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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】太陽電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20250324BHJP
   H10K 30/88 20230101ALI20250324BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/88
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024025559
(22)【出願日】2024-02-22
【審査請求日】2024-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松木 克則
(72)【発明者】
【氏名】松本 健治
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-103887(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230682(WO,A1)
【文献】特開2021-057588(JP,A)
【文献】特開2013-143401(JP,A)
【文献】国際公開第2023/182435(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0058094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-85/60
H10F 10/00ー19/90
H10F 71/00-71/10
H10F 77/00-77/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電層を保護層間に挟み込んでなる積層体を有する太陽電池であって、
前記積層体の全周の端面には、ポリシラザン成分を含む液状のセラミックコート剤の硬化物であるセラミック被膜が固着しているとともに、前記積層体の表裏面には、前記セラミック被膜が固着しておらず、
前記保護層間における前記太陽光発電層の側方には硬化した接着剤が配されており、かつ、前記太陽光発電層は、その表裏面のいずれにも前記接着剤が付着されずに前記保護層間に挟み込まれており、
前記端面は、中央の前記接着剤の層を含む複数層の層状面とされることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
請求項1において、
前記保護層は、合成樹脂フィルムに無機材料をコーティングしてなることを特徴とする太陽電池。
【請求項3】
請求項1において、
前記保護層は、ガラス板またはガラス板と合成樹脂フィルムとの積層材よりなることを特徴とする太陽電池。
【請求項4】
太陽光発電層を保護層間に挟み込んでなる積層体を有し、該積層体の全周の端面に、ポリシラザン成分を含むセラミック被膜が固着してなる太陽電池の製造方法であって、
作業面に、平面視で角リング状の親水性領域と、該親水性領域に隣接する撥水性領域とを形成しておき、
前記積層体を、その平面視で方形状の外縁が前記親水性領域に平面視において収まるように前記作業面に設置し、
ポリシラザン液を含む液状のセラミックコート剤を前記端面に滴下することで前記セラミック被膜を形成することを特徴とする、太陽電池の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記親水性領域は、前記積層体の平面形状に略合致した方形の外縁に沿った帯状の領域とされる一方、前記撥水性領域は、前記親水性領域の内側及び外側のそれぞれに隣接する領域とされ、
前記積層体を前記親水性領域の内側に位置する前記撥水性領域に載置することを特徴とする、太陽電池の製造方法。
【請求項6】
太陽光発電層を保護層間に挟み込んでなる積層体を有し、該積層体の全周の端面に、ポリシラザン成分を含むセラミック被膜が固着してなる太陽電池の製造方法であって、
作業面に、撥水性領域と、該撥水性領域に隣接する超撥水性領域とを形成しておき、
ポリシラザン液を含む液状のセラミックコート剤を前記撥水性領域に滴下して液状突出条を形成し、
前記積層体を、端面が液状突出条に接触するように配置することで前記セラミック被膜を形成することを特徴とする、太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電層を保護層間に挟み込んでなる積層体を有する太陽電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の太陽電池では、酸素や水蒸気のガスバリア性を高めるために、表裏面側に配する保護層(例えば合成樹脂製のバリアフィルム)に加え、または代えて、太陽光発電層をガスバリア性が高いポリシラザン被膜で覆う技術が提案されている。特許文献1のものでは、太陽光発電層の全体がポリシラザンによる封止層の中に配されて保護されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6876480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のもののように、太陽光発電層を全方向より取り囲むようにポリシラザンを配するものでは、1つの太陽電池を形成するために高価なポリシラザンを多く必要とするため、コスト高となるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、ポリシラザンの使用量を抑えながらもガスバリア性を担保できる太陽電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の太陽電池は、太陽光発電層を保護層間に挟み込んでなる積層体を有する太陽電池であって、前記積層体の全周の端面には、ポリシラザン成分を含む液状のセラミックコート剤の硬化物であるセラミック被膜が固着しているとともに、前記積層体の表裏面には、前記セラミック被膜が固着しておらず、前記保護層間における前記太陽光発電層の側方には硬化した接着剤が配されており、かつ、前記太陽光発電層は、その表裏面のいずれにも前記接着剤が付着されずに前記保護層間に挟み込まれており、前記端面は、中央の前記接着剤の層を含む複数層の層状面とされることを特徴とする。
【0007】
本発明の太陽電池の製造方法は、太陽光発電層を保護層間に挟み込んでなる積層体を有し、該積層体の全周の端面に、ポリシラザン成分を含むセラミック被膜が固着してなる太陽電池の製造方法であって、作業面に、平面視で角リング状の親水性領域と、該親水性領域に隣接する撥水性領域とを形成しておき、前記積層体を、その平面視で方形状の外縁が前記親水性領域に平面視において収まるように前記作業面に設置し、ポリシラザン液を含む液状のセラミックコート剤を前記端面に滴下することで前記セラミック被膜を形成することを特徴とする。
【0008】
本発明の他の太陽電池の製造方法は、太陽光発電層を保護層間に挟み込んでなる積層体を有し、該積層体の全周の端面に、ポリシラザン成分を含むセラミック被膜が固着してなる太陽電池の製造方法であって、作業面に、撥水性領域と、該撥水性領域に隣接する超撥水性領域とを形成しておき、液状のセラミックコート剤を前記撥水性領域に滴下して液状突出条を形成し、前記積層体を、端面が液状突出条に接触するように配置することで前記セラミック被膜を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の太陽電池は前述した構成とされているため、ポリシラザンの使用量を抑えながらもガスバリア性を担保することができる。
【0010】
本発明の太陽電池の製造方法は前述した手順とされているため、ポリシラザンの使用量を抑えてガスバリア性を担保した太陽電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池の模式的縦断面図である。
図2図1の太陽電池の製造方法を示した模式的縦断面図である。
図3図1の太陽電池の他の製造方法を示した模式的縦断面図である。
図4】フレキシブル太陽電池の一例を示す模式的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
まず、実施形態に係る太陽電池10の基本構成について記述する。
【0013】
太陽電池10は、太陽光発電層12を保護層13間に挟み込んでなる積層体11を有している。この積層体11の全周の端面11aには、ポリシラザン成分を含むセラミック被膜15が固着、形成してある。
【0014】
ここでポリシラザン成分としては、ポリシラザンが水分との化学反応により変化(転化)してなるシリカガラスが含まれる。
【0015】
ついで、本実施形態に係る太陽電池10の詳細について説明する。なお、以下に例示説明している太陽電池10はペロブスカイト太陽電池であり、厚みが約0.1mm~1.0mm程度のものが想定される。この太陽電池10は、図4において後述するようにフレキシブル太陽電池30として利用される。なお、本発明はペロブスカイト太陽電池のみならず、アモルファスシリコン太陽電池、色素増感型太陽電池、有機薄膜太陽電池にも適用可能とされる。
【0016】
ペロブスカイト太陽電池とは、ペロブスカイト構造という独特の結晶構造を有する有機物よりなるペロブスカイト層を発電層(不図示)として有する太陽電池10である。ペロブスカイト層自体がきわめて薄く、1μm程度である。
【0017】
太陽電池10の積層体11は、図1の縦断面図に示すように、太陽光発電層12の上下のそれぞれの面に密着するように保護層13が配され、保護層13間が接着剤で固着されている。
【0018】
太陽電池10及び積層体11の平面図は省略しているが、保護層13の平面形状、寸法は上下で互いに同一であり、平面的なずれはない。また、積層体11の平面形状は保護層13の平面形状に合致した略方形状とされる。太陽光発電層12は、その平面寸法が保護層13よりも小さく、平面的に保護層13の中央部に配されている。この太陽光発電層12の少なくとも一方の面は光を受けるための受光面とされる。
【0019】
保護層13間における太陽光発電層12の側方には、保護層13の周縁にいたるまで、接着剤層14が充填されている。この接着剤層14は、保護層13間を相互に固着するために用いられた接着剤が硬化してなる層であり、保護層13間に配した太陽光発電層12の側方空間に隙間なく配されている。
【0020】
保護層13としては、基材である合成樹脂フィルムに無機材料を蒸着法などでコーティングしたものが挙げられる。具体的には、ポリプロピレンなどのフィルムにシリカ、アルミナ、アルミ、窒化ケイ素などをコーティングしたものが挙げられる。
【0021】
積層体11が例えば0.1mm~1.0mm程度の厚みとすることを想定すれば、保護層13には薄膜状の合成樹脂フィルムが用いられることが望ましい。厚さを薄くするとともに光変換効率を高めることも求められるため、保護層13は酸素や水蒸気を十分に遮断できるようにすることも必要とされる。酸素や水蒸気のガスバリア性を高めるためには、合成樹脂フィルムに、ガスバリア性の高い無機材料をコーティングしたものを保護層13として用いることが望ましい。合成樹脂フィルムに無機材料をコーティングする方法として、蒸着(PVD)、スパッタ、化学蒸着(CVD)方法がある。
【0022】
また、酸素や水蒸気のガスバリア性を考慮すれば、保護層13の基材である合成樹脂材料の具体的な種類としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)などを好適な材料として挙げることができる。
【0023】
ガスバリア性は、酸素透過度(単位:ml/m2・day・MPa)や水蒸気透過度(単位:g/m2・day)により計ることができ、これらの数値が小さいほどガスバリア性が高いと判断することができる。保護層13の水蒸気透過度は、5×10-3g/m2・day以下とすることが望ましい。また、保護層13の酸素透過度は1×10-4ml/m2・day・MPa以下とすることが望ましい。
【0024】
PETは、酸素透過度が約600ml/m2・day・MPaであり、水蒸気透過度が約27g/m2・dayであり、他の材料にくらべると数値が小さく、有機材料としてはガスバリア性が高い材料であると言える。また、PETは低価格でもあり、前記の合成樹脂材料の中では特に好適な材料とされる。
【0025】
なお、LDPE、HDPE、CPP、OPPは、水蒸気透過度はPETと同程度であるが、酸素透過度は5000ml/m2・day・MPa以上である。また、他の合成樹脂材料であってもよく、例えば無延伸ナイロン、延伸ナイロン、延伸ポリスチレン、ポリカーボネートなどを用いてもよい。
【0026】
保護層13は、このような合成樹脂フィルムに無機材料をコーティングしてガスバリア性が高められたものであればよい。例えば、アルミナ蒸着した単層のPETであれば、酸素透過度が約0.1ml/m2・day・MPaとされ、水蒸気透過度が約0.05g/m2・dayとされる。アルミナ蒸着した単層のPETを複数枚重ねることで、保護層13の水蒸気透過度を5×10-3g/m2・day以下にしたものを使用してもよい。太陽光発電層12は水蒸気があるとイオン化するため、水蒸気透過度を低くすることが特に重要とされる。
【0027】
また、保護層13としては、無機材料とされるガラス板、またはガラス板と合成樹脂フィルムとの積層材より構成されたものであることが望ましい。ようするに、保護層13としては、その材料として合成樹脂フィルム、ガラス板、およびそれらの積層材の3種が想定される。また、上下で種類の相異なる保護層13を配してもよい。
【0028】
ガラスは水蒸気透過度、酸素透過度がほぼゼロであり、ガスバリア性が高いため保護層13として好適に利用できるが、薄いものは合成樹脂フィルムよりも脆いため、フレキシブル太陽電池の保護層13の基材としては、合成樹脂フィルムを用いるか、あるいは合成樹脂フィルムとガラスとを重ね合わせたものを用いることが望ましい。
【0029】
なお、太陽電池10は、受光を正しくかつ効率よく行うために、少なくとも受光側に配する保護層13には透明度の高い材料を用いることが望ましい。もちろん両方の保護層13に透明度の高いものを用いてもよい。
【0030】
接着剤層14を形成するための接着剤としては、透明性を有するアクリル系、シリコーン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、エチレン酢酸ビニルなど、透明性、接着性、熱膨張吸収性、衝撃緩和性がいずれもがすぐれたものを用いることが望ましい。なお、ポリウレタン系の接着剤の水蒸気透過度は、約37g/m2・dayである。
【0031】
太陽電池10は、図1に示すように、積層体11の端面11aに形成されている、無機材料を主材料としたセラミック被膜15をさらに含んで構成されている。このセラミック被膜15には、ポリシラザン液が空気中の水分と反応し転化してなるシリカガラスが含まれている。
【0032】
なお、セラミック被膜15は、ポリシラザン液が転化してなるシリカガラスのみで構成されてもよいし、ポリシラザン成分以外の材料、例えば酸化インジウム、シリカ、アルミナなどが含まれたものであってもよい。ポリシラザン液が転化してなるシリカガラスは、ガスバリア性はきわめて高く、水蒸気透過度、酸素透過度がほぼゼロである。
【0033】
このように、積層体11の端面11aがポリシラザン成分を含むセラミック被膜15で覆われているため、積層体11内の太陽光発電層12は端面11a側からも好適に保護される。
【0034】
こうして、太陽光発電層12の上下については無機材料を含む保護層13で覆うことによりガスバリア性が高められる一方、太陽光発電層12の側面(積層体11の端面11a)についてはポリシラザン成分を含むセラミック被膜15で覆うことでガスバリア性が高められる。
【0035】
特に、積層体11の端面11aに有機系の接着剤層14を含む層状面(複数層の断面)が表れるから、強固なガスバリア性を有するセラミック被膜15を端面11a用の被膜として採用すること有効である。
【0036】
なお、太陽光発電層12に隣接するように側方には有機系の接着剤層14が配されているが、有機系の接着剤層14は前述したようにそれだけではガスバリア性がよくないため、接着剤層14だけで太陽光発電層12に対するガスバリア性を高めることは当然に不十分である。つまり、端面11aをセラミック被膜15で覆うことなく積層体11だけで太陽電池10を構成して、太陽光発電層12に対する高いガスバリア性を担保することはきわめて困難である。
【0037】
また、保護層13間を接着する接着剤として、有機系のものに代えてポリシラザン液を含むセラミックコート剤を用いてもよい。すなわち、保護層13間の接着剤層14、及び、積層体11の端面11aを覆うセラミック被膜15が一体としてポリシラザン成分を含んだ硬化物で形成されてもよい。また、接着剤層14とセラミック被膜15とが相異なる無機材料で形成されてもよい。
【0038】
この種の太陽電池10によれば、積層体11の接着剤層14、セラミック被膜15がともに無機材料で形成されているため、太陽光発電層12の側面におけるガスバリア性を強化することができる。
【0039】
ついで、前記の太陽電池10の製造方法について、図2及び図3を参照しながら説明する。本実施形態に係る太陽電池10は以上に説明したように薄膜状であり、かつ端面11aの表面積がきわめて小さいため、端面11aにセラミック被膜15を形成するために蒸着法を用いることは困難である。もちろん、材料の端面11aへの直接塗布も困難である。
【0040】
そのため、以下に示すような端面11aへの被膜形成手順が好適に用いられる。この太陽電池10の製造方法は、つぎのような被膜形成手順を有する方法とされる。なお、積層体11の形成手順については説明を省略する。以下、図2に示した工程A1~工程A4に沿って説明する。
【0041】
まず、平面状の作業面20に、表面改質することで、親水性領域21と、親水性領域21に隣接する撥水性領域22とを形成しておく。具体的には、積層体11の平面形状に略合致した方形の外縁に沿って帯状の親水性領域21が形成され、その内側及び外側のそれぞれに撥水性領域22が形成されればよい。
【0042】
換言すれば、積層体11の平面寸法に合わせて作業面20の中央に撥水性領域22を形成し、その周囲に角リング状の親水性領域21を形成し、さらにその周囲に撥水性領域22を形成すればよい。親水性領域21の幅寸法は積層体11の端面11aの高さ寸法に合わせて適宜決定すればよい(以上について図2の工程A1参照)。
【0043】
つぎに、積層体11を、その外周縁が親水性領域21に平面視において収まるように親水性領域21に囲まれた撥水性領域22に設置する(図2の工程A2参照)。
【0044】
そして、ポリシラザン液を含む液状のセラミックコート剤26を端面11aに滴下する。滴下したセラミックコート剤26は吸着により端面11a(層状面)の全体を覆うとともに、余剰の液は作業面20上の親水性領域21に表面拡散されていく(図2の工程A3参照)。
【0045】
このとき、親水性領域21には液滴はできず濡れた状態になり、セラミックコート剤26は積層体11の端面11aを覆った状態で残る。また、親水性領域21に吸着しきれない余剰液があれば、その余剰液は撥水性領域22に移動するが、撥水性により液をはじき、液滴ができる。
【0046】
セラミックコート剤26が端面11aを覆い終わった時点で、あるいは撥水性領域22に液滴ができ始めた時点でセラミックコート剤26の滴下を停止し、その状態で端面11aのセラミックコート剤26を加熱する。端面11aのセラミックコート剤26を加熱することでセラミックコート剤26が硬化していく。具体的には、セラミックコート剤26の加熱中に、セラミックコート剤26に含まれるポリシラザン液が空気中の水分と反応してシリカガラスに転化して、シリカガラスを含むセラミック被膜15が得られる(図2の工程A4参照)。
【0047】
このように、作業面20上での簡易な作業で積層体11の端面11aにセラミック被膜15を形成することができる。親水性領域21と撥水性領域22との各作用を有効に利用した方法であるため、セラミックコート剤26を無駄使いすることなく、高価な材料を節約することができる。
【0048】
また、図3に示す太陽電池10の製造方法でも、簡易にセラミック被膜15を形成でき、かつセラミックコート剤26の省材料化を図ることができる。以下、図3に示した工程B1~工程B4に沿って説明する。
【0049】
まず、作業面20に、撥水性領域23と、撥水性領域23に隣接する超撥水性領域24(または高撥水性領域。以下、同様とする)とを形成しておく。具体的には、積層体11の平面寸法に合わせて作業面20の中央に超撥水性領域24を形成し、その周囲に角リング状の撥水性領域23を形成し、さらにその周囲に超撥水性領域24を形成すればよい。撥水性領域23の幅寸法は積層体11の端面の高さ寸法に合わせて適宜決定すればよい(以上について図3の工程B1参照)。
【0050】
つぎに、ポリシラザン液を含む液状のセラミックコート剤26を撥水性領域23に滴下して液状突出条28を形成する。撥水性領域23への液剤の滴下なので、撥水作用により液滴ができ、それらは撥水性領域23に沿って連続した突出条の状態となる。
【0051】
このとき、撥水性領域23の隣接部は超撥水性領域24なのでセラミックコート剤26は隣接部には移動しにくく、撥水性領域23を中心に液状突出条28が形成される(以上について図3の工程B2参照)。
【0052】
そして、積層体11を、端面11aが液状突出条28に接触するように撥水性領域23に囲まれた超撥水性領域24に配置して、液状突出条28を構成するセラミックコート剤26を端面11aに対し、それを覆うように吸着させる(図3の工程B3参照)。
【0053】
セラミックコート剤26が端面11aの略全体を覆ったことを確認したのちに、端面11aを覆ったセラミックコート剤26を加熱する。セラミックコート剤26を加熱することでセラミックコート剤26が硬化していく。具体的には、セラミックコート剤26の加熱中に、セラミックコート剤26に含まれるポリシラザン液が空気中の水分と反応してシリカガラスに転化して、シリカガラスを含むセラミック被膜15が得られる(図3の工程B4参照)。
【0054】
なお、以上に説明した図2図3の製造方法ではいずれも、セラミックコート剤26を加熱して硬化する方法が採られているが、ポリシラザン液は水分さえあればシリカガラスに転化するので、加熱をしない方法を採ってもよい。また、セラミックコート剤26に硬化剤を付加して硬化させてもよい。
【0055】
また、保護層13間の接着剤層14、及び、積層体11の端面11aを覆うセラミック被膜15が一体としてポリシラザン成分を含んだ硬化物で形成されている太陽電池10の製造方法としては、図2図3の方法をそのまま利用せずに、例えばつぎのような方法を採用することができる。
【0056】
すなわち、この種の太陽電池10は、多孔質撥水性シートの上に保護層13(保護膜)、太陽光発電層12(太陽光発電膜)、保護層13(保護膜)を順に設置し、その端面にポリシラザン液を含むセラミックコート剤26を滴下し、硬化する前に、上方より圧力をかけながら多孔質撥水性シートの下方より真空引きして製造すればよい。
【0057】
ようするにこの方法では、ポリシラザン液を含むセラミックコート剤26が接着剤層14を形成するための接着剤代わりに使用される。この場合、ポリシラザン液が太陽光発電層12、保護層13間に流入して太陽光発電層12に光電効果の減少などの悪影響を及ぼさないように前記のように圧力をかけることが望ましい。なお、有機系の接着剤を用いる場合には、有機溶剤の量(接着剤成分の濃度)を調節して、セラミックコート剤26を積層体11の端面11aに付着させる前に有機溶剤を蒸発させるようにすればよい。
【0058】
このようにセラミックコート剤26を接着剤層14として用いる方法によれば、保護層13間の接着剤層14、及び、積層体11の端面11aを覆うセラミック被膜15が一体として、ポリシラザン成分を含んだ硬化物で形成されるため、ガスバリア性を一層高めることができる。
【0059】
もちろん、セラミックコート剤26で接着剤層14を形成した積層体11をもとに、図2または図3の製造方法を用いて、セラミックコート剤26によるセラミック被膜15を形成してもよい。特に、接着剤層14とセラミック被膜15が相異なる無機材料よりなる場合、これらの製造方法を採用すればよい。
【0060】
つぎに、図1に示した太陽電池10を複数集合させて、例えば平面視で桝目状に形成したフレキシブル太陽電池30について、図4の部分縦断面図を参照しながら説明する。なお平面図は図示を省略している。
【0061】
図4のフレキシブル太陽電池30は、複数の太陽電池10を桝目状に並べて上下を保護フィルム31で挟み込んでなる。太陽電池10は1つずつ電池ブロック32ごとに分離されており、相隣接する電池ブロック32間には、上下の保護フィルム31同士を熱溶着で固着させた連結部34が形成されている。
【0062】
1つの電池ブロック32における上下の保護フィルム31で囲まれたブロック空間33には1つの積層体11が配されており、積層体11の四周の端面11aにはセラミック被膜15が固着されている。つまり、1つの太陽電池10がブロック空間33内に隙間なく配されている。
【0063】
フレキシブル太陽電池30は、電池ブロック32を1つずつ区切るように連結部34が縦横に形成してある。連結部34は縦方向、横方向のそれぞれに直線的に交差しながら延びており、その連結部34に沿って折り曲げることができる。
【0064】
なお、連結部34は縦横のいずれかの方向のみに配されてもよい。すなわち、その場合は、ブロック空間33は縦方向または横方向に長く延び、ブロック空間3内には複数の太陽電池10が並べられるように配される。
【0065】
以上のフレキシブル太陽電池30によれば、例えば円柱状の物に巻きつけて使用することができ、さらには薄膜状であることもあいまって、湾曲面や凹凸面などに曲面性を失うことなく貼りつけて使用することもできる。フレキシブル太陽電池30を例えば、屋外に設置する銅像やオブジェの外面に貼りつけてもよいし、屋内の置物に貼りつけてもよい。
【0066】
以上に説明した実施形態に係る太陽電池10、フレキシブル太陽電池30の構成、形状は一例にすぎず、各図例以外の構成、形状に適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
10 太陽電池
11 積層体
11a 端面
12 太陽光発電層
13 保護層
14 接着剤層
15 セラミック被膜
20 作業面
21 親水性領域
22、23 撥水性領域
24 超撥水性領域
26 セラミックコート剤
28 液状突出条
30 フレキシブル太陽電池
31 保護フィルム
32 電池ブロック
33 ブロック空間
34 連結部


【要約】
【課題】ポリシラザンの使用量を抑えながらもガスバリア性を担保できる太陽電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】太陽電池10は、太陽光発電層12を保護層13間に挟み込んでなる積層体11を有しており、積層体11の全周の端面11aには、ポリシラザン成分を含むセラミック被膜15が固着している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4