(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】包装材料用ガスバリアフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 15/14 20060101AFI20250324BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250324BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
B32B15/14
B32B27/00 H
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2021576455
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 IB2020056014
(87)【国際公開番号】W WO2020261170
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-25
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クネース、イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ナイフレット、オーサ
(72)【発明者】
【氏名】ボンネラップ、クリス
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-024537(JP,A)
【文献】国際公開第2018/189698(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0319143(US,A1)
【文献】特表2018-533499(JP,A)
【文献】特開2000-303386(JP,A)
【文献】国際公開第2014/181560(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙又は板紙ベースの包装材料用のガスバリアフィルムであって、
少なくとも一方の表面が金属化されているミクロフィブリル化セルロース層(MFC層)と、
前記MFC層の少なくとも一方の表面に配置されたポリマー分散コーティング層と、
を含み、
前記ポリマー分散コーティングが、ラテックス又はポリビニルアルコール
(PVOH)であり、前記ポリマー分散コーティングが、ポリマー分散コーティングの総乾燥重量に基づいて、1~30重量%の量の顔料をさらに含み、前記ポリマー分散コーティング層の坪量が、1~10gsmの範囲であ
り、
前記MFC層の金属化表面が、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、銅、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、シリコン酸化物、及びそれらの組合せからなる群から選択される金属又は金属酸化物を含む、前記ガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記MFC層が、MFC層の総乾燥重量に基づいて、少なくとも50重量%のMFCを含む、請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項3】
前記MFC層が、ポリビニルアルコール(PVOH)をさらに含む、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
前記MFC層が、顔料をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
前記MFC層の坪量が、55gsm未満の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項6】
前記MFC層の金属化表面が、MFC層上への金属又は金属酸化物の蒸着によって形成される、請求項1~5のいずれか1つに記載のガスバリアフィルム。
【請求項7】
前記MFC層の金属化表面が、アルミニウ
ム、アルミニウム酸化
物、及びそれらの組合せからなる群から選択される金属又は金属酸化物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項8】
前記MFC層の金属化表面が、10~100nmの範囲の金属層の厚さを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項9】
前記MFC層の金属化表面が、20~50nmの範囲の金属層の厚さを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項10】
前記ポリマー分散コーティング層が、金属化されているMFC層の少なくとも1つの表面上に配置されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項11】
前記ラテックスコーティングが、10℃未満のTgを有する、請求項10に記載のガスバリアフィルム。
【請求項12】
前記ポリマー分散コーティングが、ポリマー分散コーティングの総乾燥重量に基づいて、1~20重量%の量の顔料をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム、
【請求項13】
前記ポリマー分散コーティング層の坪量が、1~7gsmの範囲である、請求項1~12のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項14】
紙又は板紙基材と、
請求項1~13のいずれか一項に記載のガスバリアフィルムと、
を含む、紙又は板紙ベースの包装材料。
【請求項15】
前記ガスバリアフィルムの分散コーティング層が、前記ガスバリアフィルムのMFC層と基材との間に挟まれている、請求項14に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
【請求項16】
前記ポリマー分散コーティング層が、前記MFC層の少なくとも1つの金属化表面上に配置されている、請求項14又は15に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
【請求項17】
前記ガスバリアフィルムとは反対側に面する基材表面上に配置された第1の保護層
及び/又は前記基材とは反対側に面するガスバリアフィルム表面上に配置された第2の保護層をさらに含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
【請求項18】
前記第1の保護層が、ポリマー分散コーティングを含む、請求項17に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
【請求項19】
前
記第2の保護層が、ポリマー分散コーティングを含む、請求項17又は18に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
【請求項20】
前記第1の保護層及び/又は第2の保護層が、保護層の総乾燥重量に基づいて、30~70重量%の量の顔料をさらに含む、請求項19に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
【請求項21】
前記第1の保護層及び/又は第2の保護層が、少なくとも以下の2つのサブ層を含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の紙又は板紙ベースの包装材料:
第1のサブ層であり、当該第1のサブ層の総乾燥重量に基づいて、30~70重量%の量の顔料を含むポリマー分散コーティングを含む、第1のサブ層、及び
第2のサブ層であり、当該第2のサブ層の総乾燥重量に基づいて、0~70重量%の量の顔料を含むポリマー分散コーティングを含む、第2のサブ層。
【請求項22】
前記第1の保護層及び/又は第2の保護層が、熱可塑性ポリマーを含む、請求項1~
13のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項23】
標準ASTMF-1927に従って、相対湿度80%及び23℃で測定された、10cc/m
2/24h/atm未満の酸素透過度(OTR)を有する、請求項14~
21のいずれか一項に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
【請求項24】
PTS RH 021/97に従ったリジェクト率が、30%未満である、請求項14~
21のいずれか一項
又は請求項23に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム又は紙若しくは板紙ベースの包装材料を含む容器。
【請求項26】
紙又は板紙ベースの包装材料用のガスバリアフィルムの製造方法であって、
a)ミクロフィブリル化セルロースの層(MFC層)を提供する工程と、
b)MFC層の少なくとも1つの表面をメタライゼーションに供する工程と、
c)金属化されたMFC層の表面の少なくとも1つにポリマー分散コーティング層を適用する工程と、
を含み、
前記ポリマー分散コーティングが、ラテックス又はポリビニルアルコール
(PVOH)であり、前記ポリマー分散コーティングが、ポリマー分散コーティングの総乾燥重量に基づいて、1~30重量%の量の顔料をさらに含み、前記ポリマー分散コーティング層の坪量が、1~10gsmの範囲であ
り、
前記MFC層の金属化表面が、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、銅、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、シリコン酸化物、及びそれらの組合せからなる群から選択される金属又は金属酸化物を含む、製造方法。
【請求項27】
工程cの前、間、又は後に、金属化されたMFC層を紙又は板紙基材にラミネートすることをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリマー分散コーティング層が、MFC層の金属化表面に適用される、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記メタライゼーションが、MFC層上への金属又は金属酸化物の蒸着を含む、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリマー分散コーティング層が、100℃未満の温度で、MFC層の金属化表面に適用される、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙及び板紙ベースの包装材料(paper and paperboard based packaging materials)用のガスバリアフィルムに関する。より具体的には、本開示は、高い相対湿度(RH)において、良好で安定した酸素透過度(OTR:oxygen transmission rate)を有するミクロフィブリル化セルロースをベースとするガスバリアフィルムに関する。本発明はさらに、そのようなバリアフィルムを含む紙及び板紙ベースの包装材料、並びにそのようなバリアフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙及び板紙をプラスチックでコーティングすることは、板紙の機械的特性とプラスチックフィルムのバリア特性及びシーリング特性とを組み合わせるためによく使用される。比較的少量の適切なプラスチック材料を備えた板紙は、例えば、液体包装板(liquid packaging board)などの要求の厳しい多くの用途に板紙を適するようにするために必要な特性を提供することができる。液体包装紙では、ポリオレフィンコーティングが、液体バリア層のヒートシール層及び接着剤として頻繁に使用される。しかしながら、そのようなポリマーでコーティングされた板のリサイクルは、ポリマーを繊維から分離することが難しいため困難である。
【0003】
多くの場合、ポリマーでコーティングされた板紙のガスバリア特性は、未だ不十分である。したがって、許容可能なガスバリア特性を確保するために、ポリマーでコーティングされた板紙には、多くの場合、アルミニウム箔の1つ又は複数の層が提供される。ただし、これはカーボンフットプリントが高いため、一般には包装材料、特に液体包装板におけるアルミニウム箔を置き換えたいという要望が存在する。
【0004】
より最近では、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)フィルムが開発された。これは、脱フィブリル化セルロースフィブリルを、例えば水中に懸濁させ、その後再度再組織化して共に再結合し、優れたガスバリア特性を有する緻密なフィルムを形成する。残念ながら、このようなMFCフィルムのガスバリア特性は、高温及び高湿度で劣化する傾向がある。
【0005】
高い相対湿度での酸素、空気、及び芳香に対するガスバリア特性を改善するための多くのアプローチが研究され、説明されているが、提案された解決策のほとんどは高価であり、且つ産業規模での実施が困難である。1つのルートは、EP2554589A1に開示されているように、MFC又はナノセルロースを変性することであり、MFC分散液をシランカップリング剤で変性する。別の特許出願であるEP2551104A1は、より高い相対湿度で改善されたバリア特性を有する、MFC並びにポリビニルアルコール(PVOH)及び/又はポリウロン酸の使用を教示している。別の解決策は、高い耐水性及び/又は低い水蒸気透過度を有する層でフィルムをコーティングすることである。JP2000303386Aは、例えば、MFCフィルムにコーティングされたラテックスを開示しており、US2012094047Aは、ポリオレフィン層でコーティングすることができるMFCなどの多糖類と混合された木材加水分解物の使用を示唆している。これらの方法に加えて、フィブリル又はフィブリル及びコポリマーを架橋する可能性が研究されている。これにより、フィルムの耐水性だけでなく、水蒸気透過度も改善する。EP2371892A1及びEP2371893A1は、それぞれ、金属イオン、グリオキサール、グルタルアルデヒド、及び/又はクエン酸によるMFCの架橋について説明している。
【0006】
セルロースの水分感受性(moisture sensitivity)を低下させる別の方法は、過ヨウ素酸ナトリウムでセルロースを化学的に変性して、ジアルデヒドセルロース(DAC)を得ることである。ジアルデヒドセルロースをフィブリル化することにより、改善した耐湿性を有するバリアフィルムを製造することができる。しかし、ミクロフィブリル化ジアルデヒドセルロース(DA-MFC)を含む分散液は、DA-MFCが沈殿し、分散液中にすでにある程度自発的に架橋し、ミクロフィブリルが結合又は絡み合うため、非常に不安定である。分散液の安定性が低いと、フィルム中のDA-MFCの濃度にばらつきが生じ、不十分なフィルムの形成及びバリア特性につながる。
【0007】
このように、許容可能な液体バリア特性及び酸素バリア特性を維持しながら、液体包装板のアルミニウム箔を置き換えるための改善された解決策が必要とされている。同時に、ポリオレフィンコーティングを、使用済みの液体包装板材料の再パルプ化とリサイクルを容易にする代替物に置き換える必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本開示の目的は、液体バリア特性及び酸素バリア特性を提供するために、液体包装板で一般的に使用されるアルミニウム箔の代替物を提供することである。
【0009】
本開示のさらなる目的は、標準ASTM F-1927に従って、相対湿度80%及び23℃で測定された、10cc/m2/24h/atm未満、好ましくは5cc/m2/24h/atm未満、最も好ましくは2cc/m2/24h/atm未満の酸素透過度(OTR)を有する、アルミニウム箔を含まない紙又は板紙ベースの包装材料を提供することである。
【0010】
本開示のさらなる目的は、PTS RH 021/97に従った30%未満、好ましくは20%未満のリジェクト率(reject rate)を有する、アルミニウム箔を含まない紙又は板紙ベースの包装材料を提供することである。
【0011】
本開示のさらなる目的は、より高い相対湿度及び温度においても改善されたバリア特性を有する、ミクロフィブリル化セルロースを含むガスバリアフィルムを提供することである。
【0012】
本開示のさらなる目的は、液体包装板用のガスバリアフィルム又は紙若しくは板紙ベースの包装材料を提供し、その板の再パルプ化を容易にすることである。
【0013】
上記の目的、及び本開示に照らして当業者によって実現されるであろう他の目的は、本開示の様々な態様によって達成される。
【0014】
本明細書に例示される第1の態様によれば、紙又は板紙ベースの包装材料用のガスバリアフィルムが提供され、前記ガスバリアフィルムは、
少なくとも一方の表面が金属化されている(metallized)ミクロフィブリル化セルロース層(MFC層)と、
前記MFC層の少なくとも一方の表面に配置されたポリマー分散コーティング層と、
を含む。
【0015】
紙は、一般に、木材のパルプ又はセルロース繊維を含む他の繊維状物質から薄いシートにて製造された材料を指し、書き込み、描画、又は印刷に使用され、又は包装材料として使用される。
【0016】
板紙は、一般に、箱やその他の種類の包装に使用される、セルロース繊維を含む丈夫で厚い紙又は段ボールを指す。板紙は、最終用途の要件に応じて、漂白又は無漂白、コーティング又は非コーティングのいずれかで、様々な厚さにて製造できる。
【0017】
MFCは、紙及び板紙の包装材料のバリアフィルムに使用するための興味深いコンポーネントとして認識されている。MFCフィルムは、中間の温度及び湿度の条件(例えば、50%の相対湿度及び23℃)において、低い酸素透過度を提供することがわかっている。残念ながら、このようなMFCフィルムのガスバリア特性は、高温多湿(例えば、相対湿度90%及び38℃)で大幅に劣化する傾向があり、多くの産業用液体包装用途には不適切である。
【0018】
本発明者は、MFCを含む従来技術のラミネートのこれらの欠陥が、MFC(少なくとも1つの表面が、MFC層の表面上にメタライゼーション層が形成されるように金属化されている)と、そのMFC層の少なくとも1つの表面上に配置されたポリマー分散コーティング層を含むガスバリアフィルムとによって改善できることを見出した。
【0019】
メタライゼーション層を備えたMFC層とポリマー分散コーティング層とを含むガスバリアフィルムは、優れた液体バリア特性及び酸素バリア特性の両方を提供する。特に注目すべきは、このようなラミネートが、高湿度及び高温において、高い酸素バリア特性を示すことである。本開示の文脈における高湿度という用語は、一般に、80%を超える相対湿度(RH)を指す。本開示の文脈における高温という用語は、一般に、23℃を超える温度を指す。
【0020】
本発明のガスバリアフィルムを使用して、標準ASTM F-1927に従って、相対湿度80%及び23℃で測定された、10cc/m2/24h/atm未満、好ましくは5cc/m2/24h/atm未満、最も好ましくは2cc/m2/24h/atm未満の酸素透過度(OTR)を有する紙又は板紙ベースの包装材料を製造することができる。
【0021】
本発明の紙又は板紙ベースの包装材料はリサイクル可能であり、さらに、PTS RH 021/97に従った30%未満、好ましくは20%未満のリジェクト率を提供し得る。
【0022】
これにより、本発明のガスバリアフィルムは、液体バリア特性及び酸素バリア特性を提供するために、液体包装板で一般的に使用されるアルミニウム箔層の興味深く実行可能な代替物となる。
【0023】
本発明のガスバリアフィルムは、液体包装材料のバリア層でしばしば使用される押出コーティング又はラミネートコーティングされたポリオレフィンコーティングなしで実現できるという点で、さらに有利である。代わりに、本発明のガスバリアフィルムは、ポリマー分散コーティングを使用しており、これは、繊維状の紙及び板紙材料からより容易に分離され、それによってその板の再パルプ化を容易にする。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[MFC]
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、本特許出願の文脈において、100nm未満の少なくとも1つの寸法を有するナノスケールのセルロース粒子繊維又はフィブリルを意味すると理解されるものとする。MFCは、部分的又は全体的にフィブリル化されたセルロース又はリグノセルロース繊維を含む。遊離したフィブリルの直径は100nm未満であるが、実際のフィブリルの直径又は粒子サイズの分布及び/又はアスペクト比(長さ/幅)は、供給源及び製造方法によって異なる。最小のフィブリルはエレメンタリーフィブリルと呼ばれ、直径は約2~4nmであり(例えば、Chinga-Carrasco、G.,「Cellulose fibres, nanofibrils and microfibrils,: The morphological sequence of MFC components from a plant physiology and fibre technology point of view」, Nanoscale research letters,2011年,6:417参照)、一方で、ミクロフィブリルとしても定義されるエレメンタリーフィブリルの凝集形態(Fengel、D.,「Ultrastructural behavior of cell wall polysaccharides」, Tappi J., 1970年3月、第53巻、第3号)は、例えば、拡張精製プロセス又は圧力降下分解プロセスを使用することによって、MFCを製造する際に得られる主要生成物であることが一般的である。供給源及び製造プロセスに依存して、フィブリルの長さは、約1マイクロメートルから10マイクロメートル超まで変化し得る。粗いMFCグレードは、フィブリル化された繊維、すなわち仮導管(セルロース繊維)から突出したフィブリルのかなりの部分、及び仮導管(セルロース繊維)から遊離した一定量のフィブリルを含むことがある。
【0025】
MFCには、セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース、フィブリル凝集体、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースマイクロファイバー、セルロースフィブリル、ミクロフィブリル状セルロース、ミクロフィブリル凝集物及びセルロースミクロフィブリル凝集体などの、異なる頭字語がある。MFCは、様々な物理的又は物理化学的特性によっても特徴付けることができ、例えば、その表面積が大きいことや、水に分散したときに低固形分(1~5重量%)でゲル状材料を形成する能力などで特徴付けることができる。セルロース繊維は、フィブリル化されていることが好ましく、その程度は、形成されたMFCの最終比表面積が、BET法を用いて凍結乾燥した材料について測定した場合、約1~約200m2/g、より好ましくは50~200m2/gである。
【0026】
MFCを製造するには、様々な方法が存在し、例えば、シングルパス又はマルチパス精製、予備加水分解とそれに続く精製又は高せん断崩壊又はフィブリルの遊離などの方法が存在する。MFCの製造にエネルギー効率と持続可能性の両方をもたらすためには、通常、1つ又は複数の前処理工程が必要である。このように、利用するパルプのセルロース繊維を、例えば酵素的又は化学的に前処理して、繊維を加水分解又は膨潤させたり、又はヘミセルロース若しくはリグニンの量を減らしたりしてもよい。セルロース繊維を、フィブリル化の前に化学的に変性してもよく、それにより、セルロース分子は、天然のセルロースに見られるもの以外の(又はより多くの)官能基を含む。そのような基には、とりわけ、カルボキシメチル(CMC)、アルデヒド及び/又はカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、第4級アンモニウム(カチオン性セルロース)又はホスホリル基が含まれる。上記の方法の1つで変性又は酸化した後に、繊維をMFC又はナノフィブリルに分離することは、より容易である。
【0027】
ナノフィブリル状セルロースは、いくつかのヘミセルロースを含んでもよく、その量は植物源に依存する。前処理された繊維(例えば、加水分解され、予め膨潤され、又は酸化されたセルロース原料)の機械的崩壊は、適切な装置(例えば、リファイナー、粉砕機、ホモジナイザー、コロイダー、摩擦粉砕機、超音波ソニケーター、フルイダイザー(マイクロフルイダイザー、マクロフルイダイザー、又はフルイダイザー型ホモジナイザーなど))を用いて行われる。MFC製造方法に依存して、生成物は、微粉、又はナノ結晶セルロース、又は木材繊維又は製紙プロセス中に存在する他の化学物質も含み得る。生成物はまた、効率的にフィブリル化されていない様々な量のミクロンサイズの繊維粒子を含むことができる。
【0028】
MFCは、広葉樹繊維又は針葉樹繊維の両方からの木材セルロース繊維から製造される。また、それは、微生物源、麦わらパルプ、竹、バガスなどの農業繊維、又はその他の非木材繊維源から作ることもできる。それは、好ましくは、未使用の繊維からのパルプ、例えば、機械的、化学的及び/又は熱機械的パルプを含むパルプから作られる。それは、破損した紙や再生紙から作ることもできる。
【0029】
上記のMFCの定義には、これに限定されるものではないが、セルロースナノフィブリル(CNF)におけるTAPPI標準W13021が含まれ、ここでは、幅が5~30nmで且つアスペクト比が通常50を超える高いアスペクト比を有する、結晶性領域と非晶質領域の両方を有する複数のエレメンタリーフィブリルを含むセルロースナノファイバー材料を定義している。
【0030】
本発明のガスバリアフィルムのMFC層のMFCは、未変性(unmodified)MFC又は化学的に変性された(chemically modified)MFC、あるいはそれらの混合物であってもよい。いくつかの実施形態では、MFCは、未変性MFCである。未変性MFCは、未変性又は天然セルロース繊維から作製されたMFCを指す。未変性MFCは、単一のタイプのMFCであってもよく、又はそれは、2つ以上のタイプのMFCの混合物を含むことができ、例えばセルロース原料又は製造方法の選択において異なっている。化学的に変性されたMFCは、フィブリル化の前、フィブリル化中、又はフィブリル化後に化学変性を受けたセルロース繊維から作製されたMFCを指す。いくつかの実施形態では、MFCは化学的に変性されたMFCである。化学的に変性されたMFCは、単一のタイプの化学的に変性されたMFCであってもよく、又はそれは、2つ以上のタイプの化学的に変性されたMFCの混合物を含むことができ、例えば、化学変性のタイプ、セルロース原料の選択又は製造方法において異なっている。いくつかの実施形態では、化学的に変性されたMFCは、ミクロフィブリル化ジアルデヒドセルロース(DA-MFC)である。DA-MFCは、ミクロフィブリル化されるように処理されたジアルデヒドセルロースである。ジアルデヒドセルロースは、セルロースの酸化によって得ることができる。ミクロフィブリル化ジアルデヒドセルロースは、ジアルデヒドセルロースを、例えば、ホモジナイザーによって、又はフィブリル化が起こってミクロフィブリル化ジアルデヒドセルロースを生成するような他の方法によって、処理することで得ることができる。いくつかの実施形態では、MFC層のMFCは、0~80重量%のDA-MFCを含み、残りは未変性MFCである。
【0031】
MFC層は、MFCのみから構成されてもよく、又はMFCと他の成分又は添加剤との混合物から構成されてもよい。本発明のガスバリアフィルムのMFC層は、好ましくは、MFC層の総乾燥重量に基づいて、その主成分としてMFCを含む。いくつかの実施形態では、MFC層は、MFC層の総乾燥重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%のMFCを含む。
【0032】
MFC層の配合は、意図される使用目的及び完成した多層包装材料に存在する他の層に応じて変化し得る。MFC層の配合はまた、意図される用途の形態又はMFC層の形成、例えば、基材へのMFC分散液のコーティング、又は基材にラミネートするための自立型MFCフィルムの形成に応じて変化し得る。MFC層は、生成物の最終性能又はコーティングの処理を改善するために、様々な量の広範囲の成分を含んでもよい。MFC層は、デンプン、カルボキシメチルセルロース、充填剤、保持化学物質、凝集(flocculation)添加剤、解膠(deflocculating)添加剤、乾燥強度添加剤、軟化剤、又はそれらの混合物などの添加剤をさらに含んでもよい。MFC層は、混合物、並びに/又はフィルムの延性を高めるためのラテックス及び/若しくはポリビニルアルコール(PVOH)などの生成されたフィルムの、異なる特性を改善する添加剤をさらに含んでもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、MFC層は、ポリマー結合剤をさらに含む。いくつかの好ましい実施形態では、MFC層は、PVOHをさらに含む。PVOHは、単一のタイプのPVOHであってもよく、又はそれは、2つ以上のタイプのPVOHの混合物を含むことができ、例えば、加水分解の程度又は粘度において異なっている。PVOHは、例えば80~99モル%の範囲、好ましくは88~99モル%の範囲の加水分解度を有してもよい。さらに、PVOHは、好ましくは、20℃の4%水溶液中で、5mPa×sを超える粘度を有してもよい(DIN 53015/JIS K 6726)。
【0034】
いくつかの実施形態では、MFC層は、顔料をさらに含む。顔料は、例えば、滑石(talcum)、ケイ酸塩、炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩及び炭酸アンモニウム、又は遷移金属酸化物及び他の金属酸化物などの酸化物といった無機粒子を含んでもよい。顔料はまた、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、カオリナイト、ヘクトライト及びハロイサイト(hallyosite)を含む群から選択される、層状鉱物ケイ酸塩のナノクレイ及びナノ粒子などのナノサイズの顔料を含んでもよい。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態では、顔料は、層状鉱物ケイ酸塩のナノクレイ及びナノ粒子からなる群から選択され、より好ましくはベントナイトから選択される。
【0036】
本発明のガスバリアフィルムのMFC層の坪量(厚さに対応する)は、好ましくは55gsm(グラム/平方メートル)未満の範囲である。MFC層の坪量は、例えば、その製造様式に依存してもよい。例えば、基材上にMFC分散液のコーティングをすると、より薄い層が生じる可能性があるが、一方で、基材へのラミネートのために自立型MFCフィルムを形成すると、より厚い層が必要となる場合がある。いくつかの実施形態では、MFC層の坪量は5~50gsmの範囲である。いくつかの実施形態では、MFC層の坪量は、5~20gsmの範囲である。
【0037】
MFC層自体は、典型的に、標準ASTM F-1927に従って、相対湿度90%及び38℃で測定された、200cc/m2/24h/atm超、又はさらに1000cc/m2/24h/atm超の酸素透過度(OTR)を有する。
【0038】
[メタライゼーション]
MFC層の少なくとも1つの表面は、メタライゼーション(metallization)、すなわち、MFC表面上への金属又は金属酸化物の薄層の堆積に供されている。MFC表面上の金属又は金属酸化物の薄層は、本明細書では「メタライゼーション層」とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、MFC層の表面のうちの一方のみがメタライゼーションに供されている。いくつかの実施形態では、MFC層の両方の表面がメタライゼーションに供されている。
【0039】
酸素バリア特性は、典型的には、メタライゼーションコーティングによってさらに改善されることはない。実際に、より高い坪量(grammage)の高密度プレコート紙をメタライズする場合、酸素バリア特性の低下が以前から観察されている。
【0040】
「メタライゼーション層」は、金属又は金属酸化物の薄層であり、例えば、酸素、水、水蒸気、及び光に対する透過性を低下させるバリア特性を提供する。
【0041】
いくつかの実施形態では、MFC層の金属化表面(metallized surface)は、MFC層上への金属又は金属酸化物の蒸着によって、好ましくはMFC層上への金属又は金属酸化物の物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CAV)によって、より好ましくはMFC層上への金属又は金属酸化物の物理蒸着(PVD)によって、形成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、メタライゼーション層の金属又は金属酸化物は、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、銅、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、シリコン酸化物、及びそれらの組合せからなる群から選択される。好ましい実施形態では、金属又は金属酸化物はアルミニウムである。
【0043】
薄い蒸着層は、通常、単にナノメートルの厚さであり、すなわち、ナノメートルの大きさのオーダーの厚さを有しており、例えば、1~500nm(50~5000A)、好ましくは1~200nm、より好ましくは1~100nm、最も好ましくは1~50nmである。
【0044】
バリア特性、特に水蒸気バリア特性のために使用されることのある蒸着コーティングの1つのタイプに、アルミニウム金属物理蒸着(PVD)コーティングである。このようなコーティングは、実質的にアルミニウム金属からなり、典型的には10~50nmの厚さを有してもよい。メタライゼーション層の厚さは、包装用の従来の厚さのアルミニウム箔において典型的に存在するアルミニウム金属材料の1%未満に相当し、すなわち、6.3μmである。
【0045】
いくつかの実施形態では、メタライゼーション層は、10~100nmの範囲、好ましくは20~50nmの範囲の層厚を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、メタライゼーション層は、50~250mg/m2の間、好ましくは75~150mg/m2の間の重量を有する。
【0047】
[分散コーティング]
蒸着金属コーティングは、必要な金属材料が大幅に少なくて済むが、通常はせいぜい低レベルの酸素バリア特性しか提供せず、十分なバリア特性を有する最終的なラミネート材料を提供するためには、さらなるガスバリア材料と組み合わせる必要がある。
【0048】
本発明のガスバリアフィルムの高湿度における驚くほど例外的に優れたバリア特性は、MFC層のメタライゼーションと、MFC層の少なくとも1つの表面に配置されたポリマー分散コーティング層との組合せの結果である。
【0049】
ポリマー分散コーティング層は、MFC層の金属化表面に配置しても、MFC層の非金属化表面に配置しても、あるいはその両方に配置してもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散コーティング層は、金属化されているMFC層の少なくとも1つの表面上に配置される。MFC層の両方の表面がメタライゼーションに供されている実施形態では、ポリマー分散コーティング層は、MFC層の金属化表面の一方又は両方に配置されてもよい。メタライゼーションは、隣接する有機ポリマー層及びフィルムに非常に優れた接着特性を提供することが証明されているため、ラミネート包装材料において、これらの層と隣接する層との間に余分なプライマー又は接着剤を使用する必要はない。
【0051】
ポリマー分散コーティング層は、液体媒体又は溶媒中の適切なポリマーの分散液の形態で、MFC層上に提供され、その後乾燥して、薄いコーティングにする。均一なバリア特性を有する均一なコーティングをもたらすために、分散液又は溶液が均一で安定していることが重要である。このような分散コーティングされた層は、1平方メートルあたり10分の1グラムまで非常に薄くすることができ、分散液又は溶液が均一で安定している場合、高品質で均一な層を提供することができる。さらに、水分散性ポリマーからのこのような分散コーティングされた層は、隣接する層への良好な内部接着を提供することが多く、これは、最終的な包装材料の良好な一体性に寄与する。
【0052】
ポリマーは、例えば、PVOH又は水分散性EVOHなどのビニルアルコールベースのポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸ベースのポリマー(PAA、PMAA)、例えばデンプン又はデンプン誘導体などの多糖類、セルロースナノフィブリル(CNF)、ナノ結晶セルロース(NCC)、キトサン、ヘミセルロース又は他のセルロース誘導体、水分散性ポリ塩化ビニリデン(PVDC)又は水分散性ポリエステル、又はそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散コーティングは、ラテックス、ポリビニルアルコール、又はポリオレフィン分散コーティングである。
【0054】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散コーティングは、ポリオレフィン分散液、好ましくはポリエチレンとポリプロピレンのコポリマーの分散液である。
【0055】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散コーティングは、スチレン-アクリル(SA)又はスチレン-ブタジエン(SB)ラテックスコーティングである。
【0056】
いくつかの実施形態では、ラテックスコーティングは、10℃未満、好ましくは0℃未満、より好ましくは-10℃未満のTgを有する。これにより、ポリマー分散コーティングのMFC層への接着性を改善し、MFC層と紙又は板紙基材との間に配置された接着性ポリマー層として使用される場合、MFCフィルムの基材への接着性を改善することが見出された。
【0057】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散コーティングは、顔料をさらに含む。顔料は、材料の再パルプ化を容易にし、さらに、顔料は、ラミネートされた層が一緒に融着されるときに、ラミネートのカレンダー処理においてより高い温度を使用することを可能にする。しかしながら、基材とMFCフィルムとの間の接着を可能にするために、顔料の量は、好ましくは低レベルに保たれるべきである。いくつかの実施形態では、ポリマー分散コーティングは、ポリマー分散コーティングの総乾燥重量に基づいて、1~30重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは2~10重量%の量の顔料をさらに含む。
【0058】
このようなバリアポリマーは、液状フィルムコーティングプロセスによって好適に適用され、すなわち、適用時に、水性又は溶媒ベースの分散液又は溶液の形態で好適に適用され、基材上の薄く均一な層に広げられ、その後乾燥される。
【0059】
いくつかの実施形態では、ガスバリアフィルム中のポリマー分散コーティング層の坪量(basis weight)は、1~10gsmの範囲、好ましくは1~7gsmの範囲、より好ましくは1~5gsmの範囲である。
【0060】
本発明のガスバリアフィルムは、液体包装材料のバリア層でしばしば使用される押出コーティング又はラミネートコーティングされたポリオレフィンコーティングなしで実現されることが好ましい。代わりに、本発明のガスバリアフィルムは、ポリマー分散コーティングを使用しており、これは、繊維状の紙及び板紙材料からより容易に分離され、それによってその板の再パルプ化を容易にする。しかしながら、ガスバリアフィルムと、ポリマー分散液の形態で提供されていないポリマー層とを組み合わせることも、もちろん可能である。
【0061】
[任意のポリマー層(例:押出コーティングされたPE)]
このような、ポリマー分散層に加えて、ガスバリアフィルムは、ポリマー分散液の形態では提供されていないポリマー層を含んでいてもよい。
【0062】
ポリマー層は、一般には紙又は板紙ベースの包装材料によく使用されるポリマー、又は特に液体包装板に使用されるポリマーのいずれかを含んでもよい。例としては、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)が挙げられる。ポリエチレン、特に低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)は、液体包装板で使用される最も一般的で汎用性の高いポリマーである。
【0063】
ガスバリアフィルムのポリマー層は、好ましくは熱可塑性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー層は、ポリオレフィンを含む。熱可塑性ポリマー、特にポリオレフィンは、押出コーティング技術によって都合よく処理され、良好な液体バリア特性を有する非常に薄く均一なフィルムを形成できるため、有用である。いくつかの実施形態では、ポリマー層は、ポリプロピレン又はポリエチレンを含む。好ましい実施形態では、ポリマー層は、ポリエチレン、より好ましくはLDPE又はHDPEを含む。
【0064】
ポリマー層は、同じポリマー樹脂又は異なるポリマー樹脂で形成された1つ又は複数の層を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリマー層は、2つ以上の異なるポリマー樹脂の混合物を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー層は、2つ以上の層から構成された多層構造であり、第1の層は、第1のポリマー樹脂から構成され、第2の層は、第1のポリマー樹脂とは異なる第2のポリマー樹脂から構成される。
【0065】
いくつかの実施形態では、ポリマー層は、MFC層の表面上へとポリマーを押出コーティングすることによって形成される。押出コーティングは、溶融プラスチック材料を紙や板紙などの基材に適用して、非常に薄く、滑らかで均一な層を形成することによるプロセスである。コーティングは、押し出されたプラスチック自体によって形成することができ、又は溶融プラスチックを接着剤として使用して、固体プラスチックフィルムを基材上にラミネートすることができる。押出コーティングに使用される一般的なプラスチック樹脂には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0066】
本発明のガスバリアフィルムのポリマー層の坪量(厚さに対応する)は、好ましくは50gsm(グラム/平方メートル)未満である。連続的で実質的に欠陥のないフィルムを達成するために、少なくとも8gsm、好ましくは少なくとも12gsmのポリマー層の坪量が典型的には必要とされる。いくつかの実施形態では、ポリマー層の坪量は、8~50gsmの範囲、好ましくは12~50gsmの範囲である。
【0067】
本発明のガスバリア層は、好ましくは、紙又は板紙ベースの包装材料、特に液体又は液体含有生成物の包装に使用するための液体包装板(LPB)におけるガスバリア層として使用されてもよい。したがって、本明細書に例示される第2の態様によれば、紙又は板紙ベースの包装材料が提供され、当該包装材料は、
紙又は板紙基材と、
ミクロフィブリル化セルロース層(MFC層)であり、その少なくとも1つの表面は金属化されている、ミクロフィブリル化セルロース層、及び
MFC層の少なくとも1つの表面に配置されたポリマー分散コーティング層、を含む、
ガスバリアフィルムと、
を含む。
【0068】
第2の態様による紙又は板紙ベースの包装材料のガスバリアフィルムは、第1の態様を参照して上記のようにさらに定義されてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、例えば、MFCと結合剤がコーティングとして基材に適用される場合、又はMFCが基材にウェットレイドされる場合、MFC層は、紙又は板紙基材に直接取り付けられる。このように、いくつかの実施形態では、ガスバリアフィルムのMFC層は、基材と直接接触している。
【0070】
他の実施形態では、例えば、基材とMFC層との間に配置された接着性ポリマー層を使用して、MFC層又はガスバリアフィルムが基材上にラミネートされる場合、MFC層は、紙又は板紙基材に間接的に取り付けられる。このように、いくつかの実施形態では、紙又は板紙ベースの包装材料は、基材とガスバリアフィルムのMFC層との間に配置された接着性ポリマー層をさらに含む。
【0071】
本発明のガスバリアフィルムは、液体包装材料のバリア層でしばしば使用される押出コーティング又はラミネートコーティングされたポリオレフィンコーティングなしで実現されることが好ましい。代わりに、本発明のガスバリアフィルムは、ポリマー分散コーティングを使用しており、これは、繊維状の紙及び板紙材料からより容易に分離され、それによってその板の再パルプ化を容易にする。しかしながら、ガスバリアフィルムと、ポリマー分散液の形態で提供されていないポリマー層とを組み合わせることも、もちろん可能である。
【0072】
いくつかの実施形態では、接着性ポリマー層は、ガスバリアフィルムのポリマー分散コーティング層である。換言すれば、ガスバリアフィルムの分散コーティング層は、ガスバリアフィルムのMFC層と基材との間に挟まれている。
【0073】
いくつかの実施形態では、接着性ポリマー層は、ポリエチレンを含む。ポリエチレンは、押出コーティング技術によって都合よく処理され、良好な液体バリア特性を有する非常に薄く均一なフィルムを形成できるため、有用である。次いで、MFC層又はガスバリアフィルム全体を、押出コーティングラミネートプロセスによって基材に取り付けてもよい。
【0074】
MFC層又はガスバリアフィルムが接着性ポリマー層を使用して基材上にラミネートされる場合、MFC層の少なくとも1つの金属化表面は、前記基材に向かって面してもよく、又は基材から離れて面してもよい。好ましい実施形態では、MFC層の少なくとも1つの金属化表面は、前記基材に向かって面している。この構成では、金属化表面は、包装材料をパッケージに変換するときに保護される。
【0075】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散コーティング層は、MFC層の少なくとも1つの金属化表面上に配置される。
【0076】
紙又は板紙ベースの包装材料は、好ましくは、ガスバリアフィルムとは反対側に面する基材表面上に配置された少なくとも1つの保護層をさらに含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、紙又は板紙ベースの包装材料は、ガスバリアフィルムとは反対側に面する基材表面上に配置された第1の保護層をさらに含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、紙又は板紙ベースの包装材料は、基材とは反対側に面するガスバリアフィルム表面上に配置された第2の保護層をさらに含む。
【0079】
本発明のガスバリアフィルムは、液体包装材料のバリア層にしばしば使用される押出コーティング又はラミネートコーティングされたポリオレフィンコーティングなしで実現されることが好ましい。本発明のガスバリアフィルムは、代わりに、ポリマー分散コーティングを使用しており、これは、繊維状の紙及び板紙の材料からより簡単に分離され、それによってその板の再パルプ化を容易にする。
【0080】
好ましい実施形態では、紙又は板紙ベースの包装材料全体が、押出コーティング又はラミネートコーティングされたポリオレフィンコーティングなしで実現される。そのような実施形態では、前記第1の保護層及び/又は第2の保護層は、好ましくは、ポリマー分散コーティングによって形成される。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記第1の保護層及び/又は第2の保護層は、ポリマー分散コーティング、好ましくはラテックス、ポリビニルアルコール、又はポリオレフィン分散コーティングを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記第1の保護層及び/又は第2の保護層は、保護層の総乾燥重量に基づいて、30~70重量%の量の顔料をさらに含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記第1の保護層及び/又は第2の保護層は、少なくとも以下の2つのサブ層を含む:
第1のサブ層であり、当該第1のサブ層の総乾燥重量に基づいて、30~70重量%の量の顔料を含むポリマー分散コーティングを含む第1のサブ層、及び
第2のサブ層であり、当該第2のサブ層の総乾燥重量に基づいて、0~70重量%の量の顔料を含むポリマー分散コーティングを含む第2のサブ層。
【0084】
しかしながら、ガスバリアフィルムと、ポリマー分散コーティングの形態で提供されていないポリマー層とを組み合わせることも、もちろん可能である。このように、いくつかの実施形態では、前記第1の保護層及び/又は第2の保護層は、熱可塑性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、前記第1の保護層及び/又は第2の保護層は、ポリオレフィンを含む。熱可塑性ポリマー、特にポリオレフィンは、押出コーティング技術によって都合よく処理され、良好な液体バリア特性を有する非常に薄く均一なフィルムを形成できるため、有用である。いくつかの実施形態では、第1の保護層及び/又は第2の保護層は、ポリプロピレン又はポリエチレンを含む。好ましい実施形態では、第1の保護層及び/又は第2の保護層は、ポリエチレン、より好ましくはLDPE又はHDPEを含む。
【0085】
保護層の厚さ(坪量)は、層が包装材料から製造された容器の外側表面を形成することを意図しているかどうか、又は内側表面を形成することを意図しているかどうかに応じて選択される。例えば、液体包装容器の内側表面は、液体バリアとして機能するようにより厚い保護層を必要とし得るが、一方で、液体包装容器の外側表面では、より薄い保護層で十分である場合がある。
【0086】
本発明によって包含される実施形態のいくつかを以下に列挙する。すべての実施形態において、例えば分散コーティング又は押出コーティングされたポリエチレンの第1保護層及び/又は第2の保護層もまた、追加することができる。最終生成物が金属化されたMFC層及び金属化されたMFC層と接触する分散コーティングを含む限り、他の追加の層もまた、追加することができる。
【0087】
例示的な実施形態:
-MFC層/メタライゼーション層/分散コーティング
-分散コーティング/MFC層/メタライゼーション層
-板紙/MFC層/メタライゼーション層/分散コーティング
-板紙/PE(接着剤)/MFC層/メタライゼーション層/分散コーティング
-板紙/分散コーティング/MFC層/メタライゼーション層
-板紙/分散コーティング/MFC層/メタライゼーション層/分散コーティング
-板紙/PE(接着剤)/メタライゼーション層/MFC層/分散コーティング
-板紙/分散コーティング/メタライゼーション層/MFC層
-板紙/分散コーティング/メタライゼーション層/MFC層/分散コーティング
【0088】
金属化されたMFC及びポリマー分散コーティング層を含むガスバリアフィルムを使用することで、優れた液体バリア特性と酸素バリア特性の両方が得られる。特に注目すべきは、このようなラミネートが、高湿度及び高温において高い酸素バリア特性を示すことである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される第2の態様による紙又は板紙ベースの包装材料は、標準ASTM F-1927に従って、相対湿度80%及び23℃で測定された、10cc/m2/24h/atm未満、好ましくは5cc/m2/24h/atm未満、最も好ましくは2cc/m2/24h/atm未満の酸素透過度(OTR)を有する。これにより、本発明のガスバリアフィルムは、液体バリア特性及び酸素バリア特性を提供するために、液体包装板で一般的に使用されるアルミニウム箔層の興味深く実行可能な代替物となる。
【0089】
いくつかの実施形態では、紙又は板紙ベースの包装材料に使用される紙又は板紙基材は、20~500g/m2の範囲、好ましくは80~400g/m2の範囲の坪量を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、紙又は板紙ベースの包装材料は、標準ASTM F-1927に従って、相対湿度80%及び23℃で測定された、10cc/m2/24h/atm未満、好ましくは5cc/m2/24h/atm未満、最も好ましくは2cc/m2/24h/atm未満の酸素透過度(OTR)を有する。
【0091】
いくつかの実施形態では、紙又は板紙ベースの包装材料はリサイクル可能であり、PTS RH 021/97に従った30%未満、好ましくは20%未満のリジェクト率を有する。
【0092】
好ましい実施形態では、ガスバリアフィルム又は紙又は板紙ベースの包装材料は、液体包装において、液体バリア層ヒートシール層及び接着剤として典型的に使用される押出コーティング又はラミネートコーティングされたポリオレフィンコーティングを含まない。代わりに、本発明の紙又は板紙ベースの包装材料の接着剤層、及び任意の保護層は、好ましくは、ポリマー分散コーティングの形態で提供される。押出コーティング又はラミネーションコーティングされたポリオレフィンコーティングの代わりにポリマー分散コーティングを使用すると、紙又は板紙ベースの包装材料の再パルプ化及びリサイクルが容易になる。
【0093】
本明細書に例示される第3の態様によれば、第1の態様によるガスバリアフィルム又は第2の態様による紙又は板紙ベースの包装材料を含むカートンブランクが提供される。
【0094】
本明細書に例示される第4の態様によれば、第1の態様によるガスバリアフィルム又は第2の態様による紙又は板紙ベースの包装材料を含む容器、特に液体包装容器が提供される。
【0095】
本明細書に例示される第5の態様によれば、紙又は板紙ベースの包装材料用のガスバリアフィルムの製造方法が提供され、以下の工程を含む:
a)ミクロフィブリル化セルロースの層(MFC層)を提供する工程、
b)MFC層の少なくとも1つの表面をメタライゼーションに供する工程、
c)金属化されたMFC層の表面の少なくとも1つにポリマー分散コーティング層を適用する工程。
【0096】
MFC、メタライゼーション及びポリマー分散コーティング層は、第1の態様のガスバリア層を参照して上記のようにさらに定義することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、この方法は、工程cの前、間、又は後に、金属化されたMFC層を紙又は板紙基材にラミネートすることをさらに含む。好ましい実施形態では、MFC層は、最初に金属化され、次に、基材とMFC層との間に配置された接着性ポリマー層を使用して、紙又は板紙基材にラミネートされる。
【0098】
いくつかの実施形態では、工程a)のMFC層は、紙又は板紙基材上に提供される。
【0099】
いくつかの実施形態では、例えば、MFCと結合剤がコーティングとして基材に適用される場合、又はMFCが基材にウェットレイドされる場合、MFC層は、紙又は板紙基材に直接取り付けられている。このように、いくつかの実施形態では、ガスバリアフィルムのMFC層は、基材と直接接触している。好ましい実施形態では、MFC層は、MFCコーティング組成物(例えば、MFC分散液又は懸濁液)でコーティングし、続いてこれを乾燥及び/又は硬化してMFC層を形成することにより、紙又は板紙基材上に提供される。
【0100】
他の実施形態では、MFC層は、紙又は板紙基材に間接的に取り付けられている。例えば、いくつかの実施形態では、MFC層は、基材とMFC層との間に配置された接着性ポリマー層を使用して、MFC層を基材にラミネートすることによって、紙又は板紙基材上に提供される。このように、いくつかの実施形態では、紙又は板紙ベースの包装材料は、基材とガスバリアフィルムのMFC層との間に配置された接着性ポリマー層をさらに含む。
【0101】
好ましい実施形態では、接着性ポリマー層は、工程c)で適用されるポリマー分散コーティング層である。
【0102】
別の好ましい実施形態では、接着性ポリマー層は、ポリエチレンを含む。ポリエチレンは、押出コーティング技術によって都合よく処理され、良好な液体バリア特性を有する非常に薄く均一なフィルムを形成できるため、有用である。次いで、MFC層又はガスバリアフィルム全体を、ラミネーションプロセス(例えば、押出コーティングのラミネーション又は接着)によって基材に取り付けてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散コーティング層は、MFC層の金属化表面に適用される。
【0104】
いくつかの実施形態では、MFC層のミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、未変性MFC又は変性されたMFC、あるいはそれらの混合物である。
【0105】
いくつかの実施形態では、MFC層は、MFC層の総乾燥重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%のMFCを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、MFC層は、ポリビニルアルコール(PVOH)をさらに含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、MFC層は、顔料、好ましくは層状鉱物ケイ酸塩のナノクレイ及びナノ粒子からなる群から選択される顔料、より好ましくはベントナイトをさらに含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、MFC層の坪量(basis weight)は、55gsm未満の範囲、好ましくは5~50gsmの範囲、より好ましくは5~20gsmの範囲である。
【0109】
いくつかの実施形態では、メタライゼーションは、好ましくは物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)による、MFC層上への金属又は金属酸化物の蒸着を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散コーティングは、ラテックス、ポリビニルアルコール、又はポリオレフィン分散コーティングである。
【0111】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散コーティング層は、100℃未満、好ましくは80℃未満の温度で、MFC層の金属化表面に適用される。
【0112】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散コーティング層の坪量は、1~10gsmの範囲、好ましくは1~7gsmの範囲、より好ましくは1~5gsmの範囲である。
【0113】
本発明は様々な例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行ってよく、且つ均等物をこれらの要素と置き換えてよいことを理解する。さらに、その本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の形態として開示される特定の実施形態に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図される。
【実施例】
【0114】
本発明のバリアフィルムを評価するために、本発明のフィルムを含む液体包装板構造の酸素透過度(OTR)及びリサイクル性を評価する試験を実施した。参照として、分散コーティング層の代わりにポリエチレン層を含む、金属化されたMFCフィルムを含む液体包装板構造のOTRとリサイクル性をさらに評価した。
【0115】
<金属化されたMFCフィルムの調製>
この例で使用したMFCフィルムは、以下のとおり調製した。水にソルビトールを加え、60℃に加熱して30分間撹拌することにより、50%ソルビトール溶液を調製した。ソルビトール溶液を添加する前に、MFC懸濁液を高せん断混合にて1時間混合した。この混合物をさらに1時間混合した。その後、混合物を、スピードミキサーを用いて真空補助混合にて脱気した。フィルムは、その混合物をプラスチック表面上にロッドコーティングすることにより作製し、次いで、23℃の温度で少なくとも12時間風乾した。乾燥後、フィルムをプラスチック基材から分離した。得られたフィルムの厚さは35~50μmであり、坪量は約50gsmであった。その作製したフィルムは、フィルムの総固形分に基づいて計算されるように、87重量%のMFC及び13重量%のソルビトールを含んでいた。
【0116】
そのフィルムを、物理蒸着を使用して、40nmの厚さにアルミニウムで金属化した。
【0117】
<液体包装板(LPB)ラミネートの調製>
次に、前記フィルムを、押し出された低密度ポリエチレン(LDPE)を用いてLPB構造へとラミネートした。使用した板紙基材は、240gsmの坪量(grammage)を有し、StoraEnso製のダブルミネラルコーティングされたNatura 200mNであった。
【0118】
本発明の試料(試料1)は、以下のとおり調製した。板紙基材を、SAラテックス(約5gsm)を用いてロッドコーティングし、次いで、コーティングされた基材に、金属化されたMFCフィルムを、70°のカレンダーニップで、ラミネートした。その後、そのラミネートの両面に、LDPEを押出コーティングした。MFCフィルムには、メタライゼーション層がそのLDPE(50gsm)層に向かって面するように、メタライゼーションを適用した。
【0119】
このようにして、本発明の試料は、以下の構造を形成した。
試料1:
LDPE(15gsm)/板紙/ラテックス/MFCフィルム/メタライゼーション層/LDPE(50gsm)
【0120】
参照試料は、金属化されたMFCフィルムを、押し出されたLDPEを用いて、板紙基材にラミネートすることによって調製した。その後、形成されたラミネートの両面に、LDPEを用いて押出コーティングした。MFCフィルムには、この構造において、メタライゼーション層がそのLDPE(50gsm)層に向かって面するように、メタライゼーションを適用した。
【0121】
このようにして、参照試料は、以下の構造を形成した。
参照1:
LDPE(15gsm)/板紙/LDPE/MFCフィルム/メタライゼーション層/LDPE(50gsm)。
【0122】
作製した両方のラミネート(試料1と参照1)について、LDPE(15gsm)は、その形成された包装の外側の層を形成することを意図しており、一方、LDPE(50gsm)は、その形成された包装の内側の層を形成し、収容された液体に向かって面するようになっていることを意図している。
【0123】
ラミネートは、ASTM F-1927に従ってOTRに関して評価し、且つ、相対湿度80%及び23℃でWVTRに関して評価した(23/80)。ラミネートは、測定前に2週間、測定環境下の気候で事前調整を行った。OTR値は、測定時間の終了時にはすべて安定していた。リサイクル性試験は、PTSメソッドRH021/197に従って行った。その結果を表1にまとめる。
【0124】
【0125】
これらの結果は、本発明及び参照に従って製造された試料のOTR又はWVTRに有意差はないが、リジェクト率は8%異なることを示している。このように、驚くべきことに、ラミネート層にLDPEの代わりにラテックスを使用することで、バリア特性には影響を与えずに、リジェクト率を著しく改善する。
本願の出願当初の特許請求の範囲に係る発明の内容は、以下の通りである。
[項1]
紙又は板紙ベースの包装材料用のガスバリアフィルムであって、
少なくとも一方の表面が金属化されているミクロフィブリル化セルロース層(MFC層)と、
前記MFC層の少なくとも一方の表面に配置されたポリマー分散コーティング層と、
を含む、前記ガスバリアフィルム。
[項2]
前記MFC層が、MFC層の総乾燥重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%のMFCを含む、項1に記載のガスバリアフィルム。
[項3]
前記MFC層が、ポリビニルアルコール(PVOH)をさらに含む、項1又は2に記載のガスバリアフィルム。
[項4]
前記MFC層が、顔料、好ましくは層状鉱物ケイ酸塩のナノクレイ及びナノ粒子からなる群から選択される顔料、より好ましくはベントナイトをさらに含む、項1~3のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
[項5]
前記MFC層の坪量が、55gsm未満の範囲、好ましくは5~50gsmの範囲、より好ましくは5~20gsmの範囲である、項1~4のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
[項6]
前記MFC層の金属化表面が、MFC層上への金属又は金属酸化物の蒸着によって、好ましくは物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)によって形成される、項1~5のいずれか1つに記載のガスバリアフィルム。
[項7]
前記MFC層の金属化表面が、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、銅、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、シリコン酸化物、及びそれらの組合せからなる群から選択される金属又は金属酸化物を含み、好ましくはアルミニウムを含む、項1~6のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
[項8]
前記MFC層の金属化表面が、10~100nmの範囲、好ましくは20~50nmの範囲の金属層の厚さを有する、項1~7のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
[項9]
前記ポリマー分散コーティング層が、金属化されているMFC層の少なくとも1つの表面上に配置されている、項1~8のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
[項10]
前記ポリマー分散コーティングが、ラテックス、ポリビニルアルコール、又はポリオレフィン分散コーティングである、項1~9のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
[項11]
前記ラテックスコーティングが、10℃未満、好ましくは0℃未満、より好ましくは-10℃未満のTgを有する、項10に記載のガスバリアフィルム。
[項12]
前記ポリマー分散コーティングが、ポリマー分散コーティングの総乾燥重量に基づいて、1~30重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは2~10重量%の量の顔料をさらに含む、項1~11のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム、
[項13]
前記ポリマー分散コーティング層の坪量が、1~10gsmの範囲、好ましくは1~7gsmの範囲、より好ましくは1~5gsmの範囲である、項1~12のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
[項14]
紙又は板紙基材と、
項1~13のいずれか一項に記載のガスバリアフィルムと、
を含む、紙又は板紙ベースの包装材料。
[項15]
前記ガスバリアフィルムの分散コーティング層が、前記ガスバリアフィルムのMFC層と基材との間に挟まれている、項14に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
[項16]
前記ポリマー分散コーティング層が、前記MFC層の少なくとも1つの金属化表面上に配置されている、項14又は15に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
[項17]
前記ガスバリアフィルムとは反対側に面する基材表面上に配置された第1の保護層をさらに含む、項14~16のいずれか一項に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
[項18]
前記基材とは反対側に面するガスバリアフィルム表面上に配置された第2の保護層をさらに含む、項14~17のいずれか一項に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
[項19]
前記第1の保護層及び/又は第2の保護層が、ポリマー分散コーティング、好ましくはラテックス、ポリビニルアルコール、又はポリオレフィン分散コーティングを含む、項17又は18に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
[項20]
前記第1の保護層及び/又は第2の保護層が、保護層の総乾燥重量に基づいて、30~70重量%の量の顔料をさらに含む、項19に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
[項21]
前記第1の保護層及び/又は第2の保護層が、少なくとも以下の2つのサブ層を含む、項17~20のいずれか一項に記載の紙又は板紙ベースの包装材料:
第1のサブ層であり、当該第1のサブ層の総乾燥重量に基づいて、30~70重量%の量の顔料を含むポリマー分散コーティングを含む、第1のサブ層、及び
第2のサブ層であり、当該第2のサブ層の総乾燥重量に基づいて、0~70重量%の量の顔料を含むポリマー分散コーティングを含む、第2のサブ層。
[項22]
前記第1の保護層及び/又は第2の保護層が、熱可塑性ポリマー、好ましくはポリオレフィンを含む、項1~21のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
[項23]
標準ASTMF-1927に従って、相対湿度80%及び23℃で測定された、10cc/m
2
/24h/atm未満、好ましくは5cc/m
2
/24h/atm未満の酸素透過度(OTR)を有する、項14~22のいずれか一項に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
[項24]
PTS RH 021/97に従ったリジェクト率が、30%未満、好ましくは20%未満である、項14~23のいずれか一項に記載の紙又は板紙ベースの包装材料。
[項25]
項1~24のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム又は紙若しくは板紙ベースの包装材料を含む容器。
[項26]
紙又は板紙ベースの包装材料用のガスバリアフィルムの製造方法であって、
a)ミクロフィブリル化セルロースの層(MFC層)を提供する工程と、
b)MFC層の少なくとも1つの表面をメタライゼーションに供する工程と、
c)金属化されたMFC層の表面の少なくとも1つにポリマー分散コーティング層を適用する工程と、
を含む、製造方法。
[項27]
工程cの前、間、又は後に、金属化されたMFC層を紙又は板紙基材にラミネートすることをさらに含む、項26に記載の方法。
[項28]
前記ポリマー分散コーティング層が、MFC層の金属化表面に適用される、項26又は27に記載の方法。
[項29]
前記メタライゼーションが、好ましくは物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)による、MFC層上への金属又は金属酸化物の蒸着を含む、項26~28のいずれか一項に記載の方法。
[項30]
前記ポリマー分散コーティング層が、100℃未満、好ましくは80℃未満の温度で、MFC層の金属化表面に適用される、項26~29のいずれか一項に記載の方法。