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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20250324BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20250324BHJP
   C08J 5/14 20060101ALI20250324BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20250324BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20250324BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20250324BHJP
【FI】
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
C08J5/14 CFF
C08G18/10
C08G18/32 025
C08G101:00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020205786
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092842
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】村上 陽平
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-121692(JP,A)
【文献】特開2019-177454(JP,A)
【文献】特開2018-043342(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021428(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/24
H01L 21/304
C08J 5/14
C08G 18/10
C08G 18/32
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂発泡体を備えた研磨パッドであって、
研磨面を有し、
該研磨面が、前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成され、
前記ポリウレタン樹脂発泡体が、前記ポリウレタン樹脂中に分散されている水相溶液体を含み、
前記水相溶液体が、ジエチレングリコール、分子量600以下のポリエチレングリコール、及び、エチレンジアミンからなる群より選択される少なくとも1種である、研磨パッド。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂発泡体が、ウレタンプレポリマー及びポリアミン化合物を含む硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記水相溶液体の配合量は、前記ウレタンプレポリマー100重量部に対して、0.1~10.0重量部である、請求項に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板として用いられるシリコンウェハ等の被研磨物の鏡面研磨処理では、ポリウレタン樹脂発泡体によって形成されたウレタン系の研磨パッドが広く用いられている。
【0003】
近年、半導体チップ製品の歩留まり向上を目的として、被研磨物の平坦度をより高めることが求められている。特に、被研磨物の外周部分における平坦度への要求が高まっている。かかる平坦度を向上させるためには、より高硬度なウレタン系の研磨パッドを用いることが有効であると考えられている。
【0004】
また、従来、ウレタン系の研磨パッドでは、研磨レート等の研磨品質を向上させる目的で、ウレタンプレポリマーに親水基を導入するか、ウレタンプレポリマーと親水基を有する化合物とを反応させることにより親水性を高めて、スラリーとのなじみ性を良好にしている(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-034385号公報
【文献】特開2018-043342号公報
【文献】特開2016-215368号公報
【文献】特開2003-128910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、研磨パッドの硬度を単に高くしても、被研磨物が摩耗されて適切な表面状態を得られないことから、被研磨物の外周部分における平坦度を高めることができない。また、従来の方法を用いて研磨パッドを親水化させると、水と接触した際に研磨パッドが軟質化して硬度が低くなるため、被研磨物の平坦度を低下させる虞がある。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑み、親水性に優れるとともに、被研磨物の外周平坦度を高めることが可能な研磨パッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る研磨パッドは、ポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂発泡体を備えた研磨パッドであって、研磨面を有し、該研磨面が、前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成され、前記ポリウレタン樹脂発泡体が、前記ポリウレタン樹脂中に分散されている水相溶液体を含む。
【0009】
斯かる研磨パッドは、ポリウレタン樹脂発泡体が、ポリウレタン樹脂中に分散されている水相溶液体を含むことにより、水と接触した際の軟質化を抑制しつつ、親水性を高めることができる。これにより、研磨パッドとスラリーとのなじみ性を良好にして、該パッド表面のスラリー保持性を向上させることができる。その結果、被研磨物の外周部分への応力を緩和し、外周平坦度を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上より、本発明によれば、親水性に優れるとともに、被研磨物の外周平坦度を高めることが可能な研磨パッドを提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態に係る研磨パッドは、ポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂発泡体を備えた研磨パッドである。また、前記研磨パッドは、研磨面を有し、該研磨面が、前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成されている。
【0013】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、前記ポリウレタン樹脂中に分散されている水相溶液体を含む。水相溶液体とは、水と1:1で混ぜてもゲル化、分離又は増粘しない液体をいう。水相溶液体は、後述するイソシアネート化合物や活性水素化合物とほぼ反応しない形で、前記ポリウレタン樹脂中に分散されている。
【0014】
水相溶液体としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量600以下のポリエチレングリコール等のアルコール系溶液;エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン等のアミン系溶液等が挙げられる。これらの中でも、水相溶液体は、親水性を良好にする観点から、ジエチレングリコール、分子量600以下のポリエチレングリコール、及び、エチレンジアミンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、親水性を良好にする観点から、前記ポリウレタン樹脂中に水非相溶液体が分散されていないことが好ましい。水非相溶液体とは、水と1:1で混ぜた時にゲル化、分離又は増粘する液体をいう。水非相溶液体としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、イオン性界面活性剤等の整泡剤;シリコーン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤等の消泡剤等が挙げられる。
【0016】
前記ポリウレタン樹脂は、活性水素を含む化合物(以下、「活性水素化合物」ともいう。)の第1の構成単位と、イソシアネート基を含む化合物(以下、「イソシアネート化合物」ともいう。)の第2の構成単位と、を備える。
【0017】
また、前記ポリウレタン樹脂は、活性水素化合物とイソシアネート化合物とが結合して、活性水素化合物の第1の構成単位とイソシアネート化合物の第2の構成単位とがウレタン結合して、交互に繰り返した構造となっている。
【0018】
前記活性水素化合物は、イソシアネート基と反応し得る活性水素基を分子内に有する有機化合物である。該活性水素基として、具体的には、ヒドロキシ基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、チオール基等の官能基が挙げられる。前記活性水素化合物は、分子中に該官能基を1種のみ有していてもよいし、複数種有していてもよい。
【0019】
前記活性水素化合物としては、例えば、分子中に複数のヒドロキシ基を有するポリオール化合物、分子内に複数の第1級アミノ基又は第2級アミノ基を有するポリアミン化合物等が挙げられる。
【0020】
前記ポリオール化合物としては、例えば、ポリオールモノマー、ポリオールポリマー等が挙げられる。
【0021】
前記ポリオールモノマーとしては、例えば、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖脂肪族グリコール;ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐脂肪族グリコール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添加ビスフェノールA等の脂環族ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能ポリオール等が挙げられる。
【0022】
前記ポリオールモノマーとしては、反応時の強度がより高くなりやすいとともに、製造されたポリウレタン樹脂発泡体を備えた研磨パッドの剛性がより高くなりやすく、かつ、比較的安価であるという観点から、エチレングリコール又はジエチレングリコールであることが好ましい。
【0023】
前記ポリオールポリマーとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。なお、ポリオールポリマーとしては、ヒドロキシ基を分子中に3以上有する多官能ポリオールポリマーも挙げられる。
【0024】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール等が挙げられる。
【0025】
前記ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物が挙げられる。また、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させて得られた反応混合物をさらに有機ジカルボン酸と反応させた反応生成物も挙げられる。
【0026】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレンオキサイド付加ポリプロピレンポリオール等が挙げられる。
【0027】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのジオールと、ホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)又は環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物などが挙げられる。
【0028】
前記ポリオール化合物としては、その他に、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量400以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0029】
前記ポリアミン化合物としては、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)、4,4’-メチレンジアニリン、トリメチレン ビス(4-アミノベンゾアート)、2-メチル4,6-ビス(メチルチオ)ベンゼン-1,3-ジアミン、2-メチル4,6-ビス(メチルチオ)-1,5-ベンゼンジアミン、2,6-ジクロロ-p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(2,3-ジクロロアニリン)、3,5-ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン、トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート、1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン等が挙げられる。
【0030】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、ポリイソシアネート、ウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0031】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。また、前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の変性物等が挙げられる。
【0033】
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の変性物としては、例えば、カルボジイミド変性物、ウレタン変性物、アロファネート変性物、ウレア変性物、ビューレット変性物、イソシアヌレート変性物、オキサゾリドン変性物等が挙げられる。斯かる変性物として、具体的には、例えば、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(カルボジイミド変性MDI)が挙げられる。
【0034】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。
【0035】
前記脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
前記ウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとが結合されてなるポリマーであって、末端基としてイソシアネート基を有する。
【0037】
前記ポリウレタン樹脂は、被研磨物の外周平坦度を高める観点から、前記イソシアネート化合物が親水性基を含まないことが好ましく、また、前記イソシアネート化合物が親水基を有する化合物と反応しないことが好ましい。親水性基としては、例えば、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、エチレンプロピレンオキサイド基等が挙げられる。
【0038】
本実施形態に係る研磨パッドの一態様として、前記ポリウレタン樹脂は、ポリアミン化合物の第1の構成単位と、ウレタンプレポリマーの第2の構成単位と、を備えることが好ましい。すなわち、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、ウレタンプレポリマー及びポリアミン化合物を含む硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物であることが好ましい。なお、本態様において、前記水相溶液体は、ウレタンプレポリマー及びポリアミン化合物とほぼ反応しない形で、前記ポリウレタン樹脂中に分散されている。また、前記ウレタンプレポリマーは、被研磨物の外周平坦度を高める観点から、親水性基を含まないことが好ましい。
【0039】
前記一態様において、前記水相溶液体の配合量は、前記ウレタンプレポリマー100重量部に対して、0.1~10.0重量部であることが好ましく、0.1~5.0重量部であることがより好ましく、0.5~3.0重量部であることがさらに好ましく、1.0~2.0重量部であることが特に好ましい。
【0040】
また、前記水非相溶液体の配合量は、前記ウレタンプレポリマー100重量部に対して、1.0重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以下であることがより好ましく、水非相溶液体を含まないことがさらに好ましい。
【0041】
本実施形態に係る研磨パッドは、上記の如く構成されているが、次に、本実施形態に係る研磨パッドの製造方法の一例について説明する。
【0042】
本実施形態に係る研磨パッドは、例えば、プレポリマー法で製造することができる。具体的には、末端基としてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、発泡剤として水と、を混合して得られた分散液に、硬化剤として活性水素化合物と、水相溶液体と、触媒と、を添加混合して重合させることにより、ポリウレタン樹脂発泡体を備えた研磨パッドを得ることができる。
【0043】
前記水相溶液体を含まない状態でのR値は、1.0以上に設計することが好ましく、1.05以上に設計することが好ましい。また、水相溶液体を含む状態でのR値は、1.05以上に設計することが好ましく、1.1以上に設計することが好ましい。なお、R値は、下記(1)式で表される値である。
R値=(NH基のモル数+OH基のモル数)/NCOのモル数 ・・・(1)
【0044】
本実施形態に係る研磨パッドで研磨する被研磨物としては、シリコンウェーハ、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク、ガラス板等が挙げられる。
【0045】
本実施形態に係る研磨パッドは、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
【0046】
即ち、本実施形態に係る研磨パッドは、ポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂発泡体を備えた研磨パッドであって、研磨面を有し、該研磨面が、前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成され、前記ポリウレタン樹脂発泡体が、前記ポリウレタン樹脂中に分散されている水相溶液体を含むことにより、水と接触した際の軟質化を抑制しつつ、親水性を高めることができる。これにより、研磨パッドとスラリーとのなじみ性を良好にして、該パッド表面のスラリー保持性を向上させることができる。その結果、被研磨物の外周部分への応力を緩和し、外周平坦度を高めることができる。
【0047】
なお、本発明に係る研磨パッドは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る研磨パッドは、上記した作用効果によっても限定されるものでもない。本発明に係る研磨パッドは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例
【0048】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0049】
(実施例1~4)
TDI系ウレタンプレポリマーと、発泡剤として水と、を混合タンク内で撹拌羽根にて100℃下で混合することにより、空気が気泡として分散した分散液を得た。次に、前記混合タンク内で撹拌羽根にて前記分散液と、硬化剤としてMOCAと、触媒として3級アミン系触媒と、水相溶液体と、を混合して、プレポリマーを重合させることにより、ポリウレタン樹脂発泡体たる研磨パッドを得た。なお、各成分は、表1に示すR値となるように配合量を調整した。ウレタンプレポリマー100重量部に対する水相溶液体の配合量を表1に示す。
【0050】
(比較例1)
水相溶液体を混合せず、分散液に整泡剤を配合したこと以外は、各実施例と同様に研磨パッドを得た。ウレタンプレポリマー100重量部に対する整泡剤の配合量を表1に示す。
【0051】
(比較例2)
水相溶液体を混合しなかったこと以外は、各実施例と同様に研磨パッドを得た。
【0052】
表1に示す成分の詳細を以下に示す。
・整泡剤:シリコーン系界面活性剤
・DEG:ジエチレングリコール
・PEG600:ポリエチレングリコール(分子量600)
【0053】
(研磨試験)
各実施例及び比較例の研磨パッドを用いて、下記の研磨条件で被研磨物の研磨を行った。
被研磨物:Etched wafer(厚み:約790μm)
研磨機:DMS 20B-5P-4D、Speed FAM社製
スラリーの流量:5L/min
スラリータイプ:NP6610を水で希釈したもの(NP6610:水=1:30(体積比))
評価機:ナノメトロ300TT-A(黒田精工社製)
【0054】
外周平坦度は、ナノメトロ300TT-Aによって測定される。具体的には、まず、外周部の指定した範囲にある放射状データ列の平均データ列のPV値を算出する。PV値は対象となる放射状データ列の解析範囲内ベストフィット後のデータ列に対して行う。区間内ベストフィット後に基準線からPeakまでの距離とVallyまでの距離のうち遠い方の数値を採用し、基準線より上向きの符号を「+」、下向きの符号を「-」として、外周平坦度を算出した。結果を表1に示す。
【0055】
研磨レートは、研磨によって減少した厚みを研磨時間で割ることにより求めた。測定結果を表1に示す。なお、研磨レートは、比較例1の研磨レートを1.0としたときの相対値である。
【0056】
【表1】
【0057】
表1の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす各実施例の研磨パッドは、水相溶液体を含むことにより、被研磨物の外周平坦度を高めることができる。また、研磨レートが良好であることから、親水性に優れた研磨パッドであると言える。
【0058】
一方で、水相溶液体を含まない各比較例の研磨パッドは、研磨レートが良好であるものの、被研磨物の外周平坦度を高めることができない。