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特許7653983BEOL統合のために好適な改変二重磁気トンネル接合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】BEOL統合のために好適な改変二重磁気トンネル接合構造
(51)【国際特許分類】
   H10B 61/00 20230101AFI20250324BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20250324BHJP
【FI】
H10B61/00
H10N50/10 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022524731
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 IB2020059751
(87)【国際公開番号】W WO2021084366
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】16/671,995
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】サン、ジョナサン ザンホン
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-003617(JP,A)
【文献】特開2006-156685(JP,A)
【文献】特開平11-177161(JP,A)
【文献】特開2010-147213(JP,A)
【文献】特開2013-197518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 61/00
H10N 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変二重磁気トンネル接合(mDMTJ)構造であって、
第1の磁気参照層と、
前記第1の磁気参照層の表面に接触する第1の表面を有する第1のトンネル・バリア層と、
前記第1のトンネル・バリア層の前記第1の表面の反対側の前記第1のトンネル・バリア層の第2の表面に接触する第1の表面を有する非磁性スピン伝導金属層と、
前記非磁性スピン伝導金属層の前記第1の表面の反対側の前記非磁性スピン伝導金属層の第2の表面に接触する第1の表面を有する磁気自由層と、
前記磁気自由層の前記第1の表面の反対側の前記磁気自由層の第2の表面に接触する第1の表面を有する第2のトンネル・バリア層と、
前記第2のトンネル・バリア層の前記第1の表面の反対側の前記第2のトンネル・バリア層の第2の表面に接触する第1の表面を有する第2の磁気参照層と
を含み、
前記第1の磁気参照層は前記mDMTJ構造の底部に位置し、前記第2の磁気参照層は前記mDMTJ構造の頂部に位置し、
前記第1のトンネル・バリア層は第1の側方寸法を有し、前記第2のトンネル・バリアは前記第1の側方寸法よりも小さい第2の側方寸法を有し、前記磁気自由層は前記非磁性スピン伝導金属層の台座部分の上に位置し、前記非磁性スピン伝導金属層の前記台座部分は前記第2の側方寸法を有し、前記非磁性スピン伝導金属層の残りの部分は前記第1の側方寸法を有する、
mDMTJ構造。
【請求項2】
改変二重磁気トンネル接合(mDMTJ)構造であって、
第1の磁気参照層と、
前記第1の磁気参照層の表面に接触する第1の表面を有する第1のトンネル・バリア層と、
前記第1のトンネル・バリア層の前記第1の表面の反対側の前記第1のトンネル・バリア層の第2の表面に接触する第1の表面を有する非磁性スピン伝導金属層と、
前記非磁性スピン伝導金属層の前記第1の表面の反対側の前記非磁性スピン伝導金属層の第2の表面に接触する第1の表面を有する磁気自由層と、
前記磁気自由層の前記第1の表面の反対側の前記磁気自由層の第2の表面に接触する第1の表面を有する第2のトンネル・バリア層と、
前記第2のトンネル・バリア層の前記第1の表面の反対側の前記第2のトンネル・バリア層の第2の表面に接触する第1の表面を有する第2の磁気参照層と
を含み、
前記第2の磁気参照層は前記mDMTJ構造の底部に位置し、前記第1の磁気参照層は前記mDMTJ構造の頂部に位置し、
前記第1のトンネル・バリア層は第1の側方寸法を有し、前記第2のトンネル・バリア層は前記第1の側方寸法よりも小さい第2の側方寸法を有し、前記磁気自由層は前記非磁性スピン伝導金属層の下側部分に接触し、前記非磁性スピン伝導金属層の前記下側部分は前記第2の側方寸法を有し、前記非磁性スピン伝導金属層の上側部分は前記第1の側方寸法を有する、
mDMTJ構造。
【請求項3】
改変二重磁気トンネル接合(mDMTJ)構造であって、
第1の磁気参照層と、
前記第1の磁気参照層の表面に接触する第1の表面を有する第1のトンネル・バリア層と、
前記第1のトンネル・バリア層の前記第1の表面の反対側の前記第1のトンネル・バリア層の第2の表面に接触する第1の表面を有する非磁性スピン伝導金属層と、
前記非磁性スピン伝導金属層の前記第1の表面の反対側の前記非磁性スピン伝導金属層の第2の表面に接触する第1の表面を有する磁気自由層と、
前記磁気自由層の前記第1の表面の反対側の前記磁気自由層の第2の表面に接触する第1の表面を有する第2のトンネル・バリア層と、
前記第2のトンネル・バリア層の前記第1の表面の反対側の前記第2のトンネル・バリア層の第2の表面に接触する第1の表面を有する第2の磁気参照層と
を含み、
前記第1のトンネル・バリア層は第1の側方寸法を有し、前記第2のトンネル・バリア層は前記第1の側方寸法よりも小さい第2の側方寸法を有し、
前記非磁性スピン伝導金属層は、前記非磁性スピン伝導金属層の前記第1の表面を有し、前記第1の側方寸法を有する第1の部分と、前記非磁性スピン伝導金属層の前記第2の表面を有し、前記第2の側方寸法を有する第の部分とを含む、
mDMTJ構造。
【請求項4】
前記第1の磁気参照層は、下側磁気参照層と、反強磁性カップリング層と、上側磁気参照層とを含む、請求項1ないし3のいずれかに記載のmDMTJ構造。
【請求項5】
前記第2の磁気参照層は、下側磁気参照層と、反強磁性カップリング層と、上側磁気参照層とを含む、請求項1ないし4のいずれかに記載のmDMTJ構造。
【請求項6】
第1の電極と第2の電極との間に挟まれた、請求項1~5のいずれかに記載の改変二重磁気トンネル接合(mDMTJ)構造を含む、スピン伝達トルク(STT)磁気トンネル接合(MTJ)メモリ・エレメント。
【請求項7】
改変二重磁気トンネル接合(mDMTJ)構造を形成する方法であって、前記方法は、
前記mDMTJ構造の下側材料スタックを形成することであって、前記下側材料スタックは底部から頂部に向かって、第1の磁気参照層と、第1のトンネル・バリア層と、非磁性スピン伝導金属層の第1の部分とを含む、第1の側方寸法を有する前記下側材料スタックを形成することと、
前記mDMTJ構造の前記下側材料スタックの物理的に露出された一番上の表面上に、前記mDMTJ構造の上側材料スタックを形成することであって、前記上側材料スタックは底部から頂部に向かって、前記非磁性スピン伝導金属層の第2の部分と、磁気自由層と、第2のトンネル・バリア層と、第2の磁気参照層とを含む、前記第1の側方寸法よりも小さい第2の側方寸法を有する、前記上側材料スタックを形成することと
を含む、方法。
【請求項8】
改変二重磁気トンネル接合(mDMTJ)構造を形成する方法であって、前記方法は、
前記mDMTJ構造の下側材料スタックを形成することであって、前記下側材料スタックは底部から頂部に向かって、第2の磁気参照層と、第2のトンネル・バリア層と、磁気自由層と、非磁性スピン伝導金属層の第2の部分とを含む、第2の側方寸法を有する、前記下側材料スタックを形成することと、
前記mDMTJ構造の前記下側材料スタックの物理的に露出された一番上の表面上に、前記mDMTJ構造の上側材料スタックを形成することであって、前記上側材料スタックは底部から頂部に向かって、非磁性スピン伝導金属層の第1の部分と、第1のトンネル・バリア層と、第1の磁気参照層とを含む、前記第2の側方寸法よりも大きい第1の側方寸法を有する、前記上側材料スタックを形成することと
を含む、方法。
【請求項9】
前記上側材料スタックは、前記下側材料スタックの前記非磁性スピン伝導金属層の前記第1の部分と同じ非磁性スピン伝導金属材料の非磁性スピン伝導金属層の前記第2の部分を含み、前記上側材料スタックの前記第2の非磁性スピン伝導金属層は、前記下側材料スタックの前記非磁性スピン伝導金属層の前記第1の部分との界面を形成する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
磁気抵抗ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)を形成する方法であって、前記方法は、
第1の電極を形成することと、
第1の電極の上に、請求項7~9のいずれかに記載の方法により改変二重磁気トンネル接合(mDMTJ)構造を形成することと、
前記mDMTJ構造の上に、第2の電極を形成することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗ランダム・アクセス・メモリ(MRAM:magnetoresistive random access memory)に関する。より具体的には、本発明は、スピン伝達トルク(STT:spin-transfer torque)MRAMの性能を改善でき、かつ半導体技術(たとえばCMOS技術など)のバックエンド(BEOL:back-end-of-the-line)処理に統合され得る改変二重磁気トンネル接合(mDMTJ:modified double magnetic tunnel junction)構造に関する。
【背景技術】
【0002】
MRAMは不揮発性ランダム・アクセス・メモリ技術であり、ここではデータが磁気ストレージ・エレメントによって記憶される。これらのエレメントは通常2つの強磁性プレートから形成され、その各々は磁化を保持でき、薄い誘電層(すなわち、トンネル・バリア)によって分離されている。2つのプレートの一方(すなわち、磁気参照またはピン留め層)は磁石であり、その磁気モーメント方向は特定の方向に設定される。他方のプレート(すなわち、磁気自由層)の磁化は少なくとも2つの異なる方向に変更でき、たとえばメモリに対する0および1などの異なるデジタル状態を表す。MRAMにおけるこうしたエレメントは、磁気トンネル接合(MTJ:magnetic tunnel junction)構造と呼ばれることがある。図1は先行技術のMTJ構造10を示しており、これは磁気参照層12と、トンネル・バリア層14と、磁気自由層16とを含む。磁気参照層12に示される単一の矢印はその層のあり得る配向を示し、磁気自由層16内の2つの矢印はその層内の配向をスイッチできることを示す。
【0003】
図1のMTJ構造10において、磁気参照層12の磁化は一方向(たとえば上向き)に固定されており、一方で磁気自由層16の方向は、たとえば磁界または電荷電流を生成するスピン伝達トルクなどのいくつかの外力によって「スイッチ」され得る。(いずれかの極性の)より少量の電流を用いてデバイスの抵抗を読取ることができ、この抵抗は磁気自由層16および磁気参照層12の磁化の相対的配向に依存する。抵抗は通常、磁化が逆平行であるときにより高く、磁化が平行であるときにより低くなる(ただし、材料によってはこれが逆転し得る)。
【0004】
図1に示されるMTJ構造10を使用できるMRAMの一種がSTT MRAMである。STT MRAMは、アクティブ・エレメントを反転するために磁界を用いる従来のMRAMよりも低い電力消費およびより良好なスケーラビリティという利点を有する。STT MRAMでは、スピン伝達トルクを用いて磁気自由層の配向が反転(スイッチ)される。STT MRAMデバイスに対しては、MTJ構造を通過する電流を用いて、MTJメモリ・エレメントのビット状態がスイッチまたは「書込み」される。MTJ構造を下向きに通過する電流は磁気自由層16を磁気参照層12と平行にするのに対し、MTJ構造を上向きに通過する電流は磁気自由層16を磁気参照層12と逆平行にする。
【0005】
STT MRAMにおいては、小さいトランジスタ・サイズに適合するようにスイッチング電流を低減させて、メモリ面積密度を改善することが望ましい。スイッチング電流を約2倍低減させる方法の1つは、たとえば図2に示されるものなどの二重磁気トンネル接合(DMTJ)構造20の概念である。図2のDMTJ構造20は、第1の磁気参照層22と、第1のトンネル・バリア層24と、磁気自由層26と、第2のトンネル・バリア層28と、第2の磁気参照層30とを含む。第1の磁気参照層22および第2の磁気参照層30の各々に示される単一の矢印はその層のあり得る配向を示し、磁気自由層26内の2つの矢印はその層内の配向をスイッチできることを示す。図2に示されるDMTJ構造の1つの欠点は、それがスイッチング電流を低減させるとともにトンネル磁気抵抗(TMR:tunnel magnetoresistance)も低減させて、デバイスの効率的な読出しを妨げることである。
【0006】
よって、DMTJ構造が(低電流における)効率的なスイッチングおよび迅速な読出し(高TMR)を示すように、スイッチング電流を低減させる一方で構造内のTMRの低減を軽減させたDMTJ構造を提供することが求められている。
【発明の概要】
【0007】
改変二重磁気トンネル接合(mDMTJ)構造が提供され、これは磁気自由層と第1のトンネル・バリア層との間に挟まれた非磁性スピン伝導金属層を含み、第1のトンネル・バリア層は第1の磁気参照層と接触する。磁気自由層の上に第2のトンネル・バリア層が位置し、第2のトンネル・バリア層の上に第2の磁気参照層が位置する。本発明のmDMTJ構造は、(低電流における)効率的なスイッチングおよび迅速な読出し(高TMR)を示す。「低電流」とは、同じエラー無しの書込みを達成するために典型的な単一のMTJデバイスが必要とする電流よりも少ない電流を意味する。いくつかの実施形態において、低電流は20~50μAに達するか、またはそれ未満であり得る。「高TMR」とは、典型的なDMTJデバイスが達成し得るよりも高い値のトンネル磁気抵抗を意味する。いくつかの実施形態において、高TMRは100~200%に達するか、またはそれを超え得る。
【0008】
本発明の一態様においては、効率的なスイッチングおよび迅速な読出しを示すmDMTJ構造が提供される。一実施形態において、mDMTJ構造は、第1の磁気参照層と、第1の磁気参照層の表面に接触する第1の表面を有する第1のトンネル・バリア層と、第1のトンネル・バリア層の第1の表面の反対側の第1のトンネル・バリア層の第2の表面に接触する第1の表面を有する非磁性スピン伝導金属層と、非磁性スピン伝導金属層の第1の表面の反対側の非磁性スピン伝導金属層の第2の表面に接触する第1の表面を有する磁気自由層と、磁気自由層の第1の表面の反対側の磁気自由層の第2の表面に接触する第1の表面を有する第2のトンネル・バリア層と、第2のトンネル・バリア層の第1の表面の反対側の第2のトンネル・バリア層の第2の表面に接触する第1の表面を有する第2の磁気参照層とを含む。
【0009】
本発明の別の態様においては、STT MTJメモリ・エレメントが提供される。一実施形態において、STT MTJメモリ・エレメントは、第1の電極と第2の電極との間に挟まれたmDMTJ構造を含む。mDMTJ構造は、第1の磁気参照層と、第1の磁気参照層の表面に接触する第1の表面を有する第1のトンネル・バリア層と、第1のトンネル・バリア層の第1の表面の反対側の第1のトンネル・バリア層の第2の表面に接触する第1の表面を有する非磁性スピン伝導金属層と、非磁性スピン伝導金属層の第1の表面の反対側の非磁性スピン伝導金属層の第2の表面に接触する第1の表面を有する磁気自由層と、磁気自由層の第1の表面の反対側の磁気自由層の第2の表面に接触する第1の表面を有する第2のトンネル・バリア層と、第2のトンネル・バリア層の第1の表面の反対側の第2のトンネル・バリア層の第2の表面に接触する第1の表面を有する第2の磁気参照層とを含む。
【0010】
本発明のさらなる態様においては、mDMTJ構造を形成する方法が提供される。一実施形態において、この方法は、mDMTJ構造の下側材料スタックを形成することを含み、この下側材料スタックは底部から頂部に向かって、第1の磁気参照層と、第1のトンネル・バリア層と、非磁性スピン伝導金属層とを含む。次に、mDMTJ構造の下側材料スタックの物理的に露出された一番上の表面上に、mDMTJ構造の上側材料スタックが形成され、この上側材料スタックは底部から頂部に向かって、磁気自由層と、第2のトンネル・バリア層と、磁気自由層と、第2の磁気参照層とを含む。この実施形態において、磁気自由層は非磁性スピン伝導金属層との界面を形成する。
【0011】
いくつかの実施形態においては、表面の汚染を回避するために、上側材料スタックは、下側材料スタックの非磁性スピン伝導金属層と同じ非磁性スピン伝導金属材料の別の非磁性スピン伝導金属層を含み、この上側材料スタックの別の非磁性スピン伝導金属層は、下側材料スタックの非磁性スピン伝導金属層との界面を形成する。
【0012】
別の実施形態において、この方法は、mDMTJ構造の下側材料スタックを形成することを含み、この下側材料スタックは底部から頂部に向かって、第2の磁気参照層と、第2のトンネル・バリア層と、磁気自由層とを含む。次に、mDMTJ構造の下側材料スタックの物理的に露出された一番上の表面上に、mDMTJ構造の上側材料スタックが形成され、この上側材料スタックは底部から頂部に向かって、非磁性スピン伝導金属層と、第1のトンネル・バリア層と、第1の磁気参照層とを含む。この実施形態において、上側材料スタックの非磁性スピン伝導金属層は、下側材料スタックの磁気自由層の表面と直接接触する。
【0013】
いくつかの実施形態においては、表面の汚染を回避するために、下側材料スタックは、上側材料スタックの非磁性スピン伝導金属層と同じ非磁性スピン伝導金属材料の別の非磁性スピン伝導金属層を含み、この下側材料スタックの別の非磁性スピン伝導金属層は、上側材料スタックの非磁性スピン伝導金属層との界面を形成する。
【0014】
非磁性スピン伝導金属材料の形成を2つの別個の層に切り離す本発明の方法は、材料および成長の技術および製作の最適化に対するより多くの柔軟性を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】先行技術のMTJ構造を示す断面図である。
図2】先行技術のDMTJ構造を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態によるmDMTJ構造を示す断面図である。
図4図3に示される第1の磁気参照層および第2の磁気参照層の一方または両方に対して使用され得る磁気参照層を示す断面図であり、この磁気参照層は下側磁気参照層と、合成反強磁性カップリング層と、上側磁気参照層とを含む。こうした適用において、図3に示される参照層のモーメント方向は、トンネル・バリアに接触する合成反強磁性カップリング層の1つの層のモーメント方向に対応する。
図5A】本発明の別の実施形態によるmDMTJ構造を示す断面図である。破線は、非磁性スピン伝導金属層の下側部分と、非磁性スピン伝導金属層の上側部分との成長の間でもたらされ得る「破壊」点を示す。
図5B】本発明のさらなる実施形態によるmDMTJ構造を示す断面図である。破線は、非磁性スピン伝導金属層の下側部分と、非磁性スピン伝導金属層の上側部分との成長の間でもたらされ得る「破壊」点を示す。
図6】本発明の実施形態によるmDMTJ構造を示す断面図である。
図7A】本発明の別の実施形態によるmDMTJ構造を示す断面図である。破線は、非磁性スピン伝導金属層の下側部分と、非磁性スピン伝導金属層の上側部分との成長の間でもたらされ得る「破壊」点を示す。
図7B】本発明のさらなる実施形態によるmDMTJ構造を示す断面図である。破線は、非磁性スピン伝導金属層の下側部分と、非磁性スピン伝導金属層の上側部分との成長の間でもたらされ得る「破壊」点を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで図面を参照して、本発明の実施形態をより詳細に説明することとする。なお、図面は単なる例示の目的で提供されたものであるため、図面は縮尺どおりに描かれていない。加えて、類似の対応する構成要素は類似の参照番号で示されていることを注記する。
【0017】
本発明のさまざまな実施形態の理解を提供するために、以下の説明にはたとえば特定の構造、コンポーネント、材料、寸法、処理ステップ、および技術などの多数の具体的な詳細が示されている。しかし、本発明のさまざまな実施形態は、これらの具体的な詳細を伴わずに実施されてもよいことを当業者は認識するだろう。他の場合には、本発明を不明瞭にすることを避けるために、周知の構造または処理ステップは詳細に説明されていない。
【0018】
層、領域、または基板としての構成要素が別の構成要素の「上(on)」または「上(over)」にあると言及されるとき、その構成要素は他方の構成要素の上に直接存在してもよいし、介在構成要素も存在してもよいことが理解されるだろう。これに対し、ある構成要素が別の構成要素の「直接上(directly on)」または「直接上(directly over)」にあると言及されるとき、介在構成要素は存在しない。加えて、ある構成要素が別の構成要素の「下(beneath)」または「下(under)」にあると言及されるとき、その構成要素は他方の構成要素の下(beneath)または下(under)に直接存在してもよいし、介在構成要素が存在してもよいことが理解されるだろう。これに対し、ある構成要素が別の構成要素の「直接下(directly beneath)」または「直接下(directly under)」にあると言及されるとき、介在構成要素は存在しない。
【0019】
本発明は、たとえば図3、5A、5B、6、7A、および7Bに示されるものなどのmDMTJ構造100を提供し、これはBEOLに統合されてSTT MRAMのコンポーネントとして用いられ得る。たとえば図3、5A、5B、6、7A、および7Bに示されるものなどの本発明のmDMTJ構造100は、第1の磁気参照層102と、第1の磁気参照層102の表面に接触する第1の表面を有する第1のトンネル・バリア層104と、第1のトンネル・バリア層104の第1の表面の反対側の第1のトンネル・バリア層104の第2の表面に接触する第1の表面を有する非磁性スピン伝導金属層106と、非磁性スピン伝導金属層106の第1の表面の反対側の非磁性スピン伝導金属層106の第2の表面に接触する第1の表面を有する磁気自由層108と、磁気自由層108の第1の表面の反対側の磁気自由層108の第2の表面に接触する第1の表面を有する第2のトンネル・バリア層110と、第2のトンネル・バリア層110の第1の表面の反対側の第2のトンネル・バリア層110の第2の表面に接触する第1の表面を有する第2の磁気参照層112とを含む。
【0020】
非磁性スピン伝導金属層106は、長いスピン反転散乱寿命を有するスピン保存金属材料である。非磁性スピン伝導金属層106は、第1のトンネル・バリア層104を横切ってトンネルするときに第1の磁気参照層102によって分極されたスピン電流を受け取り、磁気自由層108にそのスピン電流を効果的に伝送して、STT誘導スイッチングを助ける。同時に非磁性スピン伝導金属層106は、非磁性スピン伝導金属層106と第1のトンネル・バリア層104との間の界面における状態密度(DOS:density-of-state)のスピン分極を低減させてほぼ0にする。結果として、第1のトンネル・バリア層104の磁気抵抗が0に低減するため、たとえば図2に示されるものなどの先行技術のDMTJ構造を苦しめる磁気抵抗キャンセル効果が回避される。
【0021】
非磁性スピン伝導金属層106と第1のトンネル・バリア層104との界面におけるこのDOSスピン分極の低減によって、第1の磁気参照層102に入り得る磁気自由層108が規定する分極によるスピン電流も顕著に低減し、よってスピン・トルクが低減し、磁気自由層108からの磁気参照層102のSTT関連の外乱が低減する。よって本発明のmDMTJ構造100は、(上記で定義したとおりの低電流における)効率的なスイッチングと、迅速な読出し(上記で定義したとおりの高TMR)と、参照層(102)の磁気状態に対する潜在的外乱(書込みエラーも引き起こし得る外乱)の低減とを示す。
【0022】
図5A~5Bおよび図7A~7Bに示される実施形態において、第1のトンネル・バリア層104の側方寸法(すなわち、幅またはピラー直径)は、第2のトンネル・バリア層110の側方寸法よりも大きい。第1のトンネル・バリア層104および第2のトンネル・バリア層110のこの側方寸法の差によって、第1のトンネル・バリア層104が極度に低い値の面積比抵抗(すなわち、抵抗面積積(resistance area product)またはRA)を有する必要性が低減する。このことによって、mDMTJ構造100に対する全体的な付加的抵抗が低減することによって高TMR信号の保存も助けられる。
【0023】
本発明のmDMTJ構造100は、第1のトンネル・バリア層104がより低い電流密度で動作することを可能にし、繰り返される書込み動作によるデバイス耐久性の懸念を軽減させる。こうした耐久性は動作電流密度(および電圧)の増加によって急速に低下する傾向があるため、(面積の増加による)総トンネル抵抗およびトンネル電流密度の低減は、耐久性の改善のために好ましい方向である。
【0024】
最初に図3を参照すると、本発明の実施形態によるmDMTJ構造100が示されている。図3のmDMTJ構造100は、第1の磁気参照層102と、第1の磁気参照層102の表面に接触する第1のトンネル・バリア層104と、第1のトンネル・バリア層104の表面に接触する非磁性スピン伝導金属層106と、非磁性スピン伝導金属層106の表面に接触する磁気自由層108と、磁気自由層108の表面に接触する第2のトンネル・バリア層110と、第2のトンネル・バリア層110の表面に接触する第2の磁気参照層112とを含む。示されるとおり、図3のmDMTJ構造100は、第1の電極90と第2の電極120との間に位置する。mDMTJ構造100と、第1の電極90と、第2の電極120とは集合的にSTT MTJメモリ・エレメントを提供する。
【0025】
図3にも残りの図面のいずれにも示されていないが、mDMTJ構造100は、BEOLに存在する相互接続誘電材料を含むさまざまな誘電材料層に埋め込まれ得る。図3にも残りの図面のいずれにも示されていないが、図面に示されるMRAM含有デバイス区域と側方に隣接して非MRAM含有デバイス区域が配置され得る。
【0026】
第1の電極90は、BEOLに存在する相互接続レベルのうちの1つの相互接続誘電材料層に埋め込まれた、たとえば銅含有構造などの導電性構造の表面(凹形または非凹形)の上に存在し得る。第1の電極90は、Ta、TaN、Ti、TiN、Ru、RuN、RuTa、RuTaN、Co、CoWP、CoN、W、WN、またはこれらの任意の組み合わせで構成され得る。加えて第1の電極90は、任意のその他の周知の電極材料で構成されてもよい。第1の電極90は2nmから25nmの厚さを有し得る。他の厚さも可能であり、第1の電極90の厚さとして用いられ得る。第1の電極90は、たとえばスパッタリング、原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)、化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)、プラズマ強化化学蒸着(PECVD:plasma enhanced chemical vapor deposition)、または物理蒸着(PVD:physical vapor deposition)などの堆積プロセスによって形成され得る。第1の電極90を提供する伝導性材料の堆積の後に、エッチ・バック・プロセス、平坦化プロセス(たとえば、化学機械研磨(chemical mechanical polishing)すなわちCMPなど)、またはパターニング・プロセス(たとえば、リソグラフィおよびエッチングなど)が続き得る。
【0027】
次に図3に示されるとおり、第1の電極90の上にmDMTJ構造100が形成される。図3においては、第1の磁気参照層102がmDMTJ構造100の底部に位置し、第2の磁気参照層112がmDMTJ構造100の頂部に位置する。図3において、第1の磁気参照層102、第1のトンネル・バリア層104、および非磁性スピン伝導金属層106の各々は第1の側方寸法を有し、磁気自由層108、第2のトンネル・バリア層110、および第2の磁気参照層112の各々は第1の側方寸法と等しい第2の側方寸法を有する。よって、図3に示されるmDMTJ構造100内に存在するさまざまな層の各々は、最も外側の側壁(単数または複数)が互いに関連しており、鉛直に位置合わせされているか、または制御された側壁傾斜を伴って位置合わせされている。
【0028】
mDMTJ構造100のさまざまな材料層は、たとえばスパッタリング、プラズマ強化原子層堆積(PEALD:plasma enhanced atomic layer deposition)、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、またはマグネトロン・スパッタリングを含む物理蒸着(PVD)などの1つ以上の堆積プロセスを使用することによって形成され得る。いくつかの実施形態において、mDMTJ構造100のさまざまな材料層は、さまざまな材料層の堆積の間に真空を破壊せずに形成され得る。他の実施形態において、mDMTJ構造100のさまざまな材料層は、さまざまな材料層の1つ以上の堆積の間に真空を破壊することによって形成され得る。本発明のいくつかの実施形態において、非磁性スピン伝導金属層106の下側部分が形成された後に非磁性スピン伝導金属層106の上側部分が形成されるようにして、非磁性スピン伝導金属層106は別個の堆積ステップにおいて形成される。非磁性スピン伝導金属層106の上側部分および下側部分は、同じ非磁性スピン伝導金属材料で構成される。非磁性スピン伝導金属層106の存在によって、その材料層を形成する途中で真空を破壊することが実行可能になる。なぜなら、こうした同一材料の金属界面は、上昇温度(たとえば400℃など)におけるアニーリングによってより容易に「修復」され、界面に関する悪影響が最小化されるからである。
【0029】
第1の磁気参照層102は、固定された磁化を有する。第1の磁気参照層102は、トンネル・バリア界面において高いスピン分極を示す1つ以上の金属を含む金属または金属合金(またはそのスタック)で構成され得る。代替的な実施形態において、第1の磁気参照層102の形成に対する例示的な金属は、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、ホウ素、またはマンガンを含む。例示的な金属合金は、上記に例示された金属を含み得る。別の実施形態において、第1の磁気参照層102は、(1)上述の金属を用いて金属もしくは金属合金またはその両方で形成された高スピン分極領域と、(2)強い垂直磁気異方性(perpendicular magnetic anisotropy)(強PMA)を示す単数または複数の材料で構築された領域とを有する多層配置であり得る。使用され得る強PMAを有する例示的な材料は、たとえばコバルト、ニッケル、白金、パラジウム、イリジウム、またはルテニウムなどの金属を含み、交互層として配置され得る。強PMA領域は、(界面とは対照的な)強い固有またはバルクPMAを示す合金も含んでもよく、例示的な合金はコバルト-鉄-テルビウム、コバルト-鉄-ガドリニウム、コバルト-クロム-白金、コバルト-白金、コバルト-パラジウム、鉄-白金、もしくは鉄-パラジウム、またはそれらの組み合わせを含む。これらの合金は、交互層として配置され得る。一実施形態において、これらの材料および領域の組み合わせも、第1の磁気参照層102として使用され得る。いくつかの実施形態において、第1の磁気参照層102は、下側磁気参照層と、合成反強磁性カップリング層と、上側磁気参照層とを含み得る。第1の磁気参照層102に対するこの実施形態は、本明細書において図4に関して以下により詳細に説明されることとなる。
【0030】
第1のトンネル・バリア層104はスピン電流を提供するように構成されるが、非磁性スピン伝導金属層106と界面接続されたときに第2のトンネル・バリアのTMRと反対のTMRに寄与しない。第1のトンネル・バリア層104は、たとえば酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、および酸化チタンなどの絶縁体材料か、またはたとえば半導体もしくは低バンドギャップ絶縁体などの、スピン分極を保存する一方で電気トンネル伝導度がより高い材料で構成される。非磁性スピン伝導金属層106の存在によって、第1のトンネル・バリア層104の厚さは、mDMTJ全体に対する適切なトンネル抵抗を提供するための第2のトンネル・バリア110の厚さよりもかなり小さい抵抗面積積に制限されない。さらに、いくつかの実施形態においては、mDMTJスタックのTMRの総量を減らさないために、第1のトンネル・バリア層104は第2のトンネル・バリア層110よりも低い磁気抵抗を有する。
【0031】
非磁性スピン伝導金属層106は、長いスピン反転散乱寿命を有するスピン保存金属材料である。本発明の一実施形態において、非磁性スピン伝導金属層106は、たとえば銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、またはたとえば銀スズ(Ag-Sn)合金などのその合金などのスピン導体で構成される。いくつかの実施形態において、非磁性スピン伝導金属層106は体心立方(bcc:bodied centered cubic)結晶構造を有する。他の実施形態において、非磁性スピン伝導金属層106は面心立方(fcc:faced centered cubic)結晶構造を有する。第1のトンネル・バリア層104にわたるトンネル電流のスピン分極を保存するために適切なその他の結晶構造も考えられ得る。非磁性スピン伝導金属層106は、受け取ったスピン電流を磁気自由層108内に伝送するために適切な厚さを有する。一実施形態において、非磁性スピン伝導金属層106の厚さは20nmから55nmであるが、非磁性スピン伝導金属層106の厚さが受け取ったスピン電流を磁気自由層108内に伝送するために十分である限り、他の厚さも可能である。
【0032】
磁気自由層108は、第1の磁気参照層102および第2の磁気参照層112の磁化配向に対して配向を変化させ得る磁化を有する磁性材料(または磁性材料のスタック)で構成され得る。磁気自由層108に対する例示的な磁性材料は、コバルト、鉄の合金もしくは多層またはその両方、コバルト-鉄、ニッケルの合金、ニッケル-鉄の合金、およびコバルト-鉄-ホウ素の合金を含む。
【0033】
第2のトンネル・バリア層110は絶縁体材料で構成され、磁気自由層108と第2の磁気参照層112との間の適切なトンネル抵抗を提供するような厚さに形成される。第2のトンネル・バリア層110に対する例示的な材料は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、および酸化チタン、またはたとえば半導体もしくは低バンドギャップ絶縁体などの、電気トンネル伝導度がより高い材料を含む。いくつかの実施形態において、第2のトンネル・バリア層110は、第1のトンネル・バリア層104と組成的に同じ絶縁体材料で構成される。他の実施形態において、第2のトンネル・バリア層110は、第1のトンネル・バリア層104と組成的に異なる絶縁体材料で構成される。
【0034】
第2の磁気参照層112も、固定された磁化を有する。第2の磁気参照層112は、高いスピン分極を示す1つ以上の金属を含む金属または金属合金(またはそのスタック)で構成され得る。代替的な実施形態において、第2の磁気参照層112の形成に対する例示的な金属は、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、ホウ素、またはマンガンを含む。例示的な金属合金は、上記に例示された金属を含み得る。別の実施形態において、第2の磁気参照層112は、(1)上述の金属を用いて金属もしくは金属合金またはその両方で形成された高スピン分極領域と、(2)強い垂直磁気異方性(強PMA)を示す単数または複数の材料で構築された領域とを有する多層配置であり得る。使用され得る強PMAを有する例示的な材料は、たとえばコバルト、ニッケル、白金、パラジウム、イリジウム、またはルテニウムなどの金属を含み、交互層として配置され得る。強PMA領域は、(界面とは対照的な)強い固有またはバルクPMAを示す合金も含んでもよく、例示的な合金はコバルト-鉄-テルビウム、コバルト-鉄-ガドリニウム、コバルト-クロム-白金、コバルト-白金、コバルト-パラジウム、鉄-白金、もしくは鉄-パラジウム、またはその組み合わせを含む。これらの合金は、交互層として配置され得る。一実施形態において、これらの材料および領域の組み合わせも、第2の磁気参照層112として使用され得る。いくつかの実施形態において、第2の磁気参照層112は、下側磁気参照層と、合成反強磁性カップリング層と、上側磁気参照層とを含み得る。第2の磁気参照層112に対するこの実施形態は、本明細書において図4に関して以下により詳細に説明されることとなる。
【0035】
第2の電極120は、第1の電極90と同様に伝導性金属材料の1つで構成され得る。いくつかの実施形態において、第2の電極120は、第1の電極90と組成的に同じ伝導性金属材料で構成され得る。別の実施形態において、第2の電極120は、第1の電極90と組成的に異なる伝導性金属材料で構成され得る。第2の電極120は2nmから25nmの厚さを有し得る。他の厚さも可能であり、第2の電極120の厚さとして用いられ得る。第2の電極120は、たとえばスパッタリング、原子層堆積(ALD)、化学蒸着(CVD)、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、または物理蒸着(PVD)などの堆積プロセスによって形成され得る。
【0036】
ここで図4を参照すると、図3、または図5A、5B、6、7A、および7Bのいずれかに示される第1の磁気参照層102および第2の磁気参照層112の一方または両方に対して使用され得る磁気参照層113が示されている。図4の磁気参照層113は、下側磁気参照層114と、合成反強磁性カップリング層116と、上側磁気参照層118とを含む。下側磁気参照層114は、第1または第2の磁気参照層102、110に対して上述された磁性材料の1つで構成されてもよい。合成反強磁性カップリング層116は、磁気参照層113の下側および上側磁気参照層114、118と逆平行の方式で結合できる非磁性材料で構成される。合成反強磁性カップリング層116として用いられ得る例示的な非磁性材料は、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、またはロジウム(Rh)を含むが、それに限定されない。一実施形態において、合成反強磁性カップリング層116は0.2nmから1.2nmの厚さを有し得るが、他の厚さも可能であり、合成反強磁性カップリング層116の厚さとして用いられ得る。上側磁気参照層118は、第1または第2の磁気参照層102、110に対して上述された磁性材料の1つで構成され得る。通常、上側磁気参照層118は下側磁気参照層114とは組成的に異なる。
【0037】
一実施形態において、磁気参照層113は第2の磁気参照層112として使用されるが、第1の磁気参照層102には使用されない。別の実施形態において、磁気参照層113は、第2の磁気参照層112および第1の磁気参照層102の両方として使用される。さらなる実施形態において、磁気参照層113は第1の磁気参照層102として使用されるが、第2の磁気参照層112には使用されない。
【0038】
ここで図5A~5Bを参照すると、本発明の他の実施形態によるmDMTJ構造100が示されている。図5A~5BのmDMTJ構造100は、上記で定義された第1の磁気参照層102と、第1の磁気参照層102の表面に接触する上記で定義された第1のトンネル・バリア層104と、第1のトンネル・バリア層104の表面に接触する上記で定義された非磁性スピン伝導金属層106と、非磁性スピン伝導金属層106の表面に接触する上記で定義された磁気自由層108と、磁気自由層108の表面に接触する上記で定義された第2のトンネル・バリア層110と、第2のトンネル・バリア層110の表面に接触する上記で定義された第2の磁気参照層112とを含む。図5A~5Bに示されるmDMTJ構造100は、第1の磁気参照層102がmDMTJ構造の底部に位置し、第2の磁気参照層112がmDMTJ構造の頂部に位置する実施形態を示している。
【0039】
示されていないが、図5A~5BのmDMTJ構造100は、上記で定義された第1の電極と、定義された第2の電極との間に位置する。mDMTJ構造100と、第1の電極と、第2の電極とは集合的にSTT MTJメモリ・エレメントを提供する。
【0040】
図5A~5Bおよび図7A~7Bにおいて、水平の破線は、非磁性スピン伝導金属層106の下側部分と、非磁性スピン伝導金属層106の上側部分との成長の間でもたらされ得る「破壊」点を示す。図5A~5Bおよび図7A~7Bに示される実施形態において、第1のトンネル・バリア層104の側方寸法は、第2のトンネル・バリア層110の側方寸法よりも大きい。第1のトンネル・バリア層104および第2のトンネル・バリア層110のこの側方寸法の差によって、トンネル・バリアの面積比抵抗(すなわち、抵抗面積積またはRA)を極度に低い値にする必要性が低減する。このことによって、mDMTJ構造100に対する全体的な付加的抵抗が低減することによって高TMR信号の保存も助けられる。図5A~5Bおよび図7A~7Bにおいて、非磁性スピン伝導金属層106は磁気自由層108よりも大きい側方寸法を有し、これはデバイス内の抵抗の排除を助ける。
【0041】
図5Aは、第1の磁気参照層102、第1のトンネル・バリア層104、および非磁性スピン伝導金属層106の各々が第1の側方寸法を有し、磁気自由層108、第2のトンネル・バリア層110、および第2の磁気参照層112の各々が第1の側方寸法よりも小さい第2の側方寸法を有する実施形態を示す。
【0042】
図5Bは、磁気自由層108が非磁性スピン伝導金属層106の台座部分の上に位置し、この非磁性スピン伝導金属層106の台座部分は第2の側方寸法を有し、非磁性スピン伝導金属層106の残りの部分は第1の側方寸法を有することを除いては、図5Aに示される実施形態と類似の実施形態を示す。台座部分は、同じ材料の残りの部分から上向きに延在する材料の一部分として定義される。いくつかの実施形態において、台座部分は、ある種のエッチング・マスクによって保護されていない材料の部分を窪ませることによって作製される。図5Bに示されるこの実施形態において、非磁性スピン伝導金属層106の台座部分は、相互接続誘電材料層内に形成されたビア開口部の外側に延在する。
【0043】
ここで図6図7A、および図7Bを参照すると、本発明のさらに他の実施形態によるmDMTJ構造100が示されている。図6図7A、および図7BのmDMTJ構造100の各々は、上記で定義された第1の磁気参照層102と、第1の磁気参照層102の表面に接触する上記で定義された第1のトンネル・バリア層104と、第1のトンネル・バリア層104の表面に接触する上記で定義された非磁性スピン伝導金属層106と、非磁性スピン伝導金属層106の表面に接触する上記で定義された磁気自由層108と、磁気自由層108の表面に接触する上記で定義された第2のトンネル・バリア層110と、第2のトンネル・バリア層110の表面に接触する上記で定義された第2の磁気参照層112とを含む。図6図7A、および図7Bに示されるmDMTJ構造100は、第1の磁気参照層102がmDMTJ構造の頂部に位置し、第2の磁気参照層112がmDMTJ構造の底部に位置する実施形態を示している。
【0044】
示されていないが、図6図7A、および図7BのDMTJ構造100は、上記で定義された第1の電極と、上記で定義された第2の電極との間に位置する。mDMTJ構造100と、第1の電極と、第2の電極とは集合的にSTT MTJメモリ・エレメントを提供する。
【0045】
図6は、第1の磁気参照層102、第1のトンネル・バリア層104、および非磁性スピン伝導金属層106の各々が第1の側方寸法を有し、磁気自由層108、第2のトンネル・バリア層110、および第2の磁気参照層112の各々が第1の側方寸法と等しい第2の側方寸法を有する実施形態を示す。よって、図6に示されるmDMTJ構造100内に存在するさまざまな層の各々は、最も外側の側壁(単数または複数)が互いに鉛直に位置合わせされている。
【0046】
図7Aは、第1の磁気参照層102、第1のトンネル・バリア層104、および非磁性スピン伝導金属層106の各々が第1の側方寸法を有し、磁気自由層108、第2のトンネル・バリア層110、および第2の磁気参照層112の各々が第1の側方寸法よりも小さい第2の側方寸法を有する実施形態を示す。
【0047】
図7Bは、相互接続誘電材料層内に存在するビア開口部内に延在する非磁性スピン伝導金属層106の下側部分の表面が磁気自由層108と接触しており、非磁性スピン伝導金属層106の上側部分はビア開口部の外側に存在することを除いては、図7Aに示される実施形態と類似の実施形態を示す。ビア開口部内に延在する非磁性スピン伝導金属層106の下側部分は第2の側方寸法を有し、非磁性スピン伝導金属層106の上側部分は第1の側方寸法を有する。
【0048】
図5A~5Bおよび図7A~7Bに示されるmDMTJ構造は、mDMTJ構造の下側材料スタックの形成をmDMTJ構造の上側材料スタックと切り離す方法を使用して形成される。いくつかの実施形態において、この切り離すことは、下側材料スタックと上側材料スタックとにおいて、同じかまたは類似の非磁性スピン伝導金属材料の別個の非磁性スピン伝導材料層を形成することを含む。こうして切り離すことは、材料および成長の技術および製作の最適化に対するより多くの柔軟性を可能にする。
【0049】
一実施形態において、図5Aおよび図5Bに示されるmDMTJ構造100を提供するために用いられ得る方法は、第1の磁気参照層102と、第1のトンネル・バリア層104と、非磁性スピン伝導金属層106の下側部分との下側材料スタックを形成することを含み、その後に下側材料スタックはリソグラフィでパターン形成されてピラー形状にされる。次に、ピラーに共形に側方に隣接して、かつピラーの上に相互接続誘電材料層が形成され、その後、非磁性スピン伝導金属層106のパターン形成された下側部分において終止するビア開口部が形成される。この構造は、次いでたとえば化学機械研磨などによって平坦化されて、過剰な非磁性スピン伝導金属材料が除去され、平滑な非磁性スピン伝導金属表面を有するビアの頂部が露出される。その後、エレメント102/104および非磁性スピン伝導金属層106の下側部分を含む、処理された下側材料スタック上のビア開口部の上に、非磁性スピン伝導材料の付加的な層(非磁性スピン伝導金属層106の上側部分を形成する)と、磁気自由層108と、第2のトンネル・バリア層110と、第2の磁気参照層112との上側材料スタックが形成される。次いで、非磁性スピン伝導金属層106の上側部分およびエレメント108/110/112を含む上側材料スタックは、その後MTJメモリに対する所望の直径および深さにリソグラフィでパターン形成されてもよく、エッチングは誘電表面において終止する。パターン形成された上側材料スタックの直径は、ビアの下の第1の材料スタックのピラー直径とは異なってもよく、好ましくはそれより小さい。
【0050】
別の実施形態において、図7Aおよび図7Bに示されるmDMTJ構造100を提供するために用いられ得る方法は、mDMTJ構造の下側材料スタック、すなわち第2の磁気参照層112と、第2のトンネル・バリア層110と、磁気自由層108と、非磁性スピン伝導金属層106の下側部分とを形成することを含む。その後、下側材料スタック112/110/108および106の下側部分が、リソグラフィでパターン形成されて、MTJメモリに対する所望の直径のピラーにされる。次いで、ピラーに側方に隣接して、かつピラーの上に相互接続誘電材料が共形に堆積される。次に、エレメント112/110/108および106の下側部分の下側材料スタックを含むピラーの頂部にビア開口部が作製され、非磁性スピン伝導金属層106の下側部分の表面が露出される。このビア開口部の上に、非磁性スピン伝導金属層106の上側部分と、第1のトンネル・バリア層104と、第1の磁気参照層との上側材料スタックが形成される。この上側材料スタックは、次いでリソグラフィでパターン形成されて、好ましくはビア様の開口部の下の下側材料スタックよりも大きい直径にされる。
【0051】
本発明の好ましい実施形態に関して本発明を具体的に示して説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく形および詳細に前述およびその他の変更が加えられてもよいことが当業者に理解されるだろう。したがって、本発明は記載および図示される厳密な形および詳細に限定されず、添付の請求項の範囲内にあることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B