方向と、操作方向とが直感的に一致しにくいため、3Dモデルを見た状態において直感的な湾曲操作が難しい。例えば、更に湾曲させたい場合には、3Dモデルにおいて内視鏡先端を右に動かすことになるが、操作としては左湾曲となり、3Dモデル上における先端の移動方向と操作方向とが一致しない。
【0016】
例えば、手動ダイヤル操作で湾曲操作する内視鏡では、術者は、ダイヤルから得られるワイヤ牽引に伴う抵抗などの力覚フィードバックによって、湾曲角度をある程度推定できる。しかし、湾曲駆動を電動化した電動内視鏡においては、モータ等の駆動部を介してワイヤの牽引を行うため、術者の持つ操作部では力覚フィードバックを得にくい。また電動内視鏡においては、タッチパッドやリモートコントローラ等の駆動部から分離された操作部を使って湾曲操作を行うことも可能であり、この場合より一層力覚フィードバックが得にくい。よって、術者が湾曲角度を把握しやすくなるように、湾曲状態を3Dモデルで表示するナビゲーションによって術者の理解をアシストすることが望まれる。このとき、上記のようなタッチパッド等の操作方向と3Dモデルの動きが直感的に一致しにくいという問題がある。
【0017】
図2は、本実施形態の画像処理装置と内視鏡システムの構成例である。内視鏡システム300は、内視鏡10とディスプレイ20と制御装置100と画像処理装置200と操作部400とを含む。なお、ここでは電動内視鏡を例に説明するが、以下に説明する手法は、電動内視鏡だけでなく、湾曲部を有する様々な内視鏡に適用可能である。また、上述したように、本実施形態において、内視鏡システム300がマニピュレータシステムに相当し、内視鏡10がマニピュレータに相当する。
【0018】
内視鏡10は、スコープとも呼ばれ、体内に挿入され、その体内を撮像する。本実施形態においては、可撓性の挿入部を含む軟性鏡が想定される。内視鏡10は、湾曲部40と撮像部30とを含む。湾曲部40は、内視鏡10の先端部に設けられ、湾曲操作に応じて湾曲可能に構成される。湾曲部40は、湾曲装置又は湾曲機構とも呼ばれる。撮像部30は、撮像素子と対物レンズ等を含む撮像装置であり、湾曲部40の先端側に設けられる。撮像部30は体内を撮像し、その画像信号を制御装置100へ送信する。内視鏡10には、更に照明レンズ、鉗子口、又は吸引口等が更に設けられてもよい。
【0019】
制御装置100は、内視鏡10の制御及び湾曲駆動等を行う。制御装置100は、コントローラー、駆動装置、又はプロセッサユニット等とも呼ばれる。制御装置100は、モータ101と駆動回路102とセンサ103と画像インターフェース104とを含む。
【0020】
駆動回路102は、モータ101を駆動する回路であり、操作部400からの操作入力に応じてモータ101を駆動する。モータ101は、内視鏡10の湾曲部40に接続されたワイヤを牽引することで湾曲部40を湾曲させる。これにより、操作入力に応じた湾曲角度で湾曲部40が湾曲する。センサ103は、湾曲部40の湾曲角度を検出するセンサであり、その検出信号を画像処理装置200へ送信する。センサ103は、例えば、モータ101の回転量を検出するローターリーエンコーダ、又は、ワイヤの走行量を検出する光学センサ等である。センサ103は、検出した湾曲角度を画像処理装置200へ送信する。
【0021】
なお、センサ103は、湾曲角度を推定できる物理量を検出していればよく、湾曲角度そのものを検出していなくてもよい。また、
図2には制御装置100内にセンサを設ける例を示したが、湾曲部40の湾曲角度が検出できる構成となっていればよい。例えば、操作部400に対する湾曲操作の操作入力から、湾曲角度が取得されてもよいし、或いは、内視鏡形状観測装置であるUPDを用いて、外部から湾曲部40の形状を観測し、その観測した形状から湾曲角度が取得されてもよい。
【0022】
操作部400は、内視鏡10を操作する操作入力を受け付け、その操作入力の情報を無線通信によって制御装置100へ送信する。操作部400は、少なくとも湾曲操作を受け付け可能である。操作部400は、例えばタッチパッドであり、タッチパッドに対するタッチ又はスワイプ操作等を湾曲操作として認識する。なお、操作部400は、湾曲操作のためのボタン又はダイヤル等を備えてもよいし、無線でなく有線で制御装置100と通信してもよい。
【0023】
画像インターフェース104は、内視鏡10の撮像部30から画像信号を受信し、その画像信号を画像処理することで内視鏡画像を生成し、その内視鏡画像の画像データを画像処理装置200へ送信する。画像処理は、例えば現像処理、階調補正処理、又はホワイトバランス処理等である。なお、画像インターフェース104が、画像信号を画像処理装置200へ転送し、画像処理装置200が画像信号から内視鏡画像を構築する構成としてもよい。
【0024】
画像処理装置200は、センサ103が検出した湾曲角度に基づいて内視鏡10の3Dモデルを生成し、そのCG画像と内視鏡画像とをディスプレイ20に表示する。画像処理装置200は、例えばPC又はサーバ等の情報処理装置である。画像処理装置200は、取得部220と処理部210とを含む。取得部220のハードウェアは種々想定されるが、例えば、情報処理装置に設けられる通信インターフェース、或いは、処理部210を構成するハードウェアに設けられたデータインターフェース等である。処理部210は、プロセッサ、処理装置又は処理回路等とも呼ばれる。処理部210のハードウェアは種々想定されるが、例えば、CPU、GPU又はマイクロコンピュータ等であってもよいし、或いは、ASIC又はFPGA等であってもよいし、或いは、それらの組み合わせであってもよい。画像処理装置200が不図示のメモリを含み、メモリが、処理部210が行う処理を記述したプログラムを記憶し、そのプログラムを処理部210が実行することで、処理部210が行う処理が実現されてもよい。なお、
図2には、画像処理装置200が制御装置100の外部装置として設けられる例を示したが、画像処理装置200は制御装置100に内蔵されてもよい。
【0025】
取得部220は、制御装置100から内視鏡画像の画像データと湾曲角度の情報を受信する。処理部210は、オブジェクト空間に内視鏡10の3Dモデルを生成し、その3Dモデルを基に生成した内視鏡10のCG画像と、内視鏡画像とをディスプレイ20に表示する。内視鏡画像はディスプレイ20の第1表示領域に表示され、CG画像はディスプレイ20の第2表示領域に表示される。或いは、第1ディスプレイと第2ディスプレイを設け、内視鏡画像が第1ディスプレイに表示され、CG画像が第2ディスプレイに表示される構成としてもよい。処理部210は、3Dモデルの湾曲部を、センサ103が検出した湾曲角度で湾曲させる。術者は、そのCG画像を見ることで、体内に挿入された内視鏡先端の形状を把握できる。
【0026】
以下、3Dモデル及びCG画像の構成手法を説明する。まず、
図3を用いて、実空間における内視鏡10について説明する。
【0027】
軟性部の根元は、
図3に不図示であるが、制御装置100に接続されている。そして、軟性部の先端に湾曲部40の基端が接続され、湾曲部40の先端に硬性部が設けられる。硬性部には撮像部30が内蔵されている。湾曲部40は、多数の関節が直列に接続されており、上下方向と左右方向に湾曲可能となっている。湾曲部40は、湾曲していないとき細長い円筒形状であり、湾曲は、その円筒の軸がカーブを描いて上下左右に曲がった状態のことである。軟性部の先端、つまり湾曲部40の基端にXYZ座標が固定されているとする。Z軸は、軟性部先端の軸方向NDrに平行とする。このとき、湾曲の上下方向はX軸周りの湾曲であり、湾曲の左右方向はY軸周りの湾曲である。また、湾曲部40の先端の軸方向、つまり撮像方向をIDrとしたとき、軟性部先端の軸方向NDrと撮像方向IDrとの成す角度が湾曲角度θrである。
【0028】
図3には、Y軸周りの、つまり左右方向の湾曲角度を示している。但し、湾曲部40は、上下方向と左右方向に独立に操作されるので、X軸周りの湾曲角度とY軸周りの湾曲角度が存在する。以下では、湾曲角度をθrで示して説明する内容は、X軸周り及びY軸周りのいずれの湾曲操作にも適用可能である。それらを明示的に区別して説明する場合には、X軸周りの湾曲角度をθxと記載し、Y軸周りの湾曲角度をθyと記載する。
【0029】
図4に、処理部210が構成する3Dモデルの説明図を示す。3Dモデル50が構築されるオブジェクト空間にxyz座標が固定されているとする。xyz座標をワールド座標とも呼ぶ。軟性部先端の軸方向をNDmとしたとき、NDmとz方向が平行となるように内視鏡の3Dモデル50がオブジェクト空間に固定される。固定部は、例えば軟性部の根元、又は湾曲部の基端である。湾曲部先端の軸方向、つまり撮像方向をIDmとしたとき、軟性部先端の軸方向NDmと撮像方向IDmとの成す角度が湾曲角度θmである。3Dモデル50は、例えば、ポリゴン等のプリミティブ面で構成されたモデル、或いは、ワイヤーフレームモデル等である。
【0030】
センサ103は、実空間における内視鏡10の湾曲角度θrを検出し、処理部210は、その湾曲角度θrを3Dモデル50における湾曲角度θmとして、3Dモデル50を構築する。処理部210は、湾曲角度θmに基づいて仮想カメラ52の視線方向SDcを設定し、その視線方向SDcが注視点RCを向くように仮想カメラ52の位置と姿勢を設定する。注視点RCは、例えば湾曲部の先端に設定されるが、これに限定されず、湾曲部の先端付近などの湾曲部内に設定されていればよい。なお、処理部210は、3Dモデル50のやや上方(+y方向)から注視点RCを見下ろすように仮想カメラ52を配置する。
【0031】
処理部210は、湾曲角度θmに応じて仮想カメラ52の位置と姿勢を変化させることで視線方向SDcを変化させる。このとき、仮想カメラ52の視線方向SDcは、注視点RCを中心として回転することになる。具体的には、y軸周りの湾曲の場合、注視点RCを通りy軸に平行な回転軸を中心として視線方向SDcが回転する。なお以下では、注視点RCを視線方向SDcの回転中心とも呼ぶ。また、仮想カメラ52の位置と姿勢を視点とも呼び、湾曲角度θmに応じて仮想カメラ52の位置と姿勢を変化させることを、視点を回転させる、とも表記する。
【0032】
仮想カメラ52の視線方向SDcと軟性部先端の軸方向NDmとの成す角度をθcとする。視線方向SDcは、この角度θcによって表される。y軸周りの湾曲の場合、zx平面において視線方向SDcと軸方向NDmとの成す角度がθcである。即ち、y軸周りの視線方向SDcの回転角度がθcである。x軸周りの湾曲の場合には、x軸周りの視線方向SDcの回転角度がθcとなる。
【0033】
処理部210は、x軸周りの湾曲角度θxに応じてx軸周りの視線方向SDcの回転角度を制御し、y軸周りの湾曲角度θyに応じてy軸周りの視線方向SDcの回転角度を制御する。なお以下では、角度θcで示して説明する内容は、x軸周り及びy軸周りのいずれの視点回転にも適用可能である。それらを明示的に区別して説明する場合には、x軸周りの回転角度θcx、y軸周りの回転角度θcyと記載する。
【0034】
処理部210は、仮想カメラ52から見た内視鏡3DモデルのCG画像を生成し、そのCG画像を内視鏡画像と共にディスプレイ20に表示する。これにより、湾曲部40の湾曲角度に応じて仮想カメラ52の視点が変化し、画面上において内視鏡画像における撮像方向と3Dモデルにおける撮像方向とを略一致させることができる。撮像方向が略一致することで、術者が湾曲操作の操作方向を把握しやすくなる。なお、第1~第6実施形態で後述するように、内視鏡画像における撮像方向と3Dモデルにおける撮像方向とが必ずしも一致する必要はなく、湾曲操作方向を直感的に把握できる程度に類似した方向となっていればよい。なお、処理部210は、内視鏡3DモデルのCG画像と共に、体内3DモデルのCG画像を表示してもよい。体内3Dモデルは、例えば、CT又はMRI等で事前に撮影された断層画像から構築され、内視鏡3Dモデルと共にオブジェクト空間に構築される。
【0035】
以上の実施形態では、画像処理装置200は、取得部220と処理部210とを含む。取得部220は、形状が変化可能なマニピュレータの形状に関する形状情報を取得する。処理部210は、形状情報に基づいて、オブジェクト空間における仮想カメラ52から見たマニピュレータモデルのCG画像を、ディスプレイ20に表示する。処理部210は、形状に応じた回転角度θcで仮想カメラ52の視線方向SDcを回転させる回転処理を行う。
【0036】
本実施形態によれば、マニピュレータに設置された又はマニピュレータが保持する撮像部の撮像方向が、マニピュレータの形状に応じて変化する。このとき、マニピュレータの形状に応じて仮想カメラ52の視点が変化することで、画面上において、撮像画像における撮像方向とマニピュレータモデルのCG画像における撮像方向とを略一致させることができる。
【0037】
また本実施形態では、マニピュレータは湾曲部40を含む。取得部220は、湾曲部40の湾曲角度θrの情報を形状情報として取得する。処理部210は、湾曲角度θrに応じた回転角度θcで仮想カメラ52の視線方向SDcを回転させる回転処理を行う。
【0038】
本実施形態によれば、湾曲部40の先端に設置された撮像部30の撮像方向IDrが、湾曲角度θrに応じて変化する。このとき、湾曲角度θrに応じて仮想カメラ52の視点が変化することで、画面上において、内視鏡画像における撮像方向IDrと内視鏡3DモデルのCG画像における撮像方向IDmとを略一致させることができる。これにより、術者が3Dモデルを見た時に、直感的に湾曲操作の操作方向を把握しやすくなる。
【0039】
また本実施形態では、回転処理は、マニピュレータモデル上に設定された設定点を中心として仮想カメラ52の視線方向SDcを回転させる処理である。より具体的には、回転処理は、x軸周りの回転の場合、設定点を通りx軸に並行な回転軸を中心とする回転処理であり、y軸周りの回転の場合、設定点を通りy軸に並行な回転軸を中心とする回転処理である。
【0040】
本実施形態において、注視点RCが設定点に対応する。上述したように、注視点RCは3Dモデルの湾曲部内に設定されていればよい。即ち、設定点は、マニピュレータモデルの先端に限らず、マニピュレータモデル上に設定されていればよい。例えば、操作により形状が変化する部分のなかの任意の位置、又は、形状変化する部分が形状変化しない部分に接続される基端等に、設定点が設定されてもよい。
【0041】
また本実施形態では、マニピュレータシステムは、先端部に撮像部が設けられるマニピュレータと、画像処理装置200と、ディスプレイ20と、を含む。画像処理装置200は、撮像部の撮像方向IDrに追従する仮想カメラ52の視線方向SDcにおけるマニピュレータモデルのCG画像を、ディスプレイ20に表示する。
【0042】
本実施形態によれば、撮像方向IDrに仮想カメラ52の視線方向SDcが追従することで、マニピュレータモデルのCG画像における撮像方向が、撮像画像における撮像方向に略一致するように、マニピュレータモデルのCG画像が表示される。なお、視線方向が撮像方向に追従するとは、撮像方向の変化に伴って、その変化と同方向に視線方向が変化するという意味であり、視線方向が撮像方向に一致する必要はない。例えば、後述する第2、第3実施形態においては、視線方向が撮像方向に一致するとは限らないが、このような場合も「追従」に含まれる。
【0043】
2.第1実施形態
図5に、第1実施形態における湾曲角度θmと視線方向SDcの回転角度θcとの関係を示す。
図6に、第1実施形態における表示例を示す。なお以下では、y軸周りの角度については、+y方向から見て反時計回りを正の角度とし、x軸周りの角度については、+x方向から見て反時計回りを正の角度とする。湾曲で言えば、左湾曲及び上湾曲が正角度の湾曲になる。但し、角度の定義はこれに限定されない。
【0044】
図5に示すように、処理部210は、-180度≦θm≦180度の全範囲においてθc=θmに設定する。即ち、処理部210は、仮想カメラ52の視線方向SDcを、内視鏡の3Dモデル50の湾曲角度θmに一致させる。これにより、
図6に示すように、CG画像における撮像方向IDmが、常に画面奥行方向となるので、内視鏡画像における撮像方向IDrと常に一致する。表示画像IMB1は、湾曲部40が湾曲していないときの表示例であり、表示画像IMB2は、湾曲部40が左方向にJターンしたときの表示例である。仮想カメラ52の視線方向SDcが撮像方向IDmに一致するように配置されることで、CG画像における撮像方向IDmが画面奥行方向となる。
【0045】
図7は、第1実施形態における処理のフローチャートである。ステップS1において、処理部210は、センサ103が検出したワイヤ牽引量から、内視鏡10の湾曲角度θrを推定する。具体的には、ワイヤ牽引量と湾曲角度θrを対応付けるモデルを数式又はルックアップテーブル等を用いて記述しておき、そのモデルを用いてワイヤ牽引量を湾曲角度θrに変換する。なお、制御装置100がステップS1の処理を行ってもよい。また、湾曲角度θrを推定するための物理量はワイヤ牽引量に限らず、例えば、操作ノブ回転量、モータ回転量、又はUPDによる形状計測結果等であってもよい。
【0046】
ステップS2において、処理部210は、湾曲角度θrから湾曲部の形状を推定する。即ち、処理部210は、3Dモデルの湾曲角度をθm=θrに設定し、その湾曲角度θmで湾曲したときの湾曲部の形状を、3Dモデルで再現する。具体的には、処理部210は、湾曲部の関節、及び関節を接続するジョイント等の設計情報に基づいて、湾曲角度θmにおける湾曲部の形状をシミュレートすることで、湾曲角度θmにおける3Dモデルを生成する。
【0047】
ステップS3において、処理部210は、3Dモデルの湾曲部先端に対して、規定の位置関係となる位置に仮想カメラ52の視点を設定する。具体的には、処理部210は、湾曲部の先端又は基端に仮想カメラ52の注視点RCを設定し、視線方向SDcの角度をθc=θmに設定し、それらのパラメータに基づいてオブジェクト空間内に仮想カメラ52を設置する。
【0048】
ステップS4において、処理部210は、仮想カメラ52から見た内視鏡3DモデルのCG画像を生成する。ステップS5において、処理部210は、生成されたCG画像を内視鏡画像と共にディスプレイ20に表示する。
【0049】
以上の実施形態では、処理部210は、視線方向SDcの回転角度θcを湾曲角度θrに同期して変化させる。回転角度θcを湾曲角度θrに同期させるとは、湾曲角度θrの変化に対してリアルタイムに回転角度θcを一致させることである。
【0050】
本実施形態によれば、湾曲角度θrと同じ方向に視線方向SDcが向くように仮想カメラ52の視点が回転するので、画面上において、内視鏡画像における撮像方向IDrと内視鏡3DモデルのCG画像における撮像方向IDmとを一致させることができる。これにより、湾曲角度に関わらず、湾曲操作の操作方向と、3Dモデルにおける湾曲部先端の移動方向とが一致するので、術者が操作方向を直感的に把握できる。
【0051】
3.第2実施形態
図8に、第2実施形態における湾曲角度θmと視線方向SDcの回転角度θcとの関係を示す。
図9に、第2実施形態におけるCG画像の表示例を示す。
【0052】
図8に示すように、処理部210は、|θm|≦α度の範囲においてθc=0度に設定し、-180≦θm<-α度の範囲においてθc=-β度に設定し、α<θm≦180度の範囲においてθc=β度に設定する。0<α<180、0<β<180である。2α=βであれば、回転前の視線方向と回転後の視線方向の中央に撮像方向が来たときに視点が切り替わるので、視点の切り替えを把握しやすい。但し、α≦βであればよい。
図9には、α=90度、β=180度であるときの表示例を示す。α=90度の場合には、撮像方向が90度になったときCG画像が左右反転する。撮像方向は、画面奥行方向から横方向の間で変化し、画面横方向よりも手前側を向くことがない。これにより、内視鏡画像における撮像方向とCG画像における撮像方向の差が90度以下となり、直感的な湾曲操作が可能となる。
【0053】
図10は、第2実施形態における処理のフローチャートである。ステップS21において、処理部210は、センサ103が検出したワイヤ牽引量から、内視鏡10の湾曲角度θrを推定する。
【0054】
ステップS22において、処理部210は、仮想カメラ52の視点を内視鏡後方の所定位置に設置する。具体的には、処理部210は、湾曲部の基端に注視点RCを設定し、視線方向SDcの角度をθc=0度に設定する。
【0055】
ステップS23において、処理部210は、x軸周りの湾曲角度が|θx|≧αであるか否かを判定する。|θx|<αである場合、ステップS25に進む。|θx|≧αである場合、ステップS24において、処理部210は、注視点RCを中心としてx軸周りにβ度だけ仮想カメラ52の視点を回転させる。具体的には、処理部210は、θx≦-αである場合、-β度だけ視点を回転させ、θx≧+αである場合、+β度だけ視点を回転させる。次に、ステップS25に進む。
【0056】
ステップS25において、処理部210は、y軸周りの湾曲角度が|θy|≧αであるか否かを判定する。|θy|<αである場合、ステップS27に進む。|θy|≧αである場合、ステップS26において、処理部210は、注視点RCを中心としてy軸周りにβ度だけ仮想カメラ52の視点を回転させる。具体的には、処理部210は、θy≦-αである場合、-β度だけ視点を回転させ、θy≧+αである場合、+β度だけ視点を回転させる。次に、ステップS27に進む。
【0057】
ステップS27において、処理部210は、仮想カメラ52から見た内視鏡3DモデルのCG画像を生成する。ステップS28において、処理部210は、生成されたCG画像を内視鏡画像と共にディスプレイ20に表示する。
【0058】
なお、以上では視点を1回のみ切り替える例を示したが、視点を複数回切り替えるように構成してもよい。
【0059】
以上の実施形態では、処理部210は、湾曲角度θrが閾値αを超えるまで回転角度θcを第1角度に固定する。本実施形態の例では、第1角度は0度であるが、これに限定されない。処理部210は、湾曲角度θrが閾値αを超えたとき、回転角度θcを、第1角度より大きい第2角度βに切り替える。
【0060】
本実施形態によれば、湾曲角度θrが所定の角度を超えたときに視点が切り替わるので、視点を切り替えない場合に比べて、内視鏡画像における撮像方向IDrと内視鏡3DモデルのCG画像における撮像方向IDmとを近くできる。視点が頻繁に回転しないことで、CG画像から湾曲形状を視認しやすくなる期待できる。
【0061】
4.第3実施形態
図11に、第3実施形態における湾曲角度θmと視線方向SDcの回転角度θcとの関係を示す。
図12に、第3実施形態におけるCG画像の表示例を示す。
【0062】
図11に示すように、処理部210は、|θm|≦α1度の範囲においてθc=0度に設定し、α1度<|θm|≦α2度の範囲においてθcを0度から180度まで変化させ、α2度<|θm|≦180度の範囲においてθc=β度に設定する。0<α1<α2<180、0<β<180である。
図12には、α1=75度、α2=105度、β=180度であるときの表示例を示す。湾曲角度θmが75度から105度に変化するとき、仮想カメラの視線方向がθc=0度からθc=180度まで回転する。これにより、内視鏡画像における撮像方向とCG画像における撮像方向の差が75度以下となり、直感的な湾曲操作が可能となる。また、意図的に仮想カメラの視点を変えたこと、及び視点切り替えの意味が分かるようなエフェクトが得られるので、術者がCG画像を見たときに湾曲状態と湾曲操作方向を理解しやすい。
【0063】
図13は、第3実施形態における処理のフローチャートである。ステップS41において、処理部210は、センサ103が検出したワイヤ牽引量から、内視鏡10の湾曲角度θrを推定する。
【0064】
ステップS42において、処理部210は、仮想カメラ52の視点を内視鏡後方の所定位置に設置する。具体的には、処理部210は、湾曲部の基端に注視点RCを設定し、視線方向SDcの角度をθcx=θcy=0度に設定する。
【0065】
ステップS43において、処理部210は、x軸周りの湾曲角度が|θx|≧α1であるか否かを判定する。|θx|<α1である場合、ステップS46に進む。|θx|≧α1である場合、ステップS44において、処理部210は、遷移率γを計算する。min((|θx|-α1)/(α2-α1),1)は、(|θx|-α1)/(α2-α1)と1のうち小さい方を選択する関数であり、sgn(θx)は、θxの符号を抽出する関数である。α1≦|θx|≦α2において0≦γ≦1であり、α2<|θx|においてγ=1である。ステップS45において、処理部210は、注視点RCを中心としてx軸周りにθcx=β×γ度だけ仮想カメラ52の視点を回転させる。次に、ステップS46に進む。
【0066】
ステップS46において、処理部210は、y軸周りの湾曲角度が|θy|≧α1であるか否かを判定する。|θy|<α1である場合、ステップS49に進む。|θy|≧α1である場合、ステップS47において、処理部210は、遷移率γを計算する。ステップS48において、処理部210は、注視点RCを中心としてy軸周りにθcy=β×γ度だけ仮想カメラ52の視点を回転させる。次に、ステップS49に進む。
【0067】
ステップS49において、処理部210は、仮想カメラ52から見た内視鏡3DモデルのCG画像を生成する。ステップS50において、処理部210は、生成されたCG画像を内視鏡画像と共にディスプレイ20に表示する。
【0068】
以上の実施形態では、処理部210は、湾曲角度θrが第1閾値α1より小さいとき、回転角度θcを第1固定角度に固定する。本実施形態の例では、第1固定角度は0度であるが、これに限定されない。処理部210は、湾曲角度θrが、第1閾値α1から、第1閾値α1より大きい第2閾値α2までの間のとき、湾曲角度θrに応じて回転角度θcを、第1固定角度から、第1固定角度より大きい第2固定角度βまで変化させる。処理部210は、湾曲角度θrが第2閾値α2より大きいとき、回転角度θcを第2固定角度βに固定する。
【0069】
本実施形態によれば、視点を回転させない場合に比べて、内視鏡画像における撮像方向とCG画像における撮像方向の差を小さくできるので、直感的な湾曲操作が可能となる。また、意図的に仮想カメラの視点を変えたこと、及び視点切り替えの意味が分かるようなエフェクトが得られるので、術者がCG画像を見たときに湾曲状態と湾曲操作方向を理解しやすい。
【0070】
5.第4実施形態
第4実施形態では、湾曲角度に関わらずに仮想カメラ52の視点を固定する固定モードと、湾曲角度に応じて仮想カメラ52の視点を回転させる回転モードとが切り替え可能である。
【0071】
操作部400は、固定モードと回転モードとを切り替える操作入力が可能に構成されている。処理部210は、操作部400によりモードが切り替えられたとき、その入力に応じて固定モード又は回転モードに設定する。処理部210は、固定モードにおいて、例えばθc=0度に設定し、回転モードにおいて、上述した第1~第3形態、及び後述する第5、第6実施形態のいずれかの視点回転を行う。
【0072】
以上の実施形態では、処理部210は、仮想カメラ52の視線方向SDcを回転させる回転処理を行う回転モードと、マニピュレータの形状に関わらず回転角度θcを固定する固定モードとを、切り替え可能である。
【0073】
本実施形態によれば、術者に応じて回転モードと固定モードを切り替え可能になる。こにより、視点が固定された方が湾曲操作の状態と操作方向を把握しやすい術者と、視点が回転した方が湾曲操作の状態と操作方向を把握しやすい術者のいずれにも、対応可能である。
【0074】
6.第5実施形態
第5実施形態では、x軸周りの湾曲角度θxがy軸周りの湾曲角度θyより大きい場合には、x軸周りに仮想カメラ52の視点を回転させ、y軸周りの湾曲角度θyがx軸周りの湾曲角度θxより大きい場合には、y軸周りに仮想カメラ52の視点を回転させる。以下、第5実施形態を第2実施形態と第3実施形態に組み合わせた例を説明するが、第5実施形態を第1実施形態に組み合わせてもよい。
【0075】
図14は、第5実施形態を第2実施形態に組み合わせたときのフローチャートである。ステップS61において、処理部210は、センサ103が検出したワイヤ牽引量から、内視鏡10の湾曲角度θrを推定する。
【0076】
ステップS62において、処理部210は、仮想カメラ52の視点を内視鏡後方の所定位置に設置する。具体的には、処理部210は、湾曲部の基端に注視点RCを設定し、視線方向SDcの角度をθc=0度に設定する。
【0077】
ステップS63において、処理部210は、x軸周りの湾曲角度がx軸周りの湾曲角度以上であるか否か、つまり|θx|≧|θy|であるか否かを判定する。|θx|≧|θy|である場合、ステップS64において、処理部210は、x軸周りの湾曲角度が|θx|≧αであるか否かを判定する。|θx|<αである場合、ステップS68に進む。|θx|≧αである場合、ステップS65において、処理部210は、注視点RCを中心としてx軸周りにβ度だけ仮想カメラ52の視点を回転させる。次に、ステップS68に進む。
【0078】
ステップS63において|θx|<|θy|である場合、ステップS66において、処理部210は、y軸周りの湾曲角度が|θy|≧αであるか否かを判定する。|θy|<αである場合、ステップS68に進む。|θy|≧αである場合、ステップS67において、処理部210は、注視点RCを中心としてy軸周りにβ度だけ仮想カメラ52の視点を回転させる。次に、ステップS68に進む。
【0079】
ステップS68において、処理部210は、仮想カメラ52から見た内視鏡3DモデルのCG画像を生成する。ステップS69において、処理部210は、生成されたCG画像を内視鏡画像と共にディスプレイ20に表示する。
【0080】
図15は、第5実施形態を第3実施形態に組み合わせたときのフローチャートである。ステップS81において、処理部210は、センサ103が検出したワイヤ牽引量から、内視鏡10の湾曲角度θrを推定する。
【0081】
ステップS82において、処理部210は、仮想カメラ52の視点を内視鏡後方の所定位置に設置する。具体的には、処理部210は、湾曲部の基端に注視点RCを設定し、視線方向SDcの角度をθcx=θcy=0度に設定する。
【0082】
ステップS83において、処理部210は、x軸周りの湾曲角度がy軸周りの湾曲角度以上であるか否か、つまり|θx|≧|θy|であるか否かを判定する。|θx|≧|θy|である場合、ステップS84において、処理部210は、x軸周りの湾曲角度が|θx|≧α1であるか否かを判定する。|θx|<α1である場合、ステップS90に進む。|θx|≧α1である場合、ステップS85において、処理部210は、遷移率γを計算する。ステップS86において、処理部210は、注視点RCを中心としてx軸周りにθcx=β×γ度だけ仮想カメラ52の視点を回転させる。次に、ステップS90に進む。
【0083】
ステップS83において|θx|<|θy|である場合、ステップS87において、処理部210は、y軸周りの湾曲角度が|θy|≧α1であるか否かを判定する。|θy|<α1である場合、ステップS90に進む。|θy|≧α1である場合、ステップS88において、処理部210は、遷移率γを計算する。ステップS89において、処理部210は、注視点RCを中心としてx軸周りにθcy=β×γ度だけ仮想カメラ52の視点を回転させる。次に、ステップS90に進む。
【0084】
ステップS90において、処理部210は、仮想カメラ52から見た内視鏡3DモデルのCG画像を生成する。ステップS91において、処理部210は、生成されたCG画像を内視鏡画像と共にディスプレイ20に表示する。
【0085】
以上の実施形態では、取得部220は、第1軸周りの第1湾曲角度θxと、第1軸に交差する第2軸周りの第2湾曲角度θyとの情報を取得する。本実施形態の例では、x軸が第1軸に対応し、y軸が第2軸に対応する。処理部210は、第1湾曲角度θxと第2湾曲角度θyのうち大きい方の湾曲角度に応じた回転角度θcで回転処理を行う。
【0086】
本実施形態によれば、x軸周り又はy軸周りの一方のみ仮想カメラ52の視点が回転するので、両方の軸の周りで視点が回転する場合に比べて、CG画像における視点回転が簡素化される。これにより、CG画像から湾曲形状を視認しやすくなる期待できる。
【0087】
7.第6実施形態
図16に、第6実施形態における湾曲部の構成例を示す。湾曲部40は、第1湾曲部41と第2湾曲部42とを含む。なお、第1湾曲部41を先端湾曲部とも呼び、第2湾曲部42を基端湾曲部とも呼ぶ。
【0088】
第2湾曲部42の基端は、湾曲部40の基端であり、軟性部の先端に接続されている。第1湾曲部41の基端は、第2湾曲部42の先端に接続され、第1湾曲部41の先端に硬質部と撮像部30が設けられている。第5実施形態では電動内視鏡が想定されており、
図17で後述するモードに応じて第1湾曲部41と第2湾曲部42が制御される。モードに応じて、第1湾曲部41と第2湾曲部42が独立に制御されてもよいし、協調して制御されてもよい。
【0089】
図16に示すように、軟性部の先端の軸方向をNDmとし、第2湾曲部42の先端の軸方向をID2とし、第1湾曲部41の先端の軸方向をID1とする。このとき、ID1とID2の成す角度が第1湾曲部41の湾曲角度θ1であり、ID2とNDmの成す角度が第2湾曲部42の湾曲角度θ2である。また、湾曲部40全体としての湾曲角度はθA=θ1+θ2となり、これを全体湾曲角度と呼ぶこととする。
【0090】
図17に、2段湾曲の制御モードの例を示す。制御装置100は、2段湾曲の制御モードとして、先端湾曲モード、基端湾曲モード、疑似一段モード、及び平行モードを有する。操作部400は、モード切り替え操作と各モードにおける湾曲操作を受け付け可能に構成される。また制御装置100は、第1湾曲部41を湾曲させる第1モータと、第2湾曲部42を湾曲させる第2モータとを含み、操作部400の操作入力に応じて第1モータと第2モータを制御することで、第1湾曲部41と第2湾曲部42を湾曲駆動する。処理部210は、操作部400により設定されたモードに応じて、仮想カメラ52の視点制御を切り替える。
【0091】
先端湾曲モードでは、第2湾曲部42の湾曲角度θ2が固定であり、第1湾曲部41の湾曲角度θ1が操作入力に応じて可変に制御される。
【0092】
基端湾曲モードでは、第1湾曲部41の湾曲角度θ1が固定であり、第2湾曲部42の湾曲角度θ2が操作入力に応じて可変に制御される。
【0093】
先端湾曲モードと基端湾曲モードにおいて、処理部210は、第2湾曲部42の先端に注視点RCを設定し、仮想カメラ52の視線方向を角度θc=θ2に設定する。なお、注視点RCは第2湾曲部42内にあればよく、例えば第2湾曲部42の先端付近にあればよい。また、仮想カメラ52の視点はθc=θ2に限定されず、第2~第5実施形態で説明した手法が組み合わされてもよい。
【0094】
第1湾曲部41の可動範囲よりも第2湾曲部42の可動範囲の方が大きいことから、基端湾曲モードで大まかな湾曲を定めた後に、そこを基準として先端湾曲モードで湾曲を調整して処置等を行う。このため、基準である第2湾曲部42の湾曲に応じて視点を定める、即ち、仮想カメラ52の視線方向を角度θc=θ2に設定することで、術者が湾曲操作を直感的に把握しやすくなる。
【0095】
疑似一段モードでは、第1湾曲部41と第2湾曲部42が1つの湾曲部として振る舞うように協調制御される。例えば、左湾曲操作が行われたとき、θ1とθ2が共に+方向に制御され、右湾曲操作が行われたとき、θ1とθ2が共に-方向に制御される。これにより、湾曲部が全体として湾曲角度θA=θ1+θ2で湾曲した状態となる。
【0096】
並行モードでは、撮像方向が並行移動するように第1湾曲部41と第2湾曲部42が制御される。例えば、左方向に操作されたとき、θ2が+方向に制御され、θ1が-方向に制御される。このとき、θ1=-θ2となるように制御されることで、撮像方向が一定に保たれたまま撮像部が左方向に並行移動する。
【0097】
疑似一段モードと並行モードにおいて、処理部210は、第1湾曲部41の先端に注視点RCを設定し、仮想カメラ52の視線方向を角度θc=θAに設定する。なお、注視点RCは第1湾曲部41内にあればよく、例えば第1湾曲部41の先端付近にあればよい。また、仮想カメラ52の視点はθc=θAに限定されず、第2~第5実施形態で説明した手法が組み合わされてもよい。
【0098】
以上の実施形態では、湾曲部40は、第1湾曲部41と、第1湾曲部41より基端側に設けられる第2湾曲部42と、を含む。処理部210は、第2湾曲部42の湾曲角度である第2湾曲部湾曲角度θ2、又は、湾曲部40の全体としての湾曲角度である全体湾曲角度θAに応じた回転角度θcで回転処理を行う。
【0099】
本実施形態によれば、第1湾曲部41と第2湾曲部42による2段湾曲において、その湾曲状態に応じて仮想カメラ52の視点を撮像方向に追従させることができる。これにより、2段湾曲においても、湾曲操作方向の直感的な把握が可能になる。
【0100】
また本実施形態では、処理部210は、第2湾曲部湾曲角度θ2に応じた回転角度θcで回転処理を行う。具体的には、第1湾曲部41と第2湾曲部42が個別に制御される先端湾曲モードと基端湾曲モードにおいて、この回転処理が行われる。
【0101】
基準となる大まかな湾曲を定める第2湾曲部42の湾曲角度θ2に応じて視点を回転させることで、術者が湾曲操作を直感的に把握しやすくなる。
【0102】
また本実施形態では、処理部210は、第1湾曲部41の湾曲方向が、第2湾曲部42の湾曲方向と同方向又は逆方向に制御される場合に、全体湾曲角度θAに応じた回転角度θcで回転処理を行う。具体的には、第1湾曲部41と第2湾曲部42が協調して制御される疑似一段モードと並行モードにおいて、この回転処理が行われる。
【0103】
第1湾曲部41と第2湾曲部42が協調して制御される場合には、湾曲部40の先端が向く方向に応じて視点が制御される方が、CG画像から湾曲状態を把握しやすいと想定される。
【0104】
また本実施形態では、処理部210は、第2湾曲部42が湾曲制御される第1湾曲モードのとき、第2湾曲部湾曲角度θ2に応じた回転角度θcで回転処理を行う。処理部210は、第1湾曲部41の湾曲方向が、第2湾曲部42の湾曲方向と同方向に制御される第2湾曲モード、又は、第1湾曲部41の湾曲方向が、第2湾曲部42の湾曲方向と逆方向に制御される第3湾曲モードのとき、全体湾曲角度θAに応じた回転角度θcで回転処理を行う。本実施形態において、基端湾曲モードが第1湾曲モードに対応し、疑似一段モードが第2湾曲モードに対応し、並行モードが第3湾曲モードに対応する。
【0105】
本実施形態によれば、2段湾曲の様々な湾曲制御モードに応じて、その湾曲制御モードに適切な視点回転を行うことができる。これにより、各湾曲制御モードにおいて、術者に適切な3DモデルのCG表示を提示できる。
【0106】
以上、本実施形態およびその変形例について説明したが、本開示は、各実施形態やその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階では、要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記した各実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることができる。例えば、各実施形態や変形例に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態や変形例で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、本開示の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0107】
10 内視鏡、20 ディスプレイ、30 撮像部、40 湾曲部、41 第1湾曲部、42 第2湾曲部、50 3Dモデル、52 仮想カメラ、100 制御装置、101 モータ、102 駆動回路、103 センサ、104 画像インターフェース、200 画像処理装置、210 処理部、220 取得部、300 内視鏡システム、400 操作部、IDm,IDr 撮像方向、RC 注視点、SDc 視線方向、θc 回転角度、θm,θr 湾曲角度