(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】空中像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20250324BHJP
G02B 17/00 20060101ALI20250324BHJP
H04N 13/302 20180101ALI20250324BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
G02B30/56
G02B17/00
H04N13/302
G02B27/01
(21)【出願番号】P 2023188049
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2023555476の分割
【原出願日】2023-05-22
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2022087246
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】下瀬 主揮
(72)【発明者】
【氏名】河西 宏悦
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-117780(JP,A)
【文献】特表2002-511596(JP,A)
【文献】特表2016-520217(JP,A)
【文献】特開2018-084596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0042958(US,A1)
【文献】米国特許第05311357(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/56
G02B 17/00
H04N 13/302
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面を有する表示部と、
前記表示面から射出された画像光を、前記表示部に向かう方向とは異なる方向に反射する第1凹面鏡と、
前記第1凹面鏡によって反射された前記画像光を、前記第1凹面鏡に向かう方向とは異なる方向に反射するとともに、実像の空中像として結像させる第2凹面鏡と、を備え、
前記表示面を含む第1仮想平面に対する前記第1凹面鏡の傾斜角度が、前記空中像の仮想結像面を含む第2仮想平面に対する前記第2凹面鏡の傾斜角度よりも小さく、
前記第1凹面鏡の第1反射面の湾曲の頂点が、前記第1反射面の幾何学的な中心から前記表示部寄りの位置にある、空中像表示装置。
【請求項2】
前記第1凹面鏡および前記第2凹面鏡は、自由曲面凹面鏡である、請求項1に記載の空中像表示装置。
【請求項3】
前記頂点は、前記第1凹面鏡の自由曲面の原点である、請求項2に記載の空中像表示装置。
【請求項4】
前記第1凹面鏡の前記第1反射面と前記第2凹面鏡の第2反射面が互いに傾斜した状態で対向しており、
前記表示部は、前記第1凹面鏡と前記第2凹面鏡との間に位置している、請求項1に記載の空中像表示装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記画像光に重ならない位置にある、請求項1に記載の空中像表示装置。
【請求項6】
前記第1凹面鏡は、前記第2凹面鏡を空間に延在して成る曲面空間に内包されている、請求項1に記載の空中像表示装置。
【請求項7】
前記画像光の一部を透過する他の光学素子を含まない、請求項1に記載の空中像表示装置。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の空中像表示装置を備える移動体。
【請求項9】
ウインドシールドを備え、
前記ウインドシールドを前記第2凹面鏡として用いることによって、前記空中像表示装置がヘッドアップディスプレイを構成している、請求項
8に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空中像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された空中像表示装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の空中像表示装置は、表示面を有する表示部と、
前記表示面から射出された画像光を、前記表示部に向かう方向とは異なる方向に反射する第1凹面鏡と、
前記第1凹面鏡によって反射された前記画像光を、前記第1凹面鏡に向かう方向とは異なる方向に反射するとともに実像の空中像として結像させる第2凹面鏡と、を備え、
前記表示面を含む第1仮想平面に対する前記第1凹面鏡の傾斜角度が、前記空中像の仮想結像面を含む第2仮想平面に対する前記第2凹面鏡の傾斜角度よりも小さく、
前記第1凹面鏡の第1反射面の湾曲の頂点が、前記第1反射面の幾何学的な中心から前記表示部寄りの位置にある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
【
図1】本開示の一実施形態の空中像表示装置の要部の構成を示す側面図である。
【
図2】
図1の空中像表示装置の第1凹面鏡の湾曲度を説明するための第1凹面鏡の断面図である。
【
図3A】
図1の空中像表示装置を示す斜視図である。
【
図3B】
図3AのIIIB部を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図4】
図1の空中像表示装置の利用者が視認する空中像の一例を示す正面図である。
【
図5】
図1の空中像表示装置の特徴を有さない空中像表示装置の利用者が視認する空中像の一例を示す正面図である。
【
図6】
図1の空中像表示装置の利用者が視認する空中像の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
特許文献1は、表示装置が射出する画像光を、再帰反射板および偏光フィルタ等の光学素子を用いて、空中像として結像させる空中像表示装置を記載している。
【0007】
特許文献1に記載された従来の空中像表示装置は、利用者が視認する空中像に歪みが生じたり、空中像の輝度が低下したりすることがあった。空中像の表示品位が向上した空中像表示装置が求められている。
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明がされる。以下で参照する各図は、実施形態に係る空中像表示装置の主要な構成要素を示している。実施形態に係る表示装置は、図示されていない光学素子保持部材、カメラ等の周知の構成要素を備えていてもよい。以下の参照する各図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。また、一部の図面(例えば、
図1)において、便宜的に、直交座標系XYZを定義し、Y軸方向の正側および負側をそれぞれ、上方および下方等ということがある。
【0009】
図1は、本開示の一実施形態の空中像表示装置の要部の構成を示す側面図である。
図2は、
図1の空中像表示装置の第1凹面鏡の湾曲度を説明するための第1凹面鏡の断面図である。
図3Aは、
図1の空中像表示装置を示す斜視図であり、
図3Bは、
図3AのIIIB部を拡大して示す拡大斜視図である。
図4は、
図1の空中像表示装置の利用者が視認する空中像の一例を示す正面図である。
図5は、
図1の空中像表示装置の特徴を有さない空中像表示装置の利用者が視認する空中像の一例を示す正面図である。
図6は、
図1の空中像表示装置の利用者が視認する空中像の一例を示す正面図である。
【0010】
本実施形態の空中像表示装置1は、
図1に示すように、表示部(表示装置ともいう)2と、第1凹面鏡3と、第2凹面鏡5とを備える。
【0011】
表示装置2は、表示面2aを有し、画像光Lとして伝播する画像を表示面2aに表示する。言い換えれば、表示装置2は、表示面2aから画像光Lを射出する。
【0012】
空中像表示装置1は、
図1に示すように、表示面2aを有する表示装置2と、表示面2aから射出された画像光Lを、表示装置2に向かう方向とは異なる方向に反射する第1凹面鏡3と、第1凹面鏡3によって反射された画像光Lを、第1凹面鏡3に向かう方向とは異なる方向に反射するとともに実像の空中像Rとして結像させる第2凹面鏡5と、を備える。表示面2aを含む第1仮想平面Pi1に対する第1凹面鏡3の傾斜角度θ1が、空中像の仮想結像面9を含む第2仮想平面Pi2に対する第2凹面鏡5の傾斜角度θ2よりも小さい。
【0013】
第1凹面鏡3の大きさ(サイズ)は第2凹面鏡5の大きさよりも小さく、第1凹面鏡3の大きさは表示装置2の表示面2aの大きさに近い。この構成により、第1凹面鏡3は、表示面2aから射出された画像光Lのほぼ全部をカバーし、かつ画像光Lをある程度拡大した拡大像として第2凹面鏡5へ向かわせることができる。第1凹面鏡3のサイズは、第1凹面鏡3の反射面3aの最大径の長さ(正面視における最大径の長さともいえる)で規定してもよい。第2凹面鏡5のサイズは、第2凹面鏡5の反射面5aの最大径の長さ(正面視における最大径の長さともいえる)で規定してもよい。第1凹面鏡3の湾曲度が第2凹面鏡5の湾曲度よりも大きい構成であってもよく、この場合、第1凹面鏡3を表示装置2に近接させて配置することができるとともに、第1凹面鏡3で反射された画像光Lが拡散し過ぎることを抑えて、第2凹面鏡5に収まる拡大像として第2凹面鏡5へ向かわせることができる。その結果、画像光Lの拡散による損失を抑えて、画像光Lを効率良く利用することができる。従って、小型の空中像表示装置1とすることができるとともに、画像光Lの輝度の低下を抑えることができ、空中像Rの表示品位が向上する。
【0014】
表示面2aを含む第1仮想平面Pi1に対する第1凹面鏡3の傾斜角度θ1が、空中像の仮想結像面9を含む第2仮想平面Pi2に対する第2凹面鏡5の傾斜角度θ2よりも小さいことから、第1凹面鏡3の傾斜による空中像Rの歪の増大を抑えることができる。第1凹面鏡3の傾斜角度θ1が大きいと、空中像Rの部位による、表示面2aから仮想結像面9に至る光路長の差が大きくなりやすい。特に、空中像Rの中心部と周縁部(矩形状の空中像Rである場合、その4隅部)とで、光路長の差が大きくなりやすい。その結果、空中像Rの周縁部の歪が大きくなりやすい。本実施形態の空中像表示装置1は、空中像Rの部位による、光路長の差を小さくして、空中像Rの特定の部位(例えば、周縁部)の歪を小さくすることができる。
【0015】
表示装置2は、透過型の表示装置であってもよい。透過型の表示装置は、例えば、バックライトと液晶パネルとを含む液晶表示装置であってもよい。バックライトは、液晶パネルの背面側に2次元的に配列された複数の光源を有する、直下型のバックライトであってもよい。バックライトは、液晶パネルの外周部に配置された複数の光源を有する、エッジライト型のバックライトであってもよい。エッジライト型のバックライトは、液晶パネルを均一に照射するためのレンズアレイ、導光板、拡散板等を有していてもよい。バックライトの光源は、例えば発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)素子、冷陰極蛍光ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ等であってもよい。
【0016】
液晶パネルは、公知の液晶パネルであってよい。公知の液晶パネルとしては、例えばIPS(In-Plane Switching)方式、FFS(Fringe Field Switching)方式、VA(Vertical Alignment)方式、ECB(Electrically Controlled Birefringence)方式等の液晶パネルが挙げられる。
【0017】
表示装置2は、透過型の表示装置に限定されず、例えばLED素子、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro Luminescence;OEL)素子、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode;OLED)素子、半導体レーザ(Laser Diode;LD)素子等の発光素子を含む、自発光型の表示装置であってもよい。
【0018】
第1凹面鏡3および第2凹面鏡5は、表示装置2から射出された画像光Lを利用者7の視野内に結像する反射光学系である。以下では、第1凹面鏡3および第2凹面鏡5を纏めて、反射光学系8と記載することがある。
【0019】
第1凹面鏡3は、表示装置2から射出される画像光Lの光路上に位置している。第1凹面鏡3は、表示装置2から射出される画像光Lを、表示装置2に向かう方向とは異なる方向に反射するように構成されている。即ち、第1凹面鏡3は、表示装置2からの距離、傾斜角度等の表示装置2に対する相対的な空間配置を調整することによって、画像光Lを、表示装置2に向かう方向とは異なる方向に反射する。第1凹面鏡3は、表示装置2に対する相対的な空間配置を調整する調整部材を備えていてもよい。調整部材は、例えば、第1凹面鏡3の背面側に設置されたロッド等の支持部材、支持部材に設けられ、支持部材および第1凹面鏡3を回転させる軸部材、支持部材および第1凹面鏡3を平行移動させるスライド機構等を備えていてもよい。調整部材は、手動によって調整されてもよく、ステッピングモータ等によって電気的に調整されてもよい。
【0020】
第2凹面鏡5は、第1凹面鏡3によって反射される画像光Lの光路上に位置している。第2凹面鏡5は、第1凹面鏡3によって反射される画像光Lを、第1凹面鏡3に向かう方向とは異なる方向に反射し、実像の空中像Rとして結像させる。即ち、第2凹面鏡5は、第1凹面鏡3からの距離、傾斜角度等の第1凹面鏡3に対する相対的な空間配置を調整することによって、画像光Lを、第1凹面鏡3に向かう方向とは異なる方向に反射する。第2凹面鏡5は、第1凹面鏡3に対する相対的な空間配置を調整する調整部材を備えていてもよい。この調整部材は、第1凹面鏡3に設置された調整部材と同様の構成であってもよい。
【0021】
第1凹面鏡3は、反射面3aを有する。反射面3aは、第1湾曲度S1および第2湾曲度S2を有している構成であってもよい。この構成の場合、第1湾曲度S1および第2湾曲度S2は、次のように定義される。
図2に示すように、第1凹面鏡3の反射面3aと、反射面3aの頂点(自由曲面の原点ともいう)Oにおいて接する平面を、接平面T1とする。さらに、頂点Oを通り、画像光Lの伝播方向に平行な切断面で切断した第1凹面鏡3の断面を見たときに、反射面3aの両端に位置する点をE1,E2とし、点E1および点E2から接平面T1に対して鉛直に下した垂線の接平面T1との交点をそれぞれH1およびH2とする。また、頂点Oと点H1との距離をL1とし、頂点Oと点H1との距離をL2とし、点E1と点H1との距離をD1とし、点E2と点H2との距離をD2とする。但し、距離L1は距離L2以上とする。以上の場合、第1湾曲度S1は、D1/L1によって定義され、第2湾曲度S2は、D2/L2によって定義される。なお、第1湾曲度S1が断面の取り方によって変化する場合、断面の位置を変えたときのD1/L1の最大値を第1湾曲度S1としてもよい。また、第2湾曲度S2が断面の取り方によって変化する場合、断面の位置を変えたときのD2/L2の最大値を第2湾曲度S2としてもよい。
【0022】
第1凹面鏡3の湾曲度は、第1湾曲度S1および第2湾曲度S2で定義してもよい。また第1凹面鏡3の湾曲度は、第1湾曲度S1および第2湾曲度S2の平均値で定義してもよい。また第1凹面鏡3の湾曲度は、第1湾曲度S1および第2湾曲度S2のうち大きい方で定義してもよい。
【0023】
第2凹面鏡5は、反射面5aを有する。反射面5aは、第3湾曲度S3および第4湾曲度S4を有している。第3湾曲度S3は、第1湾曲度S1と同様に定義される。第4湾曲度S4は、第2湾曲度S2と同様に定義される。
【0024】
第1凹面鏡3は、
図1に示すように、表示面2aを含む第1仮想平面Pi1に対して、傾斜角度θ1で傾斜している。傾斜角度θ1は、表示面2aと第1凹面鏡3の接平面T1がなす角度である。第2凹面鏡5は、
図1に示すように、空中像Rの仮想結像面9を含む第2仮想平面Pi2に対して、傾斜角度θ2で傾斜している。傾斜角度θ2は、空中像Rの仮想結像面9と第2凹面鏡5の接平面T2とがなす角度である。接平面T2は、第2凹面鏡5の頂点(自由曲面の原点ともいう)において反射面5aと接する平面である。
【0025】
第1仮想平面Pi1、第2仮想平面Pi2、接平面T1、および接平面T2は、空間において定義される面であるが、コンピュータ援用設計(Computer-Aided Design:CAD)プログラムソフト等によって、パーソナルコンピュータ(PC)端末の表示装置等に表示される設計図面に、明確に図示され得る。
【0026】
空中像表示装置1は、第1凹面鏡3の湾曲度が第2凹面鏡5の湾曲度よりも大きく、かつ傾斜角度θ1が傾斜角度θ2よりも小さい構成である。なお、本実施形態において、第1凹面鏡3の湾曲度が第2凹面鏡5の湾曲度よりも大きいとは、第1湾曲度S1が第3湾曲度S3よりも大きく、かつ第2湾曲度S2が第4湾曲度S4よりも大きいことを指す。
【0027】
図3A,3Bに示すように、空中像Rの周縁部に位置する2点をP1,P2とし、空中像Rにおける点P1と点P2とを結ぶ辺部の中点をP3とする。反射面5aから点P1に至る画像光Lの光路長をOL1とする。反射面5aをから点P2に至る画像光Lの光路長をOL2とする。反射面5aから点P3に至る画像光Lの光路長をOL3とする。発明者らは、光路長OL1と光路長OL3との差の絶対値、および、光路長OL2と光路長OL3との差の絶対値を、所定値以下とすることによって、利用者が視認する空中像Rの歪みを低減し得ることを見出した。
【0028】
以下では、光路長OL1と光路長OL3との差の絶対値、および、光路長OL2と光路長OL3との差の絶対値のうちの大きい方を光路差OPDと称する。発明者らは、第1凹面鏡3の湾曲度を第2凹面鏡5の湾曲度よりも大きくし、かつ傾斜角度θ1を傾斜角度θ2よりも小さくすることによって、光路差OPDを所定値以下とし得ることを見出した。第1凹面鏡3の湾曲度を第2凹面鏡5の湾曲度よりも大きくし、かつ傾斜角度θ1を傾斜角度θ2よりも小さくすることで、第1凹面鏡3によって反射された画像光Lが表示装置2に向かって伝播することを抑えつつ、第1凹面鏡3に入射する画像光Lの入射角を小さくできるため、空中像Rの歪みが低減されると考えられる。空中像表示装置1が、
図3Aに示すように、利用者7に矩形状の空中像Rを視認させるように構成される場合、
図3Bに示すように、点P1および点P2を空中像Rの上辺の両端に位置する点(最も歪が大きくなりやすい点)とすることで、空中像Rの歪みを効果的に低減することができる。また、所定値は、例えば2mmであってもよい。
【0029】
【0030】
表1は、光路差OPDを2mm以下とし得る傾斜角度θ1,θ2、第1湾曲度S1、第2湾曲度S2、第3湾曲度S3および第4湾曲度S4の組み合わせの幾つかの例を示している。表1に示すように、第1凹面鏡3の湾曲度が第2凹面鏡5の湾曲度よりも大きくなり、かつ傾斜角度θ1が傾斜角度θ2よりも小さくなるように、傾斜角度θ1,θ2ならびに第1凹面鏡3および第2凹面鏡5の湾曲度を適宜設計することで、光路差OPDを2mm以下とすることができる。その結果、利用者が視認する空中像Rの歪みを低減することができる。表1に示すように、第1凹面鏡3の傾斜角度θ1は35°程度以下であってもよく、30°程度以下であってもよい。また、第2凹面鏡5の傾斜角度θ2は50°程度以下であってもよい。なお、装置No.2の空中像表示装置1は、装置No.1,3,4の空中像表示装置1と比べて、第1凹面鏡3および第2凹面鏡5のサイズが小さい小型の空中像表示装置1に対応する。
【0031】
さらには、第1凹面鏡3の傾斜角度θ1は約22°~約31°であってもよい。第2凹面鏡5の傾斜角度θ2は約35°~約49°であってもよい。θ1が22°未満では、第1凹面鏡3で反射された画像光Lの一部が、第2凹面鏡5の側へ向かわずに表示面2aに戻る傾向がある。θ1が31°を超えると、第1凹面鏡3で反射された画像光Lの歪が大きくなる傾向がある。θ2が35°未満では、空中像Rの仮想結像面9が利用者7の視線方向に対して傾く傾向がある。θ2が49°を超えると、第2凹面鏡5で反射された画像光Lの歪が大きくなる傾向がある。ただし、表示装置2の表示面2aの大きさ、形状、画像光Lの画角(光の広がり)等の要因によって、θ1,θ2は変化する場合があることから、必ずしも上記範囲に限るものではない。
【0032】
また、例えば、空中像Rの歪を10%以下に抑えるためには、θ1は、-1.5°~+1.5°程度のずれがあってもよく、θ2は、-1.0°~2.0°程度のずれがあってもよい。例えば、表1の装置No.1~4について、θ1、θ2を以下の範囲に設定してもよい。
装置No.1:29.64°-1.5°<θ1<29.64°+1.5°,37.92°-1.0°<θ2<37.92°+2.0°
装置No.2:30.41°-1.5°<θ1<30.41°+1.5°,46.82°-1.0°<θ2<46.82°+2.0°
装置No.3:22.79°-1.5°<θ1<22.79°+1.5°,37.94°-1.0°<θ2<37.94°+2.0°
装置No.4:24.25°-1.5°<θ1<24.25°+1.5°,36.67°-1.0°<θ2<36.67°+2.0℃
【0033】
空中像表示装置1では、第1凹面鏡3の湾曲度S1,S2が第2凹面鏡5の湾曲度S3,S4よりも大きいことから、表示装置2から射出された画像光Lを第2凹面鏡5に向けて反射する第1凹面鏡3を、表示装置2に近接して配置することができる。その結果、表示装置2および反射光学系8の占有空間を削減し小さくする(コンパクトにする)ことが可能となるため、空中像表示装置1を小型化できる。さらに、空中像表示装置1が小型化できることにより、表示装置2の表示面2aと第2凹面鏡5の反射面5aとの間の画像光Lの光路長を短くできるため、不所望な散乱、干渉等による画像光Lの損失を低減できる。その結果、空中像表示装置1の表示品位を向上させることができる。
【0034】
以上のように、本開示の空中像表示装置1によれば、空中像Rの表示品位が向上した、小型の空中像表示装置を提供することができる。
【0035】
図4は、空中像表示装置1の利用者7が視認する空中像Rを示すシミュレーション結果である。
図4では、空中像Rの歪みの視覚的理解を容易にするために、空中像Rを格子状パターンの空中像とするとともに、歪み方向および歪み量を示す座標軸を記載している。
図4において、実線は利用者7が視認する空中像Rを示し、破線は歪みのない理想的な空中像IRを示す。
【0036】
図4に示すように、空中像Rの歪みは、空中像Rの外周部に生じやすく、特に空中像Rの四隅の角部(右下角部LR,右上角部UR,左下角部LL,左上角部UL)において歪みが大きくなりやすい。表2は、
図4の空中像Rについて、角部LR,UR,LL,ULにおける理想的な空中像IRからの歪みを示している。空中像表示装置1は、表2に示すように、角部LR,UR,LL,ULにおける歪みを±7%以内に抑えることができる。
【0037】
【0038】
なお、X方向の+(プラス)方向は
図4における右方向であり、X方向の-(マイナス)方向は
図4における左方向である。また、Y方向の+方向は
図4における上方向であり、Y方向の-方向は
図4における下方向である。ただし、表1において、空中像Rの歪は、X方向およびY方向のそれぞれについて、理想的な空中像IRの外側に歪んだ場合を正の値とし、理想的な空中像IRの内側に歪んだ場合を負の値としている。例えば、右下角部LRにおいて、X方向で外側方向(右方向:広がる方向)を+方向、X方向で内側方向(左方向:縮む方向)を-方向とし、Y方向で外側方向(下方向:広がる方向)を+方向、Y方向で内側方向(上方向:縮む方向)を-方向とする。右上角部UR、左下角部LL、および左上角部ULにおいても、同様である。また、空中像Rの歪を示す以下の各表においても同様である。
【0039】
角部LR,UR,LL,ULにおける歪みは、以下のように算出する。角部LR,UR,LL,ULのX方向の歪は、矩形状の理想的な空中像IRの上辺(下辺は上辺と同じ長さ)の長さLXに対する、X方向のずれ長さで規定する。空中像IRの下辺の長さは、上辺の長さLXと同じ長さであることから、上辺の長さLXを基準とする。例えば、角部URのX方向の歪は、上辺の長さLXに対する、空中像IRの右上角CURからのX方向のずれ長さΔXURで規定する。すなわち、角部URのX方向の歪は、(ΔXUR/LX)×100(%)で規定する。角部URは、X方向において、空中像IRの外側に歪んでいることから、+の値となる。角部LR,LL,ULのX方向における歪みも同様に規定する。空中像IRが矩形状以外の形状である場合、X方向の基準長さは、平均長さ、最大長さであってもよい。
【0040】
角部LR,UR,LL,ULのY方向の歪は、矩形状の理想的な空中像IRの右辺(左辺は右辺と同じ長さ)の長さLYに対する、Y方向のずれ長さで規定する。空中像IRの左辺の長さは、右辺の長さLYと同じ長さであることから、右辺の長さLYを基準とする。例えば、角部URのY方向の歪は、右辺の長さLYに対する、空中像IRの右上角CURからのY方向のずれ長さΔYURで規定する。すなわち、角部URのY方向の歪は、(ΔYUR/LY)×100(%)で規定する。角部URは、Y方向において、空中像IRの内側に歪んでいることから、-の値となる。角部LR,LL,ULのY方向における歪みも同様に規定する。空中像IRが矩形状以外の形状である場合、Y方向の基準長さは、平均長さ、最大長さであってもよい。
【0041】
図5は、空中像表示装置1の特徴を有さず、光路差OPDが2mmより大きい空中像表示装置の利用者が視認する空中像Rを示すシミュレーション結果である。
図5において、実線は利用者7が視認する空中像Rを示し、破線は歪みのない理想的な空中像IRを示す。表3は、
図5の空中像Rについて、角部LR,UR,LL,ULにおける理想的な空中像IRからの歪みを示している。
【0042】
【0043】
表3に示すように、光路差OPDが2mm以上となる場合、四隅における歪み、特に右上角部URおよび左上角部ULにおける歪みのY成分が大きくなっている。
【0044】
以上のように、空中像表示装置1は、利用者7が視認する空中像Rの歪みを低減することができる。したがって、空中像表示装置1によれば、空中像の表示品位が向上した空中像表示装置を提供することができる。
【0045】
【0046】
図6は、小型の空中像表示装置1の利用者7が視認する空中像Rを示すシミュレーション結果である。小型の空中像表示装置1は、表1の装置No.2に対応する空中像表示装置1である。
図6において、実線は利用者7が視認する空中像Rを示し、破線は歪みのない理想的な空中像IRを示す。
【0047】
図6に示すように、空中像Rの歪みは、空中像Rの外周部に生じやすく、特に空中像Rの四隅の角部(右下角部LR,右上角部UR,左下角部LL,左上角部UL)において歪みが大きくなりやすい。表4は、
図6の空中像Rについて、角部LR,UR,LL,ULにおける理想的な空中像IRからの歪みを示している。空中像表示装置1は、表4に示すように、角部LR,UR,LL,ULにおける歪みを±3%以内に抑えることができる。このように、空中像表示装置1は、小型化された場合であっても、空中像Rの歪みを低減できる。
【0048】
空中像表示装置1は、第1凹面鏡3および第2凹面鏡5を含む反射光学系8を用いて空中像Rを表示する構成であるため、第1凹面鏡3および第2凹面鏡5の反射面3a,5aの形状を適宜設計することによって、空中像Rの歪みを低減することが可能となる。また、空中像表示装置1は、反射光学系8が入射した画像光Lの一部を透過する光学素子(例えばビームスプリッタ、偏光フィルタ等)を含んでいないため、空中像Rの輝度の低下を低減できる。例えば、反射光学系8の光軸上にビームスプリッタがある場合、ビームスプリッタによって画像光Lのうちの約半分の光が分離されることから、空中像Rの輝度が約半分になる場合がある。空中像表示装置1は、そのような輝度の低下が発生することを抑えることができる。あるいは、空中像表示装置1によれば、空中像Rの十分な輝度を維持しつつ、表示面2aに表示する画像の輝度を低下させることもできる。そのため、空中像表示装置1の消費電力を削減することが可能となる。
【0049】
空中像表示装置1は、
図1に示すように、制御装置6を備える。制御装置6は、空中像表示装置1の各構成要素に接続され、各構成要素を制御する。制御装置6によって制御される構成要素は、表示装置2を含む。
【0050】
制御装置6は、上記の調整部材を調整する機能を有していてもよい。また制御装置6は、表示装置2をオン、オフする機能、表示装置2に画像信号を送信する機能、また画像の輝度、色度、フレーム周波数等を調整する機能等を有していてもよい。また、表示装置2に放熱部材または冷却部材が備わっている場合、制御装置6は、放熱部材または冷却部材の温度を調整する機能を有していてもよい。
【0051】
制御装置6は、1以上のプロセッサを含んで構成されていてもよい。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行するように構成される汎用のプロセッサ、および特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでいてもよい。専用のプロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含んでいてもよい。プロセッサは、PLD(Programmable Logic Device)を含んでいてもよい。PLDは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を含んでいてもよい。制御装置6は、1以上のプロセッサが協働するように構成されるSoC(System-on-a-Chip)またはSiP(System In a Package)であってもよい。
【0052】
空中像表示装置1は、第2凹面鏡5のサイズ(例えば、直径)が、第1凹面鏡3のサイズ(例えば、直径等)よりも大きい構成であってもよい。この場合、拡大された空中像Rを表示させることが容易になる。即ち、第2凹面鏡5は、第1凹面鏡3によって反射された、径が拡大する画像光Lの光束を、空中像Rの仮想結像面9に向けて反射することが容易になる。また、第2凹面鏡5が比較的大きい場合、反射面5aの形状を、画像光Lに含まれる複数の部分光のそれぞれに応じた形状とすることが容易になる。その結果、空中像Rの歪みを効果的に低減することが可能となる。
【0053】
第1凹面鏡3のサイズは、第1凹面鏡3の反射面3aの最大径の長さで規定してもよい。第2凹面鏡5のサイズは、第2凹面鏡5の反射面5aの最大径の長さで規定してもよい。例えば、第1凹面鏡3が部分球面状である場合、第1凹面鏡3の反射面3aの正面視形状は円形になる。この場合、第1凹面鏡3のサイズは、L1とL2との和であってもよい(
図2参照)。第1凹面鏡3が部分楕円面状である場合、第1凹面鏡3の反射面3aの正面視形状は楕円形になる。この場合、第1凹面鏡3のサイズは、反射面3aの中心の上を通り両端E1,E2を結ぶ線分のうち長径の長さであってもよい。第1凹面鏡3の反射面3aの正面視形状が矩形状等の形状である場合、第1凹面鏡3のサイズは、反射面3aの中心の上を通り両端E1、E2を結ぶ線分のうちの最大の長さ(例えば、対角線の長さ等)であってもよい。なお、反射面3aの中心は、湾曲した反射面3aの最下点(最大突出点)で規定される。第2凹面鏡5のサイズは、第1凹面鏡3のサイズと同様に定義される。第1凹面鏡3のサイズは、例えば150mm~200mm程度であってもよい。第2凹面鏡5のサイズは、例えば200mm~350mm程度であってもよい。
【0054】
第1凹面鏡3のサイズは、第1凹面鏡3の反射面3aの面積、または第1凹面鏡3の反射面3aの正面視における面積で規定してもよい。第2凹面鏡5のサイズは、第2凹面鏡5の反射面5aの面積、または第2凹面鏡5の反射面5aの正面視における面積で規定してもよい。
【0055】
第1凹面鏡3は、反射面3aの形状が自由曲面である自由曲面凹面鏡であってもよい。第2凹面鏡5は、反射面5aの形状が自由曲面である自由曲面凹面鏡であってもよい。第1凹面鏡3および第2凹面鏡5の反射面3a,5aの形状が自由曲面である場合、反射面3a,5aの形状を、空中像Rの歪みを効果的に低減する形状とすることが容易になる。
その結果、空中像Rの歪みを効果的に低減することが可能となる。
【0056】
反射面3a,5aを規定する自由曲面は、以下に示す式(1)および式(2)によって規定されるXY多項式面(SPS XYP面ともいう)であってもよい。XY多項式面は、基準コーニック面に追加される10次までの多項式に展開される。したがって、式(1)および式(2)において、mとnとの和は、10以下である。式(1)において、zはz軸(光軸)に平行な面のサグ量であり、cは頂点曲率であり、rは半径方向の距離(すなわち、r
2=x
2+y
2)であり、kはコーニック定数であり、C
jは単項式x
my
nの係数である。
【数1】
【数2】
【0057】
自由曲面凹面鏡は、例えば、アルミニウム(Al)等の金属板の面を、コンピュータの数値制御による切削加工法等によって、自由曲面の凹面となるように削り出すことによって作製することができる。
【0058】
空中像表示装置1は、第1凹面鏡3によって反射された画像光Lが、第1凹面鏡3と第2凹面鏡5との間の空間を伝播するように構成されていてもよい。即ち、
図1に示すように、第1凹面鏡3と第2凹面鏡5との間の画像光Lの光路は、他の光学部材が存在しない空間伝播光路であってもよい。この場合、第1凹面鏡3と第2凹面鏡5との間の光路における画像光Lの損失を低減することができ、その結果、空中像Rの輝度の低下が発生することを抑えることができる。あるいは、空中像Rの十分な輝度を維持しつつ、表示面2aに表示する画像の輝度を低下させることもできるため、空中像表示装置1の消費電力を削減することが可能となる。
【0059】
空中像Rの仮想結像面9に平行な方向(
図1における略Y方向)に沿って、第2凹面鏡5の背面側から第2凹面鏡5を見たとき、第2凹面鏡5は、表示装置2および第1凹面鏡3に重なっている構成であってもよい。この構成の場合、表示装置2および反射光学系8の占有空間を削減し小さくすることができるため、空中像表示装置1を小型化できる。その結果、空中像表示装置1の内部における画像光Lの光路長を短くできるため、不所望な散乱、干渉等による画像光Lの損失を低減することができる。ひいては、空中像表示装置1の表示品位を向上させることができる。また、第2凹面鏡5の反射面5aは、表示装置2の表示面2aおよび第1凹面鏡3の反射面3aに重なっている構成であってもよい。即ち、反射光学系8の光路に直接関係する部位の位置関係を規定してもよい。
【0060】
空中像Rの仮想結像面9にほぼ直交する方向から視認者が視認することから、空中像Rの仮想結像面9に平行な方向は、空中像表示装置1の高さ方向となる。また、空中像Rの仮想結像面9に直交する方向は、空中像表示装置1の厚さ方向(奥行方向)になる。上記の構成により、空中像表示装置1の少なくとも厚さ(奥行)を薄くすることができる。
【0061】
空中像Rの仮想結像面9に平行な方向(
図1における略Y方向)に沿って、第2凹面鏡5の背面側から第2凹面鏡5を見たとき、第2凹面鏡5は、表示装置2および第1凹面鏡3を内包している構成であってもよい。この構成の場合、表示装置2および反射光学系8の占有空間をより削減し小さくすることができるため、空中像表示装置1をより小型化できる。その結果、空中像表示装置1の内部における画像光Lの光路長をより短くできるため、不所望な散乱、干渉等による画像光Lの損失を効果的に低減することができる。ひいては、空中像表示装置1の表示品位を効果的に向上させることができる。また、第2凹面鏡5の反射面5aは、表示装置2の表示面2aと、第1凹面鏡3の反射面3aとを内包している構成であってもよい。即ち、反射光学系8の光路に直接関係する部位の位置関係を規定してもよい。この構成により、空中像表示装置1の少なくとも厚さ(奥行)をより薄くすることができる。
【0062】
空中像表示装置1は、車両、船舶、航空機等の移動体、即ち利用者が搭乗する乗り物に搭載されていてもよい。車両は、例えば、自動車、産業車両、鉄道車両、生活車両、滑走路を走行する固定翼機等を含む。自動車は、例えば、乗用車、トラック、バス、二輪車、トロリーバス等を含む。産業車両は、例えば、農業および建設向けの産業車両等を含む。産業車両は、例えば、フォークリフト、ゴルフカート等を含む。農業向けの産業車両は、例えば、トラクター、耕耘機、移植機、バインダー、コンバイン、芝刈り機等を含む。建設向けの産業車両は、例えば、ブルドーザー、スクレーパー、ショベルカー、クレーン車、ダンプカー、ロードローラ等を含む。車両は、人力で走行するものを含んでいてもよい。船舶は、例えば、マリンジェット、ボート、タンカー等を含む。航空機は、例えば、固定翼機、回転翼機等を含む。空中像表示装置1は、移動体のダッシュボード内に配置されていてもよい。
【0063】
空中像表示装置1を含む移動体は、利用者(例えば、移動体の運転者)に歪みが少なく高輝度および高コントラスト比を有する空中像Rを視認させることができる。空中像Rは、移動体の状態(例えば、移動体の速度、加速度、姿勢等)、移動体の周囲状況等に関する情報を含んでいてもよい。
【0064】
空中像表示装置1は、乗り物に設置されるヘッドアップディスプレイであってもよい。この場合、例えば、乗り物のフロントウィンドシールドの一部を反射部材とし、その反射部材を第2凹面鏡5に代えて使用してもよい。そして、その反射部材を介して利用者が空中像Rを視認する構成であってもよい。反射部材は、半透過反射型(約半分の光を透過させ、約半分の光を反射するもの)であってもよい。
【0065】
空中像表示装置1は、
図1に示す縦断面において、空中像表示装置1を側方からみたときに、第1凹面鏡3と第2凹面鏡5との間に、表示装置2が位置している構成であってもよい。換言すると、第1凹面鏡3が最下位置にあり、第2凹面鏡5が最上位置にある構成であってもよい。この場合、空中像表示装置1の高さを低くし、小型化することが容易になる。
【0066】
また、
図1に示す空中像表示装置1は、表示装置2が画像光Lに重ならない(即ち、画像光Lを遮らない)位置にある構成であってもよい。この場合、表示装置2が空中像Rの障害になること、例えば空中像Rの一部が欠落すること、空中像Rの一部が暗くなること等を抑えることができる。表示装置2と、表示装置2に最も近い画像光Lと、の距離(最短距離)は、2mm以上であってもよく、10mm以上であってもよいが、これらの範囲に限らない。
【0067】
また、
図1に示す空中像表示装置1は、第1凹面鏡3が、第2凹面鏡5を空間に延在して成る曲面空間(立体空間ともいう)に内包されている構成であってもよい。この場合、反射光学系8および空中像表示装置1が小型化されたものになる。また、表示装置2および第1凹面鏡3が、上記曲面空間に内包されている構成であってもよい。この場合、反射光学系8および空中像表示装置1がさらに小型化されたものになる。
【0068】
空中像表示装置1は、利用者7の顔を撮像するカメラを備えていてもよい。カメラは、赤外光カメラであってもよく、可視光カメラであってもよい。カメラは、CCDイメージセンサ、またはCMOSイメージセンサを含んでいてもよい。制御装置6は、カメラから出力される撮像データに基づいて、利用者7の眼の位置を検出してもよい。制御装置6は、検出した眼の位置に基づいて、表示面2aに表示する画像を変形させてもよい。この場合、利用者7の眼の位置が移動したときも、空中像Rの歪みを低減することが可能となる。空中像表示装置1が移動体に搭載される場合、カメラは移動体に取り付けられていてもよい。カメラは、例えば、移動体のダッシュボード内に位置していてもよく、ダッシュボード上に位置していてもよい。
【0069】
空中像表示装置1は、反射光学系8の第1凹面鏡3および第2凹面鏡5のうちの少なくとも一方を移動させる駆動装置を備えていてもよい。この駆動装置は、上記の調整部材を含んでもよい。制御装置6は、検出した眼の位置に基づいて、第1凹面鏡3および第2凹面鏡5のうちの少なくとも一方を移動させてもよい。この場合、利用者7の眼の位置が移動したときも、空中像Rの歪みを低減することが可能となる。駆動装置は、例えばモータ、圧電素子等を含んで構成されていてもよい。
【0070】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0071】
本開示の空中像表示装置によれば、空中像の表示品位が向上した空中像表示装置を提供することができる。
【0072】
本開示は、以下の構成(1)~(8)で実施可能である。
(1)表示面を有する表示部と、
前記表示面から射出された画像光を、前記表示部に向かう方向とは異なる方向に反射する第1凹面鏡と、
前記第1凹面鏡によって反射された前記画像光を、前記第1凹面鏡に向かう方向とは異なる方向に反射するとともに、実像の空中像として結像させる第2凹面鏡と、を備え、
前記第1凹面鏡の湾曲度が前記第2凹面鏡の湾曲度よりも大きく、
前記表示面を含む第1仮想平面に対する前記第1凹面鏡の傾斜角度が、前記空中像の仮想結像面を含む第2仮想平面に対する前記第2凹面鏡の傾斜角度よりも小さい、空中像表示装置。
【0073】
(2)前記第2凹面鏡の反射面の最大径の長さが前記第1凹面鏡の反射面の最大径の長さよりも大きい、上記構成(1)に記載の空中像表示装置。
【0074】
(3)前記第1凹面鏡の湾曲度が前記第2凹面鏡の湾曲度よりも大きい、上記構成(1)または(2)に記載の空中像表示装置。
【0075】
(4)前記第1凹面鏡および前記第2凹面鏡は、自由曲面凹面鏡である、上記構成(1)~(3)のいずれかに記載の空中像表示装置。
【0076】
(5)前記第1凹面鏡の前記傾斜角度が35度以下であり、前記第2凹面鏡の前記傾斜角度が50度以下である、上記構成(1)~(4)のいずれかに記載の空中像表示装置。
【0077】
(6)前記第1凹面鏡によって反射された前記画像光は、前記第1凹面鏡と前記第2凹面鏡との間の空間のみを伝播する、上記構成(1)~(5)のいずれかに記載の空中像表示装置。
【0078】
(7)前記仮想結像面に平行な方向に沿って、前記第2凹面鏡の背面側から前記第1凹面鏡を見たとき、前記第2凹面鏡は、前記表示部および前記第1凹面鏡に重なっている、上記構成(1)~(6)のいずれかに記載の空中像表示装置。
【0079】
(8)前記仮想結像面に平行な方向に沿って、前記第2凹面鏡の背面側から前記第1凹面鏡を見たとき、前記第2凹面鏡は、前記表示部および前記第1凹面鏡を内包している、上記構成(1)~(6)のいずれかに記載の空中像表示装置。
【産業上の利用分野】
【0080】
本開示の空中像表示装置は、空中像をタッチレスで操作することを可能にし、その結果以下のような種々の製品分野において利用できるが、以下に限るものではない。例えば、空中像を伴って会話・通信等を行う通信装置、医師が患者に空中像を通して問診を行う医療用の問診装置、自動車等の乗り物用のナビゲーション装置・運転制御装置、店舗等用の注文発注受注装置・レジスタ装置、建築物・エレベーター等用の操作パネル、空中像を伴って授業をし、または授業を受ける学習装置、空中像を伴って業務連絡・指示等を行う事務機器、空中像を伴って遊戯を行う遊戯機、遊園地・ゲームセンター等で地面・壁面等に画像を投影する投影装置、大学・医療機関等において空中像によって模擬実験等を行うためのシミュレーター装置、市場・証券取引所等で価格等を表示する大型ディスプレイ、空中像の映像を鑑賞する映像鑑賞装置などである。
【符号の説明】
【0081】
1 空中像表示装置
2 表示部(表示装置)
2a 表示面
3 第1凹面鏡
3a 反射面
5 第2凹面鏡
5a 反射面
6 制御装置
7 利用者
8 反射光学系
9 仮想結像面
R 空中像