(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】摩擦ヒンジ
(51)【国際特許分類】
G02C 5/22 20060101AFI20250324BHJP
G02C 1/06 20060101ALI20250324BHJP
G02C 1/02 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
G02C5/22
G02C1/06
G02C1/02
(21)【出願番号】P 2022551421
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 DK2021050057
(87)【国際公開番号】W WO2021170195
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2024-02-08
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】500172955
【氏名又は名称】リンドベルイ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】コフォード イェッペ バーチ
(72)【発明者】
【氏名】リンドベルイ ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】ベイヴァド ラース
(72)【発明者】
【氏名】マック トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ボイエ-ニールセン ハンス
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-024007(JP,A)
【文献】米国特許第04256388(US,A)
【文献】特表2017-533470(JP,A)
【文献】国際公開第2013/179343(WO,A1)
【文献】米国特許第04428094(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 5/22
G02C 1/00 - 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡フレームのテンプルバー(3)とリム(2)、又はテンプルバー(3)の2つのセクションを枢動可能に接続するためのヒンジ(5)であって、
当該ヒンジによって接続される第1の部品(10)と第2の部品(30)とがそれぞれの遠位端で接続される前記ヒンジ(5)は、
-上部フランジ(12)及び
下部フランジ(14)を
前記第1の部品(10)の
前記遠位端に備え、前記フランジ(12、14)は距離(x)だけ相隔たっており、前記上部フランジ(12)は第1の開口(16)を備え、前記第1の開口は直径(y)を有し、
-貫通する第2の開口(32)を
前記第2の部品(30)の
前記遠位端に備え、前記貫通する開口は、内側円筒壁(34)を画定し、前記第2の開口(32)は直径(z)を有し、前記第2の部品の上面と下面との間の距離(k)は前記フランジ(12、14)の間の前記距離(x)よりも小さく、
-弾性材料から作られ、前記貫通する第2の開口(32)の中に配置されたブッシュ(40)を備え、前記ブッシュは対称軸(26)を有し、前記ブッシュは前記対称軸(26)に垂直な直径(l)の内側開口(42)を有し、
-ロックピン(20)を備え、前記ロックピンは、ヘッドセクション(24)と、対称軸(26)を規定する円筒形の本体セクション(22)とを有し、前記対称軸(26)に沿った前記本体セクション(22)の範囲は、前記フランジ(12、14)の間の前記距離(x)以上であり、前記対称軸(26)に垂直な前記本体セクション(22)の直径(n)は、前記ブッシュ(40)の前記内側開口(42)の前記直径(l)以上であり、
前記第2の部品(30)の前記遠位端の前記第2の開口(32)に前記ブッシュ(40)を挿入すると共に、前記第1の部品(10)の前記遠位端の前記上面と前記下面との間に前記第2の部品(30)の前記遠位端を挿入することによって、前記上部フランジ(12)の前記第1の開口(16)は、前記ブッシュ(40)の前記内側開口と重なることになり、それによって、前記ロックピン(20)の前記本体セクション(22)は、前記ブッシュ(40)の前記内側開口(42)の中に挿入することができ、それによって前記2つの部品を枢動可能に接続するようになっており、
前記ロックピン(20)の前記ヘッドセクションは、前記上部フランジ(12)に設けられた前記第1の開口(16)に圧入され、それによって、前記ロックピン(20)を前記第1の開口(16)に対して固定して、前記ロックピン(20)が前記第1の開口(16)内で回転できないようにし、
前記対称軸に沿った前記ブッシュの範囲は、前記第2の部品の上面と下面との間の前記距離(k)以上であるが、前記フランジ(12、14)の間の前記距離(x)より小さく、
前記ヘッドセクション(24)は、前記対称軸(26)に垂直な断面において、当該ヘッドセクション(24)を前記第1の開口(16)に収容できるような寸法を有し、
前記第2の開口(32)の前記内側円筒壁の表面粗さは、前記ロックピン(20)の粗さ値Raよりも大きな粗さ値Raを有し、それによって、前記ブッシュ(40)と前記第2の開口(32)の前記内側円筒壁との間は、前記ブッシュ(40)の前記内側開口(42)と前記ロックピン(20)との間よりも大きな摩擦を有
し、
前記対称軸(26)に垂直な前記ロックピン(20)の前記本体セクション(22)の直径(n)は、前記ブッシュ(40)の前記内側開口(42)の直径(l)よりも大きく、前記ブッシュ(40)は変形可能であり、それにより、余分な材料が、前記フランジ(12、14)の間の前記距離(x)と、前記第2の部品(30)の前記上面と前記下面との間の前記距離(k)との長さの差によって生じる空間に押し込まれることで、前記第1の部品(10)と前記第2の部品(30)との間にさらなる弾性支持部を形成すると共に、前記ロックピン(20)、前記ブッシュ(40)、及び前記第2の部品(30)の間の摩擦係合を増大させる、
ことを特徴とする、ヒンジ。
【請求項2】
前記下部フランジ(14)は、
前記ヘッドセクション(24)の反対側に配置された、前記ロックピン(20)の
端部(22’)を収容するのに適した凹部(18)を備え、前記凹部(18)は、前記上部フランジ(12)に面する前記下部フランジの
内側面に形成される、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記第2の開口(32)に配置されていない場合の前記対称軸(26)に垂直な前記ブッシュの外径(l
2)は、前記第2の開口(32)の前記直径(z)よりも大きい、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記第1の部品(10)及び前記第2の部品(30)は、チタンで作られており、前記ブッシュ(40)は、ショアA硬度が50以上のポリマー材料で作られている、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項5】
前記ポリマー材料は、ポリアミド:PA6又はPA11である、請求項
4に記載のヒンジ。
【請求項6】
弾性金属材料で作られている、リム(2)を含む又はリムレスの眼鏡フレームであって、前記眼鏡フレームは、レンズ(6)を収容するのに適したリムを備えるか又は前記レンズに取り付けられ、2つのテンプルバー(3)が前記リムの両側に配置され、前記テンプルバー(3)のいずれかは、請求項1に記載の2つのヒンジ(5)により前記リム(2)又は前記レンズ(6)に接続される、又は前記テンプルバー(2)の各々は、請求項1に記載のヒンジ(5)を組み込んでいる、眼鏡フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡フレームのテンプルバーとリムとを枢動可能に接続するためのヒンジ、及びそのようなヒンジを組み込んだ眼鏡に関する。
【0002】
本発明における眼鏡は、レンズの周縁全体を囲むリムを有する眼鏡、レンズの周縁の一部のみを囲むハーフリムを有する眼鏡、及びリムなしでテンプルバーがレンズに直接取り付けられるリムレス眼鏡として理解されるものとする。
【0003】
より正確には、本発明は、2つの部品、例えば眼鏡フレームのテンプルバーとリム、又はテンプルバーの2つのセクションを枢動可能に接続するためのヒンジに関し、ヒンジは、
-第1の部品の遠位端であって、第1の部品の遠位端は、上部フランジ及び下部フランジを備え、フランジは距離(x)だけ相隔たっており、上部フランジは第1の開口を備え、第1の開口は直径(y)を有する、第1の部品の遠位端と、
-第2の部品の遠位端であって、第2の部品の遠位端は、貫通する第2の開口を備え、貫通する開口は、内側円筒壁を画定し、第2の開口は直径(z)を有し、第2の部品の上面と下面との間の距離(k)はフランジの間の距離(x)より小さい、第2の部品の遠位端と、
-弾性材料から作られたブッシュであって、ブッシュは、貫通する第2の開口の中に配置され、ブッシュは対称軸を有し、対称軸に沿ったブッシュの範囲は、第2の部品の上面と下面との間の距離(k)以上であるがフランジの間の前記距離(x)より小さく、ブッシュは対称軸に垂直な直径(l)の内側開口を有する、ブッシュと、
-ロックピンであって、ロックピンは、ヘッドセクションと、対称軸を規定する円筒形の本体セクションとを有し、ヘッドセクションは、対称軸に垂直な断面において、ヘッドセクションを第1の開口に収容できるような寸法を有し、対称軸に沿った本体セクションの範囲は、フランジの間の距離(x)以上であり、対称軸に垂直な本体セクションの直径(n)は、ブッシュの内側開口の直径(l)以上である、ロックピンと、
を備え、
第2の部品の遠位端の第2の開口にブッシュを挿入すると共に第1の部品の遠位端の上面と下面との間に第2の部品の遠位端を挿入することによって、上部フランジの第1の開口は、ブッシュの内側開口と重なることになり、それによって、ロックピンの本体セクションは、ブッシュの内側開口の中に挿入することができ、それによって2つの部品を枢動可能に接続するようになっている。
【背景技術】
【0004】
本技術分野では、眼鏡のテンプルバーとリムとの間にヒンジ構造を設けることは公知であり、このようなヒンジは、製造するのに望ましい特定の眼鏡フレームに依存して様々な異なる特性を有する。
【0005】
ヒンジの望ましい態様の1つは、眼鏡のリムに対してテンプルバーを実質的に固定された位置に維持するヒンジの能力であり、これに関連して「実質的に固定された位置」は、リムに対してテンプルバーを枢動するために、わずかな力を必要とするが、テンプルバーは、それ自体で枢動できないものとして理解されたい。所要の力は、眼鏡フレームのいかなる部分も変形させない、さもなければ悪影響を与えないものとする。
【0006】
この目的のために、多くの様々な設計が考えられてきたが、これらの設計のすべてにおいて、ヒンジ構造は、所望の摩擦を生じさせてそれによってテンプルバーをリムに対して実質的に固定された位置に保持するために、バネ又はテンプルバーをリムに接続するネジを十分に締めることによって得られる純粋な摩擦を伴う比較的複雑な構造に依存する。
【0007】
これらの先行技術の解決策に共通するのは、それらがかなり複雑であること、又は、摩耗や損傷のためにテンプルバーとリムとの間の接続が緩んで所望の目的を果たさなくなってしばらくしてから再調整する必要があることである。
【0008】
序文で説明したタイプのヒンジは、米国特許第4,428,094号から公知である。このヒンジでは、ブッシュと第2の開口との間、又はブッシュとロックピンとの間で回転が発生する可能性がある。従って、回転が他の要素に関連して起こるかは明確ではない。従って、相互の回転は、ブッシュがピン及び開口の両方に対して回転するような方法で起こる可能性があるが、回転を確立するために使用する力の制御ができないため、これは欠点となる。さらに、ヒンジ部品の摩耗は、どの要素が他の要素に関連して動いているかが不明であるため、制御できない可能性がある。さらに、ヒンジで接続された部材の間の摩擦を非常に長い期間にわたって同じに保つ方法については、教示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、リムに対して実質的に固定された位置にテンプルバーを確実に保持することができ、同時に比較的小さく、コンパクトで邪魔にならず、さらに簡単な方法で作ることができるヒンジ構造を提供することによって、先行技術の欠点を軽減することでこれに対処することである。さらに、本発明の目的は、ヒンジ接続された部材の間の摩擦を非常に長い期間にわたって同じに維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、序文で説明したようなヒンジを提供することによってこれに対処し、このヒンジは、第2の開口の壁の表面粗さがロックピンの粗さ値Raよりも大きな粗さ値Raを有し、それによってブッシュと第2の開口の壁との間が、ブッシュの内側開口とロックピンとの間よりも大きな摩擦を有する点で特異なものである。
【0012】
詳細には、ブッシュとそれが配置される開口との間の比較的きつい嵌合、及びロックピンとブッシュとの間のきつい嵌合は、リムに対して実質的に固定された位置、すなわちヒンジに生じる摩擦に起因してリムに対してテンプルバーを枢動させるために何らかの操作を必要とする位置に残ることができるようにするための実質的な摩擦を提供する。このようにして、ヒンジで接続された部材の間の摩擦は、非常に長い時間にわたって維持される。弾性/弾力性のある材料がヒンジ構造の内部で圧縮された状態で保持されることは、弾性材料が表面に押し付けられ、それによって所望の摩擦が維持されるので、摩耗した後でさえ所望の摩擦を提供して維持することになる。
【0013】
同時に、ロックピンは、一部がブッシュによって、一部が第1の部品の遠位端の上部フランジに設けられた開口によって保持されるので、その構造は比較的単純である。
【0014】
粗さの値を変えることで、従ってブッシュと第2の開口との間の摩擦と、ブッシュとロックピンとの間の摩擦を変えることで、ヒンジの枢動運動の間にどの部品がどの部品に対して動くことになるかを制御することができる。粗さ値Raは、2つの部品の間の表面摩擦の指標であり、2つの部品の間の摩擦が他の2つの部品の間の摩擦よりも大きいことにより、摩擦が最も低い部品、すなわち粗さ値が最も低い部品が、より粗い(摩擦が高い)部品が動き始める前に相対移動することが明らかである。
【0015】
このようにして、本実施形態で提案するように、ヒンジ機構の枢動の間にロックピンとブッシュとの間の運動を引き起こすことができる。これにより、ヒンジ要素に使用される材料及び材料の特性、並びに要素を適切に選択することによって、摩擦を長時間にわたって制御することができる。
【0016】
少なくとも本出願の範囲の眼鏡は、レンズの全周縁を囲むリムを有する眼鏡、レンズの周縁の一部のみを囲むハーフリムを有する眼鏡、及びリムなしでテンプルバーがレンズに直接取り付けられるリムレス眼鏡として理解されるものとする。
【0017】
本発明のさらに有利な実施形態では、摩擦は、対称軸に垂直なロックピンの本体セクションの直径nが、ブッシュの内側開口の直径lよりも大きく、ブッシュが、各フランジの間の距離xと、第2の部品の上面と下面との間の距離kとの間の長さの差によって生じる空間に余分な材料が押し込まれるように変形することでさらに大きくなる。
【0018】
このようにして、ロックピンの円筒形の本体セクションのブッシュへの挿入は、第2の部品の開口によってしっかりと保持されているブッシュを変形させることになり、ブッシュ材料は、第2の部品の開口から押し出されることになり、それによって第1の部品と第2の部品との間にさらなる弾性支持部が形成される。さらに、変形は、ロックピン、ブッシュ、及び第2の部品の間の摩擦係合を増大させることになる。
【0019】
本発明のさらに有利な実施形態では、下部フランジは、ロックピンの遠位端を収容するのに適した凹部を備え、凹部は、上部フランジに面する下部フランジの側面に形成される。
【0020】
このようにして、第1の部品の下部フランジにロックピンの遠位端のための誘導及び舵取り手段が形成され、ロックピンが第1の部品の上部フランジに設けられた開口から挿入され、第2の部品の開口を通過する場合、ロックピンの遠位端は、下部フランジに設けられた凹部に保持されるようになっている。同時に、ロックピンのヘッドセクションは、上部フランジに設けられた開口に保持される。それによって、ヒンジの2つの部品は、ロックピンによって、安定かつ確実に枢動可能にロックされる。
【0021】
本発明のさらに有利な実施形態では、第2の開口に配置されていない場合の対称軸に垂直なブッシュの外径l2は、第2の開口の直径zよりも大きい。
【0022】
嵌合される開口よりも大きな直径を有するブッシュを提供することによって、ブッシュは、開口への取り付け時に変形する必要がある。ブッシュの取り付け/装着時に、余分な材料の一部は、開口の両方の周縁に沿って延在することができ、同時に、開口に配置された場合のブッシュの押し込みに起因してブッシュの内径は、挿入されていない元のブッシュよりも小さくなる。
【0023】
さらに、ロックピンがブッシュに挿入されると、ロックピンはブッシュを変形させることになり、さらに余分な材料が開口から押し出され、余分なブッシュ材料は、第1の部品と第2の部品との間に弾性支持部を提供することになる。ブッシュを正しく寸法決めし、同時に適切な材料特性を選択することによって、材料の降伏応力が達成されるようにブッシュの弾性材料の変形を提供することが可能であり、それによってブッシュの実質的に均質な変形が生じることになり、それによって支持部は、第1の部品の遠位端と第2の部品の遠位端との間の空間に均一に分布することになる。
【0024】
本発明のさらに有利な実施形態では、ロックピンのヘッドセクションは、上部フランジに設けられた第1の開口に圧入される。
【0025】
ロックピンのヘッドセクションを第1の部品の上部フランジの開口に圧入することによって、ロックピンは開口に対して固定され、ロックピンは開口内で回転できず、同時に、ロックピンはヒンジ構造内に安全に保持され、使用時にヒンジの完全性が維持されることが保証される。
【0026】
さらに、ブッシュの提供及びいくつかの実施形態における異なる部品の間の相対摩擦の設計により、本発明では、ロックピンが第1の部品に対して回転することを強いられないように、枢動部分の間の摩擦係合を設計することが可能である。その結果、第1の部品に設けられたロックピンと第2の部品に設けられた開口との間のヒンジにおいて、非常に安定した確実な接続が形成される。
【0027】
さらに有利な実施形態では、第1の部品及び第2の部品はチタンで作られており、ブッシュは、ショアA硬度が50以上、好ましくは60以上のポリマー材料で作られている。このように材料を選択することで、非常に軽量であり、チタン特有の強度特性により、優れた強度特性を有する構造を実現することができる。さらに、ブッシュをショアA硬度50以上のポリマー材料から選択することで、ヒンジ継手の摩耗及び破損が無視できることになり、このようなヒンジ構造の長く安定した耐用年数を保証することができる。
【0028】
本発明に適した多くのポリマーの中で、特に好ましいのは、ポリアミドタイプのポリマー材料、特にPA6又はPA11である。
【0029】
また、本発明は、弾性金属材料から作られた眼鏡フレームに関し、フレームは、レンズを収容するのに適したリムと、リムの両側に配置された2つのテンプルバーとを含み、テンプルバーは、請求項1から8のいずれかに記載の2つのヒンジによってリムに接続される。上述したヒンジ構造で作られた眼鏡フレームは、ヒンジ構造に関して上述したのと同じ利点を得て享受することになることは明らかである。
次に、本発明を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】フルリムを有する眼鏡用フレームの一例を示す。
【
図3】ロックピンが挿入される前のヒンジ構造を示す。
【
図4】ロックピンが凹部に収容された後のヒンジ構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、眼鏡フレーム1の一例が示されている。フレームは、一般に、補正レンズ6を保持するためのリム手段が設けられた一対のリム2を備える。一般に、リム2から2つのテンプルバー3が延びており、眼鏡1は、例えば耳の上にテンプルバーを配置し、鼻の上にノーズバー4を配置することによって使用者が着用できるようになっている。テンプルバー3の長手方向の範囲がリム2の平面と実質的に平行である位置にテンプルバーを枢動させることができるように、テンプルバー3とリム2との間にヒンジ5を設けることは良く知られている。これは、典型的に保管のために行われる。
【0032】
図2には、テンプルバー3がレンズ6の上/中に直接取り付けられているリムレスタイプの眼鏡の一例が示されている。
【0033】
しかしながら、着用者に快適さを提供するために、ヒンジ構造5は、テンプルバー3をリム2に対して実質的に固定された位置に保持することが望ましい。いくつかの例では、各テンプルバー3の間の相対距離は、眼鏡を着用者に対して相対的に固定して保持するために、テンプルバーが使用者の頭部の側部を圧迫するようなものとすることができる。
【0034】
本発明は、新規かつ発明性があり、多くの有利な技術的特徴を含むヒンジ構造5を提供することに向けられている。さらに、そのようなヒンジを組み込んだ眼鏡もまた、本発明に含まれることになる。
【0035】
本発明の主要な原理は、ロックピンの挿入前及び挿入後のヒンジ構造を通る断面を示す
図3及び4を参照して説明されることになる。
【0036】
図3において、ヒンジ構造は、例えばテンプルバーである第1の部品10を備える。第1の部品は、遠位端に上部フランジ12及び下部フランジ14を備える。各フランジの間の距離はxである。上部フランジ12には、直径yの第1の開口16が設けられている。下部フランジ14には、凹部18が設けられている。ロックピン20を第1の開口16を通して挿入すると、ロックピンの本体セクション22、詳細にはロックピンの本体セクションの遠位端22’は、
図4を参照して示されるように凹部18に収容されることになる。
【0037】
ロックピン20は、さらに、ヘッドセクション24を備える。ヘッドセクション24は、対称軸26に対して垂直な寸法を有しており、
図4を参照して示されるように、ロックピンがロック位置に挿入されると、ロックピン20のヘッドセクション24と上部フランジに設けられた開口16との間にぴったり合ったきつい嵌合が生じるようになっている。
【0038】
本体セクション22の範囲は、ヘッドセクション24が開口16内の適切なぴったり合ったきつい嵌合位置にある場合に、ロックピン20の本体セクション22の遠位端22’が下部フランジ14に設けられた凹部18に係合することになるようなものである。
【0039】
ヒンジの他の部分は、第2の部品30を備える。第2の部品の遠位端には、第2の開口32が設けられている。第2の開口32は、貫通する開口であり、この開口は、内側円筒壁34を画定する。第2の開口の直径はzである。さらに、第2の部品の厚さk、すなわち第2の部品の上側と下側との間の距離kは、第1の部品の上側と下側のフランジ12、14の間の距離xよりも小さい。このようにして、第2の部品30は、第1の部品10のフランジ12,14の間に多少の遊びをもたせて挿入することができる。
【0040】
第2の部品30の第2の開口には、ブッシュ40が配置されている。この実施形態では、ブッシュは、第2の部品30の厚さよりも大きいが、第1の部品10の上部フランジ12と下部フランジ14との間の距離xよりも小さい対称軸26に沿った範囲を有する。
さらに、
図5に示されるように、ブッシュ40は、対称軸に垂直な直径aの内側開口42を有する。
【0041】
引き続き
図4を参照すると、ロックピン20は、ロックピン20の本体セクション22がブッシュ40の開口42の内部に嵌合するように、第1の開口16を通して挿入されている。さらに、ロックピン20の本体セクション22の遠位端22’は、下部フランジ14の凹部18に収容される。ロックピン20の挿入時、ブッシュ40は、余分なブッシュ材料が第1の部品と第2の部品との間の空間に押し込まれるように変形している。この余分なブッシュ材料44は、第1の部品10と第2の部品30の間に安定した、堅固かつ弾性のある接続部が作られるように、第1の部品10と第2の部品30の間に支持部を作る。余分なブッシュ材料は、ロックピンのすぐ近くに保持されることになり、変形がブッシュ材料の崩壊を引き起こさないことを理解されたい。これは、変形が崩壊又は破損を引き起こさないように、ロックピンから力をゆっくりと加えること、及び/又はブッシュ材料を注意深く加熱すること、及び/又はブッシュ材料を選択することによって制御することができる。
【0042】
ブッシュが
図4に示されるように変形できるようにするために、ブッシュは、有利には、例えばポリアミドのような弾性のあるポリマー材料から作ることができる。詳細には、PA6は、その硬度、強度、延性、摩耗性及び化学物質に対する耐性が良く知られており、PA6は、多かれ少なかれ、この種の支持部のための普遍的なポリマー材料として考慮されている。また、さらなる誘導ポリアミドPA11を使用することもでき、PA11はより高い硬度と延性を持ち、
図4に示すように変形するのは難しいが、それでも長い耐用年数をもたらす優れた摩耗特性を提供する。
【0043】
さらに、ロックピン20をブッシュに挿入して変形させるのに十分な弾性を提供すると同時に、安定した信頼性の高いヒンジ構造を作るために十分な耐摩耗性及び強度を提供するために、ポリマーは50から60の範囲のショアA硬度(ASTMD2240及びASTMD1414による)を有するものを選択する必要がある。
【0044】
様々な寸法は、枢動部品の間に十分な摩擦が確立されるのを保証するが、特に第2の開口の内壁の表面粗さは、ブッシュとロックピン本体セクション22との間の表面粗さより高くなるように選択することができる。表面粗さ値(Ra)を、ロックピン20の本体セクション22とブッシュの内側開口との間よりもブッシュと第2の部品との間で高くなるように選択することによって、ヒンジは、ロックピンの本体セクション22とブッシュの内側開口との間で枢動運動が起こるように設計される。完全を期すために、粗さパラメータは、ISO4287:1997(欧州規格)に対応するBS EN ISO4287:2000(英国規格)に従って設定される。パラメータRaは、粗さ曲線の算術平均である。
【符号の説明】
【0045】
1 眼鏡フレーム
2 リム
3 テンプルバー
4 ノーズバー
5 ヒンジ
6 レンズ