(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】表面処理装置および表面処理方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20250324BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20250324BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20250324BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20250324BHJP
C23C 14/56 20060101ALI20250324BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20250324BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
C23C14/34 J
H05H1/46 M
C23C16/44 G
C23C14/50 H
C23C14/56 G
B01J19/08 E
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2020133192
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小久保 光典
(72)【発明者】
【氏名】福山 聡
(72)【発明者】
【氏名】栗原 義明
(72)【発明者】
【氏名】難波 武志
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-087238(JP,A)
【文献】特開2018-031044(JP,A)
【文献】国際公開第2005/075701(WO,A1)
【文献】米国特許第05421979(US,A)
【文献】特開2009-108384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
H05H 1/46
C23C 16/44
C23C 14/50
C23C 14/56
B01J 19/08
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直立する自身の外周面に被処理材
の表面を外側に向けて取り付けた取付部材を載置する載置手段と、
前記被処理材が載置された前記載置手段を収容する収容ユニットと、
前記載置手段
に載置した前記被処理材を
、前記収容ユニットに収容
される位置まで搬送する搬送手段と、
前記収容ユニットの内側に立設して、前記収容ユニットに収容された前記被処理材
の表面状態を改質する少なくとも1種類の表面処理を行う表面処理手段と
、
前記収容ユニットに収容した
前記載置手段を、前記被処理材
が前記表面処理手段と対向する向き
に所定の回転パターンで回転させる
第1の回転手段と、前記取付部材を、前記表面処理手段と対向する向きに所定の回転パターンで回転させる第2の回転手段と、を有する回転手段と、を備えて、
前記載置手段は、自身が前記収容ユニットに収容された際に、当該収容ユニットを閉鎖する壁部材を備える、
表面処理装置。
【請求項2】
前記第1の回転手段および前記第2の回転手段の少なくとも一つは、前記被処理材を所定の回転パターンで回転させる、
請求項
1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記載置手段を複数備えて、
複数の前記載置手段の中から、前記収容ユニットに収容する載置手段を一つ選択する選択手段を更に備える、
請求項1
または請求項
2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記選択手段は、
同一水平面に設置された複数の前記載置手段を、前記収容ユニットの収容口に面する位置まで回転させる第3の回転手段を備える、
請求項
3に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記被処理材は、前記載置手段に載置される取付部材に取り付けられる、
請求項1乃至請求項
4のいずれか1項に記載の表面処理装置。
【請求項6】
前記表面処理手段は、
前記被処理材にプラズマを照射することにより、当該被処理材の表面処理を行うプラズマ生成装置である、
請求項1乃至請求項
5のいずれか1項に記載の表面処理装置。
【請求項7】
前記表面処理手段は、
前記被処理材にスパッタリングを行うスパッタリング装置である、
請求項1乃至請求項
6のいずれか1項に記載の表面処理装置。
【請求項8】
複数の前記表面処理手段のうちの一つが前記被処理材に対して表面処理を行う際に、当該表面処理手段以外の表面処理手段を遮蔽する遮蔽部材を更に備える、
請求項1乃至請求項
7のいずれか1項に記載の表面処理装置。
【請求項9】
直立する自身の外周面に被処理材
の表面を外側に向けて取り付けた取付部材を載置した載置手段を、
自身の内側に、収容された前記被処理材の表面状態を改質する少なくとも1種類の表面処理を行う表面処理手段
が立設された収容ユニットに収容して、前記載置手段が備える壁部材で前記収容ユニットを閉鎖した状態で、
前記載置手段を、前記被処理材が前記表面処理手段と対向する向き
に所定の回転パターンで回転させ
る第1の回転手段と、前記取付部材を、前記表面処理手段と対向する向きに所定の回転パターンで回転させる第2の回転手段と、によって回転させることによって、前記被処理材に対して表面処理を行う、
表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理材にプラズマを照射する等の表面処理を行う表面処理装置および表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマを用いて被処理材の表面の洗浄や改質を行うことによって、金属触媒層や官能基等を形成する表面処理装置や、スパッタリング装置を用いて、被処理材の表面に薄膜を形成する表面処理装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された成膜装置では、台車にセットした複数の基板を、成膜装置の内部に搬送して、必要な表面処理を行っている。また、表面処理の一例として、特許文献2に記載されプラズマ処理が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-231464号公報
【文献】国際公開第2017/159838号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の成膜装置は、大量の被処理材の表面処理を行うのに適した構造を有しており、装置の規模が大きいため、小規模生産から中規模生産には適していなかった。また、被処理材の表面処理を行う際には、スパッタリングや、特許文献2に記載されたプラズマ処理等の異なる種類の表面処理を、1つの装置で行うことができるのが望ましい。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、少量から中量の材料の表面処理を行うのに適した表面処理装置および表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る表面処理装置は、直立する自身の外周面に被処理材の表面を外側に向けて取り付けた取付部材を載置する載置手段と、前記被処理材が載置された前記載置手段を収容する収容ユニットと、前記載置手段に載置した前記被処理材を、前記収容ユニットに収容される位置まで搬送する搬送手段と、前記収容ユニットの内側に立設して、前記収容ユニットに収容された前記被処理材の表面状態を改質する少なくとも1種類の表面処理を行う表面処理手段と、前記収容ユニットに収容した前記載置手段を、前記被処理材が前記表面処理手段と対向する向きに所定の回転パターンで回転させる第1の回転手段と、前記取付部材を、前記表面処理手段と対向する向きに所定の回転パターンで回転させる第2の回転手段と、を有する回転手段と、を備えて、前記載置手段は、自身が前記収容ユニットに収容された際に、当該収容ユニットを閉鎖する壁部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る表面処理装置は、少量から中量の被処理材の表面処理を行うのに適する、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の表面処理装置の外観図である。
【
図3】
図3は、被処理材を取り付ける取付部材の外観図である。
【
図4】
図4は、被処理材搬送部の作用を説明する図である。
【
図5】
図5は、チャンバーの内部構造の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、プラズマ生成装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、スパッタリング装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、表面処理装置が被処理材に施す表面処理の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、表面処理装置が被処理材に表面処理を施す際のチャンバー内の圧力変化の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、表面処理装置が被処理材に表面処理を施す際に行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る表面処理装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
本開示の実施形態は、例えば樹脂材料で成形された被処理材W(ワーク)の表面にプラズマを照射することによって、被処理材Wの表面に官能基を生成して、その後、官能基の生成によって皮膜の密着性が向上した被処理材Wの表面にスパッタリングによって薄膜を形成する表面処理装置10の例である。なお、被処理材Wは、プラスチック樹脂等の樹脂材料で成形された部材である。
【0012】
[1.表面処理装置の全体構成の説明]
まず、
図1を用いて、表面処理装置10の概略構造を説明する。
図1は、実施形態の表面処理装置の外観図である。
【0013】
図1に示すように、表面処理装置10は、チャンバー20と、被処理材載置部30と、被処理材搬送部40とを備える。そして、チャンバー20の奥側には、排気装置50が備えられる。更に、表面処理装置10は、
図1に示す冷却装置51と、制御装置52と、電源供給装置53と、ガス供給装置54と、操作盤55とを備える。
【0014】
チャンバー20は、内部に収容した被処理材Wに対して表面処理を行う、密閉された反応容器である。なお、チャンバー20は、本開示における収容ユニットの一例である。
【0015】
チャンバー20は直方体の形状をなして、立設した4枚の立壁面のうち1枚の立壁面20aの部分が開放された形状を有する。チャンバー20の他の3枚の立壁面、即ち立壁面20b、立壁面20c,立壁面20dには、それぞれ異なる表面処理手段が設置されている。具体的には、立壁面20bにはプラズマ生成装置21が設置されている。また、立壁面20cと立壁面20dには、それぞれ、スパッタリング装置22,23が設置されている。ここで、プラズマ生成装置21、スパッタリング装置22,23の配置条件は問わない。即ち、プラズマ生成装置21とスパッタリング装置22,23は、立壁面20b,20c,20dのいずれに配置してもよい。なお、プラズマ生成装置21とスパッタリング装置22,23は、本開示における表面処理手段の一例である。
【0016】
スパッタリング装置22は、被処理材Wにスパッタリングを行うことによって、被処理材Wに対してめっき加工の下地となる薄膜を形成する表面処理を行う。
【0017】
プラズマ生成装置21は、HCD(Hollow Cathode Discharge)によってプラズマを生成して、生成されたプラズマを、例えばスパッタリング装置22によって薄膜が形成された被処理材Wに照射することによって、被処理材Wの表面処理を行う。より具体的には、被処理材Wの表面に、例えば官能基を生成する。これによって、後工程で被処理材Wの表面にめっき加工の下地となる薄膜を生成する際の薄膜の密着性を高める。
【0018】
スパッタリング装置23は、プラズマ生成装置21によって表面処理された面に、更に異なる薄膜を形成する表面処理を行う。
【0019】
なお、本実施の形態では、3枚の立壁面20b,20c,20dにそれぞれ異なる表面処理手段を設けた例を説明するが、設ける表面処理手段の数は問わない。即ち、一つの表面処理手段のみを設けてもよい。また、表面処理手段の種類は、前記したものに限定されない。即ち、前記したものとは異なる表面処理手段を設けてもよい。
【0020】
被処理材載置部30は、被処理材Wを載置する部位である。被処理材載置部30の詳細構造について、詳しくは後述する(
図2参照)。
【0021】
被処理材搬送部40は、被処理材載置部30を、被処理材Wを載置した状態でチャンバー20に収容する搬送機構である。即ち、被処理材搬送部40は、
図1におけるX軸に沿って、被処理材載置部30を搬送する。なお、被処理材搬送部40は、本開示における搬送手段の一例である。被処理材搬送部40の詳細構造について、詳しくは後述する(
図4参照)。
【0022】
チャンバー20の裏側(Y軸負方向側)には、排気装置50と、冷却装置51と、制御装置52と、電源供給装置53と、ガス供給装置54が備えられる。
【0023】
排気装置50は、チャンバー20の内部を減圧して真空状態にする。排気装置50は、例えば、ロータリーポンプやターボ分子ポンプで構成される。
【0024】
冷却装置51は、機器や電源等を冷却する冷却水を生成する。
【0025】
制御装置52は、表面処理装置10全体の制御を行う。
【0026】
電源供給装置53は、表面処理装置10の各部に供給する電源を収容する。
【0027】
ガス供給装置54は、チャンバー20に、成膜用のガス、および反応用のガスを供給する。
【0028】
また、チャンバー20のそばには、操作盤55が備えられる。操作盤55は、表面処理装置10に対する操作指示を受け付ける。また、操作盤55は、表面処理装置10の動作状態を表示する機能を備える。
【0029】
[2.被処理材載置部の構成の説明]
次に、
図2を用いて、被処理材載置部30の構成を説明する。
図2は、被処理材載置部の外観図である。
【0030】
被処理材載置部30は、被処理材Wを載置する2つのテーブル31,32を備える。テーブル31は円形状をなして、XY平面に沿う床面部材35の上方に、XY平面に沿う同一平面上に設置される。そして、テーブル31は、非図示のサーボモータが回転駆動する回転板31aの外側面と接触することによって、Z軸に沿うテーブル回転軸31bの周りに回転する。なお、テーブル31の回転方向は問わない。テーブル回転軸31bは、本開示における回転手段または第1の回転手段の一例である。また、テーブル31,32は、本開示における載置手段の一例である。
【0031】
床面部材35は、YZ平面に沿って立設する壁部材33に直交するように固定されている。壁部材33は、被処理材載置部30をX軸正側に移動させてチャンバー20に収容した際に、壁部材33が立壁面20aを密閉することによって、チャンバー20の内部を閉空間にする。
【0032】
同様に、テーブル32は円形状をなして、XY平面に沿う床面部材36の上方に、XY平面に沿って設置される。そして、テーブル32は、非図示のサーボモータが回転駆動する回転板32aの外側面と接触することによって、Z軸に沿うテーブル回転軸32bの周りに回転する。なお、テーブル32の回転方向は問わない。テーブル回転軸32bは、本開示における回転手段または第1の回転手段の一例である。
【0033】
床面部材35は、YZ平面に沿って立設する壁部材34に直交するように固定されている。
【0034】
壁部材33,34の下方には、Z軸に沿う被処理材載置部回転軸37が設置されている。被処理材載置部回転軸37は、非図示のサーボモータによって回転駆動されて、被処理材載置部30全体をZ軸周りに回転させる。これによって、テーブル31,32のいずれか一方が、チャンバー20に収容される。なお、被処理材載置部回転軸37は、本開示における選択手段または第3の回転手段の一例である。
【0035】
なお、テーブル32がチャンバー20に収容される場合には、壁部材34が立壁面20aを密閉することによって、チャンバー20の内部を閉空間にする。
【0036】
なお、テーブル31,32には、非図示のサーボモータによって回転駆動される取付部材回転軸31c,32cが設置される。取付部材回転軸31c,32cは、z軸に沿って設置されて、後述する取付部材38(
図3参照)を、被処理材Wを取り付けた状態で、Z軸周りに回転させる。なお、取付部材回転軸31c,32cの回転方向は問わない。なお、取付部材回転軸31c,32cは、本開示における回転手段または第2の回転手段の一例である。
【0037】
図2の例では、取付部材回転軸31c,32cは、テーブル回転軸31b,32bを中心としてそれぞれ略90°の間隔で4本設置されている。なお、取付部材回転軸31c,32cの設置本数は問わない。
【0038】
[3.取付部材の構成の説明]
次に、
図3を用いて、被処理材Wを取り付ける構成を説明する。
図3は、被処理材を取り付ける取付部材38の外観図である。
【0039】
取付部材38は、被処理材Wを取り付けた状態で実施形態の表面処理装置10は、に載置される。
図3の例では、取付部材38は、正6角柱状に成形されて、各側面に、被処理材Wを3枚ずつ取付可能とされている。即ち、一つの取付部材38に18枚の被処理材Wを取付可能である。
【0040】
取付部材38は、当該取付部材38の中心軸38aが取付部材回転軸31c,32cと一致するように、テーブル31,32に設置される。即ち、
図2の構成の被処理材載置部30には、テーブル31,32に、それぞれ最大72枚の被処理材Wが取付可能である。なお、取付部材38の形状は、
図3に示す例に限定されるものではない。このようにして取り付けられた被処理材Wの表面が、表面処理装置10によって表面処理される。
【0041】
なお、表面処理を行っている間、取付部材38は、中心軸38a(取付部材回転軸31c)の周りを自転しながら、当該取付部材38は、テーブル31(またはテーブル32)のテーブル回転軸31b(またはテーブル回転軸32b)の周りを公転する。これによって、被処理材Wの表面は、所定時間毎にプラズマ生成装置21またはスパッタリング装置22,23と対向する(平行になる、向かい合う)ため、表面が均一に処理される。なお、取付部材38の自転速度、公転速度、および自転方向、公転方向は、所定の回転パターンで任意に設定することができるため、実行する表面処理の種類や被処理材Wの種類等に応じて、適宜設定される。例えば、被処理材Wを一定の回転数で自転および公転させてもよい。また、被処理材Wを、当該被処理材Wが表面処理手段と対向したときに、所定時間の間、自転および公転を停止させてもよい。また、被処理材Wは自転のみ、あるいは公転のみさせてもよい。
【0042】
なお、取付部材38の形態は、
図3に示す例に限定されない。例えば、取付部材38を板状部材として、当該板状部材の両面にそれぞれ複数の被処理材Wを取り付けて、板状部材に設けた中心軸38aを取付部材回転軸31c(32c)の周りに回転させながら、テーブル回転軸31b(31c)の周りに回転させてもよい。また、取付部材回転軸31c(32c)の回転を停止させて、取付部材38をテーブル回転軸31b(31c)のみの周りに回転させてもよい。また、被処理材Wを直接テーブル31(32)に設置してもよい。
【0043】
[4.被処理材搬送部の構成の説明]
次に、
図4を用いて、被処理材搬送部40の構成を説明する。
図4は、被処理材搬送部の作用を説明する図である。
【0044】
図4(a)に示すように、被処理材搬送部40は、支持台41と、溝部42を備える。支持台41は、被処理材載置部30を支持する。溝部42は、被処理材載置部30をX軸に沿って搬送させる際に、被処理材載置部回転軸37が通過する隙間である。
【0045】
図4(b)は、被処理材載置部30が
図4(a)の状態にあるときに、被処理材搬送部40が、被処理材載置部30をX軸正方向に搬送させて、テーブル31をチャンバー20に収容した状態を示す図である。このとき、
図4(b)に示すように、テーブル31と、回転板31aと、床面部材35とがチャンバー20に収容される。そして、チャンバー20の立壁面20aは、壁部材33によって密閉される。
【0046】
図4(c)は、被処理材載置部30が
図4(a)の状態にあるときに、被処理材載置部回転軸37を180°回転させて、被処理材搬送部40が、被処理材載置部30をX軸正方向に搬送させて、テーブル32をチャンバー20に収容した状態を示す図である。このとき、
図4(c)に示すように、テーブル32と、回転板32aと、床面部材36とがチャンバー20に収容される。そして、チャンバー20の立壁面20aは、壁部材34によって密閉される。
【0047】
なお、
図4(b)の状態にあるときに、表面処理装置10は、テーブル31に載置された被処理材Wに対して表面処理を行う。このとき、作業者は、次に表面処理を行う被処理材Wを、取付部材38に取り付けて、被処理材Wを取り付けた取付部材38をテーブル32に載置する。
【0048】
また、
図4(c)の状態にあるときに、表面処理装置10は、テーブル32に載置された被処理材Wに対して表面処理を行う。このとき、作業者は、表面処理が終了した被処理材Wを、テーブル31に載置された取付部材38から取り外す。
【0049】
[5.チャンバーの内部構造の説明]
次に、
図5を用いて、チャンバー20の内部構造を説明する。
図5は、チャンバー20の内部構造を示す図である。
【0050】
チャンバー20の内部にはシャッター45が設置されている。シャッター45は、チャンバー20の立壁面のうち1面に面する側のみが開口部とされたC字状をなして、チャンバー20の天面に設置されたサーボモータ46によって回転駆動される。なお、シャッター45は、テーブル31(32)および取付部材38の回転と干渉しないように設置される。これによって、シャッター45は、被処理材Wの表面処理を行うプラズマ生成装置21、スパッタリング装置22,23のうち、動作中の装置以外の電極面を遮蔽する。また、チャンバー20にテーブル31(32)を出し入れする際には、シャッター45の開口部を立壁面20aの方向に向ける。
【0051】
シャッター45は、複数の表面処理手段のうちの一つが被処理材Wに対して表面処理を行う際に、当該表面処理手段以外の表面処理手段の表面を遮蔽する。なお、シャッター45は本開示における遮蔽部材の一例である。
【0052】
なお、シャッター45の構成は、
図5の構成に限定されるものではない。例えば、立壁面20b,20c,20dの壁面に、それぞれ、細長い複数の板状部材をルーバー状に設置して、これらの板状部材を上方に引き上げることによって、表面処理を行う電極面のみを露出させる構造としてもよい。
【0053】
[6.プラズマ生成装置の構成の説明]
次に、
図6を用いて、プラズマ生成装置21の構成を説明する。
図6は、プラズマ生成装置の構成の一例を示す断面図である。
【0054】
プラズマ生成装置21は、プラズマを生成する際に用いる、アルゴン等のガスを供給するガス供給管66と、高周波電圧によって、ガス供給管66から供給されたガスよりプラズマを生成する一対の板状導体部60,62とを有する。
【0055】
ガス供給管66は、支持板64の厚さ方向に支持板64を貫通しており、ガス供給管取付部材58によって支持板64に取り付けられている。また、ガス供給管66の内部には、ガス供給管66の延在方向に沿うガス流路56が形成されており、当該ガス流路56を介して、チャンバー20の外側からチャンバー20内にガスを供給する。なお、ガス供給管66の、支持板64の外側(チャンバー20の外側)の端部には、ガス供給管66にガスを供給するガス供給部78が接続されており、ガス供給管66の他端側(チャンバー20の内側)の端部には、ガス流路56を流れたガスをチャンバー20内に導入する孔であるガス供給孔57が形成されている。ガス供給部78には、質量流量計に流量制御の機能を持たせたマスフローコントローラ(MFC)76を介してガスが供給される。
【0056】
一対の板状導体部60,62は、いずれも平板状に形成されており、アルミニウムなどの金属板、或いはその他の導体板を平行に配置することにより形成されている。板状導体部60,62は、支持板77によって支持されている。支持板77は、例えば、ガラス、セラミック等の絶縁材料により形成されている。支持板77は、板の一面側の外周付近の全周に亘って凸部が形成された形状で形成されている。換言すると、支持板77は、一面側に支持板77の外周に沿って凹んだ凹部67が形成された、板状の形状で形成されている。
【0057】
支持板77は、凹部67が形成されていない側の面が支持板64に対向し、凹部67が形成されている側の面が、支持板64が位置する側の反対側に位置する向きで配置され、支持部材59によって支持されている。支持部材59は、円筒状の部材と、当該円筒状の部材の両端に位置する取付部材とを有し、一端側の取付部材が支持板64に取り付けられ、他端側の取付部材が支持板77に取り付けられている。
【0058】
支持板64を貫通するガス供給管66は、支持部材59における円筒状の部材の内側を通って支持板77の位置まで延び、支持板77を貫通している。そして、ガス供給管66に形成されるガス供給孔57は、支持板77における凹部67が形成される部分に配置される。
【0059】
一対の板状導体部60,62は、支持板77における凹部67が形成されている側に、凹部67を覆って配置されている。その際、一対の板状導体部60,62は、双方の間の外周付近にスペーサ63が配置され、スペーサ63を介して重ねられている。スペーサ63を介して重ねられる一対の板状導体部60,62における、スペーサ63以外の部分において、板状導体部60と板状導体部62とは互いに離間しており、空隙部61を形成している。空隙部61の間隔は、プラズマ生成装置21において導入するガスや供給する電力の周波数、さらには電極のサイズ等に応じて適宜設定するのが好ましいが、例えば、3mm~12mm程度である。
【0060】
一対の板状導体部60,62は、スペーサ63を介して重ねられた状態で、板状導体部60,62を保持するための部材である保持部材79によって保持されている。つまり、保持部材79は、板状導体部60,62における支持板77が位置する側の反対側に配置され、保持部材79と支持板77とによって板状導体部60、62を挟む状態で支持板77に取り付けられている。
【0061】
一対の板状導体部60,62は、このように支持板77における凹部67を覆って配置されており、保持部材79によって保持された状態において、支持板77の凹部67と、板状導体部60,62と、の間には空間が形成される。
【0062】
重ねて配置された一対の板状導体部60,62のうち、板状導体部62が支持板77側に配置され、板状導体部60が保持部材79側に配置される場合は、この空間は、支持板77の凹部67と板状導体部62とによって区画される。このように形成される空間は、ガス供給管66により供給されるガスが導入されるガス導入部80として形成される。ガス供給管66のガス供給孔57は、ガス導入部80に位置してガス導入部80に向けて開口している。ガス導入部80は、支持板77と板状導体部62とが密接して取り付けられることにより区画されている。
【0063】
また、一対の板状導体部60,62には、厚さ方向に貫通する貫通孔69,70が、それぞれ多数形成されている。即ち、ガス供給管66により供給されるガスの流入側に位置する板状導体部62には、板状導体部62の厚さ方向に見た場合にマトリクス状に所定の間隔で複数の貫通孔70が形成されており、ガス供給管66により供給されるガスの流出側に位置する板状導体部60には、板状導体部60の厚さ方向に見た場合にマトリクス状に所定の間隔で複数の貫通孔69が形成されている。
【0064】
板状導体部60の貫通孔69と、板状導体部62の貫通孔70とは、それぞれ円筒形状の孔であり、双方の貫通孔69,70は、同軸上に配置されている。即ち、板状導体部60の貫通孔69と、板状導体部62の貫通孔70とは、各貫通孔の中心が揃った位置に配置されている。このうち、板状導体部60の貫通孔69は、ガス流入側の板状導体部62の貫通孔70よりも径が小さくなっている。このように一対の板状導体部60,62には、複数の貫通孔69,70が形成されてホロー電極構造となり、これら複数の貫通孔69,70を介して、生成されたプラズマガスが高密度で流れる。
【0065】
平行平板型の板状導体部60,62の間には、空隙部61が介在するが、空隙部61は静電容量を有するコンデンサとして機能する。そして、支持板77及び板状導体部60,62には、導電性の部材によって導電部(図示省略)が形成されて、当該導電部によって支持板77は接地75され、板状導体部62も接地75されている。また、高周波電源(RF)74は、一方の端部が接地75され、高周波電源74の他方の端部は、静電容量等を調整してプラズマとの整合性を得るためのマッチングボックス(MB)73を介して板状導体部60と導通する。従って、高周波電源74を稼働させた場合には、例えば13.56MHzなどの所定の周波数で板状導体部60の電位がプラスとマイナスに振れる。
【0066】
そして、貫通孔70から流出したプラズマガスによって、チャンバー20内の被処理材Wの成膜や洗浄等の表面処理が行われる。
【0067】
[7.スパッタリング装置の構成の説明]
次に、
図7を用いて、スパッタリング装置22の構成を説明する。
図7は、スパッタリング装置の構成の一例を示す断面図である。なお、スパッタリング装置23は、スパッタリング装置22と同じ構成を有するため、ここでは、スパッタリング装置22についてのみ説明する。
【0068】
スパッタリング装置22は、冷却水が流れる冷却水管81と、磁界を発生させるマグネット84と、マグネット84で発生させた磁界の内部で、ガス供給装置54(
図1参照)から供給されて、非図示のガス流入部から流入させた不活性ガス(例えばアルゴン)をイオン化させて衝突させることにより、成膜に用いる原子をはじき出すターゲット87と、ターゲット87を冷却する冷却ジャケット85と、マグネット84とターゲット87と冷却ジャケット85とを支持する支持板83とを有している。冷却水管81は、支持板83を貫通している。なお、ターゲット87は、例えば銅板であり、ターゲット87からはじき出された銅原子が被処理材Wの表面に密着することによって、被処理材Wの表面に銅の薄膜が形成される。
【0069】
冷却水管81の内部には、冷却水管81の延在方向に沿う冷却水路82が形成されている。なお、
図7には示さないが、冷却水路82は、チャンバー20の外部から冷却ジャケット85に、冷却のための冷却水を供給する水路と、冷却ジャケット85からチャンバー20の外部に、冷却に用いた冷却水を排出する水路とを備える。このようにして、冷却水管81は、チャンバー20の外側と、チャンバー20内に配置される冷却ジャケット85との間で、冷却水を循環させる。なお、冷却水管81の、チャンバー20の外側の端部には、
図7に非図示の、冷却水の流入路および排出路が接続されている。一方、冷却水管81の他端側(チャンバー20の内側)の端部は、冷却ジャケット85に接続されている。冷却ジャケット85は、内部に冷却水の流路が形成され、冷却水が流れる。これにより、チャンバー20の外側と、冷却ジャケット85との間で、冷却水が循環する。なお、冷却水は、前記した冷却装置51(
図1参照)から供給される。
【0070】
支持板83は、マグネット84と冷却ジャケット85とターゲット87とを重ねた状態で支持する。詳しくは、支持板83、マグネット84、冷却ジャケット85、ターゲット87は、いずれも板状の形状で形成されており、マグネット84、冷却ジャケット85、ターゲット87よりも、支持板83の方が、平面視における形状が大きい形状で形成されている。このため、マグネット84と冷却ジャケット85とターゲット87とは、支持板83側からマグネット84、冷却ジャケット85、ターゲット87の順で重ねられた状態で、ターゲット87における冷却ジャケット85側の面の反対側の面の外周付近を保持部材88によって支持されることにより、支持板83と保持部材88によって保持されている。また、保持部材88によって保持されるマグネット84、冷却ジャケット85、ターゲット87は、外周部分も保持部材88に囲まれた状態で保持されている。
【0071】
その際に、支持板83とマグネット84との間には、絶縁材86が配置されており、絶縁材86は、マグネット84の平面視における外周部分にも配置されている。つまり、絶縁材86は、支持板83とマグネット84との間と、マグネット84と保持部材88との間に配置されている。このため、マグネット84は、絶縁材86を介して、支持板83と保持部材88とによって保持されている。
【0072】
スパッタリング装置22は、被処理材Wの表面に薄膜を形成する、所謂スパッタリングを行う。スパッタリング装置22がスパッタリングを行う際には、チャンバー20の内部を排気装置50(
図1参照)によって減圧した後、チャンバー20の内部に、ガス供給装置54(
図1参照)からスパッタリングに用いるガスを流入させる。そして、スパッタリング装置22のマグネット84が発生した磁界によって、チャンバー20内のガスをイオン化させて、ターゲット87にイオンを衝突させる。これによって、ターゲット87の表面から、ターゲット87の原子をはじき出す。
【0073】
例えばターゲット87にアルミニウムを用いた場合、ターゲット87の近傍でイオン化されたガスのイオンがターゲット87に衝突した際に、ターゲット87は、アルミニウムの原子をはじき出す。ターゲット87からはじき出されたアルミニウムの原子は、X軸負方向に向かう。チャンバー20内のターゲット87の表面に対向する位置には被処理材Wが位置するため、ターゲット87からはじき出されたアルミニウムの原子は、被処理材Wに向かって移動して被処理材Wに密着し、被処理材Wの表面に堆積する。これにより、被処理材Wの表面には、ターゲット87を形成する物質に応じた薄膜が形成される。
【0074】
[8.具体的な表面処理の説明]
次に、
図8,
図9を用いて、本実施形態の表面処理装置10が行う表面処理の具体例を説明する。
図8は、表面処理装置が被処理材に施す表面処理の一例を示す図である。
図9は、表面処理装置が被処理材に表面処理を施す際のチャンバー内の圧力変化の一例を示す図である。
【0075】
本実施形態において、表面処理装置10は、被処理材Wの片面に、例えば、光学部品の一例であるミラー90を生成する。ミラー90は、可視光領域(400~800nm)の全域に亘って略一定の反射率を有する。
【0076】
まず、表面処理装置10は、スパッタリング装置22を動作させることによって、被処理材Wの表面にアルミニウム(Al)の薄膜であるAl層90aを生成する。このとき、チャンバー20の内部は、
図9に示すように、時刻t0においてチャンバー20内を圧力P0(例えば10
-2から10
-3Pa)に減圧された状態から、ガスを流入させることによって圧力P1に加圧された状態で、アルミニウムのスパッタリングを行う。圧力P1は、例えば20Paである。スパッタリングの完了後、チャンバー20内は時刻t1において再び圧力P0に減圧される。このとき、ターゲット87にはアルミニウムが使用される。なお、
図9において、縦軸は圧力Pを示すが、下方ほど減圧された状態を示している。
【0077】
スパッタリングが行われている間、表面処理装置10は、取付部材38を自転させながら、テーブル31(またはテーブル32)によって公転させることによって、被処理材Wの表面に均一なAl層90aを生成させる。なお、自転速度、公転速度、自転方向、公転方向は問わず、Al層90aの生成条件等に応じて設定される。
【0078】
次に、表面処理装置10は、プラズマ生成装置21を動作させることによって、被処理材WのAl層90aの表面に、SiO2層90bを生成する。このとき、チャンバー20の内部は、時刻t1においてチャンバー20内を圧力P0に減圧された状態から、ガスを流入させることによって圧力P2に加圧された状態で、SiO2層90b(重合膜)を生成する。なお、圧力P2は、圧力P1よりも高い圧力に設定される。圧力P2は、例えば30Paである。SiO2層90bの生成後、チャンバー20内は時刻t2において再び圧力P0に減圧される。
【0079】
SiO2層90bの生成が行われている間、表面処理装置10は、取付部材38を自転させながら、テーブル31(またはテーブル32)によって公転させることによって、被処理材Wの表面に均一なSiO2層90bを生成させる。被処理材Wの自転速度、公転速度、自転方向、公転方向は問わず、SiO2層90bの生成条件等に応じて設定される。なお、SiO2層90bを生成するために、チャンバー20内には、成膜ガスとして、例えば水蒸気とシラン系ガスとが流入される。
【0080】
次に、表面処理装置10は、スパッタリング装置23を動作させることによって、被処理材WのSiO2層90bの表面に酸化ニオブ(Nb2OX)の薄膜であるNb2OX層90cを生成する。このとき、チャンバー20の内部は、時刻t2においてチャンバー20内を圧力P0に減圧された状態から、ガスを流入させることによって圧力P1に加圧された状態で、Nb2OXのスパッタリングを行う。このとき、ターゲット87には酸化ニオブが使用される。そして、スパッタリングの完了後、チャンバー20内は時刻t3において再び圧力P0に減圧される。
【0081】
スパッタリング行われている間、表面処理装置10は、取付部材38を自転させながら、テーブル31(またはテーブル32)を公転させることによって、被処理材Wの表面に均一なNb2OX層90cを生成させる。なお、自転速度、公転速度、自転方向、公転方向は問わず、Nb2OX層90cの生成条件等に応じて設定される。
【0082】
なお、被処理材Wの表面処理の開始前および表面処理の完了後には、チャンバー20が開放されて、チャンバー20内の圧力は大気圧と等しくなる。
【0083】
なお、表面処理装置10が生成するAl層90a、SiO2層90b、Nb2OX層90cの順序は、上記した例に限定されるものではない。即ち、被処理材Wの表面にSiO2層90bを生成した後で、SiO2層90bの表面にAl層90aを生成し、Al層90aの表面にNb2OX層90cを生成してもよい。また、Al層90a、SiO2層90b、Nb2OX層90cを生成した後で、Nb2OX層90cの上に、更にSiO2層90bとNb2OX層90cを生成してもよい。
【0084】
[9.表面処理装置が行う処理の流れの説明]
次に、
図10を用いて、表面処理装置10が行う処理の流れを説明する。
図10は、表面処理装置が被処理材に表面処理を施す際に行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0085】
まず、被処理材Wを取り付けた取付部材38を、テーブル31に載置する(ステップS11)。
【0086】
被処理材搬送部40は、テーブル31をチャンバー20に収容する(ステップS12)。なお、このときシャッター45の開口部は、開放された立壁面20aの方向に向けられている。ステップS12が完了した後で、表面処理装置10が表面処理を行っている間に、チャンバー20の外部にあるテーブル32に、次に表面処理を行う被処理材Wを取り付けた取付部材38を載置してもよい。
【0087】
操作盤55の指示によって、サーボモータ46を回転させて、シャッター45の開口部を立壁面20cの方向、即ちスパッタリング装置22の方向に向ける(ステップS13)。
【0088】
排気装置50は、チャンバー20内を圧力P0まで減圧する(ステップS14)。
【0089】
ガス供給装置54は、チャンバー内にガスを供給して圧力P1まで加圧する(ステップS15)。
【0090】
操作盤55の指示によって、テーブル31および取付部材38を回転させる(ステップS16)。
【0091】
スパッタリング装置22は、被処理材Wの表面にAl層90aを生成する(ステップS17)。
【0092】
操作盤55の指示によって、テーブル31および取付部材38の回転を停止させる(ステップS18)。
【0093】
排気装置50は、チャンバー20内を圧力P0まで減圧する(ステップS19)。
【0094】
操作盤55の指示によって、サーボモータ46を回転させて、シャッター45の開口部を立壁面20bの方向、即ちプラズマ生成装置21の方向に向ける(ステップS20)。
【0095】
ガス供給装置54は、チャンバー内にガスを供給して圧力P2まで加圧する(ステップS21)。
【0096】
操作盤55の指示によって、テーブル31および取付部材38を回転させる(ステップS22)。
【0097】
プラズマ生成装置21は、Al層90aの表面にSiO2層90bを生成する(ステップS23)。
【0098】
操作盤55の指示によって、テーブル31および取付部材38の回転を停止させる(ステップS24)。
【0099】
排気装置50は、チャンバー20内を圧力P0まで減圧する(ステップS25)。
【0100】
操作盤55の指示によって、サーボモータ46を回転させて、シャッター45の開口部を立壁面20cの方向、即ちスパッタリング装置23の方向に向ける(ステップS26)。
【0101】
ガス供給装置54は、チャンバー内にガスを供給して圧力P1まで加圧する(ステップS27)。
【0102】
操作盤55の指示によって、テーブル31および取付部材38を回転させる(ステップS28)。
【0103】
スパッタリング装置22は、SiO2層90bの表面にNb2OX層90cを生成する(ステップS29)。
【0104】
操作盤55の指示によって、テーブル31および取付部材38の回転を停止させる(ステップS30)。
【0105】
排気装置50は、チャンバー20内を圧力P0まで減圧する(ステップS31)。
【0106】
操作盤55の指示によって、排気装置50を停止させて、非図示の圧力調整用バルブを開くことによってチャンバー20の周囲の空気をチャンバー20内に取り込み、チャンバー内を大気に開放する(ステップS32)。
【0107】
被処理材搬送部40は、テーブル31をチャンバー20から排出する(ステップS33)。
【0108】
取付部材38から、表面処理が完了した被処理材Wが取り出される(ステップS34)。
【0109】
なお、
図10のフローチャートには記載しないが、その後、被処理材載置部回転軸37を回転させて、テーブル32をチャンバー20の方向に向け、上記した各処理を繰り返して行ってもよい。
【0110】
また、上記した一連の処理は、操作者の指示に基づいて実行してもよいし、予め作成したシーケンスに沿って自動的に実行するようにしてもよい。
【0111】
以上説明したように、実施形態の表面処理装置10は、被処理材Wを載置したテーブル31,32(載置手段)を、被処理材搬送部40(配送手段)がチャンバー20(収容ユニット)に収容する。そして、テーブル回転軸31b,32b(回転手段)と取付部材回転軸31c,32c(回転手段)は、被処理材載置部30をチャンバー20に収容した状態で、被処理材Wを、プラズマ生成装置21(表面処理手段)またはスパッタリング装置22,23(表面処理手段)と対向する向きに、所定の回転パターンで回転させる。したがって、少量から中量の被処理材Wの表面処理を行うのに適する表面処理装置を提供することができる。
【0112】
また、実施形態の表面処理装置10において、テーブル31,32(載置手段)は、当該被処理材載置部30をチャンバー20に収容した際に、チャンバー20を閉鎖する壁部材33,34を備える。したがって、チャンバー20の内部への被処理材Wの収容と、チャンバー20の密閉動作とを、一連の操作で連続して実行することができる。
【0113】
また、実施形態の表面処理装置10において、テーブル回転軸31b,32b(第1の回転手段)は、被処理材載置部30(載置手段)を、当該被処理材載置部30に載置した被処理材Wが、プラズマ生成装置21(表面処理手段)またはスパッタリング装置22,23(表面処理手段)と対向する向きに回転させる。また、取付部材回転軸31c,32c(第2の回転手段)は、被処理材載置部30(載置手段)に載置した被処理材Wを、プラズマ生成装置21(表面処理手段)またはスパッタリング装置22,23(表面処理手段)と対向する向きに回転させる。したがって、被処理材Wの表面を均一に表面処理することができる。
【0114】
また、実施形態の表面処理装置10において、テーブル回転軸31b,32b(第1の回転手段)または取付部材回転軸31c,32c(第2の回転手段)の少なくとも一つは、被処理材Wを所定の回転パターンで回転させる。したがって、被処理材Wの種類や表面処理の種類に応じた回転パターンを設定することができる。
【0115】
また、実施形態の表面処理装置10は、テーブル31,32(載置手段)を複数備えて、被処理材載置部回転軸37(選択手段)が、テーブル31,32の中から、チャンバー20(収容ユニット)に収容するテーブルを一つ選択する。したがって、被処理材Wの表面処理を行っている最中に、チャンバー20の外部に置かれたテーブルに、次に処理する被処理材Wを取り付けることができる。このため、時間を効率的に利用することができる。
【0116】
また、実施形態の表面処理装置10において、被処理材載置部回転軸37(第3の回転手段)は、同一水平面に設置された複数のテーブル31,32を、チャンバー20(収容ユニット)の収容口に面する位置まで回転させる。したがって、テーブル31,32の入れ替えを容易に行うことができる。
【0117】
また、実施形態の表面処理装置10において、被処理材Wは、テーブル31,32(載置手段)に載置される取付部材38に取り付けられる。したがって、処理したい量の被処理材Wを、容易に設置することができる。
【0118】
また、実施形態の表面処理装置10は、被処理材Wにプラズマを照射することにより、当該被処理材の表面処理を行うプラズマ生成装置21(表面処理手段)を備える。したがって、被処理材Wの表面に官能基を生成することによって、後工程で形成する薄膜の密着性を向上させることができる。
【0119】
また、実施形態の表面処理装置10は、被処理材Wにスパッタリングを行うスパッタリング装置22,23(表面処理手段)を備える。したがって、被処理材Wの表面に、所望の薄膜を形成することができる。
【0120】
また、実施形態の表面処理装置10は、複数の表面処理手段(プラズマ生成装置21、スパッタリング装置22,23)のうちの一つが被処理材Wに対して表面処理を行う際に、当該表面処理手段以外の表面処理手段を遮蔽するシャッター45(遮蔽手段)を備える。したがって、被処理材Wに対して表面処理を行っていない表面処理の電極面を保護することができる。
【符号の説明】
【0121】
10…表面処理装置、20…チャンバー(収容ユニット)、20a,20b,20c,20d…立壁面、21…プラズマ生成装置(表面処理手段)、22,23…スパッタリング装置(表面処理手段)、30…被処理材載置部、31,32…テーブル(載置手段)、31a,32a…回転板、31b,32b…テーブル回転軸(回転手段、第1の回転手段)、31c,32c…取付部材回転軸(回転手段、第2の回転手段)、33,34…壁部材、35,36…床面部材、37…被処理材載置部回転軸(選択手段、第3の回転手段)、38…取付部材、40…被処理材搬送部(搬送手段)、41…支持台、42…溝部、45…シャッター(遮蔽部材)、50…排気装置、51…冷却装置、52…制御装置、53…電源供給装置、54…ガス供給装置、55…操作盤、56…ガス流路、57…ガス供給孔、58…ガス供給管取付部材、59…支持部材、60,62…板状導体部、61…空隙部、63…スペーサ、64,77…支持板、66…ガス供給管、67…凹部、69,70…貫通孔、73…マッチングボックス(MB)、74…高周波電源(RF)、75…接地、76…マスフローコントローラ(MFC)、78…ガス供給部、79…保持部材、80…ガス導入部、81…冷却水管、82…冷却水路、83…支持板、84…マグネット、85…冷却ジャケット、86…絶縁材、87…ターゲット、88…保持部材、90…ミラー、90a…Al層、90b…SiO2層、90c…Nb2OX層、P1,P2…圧力、W…被処理材