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特許7653986マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20250324BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20250324BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20250324BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250324BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20250324BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250324BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250324BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20250324BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250324BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20250324BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250324BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250324BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250324BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20250324BHJP
   C07D 409/14 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/4439
A61K31/444
A61P1/04
A61P1/16
A61P9/00
A61P11/00
A61P11/06
A61P13/12
A61P19/02
A61P25/00
A61P35/00
A61P43/00 111
C07D405/14
C07D409/14
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022528560
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2020060387
(87)【国際公開番号】W WO2021097190
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】62/935,358
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522191369
【氏名又は名称】フォアシー ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ウェンジン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,カイ-ウェイ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07179831(US,B1)
【文献】特表2004-523581(JP,A)
【文献】特表2006-503829(JP,A)
【文献】特表2008-506692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/14
A61K 31/4439
A61K 31/444
A61P 1/04
A61P 1/16
A61P 9/00
A61P 11/00
A61P 11/06
A61P 13/12
A61P 19/02
A61P 25/00
A61P 35/00
A61P 43/00
C07D 405/14
C07D 409/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは水和物
(式中、
環Aは、場合により置換されているヘテロアリールであり、
Qは、CR2又はNであり、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2はそれぞれ、独立して、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシル、ハロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、アミド、アルキルアミノ、アミノアルキル、シアノ、ヒドロキシアルキル、-(CH2)pC(O)OR6又は-(CH2)pOC(O)R6であり、
R3は、水素、ハロ又はアルキルであり、
R4及びR5はそれぞれ、独立して、水素又はアルキルであり、
R6はそれぞれ、独立して、水素又はアルキルであり、アルキルは、無置換であるか、又はアミノ、ヒドロキシル、ハロ及びアルコキシから独立して選択される1つ以上の基により置換されており、
Xは、S又はOであり、
Yは、
【化2】
であり、
nは、1、2、3又は4であり、
pは、0、1、2、3、4又は5である)。
【請求項2】
環Aが、O、S及びNから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有する5~6員の単環式ヘテロアリールであり、5~6員の単環式ヘテロアリールが、アルキルにより場合により置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
環Aが、ピリジニル、フラニル、チエニル又はN-メチルピラゾリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
環Aが、
【化3】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R1が、水素又はC1~4アルキルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
nが1であり、R2が-CH3である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R3が水素である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R4及びR5がそれぞれ、水素である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
XがSである、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
XがOである、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
QがNである、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
Yが、
【化4】
である、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Yが、
【化5】
である、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
【化6】
が、
【化7】
である、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
環Aが、ピリジニル、フラニル、チエニル又はN-メチルピラゾリルであり、
R1が、水素、-CH3又は-CH2CH3であり、
R2が、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又は-OHであり、
R3、R4及びR5がそれぞれ、水素であり、
Xが、S又はOであり、
Yが、
【化8】
であり、
Qが、CH又はNであり、
nが、1である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
【化9】
からなる群から選択される化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは水和物。
【請求項17】
請求項16に記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物、及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項19】
クロファージエラスターゼ(MMP-12)阻害に使用するための、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
クロファージエラスターゼ(MMP-12)によって媒介される疾患処置に使用するための、請求項18に記載の医薬組成物であって、疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、急性肺損傷、特発性肺線維症(IPF)、サルコイドーシス、全身性硬化症、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、関節炎、がん、心臓疾患、炎症性腸疾患(IBD)、急性腎臓損傷(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、アルポート症候群及び腎炎からなる群から選択される、医薬組成物
【請求項21】
クロファージエラスターゼ(MMP-12)の阻害又はMMP-12によって媒介される疾患の処置に使用するための、請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物
【請求項22】
疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、急性肺損傷、特発性肺線維症(IPF)、サルコイドーシス、全身性硬化症、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、関節炎、がん、心臓疾患、炎症性腸疾患(IBD)、急性腎臓損傷(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、アルポート症候群及び腎炎からなる群から選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、2019年11月14日に出願の米国仮特許出願第62/935,358号への優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、器官形成、成長及び正常組織の代謝回転の間、最も外側の細胞外マトリックスタンパク質の分解にとって重要な、プロテイナーゼ酵素のスーパーファミリーである。MMPはまた、結合組織の制御されない破壊において重要と考えられており、これは、いくつかの疾患過程、例えば、関節リウマチ、骨関節炎、胃潰瘍形成、喘息、気腫及び腫瘍転移に関連している。したがって、1つ以上のMMPの阻害は、これらの疾患において利益をもたらし得る。
【0003】
ヒトマクロファージエラスターゼ(MMP-12)は、独特のMMPである。MMP-12は、他のMMPの特徴のすべてを示すが、損傷又はリモデリングが起こる組織へ浸潤するマクロファージから優先的に生成され、細胞外マトリックスを分解する。例えば、気腫の発症中に、MMP-12のレベルの向上が観察される。さらに、MMP-12ノックアウトマウスモデルは、煙草の煙に長期間、曝露した後に気腫を発症しないことを示した(Hautamkaiら、Science、1997年、277巻:2002~2004頁)。これらのデータは、MMP-12が気腫の疾患進行において、ある役割を果たすことを示唆する。喘息のMMP12欠損モデルでの検討に基づいて、慢性喘息の発症におけるMMP-12の関与もまた示唆されている(Warnerら、Am J Pathol. 2004年;165巻(6号):1921~1930頁)。急性肺損傷のFas誘発モデルにおいて、MMP-12欠損マウスは、肺線維症の発症から保護される(Matute-Belloら、Am J Respir Cell Mol Biol. 2007年;37巻(2号):210~221頁)。マンソン住血吸虫感染によって誘発された肺及び肝線維症のモデルでは、MMP-12は、肺及び肝臓において、線維形成促進活性を有する(Madalaら J Immunol 2010年;184巻:3955~3963頁)。MMP-12によって生成するタイプIVコラーゲン断片のBALFレベルは、特発性肺線維症(IPF)を有する患者において増大するので、MMP-12はまた、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の切断によるIPF病因の一因である可能性があり(Sandら、PLoS One 2013年;8巻:e84934頁)、ヒトMMP-12は、いくつかのヒトECMタンパク質を、インビトロで切断することができる(Owenら(etal.) J Leukoc Biol 1999年;65巻:137~150頁)。まとめると、これらの結果は、MMP-12の阻害剤は、肺疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、喘息、急性肺損傷、特発性肺線維症(IPF)、肝線維症及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の処置に有用となり得ることを示唆している。
【0004】
MMP-12は、アテローム性動脈硬化病変(Matsumotoら、Am. J. Pathol.、1998年、153巻:109頁)及び腎炎ラットモデル(Kanekoら、J. lmmunol.、2003年、170巻:3377頁)における泡沫細胞において、喫煙者の肺胞マクロファージから分泌されることが示されている(Shapiroら、Journal of Biological Chemistry、1993年、268巻:23824頁)。MMP-12はまた、冠動脈疾患においてある役割を果たす(Jormsjoら、Circulation Research、2000年、86巻:998頁)。MMP-12はまた、炎症性腸疾患(IBD)患者、及び大腸炎のT細胞媒介性モデルにおいて、上方調節されて、上皮の分解の一因になることが示されており、MMP-12-/-マウスは、TNBS誘発性大腸炎から保護された(Penderら、Ann N Y Acad Sci. 2006年、1072巻:386~8頁)。上皮及び間質MMP-12は、MMP-3及びMMP-7と共に、小児期発症性UCの嚢粘膜においてやはり上方調節され、長期間におけるMMP小児UC嚢の発現は、IBDと特徴を共有していることを示唆する(Makitaloら、World J Gastroenterol. 2012年、18巻(30号):4028~36頁)。まとめると、これらの観察は、MMP-12が、これらの疾患の処置に対する標的となり得ることを示唆している。
【0005】
いくつかの疾患におけるMMP-12の関与を鑑みて、MMP-12の阻害剤を調製する試みが行われている。いくつかのMMP-12阻害剤が知られている(例えば、国際特許出願公開第WO00/40577号、欧州特許出願公開第EP1288199A1号、米国特許第6,352,9761号及び米国特許出願公開第2004/0072871号、並びに欧州特許出願公開第EP1394159号を参照されたい)。
【0006】
記載されている特定のクラスのMMP阻害剤は、ヒダントイン誘導体である。例えば、国際特許出願公開第WO02/096426号は、以下の一般式であるヒダントイン誘導体:
【0007】
【化1】
を記載しており、これは、特に、腫瘍壊死因子-アルファ変換酵素(TACE)及びアグレカナーゼに対する、MMP阻害剤として活性であると開示されている。これらの誘導体の開示されている構造の特徴は、ヒダントイン環とその側鎖との間のスピロ-連結基である。米国特許出願公開第2004/0067996号、及び国際特許出願公開第WO2004/108086号は、以下の一般式である類似のヒダントイン誘導体:
【0008】
【化2】
を記載しており、これは、特にTACE及びアグレカナーゼに対する、MMP阻害剤として活性であるとやはり記載されている。
【0009】
国際特許出願公開第WO02/074752号は、MMP阻害剤の合成を記載しており、国際特許出願公開第WO2004/020415号は、MMP-12阻害剤を開示しており、これらは、それぞれ、以下の一般式であるヒダントイン誘導体:
【0010】
【化3】
である。開示化合物の一部は、MMP-12阻害活性を含めた、MMP阻害活性を示した。
【0011】
さらに最近、MMP-12の阻害剤は、米国特許第7,179,831号に記載されており、これは、以下の一般式であるヒダントイン誘導体:
【0012】
【化4】
である。
【発明の概要】
【0013】
ヒダントイン誘導体は、有用なクラスのMMP阻害剤である。しかし、特異性、効力及び薬理学的特性の改善されたヒダントイン誘導体を特定することが、当分野において必要とされている。
【0014】
本出願は、MMP、特にマクロファージエラスターゼ(MMP-12)に対して、高い活性及び特異性を有する、ヒダントイン誘導体を提供することによって、上記の必要性を満たす。
【0015】
一般的な態様では、式(I)の化合物:
【0016】
【化5】
又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
(式中、
環Aは、場合により置換されているヘテロアリールであり、
Qは、CR2又はNであり、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2はそれぞれ、独立して、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシル、ハロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、アミド、アルキルアミノ、アミノアルキル、シアノ、ヒドロキシアルキル、-(CH2)pC(O)OR6又は-(CH2)pOC(O)R6であり、
R3は、水素、ハロ又はアルキルであり、
R4及びR5はそれぞれ、独立して、水素又はアルキルであり、
R6はそれぞれ、独立して、水素又はアルキルであり、アルキルは、無置換であるか、又はアミノ、ヒドロキシル、ハロ及びアルコキシから独立して選択される1つ以上の基により置換されており、
Xは、S又はOであり、
Yは、
【0017】
【化6】
であり、
nは、1、2、3又は4であり、
pは、0、1、2、3、4又は5である)
が提供される。
【0018】
実施形態では、環Aが、O、S及びNから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有する5~6員の単環式ヘテロアリールであり、5~6員の単環式ヘテロアリールが、アルキルにより場合により置換されている、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0019】
実施形態では、環Aが、ピリジニル、フラニル、チエニル又はN-メチルピラゾリルである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0020】
実施形態では、環Aが、
【0021】
【化7】
である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0022】
実施形態では、R1が水素又はC1~4である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0023】
実施形態では、R2が-CH3である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0024】
実施形態では、nが1であり、R2が-CH3である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0025】
実施形態では、R3が水素である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0026】
実施形態では、R4及びR5がそれぞれ、水素である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0027】
実施形態では、XがSである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0028】
実施形態では、XがOである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0029】
実施形態では、QがNである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0030】
実施形態では、Yが、
【0031】
【化8】
である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0032】
実施形態では、Yが、
【0033】
【化9】
である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0034】
実施形態では、
【0035】
【化10】
が、
【0036】
【化11】
である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0037】
実施形態では、
環Aが、ピリジニル、フラニル、チエニル又はN-メチルピラゾリルであり、
R1が、水素、-CH3又は-CH2CH3であり、
R2が、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又は-OHであり、
R3、R4及びR5がそれぞれ、水素であり、
Xは、S又はOであり、
Yが、
【0038】
【化12】
であり、
Qが、CH又はNであり、
nが、1である、
式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0039】
実施形態では、
【0040】
【化13】
からなる群から選択される化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは水和物が提供される。
【0041】
別の一般的な態様では、本明細書において記載されている式の化合物、及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0042】
他の一般的な態様では、それを必要とする対象において、マクロファージエラスターゼ(MMP-12)を阻害する方法、及びそれを必要とする対象におけるマクロファージエラスターゼ(MMP-12)によって媒介される疾患を処置する方法が提供される。
【0043】
実施形態では、それを必要とする対象における、マクロファージエラスターゼ(MMP-12)を阻害する方法であって、対象に本明細書に記載されている化合物又は医薬組成物を投与するステップを含む方法が提供される。
【0044】
実施形態では、それを必要とする対象における、マクロファージエラスターゼ(MMP-12)によって媒介される疾患を処置する方法であって、対象に本明細書に記載されている化合物又は医薬組成物を投与するステップを含む方法が提供される。
【0045】
一部の実施形態では、疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、急性肺損傷、及び特発性肺線維症(IPF)、サルコイドーシス、全身性硬化症、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、関節炎、がん、心臓疾患、炎症性腸疾患(IBD)、急性腎臓損傷(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、アルポート症候群及び腎炎からなる群から選択される。
【0046】
同様に、マクロファージエラスターゼ(MMP-12)を阻害する方法又はマクロファージエラスターゼ(MMP-12)によって媒介される疾患を処置する方法において使用するための、本明細書に記載されている化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、或いはそれらの組成物が提供される。一部の実施形態では、疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、急性肺損傷、及び特発性肺線維症(IPF)、サルコイドーシス、全身性硬化症、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、関節炎、がん、心臓疾患、炎症性腸疾患(IBD)、急性腎臓損傷(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、アルポート症候群及び腎炎からなる群から選択される。
【0047】
同様に、マクロファージエラスターゼ(MMP-12)を阻害する医薬又はマクロファージエラスターゼ(MMP-12)によって媒介される疾患を処置する医薬の製造における、本明細書に記載されている化合物又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、或いはその組成物の使用が提供される。一部の実施形態では、疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、急性肺損傷、及び特発性肺線維症(IPF)、サルコイドーシス、全身性硬化症、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、関節炎、がん、心臓疾患、炎症性腸疾患(IBD)、急性腎臓損傷(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、アルポート症候群及び腎炎からなる群から選択される。
【0048】
さらに別の一般的な態様では、本明細書に記載されている医薬組成物を調製する方法であって、本明細書に記載されている化合物又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を一緒にするステップを含む方法が提供される。
【0049】
背景において、及び本明細書全体を通じて、様々な刊行物、論文及び特許が引用、又は記載されている。これらの参照文献の各々の全体が、参照により本明細書に組み込まれている。本明細書に含まれている文書、作用、物質、デバイス、論文などの議論は、本発明に関する背景を提供する目的のためのものである。このような議論は、これらの主題のいずれか又はすべてが、開示されている又は特許請求されているいかなる発明に関しても、先行技術の一部を形成することを認めるものではない。
【0050】
特に定義されない限り、本明細書において使用される技術的及び科学的用語はすべて、本発明が属する当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書に使用されているある特定の用語は、本明細書において説明されている意味を有する。本明細書において引用されている特許、公開特許出願及び刊行物はすべて、本明細書においてあたかも完全に説明されているかのごとく、参照により組み込まれている。
【0051】
本明細書で使用する場合、及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」及び「the」は、その文脈が特に明白に示さない限り、複数の参照物を含むことに留意しなければならない。
【0052】
特に示さない限り、一連の要素の前に付く「少なくとも」という用語は、この一連のものにおいて、各要素を参照することを理解すべきである。例えば、言い回し「少なくともA、B及びC」は、A、B及びCがそれぞれ存在することを意味する。一連の要素に先行する用語「少なくとも1つの」は、この一連のものにおける単一の要素、又はこの一連のものにおける2つ以上の要素のいずれかの組合せを指すことを理解すべきである。例えば、言い回し「A、B及びCのうちの少なくとも1つ」は、Aだけが存在する、Bだけが存在する、Cだけが存在する、AとBの両方が存在する、AとCの両方が存在する、BとCの両方が存在する、又はA、B及びCがそれぞれ存在することを意味する。本文脈に応じて、一連の要素に先行する用語「少なくとも1つの」はまた、これらの要素のいずれか1つ以上が、1つのインスタンスよりも多く存在する状況も包含し、例えば、「A、B及びCのうちの少なくとも1つの」はまた、Aが単独で2重に存在するか、又は要素B及びCのうちのいずれか1つ以上とさらに組み合わせて存在する状況を含むことができる。
【0053】
以下に続くこの明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、「を含む(comprise)」という語、並びに変化形、例えば「を含む(comprises)」及び「を含むこと(comprising)」は、明記した整数若しくは工程、又は整数若しくは工程の群を含むことを意味するが、他のいかなる整数若しくは工程、又は整数若しくは工程の群を除外することを意味するものではないことが理解されよう。用語「含むこと(comprising)」は、本明細書において使用されている場合、用語「含有すること(containing)」又は「含むこと(including)」により、又は時として、本明細書において使用される場合、用語「有すること(having)」により置き換えることができる。
【0054】
「からなる(consisting of)」は、本明細書において使用されている場合、特許請求の範囲の要素に指定されていない、任意の要素、工程又は成分を除外する。「から実質的になる(consisting essentially of)」は、本明細書において使用される場合、特許請求の範囲の基礎的及び新規特徴に実質的に影響を及ぼさない、物質又は工程を除外しない。「含むこと」、「含有すること」、「含むこと」及び「有すること」という上述の用語のいずれも、本出願の態様又は実施形態の文脈において本明細書に使用されている場合は常に、本開示の範囲を変更するため、用語「からなる」又は「から実質的になる」により置き換えられ得る。
【0055】
本明細書で使用する場合、複数の引用されている要素間の接続用語「及び/又は」は、個々選択肢及び組合せ選択肢の両方を包含すると理解される。例えば、2つの要素が、「及び/又は」によって接続されている場合、第1の選択肢は、第2の要素を伴わないで第1の要素が適用されることを指す。第2の選択肢は、第1の要素を伴わないで第2の要素が適用されることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用されることを指す。これらの選択肢のいずれか1つは、これらの意味の範囲内に収まり、したがって、本明細書において使用される用語「及び/又は」の要件を満足することが理解される。1つ超のこれらの選択肢が同時に適用されることは、この意味の範囲内に収まり、したがって、用語「及び/又は」の要件を満足することがやはり理解される。
【0056】
特に明記しない限り、任意の数値、例えば、本明細書に記載されている濃度又は濃度範囲は、すべての場合において、用語「約」により修飾されているものと理解すべきである。したがって、数値は、通常、引用されている値の±10%を含む。例えば、「10倍」と引用する場合、9倍及び11倍を含む。本明細書で使用する場合、文脈が特に明確に示さない限り、数値範囲の使用は、考えられるすべての部分範囲、これらの値のこのような範囲及び分数内の整数を含めたそのような範囲内の個々の数値のすべてを明示的に含む。
【0057】
本明細書で使用する場合、「対象」は、任意の動物、好ましくは、本出願の実施形態による方法によって処置されることになる、又は処置されている哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。用語「哺乳動物」は、本明細書で使用する場合、いかなる哺乳動物も包含する。哺乳動物の例には、以下に限定されないが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、非ヒト霊長類(NHP)、例えば、サル又は類人猿、ヒトなど、より好ましくはヒトが含まれる。
【0058】
言い回し「薬学的に許容される塩」は、哺乳動物において局所使用するのに安全且つ有効な、目的の化合物の塩であって、所望の生物活性を有する塩を意味する。薬学的に許容される塩は、指定された化合物中に存在する酸性基又は塩基性基の塩を含む。薬学的に許容される酸付加塩には、以下に限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩(acid phosphate)、イソニコチン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸))が含まれる。本出願において使用されるある特定の化合物は、様々なアミノ酸を有する薬学的に許容される塩を形成することができる。好適な塩基塩には、以下に限定されないが、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛、ビスマス及びジエタノールアミン塩が含まれる。薬学的に許容される塩に関する総説に関しては、参照により本明細書に組み込まれている、Bergeら、66巻、J. Pharm. Sci. 1~19頁(1977年)を参照されたい。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「アルキル」は、一価の非分岐状又は分岐状飽和炭化水素鎖を意味する。アルキル基は、無置換であっても、又は1つ以上の好適な置換基により置換されていてもよい。アルキル基の例には、以下に限定されないが、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル)及びペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)などが含まれる。アルキル基は、指定数の炭素原子を有することができる。記号「C」の後に、数が添字で出現する場合、その添字は、特定のアルキルが含有し得る、炭素原子の数を一層具体的に定義している。例えば、「C1~C10アルキル」又は「C1~10アルキル」は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9及びC10アルキル基を含むことが意図されている。さらに、例えば、「C1~C4アルキル」又は「C1~4アルキル」は、1~4個の炭素原子を有するアルキルを表す。
【0060】
用語「アルコキシ」とは、本明細書で使用する場合、アルキルが上で定義されている通りである、-O-アルキル基を指す。アルコキシ基は、酸素原子を介して親分子に結合している。アルコキシ基は、指定数の炭素原子を有することができる。例えば、「C1~C10アルコキシ」又は「C1~10アルコキシ」は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9及びC10アルコキシ基を含むことが意図されている。さらに、例えば、「C1~C6アルコキシ」又は「C1~6アルコキシ」は、1~6個の炭素原子を有するアルコキシを表す。アルコキシの例には、以下に限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えば、n-プロポキシ、イソプロポキシ)、ブトキシ(例えば、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ)、ペンチルオキシ(例えば、n-ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ)などが含まれる。アルコキシ基は、無置換であっても、又は1つ以上の好適な置換基により置換されていてもよい。同様に、「アルキルチオ」又は「チオアルコキシ」は、硫黄架橋を介して結合している、上で定義したアルキル基、例えば、-S-メチル、-S-エチルなどを表す。アルキルチオの代表例には、以下に限定されないが、-SCH3、-SCH2CH3などが含まれる。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。それに対応して、用語「ハロ」は、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)及びヨード(-I)を意味する。
【0062】
「ハロアルキル」は、1つ以上のハロゲン原子により置換されている、分岐状及び直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基の両方を含むことが意図される。ハロアルキルの例には、以下に限定されないが、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル及びヘプタクロロプロピルが含まれる。
【0063】
用語「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」は、互換的に使用することができ、-OHを指す。
【0064】
用語「カルボキシ」とは、-COOHを指す。
【0065】
用語「シアノ」とは、-CNを指す。
【0066】
用語「アミノ」とは、-NH2を指す。用語「アルキルアミノ」は、アミノ基であって、窒素に結合している水素原子の一方又は両方が、アルキル基により置換されているアミノ基を指す。例えば、アルキルアミノには、メチルアミノ(-NHCH3)、ジメチルアミノ(-N(CH3)2)、-NHCH2CH3などが含まれる。
【0067】
用語「アミノアルキル」は、本明細書で使用する場合、1つ以上のアミノ基により置換されている、分岐状及び直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基の両方を含むことが意図される。例えば、「C1~4アミノアルキル」は、1つ以上のアミノ基により置換されている、C1、C2、C3及びC4アルキル基を含むことが意図されている。アミノアルキル基の代表例には、以下に限定されないが、-CH2NH2、-CH2CH2NH2及び-CH2CH(NH2)CH3が含まれる。
【0068】
本明細書で使用する場合、「アミド」とは、-C(O)N(R)2を指し、Rはそれぞれ独立して、アルキル基又は水素である。アミドの例には、以下に限定されないが、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3及び-C(O)N(CH3)2が含まれる。
【0069】
用語「ヒドロキシルアルキル」及び「ヒドロキシアルキル」は、互換的に使用され、1つ以上のヒドロキシル基により置換されているアルキル基を指す。アルキルは、分岐状又は直鎖状の脂肪族炭化水素とすることができる。ヒドロキシルアルキルの例には、以下に限定されないが、ヒドロキシルメチル(-CH2OH)、ヒドロキシルエチル(-CH2CH2OH)などが含まれる。
【0070】
用語「アリール」は、本明細書で使用する場合、以下に限定されないが、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントラニルなどを含めた、任意の炭素をベースとする芳香族基を含有する基である。アリール部分は、周知であり、例えば、Lewis, R. J.(編)、Hawley's Condensed Chemical Dictionary、第13版、John Wiley & Sons, Inc.、New York(1997年)に記載されている。アリール基は、無置換であっても、又は1つ以上の好適な置換基により置換されていてもよい。アリール基は、単一環構造(すなわち、単環式)とすることができるか、又は縮合環構造である多環構造(すなわち、多環式、例えば、二環式又は三環式)を含むことができる。例えば、アリール基は、単環式アリール基、例えばフェニルとすることができる。
【0071】
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1個のヘテロ原子環員、例えば、硫黄、酸素又は窒素を含有する、安定な単環式及び多環式芳香族炭化水素を含む。ヘテロアリールは、単環式又は多環式、例えば、二環式又は三環式とすることができる。ヘテロ原子を含有するヘテロアリール基の各環は、1個若しくは2個の酸素原子、又は硫黄原子及び/若しくは1~4個の窒素原子を含有することができ、但し、各環中のヘテロ原子の総数は、4個以下であり、各環は、少なくとも1個の炭素原子を有することを条件とする。二環式ヘテロアリール基の場合、二環式基を完成する縮合環は、炭素原子のみを含有することができ、飽和、部分飽和又は不飽和であり得る。多環式であるヘテロアリール基、例えば、二環式又は三環式は、少なくとも1つの完全芳香族環を含まなければならないが、他の縮合環(単数又は複数)は、芳香族又は非芳香族とすることができる。ヘテロアリール基は、任意の利用可能な窒素において、又はヘテロアリール基の任意の環の炭素原子において結合し得る。好ましくは、用語「ヘテロアリール」とは、環の少なくとも1つにおいて少なくとも1個のヘテロ原子(O、S又はN)を有する、5員若しくは6員の単環式基、及び9員若しくは10員の二環式基を指し、ヘテロ原子含有環は、O、S及び/又はNから選択される、1個、2個又は3個のヘテロ原子、より好ましくは1個又は2個のヘテロ原子を好ましくは有する。ヘテロアリール基は、無置換であっても、又は1つ以上の好適な置換基により置換されていてもよい。ヘテロアリールの窒素ヘテロ原子は、置換されていても、又は無置換であってもよい。ヘテロアリールの窒素ヘテロ原子及び硫黄ヘテロ原子は、場合により酸化され得る(すなわち、N→O及びS(O)rであり、rは、0、1又は2である)。
【0072】
例示的な単環式ヘテロアリール基には、以下に限定されないが、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、フラニル、チオフェニル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル及びトリアジニルが含まれる。例示的な二環式ヘテロアリール基には、以下に限定されないが、インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフラニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジニル、フロピリジニル、ジヒドロイソインドリル及びテトラヒドロキノリニルが含まれる。
【0073】
当分野において使用される慣例によれば:
【0074】
【化14】
は、コア、主鎖又は親分子構造への部分又は置換基の結合点となる結合を図示するために、本明細書における構造式に使用される。
【0075】
置換基への結合が、環中の2個の原子を連結する結合を交差して示されている場合、このような置換基は、この環上の任意の原子に結合し得る。
【0076】
用語「置換されている」とは、いずれかの有機基(例えば、アルキル、ヘテロアリールなど)に関して本明細書で使用する場合、少なくとも1個の水素原子が、非水素基により置き換えられており、但し、正常な原子価をすべて維持しており、この置換が安定な化合物をもたらすことを条件とすることを意味する。具体的な基が、「置換されている」場合、その基は、置換基の一覧から独立して選択される、1つ以上の置換基、好ましくは1~5つの置換基、より好ましくは1~3つの置換基、最も好ましくは1~2つの置換基を有することができる。用語「独立して」は、置換基を参照して使用される場合、このような置換基の1つ超が可能である場合、このような置換基が同じとすることができるか、又は互いに異なり得ることを意味する。好適な置換基の例には、以下に限定されないが、アルキル、ハロ、アルコキシ、アミド、アルキルチオ、アミン、アルキルアミン、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、カルボキシルなど、例えば、C1~4アルキル、C1~3アルコキシ、-OH、-COOH、-F、-Cl、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2が含まれる。
【0077】
化合物に関して、なんらかの可変要素が、任意の構成又は式中に1回超で出現する場合、その定義は、出現ごとに、他のすべての出現時におけるその定義と無関係である。したがって、例えば、ある基が、0~3つのR基により置換されていると示されている場合、前記基は、最大で3つのR基により場合により置換されていてもよく、Rは、出現ごとに、Rの定義から独立して選択される。
【0078】
用語「任意選択の」又は「場合により」は、続いて記載されている事象又は状況が、必ずしもではないが、起こり得、このような記載は、この事象又は状況が起こる又は起こらない事態を含むことを意味する。例えば、「場合により置換されているヘテロアリール」は、置換基は、必ずしもではないが、存在することができ、このような記載は、ヘテロアリール基が好適な置換基によって置換されている事態、及びヘテロアリール基がいかなる置換基によっても置換されていない事態を含むことを意味する。
【0079】
当業者は、ある種の実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、その構造中に1個以上の不斉炭素原子を有することができることを認識しているであろう。本明細書で使用する場合、実線の楔形結合でも点線の楔型結合でもなく、実線だけとして示されている結合を含む化学式、又は他には、1個以上の原子の周りに特定の立体配置(例えば、R又はS)を有するものとして示されている化学式のいずれも、可能な立体異性体のいずれも、又は2つ以上の立体異性体からなる混合物を企図する。言い換えると、構造の立体化学が指定されていない場合、この構造は、個々の立体異性体及びそれらの混合物のすべてを包含することが意図されている。立体異性体は、鏡像異性体及びジアステレオマーを含む。「鏡像異性体」は、互いに重なり合わない鏡像である立体異性体である。一対の鏡像異性体の1:1混合物が、ラセミ体又はラセミ混合物である。ジアステレオマー(又はジアステレオ異性体)は、鏡像異性体ではない立体異性体であり、すなわち、それらは、鏡像として関係付けられず、化合物の2つ以上の立体異性体が、等価な立体中心の1つ以上において異なる立体配置を有しており、互いに鏡像ではない場合に発生する。置換基(例えば、アルキル、ヘテロシクリルなど)は、R又はS立体配置のいずれか一方の立体中心を含むことができる。
【0080】
したがって、本明細書に記載されている化合物の立体化学として純粋な異性体(すなわち、単一鏡像異性体又は単一ジアステレオマー)、及びそれらのラセミ体を含むそれらの混合物が、本出願の範囲内に含まれる。特定の立体異性体が特定される場合、これは、立体異性体が実質的に不含であること、すなわち他の立体異性体を50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは5%未満、特に2%未満、最も好ましくは1%未満のみ伴うことを意味する。例えば、化合物が、例えば、(R)として指定される場合、これは、本化合物が(S)異性体を実質的に含まないことを意味する。本明細書に記載されている化合物は、ラセミ混合物、鏡像異性体として若しくはジアステレオマーとして富む混合物として、又は鏡像異性体として若しくはジアステレオマーとして純粋な個々の立体異性体として使用され得る。
【0081】
立体化学的に純粋な異性体は、本開示を鑑みて、当分野において公知の技法により得ることができる。例えば、ジアステレオ異性体は、物理的分離方法、例えば分別結晶化及びクロマトグラフィー技法によって分離することができ、鏡像異性体は、光学活性な酸又は塩基とのジアステレオマー塩の選択的結晶化によって、又はキラルクロマトグラフィーによって互いに分離することができる。純粋な立体異性体は、立体化学的に純粋な適切な出発原料から合成によって、又は立体選択的反応を使用することによって調製することもできる。
【0082】
本明細書に記載されている化合物はまた、互変異性体を形成することができる。用語「互変異性体」とは、特定の化合物の構造の相互変換可能な形態である化合物であって、水素原子及び電子の置き換えが様々である、化合物を指す。互変異性体は、容易に相互変換する化学化合物の構成上の異性体であり、通常、プロトン(水素)の再配置をもたらす。したがって、2つの構造が、パイ電子及び原子(通常、水素)の移動を介して平衡の下にあり得る。本明細書に記載されている化合物の互変異性体及びそれらの混合物のすべてが、本出願の範囲内に含まれる。
【0083】
本明細書に記載されている化合物は、溶媒和形態及び非溶媒和形態で存在し得る。用語「溶媒和物」は、例えば、水素結合による、本出願の化合物と1つ以上の溶媒分子との物理的な会合を意味する。溶媒和物中の溶媒分子は、規則的な配列及び/又は非規則的な配列で存在し得る。溶媒和物は、化学量論量又は非化学量論量のどちらか一方の溶媒分子を含むことができる。「溶媒和物」は、溶液相と分離可能な溶媒和物の両方を包含する。本明細書に記載されている化合物は、水(すなわち、水和物)又は一般有機溶媒との溶媒和物を形成することができる。例示的な溶媒和物には、以下に限定されないが、水和物、エタノレート、メタノレート及びイソプロパノレートが含まれる。溶媒和の方法は、一般に、当分野で公知である。
【0084】
同様に、本出願の化合物に起こる原子のすべての同位体が、本出願の範囲内に含まれる。同位体は、同一原子番号であるが、異なる質量数を有する、そのような原子を含む。一般例により、及び非限定的に、水素の同位体は、重水素(2H)及びトリチウム(3H)を含む。炭素の同位体は、13C及び14Cを含む。同位体標識化合物は、他で使用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して、当業者に公知の従来の技法により、又は本明細書に記載されているものに類似した方法によって、一般に調製され得る。
【0085】
本明細書で使用する場合、化合物の名称は、本化合物の、存在する、考えられる異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体若しくはラセミ混合物、又はそれらの任意の混合物)、及び互変異性体のすべてを包含することが意図されている。
【0086】
化合物
一般的な態様では、式(I)の化合物:
【0087】
【化15】
又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
(式中、
環Aは、場合により置換されているヘテロアリールであり、
Qは、CR2又はNであり、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2はそれぞれ、独立して、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシル、ハロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、アミド、アルキルアミノ、アミノアルキル、シアノ、ヒドロキシアルキル、-(CH2)pC(O)OR6又は-(CH2)pOC(O)R6であり、
R3は、水素、ハロ又はアルキルであり、
R4及びR5はそれぞれ、独立して、水素又はアルキルであり、
R6はそれぞれ、独立して、水素又はアルキルであり、アルキルは、無置換であるか、又はアミン、ヒドロキシル、ハロ及びアルコキシから独立して選択される1つ以上の基により置換されており、
Xは、S又はOであり、
Yは、
【0088】
【化16】
であり、
nは、1、2、3又は4であり、
pは、0、1、2、3、4又は5である)
が本明細書において提供される。
【0089】
実施形態では、QがNである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0090】
実施形態では、QがCR2である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0091】
実施形態では、部分
【0092】
【化17】
のR2が、存在する場合、この環の任意の位置において結合し得る、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。好ましくは、nは1であり、こうして、R2置換基が1つ存在する。他の好ましい実施形態では、R2基は、可変要素Yへの結合に対して、環のメタ位において結合している。
【0093】
実施形態では、nが1であり、R2が、C1~3アルコキシ(例えば、-OCH3、-OCH2CH2CH3、-OCH2CH3、-OCH(CH3)2)、C1~4アルキル(例えば、-CH3、-CH2CH3、-CH2CH(CH3)2)、-CH2OH、-OH、-COOH、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3又は-CH2OC(O)CH(NH2)CH(CH3)2、-C(O)NH2又は-C(O)NHCH3である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。好ましくは、R2は、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又はOHである。
【0094】
実施形態では、R2が、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又は-OHである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0095】
実施形態では、R2が-CH3である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0096】
実施形態では、R3が水素である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0097】
実施形態では、
【0098】
【化18】
が、
【0099】
【化19】
である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0100】
実施形態では、
【0101】
【化20】
が、
【0102】
【化21】
であり、R2が、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又は-OHであり、好ましくは-CH3である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0103】
実施形態では、
【0104】
【化22】
が、
【0105】
【化23】
である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0106】
本出願の実施形態によれば、ヒダントイン部分の不斉炭素原子は、無置換であっても(すなわち、R1は水素である)、又は置換されていてもよい。置換されている場合、R1置換基は、好ましくはアルキルである。ヒダントイン部分の不斉炭素原子の置換のための好ましいアルキル基は、C1~4アルキル基、好ましくはC1~2アルキル基、例えばメチル及びエチルを含む。
【0107】
実施形態では、R1が水素である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0108】
実施形態では、R1がC1~4アルキルである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0109】
実施形態では、R1が-CH3又は-CH2CH3である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0110】
ヒダントイン部分の窒素原子の置換も可能である。本出願の実施形態によれば、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素又はアルキルである。好ましいアルキル基には、メチルが含まれる。
【0111】
実施形態では、R4が水素である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0112】
実施形態では、R5が水素である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0113】
実施形態では、R4が水素又は-CH3であり、R5が-CH3である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0114】
実施形態では、R4及びR5がそれぞれ、水素である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0115】
本出願の実施形態によれば、Xは、S又はOである。
【0116】
実施形態では、XがOである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0117】
実施形態では、XがSである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0118】
実施形態では、Yが:
【0119】
【化24】
である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0120】
実施形態では、Yが:
【0121】
【化25】
である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0122】
実施形態では、nが1である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0123】
実施形態では、環Aが、ピリジニルN-オキシドである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0124】
実施形態では、環Aが、O、S及びNから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有する5~6員の単環式ヘテロアリールであり、5~6員の単環式ヘテロアリールが、アルキルにより場合により置換されており、好ましくはメチルにより場合により置換されている、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。好ましくは、環Aは、N、S及びOから選択される1~2個のヘテロ原子を有する、場合により置換されている5員又は6員のヘテロアリールである。特定の実施形態では、環Aは、5員のヘテロアリール環、例えばフラニル、イミダゾリル、チエニル、オキサゾリル又はピラゾリルである。他の特定の実施形態では、環Aは、6員のヘテロアリール、例えばピリジニル又はピリジニルN-オキシドである。ヘテロアリール環の任意の位置異性体(positional or regioisomer)を使用することができ、ヒダントイン部分及びXリンカーは、ヘテロアリール環上の任意の置換可能な炭素原子において、ヘテロアリールに結合され得ることを意味する。例えば、環Aが、1個のヘテロ原子を含有する5員のヘテロアリール環である場合、ヒダントイン部分及びXリンカーは、ヘテロ原子に対して、2,3-置換パターン、2,4-置換パターン、2,5-置換パターン、3,4-置換パターンなどで、5員のヘテロアリール環に結合し得る。別の例示的な例として、環Aが、1個のヘテロ原子を含有する6員のヘテロアリール環である場合、ヒダントイン部分及びXリンカーは、ヘテロ原子に対して、2,3-置換パターン、2,4-置換パターン、2,5-置換パターン、2,6-置換パターン、3,4-置換パターンなどで、6員のヘテロアリール環に結合し得る。
【0125】
一部の実施形態では、環Aが、置換されている、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。環Aは、アリール環又はヘテロアリール環の任意の置換可能な炭素原子上、又はヘテロアリール環の任意の置換可能なヘテロ原子、例えば窒素原子上において置換されていてもよい。例えば、環Aは、例えば、ヘテロアリール環、例えばイミダゾリル又はピラゾリルの窒素原子上のメチル基による置換を含めた、アルキル基、例えばメチルにより置換されていてもよい。
【0126】
実施形態では、環Aが、O、S及びNから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を有する5~6員の単環式ヘテロアリールであり、5~6員の単環式ヘテロアリールが、アルキルにより場合により置換されており、好ましくはメチルにより場合により置換されている、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0127】
実施形態では、環Aが、O、S及びNから選択される1個のヘテロ原子を有する5~6員の単環式ヘテロアリールであり、5~6員の単環式ヘテロアリールが、アルキルにより場合により置換されており、好ましくはメチルにより場合により置換されている、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0128】
実施形態では、環Aがピリジニルである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0129】
実施形態では、環Aがフラニルである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0130】
実施形態では、環Aがチエニルである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0131】
実施形態では、環Aが、メチルにより場合により置換されているピラゾリルである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0132】
実施形態では、環AがN-メチルピラゾリルである、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0133】
実施形態では、環Aが、
【0134】
【化26】
である、式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0135】
一部の実施形態では、環Aがフラニルである式(II)の化合物:
【0136】
【化27】
又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
(式中、可変要素はそれぞれ、式(I)の化合物に関して、上で定義されている通りである)
が提供される。
【0137】
一部の実施形態では、環Aがピリジニルである、式(III)の化合物:
【0138】
【化28】
又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
(式中、可変要素はそれぞれ、式(I)の化合物に関して、上で定義されている通りである)
が提供される。
【0139】
一部の実施形態では、環Aがチエニルである、式(IV)の化合物:
【0140】
【化29】
又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
(式中、可変要素はそれぞれ、式(I)の化合物に関して、上で定義されている通りである)
が提供される。
【0141】
一部の実施形態では、環AがN-メチルピラゾリルである、式(V)の化合物:
【0142】
【化30】
又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
(式中、可変要素はそれぞれ、式(I)の化合物に関して、上で定義されている通りである)
が提供される。
【0143】
ある種の実施形態では、
環Aが、ピリジニルであり、
R1が、水素、-CH3又は-CH2CH3であり、
R2が、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又は-OHであり、
R3、R4及びR5がそれぞれ、水素であり、
Xが、S又はOであり、
Yが、
【0144】
【化31】
であり、
Qが、CH又はNであり、
nが、1である
式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0145】
ある種の実施形態では、
環Aが、フラニルであり、
R1が、水素、-CH3又は-CH2CH3であり、
R2が、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又は-OHであり、
R3、R4及びR5がそれぞれ、水素であり、
Xが、S又はOであり、
Yが、
【0146】
【化32】
であり、
Qが、CH又はNであり、
nが、1である、
式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0147】
ある種の実施形態では、
環Aが、チエニルであり、
R1が、水素、-CH3又は-CH2CH3であり、
R2が、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又は-OHであり、
R3、R4及びR5がそれぞれ、水素であり、
Xが、S又はOであり、
Yが、
【0148】
【化33】
であり、
Qが、CH又はNであり、
nが、1である、
式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0149】
ある種の実施形態では、
環Aが、N-メチルピラゾリルであり、
R1が、水素、-CH3又は-CH2CH3であり、
R2が、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又は-OHであり、
R3、R4及びR5がそれぞれ、水素であり、
Xが、S又はOであり、
Yが、
【0150】
【化34】
であり、
Qが、CH又はNであり、
nが、1である、
式(I)の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0151】
本出願の例示的な化合物は、以下に限定されないが、以下の表1に一覧表示されている化合物、及びその任意の互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩又は溶媒和物を含む。MMP-12のIC50値は、以下の実施例1に記載されているアッセイに準拠して決定した。IC50値は、以下の通り報告する:A=1nM未満、B=1nM~10nM、C=10nM~100nM、D=100nM超。
【0152】
【表1】
【0153】
本出願の化合物は、以下に一般に記載されている任意の数の方法によって調製することができ、より詳細には、本明細書の以下に続く、例示的な例によって例示される。以下に記載されている方法において調製される本明細書において提供される化合物は、鏡像異性体のラセミ混合物を含めた、立体異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー)の混合物の形態で合成することができ、これは、例えば、キラル固定相を使用する液体クロマトグラフィーを含めた、本分野で公知の分割手順を使用して、互いに分離することができる。さらに又は代替的に、本明細書に記載されている化合物の立体化学として純粋な異性体は、適切な出発原料、中間体又は試薬の対応する立体化学として純粋な異性体から誘導することができる。例えば、特定の立体化学が望ましい場合、化合物は、立体特異的方法によって合成することができ、これは、通常、立体化学として純粋な出発原料又は中間化合物を使用する。
【0154】
限定としてではなく、例示として、Yが
【0155】
【化35】
である、式(I)の化合物の実施形態は、一般スキーム1~3のいずれか1つに準拠して調製することができ、Yが、
【0156】
【化36】
である、式(II)の化合物の実施形態は、一般スキーム4~6のいずれか1つに準拠して調製することができる。当業者は、本明細書に記載されている式(I)の様々な化合物を得るため、最終的に望まれる置換基が、所望の生成物を得るために適切な保護により又は保護なしに、反応スキームを通して維持される(すなわち、合成の過程で安定である)よう、出発原料が好適に選択され得ることを認識していよう。代替的に、最終的に望ましい置換基の代わりに、反応スキームを通して維持され(すなわち、合成の過程で安定である)、適宜、所望の置換基により置き換えられてもよい好適な基を使用することが必要となることがあるか、又は望ましいことがある。
【0157】
一般スキーム11
【0158】
【化37】
1Xは、ハロであり、残りの可変要素基は、式(I)の化合物に対して、本明細書で定義されている通りである。
【0159】
有機溶媒中の中間体Aの溶液に(CF3SO2)2Oを加えて、中間体Bを得る。次に、中間体Bの溶液に、4,4,5,5-テトラメチル-2-ビニル-1,3,2-ジオキサボロラン及びパラジウム触媒を加える。反応の完了後、混合物を抽出して、中間体Gを得る。中間体Gの溶液に中間体H及び触媒を加え、中間体Iを得る。次に、中間体Iを水性アルコール中、(NH4)2CO3及びシアン化カリウム(KCN)と反応させて、本明細書に記載されている式(I)の化合物の実施形態を得る。
【0160】
一般スキーム21
【0161】
【化38】
1Xは、ハロであり、残りの可変要素基は、式(I)の化合物に対して、本明細書で定義されている通りである。
【0162】
中間体Kの有機溶媒溶液に、中間体J及びK2CO3を加え、この混合物を撹拌する。この反応混合物を抽出して、中間体Lを得る。中間体Lの溶液に中間体H及びパラジウム触媒を加え、この反応混合物を撹拌し、次いで抽出して、中間体Iを得る。次に、一般スキーム2に関して上記の通り、中間体Iを水性アルコール中、(NH4)2CO3及びシアン化カリウム(KCN)と反応させて、本明細書に記載されている式(I)の化合物の実施形態を得る。
【0163】
一般スキーム31
【0164】
【化39】
1Xは、ハロであり、残りの可変要素基は、式(I)の化合物に対して、本明細書で定義されている通りである。
【0165】
中間体Oの有機溶媒溶液に、中間体H、トリフェニルホスフィン(PPh3)及び酢酸パラジウム(II)を加える。この混合物を撹拌し、次に、抽出して中間体Pを得る。中間体Pの有機溶媒溶液に、中間体J及び塩基(例えば、K2CO3)を加える。この混合物を抽出して、中間体Qを得る。次に、中間体Qを水性アルコール中、(NH4)2CO3及びシアン化カリウム(KCN)と反応させて、本明細書に記載されている式(I)の化合物の実施形態を得る。
【0166】
一般スキーム41
【0167】
【化40】
1可変要素基は、式(I)の化合物に対して、本明細書で定義されている通りである。
【0168】
中間体Aの有機溶媒溶液に(CF3SO2)2Oを加えて中間体Bを得る。次に、中間体Bの溶液にエチニルトリメチルシラン及びパラジウム触媒を加える。この反応の完了後、混合物を抽出して、中間体Dを得る。中間体Dの溶液に、中間体T及び塩基(例えば、K2CO3)を加え、中間体Fを得る。次に、中間体Fを水性アルコール中、(NH4)2CO3及びシアン化カリウム(KCN)と反応させて、本明細書に記載されている式(I)の化合物の実施形態を得る。
【0169】
一般スキーム51
【0170】
【化41】
1Xは、ハロであり、残りの可変要素基は、式(I)の化合物に対して、本明細書で定義されている通りである。
【0171】
中間体Kの有機溶媒溶液に、中間体J及びK2CO3を加え、この混合物を撹拌する。この反応混合物を抽出して、中間体Lを得る。中間体Lの溶液に中間体N及びパラジウム触媒を加え、この反応混合物を撹拌し、次に、抽出して中間体Mを得る。次に、中間体Mを水性アルコール中、(NH4)2CO3及びシアン化カリウム(KCN)と反応させて、本明細書に記載されている式(I)の化合物の実施形態を得る。
【0172】
一般スキーム61
【0173】
【化42】
1可変要素基は、式(I)の化合物に対して、本明細書で定義されている通りである。
【0174】
中間体Oの有機溶媒溶液に、中間体N、トリフェニルホスフィン(PPh3)及びパラジウム触媒を加える。この混合物を撹拌し、次に、抽出して中間体Rを得る。中間体Rの有機溶媒溶液に中間体J及び塩基(例えば、K2CO3)を加える。この混合物を抽出して、中間体Sを得る。次に、中間体Sを水性アルコール中、(NH4)2CO3及びシアン化カリウム(KCN)と反応させて、本明細書に記載されている式(I)の化合物の実施形態を得る。
【0175】
本出願の化合物のヒダントイン部分の窒素原子は、上記の一般スキームのいずれか1つに従い調製した化合物を水素化ナトリウム及びヨウ化アルキル(例えば、CH3I)と反応させることによって、アルキル化することができる。XがS(O)又はSO2である化合物は、上記の一般スキームのいずれか1つに従い調製した化合物をm-CPBAと反応させることによって調製することができる。
【0176】
本明細書において記載されている化合物の薬学的に許容される塩は、慣用的な化学方法により、酸性部分又は塩基性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、水中、若しくは有機溶媒中、又は水と有機溶媒との混合物中、遊離酸又は遊離塩基の形態のこれらの化合物を、化学量論量の適切な酸又は塩基と反応させることにより調製することができる。好適な有機溶媒の例には、以下に限定されないが、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール及びアセトニトリルが含まれる。
【0177】
組成物
本出願の別の態様は、本明細書に記載されている化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む医薬組成物に関する。
【0178】
本出願の組成物はまた、薬学的に許容される担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、非毒性であり、活性成分の有効性を妨害するべきではない。薬学的に許容される担体は、1種以上の賦形剤、例えば、結合剤、崩壊剤、膨潤剤、懸濁化剤、乳化剤、湿潤剤、滑沢剤、香味剤、甘味剤、保存剤、染料、可溶化剤及びコーティング剤を含むことができる。担体又は他の物質の正確な性質は、投与経路、例えば、筋肉内、皮内、皮下、経口、静脈内、経皮、経粘膜(例えば、消化管)、鼻内又は腹腔内経路に依存し得る。液状注射調製物、例えば、懸濁液剤及び溶液剤の場合、好適な担体及び添加物には、水、グリコール、油、アルコール、保存剤、着色剤などが含まれる。固形経口調製物、例えば、散剤、カプセル剤、カプレット剤、ゲルキャップ剤及び錠剤の場合、好適な担体及び添加物には、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが含まれる。点鼻噴霧剤/吸入混合物の場合、水溶液/懸濁液は、好適な担体及び添加物として、水、グリコール、油、エモリエント剤、安定化剤、湿潤剤、保存剤、芳香剤、風味剤などを含むことができる。
【0179】
本出願の組成物は、以下に限定されないが、経口(腸)投与及び非経口注射を含めた、投与を容易にし、有効性を改善するために、対象に投与するのに好適な任意の物質中で製剤化することができる。非経口注射には、静脈内注射又は注入、皮下注射、皮内注射及び筋肉内注射が含まれる。本出願の組成物はまた、経粘膜、眼、直腸、長期作用型インプラント、舌の下への舌下投与、門脈循環を迂回する口腔粘膜から、吸入又は鼻内を含めた、他の投与経路向けに製剤化され得る。
【0180】
特定の実施形態では、組成物は、経口投与向けに製剤化される。
【0181】
さらに別の態様では、医薬組成物を調製する方法であって、本出願の化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物と少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを一緒にするステップを含む方法が提供される。医薬組成物は、本開示を鑑みると、当分野において公知の任意の方法によって調製することができ、当業者は、医薬組成物を調製するために使用されるこのような技法に精通していよう。例えば、本出願による医薬組成物は、以下に限定されないが、慣用的な混合法、溶解法、造粒法、乳化法、カプセル封入法、捕捉法及び凍結乾燥法を含めた、慣用的な医薬品のコンパウンディング技法に準拠して、本出願の化合物と1種以上の薬学的に許容される担体とを混合することによって調製することができる。
【0182】
使用方法
同様に、本明細書に記載されている化合物及び医薬組成物を使用する、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を阻害する方法、及びMMPにより媒介される疾患を処置する方法が本明細書において提供される。
【0183】
マトリキシンとしても知られている、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、器官形成、成長及び正常組織の代謝回転の間、最も外側の細胞外マトリックスタンパク質の分解を連携して担う酵素のグループである。MMPは、カルシウム依存性亜鉛含有エンドペプチダーゼであり、メトジンシンスーパーファミリーとして知られているプロテアーゼのより大きなファミリーに属する。MMPは、細胞外マトリックスタンパク質を分解することができるが、いくつかの生物活性分子をやはり処理することができ、例えば、細胞表面受容体の切断、アポトーシスリガンドの放出及びケモカイン/サイトカイン不活性化に関与することが知られている。MMPはまた、細胞挙動、例えば、細胞増殖、移動(接着/分散)、分化、血管新生、アポトーシス及び宿主防御において主な役割を果たすとやはり考えられている。MMPは、メタロプロテイナーゼ(TIMP)の特定の内因性組織阻害剤によって阻害され、これは、4つのプロテアーゼ阻害剤:TIMP-1、TIMP-2、TIMP-3及びTIMP-4のファミリーを含む。MMPの例には、以下に限定されないが、MMP-1(間質コラゲナーゼ)、MMP-2(ゼラチナーゼ-A)、MMP-3(ストロメリシン1)、MMP-7(マトリリシン)、MMP-8(好中球コラゲナーゼ)、MMP-9(ゼラチナーゼ-B)、MMP-10(ストロメリシン2)、MMP-11(ストロメリシン3)、MMP-12(マクロファージエラスターゼ)、MMP-13(コラゲナーゼ3)、MMP-14(MT1-MMP)などが含まれる。
【0184】
好ましい実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、マクロファージエラスターゼ(MMP-12)を阻害すること、及び/又はMMP-12により媒介される疾患を処置することが可能である。マクロファージメタロエラスターゼ(MME)又はマクロファージエラスターゼ(ME)としても知られているMMP-12は、ヒトにおける、MMP12遺伝子によってコードされる。他の実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、MMP-12を選択的に阻害することができる。用語「選択的な」、「選択性」及び「選択的に」は、特定のMMPへの結合又はその活性の阻害に言及して使用される場合、ある化合物が他のMMPに結合する、又はその活性を阻害するよりも高い程度に、前記化合物が特定のMMPに結合する、又はその活性を阻害することを意味する。例えば、MMP-12に対する選択性を有する化合物は、他のMMP、例えば、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-13、MMP-14などよりも高い程度に、MMP-12の活性を阻害する。
【0185】
本出願の実施形態によれば、MMP-12に対して選択性がある化合物は、1つ以上の他のMMPよりも、少なくとも約10倍、100倍又は1000倍高く、MMP-12の活性を阻害し、好ましくは、少なくとも1つの他のMMP、例えば、MMP-1又はMMP-7よりも少なくとも約1000倍高く、MMP-12の活性を阻害する。
【0186】
同様に、MMP-12によって媒介される疾患を処置する方法が本明細書において提供される。本出願の実施形態によれば、MMP-12によって媒介される疾患を処置する方法は、対象に、治療有効量の本明細書に記載されている化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、或いは本明細書に記載されている医薬組成物を投与するステップを含む。
【0187】
本明細書で使用する場合、用語「処置する」、「処置すること」及び「処置」はすべて、対象において必ずしも認識されないが、対象において認識可能な、MMP-12によって媒介される疾患に関連する少なくとも1つの測定可能な物理パラメータの改善又は反転を指すことが意図されている。用語「処置する」、「処置すること」及び「処置」はまた、MMP-12によって媒介される疾患の後退を誘発すること、この進行を予防すること、又はその進行を少なくとも減速させることを指すことができる。特定の実施形態では、「処置する」、「処置すること」及び「処置」は、MMP-12によって媒介される疾患に関連する1つ以上の症状の発達若しくは発症の緩和、予防、又はこの期間の短縮を指す。特定の実施形態では、「処置する」、「処置すること」及び「処置」は、MMP-12によって媒介される疾患の再発の予防を指す。特定の実施形態では、「処置する」、「処置すること」及び「処置」は、MMP-12によって媒介される疾患を有する対象の生存の増大を指す。特定の実施形態では、「処置する」、「処置すること」及び「処置」は、対象における、MMP-12によって媒介される疾患の排除を指す。
【0188】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」は、研究者、獣医、医師又は他の条件によって求められている、組織系又は対象における生物学的応答又は医療的応答を誘発する組成物又は化合物の量を意味し、これは、処置されている疾患又は障害の症状の緩和を含むことができる。治療有効量は、様々な因子、例えば、対象の身体的状態、年齢、重量、健康など、及び処置されるべき特定の疾患に応じて、様々となり得る。治療有効量は、本開示を鑑みると、当業者によって容易に決定することができる。
【0189】
本出願の特定の実施形態では、治療有効量は、MMP-12を阻害する、又はMMP-12によって媒介される疾患を処置するのに十分な、本明細書に記載されている組成物又は化合物の量を指す。本明細書に記載されている方法により処置され得るMMP-12により媒介される疾患には、以下に限定されないが、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、急性肺損傷、特発性肺線維症(IPF)、サルコイドーシス、全身性硬化症、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、関節炎、がん、心臓疾患、炎症性腸疾患(IBD)、急性腎臓損傷(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、アルポート症候群及び腎炎が含まれる。
【0190】
実施形態
実施形態1は、式(I)の化合物:
【0191】
【化43】
又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
(式中、
環Aは、場合により置換されているヘテロアリールであり、
Qは、CR2又はNであり、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2はそれぞれ、独立して、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシル、ハロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、アミド、アルキルアミノ、アミノアルキル、シアノ、ヒドロキシアルキル、-(CH2)pC(O)OR6又は-(CH2)pOC(O)R6であり、
R3は、水素、ハロ又はアルキルであり、
R4及びR5はそれぞれ、独立して、水素又はアルキルであり、
R6はそれぞれ、独立して、水素又はアルキルであり、アルキルは、無置換であるか、又はアミノ、ヒドロキシル、ハロ及びアルコキシから独立して選択される1つ以上の基により置換されており、
Xは、S又はOであり、
Yは、
【0192】
【化44】
であり、
nは、1、2、3又は4であり、
pは、0、1、2、3、4又は5である)
である。
【0193】
実施形態2は、環Aが、O、S及びNから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有する5~6員の単環式ヘテロアリールであり、5~6員の単環式ヘテロアリールが、アルキルにより場合により置換されている、実施形態1の化合物である。
【0194】
実施形態3は、環Aが、N、S及びOから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を有する5員又は6員の単環式ヘテロアリールであり、5~6員の単環式ヘテロアリールが、アルキルにより場合により置換されている、実施形態1又は実施形態2の化合物である。
【0195】
実施形態4は、5~6員の単環式ヘテロアリールが、-CH3により場合により置換されている、実施形態2又は3の化合物である。
【0196】
実施形態5は、環Aがフラニルである、実施形態1~4のいずれか1つの化合物である。
【0197】
実施形態6は、環Aがピリジニルである、実施形態1~4のいずれか1つの化合物である。
【0198】
実施形態7は、環Aがチエニルである、実施形態1~4のいずれか1つの化合物である。
【0199】
実施形態8は、環AがN-メチルピラゾリルである、実施形態1~4のいずれか1つの化合物である。
【0200】
実施形態9は、環Aが、
【0201】
【化45】
である、実施形態1~4のいずれか1つの化合物である。
【0202】
実施形態10は、
式(II)の化合物:
【0203】
【化46】
又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
(式中、可変要素はそれぞれ、式(I)の化合物に関して、上で定義されている通りである)
である、実施形態5の化合物である。
【0204】
実施形態11は、
式(III)の化合物:
【0205】
【化47】
又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
(式中、可変要素はそれぞれ、式(I)の化合物において定義されている通りである)
である、実施形態6の化合物である。
【0206】
実施形態12は、
式(IV)の化合物:
【0207】
【化48】
又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
(式中、可変要素はそれぞれ、式(I)の化合物において定義されている通りである)
である、実施形態7の化合物である。
【0208】
実施形態13は、
式(V)の化合物:
【0209】
【化49】
又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
(式中、可変要素はそれぞれ、式(I)の化合物に関して、上で定義されている通りである)
である、実施形態8の化合物である。
【0210】
実施形態14は、R1が水素である、実施形態1~13のいずれか1つの化合物である。
【0211】
実施形態15は、R1がC1~4アルキルである、実施形態1~13のいずれか1つの化合物である。
【0212】
実施形態16は、R1が-CH3又は-CH2CH3である、実施形態15の化合物である。
【0213】
実施形態17は、R3が水素である、実施形態1~16のいずれか1つの化合物である。
【0214】
実施形態18は、R4が水素である、実施形態1~17のいずれか1つの化合物である。
【0215】
実施形態19は、R5が水素である、実施形態1~18のいずれか1つの化合物である。
【0216】
実施形態20は、XがSである、実施形態1~19のいずれか1つの化合物である。
【0217】
実施形態21は、XがOである、実施形態1~19のいずれか1つの化合物である。
【0218】
実施形態22は、QがNである、実施形態1~21のいずれか1つの化合物である。
【0219】
実施形態23は、
【0220】
【化50】
【0221】
【化51】
である、実施形態1~22のいずれか1つの化合物である。
【0222】
実施形態24は、QがCR2である、実施形態1~21のいずれか1つの化合物である。
【0223】
実施形態25は、R2が、C1~3アルコキシ(例えば、-OCH3、-OCH2CH2CH3、-OCH2CH3、-OCH(CH3)2)、C1~4アルキル(例えば、-CH3、-CH2CH3、-CH2CH(CH3)2)、-CH2OH、-OH、-COOH、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3又は-CH2OC(O)CH(NH2)CH(CH3)2、-C(O)NH2又は-C(O)NHCH3である、実施形態1~24のいずれか1つの化合物である。
【0224】
実施形態26は、R2が、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又はOHである、実施形態25の化合物である。
【0225】
実施形態27は、R2が-CH3である、実施形態26の化合物である。
【0226】
実施形態28は、R2が-CH3である、実施形態1~27のいずれか1つの化合物である。
【0227】
実施形態29は、
【0228】
【化52】
【0229】
【化53】
である、実施形態1~21のいずれか1つの化合物である。
【0230】
実施形態30は、
Yが
【0231】
【化54】
である、実施形態1~29のいずれか1つの化合物である。
【0232】
実施形態31は、
Yが
【0233】
【化55】
である、実施形態1~29のいずれか1つの化合物である。
【0234】
実施形態32は、
環Aが、ピリジニルであり、
R1が、水素、-CH3又は-CH2CH3であり、
R2が、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又は-OHであり、
R3、R4及びR5がそれぞれ、水素であり、
Xが、S又はOであり、
Yが、
【0235】
【化56】
であり、
Qが、CH又はNであり、
nが、1である、
実施形態1の化合物である。
【0236】
実施形態33は、
環Aが、フラニルであり、
R1が、水素、-CH3又は-CH2CH3であり、
R2が、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又は-OHであり、
R3、R4及びR5がそれぞれ、水素であり、
Xが、S又はOであり、
Yが、
【0237】
【化57】
であり、
Qが、CH又はNであり、
nが、1である、
実施形態1の化合物である。
【0238】
実施形態34は、
環Aが、チエニルであり、
R1が、水素、-CH3又は-CH2CH3であり、
R2が、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又は-OHであり、
R3、R4及びR5がそれぞれ、水素であり、
Xが、S又はOであり、
Yが、
【0239】
【化58】
であり、
Qが、CH又はNであり、
nが、1である、
実施形態1の化合物である。
【0240】
実施形態35は、
環Aが、N-メチルピラゾリルであり、
R1が、水素、-CH3又は-CH2CH3であり、
R2が、-CH3、-C(O)NH2、-CH2OH、-OCH3又は-OHであり、
R3、R4及びR5がそれぞれ、水素であり、
Xは、S又はOであり、
Yが、
【0241】
【化59】
であり、
Qが、CH又はNであり、
nが、1である、
実施形態1の化合物である。
【0242】
実施形態36は、
【0243】
【化60】
からなる群から選択される化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは水和物である。
【0244】
実施形態37は、実施形態36の化合物、又はその薬学的に許容される塩である。
【0245】
実施形態38は、実施形態1~37のいずれか1つに記載の化合物、及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0246】
実施形態39は、それを必要とする対象におけるマクロファージエラスターゼ(MMP-12)を阻害する方法であって、対象に実施形態38の医薬組成物を投与するステップを含む方法である。
【0247】
実施形態40は、それを必要とする対象におけるマクロファージエラスターゼ(MMP-12)によって媒介される疾患を処置する方法であって、対象に実施形態38の医薬組成物を投与するステップを含む方法である。
【0248】
実施形態41は、疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、急性肺損傷、特発性肺線維症(IPF)、サルコイドーシス、全身性硬化症、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、関節炎、がん、心臓疾患、炎症性腸疾患(IBD)、急性腎臓損傷(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、アルポート症候群及び腎炎からなる群から選択される、実施形態40の方法である。
【0249】
実施形態42は、マクロファージエラスターゼ(MMP-12)を阻害する際に使用するための、実施形態1~37のいずれか1つの化合物、又は実施形態38の医薬組成物である。
【0250】
実施形態43は、マクロファージエラスターゼ(MMP-12)によって媒介される疾患の処置に使用するための、実施形態1~37のいずれか1つの化合物、又は実施形態38の医薬組成物である。
【0251】
実施形態44は、疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、急性肺損傷、特発性肺線維症(IPF)、サルコイドーシス、全身性硬化症、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、関節炎、がん、心臓疾患、炎症性腸疾患(IBD)、急性腎臓損傷(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、アルポート症候群及び腎炎からなる群から選択される、実施形態43の使用のための化合物又は組成物である。
【0252】
実施形態45は、マクロファージエラスターゼ(MMP-12)を阻害するための医薬の製造における、実施形態1~37のいずれか1つの化合物、又は実施形態38の医薬組成物の使用である。
【0253】
実施形態46は、マクロファージエラスターゼ(MMP-12)によって媒介される疾患を処置するための医薬の製造における、実施形態1~37のいずれか1つの化合物、又は実施形態38の医薬組成物の使用である。
【0254】
実施形態47は、疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、急性肺損傷、特発性肺線維症(IPF)、サルコイドーシス、全身性硬化症、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、関節炎、がん、心臓疾患、炎症性腸疾患(IBD)、急性腎臓損傷(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、アルポート症候群及び腎炎からなる群から選択される、実施形態46の使用である。
【0255】
実施形態48は、化合物又は薬学的に許容されるその塩と少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを一緒にするステップを含む、実施形態38の医薬組成物を調製する方法である。
【0256】
[実施例]
本出願の以下の実施例は、本出願の性質をさらに例示することである。以下の実施例は、本出願を限定するものではなく、本出願範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定されるべきであることを理解すべきである。
【0257】
合成の方法
特に示さない限り、化学試薬及び合成条件に関する略称は、以下の通り、当分野で公知のその通常の意味を有する:
「LDA」とは、リチウムジイソプロピルアミドを指す。
「EA」とは、酢酸エチルを指す。
「PE」とは、石油エーテルを指す。
「r.t.」及び「rt」とは、室温を指す。
「THF」は、テトラヒドロフランを指す。
「DEAD」とは、ジエチルアゾジカルボキシレートを指す。
「TBAB」とは、臭化テトラブチルアンモニウムを指す。
「DCM」とは、ジクロロメタンを指す。
「HOBT」とは、ヒドロキシベンゾトリアゾールを指す。
「LAH」とは、水素化アルミニウムリチウムを指す。
「Tf2O」とは、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を指す。
「TLC」とは、薄層クロマトグラフィーを指す。
「分取TLC」とは、分取薄層クロマトグラフィーを指す。
「TMS-I」とは、ヨウ化トリメチルシリルを指す。
「Hex」とは、ヘキサンを指す。
「DMF」とは、ジメチルホルムアミドを指す。
「h」とは、時間を指す。
「HG-II」及び「Hoveyda-Grubbs II」とは、(1,3-ビス-(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン)ジクロロ(o-イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムを指す。
「EDCI」とは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを指す。
「DMAP」とは、4-ジメチルアミノピリジンを指す。
「分取HPLC」とは、分取高速液体クロマトグラフィーを指す。
「DHP」とは、ジヒドロピランを指す。
「DPPF」とは、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを指す。
「DIEA」とは、ジイソプロピルエチルアミンを指す。
【0258】
[実施例1]
化合物AC-1の調製
【0259】
【化61】
【0260】
AI-1a(13.9g、63.11mmol、1.0当量)のDCM(500mL)溶液に、窒素雰囲気下、-78℃でTEA(20.63g、189.34mmol、3当量)及び(CF3SO2)2O(19.59g、69.42mmol、1.1当量)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、-78℃で2時間、撹拌した。次に、この混合物を0℃まで温めて、飽和Na2CO3(200mL)溶液でクエンチした。有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-1b(9.7g、44%)を得た。
【0261】
AI-1b(5.48g、15.57mmol、1.0当量)及びエチニルトリメチルシラン(1.84g、18.68mmol、1.1当量)のDMF(150mL)溶液に、窒素雰囲気下、TEA(4.72g、46.71mmol、3当量)、Pd(dppf)2Cl2(1.4g、2mmol、0.2当量)及びCuI(0.29g、1.56mmol、0.1当量)を加えた、この混合物を、窒素雰囲気下、80℃で2時間、撹拌した。次に、この混合物を飽和NH4Cl(300mL)溶液でクエンチし、酢酸エチル(100mL*3)により抽出した。合わせた有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-1c(1.6g、34%)を得た。
【0262】
メタノール(100mL)中のAI-1c(1.6g、23.3mmol、1.0当量)の混合物に、K2CO3(3.22g、23.3mmol、3当量)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、室温で2時間、撹拌した。次に、この混合物をH2O(100mL)でクエンチし、酢酸エチル(50mL*3)により抽出した。合わせた有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-1d(1.37g、99%)を得た。
【0263】
AI-1d(1.17g、5.13mmol、1.0当量)及び4-ブロモ-2-メチルピリジン(0.88g、5.13mmol、1.0当量)のDMF(30mL)溶液に、窒素雰囲気下、TEA(1.55g、15.3mmol、3当量)、Pd(dppf)2Cl2(0.38g、0.51mmol、0.1当量)及びCuI(97mg、0.51mmol、0.1当量)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、80℃で16時間、撹拌した。次に、この混合物を飽和NH4Cl(100mL)溶液でクエンチし、酢酸エチル(30mL*3)により抽出した。合わせた有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-1e(0.8g、49%)を得た。
【0264】
AI-1e(800mg、2.5mmol、1.0当量)のMeOH(20mL)溶液に、(NH4)2CO3(963mg、10.03mmol、4.0当量)及びKCN(326mg、5.02mmol、2.0当量)を加えた。この混合物を、45℃で16時間、撹拌した。この反応物に、3M HClを加えて、pH=1~2に調節し、室温で1時間、撹拌した。次に、NaHCO3の飽和水溶液を加えてpH=7~8に調節し、この反応物を酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水して減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AC-1(300mg、58%)を黄色固体として得た。
【0265】
[実施例2]
化合物AC-2の調製
【0266】
【化62】
【0267】
AI-1b(2.5g、7.12mmol、1.0当量)のジオキサン/H2O(5/1、60mL)溶液に、窒素雰囲気下、4,4,5,5-テトラメチル-2-ビニル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.2g、7.83mmol、1.1当量)、Pd(dppf)2Cl2(0.52g、0.71mmol、0.1当量)及びCsF(2.8g、15.45mmol、2当量)を逐次、加えた。この混合物を、85℃で16時間、撹拌した。次に、この反応物を室温まで冷却し、H2O(50mL)でクエンチして酢酸エチル(30mL*3)により抽出した。合わせた有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-2a(1.3g、79%)を得た。
【0268】
AI-2a(1.3g、5.65mmol、1.0当量)のDCM(50mL)溶液に、2-メチル-4-ビニルピリジン(0.74g、6.21mmol、1.1当量)及びHG-II(354g、0.57mmol、0.1当量)を加えた。この混合物を窒素雰囲気下、50℃で14時間、撹拌した。次に、この混合物をDCM(100mL)により希釈してブラインで洗浄し、無水Na2SO4により脱水して減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-2b(0.3g、16%)を得た。
【0269】
AI-2b(330mg、1.0mmol、1.0当量)のMeOH(10mL)溶液に、(NH4)2CO3(393mg、4mmol、4.0当量)及びKCN(133mg、2.0mmol、2.0当量)を加えた。この混合物を、45℃で16時間、撹拌した。この反応物に3M HClを加え、pH=1~2に調節し、室温で1時間、撹拌し、次に、NaHCO3の飽和水溶液を加え、pH=7~8に調節して、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水して減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AC-2(116mg、29%)を黄色固体として得た。
【0270】
[実施例3]
化合物AC-3の調製
【0271】
【化63】
【0272】
3-ブロモフラン-2-カルボアルデヒド(5g、30.9mmol、1.0当量)及びイソアミレン(9mL、77.2mmol、2.5当量)のtert-ブタノール(50mL)溶液に、H2O(70mL)中のNaClO2(8.1g、89.6mmol、3.0当量)及びNaH2PO4・2H2O(10.3g、67.9mmol、2.2当量)の溶液をゆっくりと加えた。この混合物を室温で16時間、撹拌した。この混合物は減圧下で濃縮し、H2Oにより希釈した。次に、この混合物に1M HClを加えて、pH=1に調節し、ろ過して化合物FI-2.1(6.2g、100%)を得た。
【0273】
化合物FI-2.1(5g、26.46mmol、1.0当量)及びTEA(8g、79.37mmol、3.0当量)の混合物に、N,O-ジメチルヒドロキシルアミン(5.16g、52.91mmol、2.0当量)、HOBT(3.93g、29.1mmol、1.1当量)及びEDCI(6.06g、31.75mmol、1.2当量)を加えた。この混合物を5時間、撹拌した。次に、この混合物を水により希釈し、酢酸エチルにより抽出した。有機層を無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、化合物FI-2.2(4.3g、67%)を得た。
【0274】
乾燥THF(10mL)中の化合物FI-2.2(1g、4.29mmol、1.0当量)の混合物に、窒素雰囲気下、0℃でEtMgBr(THF中の1.0mol/L、8.6mL、8.58mmol、2.0当量)を滴下して加えた。この混合物を、0℃で1時間、撹拌した。この反応物を飽和水性NH4Clによりクエンチし、酢酸エチル(3×50mL)により抽出した。合わせた有機層をブライン及び水により洗浄し、Na2SO4で脱水し、真空下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによって精製し、化合物FI-2a2(0.6g、69%)を得た。
【0275】
THF(10mL)中のFI-2a2(600mg、2.97mmol、1.0当量)及び4-メルカプトフェノール(450mg、2.97mmol、1.0当量)からなる混合物に、0℃でNaH(143mg、3.56mmol、1.2当量)を加えた。この混合物を室温まで温め、窒素雰囲気下、16時間、撹拌した。次に、この混合物を半分量の溶媒になるまで濃縮し、次に、2N HClを加えて、pH=6に調節した。この反応物をろ過して、ろ液を濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによって精製し、AI-3a(750mg、99%)を得た。
【0276】
AI-3a(3.7g、14.9mmol、1.0当量)のDCM(150mL)溶液に、窒素雰囲気下、-78℃でTEA(4.52g、44.75mmol、3当量)及び(CF3SO2)2O(6.3g、22.37mmol、1.5当量)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、-78℃で2時間、撹拌した。次に、この混合物を0℃まで温めて、飽和Na2CO3(200mL)溶液でクエンチした。有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-3b(4.05g、71%)を得た。
【0277】
AI-3b(4.05g、10.65mmol、1.0当量)のジオキサン/H2O(5/1、100mL)溶液に、窒素雰囲気下、4,4,5,5-テトラメチル-2-ビニル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.8g、11.72mmol、1.1当量)、Pd(dppf)2Cl2(0.78g、1.06mmol、0.1当量)及びCsF(3.24g、21.3mmol、2当量)を逐次、加えた。この混合物を、85℃で16時間、撹拌した。次に、この反応物を室温まで冷却し、H2O(200mL)でクエンチして酢酸エチル(60mL*3)により抽出した。合わせた有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-3c(2.37g、86%)を得た。
【0278】
AI-3c(2.37g、9.18mmol、1.0当量)のDCM(100mL)溶液に、2-メチル-4-ビニルピリジン(1.2g、10.1mmol、1.0当量)及びHG-II(575mg、0.9mmol、0.1当量)を加えた。窒素雰囲気下、この混合物を50℃で14時間、撹拌した。次に、この混合物をDCM(100mL)により希釈してブラインで洗浄し、無水Na2SO4により脱水して減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-3d(0.55g、17%)を得た。
【0279】
AI-3d(550mg、1.57mmol、1.0当量)のMeOH/H2O(12mL、5/1)溶液に、(NH4)2CO3(605mg、6.3mmol、4.0当量)及びKCN(204mg、3.15mmol、2.0当量)を加えた。この混合物を、45℃で16時間、撹拌した。この反応物に3M HClを加えて、pH=1~2に調節し、室温で1時間、撹拌した。次に、NaHCO3の飽和水溶液を加えてpH=7~8に調節し、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水して減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AC-3(90mg、13%)を黄色固体として得た。
【0280】
[実施例4]
化合物AC-4の調製:
【0281】
【化64】
【0282】
4-アミノチオフェノール(10g、79.87mmol、1.0当量)のH2O(80mL)溶液に、0℃でHCl(80mL)、H2SO4(30mL)及びNaNO2(6.6g、95.84mmol、1.2当量)を逐次、加えた。この混合物を0℃で0.5時間、撹拌した。次に、ウレア(0.46g、7.99mmol、0.1当量)を加えた。15分間後、H2O(1.5L)中のKI(26.5g、159.74mmol、2.0当量)の溶液を0℃で滴下して加えた。この混合物を、0℃で5時間、撹拌した。次に、この混合物を酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄して無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-4a(7.3g、39%)を得た。
【0283】
MeOH(40mL)中のAI-4a(1.8g、3.83mmol、1.0当量)の混合物を、室温で2時間、撹拌した。この反応混合物を減圧下で濃縮した。この残留物を酢酸エチル(50mL)により希釈し、水及びブラインで洗浄した。有機層を無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-4b(0.9g、50%)を得た。
【0284】
AI-4b(230mg、1mmol、1.0当量)のDMF(10mL)溶液に、4-クロロニコチンアルデヒド(140mg、1mmol、1.0当量)及びK2CO3(276mg、2mmol、2.0当量)を加えた。この混合物を室温で16時間、撹拌した。次に、水(30mL)を加え、酢酸エチル(20mL×3)により抽出した。有機層をブラインにより洗浄して無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-4c(0.3g、88%)を得た。
【0285】
AI-4c(1g、2.9mmol、1.0当量)及び4-エチニル-2-メチルピリジン(0.41g、3.5mmol、1.2当量)のTEA(1.19g、0.29mmol、0.1当量)溶液に、窒素雰囲気下、Pd(Ph3P)2Cl2(0.21g、0.29mmol、0.1当量)及びCuI(0.06g、0.29mmol、0.1当量)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、室温で16時間、撹拌した。次に、この混合物を飽和NH4Cl溶液でクエンチした。この混合物を酢酸エチルにより抽出した。合わせた有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-4d(0.8g、83%)を得た。
【0286】
AI-4d(0.2g、0.61mmol、1.0当量)のメタノール(10mL)溶液に、Pd/C(20mg)を加えた。この混合物を、水素雰囲気下(20psi)、室温で16時間、撹拌した。ろ過後、ろ液を濃縮すると、さらに精製することなく、AI-4e(170mg、84%)を得た。
【0287】
化合物AI-4e(130mg、0.39mmol、1.0当量)のMeOH(3mL)溶液に、(NH4)2CO3(151mg、1.57mmol、4.0当量)及びKCN(50mg、0.78mmol、2.0当量)を加えた。この混合物を45℃で16時間、撹拌した。この反応物に3M HClを加えてpH=1~2に調節し、室温で1時間、撹拌し、次にNaHCO3の飽和水溶液を加え、pH=7~8に調節して、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水して減圧下で濃縮した。残留物を分取TLCにより精製し、AC-4(64mg、41%)を白色固体として得た。
【0288】
[実施例5]
化合物AC-5の調製
【0289】
【化65】
【0290】
化合物AI-4c(1.1g、3.22mmol、1.0当量)のトルエン(70mL)溶液に、窒素雰囲気下、2-メチル-4-ビニルピリジン(0.77g、6.45mmol、2.0当量)、PPh3(84mg、0.32mmol、0.1当量)、TEA(0.98g、9.67mmol、3当量)及びPd(OAc)2(84mg、0.32mmol、0.1当量)を逐次、加えた。この混合物を100℃で16時間、撹拌した。次に、この反応物を室温まで冷却し、飽和NH4Cl溶液でクエンチした。この混合物を酢酸エチルにより抽出した。合わせた有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-5a(0.24g、23%)を得た。
【0291】
AI-5a(220mg、0.66mmol、1.0当量)のMeOH(6mL)溶液に、(NH4)2CO3(254mg、2.65mmol、4.0当量)及びKCN(86mg、1.32mmol、2.0当量)を加えた。この混合物を45℃で16時間、撹拌した。この反応物に3M HClを加え、pH=1~2に調節し、室温で1時間、撹拌し、次に、NaHCO3の飽和水溶液を加え、pH=7~8に調節して、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄して無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物を分取TLCにより精製し、AC-5(60mg、23%)を白色固体として得た。
【0292】
[実施例6]
化合物AC-6の調製
【0293】
【化66】
【0294】
4-ヨードフェノール(0.5g、2.27mmol、1.0当量)のDMF(70mL)溶液に、窒素雰囲気下、2-メチル-4-ビニルピリジン(0.3g、2.5mmol、1.1当量)、PPh3(60mg、0.23mmol、0.1当量)、TEA(0.74g、6.81mmol、3当量)及びPd(OAc)2(51mg、0.23mmol、0.1当量)を逐次、加えた。この混合物を、110℃で2時間、撹拌した。次に、この反応物を室温まで冷却し、飽和NH4Cl溶液でクエンチした。この混合物を酢酸エチルにより抽出した。合わせた有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、化合物AI-6a(0.31g、64%)を得た。
【0295】
化合物AI-6a(0.94g、4.45mmol、1.0当量)のDMF(50mL)溶液に、4-クロロニコチンアルデヒド(0.63g、3.82mmol、1.0当量)及びK2CO3(1.22g、8.9mmol、2当量)を加えた。この混合物を80℃で4時間、撹拌した。次に、この混合物を水(100mL)により希釈して、酢酸エチル(50mL*3)により抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水して減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、化合物AI-6b(0.7g、49%)を得た。
【0296】
化合物AI-6b(1.95g、6.16mmol、1.0当量)のMeOH(30mL)溶液に、(NH4)2CO3(2.37g、24.65mmol、4.0当量)及びKCN(0.8g、12.32mmol、2.0当量)を加えた。この混合物を45℃で16時間、撹拌した。この反応物に3M HClを加えてpH=1~2に調節し、室温で1時間、撹拌し、次に、NaHCO3の飽和水溶液を加え、pH=7~8に調節して、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水して減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-6(1.49g、61%)を白色固体として得た。
【0297】
[実施例7]
化合物AC-7の合成
【0298】
【化67】
【0299】
4-ヨードフェノール(2.2g、10mmol、1.0当量)及び4-エチニル-2-メチルピリジン(1.29g、11mmol、1.1当量)のDMF(30mL)溶液に、窒素雰囲気下、TEA(3.2g、30mmol、3当量)、Pd(Ph3P)2Cl2(1.4g、2mmol、0.2当量)及びCuI(0.38g、2mmol、0.2当量)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、室温で3時間、撹拌した。次に、この混合物を飽和NH4Cl(50mL)溶液でクエンチした。この混合物を酢酸エチル(30mL*3)により抽出した。合わせた有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-7a(1.05g、45%)を得た。
【0300】
AI-7a(0.8g、3.82mmol、1.0当量)のDMF(40mL)溶液に、4-クロロニコチンアルデヒド(0.54g、3.82mmol、1.0当量)及びK2CO3(1.05g、7.64mmol、2当量)を加えた。この混合物を、80℃で4時間、撹拌した。次に、この混合物を水(100mL)により希釈して、酢酸エチル(50mL*3)により抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水して減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-7b(0.45g、37%)を得た。
【0301】
AI-7b(520mg、1.65mmol、1.0当量)のMeOH(15mL)溶液に、(NH4)2CO3(635mg、6.6mmol、4.0当量)及びKCN(215mg、3.3mmol、2.0当量)を加えた。この混合物を、45℃で16時間、撹拌した。この反応物に3M HClを加えてpH=1~2に調製し、室温で1時間、撹拌した。次に、NaHCO3の飽和水溶液を加えてpH=7~8に調節し、この反応物を酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水して減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AC-7(370mg、58%)を白色固体として得た。
【0302】
[実施例8]
化合物AC-8の調製
【0303】
【化68】
【0304】
乾燥THF(1L)中の4-クロロピリジン(100g、0.667mol、1.0当量)の混合物に、窒素雰囲気下、-78℃でLDA(THF中の2M、733.26mL、1.467mol、2.2当量)を素早く加えた。この混合物を、-78℃で1時間、撹拌した。次に、プロピオンアルデヒド(74.1g、0.999mol、1.5当量)を滴下して加え、この混合物を1時間、撹拌した。この反応混合物のTLC分析により、所望の生成物への完全な変換が示された。この反応物をNH4Clの飽和水溶液によりクエンチし、酢酸エチル(EA)(3×500mL)により抽出した。有機層をブライン及び水により洗浄し、Na2SO4で脱水し、真空下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(PE:EA、3:1)によって精製し、AI-8a(45g、48%)を得た。
【0305】
アセトン(300mL)中のAI-8a(26.3g、0.154mol、1.0当量)の混合物に、CrO3(30.8g、0.308mol、2.0当量)を加えた。この混合物を室温で5時間、撹拌した。次に、この混合物をろ過して、ろ液を減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-8b(16.0g、62%)を得た。
【0306】
DMF(50mL)中のAI-8b(1g、4.67mmol、1.0当量)及び4-メルカプトフェノール(590mg、4.67mmol、1.0当量)からなる混合物に、K2CO3(1.29g、9.34mmol、2当量)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、室温で16時間、撹拌した。次に、この混合物をH2O(100mL)でクエンチし、酢酸エチル(50mL*3)により抽出した。合わせた有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-8c(1.2g、99%)を得た。
【0307】
AI-8c(2.37g、6.5mmol、1.0当量)のDCM(50mL)溶液に、窒素雰囲気下、-78℃でTEA(2.05g、19.5mmol、3当量)及び(CF3SO2)2O(2.01g、7.15mmol、1.1当量)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、-78℃で2時間、撹拌した。次に、この混合物を0℃まで温めて、飽和Na2CO3(20mL)溶液でクエンチした。有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-8d(2.1g、82%)を得た。
【0308】
AI-8d(2.1g、5.36mmol、1.0当量)のジオキサン/H2O(5/1、60mL)溶液に、窒素雰囲気下、4,4,5,5-テトラメチル-2-ビニル-1,3,2-ジオキサボロラン(0.9g、5.9mmol、1.1当量)、Pd(dppf)2Cl2(0.05g、0.53mmol、0.1当量)及びCsF(2.07g、10.72mmol、2当量)を逐次、加えた。この混合物を、85℃で12時間、撹拌した。次に、この反応物を室温まで冷却し、H2O(50mL)でクエンチして酢酸エチル(30mL*3)により抽出した。合わせた有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-8e(1.36g、94%)を得た。
【0309】
AI-8e(0.6g、2.27mmol、1.0当量)のDMF(70mL)溶液に、窒素雰囲気下、4-ブロモ-2-メチルピリジン(0.3g、2.5mmol、1.1当量)、PPh3(60mg、0.23mmol、0.1当量)、TEA(0.74g、6.81mmol、3当量)及びPd(OAc)2(51mg、0.23mmol、0.1当量)を逐次、加えた。この混合物を、110℃で2時間、撹拌した。次に、この反応物を室温まで冷却し、飽和NH4Cl溶液でクエンチした。この混合物を酢酸エチルにより抽出した。合わせた有機相をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、AI-8f(0.3g、64%)を得た。
【0310】
AI-8f(300mg、0.83mmol、1.0当量)のMeOH/H2O(12mL、5/1)溶液に、(NH4)2CO3(320mg、3.32mmol、4.0当量)及びKCN(106mg、1.68mmol、2.0当量)を加えた。この混合物を、45℃で16時間、撹拌した。この反応物に3M HClを加えてpH=1~2に調製し、室温で1時間、撹拌した。次に、NaHCO3の飽和水溶液を加えてpH=7~8に調節し、この反応物を酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水して減圧下で濃縮した。残留物を分取HPLCによって精製し、AC-8(29.5mg、8%)を得た。
【0311】
[実施例9]
化合物AC-9の調製
【0312】
【化69】
【0313】
3-ブロモチオフェン-2-カルボアルデヒド(10.0g、52.3mol、1.0当量)のDMF(100mL)溶液に、窒素雰囲気下、室温で4-メルカプトフェノール(7.93g、62.8mol、1.2当量)及びK2CO3(21.04g、157.0mol、3.0当量)を加えた。この混合物を室温で16時間、撹拌した。この反応物を氷水(300mL)によりクエンチし、EA(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインにより洗浄し、Na2SO4で脱水し、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(PE/EA:1/1)によって精製し、化合物AI-9a(12.3g、99%)を得た。
【0314】
化合物AI-9a(7.6g、32.2mmol、1.0当量)のDCM(150mL)溶液に、窒素雰囲気下、78℃でTf2O(13.6g、48.24mmol、1.5当量)及びDIEA(12.47g、96.6mol、3.0当量)を加えた。この混合物を、-78℃で4時間、撹拌した。次に、この反応物をろ過して氷水(200mL)によりクエンチした。この混合物を酢酸エチル(50mL×3)により抽出した。合わせた有機層をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(PE/EA:1/1)によって精製し、化合物AI-9b(8.2g、69%)を得た。
【0315】
化合物AI-9b(10.0g、27.1mmol、1.0当量)のトルエン(150mL)溶液に、室温でエタン-1,2-ジオール(16.85g、271.5mmol、10.0当量)及びTsOH(0.51g、2.7mol、0.1当量)を加えた。この混合物を還流下、4時間、撹拌した。次に、この反応物を室温まで冷却し、氷水(200mL)でクエンチした。この溶液を酢酸エチル(100mL×2)により抽出した。合わせた有機層を無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(DCM/EA:1/1)によって精製し、化合物AI-9c(11.1g、99%)を得た。
【0316】
DMF(70mL)中の化合物AI-9c(6.0g、14.5mmol、1.0当量)、4-エチニル-2-メチルピリジン(1.87g、15.9mmol、1.1当量)、CuI(0.26g、1.4mmol、0.1当量)及びTEA(4.39g、43.5mol、3当量)からなる混合物に、窒素雰囲気下、Pd(dppf)Cl2(1.02g、1.4mmol、0.1当量)を加えた。この混合物を、110℃で16時間、撹拌した。次に、この反応物を室温まで冷却し、氷水(200mL)でクエンチした。この溶液を酢酸エチル(100mL×3)により抽出した。合わせた有機層を無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(DCM/EA:1/1)によって精製し、化合物AI-9d(2.9g、52%)を得た。
【0317】
化合物AI-9d(3.88g、10.2mmol、1.0当量)のHCOOH(40mL)溶液を100℃で4時間、撹拌した。この混合物を減圧下で濃縮した。この残留物を水性飽和NaHCO3(100mL)により希釈して、EA(50mL×3)により抽出した。合わせた有機層をブラインにより洗浄し、Na2SO4で脱水し、濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(DCM:EA=1:1)によって精製し、化合物AI-9e(2.93g、85%)を得た。
【0318】
化合物AI-9e(2.93g、8.7mmol、1.0当量)のEtOH/H2O(30mL/30mL)溶液に、(NH4)2CO3(3.39g、34.9mmol、4.0当量)及びKCN(1.0g、17.4mmol、2.0当量)を加えた。この反応混合物を室温で16時間、撹拌した。この混合物をH2O(100mL)により希釈し、EA(50mL×3)により抽出した。合わせた有機層をブラインにより洗浄し、Na2SO4で脱水し、濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(DCM:EA=1:1)によって精製し、化合物AC-9(278mg、7%)を黄色固体として得た。
【0319】
[実施例10]
化合物AC-10の調製
【0320】
【化70】
【0321】
ジオキサン/H2O(90mL/10mL)中の化合物AI-9c(5.1g、12.4mmol、1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-ビニル-1,3,2-ジオキサボロラン(3.82g、24.8mmol、2.0当量)、CsF(4.15g、24.8mmol、2.0当量)からなる混合物に、窒素雰囲気下、Pd(dppf)Cl2(0.91g、1.2mmol、0.1当量)を加えた。この混合物を、85℃で16時間、撹拌した。次に、この反応物を室温まで冷却し、氷水(200mL)でクエンチした。この溶液を酢酸エチル(50mL×3)により抽出した。合わせた有機層を無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(PE/EA:1/1)によって精製し、化合物AI-10a(2.24g、62%)を得た。
【0322】
DCM(100mL)中の化合物AI-10a(1.15g、4.0mmol、1.0当量)、2-メチル-4-ビニルピリジン(0.48g、4.0mmol、1.0当量)からなる混合物に、窒素雰囲気下、Hoveyda-Grubbs II(0.25g、0.4mmol、0.1当量)を加えた。この混合物を50℃で16時間、撹拌した。次に、この反応物を室温まで冷却し、氷水(100mL)でクエンチした。この溶液を酢酸エチル(50mL×3)により抽出した。合わせた有機層を無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(DCM/EA:1/1)によって精製し、化合物AI-10b(0.34g、22%)を得た。
【0323】
化合物AI-10b(1.34g、3.5mmol、1.0当量)のHCOOH(30mL)溶液を100℃で4時間、撹拌した。この混合物を減圧下で濃縮した。この残留物を水性飽和NaHCO3(100mL)により希釈し、EA(50mL×3)により抽出した。合わせた有機層をブラインにより洗浄し、Na2SO4で脱水し、濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(DCM:EA=1:1)によって精製し、化合物AI-10c(1.0g、84%)を得た。
【0324】
化合物AI-10c(1.2g、3.6mmol、1.0当量)のEtOH/H2O(15mL/15mL)溶液に、(NH4)2CO3(1.38g、14.2mmol、4.0当量)及びKCN(0.41g、7.2mmol、2.0当量)を加えた。この反応混合物を室温で16時間、撹拌した。この混合物をH2O(50mL)により希釈し、EA(50mL×3)により抽出した。合わせた有機層をブラインにより洗浄し、Na2SO4で脱水し、濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(DCM:EA=1:1)によって精製し、化合物AC-10(147mg、10%)を黄色固体として得た。
【0325】
[実施例11]
化合物AC-11の調製
【0326】
【化71】
【0327】
1-メチル-1H-ピラゾール(10.0g、0.12mol、1.0当量)の乾燥THF(100mL)溶液に、窒素雰囲気下、-78℃でn-BuLi(ヘキサン中の2.5M、58mL、0.15mol、1.2当量)を加えた。この混合物を、-78℃で1時間、撹拌した。次に、DMF(18.5mL、0.24mol、2.0当量)を滴下して加え、この混合物を1時間、撹拌した。この反応混合物のTLC分析により、所望の生成物への完全な変換が示された。この反応物を飽和水性NH4Clによりクエンチし、EA(3×500mL)により抽出した。合わせた有機層をブラインにより洗浄し、Na2SO4で脱水し、真空で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(PE/EA:1/1)によって精製し、化合物AI-11a(7.7g、57%)を得た。
【0328】
AI-11a(8.0g、72.65mmol、1.0当量)のDMF(80mL)溶液に、NBS(12.86g、108.98mmol、1.5当量)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、室温で16時間、撹拌した。次に、この混合物をろ過して氷水(200mL)によりクエンチした。この混合物を酢酸エチル(100mL×3)により抽出した。合わせた有機層を無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(PE/EA:1/1)によって精製し、化合物AI-11b(6.4g、46%)を得た。
【0329】
トルエン(60mL)中の化合物AI-11b(5.7g、30.16mmol、1.0当量)、4-メルカプトフェノール(4.19g、33.17mmol、1.1当量)、DPPF(0.25g、3.02mmol、0.1当量)及びDIEA(5.84g、45.24mol、1.5当量)からなる混合物に、窒素雰囲気下、Pd2(dba)3(1.22g、2.11mmol、0.07当量)を加えた。この混合物を、110℃で16時間、撹拌した。次に、この反応物をろ過して氷水(100mL)によりクエンチした。この混合物を酢酸エチル(50mL×3)により抽出した。合わせた有機層を無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(DCM/EA:1/1)によって精製し、化合物AI-11c(7.1g、99%)を得た。
【0330】
化合物AI-11c(7.1g、30.3mmol、1.0当量)のDCM(150mL)溶液に、窒素雰囲気下、-78℃でTf2O(12.83g、45.46mmol、1.5当量)及びDIEA(11.73g、90.9mol、3.0当量)を加えた。この混合物を、-78℃で3時間、撹拌した。次に、この反応物をろ過して氷水(200mL)によりクエンチした。この混合物を酢酸エチル(50mL×3)により抽出した。合わせた有機層をブラインにより洗浄し、無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(PE/EA:1/1)によって精製し、化合物AI-11d(9.3g、83%)を得た。
【0331】
トルエン(20mL)中の化合物AI-11d(1.1g、3.0mmol、1.0当量)、4-エチニル-2-メチルピリジン(0.35g、3.0mmol、1.0当量)、CuI(57mg、0.3mmol、0.1当量)及びTEA(0.91g、9.0mol、3当量)からなる混合物に、窒素雰囲気下、Pd(dppf)Cl2(0.22g、0.3mmol、0.1当量)を加えた。この混合物を、110℃で16時間、撹拌した。次に、この反応物を室温まで冷却し、氷水(100mL)でクエンチした。この溶液を酢酸エチル(50mL×3)により抽出した。合わせた有機層を無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(DCM/EA:1/1)によって精製し、化合物AI-11e(0.38g、37%)を得た。
【0332】
化合物AI-11e(0.49g、1.47mmol、1.0当量)のMeOH(10mL)溶液に、(NH4)2CO3(0.57g、5.88mmol、4.0当量)及びKCN(0.19g、2.94mmol、2.0当量)を加えた。窒素雰囲気下、この反応混合物を40℃で一晩、撹拌した.この混合物をH2O(50mL)により希釈し、EA(30mL×3)により抽出した。合わせた有機層をブラインにより洗浄し、Na2SO4で脱水して濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(DCM:EA=1:1)によって精製し、化合物AC-11(0.31g、52%)を灰色固体として得た。
【0333】
[実施例12]
化合物AC-12の調製
【0334】
【化72】
【0335】
ジオキサン/H2O(90mL/10mL)中の化合物AI-11d(5.0g、13.65mmol、1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-ビニル-1,3,2-ジオキサボロラン(4.2g、27.3mmol、2.0当量)、CsF(4.15g、27.3mmol、2.0当量)からなる混合物に、窒素雰囲気下、Pd(dppf)Cl2(1.98g、2.7mmol、0.1当量)を加えた。この混合物を、85℃で16時間、撹拌した。次に、この反応物を室温まで冷却し、氷水(100mL)でクエンチした。この溶液を酢酸エチル(50mL×3)により抽出した。合わせた有機層を無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(PE/EA:1/1)によって精製し、化合物AI-12a(2.4g、71%)を得た。
【0336】
DCM(100mL)中の化合物AI-12a(4.8g、19.6mmol、1.0当量)、2-メチル-4-ビニルピリジン(4.68g、39.3mmol、2.0当量)からなる混合物に、窒素雰囲気下、Hoveyda-Grubbs II(0.99g、2.0mmol、0.1当量)を加えた。この混合物を、50℃で16時間、撹拌した。次に、この反応物を室温まで冷却し、氷水(100mL)でクエンチした。この溶液を酢酸エチル(50mL×3)により抽出した。合わせた有機層を無水Na2SO4により脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(DCM/EA:1/1)によって精製し、化合物AI-12b(0.7g、10%)を得た。
【0337】
化合物AI-12b(0.7g、2.09mmol、1.0当量)のMeOH(10mL)溶液に、(NH4)2CO3(0.81g、8.35mmol、4.0当量)及びKCN(0.27g、4.17mmol、2.0当量)を加えた。窒素雰囲気下、この反応混合物を40℃で一晩、撹拌した。この混合物をH2O(50mL)により希釈し、EA(30mL×3)により抽出した。合わせた有機層をブラインにより洗浄し、Na2SO4で脱水し、濃縮した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(DCM:EA=1:1)によって精製し、化合物AC-12(51mg、6%)を黄色固体として得た。
【0338】
生物学的試験
【0339】
[実施例1]
MMP阻害アッセイ
組換えヒトMMP-12触媒ドメイン(Enzo、BML-SE138)による、蛍光性MMP基質(Enzo、BML-P128)の切断速度に及ぼす化合物の阻害作用を、当分野で公知の方法により行った。手短に述べると、96ウェル黒色不透明プレートの各ウェルに、ピペット操作によってすべての試薬を逐次、加え、最終反応物は、4nMの組換えヒトMMP-12触媒ドメイン、4μMの蛍光性MMP基質、並びに10mMのCaCl2、0.01%Brij(登録商標)35(ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル)及び0.1mg/mlのBSAを含有するHEPES緩衝液(pH7.5)中の様々な濃度(0.057nM~1,000nM)の試験化合物希釈液を含有した。
【0340】
酵素及び化合物を、振とう器上で予備インキュベートし、ウェル中で混合した。1時間の混合後、蛍光性基質を各ウェルに加えた。酵素を含まない反応は、プレート中のブランク対照として使用した。次に、このプレートをプレートリーダーに供給し、37℃で少なくとも1時間、10分ごとに340nm/440nmの励起/発光波長で蛍光強度を測定した。MMP-12阻害における各化合物のIC50は、時間点30分間において得られた読取値を使用して求めた。試験した各化合物の結果が表1に示されている。
【0341】
[実施例2]
選択性アッセイ
MMP選択性アッセイは、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-12、MMP-13及びMMP-14を含めた、他の組換えヒトMMPを使用することによって行った。他の組換えヒトMMPに関する化合物のIC50は、実施例1において上記の通りに求め、表2に示されている。IC50値は、以下の通り報告する:A=1nM未満、B=1nM~10nM、C=10nM~100nM、D=100nM超。
【0342】
【表2】
参考文献
1. US 7179831
2. WO 02/096426
3. US 2004/0067996
4. WO 2004/108086
5. WO 02/074752
6. WO 2004/020415
7. US 20190352287
8. US 20190352288
9. EP1676846
10. WO/2008/065393
11. US7700604
以下は、本発明の実施形態の一つである。
(1)式(I)の化合物
【化73】
又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは水和物
(式中、
環Aは、場合により置換されているヘテロアリールであり、
Qは、CR 2 又はNであり、
R 1 は、水素又はアルキルであり、
R 2 はそれぞれ、独立して、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシル、ハロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、アミド、アルキルアミノ、アミノアルキル、シアノ、ヒドロキシアルキル、-(CH 2 ) p C(O)OR 6 又は-(CH 2 ) p OC(O)R 6 であり、
R 3 は、水素、ハロ又はアルキルであり、
R 4 及びR 5 はそれぞれ、独立して、水素又はアルキルであり、
R 6 はそれぞれ、独立して、水素又はアルキルであり、アルキルは、無置換であるか、又はアミノ、ヒドロキシル、ハロ及びアルコキシから独立して選択される1つ以上の基により置換されており、
Xは、S又はOであり、
Yは、
【化74】
であり、
nは、1、2、3又は4であり、
pは、0、1、2、3、4又は5である)。
(2)環Aが、O、S及びNから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有する5~6員の単環式ヘテロアリールであり、5~6員の単環式ヘテロアリールが、アルキルにより場合により置換されている、(1)に記載の化合物。
(3)環Aが、ピリジニル、フラニル、チエニル又はN-メチルピラゾリルである、(1)に記載の化合物。
(4)環Aが、
【化75】
である、(1)に記載の化合物。
(5)R 1 が、水素又はC 1~4 アルキルである、(1)~(4)のいずれかに記載の化合物。
(6)nが1であり、R 2 が-CH 3 である、(1)~(5)のいずれかに記載の化合物。
(7)R 3 が水素である、(1)~(6)のいずれかに記載の化合物。
(8)R 4 及びR 5 がそれぞれ、水素である、(1)~(7)のいずれかに記載の化合物。
(9)XがSである、(1)~(8)のいずれかに記載の化合物。
(10)XがOである、(1)~(8)のいずれかに記載の化合物。
(11)QがNである、(1)~(10)のいずれかに記載の化合物。
(12)Yが、
【化76】
である、(1)~(11)のいずれかに記載の化合物。
(13)Yが、
【化77】
である、(1)~(11)のいずれかに記載の化合物。
(14)
【化78】
が、
【化79】
である、(1)~(13)のいずれかに記載の化合物。
(15)環Aが、ピリジニル、フラニル、チエニル又はN-メチルピラゾリルであり、
R 1 が、水素、-CH 3 又は-CH 2 CH 3 であり、
R 2 が、-CH 3 、-C(O)NH 2 、-CH 2 OH、-OCH 3 又は-OHであり、
R 3 、R 4 及びR 5 がそれぞれ、水素であり、
Xが、S又はOであり、
Yが、
【化80】
であり、
Qが、CH又はNであり、
nが、1である、
(1)に記載の化合物。
(16)
【化81】
からなる群から選択される化合物、又はその互変異性体、立体異性体、薬学的に許容される塩若しくは水和物。
(17)(16)に記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
(18)(1)~(17)のいずれかに記載の化合物、及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
(19)それを必要とする対象におけるマクロファージエラスターゼ(MMP-12)を阻害する方法であって、(18)に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む方法。
(20)それを必要とする対象におけるマクロファージエラスターゼ(MMP-12)によって媒介される疾患を処置する方法であって、(18)に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含み、疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、急性肺損傷、特発性肺線維症(IPF)、サルコイドーシス、全身性硬化症、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、関節炎、がん、心臓疾患、炎症性腸疾患(IBD)、急性腎臓損傷(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、アルポート症候群及び腎炎からなる群から選択される、方法。
(21)それを必要とする対象における、マクロファージエラスターゼ(MMP-12)の阻害又はMMP-12によって媒介される疾患の処置に使用するための、(1)~(17)のいずれかに記載の化合物又は(18)に記載の医薬組成物であって、好ましくは、対象が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、急性肺損傷、特発性肺線維症(IPF)、サルコイドーシス、全身性硬化症、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、関節炎、がん、心臓疾患、炎症性腸疾患(IBD)、急性腎臓損傷(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、アルポート症候群及び腎炎からなる群から選択される疾患の処置を必要とする、化合物又は医薬組成物。