(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】縁石
(51)【国際特許分類】
E01F 9/541 20160101AFI20250324BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20250324BHJP
【FI】
E01F9/541
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2021127679
(22)【出願日】2021-08-03
【審査請求日】2024-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中北 英一
(72)【発明者】
【氏名】森 信人
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘誠
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/208515(WO,A1)
【文献】特開2020-022122(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00921233(EP,A1)
【文献】特開平10-121408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/00-11/00
G01S 13/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路の側部において、進行方向に沿って連設される縁石であって、
レーダー波の反射強度を高めるためのコーナーキューブ状の反射強化部が、走行路に面して
開口する直方体状の凹部内に形成されていることを特徴とする、縁石。
【請求項2】
前記
凹部は、走行路に面する側面を削孔することにより形成された
穴であることを特徴とする、請求項
1に記載の縁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の走行路に沿って設置される縁石に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波等のレーダーシステムを用いて道路交通の安全性を図るシステムが開発されている。例えば、特許文献1には、車両の後面に、後方車両から照射されたレーダー波を入射方向へ反射するコーナーリフレクタを設けることで、車両同士の車間距離や相対速度などを計測するレーダーシステムが開示されている。
また、道路構造物等に反射物を設けておけば、当該反射物にレーダー波を照射し、その反射波を検知することで、道路走行中の車両の走行路に対する位置を適切に把握することができる。走行路に対する車両の位置を把握できれば、自動運転システム等の走行時の安全性が向上する。
また、レーダーシステムが普及すれば、データを共有することで、交通量を把握することが可能となり、安全な走行に活用できる。
【0003】
降雨強度や雨滴粒径に応じてレーダー波の伝播が減衰することが知られている。例えば、特許文献2には、伝搬路を介して到来した信号のレベルの偏差と、その伝搬路の長さとからこの伝搬路における降雨強度を算出する雨量観測装置が開示されている。そのため、道路構造物などに設けられた反射物に照射したレーダー波の反射強度の減衰量により、降雨量を推測することができる。レーダーシステムによって降雨量を観測することで、高精度の降雨量データを入手可能となり、豪雨災害による被害を軽減できる。
ところが、道路に対してレーダーシステム専用の新たな構造物を設けることや、既存の道路構造物にコーナーリフレクタ等の部材を突設することは、通行の妨げになるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-103283号公報
【文献】特開2004-354080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、レーダー波の反射のみに使用する専用の構造物を新設したり既存構造体に反射体を突設することなく、道路施設等に対して照射されたレーダー波の反射強度を高めることを可能とする縁石を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の縁石は、走行路に沿って連設されるものであって、レーダー波の反射強度を高めるためのコーナーキューブ状の反射強化部が走行路に面して開口する直方体状の凹部内に形成されている。
かかる縁石によれば、直角の角を有するコーナーキューブ状の反射強化部によりレーダー波の反射強度が高められているため、レーダー波を利用した安全走行システムや降雨量測定システムに利用できる。反射強化部は、縁石自体に直接形成されているため、レーダー波の反射のみに使用する専用の構造体を新設したり既設構造物に反射体を突設する必要がなく、したがって、車両の通行に影響を及ぼすこともない。
また、前記縁石を利用すれば、前記反射強化部に入射したレーダー波の反射強度減衰量により、降雨量を推定することができる。この降雨量推定方法によれば、道路に設置された縁石を利用して降雨量を推定できるため、縁石設置箇所における降雨状況を適切に把握することが可能となり、これを活用することで、降雨による被害を最小限に抑えることができる。
なお、前記反射強化部は、走行路に面して開口する直方体状の凹部内に形成されていて、反射強化部が三面コーナーリフレクタと同様な形状に形成されているため、高い反射強度が確保できる。
前記反射強化部は、走行路に面する側面を削孔することにより形成された穴に埋め込まれた反射体であれば、より高い反射強度を確保できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の縁石によれば、レーダー波の反射のみに使用する専用の構造物を新設したり既存構造物に反射体を突設することなく、道路施設に対して照射されたレーダー波の反射強度を高めることが可能となり、道路施設を交通安全システムに活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】シミュレーションの縁石とレーダー装置との位置関係の概要を示す平面図である。
【
図6】シミュレーションの道路幅と装置高の関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、車両等の走行路に沿って設置される縁石1について説明する。
図1に本実施形態の縁石1を示す。本実施形態の縁石1は、
図1に示すように、コンクリート製のブロック部材であって、長さL=60cm、高さH=15cm、底幅B=15cmの柱状部材からなる。縁石1の走行路に面する側面2には、レーダー波の反射強度を高めるための反射強化部3が形成されている。
反射強化部3は、走行路に面して開口する正面視矩形状の凹部4内に形成されている。本実施形態では、縁石1の長手方向に間隔をあけて、3つの凹部4,4,4が形成されている。凹部4は、深さd、高さhおよび幅wがそれぞれ5cmの立方体状に形成されている。すなわち、凹部4は、底面と四つの側壁との角が直角で、かつ、側壁同士の角も直角を呈している。これにより、凹部4の底面の四つの角部分のそれぞれに、三つの面が直角に接するコーナーキューブ状の反射強化部3が形成されている。反射強化部3は、三つの面のうちのいずれの面にレーダー波が入射した場合であっても、三つの面内で反射を繰り返して、正確に入射方向にレーダー波を跳ね返す。そのため、反射強化部3によれば、三面コーナーリフレクタと同様な高い反射強度が得られる。
凹部4は、縁石1の製造時に型枠に突起(箱抜き)を設けておくことにより形成してもよいし、角柱状に形成された縁石1の側面を彫り込むことにより形成してもよい。
【0010】
図2に縁石1の設置状況の例を示す。
図2に示すように、縁石1は、走行路5に沿って連設されているため、走行安全システムを備える車両Cは、走行路5を走行中に、縁石1の反射強化部3に照射したレーダー波Rの反射波を検知することで、走行路5に対する車両Cの位置を適切に把握することができ、ひいては、安全な走行を得られる。
また、縁石1を利用すれば、降雨量の観測も可能である。すなわち、道路沿いに設けられた常設のレーダー装置等(図示せず)から照射されて縁石1の反射強化部3に入射したレーダー波Rの反射強度減衰量により、降雨量を推定することできる。そのため、縁石1を走行路5に沿って連設しておけば、高解像度の降雨量データが大量に入手でき、豪雨災害による被害軽減に役立てることができる。
【0011】
本実施形態の縁石1によれば、直角の角を有するコーナーキューブ状の反射強化部3によりレーダー波Rの反射強度が高められているため、レーダー波Rを利用した安全走行システムや降雨量測定システムに利用できる。反射強化部3は、縁石1自体に直接形成されているため、レーダー波Rの反射のみに使用する専用の構造体を新設したり既設構造物に反射体を突設する必要がない。そのため、車両Cの通行に影響を及ぼすこともない。
また、道路に設置された縁石1を利用して降雨量を推定できるため、縁石1の設置箇所における降雨状況を適切に把握することが可能となり、これを活用することで、降雨による被害を最小限に抑えることができる。しかも、本実施形態の縁石1の外形は、既設の縁石と大きく異ならないので、既設の縁石に代えて縁石1を設置することができる。つまり、既設の縁石に代えて縁石1を設置すれば、設置スペースを新たに確保せずとも、降雨状況を把握したい地域に多数の縁石1を分散して設置することができる。
【0012】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限らず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、縁石1に形成する反射強化部3の数や配置は限定されるものではない。例えば、縁石1の中央の1か所のみに形成してもよいし、縁石1の両端に形成してもよい。
また、反射強化部3は、
図3に示すように、縁石1の端部を切り欠くことにより形成してもよい。すなわち、縁石1の端部の側面同士の角に形成された切込み8(凹部4)の底部に反射強化部3を形成してもよい。この場合には、隣り合う縁石1の切込み8同士を組み合わせることで、正面視矩形状の凹部4が形成される。
また、前記実施形態では、縁石1に立方体状の凹部4を形成することより、反射強化部3を形成する場合について説明したが、反射強化部3は、
図4に示すように、縁石1の走行路5に面する側面2を削孔することにより形成された穴6に埋め込まれた反射体7であってもよい。また、凹部4は、立方体状に限定されるものではなく、例えば、直方体状や三角錐状であってもよい。
また、前記実施形態では、縁石1の側面2に形成された凹部4により反射強化部3を形成する場合について説明したが、反射強化部3は、側面2に凸部を形成することより、形成してもよい。
【0013】
以下、縁石1の反射強化部3の反射強度を確認したシミュレーション結果を示す。
(1)凹部の形状を変化させた場合の反射強度
シミュレーションでは、反射強化部3(凹部4)がない場合の縁石(比較例)の反射強度に対する反射強化部3の反射強度の比率(反射レイ数比)を算出した。
図5にシミュレーションにおける計算条件の概要を示す。
図5に示すように、実施例、比較例ともに縁石は、5.8mの範囲に10個並設し、幅10mの走行路の反対側から縁石に対してレーダー波Rを照射して反射強度を演算した。縁石に照射するレーダー波Rは、ミリ波レーダーとし、高さ5mの位置に設置したレーダー装置から照射する。
本シミュレーションでは、実施例として、縁石1に反射強化部3(凹部4)を1つ形成した場合と、反射強化部3(凹部4)を2つ形成した場合と、反射強化部3(凹部4)を3つ形成した場合について、それぞれ反射レイ数比を算出した。なお、凹部4の深さd、高さh、幅wをそれぞれ2.5cm、5cmおよび10cmに変化させた場合についても、それぞれ反射強度を算出した。表1に反射強化部3を1つにした場合、表2に反射強化部3を2つにした場合、表3に反射強化部3を3つにした場合の計算結果を示す。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
表1~3に示すように、縁石1に凹部4(反射強化部3)を形成することにより、反射強化部3を有しない縁石と比べて反射レイ数比が大きくなり、反射強度が増加することが確認できた。
また、凹部4の深さd、高さhおよび幅wが全て5cmの「基本形」について、凹部4の数の違いにより反射レイ数比の違いを比較すると、凹部4が1つの場合は、反射レイ数比が7.89であったのに対し、凹部4(が2つの場合は14.01、3つの場合は20.38であった。したがって、凹部4(反射強化部3)の数を増やすことで、反射強度が高まることが確認できた。
また、凹部4の深さd、高さhおよび幅wのいずれか一つを2.5cmにして他を5cmにした場合は、凹部4の深さd、高さhおよび幅wが全て5cmの基本形の5cmよりも反射レイ数比が低下した。
さらに、凹部4の深さを10cmに大きくすると反射強度が低下する一方、幅または高さを10cmに大きくした場合であっても、基本形(全て5cm)と大幅な変化はなかった。
表1~3に示す結果から、本シミュレーションでは、凹部4の深さを5cm以下にすれば、反射強化部3を有していない縁石1と比べて、反射レイ数比が2倍以上となり、反射強度が大幅に増加することが確認できた。また、凹部4の入り口(幅および高さ)を5cm以上にすれば、反射強化部3を有していない縁石1と比べて、反射レイ数比が2倍以上となり、反射強度が大幅に増加することが確認できた。
【0018】
(2)道路幅、装置高を変化させた場合の反射強度
次に、縁石1にミリ波レーダーを照射するレーダー装置の高さ位置(装置高)と道路幅を変化させた場合の反射強度を算出した。
図6に本シミュレーションにおける道路幅と装置高の位置関係を示す。
本シミュレーションでは、レーダー装置の高さ位置を1.25m、2.5m、5mに変化させた。また、道路幅を5m、10mおよび20mに変化させた場合についても算出した。
表4に道路幅を5m、装置高を1.25mの場合のシミュレーション結果、表5に道路幅を5m、装置高を2.5mの場合のシミュレーション結果、表6に道路幅を5m、装置高を5mの場合のシミュレーション結果を示す。
また、表7に道路幅を10m、装置高を1.25mの場合のシミュレーション結果、表8に道路幅を10m、装置高を2.5mの場合のシミュレーション結果、表9に道路幅を10m、装置高を5mの場合のシミュレーション結果を示す。
また、表10に道路幅を20m、装置高を1.25mの場合のシミュレーション結果、表11に道路幅を20m、装置高を2.5mの場合のシミュレーション結果、表12に道路幅を20m、装置高を5mの場合のシミュレーション結果を示す。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
表4~12に示すように、本実施形態の縁石1によれば、道路幅およびレーダー装置の高さに限定されることなく、反射強度が増加することが確認できた。特に、凹部4の深さdが5cm、高さhが5cm、幅wが10cmの場合には、全てのケースにおいて反射強度が2倍以上となった。また、凹部4の深さdが5cm、高さhが5cm、幅wが5cmの場合も、道路幅が5m、装置高が5m以外のすべてのケースにおいて、反射強度が2倍以上となった。
【符号の説明】
【0029】
1 縁石
2 側面
3 反射強化部
4 凹部
5 走行路
6 穴
7 反射体
8 切込み
C 車両
R レーダー波