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特許7653871ガスストラット、ガスストラットの製造方法、およびガスストラットを備えたフラップの駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】ガスストラット、ガスストラットの製造方法、およびガスストラットを備えたフラップの駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/00 20060101AFI20250324BHJP
   F16F 9/52 20060101ALI20250324BHJP
   F16F 9/02 20060101ALI20250324BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
F16F9/00 A
F16F9/52
F16F9/02
F16F9/32 J
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021142064
(22)【出願日】2021-09-01
(65)【公開番号】P2022046433
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】10 2020 123 636.0
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514062655
【氏名又は名称】スタビラス ゲ―エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ライザー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ プロブスト
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス バイーブ
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-349182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0045916(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0131695(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第102005038115(DE,A1)
【文献】実開昭63-125239(JP,U)
【文献】実開昭59-013735(JP,U)
【文献】特開2019-052672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00
F16F 9/52
F16F 9/02
F16F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.作動ガスが充填された内側作動空間(1a)を包囲する作動シリンダ(1)と、
b.前記内側作動空間(1a)内に、ストローク軸(H)に沿って変位可能に取り付けられた作動ピストン(2)と、
c.前記ストローク軸(H)に沿った部分長に亘って前記作動シリンダ(1)を包囲する均圧シリンダ(12)と、
d.前記作動シリンダ(1)と前記均圧シリンダ(12)との間において、前記ストローク軸(H)に対して径方向に位置する均圧空間(16a)に配置され、温度の上昇に伴って膨張する均圧媒体と、
を備えるガスストラット(50)であって、
前記ガスストラット(50)は、
e.前記作動シリンダ(1)と前記均圧シリンダ(12)との間において、前記ストローク軸(H)に対して径方向に位置する外側作動空間(12a)と、
f.前記ストローク軸(H)に対して径方向に前記作動シリンダ(1)を包囲する均圧ピストン(10)と、
g.前記作動シリンダ(1)と前記均圧シリンダ(12)との間において、前記ストローク軸(H)に対して径方向に位置する復元空間(15a)に配置された復元媒体と、
をさらに備え、
前記外側作動空間(12a)は、前記作動シリンダ(1)の側壁に多数の開口部(1b)を設けることにより、ガス導通状態で前記内側作動空間(1a)に接続され、
前記均圧ピストン(10)は、
前記ストローク軸(H)に沿って変位可能に取り付けられ、
前記ストローク軸(H)に直交する方向の一方の側で前記外側作動空間(12a)を区画し、
作動媒体の圧力および前記均圧媒体の圧力を受けることにより、前記外作動空間(12a)の容積を増大させ、
前記復元媒体の圧力を受けることにより、前記外側作動空間(12a)の容積を減少させる、
ことを特徴とするガスストラット(50)。
【請求項2】
前記均圧ピストン(10)は、前記均圧シリンダ(12)内に完全に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のガスストラット(50)。
【請求項3】
前記外側作動空間(12a)は、前記ストローク軸(H)に沿って前記均圧空間(16a)と前記復元空間(15a)との間に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のガスストラット(50)
【請求項4】
前記均圧媒体の圧力を受けると、前記ストローク軸(H)に沿って均圧ピストン(10)の方向へ移動することで前記均圧空間(16a)から排出可能に構成されたタペット(110)を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のガスストラット(50)。
【請求項5】
前記タペット(110)の前記ストローク軸(H)に直交する方向の断面積は、前記均ピストン(10)の前記ストローク軸(H)に直交する方向の断面積より小さい、
ことを特徴とする請求項4に記載のガスストラット(50)。
【請求項6】
前記均圧シリンダ(12)には、前記ストローク軸(H)に沿って前記作動シリンダ(1)を超えた位置に少なくとも1つの余長(12b)が形成され、
前記少なくとも1つの余長(12b)は、その一部に前記復元空間(15a)を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のガスストラット(50)。
【請求項7】
前記作動ピストン(2)に締結され、前記作動シリンダ(1)内に前記ストローク軸(H)に沿って変位可能に取り付けられたピストンロッド(6)を備え、
前記ストローク軸(H)に沿って前記ピストンロッド(6)から離れる側の前記作動シリンダ(1)の端部に、余長(12b)が形成されている、
ことを特徴とする請求項6に記載のガスストラット(50)。
【請求項8】
前記外側作動空間(12a)の前記ストローク軸(H)に直交する方向の直径は、前記均圧空間(16a)および前記復元空間(15a)の前記ストローク軸(H)に直交する方向の直径の両方、またはいずれか一方の直径より小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載のガスストラット(50)。
【請求項9】
前記均圧シリンダ(12)は、前記均圧空間(16a)、前記外側作動空間(12a)、および前記復元空間(15a)を前記ストローク軸(H)に対して径方向に包囲し、
前記均圧シリンダ(12)の前記ストローク軸(H)に直交する方向の直径は、前記均圧空間(16a)および前記復元空間(15a)の領域の両方、またはいずれか一方の領域において、前記外側作動空間(12a)の領域より広く設ける、
ことを特徴とする請求項7に記載のガスストラット(50)。
【請求項10】
前記復元媒体はガスある、
ことを特徴とする請求項1に記載のガスストラット(50)。
【請求項11】
a.前記復元空間(15a)は、前記ストローク軸(H)に沿って変位可能に取り付けられた増倍ピストン(17)を含み、
b.前記増倍ピストン(17)は、前記復元空間(15a)を、前記均圧ピストン(10)に接する液体空間(18a)と、前記均圧ピストン(10)から気密に分離される気体空間(19a)とに分割し、
c.前記液体空間(18a)には作動油が充填されており、前記気体空間(19a)にはガス状の前記復元媒体が充填され、
d.前記増倍ピストン(17)の前記ストローク軸(H)に直交する方向の断面積は、前記均圧ピストン(10)の前記ストローク軸(H)に直交する方向の断面積よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載のガスストラット(50)。
【請求項12】
ガスストラット(50)の製造方法であって、
a.前記ガスストラット(50)の前記作動シリンダ(1)を前記ガスストラット(50)の前記均圧シリンダ(12)内に配置する配置工程と、
b.前記配置工程の後で、前記ガスストラット(50)の前記復元媒体、前記均圧ピストン(10)、および前記均圧媒体を、前記作動シリンダ(1)と前記均圧シリンダ(12)の間の空間に充填する充填工程と、
c.前記配置工程の後で、前記ガスストラット(50)の前記作動ピストン(2)と前記作動ガスを前記作動シリンダ(1)に導入する導入工程と、
d.前記充填工程および前記導入工程の後で、前記作動シリンダ(1)および前記均圧シリンダ(12)を気密に閉止する閉止工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のガスストラット(50)の製造方法。
【請求項13】
a.前記作動ガスを前記内作動空間および外作動空間(1a、12a)へ導入する導入工程と、前記復元媒体としての前記作動ガスを前記ガスストラット(50)の前記復元空間(15a)へ充填する充填工程を同時に行い、
b.前記導入工程および前記充填工程の後で、前記作動媒体の一部を前記内部作動空間および外部作動空間(1a,12a)から抜き取る工程を含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記均圧シリンダ(12)の前記ストローク軸(H)に対する横方向の直径は、前記均圧空間(16a)および前記復元空間(15a)の領域の両方、またはいずれか一方の領域において、前記外側作動空間(12a)の領域より広く設ける工程を含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
フラップの駆動装置であって、
a.前記フラップを支持するために設けられた請求項1に記載の前記ガスストラット(50)と、
b.前記フラップを駆動するための電気機械駆動装置
を備えることを特徴とするフラップの駆動装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、作動ガスが充填された内側作動空間を包囲する作動シリンダと、ストローク軸に沿って変位可能に内側作動空間内に取り付けられる作動ピストンと、ストローク軸に沿った部分長に亘って作動シリンダを包囲する均圧シリンダと、作動シリンダと均圧シリンダとの間において、ストローク軸に対して径方向に位置する均圧空間に配置され、温度の上昇に伴って膨張する均圧媒体と、を備えるガスストラットに関する。
【0002】
さらに、本願発明は、上記ガスストラットを製造する方法、および上記ガスストラットを有するフラップの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ガスストラットに用いられるガスは、温度Tが上昇するに連れて膨張し、温度Tが降下するに連れて収縮する。または、体積Vが一定の場合、ガス圧力pは上昇または下降する(典型的なガスでは、p×V=n×R×Tに基づく)。そのため、ガスストラットにて与えられるばね力も温度に依存する。多くの用途において、ばね力の温度依存により問題が発生することから、これを補償することが重要である。
【0004】
例えば、従来のガスストラットを車両のテールゲートで使用する場合、テールゲートの開状態を確実に維持するために、低温(例えば-30℃~0℃)でも十分にばね力を発揮するよう、あらゆる温度に対して求められる以上に強力にガスストラットを構成する必要がある。従来のガスストラットは、通常は中間温(例えば0℃から25℃)で作動し、求められるばね力よりも強いばね力を有するため、このように構成されたガスストラットに対してテールゲートを閉じようとすると、自動駆動装置が出力する必要なモータ電力が平均的に増加してしまう。モータ電力の出力量を増加させるためには、大型で重量の大きいモータが必要となり、モータの電力消費が高くなるため望ましくない。さらに、手動操作でテールゲートを閉じる場合にも、従来のガスストラットを圧縮するためには大きな力が必要なため、中高温(例えば25℃以上)において得られるはずの操作のしやすさは低減してしまう。
【0005】
欧州特許出願公開第1795777号明細書には、均圧ピストン装置と作動シリンダとを備え、作動媒体で充填された作動室が、均圧ピストン装置と作動シリンダとで区画されたガスストラットが開示されている。均圧ピストン装置は均圧空間内に設けられ、温度の上昇に伴って膨張する作動媒体および均圧媒体の圧力を受けることで作動空間の容積を増大させる。このように、温度に依存する作動媒体の容量を適応させることで、均圧媒体は、ガスストラットのばね力の温度依存を低減する。
【0006】
現在、ガスストラットのばね力の温度依存を補償することを目的に、以下の従来技術が提供されている。
a.例えば、独国特許出願公開第112006000335号明細書に記載のテンパー駆動バルブを使用して、低温時に追加容量を使用して温度補償をする技術
b.ばねストラットの使用、特に、ガスストラットと機械ばねを組み合わせた技術
c.欧州特許出願公開第1795777号明細書に記載の均圧媒体を使用して温度依存を低減する技術。
【0007】
上記aの技術では、追加容積を使用するため、温度補償の程度およびばね定数の変化の程度は制限される。また、aの技術によるガスストラットの全長は、シンプルなガスストラットの全長よりもかなり大きくなる。
【0008】
上記bの技術では、十分な寸法のばねストラットを生産するコストが非常に高く、また重量が大きくばね定数の観点から好ましくない。また、bの技術では、温度依存を完全に克服できない。
【0009】
上記cの技術は技術的に非常に複雑であり、よって、特に組み立てに関するコストが高くなる。また、一定の作動条件下では、均圧空間に非常に高い圧力が発生する可能性があり、ガスストラットのシール手段および管に大きな負荷がかかる。さらに、cの技術によるガスストラットでは、作動空間を長く設けることで温度が補償されることから、その全長が長くなってしまう。このように、cの技術によるガスストラットは非補償型ガスストラットと比較して寸法がかなり大きく、適用可能な用途が明らかに制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明の目的は、使用に際して汎用性があり、ばね力の温度依存をできるだけ低く抑えることのできる、安価で耐久性のあるガスストラットを提供することである。さらに、本願発明の目的は、できるだけ安価で信頼性のあるガスストラットの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、請求項1に記載のガスストラットにて達成可能である。同様に、上記目的は、請求項8に記載の製造方法および請求項10に記載の駆動装置にて達成可能である。効果的な構成は、従属する請求項の記載にて明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願発明に係るガスストラットは、作動ガスが充填された内側作動空間を包囲する少なくとも1つの作動シリンダを備える。作動シリンダは、例えば、ほぼ中空円筒状に形成され、ストローク軸と同軸に配置可能である。また、後述する作動ガスの外側作動空間との多数の接続部を除いて、作動シリンダは作動空間を気密に包囲する。作動ガスは、例えば、窒素、またはガスストラットを充填するために一般的に知られている別のガスである。ガスストラットをできるだけ容易に製造できるよう、作動シリンダは一体型に設けられることが好ましい。
【0013】
また、本願発明に係るガスストラットは、内側作動空間内に、ストローク軸に沿って変位可能に取り付けられる少なくとも1つの作動ピストンを備える。作動ピストンは、従来のガスストラットと同様に、作動空間を2つの作動室に分割する。また、ガスストラットに接続された構成要素の作動シリンダに対する運動を伝達するピストンロッドに対し、作動ピストンを接続できる。
【0014】
また、本願発明に係るガスストラットは、ストローク軸に沿った部分長に亘って作動シリンダを、特に作動ガスに対して気密に包囲する少なくとも1つの均圧シリンダを備える。均圧シリンダは、例えば、ストローク軸に対して回転対称に設けられる。また、均圧シリンダは、作動シリンダのストローク軸に沿った全長に亘って、またはそれを超えるように包囲するため、ストローク軸に沿った作動シリンダに対して少なくとも1つの余長が形成される。均圧シリンダは、例えば、ほぼ中空円筒状に形成される。また、ガスストラットをできるだけ容易に製造できるよう、均圧シリンダは一体型に設けられることが好ましい。
【0015】
また、本願発明に係るガスストラットは、作動シリンダと均圧シリンダとの間において、ストローク軸に対して径方向に位置する少なくとも1つの均圧空間に配置され、温度の上昇に伴って膨張する少なくとも1つの均圧媒体を備える。均圧媒体は、均圧空間を満たしていることが好ましい。
【0016】
好ましくは、均圧媒体は膨張ワックス等の膨張物質であり、特に、パラフィンやアルカンの混合物、油、または二相媒体を用いる。均圧媒体は、欧州特許出願公開第1795777号明細書または独国特許出願公開第102020113749号明細書に記載のように構成することが可能で、その効果は記載のとおりに現れる。
【0017】
また、本願発明に係るガスストラットは、作動シリンダと均圧シリンダとの間において、ストローク軸に対して径方向に位置し、ガス導通状態で内側作動空間に接続される少なくとも1つの外側作動空間を備える。外側作動空間は、例えば、ほぼ中空円筒状に形成され、また、ストローク軸に対して同軸に配置可能である。外側作動空間は、作動シリンダの側壁に多数の開口部、特にストローク軸に対して径方向に孔を設けることにより、ガス導通状態で内側作動空間に接続される。側壁は、好ましくは、ストローク軸を中心として延設される。外側作動空間と内側作動空間とを側壁を介して接続することは、外側作動空間を内側作動空間と完全に並べて配置したり、ストローク軸に対して内側作動空間を包囲したりできる点で利点がある。これにより、ガスストラットのストローク軸に沿った長さ寸法を短くすることが可能である。ストローク軸に対して横方向に並べられた作動シリンダの端壁は、作動ガスに対して閉じるように設けることが好ましい。
【0018】
また、本願発明に係るガスストラットは、ストローク軸に対して径方向に作動シリンダを包囲する少なくとも1つの均圧ピストンを備える。均圧ピストンは、ストローク軸に沿って変位可能に取り付けられ、ストローク軸に対して横方向の一方側で外側作動空間を区画し、均圧媒体の圧力を受けることにより、外側作動空間の容積を増大させる。
【0019】
均圧ピストンは、例えば、中空円筒状に形成され、また、ストローク軸に対して同軸に配置可能である。ガスストラットをできるだけ容易に製造できるよう、均圧ピストンは一体型に設けられることが好ましい。また、均圧ピストンは均圧シリンダ内に完全に配置されることが好ましく、これにより、均等ピストンがストローク軸に沿って変位しても、ガスストラットのストローク軸に沿った長さ寸法が変化しないという利点が得られる。したがって、長さは温度に依存しない。
【0020】
温度が上昇すると均圧媒体が膨張し、均圧ピストンがストローク軸に沿って変位するため、外側作動空間が増大する。その結果、内側作動空間および外側作動空間内の作動ガスの容積が増大し、温度の上昇による作動ガスの圧力上昇に対抗する。均圧媒体の適切な選択、またガスストラットの幾何学的構成によって、作動ガスの圧力およびガスストラットの合成ばね力の温度依存が低減可能であり、または完全な補償を成立させることができる。特に、ばねストラットに比べて、顕著に良好な補償を達成できる。
【0021】
作動シリンダと均圧シリンダとの間において、ストローク軸に対して径方向に位置する本願発明に係る外側作動空間の構成は、外側作動空間のないガスストラットと比較して、ストローク軸に沿ったガスストラットの全長を延長する必要がない点で特に効果的である。上記構成では、欧州特許出願公開第1795777号明細書に開示の構成に比べ、ガスストラットの全長をかなり短くできるため、より汎用的に使用できる。
【0022】
また、本願発明に係るガスストラットは、作動シリンダと均圧シリンダとの間において、ストローク軸に対して径方向に位置する少なくとも1つの復元空間に配置された少なくとも1つの復元媒体を備える。均圧ピストンは、この復元媒体の圧力を受けることにより、外側作動空間の容積を減少させる。復元媒体は、復元空間を満たしていることが好ましい。
【0023】
復元空間は、例えば、ストローク軸に対して回転対称に構成される。外側作動空間は、均圧空間と復元空間の間でストローク軸に沿って配置されることが好ましい。また、復元空間はガスストラットの一端に配置され、その反対側の端には、ストローク軸に沿って均圧空間が配置されることが好ましい。均圧空間と復元空間との間に外部作動空間を配置することにより、均圧媒体および復元媒体は、外部作動空間の容積に対して互いに反対方向に作用することが容易になり、加温時および冷却時の双方において、ガスストラットのばね力の温度依存を補償することができる。
【0024】
復元媒体を設けることにより、温度低下時に均圧媒体が収縮する際、均圧ピストンを確実に移動させて外側作動空間を減少させる効果が得られる。そのため、内側作動空間および外側作動空間内の作動ガスの容積を小さくしても、温度低下による作動ガスの圧力減少を打ち消すことができる。温度変動の際に、均圧ピストンは、均圧媒体、作動ガス、および復元媒体にて可逆的に移動させることが理想的であり、これにより、ガスばねのばね力の温度依存は永久的に補償される。
【0025】
作動シリンダと均圧シリンダとの間において、ストローク軸に対して径方向に位置する本願発明に係る復元空間の構成は、復元空間のないガスストラットと比較して、ストローク軸に沿ったガスストラットの全長を延長する必要でないという点で特に効果的である。上記構成では、欧州特許出願公開第1795777号明細書に開示の構成に比べ、ガスストラットの全長をかなり短くできるため、より汎用的に使用できる。
【0026】
また、本願発明に係るガスストラットは、均圧媒体の圧力を受けると、ストローク軸に沿って均圧ピストンの方向へ移動することで均圧空間から排出可能に構成された少なくとも1つのタペットを備える。
【0027】
タペットは、例えば、中空円筒状に形成でき、また、ストローク軸に対して同軸に配置可能である。タペットのストローク軸に対する横方向の断面積は、均圧ピストンのストローク軸に対する横方向の断面積より小さく設定している。そのため、タペットを備える構成においては、タペットを設けない構成に比べ、均圧媒体の体積の所与の変化による均圧ピストンの変位がさらに大きくなる。よって、ガスストラットのばね力の温度依存をより効果的に補償することができる。
【0028】
均圧ピストンを、均圧空間から離れた側である外部作動空間の側に配置する構成では、タペットにより効果的に均圧ピストンと均圧媒体とを結びつけることができる。よって、均圧媒体の膨張に伴う外部作動空間の増大がシンプルな構成により達成される。
【0029】
均圧シリンダには、ストローク軸に沿って作動シリンダを超えた位置に少なくとも1つの余長が形成され、少なくとも1つの余長は、その部分領域に、均圧空間および復元空間、またはいずれか一方を含むことが好ましい。
【0030】
均圧空間および復元空間、またはいずれか一方の部分領域に余長を配置することにより、ガスストラットのストローク軸に対する横方向の直径を増大させることなく、より多くの均圧媒体や復元媒体を含むことができる。よって、均圧媒体や復元媒体から受ける圧力や、使用可能な設置空間にて異なる要件に、ガスストラットを適合可能となる。
【0031】
車両製造においてガスストラットが実際に使用される際、復元空間の部分領域に余長を配置する構成が特に効果的であることは既に証明されている。復元空間の寸法を十分に設けることにより、ガスストラット使用時の復元媒体の圧力は、従来のシール手段および均圧シリンダや作動シリンダの材料にとって限界値とならない値、例えば、250bar未満に制限される。
【0032】
また、本願発明に係るガスストラットは、作動ピストンに締結され、作動シリンダ内にストローク軸に沿って変位可能に取り付けられたピストンロッドを備え、余長はストローク軸に沿ってピストンロッドから離れる側の作動シリンダの端部に形成されていることが好ましい。この構成により、ピストンロッドのストローク移動およびピストンロッドの他の構成要素への接続が、余長によって妨げられない。
【0033】
また、本願発明に係るガスストラットは、作動ピストンに締結され、作動シリンダ内のストローク軸に沿って変位可能に取り付けられたピストンロッドを備え、復元空間は、ストローク軸に沿ってピストンロッドから離れる側の作動シリンダの端部に配置されることが好ましい。
【0034】
典型的に、ガスストラットの製造は、ピストンロッドから離れる側から前方に向かうように作動シリンダ内に作動ピストンを挿入し、ピストンロッドが作動シリンダの外側へ突出する側から、作動シリンダ内に作動ガスを充填することでなされる。均圧空間がピストンロッドから離れる側の作動シリンダの反対側に配置される構成では、この製造フローに対して、気体状の復元媒体、および特にワックス状の均圧媒体の充填を簡単に組み込むことができる。
【0035】
外側作動空間のストローク軸に対する横方向の直径は、均圧空間と復元空間とのストローク軸に対する横方向の直径の両方またはいずれか一方の直径より小さいことが好ましい。この構成により、均圧空間や復元空間において、均圧媒体や復元媒体が十分な体積で使用可能となり、ガスストラットの典型的な使用条件下でばね力の温度依存が広範に補償され、信頼性のあるガスストラットの作動が保証される。また、ガスストラットのストローク軸に沿った長さをできるだけ小さくできる。
【0036】
均圧シリンダは、均圧空間、外側作動空間、および復元空間をストローク軸に対して径方向に包囲し、均圧シリンダのストローク軸に対する横方向の直径は、均圧空間および復元空間の領域の両方またはいずれか一方の領域において、外側作動空間の領域より広く設けることが好ましい。本実施形態では、外側作動空間の直径と、均圧空間や復元空間の直径とを異るように製造することは容易である。
【0037】
特に、復元空間の寸法を十分に設けることにより、ガスストラット使用時の復元媒体の圧力は、従来のシール手段および均圧シリンダや作動シリンダの材料にとって限界値とならない値、例えば250bar未満に制限される。また、均圧空間の寸法を十分に設けることにより、温度上昇時に均圧媒体が十分に膨張しても、外側作動空間の増大は、作動ガスの圧力が著しく上昇してしまわない程度となる。
【0038】
一実施形態において、復元媒体は、ガス、特に作動ガスである。機械ばねと比べて、ガスは、質量が少ない点、およびノイズのない動作が可能な点で利点がある。復元媒体として作動ガスを使用すると、使用するガスが1種類となるため、ガスストラットの製造が簡素化される。ガス状復元媒体に追加、またはその代わりとして、復元媒体を、復元空間内に配置した機械的復元ばねとすることもできる。
【0039】
復元空間は、ストローク軸に沿って変位可能に取り付けられた増倍ピストンを備えことが好ましい。増倍ピストンは、復元空間を、均圧ピストンに接する液体空間と、均圧ピストンから気密に分離される気体空間とに分割する。
【0040】
液体空間は、作動流体、特に作動油で満たされ、ガス空間は、ガス状の復元媒体、特に作動ガスで満たされる。
【0041】
増倍ピストンのストローク軸に対する横方向の断面積は、均圧ピストンのストローク軸に対する横方向の断面積よりも例えば2倍から10倍、特に5倍程度大きい。この構成により、増倍ピストンおよび均圧ピストンは、その間に位置する作動流体と共に油圧増倍として作用する。このように油圧増倍を用いると、油圧増倍のない構成に比べて、冷却時に均圧媒体を圧縮する復元空間において必要となる圧力が低圧で済むため、復元空間を画定するシールおよび壁を保護できる点で有効である。
【0042】
増倍ピストンのストローク軸に対する横方向の外径は、均圧ピストンのストローク軸に対する横方向の外径よりも大きいか小さい、または同じである。
【0043】
増倍ピストンは、ディスク形状であることが好ましく、ディスク面がストローク軸に対して横方向に配向される。また、ストローク軸に沿ってピストンロッドから離れる側の作動シリンダの端部の手前に配置可能である。均圧ピストンの外径が増倍ピストンの外径より小さい構成では、作動シリンダの周囲にリング状に配置された均圧ピストンの断面積に比べて、ディスク状の増倍ピストンの断面積の方が大きくなる。
【0044】
さらに、本願発明は、本願発明に係るガスストラットの製造方法に関する。本願発明に係る方法は、少なくとも以下のa~dのステップを含む。
a.ガスストラットの作動シリンダをガスストラットの均圧シリンダ内に配置する配置工程。
b.配置工程の後に、ガスストラットの復元媒体、均圧ピストン、および均圧媒体を、作動シリンダと均圧シリンダとの間の空間に充填する充填工程と、
c.配置工程の後に、ガスストラットの作動ピストンと作動ガスとを作動シリンダに導入する導入工程と、
d.充填工程および導入工程の後に、作動シリンダおよび均圧シリンダを気密に閉止する閉止工程。
【0045】
作動ガスを内部作動空間および外部作動空間へ導入する導入工程、復元媒体としての作動ガスをガスストラットの復元空間へ充填する充填工程を、作動空間から復元空間への非復元弁を介して同時に行い、導入工程および充填工程の後で、作動媒体の一部を内部作動空間および外部作動空間から抜き取る工程を行うことが好ましい。
【0046】
導入工程と充填工程とを同時に行うことで、ガスストラットの組立を高速化・簡素化きる。また、作動媒体の一部を作動空間から抜き取ることで、復元空間内で復元媒体として作用する作動媒体が、内側作動空間および外側作動空間内の作動媒体よりも高い圧力にあることが保証される。結果として、低温においても、復元媒体は少ない体積で、均圧ピストンを作動媒体および均圧媒体の圧力に対抗して外側作動空間の位置に復元させることができる。
【0047】
本願発明に係る製造方法は、均圧シリンダのストローク軸に対する横方向の直径を、均圧空間および復元空間の領域の両方またはいずれか一方の領域において、外側作動空間の領域より広く設ける工程を含むことが好ましい。
【0048】
本願発明は、フラップの駆動装置に関する。フラップの駆動装置は、
a.フラップを支持するために設けられた、本願発明にかかるガスストラットと、
b.フラップを駆動するための、例えばリニア駆動装置等の電気機械駆動装置、特にスピンドル駆動装置、
とを含む。
【0049】
フラップは、例えば、車両のフラップ、特にエンジンボンネット、トランクカバー、荷物室のドア、またはウィングドアでもよい。
【0050】
フラップを支持するためのガスストラットと、フラップを駆動するための電気機械駆動装置とを備えたフラップの駆動装置は、従来技術として知られている。一般的なガスストラットの代わりに本願発明に係るガスストラットを使用する他に、本願発明に係る駆動装置は、例えば独国特許出願公開第10313440号明細書または独国特許出願第102008045903号明細書に開示された従来技術に係る駆動装置のように構成することができる。
【0051】
駆動装置のガスストラットは、重力に対抗していずれかの位置でフラップを保持するように機能し、電気機械駆動装置は、フラップを開閉するように機能する。また、独国特許出願公開第10313440号明細書および独国特許出願第102008045903号明細書に開示のように、フラップを手動で作動させることができる。
【0052】
ガスストラットは、周囲温度が低い場合でもフラップを保持できるように高いばね力を有していなければならない。従来のガスストラットにおけるばね力は、温度の上昇と共に増大するので、フラップを閉じる際に、電気機械駆動装置またはオペレータにて非常に大きな力を加える必要が生じる。そのため、駆動装置は非常に強力な電気機械駆動装置を備えなければならならいが、強力な電気機械駆動装置は高価で、広い設置スペースを必要とし、また、作動中に多くのエネルギーを消費する。また、フラップに機械的に接続された電気機械駆動装置、およびヒンジ等の他の部品が激しく摩耗してしまう。
【0053】
従来技術において、これらの課題は、ガスストラットの代わりにばねストラットを使用することで回避されてきた(例えば、独国特許出願第102008045903号明細書の段落[0021])。ばねストラットは、ほぼ温度に依存しないばね力を有するが、同程度のばね力を有するガスストラットよりも寸法が大きく、重く、そしてより高価である。
【0054】
慣習的に使用されているガスストラットの代わりに、本願発明に係る温度補償可能なガスストラットを使用することにより、安価で耐久性があり、省スペース且つ省エネルギーで、製造およびフラップの操作が容易な駆動装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
本願発明のさらなる利点、目的、および特徴は、添付の図面を参照し、本願発明に係る主題を例示する以下の説明により明らかにされる。全図において、機能に関して少なくともほぼ対応する特徴は同一の参照符号で示し、その特徴についての繰り返しの説明を省略する。
【0056】
図1は、本願発明に係るガスストラットの縦断面を示す模式図である。
【0057】
図2は、本願発明に係る他のガスストラットのストローク軸に沿った縦断面を示す模式図である。
【0058】
図1
図1は、本願発明に係るガスストラット50のストローク軸Hに沿った縦断面を示す模式図である。
【0059】
ガスストラット50は、窒素等の作動ガス(図示せず)が充填された内側作動空間1aを囲む作動シリンダ1を備える。作動シリンダ1は、例えば、ほぼ中空円筒状に形成され、ストローク軸Hと同軸に配置されている。作動シリンダ1の寸法は、例えば、ストローク軸Hに沿った長さが230mm、ストローク軸に対する横方向の長さが内径16mm、外径19mmである。
【0060】
ガスストラット50は、内側作動空間1a内において、ストローク軸Hに沿って変位可能に取り付けられた作動ピストン2を備える。作動ピストン2は、例えば略円筒状に形成され、ストローク軸Hと同軸に配置される。
【0061】
作動シリンダ1の内側1aは、作動ピストン2によって、ストローク軸Hに沿って互いに前後に位置する、好ましくは第1作動室3と第2作動室4とに分けられる。作動ピストン2は、作動シリンダ1の内側側面から環状に設けられたシール9を備えてもよい。シール9を備えることで、ストローク軸Hに沿って作動ピストン2が変位しても、作動ピストン2の周りに作動媒体が流れることはない。
【0062】
作動ピストン2は、第1作動室3と第2作動室4とを接続する制限孔5を備える。制限孔5を備えることで、第1作動室3と第2作動室4との間の圧力の均等化制御が可能となる。
【0063】
作動ピストン2には、ストローク軸Hに沿って第2作動室4、作動シリンダ1を閉じるために設けられた例えば閉鎖手段14をそれぞれ通り、ガスストラット50から引き出されるピストンロッド6が締結されていることが好ましい。
【0064】
ガスストラット50は、ストローク軸Hに沿った部分長に亘って作動シリンダ1を包囲する均圧シリンダ12を備える。均圧シリンダ12は、ストローク軸Hに対してほぼ対称的に回転するように形成されてもよい。均圧シリンダ12は、ストローク軸Hに沿った部分長に亘って作動シリンダ1を包囲しつつ、さらにストローク軸Hに沿って作動シリンダ1を越えて、ピストンロッド6から離れる側の作動シリンダ1の端部において余長12bを形成してもよい。余長の長さ寸法は、例えば、長手方向軸に沿って20mmとすることができる。
【0065】
ガスストラット50では、作動シリンダ1と均圧シリンダ12との間において、ストローク軸Hに対して径方向に位置する均圧空間16a内に均圧媒体(図示せず)が配置される。均圧媒体は、温度の上昇に伴って膨張する。均圧媒体は、例えば膨張ワックスであり、均圧空間に充填されることが好ましい。均圧空間16aはストローク軸Hに対して例えば略回転対称に形成されており、均圧空間16aのストローク軸に沿った長さ寸法は、例えば113mmである。
【0066】
ガスストラット50は、作動シリンダ1と均圧シリンダ12との間において、ストローク軸Hに対して径方向に配置された外側作動空間12aを備える。外側作動空間12aは、内側作動空間1a、特に第1作動室3に、例えば作動シリンダ1の側壁に多数の開口部1bを設けることによって、ガス導通状態で接続されている。外側作動空間12aは、ストローク軸Hに対して例えば略回転対称に形成されている。
【0067】
ガスストラット50は、ストローク軸Hに対して径方向に作動シリンダ1を包囲する均圧ピストン10を備える。均圧ピストン10は、ストローク軸Hに沿って変位可能に設けられ、ストローク軸Hに対して横方向の一方の側で外側作動空間12aを区画する。均圧ピストン10が作動媒体の圧力および均圧媒体の圧力を受けることにより、外側作動空間12aの容積が増大する。均等ピストン10は、例えば略中空円筒状に形成され、ストローク軸Hと同軸に配置される。均等ピストンは、ストローク軸Hに沿って例えば84mmの均等距離に亘って変位可能である。
【0068】
ガスストラット50では、作動シリンダ1と均圧シリンダ12との間において、ストローク軸Hに対して径方向に位置する復元空間15a内に図示しない復元媒体が配置される。均圧ピストン10が復元媒体の圧力を受けることにより、外側作動空間12aの容積が減少する。復元媒体は、例えばガス、特に作動ガスである。
【0069】
復元空間15aは、例えば、ストローク軸Hに対して略回転対称に形成されている。復元空間15aは、ストローク軸Hに沿って作動シリンダ1を越えた位置に設けられる均圧シリンダ12の余長12bに部分的に配置されていてもよい。復元空間15aの最小の長さ寸法は、例えば、復元空間15aに向かって均圧ピストン10が最も変位する最大変位において、ストローク軸Hに沿って60mmとなるように設定してもよい。
【0070】
均圧空間16a、外側作動空間12a、および復元空間15aは、ストローク軸Hに沿って前後に配置されることが好ましい。特に、復元空間15aは、ピストンロッド6から離れる側の作動シリンダ1の端部に、均圧空間16aはピストンロッド6が引き出される側のガスストラット50の端部に、外側作動空間12aは復元空間15aと均圧空間16aとの間に、それぞれ配置されることが好ましい。
【0071】
なお、均圧空間16aおよび復元空間15aのストローク軸に対する横方向の直径は、外側作動空間12aのストローク軸に対する横方向の直径より大きく設定してもよい。例えば、均圧空間16aの外径を30mm、復元空間15aの外径を25mm~30mm、外作動空間12aの外径を25mmとすることができる。
【0072】
均圧空間16aおよび復元空間15aは、それぞれ少なくとも1つのOリング等のシール9を用いて、外側作動空間12aから密閉されるよう構成してもよい。
【0073】
均圧空間16aは、外側作動空間12aから離れる側の端部において、閉鎖ディスク等からなる閉鎖手段14を用いて閉じるよう構成してもよい。作動シリンダ1および均圧空間16aを、共通の閉鎖手段14を用いて閉じるよう構成してもよい。
【0074】
ガスストラット50は、好ましくは、タペット110を備える。タペット110は、均圧媒体の圧力を受けると、ストローク軸Hに沿って均圧ピストン10の方向へ移動し、均圧空間16aから押し出される。タペット110は、例えば略中空円筒状に形成され、ストローク軸Hと同軸に配置される。タペット110は均圧空間16aから押し出されると、外側作動空間12aを通過し、均圧ピストン10に至り、そこで均圧ピストン10に締結されたり、一体化されたりする。
【0075】
図1は、低温時のガスストラット50を示している。低温時では、外側作動空間12aの容積は小さい。ガスストラット50が加温されると、均圧媒体は均圧空間16a内で膨張し、これにより均圧ピストン10がストローク軸Hに沿って変位するため、外側作動空間12aの容積が増大する(図1の下方向)。結果として、加温にてもたらされる内側作動空間1aおよび外側作動空間12a内の作動ガスの圧力上昇を補償できる。
【0076】
ガスストラット50が冷却されると、均圧媒体が均圧空間16a内で収縮し、これにより復元空間15a内の復元媒体の圧力を受けて均圧ピストン10が変位するため、外部作動空間12aの容積が減少する(図1の上方向)。結果として、冷却にてもたらされる内側作動空間1aおよび外部作動空間12a内の作動ガスの圧力減少を補償できる。
【0077】
図2
図2は、本願発明に係る他のガスストラットのストローク軸に沿った縦断面を示す模式図である。
【0078】
図2では、図1で既に示したガスストラット50の特徴と共通する特徴に、図1と同じ参照番号が付されている。これらの特徴は、図1にて説明した構成と同様に構成できる。
【0079】
図2に示すガスストラット50の復元空間15aは、ストローク軸Hに沿って変位可能に取り付けられた増倍ピストン17を含む。増倍ピストン17は、復元空間15aを、例えばシール9の作用と伴って、均圧ピストン10に接するする液体空間18aと、均圧ピストン10から気密に分離された気体空間19aとに分割する。
【0080】
この構成において、液体空間18aには作動流体が充填され、ガス空間19aにはガス状の復元媒体が充填される。
【0081】
増倍ピストン17のストローク軸Hに対する横方向の断面積を、均圧ピストン10のストローク軸Hに対する横方向の断面積よりも大きく設けて、増倍ピストン17と均圧ピストン10、およびその間に配置された作動流体により油圧増倍が形成されようにする。
【0082】
例えば、増倍ピストン17のストローク軸Hに対する横方向の外径を、均圧ピストン10のストローク軸Hに対する横方向の外形より大きく設ける。
【0083】
好ましくは、増倍ピストン17はディスク形状であり、ディスク面がストローク軸Hに対して横方向に配向され、ストローク軸Hに沿ってピストンロッド6から離れる側の作動シリンダ1の端部の手前に配置される。
【符号の説明】
【0084】
1 作動シリンダ
1a 内側作動空間
1b 開口部
2 作動ピストン
3 第1作動室
4 第2作動室
5 制限孔
6 ピストンロッド
9 シール
10 均圧ピストン
12 均圧シリンダ
12a 外側作動空間
12b 余長
14 閉鎖手段
15a 復元空間
16a 均圧空間
17 増倍ピストン
18a 液体空間
19a 気体空間
50 ガスストラット
110 タペット
H ストローク軸
図1
図2