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特許7654051カルボキシ基含有イミドウレタン樹脂及びその製造方法、並びに樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】カルボキシ基含有イミドウレタン樹脂及びその製造方法、並びに樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/64 20060101AFI20250324BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20250324BHJP
   C08G 73/16 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
C08G18/64 038
C08G59/42
C08G73/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023192736
(22)【出願日】2023-11-13
【審査請求日】2024-06-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】矢口 和樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 志門
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-096061(JP,A)
【文献】特開2016-124877(JP,A)
【文献】特開2017-036407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/64
C08G 59/42
C08G 73/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂に由来する構成単位と、ポリイソシアネート(d)に由来する構成単位とを有し、
前記カルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂が、ポリオール(a)に由来する構成単位、ポリアミン(b)に由来する構成単位、及びテトラカルボン酸二無水物(c)に由来する構成単位を有し、
前記ポリアミン(b)が、ダイマージアミンであるカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂。
【請求項2】
数平均分子量が2,000~100,000である請求項1に記載のカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂。
【請求項3】
酸価が5~100mgKOH/gである請求項1に記載のカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂。
【請求項4】
イミド結合濃度が0.20~2.00mmol/gである請求項1に記載のカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂。
【請求項5】
ウレタン結合濃度が0.20~2.00mmol/gである請求項1に記載のカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂。
【請求項6】
ポリオール(a)、ポリアミン(b)、及びテトラカルボン酸二無水物(c)を含む原料成分を重合して、その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂を得る工程と、
前記カルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂とポリイソシアネート(d)を反応させて、カルボキシ基含有イミドウレタン樹脂を得る工程と、を有し、
前記ポリアミン(b)が、ダイマージアミンであるカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂と、
1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、を含有する樹脂組成物。
【請求項8】
非アミド系の有機溶剤をさらに含有する請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記有機溶剤が、メチルエチルケトン、トルエン、及び炭酸ジメチルからなる群より選択される少なくとも一種である請求項8に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシ基含有イミドウレタン樹脂及びその製造方法、並びに樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、耐摩耗性、屈曲性、及び密着性などの諸物性に優れているとともに、各種の加工法への適性を有する。このため、ポリウレタン樹脂は、各種コーティング剤、インキ、及び塗料等のバインダーや、フィルム及びシートをはじめとする各種の成形物の構成材料等として広く用いられている。なかでも、車輌や電子材料等の分野で用いられるポリウレタン樹脂に対しては、優れた耐久性を有することが要求されている。
【0003】
ポリウレタン樹脂の機能を制御する手法として、側鎖にカルボキシ基を導入する手法が知られている。例えば、耐熱性等の特性が向上した硬化物を形成しうる、カルボキシ基を有するポリウレタン樹脂とエポキシ樹脂とを組み合わせた接着剤が提案されている(特許文献1)。なお、このようなカルボキシ基を有するポリウレタン樹脂を含有する樹脂組成物に求められる特性としては、柔軟性、耐熱性、低温乾燥性、低吸水性、低誘電特性、及びエポキシ樹脂との相溶性等を挙げることができる。
【0004】
また、カルボキシ基を含有するポリウレタン樹脂の柔軟性を高めるべく、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)等のテトラカルボン酸二無水物とポリオールの反応物であるカルボキシ基含有ポリオールを用いて得られる、カルボキシ基を有するポリウレタン樹脂が提案されている(特許文献2)。さらに、耐熱性を向上させるべく、イミド結合を導入したポリウレタン樹脂が提案されている(特許文献3)。
【0005】
また、低誘電特性等の特性を向上させた接着剤組成物を提供すべく、ダイマージオールを用いて製造されるポリイミドウレタン樹脂が提案されている(特許文献4)。さらに、低沸点溶剤への溶解性が向上したイミド樹脂として、ダイマージアミン、ポリオール、及びテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られる、カルボキシ基を有するエステルイミド樹脂が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6499860号公報
【文献】特開2019-1952号公報
【文献】特開2011-94037号公報
【文献】特許第7014296号公報
【文献】特開2022-96061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2で提案されたポリウレタン樹脂は、柔軟性が良好である一方で、耐熱性が必ずしも良好であるとはいえなかった。また、特許文献3で提案されたポリウレタン樹脂は、耐熱性が良好である一方で、柔軟性及び低沸点溶剤への溶解性が必ずしも良好であるとはいえなかった。なお、イミド結合の濃度を低下させることで低沸点溶剤への溶解性はある程度向上するが、耐熱性が低下しやすくなるものであった。特許文献4で提案されたポリイミドウレタン樹脂は、ダイマージオールに由来する疎水性の高い構造を含むため、低吸水性及び低誘電特性が良好であった。しかし、柔軟性及び低沸点溶剤への溶解性が必ずしも良好ではないとともに、カルボキシ基の導入箇所が末端に集中しているため、硬化物の架橋密度及び耐熱性を高めることが困難であった。
【0008】
なお、特許文献5で提案されたエステルイミド樹脂は、ダイマージアミンに由来するイミド構造を含むため、耐熱性、柔軟性、及び低沸点溶剤への溶解性が良好なものであった。しかし、硬化剤として用いられるエポキシ樹脂との相溶性が低いため、エポキシ樹脂と組み合わせて得られる組成物の溶液安定性が必ずしも良好であるとはいえず、硬化不良が生じやすくなる等の課題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、柔軟性、低吸水性、低誘電特性、及びエポキシ樹脂との相溶性に優れているとともに、低沸点溶剤に良好に溶解しうるカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂、並びにその製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の課題とするところは、柔軟性、低吸水性、耐熱性、及び低誘電特性に優れた硬化層等の硬化物を形成することが可能な、硬化剤等として作用するエポキシ樹脂と良好に相溶した樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明によれば、以下に示すカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂が提供される。
[1]その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂に由来する構成単位と、ポリイソシアネート(d)に由来する構成単位とを有し、前記カルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂が、ポリオール(a)に由来する構成単位、ポリアミン(b)に由来する構成単位、及びテトラカルボン酸二無水物(c)に由来する構成単位を有し、前記ポリアミン(b)が、ダイマージアミンであるカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂。
[2]数平均分子量が2,000~100,000である前記[1]に記載のカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂。
[3]酸価が5~100mgKOH/gである前記[1]又は[2]に記載のカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂。
[4]イミド結合濃度が0.20~2.00mmol/gである前記[1]~[3]のいずれかに記載のカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂。
[5]ウレタン結合濃度が0.20~2.00mmol/gである前記[1]~[4]のいずれかに記載のカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂。
【0012】
また、本発明によれば、以下に示すカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂の製造方法が提供される。
[6]ポリオール(a)、ポリアミン(b)、及びテトラカルボン酸二無水物(c)を含む原料成分を重合して、その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂を得る工程と、前記カルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂とポリイソシアネート(d)を反応させて、カルボキシ基含有イミドウレタン樹脂を得る工程と、を有するカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂の製造方法。
【0013】
さらに、本発明によれば、以下に示す樹脂組成物が提供される。
[7]前記[1]~[5]のいずれかに記載のカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂と、1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、を含有する樹脂組成物。
[8]非アミド系の有機溶剤をさらに含有する前記[7]に記載の樹脂組成物。
[9]前記有機溶剤が、メチルエチルケトン、トルエン、及び炭酸ジメチルからなる群より選択される少なくとも一種である前記[8]に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、柔軟性、低吸水性、低誘電特性、及びエポキシ樹脂との相溶性に優れているとともに、低沸点溶剤に良好に溶解しうるカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂、並びにその製造方法を提供することができる。
【0015】
また、本発明によれば、柔軟性、低吸水性、耐熱性、及び低誘電特性に優れた硬化層等の硬化物を形成することが可能な、硬化剤等として作用するエポキシ樹脂と良好に相溶した樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<カルボキシ基含有イミドウレタン樹脂>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂(以下、単に「イミドウレタン樹脂」とも記す)の一実施形態は、その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂に由来する構成単位と、ポリイソシアネート(d)に由来する構成単位とを有する樹脂である。カルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂は、ポリオール(a)に由来する構成単位、ポリアミン(b)に由来する構成単位、及びテトラカルボン酸二無水物(c)に由来する構成単位を有する。そして、ポリアミン(b)は、ダイマージアミンである。以下、本実施形態のイミドウレタン樹脂の詳細について説明する。
【0017】
(カルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂)
本実施形態のイミドウレタン樹脂は、その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂(以下、単に「カルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂」とも記す)に由来する構成単位と、ポリイソシアネート(d)に由来する構成単位とを有する樹脂である。すなわち、本実施形態のイミドウレタン樹脂は、好ましくは、その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂と、ポリイソシアネート(d)との反応物である。そして、カルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂は、ポリオール(a)に由来する構成単位、ポリアミン(b)に由来する構成単位、及びテトラカルボン酸二無水物(c)に由来する構成単位を有する。なお、カルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂は、ポリオール(a)に由来する構成単位、ポリアミン(b)に由来する構成単位、及びテトラカルボン酸二無水物(c)に由来する構成単位のみで実質的に構成されていることが好ましい。
【0018】
[ポリオール(a)]
ポリオール(a)は、その分子中に2つの水酸基を有する化合物(ジオール)である。ポリオール(a)としては、ポリカーボネートジオールやポリエステルジオールを用いることが好ましい。なかでも、ポリカーボネートジオールをポリオール(a)として用いることで、耐熱性にさらに優れた硬化層等の硬化物を形成することができる。また、ポリエステルジオールをポリオール(a)として用いることで、樹脂の柔軟性がより向上するとともに、柔軟性にさらに優れた硬化層等の硬化物を形成することができる。
【0019】
ポリカーボネートジオールとしては、例えば、炭酸ジメチル等のジアルキルカーボネートと、分子中に2つの水酸基を有するジオール化合物との反応物を用いることができる。また、市販のポリカーボネートジオールを用いることもできる。ジオール化合物としては、炭素数2~10の直鎖状又は側鎖を持ったジオールを挙げることができる。
【0020】
ジオール化合物としては、脂肪族ジオール及び脂環族ジオール等を挙げることができる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、及び2-メチル-1,8-オクタンジオール等を挙げることができる。また、脂環族ジオールとしては、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。ポリウレタン樹脂の柔軟性をさらに向上させる観点から、脂肪族ジオールが好ましく、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びネオペンチルグリコールがさらに好ましい。
【0021】
ポリエステルジオールとしては、脂肪族系ジカルボン酸類及び芳香族系ジカルボン酸の少なくともいずれかと、低分子量グリコール類とを縮重合したもの等を挙げることができる。脂肪族系ジカルボン酸類としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、及びアゼライン酸等を挙げることができる。芳香族系ジカルボン酸としては、イソフタル酸及びテレフタル酸等を挙げることができる。また、低分子量グリコール類としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、3-メチルペンタンジオール、1,6-ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及び1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等を挙げることができる。
【0022】
ポリオール(a)としては、上記のポリカーボネートジオールやポリエステルジオール以外のポリマーポリオールを用いることもできる。ポリカーボネートジオール以外のポリマーポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリラクトンポリオール、ダイマージオール、及びその他のポリマーポリオールを挙げることができる。さらに、分子量400以下の短鎖ポリオールを併用することもできる。なお、短鎖ポリオールを適宜用いることで、イミドウレタン樹脂の酸価やウレタン結合濃度等を調整することができる。
【0023】
ポリオール(a)の数平均分子量(Mn)は、400~3,500であることが好ましく、500~2,500であることがさらに好ましい。ポリオール(a)の数平均分子量(Mn)が400未満であると、イミドウレタン樹脂のウレタン結合濃度が増加し、イミドウレタン樹脂や硬化物等の柔軟性が低下しやすくなるとともに、吸水性が高まりやすくなることがある。一方、ポリオール(a)の数平均分子量(Mn)が3,500超であると、イミドウレタン樹脂の酸価を高めることが困難になることがあり、硬化物等の耐熱性が低下する場合がある。
【0024】
[ポリアミン(b)]
ポリアミン(b)としては、ダイマージアミンを用いる。ダイマージアミンをポリアミン(b)として用いることで、ダイマージアミンに由来するイミド結合をイミドウレタン樹脂中に導入することができる。一般的に、樹脂中にイミド結合を導入すると、樹脂の耐熱性が高まる一方で、柔軟性や低沸点溶剤への溶解性が低下する傾向にある。これに対して、ダイマージアミンに由来するイミド結合を導入することで、得られるイミドウレタン樹脂の耐熱性だけでなく、柔軟性及び低沸点溶剤への溶解性をも高めることができる。
【0025】
カルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂は、必要に応じて、ポリアミン(b)以外のポリアミン(ジアミン)に由来する構成単位をさらに有してもよい。ポリアミン(b)以外のポリアミン(ポリアミン(b2))としては、芳香族ジアミン、環状脂肪族ジアミン、及び鎖状脂肪族ジアミン等を挙げることができる。
【0026】
芳香族ジアミンとしては、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、2,4-ジアミノトルエン、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス-p-(1,1-ジメチル-5-アミノ-ペンチル)ベンゼン、1-イソプロピル-2,4-m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’-メチレンビス(2,6-キシリジン)、及びα,α’-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン等を挙げることができる。
【0027】
環状脂肪族ジアミンとしては、ジ(p-アミノシクロヘキシル)メタン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン、及びノルボルナンジアミン等を挙げることができる。また、鎖状脂肪族ジアミンとしては、へキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、4,4-ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11-ジアミノドデカン、1,2-ビス-3-アミノプロポキシエタン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、3-メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘプタメチレンジアミン、3-メチルへプタメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,17-ジアミノエイコサデカン、1,10-ジアミノ-1,10-ジメチルデカン、及び1,12-ジアミノオクタデカン等を挙げることができる。
【0028】
[テトラカルボン酸二無水物(c)]
テトラカルボン酸二無水物(b)としては、無水トリメリット酸とエチレングリコールのエステル、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、エタンテトラカルボン酸二無水物、及び3,3’,4,4’-ビシクロへキシルテトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
【0029】
耐熱性等の観点から、テトラカルボン酸二無水物(b)は芳香族系テトラカルボン酸二無水物であることが好ましく、無水トリメリット酸とエチレングリコールのエステル、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、及び4,4’-オキシジフタル酸無水物であることがさらに好ましい。
【0030】
(ポリイソシアネート(d))
本実施形態のイミドウレタン樹脂は、ポリイソシアネート(d)に由来する構成単位を有する。ポリイソシアネート(c)は、好ましくは、その分子中に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネートである。ジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0031】
芳香族ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジュリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、及び4,4’-ジイソシアネートジベンジル等を挙げることができる。
【0032】
脂肪族ジイソシアネートとしては、メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,10-デカメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0033】
脂環族ジイソシアネートとしては、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、及び水素添加キシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0034】
反応性、耐熱性、柔軟性、及び溶解性等の観点から、ポリイソシアネート(d)は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)等が好ましい。
【0035】
(カルボキシ基含有イミドウレタン樹脂)
例えば、特許文献3で提案されている、イミド結合を導入した従来のポリウレタン樹脂は、イミド結合とウレタン結合が隣接して配置された構造を有するため、分子間凝集力が高いハードセグメントが形成されており、柔軟性が損なわれやすい。また、ポリイソシアネートとテトラカルボン酸二無水物を反応させてポリイミドを形成する重合反応は、高温条件下で実施する必要がある、又は長時間を要するため、製造面で不利である。
【0036】
これに対して、本実施形態のイミドウレタン樹脂は、その末端に水酸基を有する上述のカルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂と、上述のポリイソシアネート(d)とを反応させて得られる反応物であることから、特許文献3で提案されているポリウレタン樹脂と異なり、イミド結合とウレタン結合が隣接して配置されておらず、これらの結合が相互に離隔した位置に配置された構造を有する。このため、本実施形態のイミドウレタン樹脂は、イミド結合が導入されることで耐熱性が向上しているだけでなく、柔軟性にも優れている。
【0037】
また、本実施形態のイミドウレタン樹脂は、ダイマージアミンに由来するイミド結合を有するため、ダイマージアミン以外の化合物に由来するイミド結合を有するイミドウレタン樹脂に比して、柔軟性、低吸水性、及び低誘電特性に優れているとともに、低沸点溶剤により良好に溶解させことができる。さらに、本実施形態のイミドウレタン樹脂は、エポキシ基との反応点となるカルボキシ基を高分子鎖の側鎖に有するため、高分子鎖の末端にカルボキシ基を有するウレタン樹脂等に比して、エポキシ樹脂を用いて硬化させた硬化物の架橋密度が高く、より耐熱性に優れた硬化層等の硬化物を形成することができる。
【0038】
イミドウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)は、2,000~100,000であることが好ましく、5,000~40,000であることがさらに好ましい。イミドウレタン樹脂の数平均分子量が2,000未満であると、成膜性がやや低下するとともに、形成される硬化層等の硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、イミドウレタン樹脂の数平均分子量が100,000超であると、非アミド系の有機溶剤への溶解性が低下する場合がある。
【0039】
本明細書における樹脂の「数平均分子量(Mn)」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値を意味する。GPCは、例えば、以下の装置及び条件にて測定することができる。
【0040】
(1)機器装置:商品名「HLC-8020」(東ソー社製)
(2)カラム:商品名「TSKgel G2000HXL」、「G3000HXL」、
「G4000GXL」(東ソー社製)
(3)溶媒:THF
(4)流速:1.0ml/min
(5)試料濃度:2g/L
(6)注入量:100μL
(7)温度:40℃
(8)検出器:型番「RI-8020」(東ソー社製)
(9)標準物質:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0041】
イミドウレタン樹脂の酸価は、5~100mgKOH/gであることが好ましく、8~70mgKOH/gであることがさらに好ましく、12~35mgKOH/gであることが特に好ましい。ポリウレタン樹脂の酸価が5mgKOH/g以上であると、エポキシ樹脂等の硬化剤と反応させて形成される硬化物(架橋物)の架橋密度が高くなり、硬化物の耐熱性をより向上させることができる。また、ポリウレタン樹脂の酸価が100mgKOH/g以下であると、エポキシ樹脂等の硬化剤と反応させて形成される硬化物(架橋物)の架橋密度が過度に高まることを抑制することができる。これにより、歪の発生を抑制することが可能となり、硬化物の柔軟性を向上させることができる。
【0042】
イミドウレタン樹脂の酸価(実測値)は、イミドウレタン樹脂をメチルエチルケトン(MEK)等の有機溶剤に溶解させて調製した溶液を試料として用い、JIS K1557-5:2007に準拠した方法にしたがって測定することができる。
【0043】
イミドウレタン樹脂のイミド結合濃度(ダイマージアミンに由来するイミド結合の濃度)は、0.20~2.00mmol/gであることが好ましく、0.40~1.70mmol/gであることがさらに好ましく、0.40~1.40mmol/gであることが特に好ましい。イミド結合濃度が0.20mmol/g未満であると、低吸水性及び低誘電特性がやや低下することがある。一方、イミド結合濃度が2.00mmol/g超であると、柔軟性がやや低下することがある。
【0044】
「イミド結合濃度」とは、イミドウレタン樹脂1g当たりのイミド結合の量(mmol)をいう。イミドウレタン樹脂のイミド結合濃度は、例えば、ポリアミン(b)の量(mol)、及びポリオール(a)とテトラカルボン酸二無水物(c)を含む仕込み固形分量(g)を調整することによって制御することができる。なお、イミドウレタン樹脂のウレタン結合濃度(理論値)は、下記式(A)より算出することができる。
イミドウレタン樹脂のイミド結合濃度(理論値)=ポリアミン(b)の量(mol)×ポリアミン(b)中のアミン基の数×1,000/仕込み固形分量(g) ・・・(A)
【0045】
イミドウレタン樹脂のウレタン結合濃度は、0.20~2.00mmol/gであることが好ましく、0.40~1.70mmol/gであることがさらに好ましく、0.55~1.40mmol/gであることが特に好ましい。ウレタン結合濃度が0.20mmol/g未満であると、エポキシ樹脂との相溶性がやや低下することがある。また、イミドウレタン樹脂のウレタン結合濃度が2.00mmol/g超であると、エポキシ樹脂との相溶性がより高まる一方で、柔軟性及び低吸水性がやや低下することがある。
【0046】
「ウレタン結合濃度」とは、イミドウレタン樹脂1g当たりのウレタン結合の量(mmol)をいう。イミドウレタン樹脂のウレタン結合濃度は、例えば、ポリイソシアネート(d)の量(mol)、及びポリオール(a)とテトラカルボン酸二無水物(c)を含む仕込み固形分量(g)を調整することによって制御することができる。なお、イミドウレタン樹脂のウレタン結合濃度(理論値)は、下記式(B)より算出することができる。
イミドウレタン樹脂のウレタン結合濃度(理論値)=ポリイソシアネート(d)の量(mol)×ポリイソシアネート(d)中のイソシアネート基の数×1,000/仕込み固形分量(g) ・・・(B)
【0047】
イミドウレタン樹脂のウレタン結合濃度が高いほど、エポキシ樹脂との相溶性が向上する傾向にある。但し、ウレタン結合濃度が所定の範囲内である場合に、イミド結合濃度が高くなると、エポキシ樹脂との相溶性が低下する傾向にある。すなわち、エポキシ樹脂との相溶性をより向上させる等の観点からは、ウレタン結合濃度とイミド結合濃度のバランスが重要である。具体的には、イミドウレタン樹脂の、イミド結合濃度(mmol/g)に対する、ウレタン結合濃度(mmol/g)の比(ウレタン/イミド)の値は、0.1~5.0であることが好ましく、0.3~3.2であることがさらに好ましい。上記の比の値が0.1未満であると、エポキシ樹脂との相溶性の向上効果がやや低下することがある。一方、上記の比の値が5.0超であると、低吸水性及び低誘電特性がやや低下することがある。
【0048】
また、イミドウレタン樹脂のウレタン結合とイミド結合の合計濃度は、0.5~4.0mmol/gであることが好ましく、0.8~3.2mmol/gであることがさらに好ましい。ウレタン結合とイミド結合の合計濃度が0.8mmol/g未満であると、耐熱性や低誘電特性の向上効果がやや低下することがある。一方、ウレタン結合とイミド結合の合計濃度が3.2mmol/g超であると、柔軟性がやや低下することがある。
【0049】
(イミドウレタン樹脂の製造方法)
イミドウレタン樹脂は、例えば、以下に示す方法にしたがって製造することができる。まず、ポリオール(a)、ポリアミン(b)、テトラカルボン酸二無水物(c)、及び有機溶剤を混合し、撹拌しながら100~150℃で1~7時間程度反応させて、その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂を得る。次いで、水酸基とイソシアネート基のモル比が概ね1.0(OH/NCO≒1.0)となるように、ポリイソシアネート(d)を添加して、50~120℃で1~12時間程度反応させる。その後、必要に応じて有機溶剤で希釈するとともに、冷却することで、目的とするカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂を樹脂溶液の状態で得ることができる。
【0050】
有機溶剤としては、ポリオール(a)、ポリアミン(b)、テトラカルボン酸二無水物(c)、及びポリイソシアネート(d)のいずれとも反応しない有機溶剤を用いることが好ましい。なかでも、非アミド系の有機溶剤を用いることが好ましい。非アミド系の有機溶剤を用いて反応させることで、得られるイミドウレタン樹脂の溶液をそのまま塗料や組成物等として用いることができ、低温かつ短時間で乾燥させたり、硬化させたりすることができる。
【0051】
非アミド系の有機溶剤としては、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、炭酸ジメチル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン等を挙げることができる。なかでも、イミドウレタン樹脂の溶解性及び乾燥容易性等の観点から、トルエン、メチルエチルケトン、炭酸ジメチル、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノンが好ましく、トルエン、メチルエチルケトン、及び炭酸ジメチルがさらに好ましい。
【0052】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物の一実施形態は、前述のカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂と、1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、を含有する。すなわち、前述のイミドウレタン樹脂を硬化剤であるエポキシ樹脂と反応させて硬化させることで、柔軟性、低吸水性、耐熱性、及び低誘電特性に優れた硬化層等の硬化物を形成することができる。
【0053】
硬化剤として用いるエポキシ樹脂は、1分子中に2以上のエポキシ基を有する。このようなエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、アミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ビキシレノール型エポキシ樹脂、及びグリシジル基を有する化合物等を挙げることができる。
【0054】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、形成する硬化物の機械的強度、柔軟性、及び耐熱性等の観点から、100~10,000g/eqであることが好ましく、100~600g/eqであることがさらに好ましい。
【0055】
エポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)は、反応させるイミドウレタン樹脂との相溶性等の観点から、100~100,000であることが好ましく、300~70,000であることがさらに好ましい。
【0056】
エポキシ樹脂中のエポキシ基と、イミドウレタン樹脂中のカルボキシ基とのモル比を調整することにより、所望とする特性を有する硬化物とすることができる。例えば、エポキシ基/カルボキシル基(モル比)=10/1~1/1となる量でエポキシ樹脂とイミドウレタン樹脂を反応させることが好ましい。上記のモル比の範囲外とすると、架橋性が低下しやすく、得られる硬化物の耐熱性がやや低下することがある。
【0057】
樹脂組成物中、エポキシ樹脂の含有量は、イミドウレタン樹脂(固形分)100質量部に対して、5~200質量部であることが好ましく、10~100質量部であることがさらに好ましい。イミドウレタン樹脂100質量部に対するエポキシ樹脂の含有量を5質量部以上とすることで、架橋性がより良好となる。また、イミドウレタン樹脂100質量部に対するエポキシ樹脂の含有量を200質量部以下とすることで、架橋性が低下しにくくなり、得られる硬化物の耐熱性をより向上させることができる。
【0058】
樹脂組成物は、エポキシ樹脂と前述のイミドウレタン樹脂を所望とする量比で混合することによって調製することができる。調製時には、既述の有機溶剤の存在下で混合してもよく、イミドウレタン樹脂の溶液にエポキシ樹脂を添加して混合してもよい。すなわち、本実施形態の樹脂組成物は、有機溶剤をさらに含有してもよい。低沸点の有機溶剤を用いることで、塗料組成物として利用することができる。塗料組成物とした場合、低温で乾燥及び硬化が可能であるとともに、耐熱性及び接着性等の特性に優れた接着剤等として用いることができる。このような塗料組成物は、例えば、電子部材用途の接着剤や、絶縁保護膜形成用の塗料組成物として有用である。また、塗料組成物は、ソルダーレジスト、電磁波シールドフィルム、及び塗料等の用途や、フレキシブルプリント基板用接着剤、導電性接着剤、及び構造材料用接着剤等の接着剤として用いることができる。
【0059】
有機溶剤は、エポキシ樹脂及びイミドウレタン樹脂のいずれもが溶解しうる有機溶剤であることが好ましい。塗料組成物として用いることを考慮すると、環境や人体等への影響が比較的少ない非アミド系の有機溶剤を用いることが好ましい。また、その沸点が170℃以下である非窒素系の有機溶剤を用いることが好ましい。その沸点が170℃以下の有機溶剤を用いることで、乾燥及び硬化をより低温の条件下で実施することができる。
【0060】
有機溶剤としては、イミドウレタン樹脂を製造する際に用いることができる前述の有機溶剤と同様のものを用いることができる。具体的には、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及び炭酸ジメチル等を用いることができる。なかでも、エポキシ樹脂やイミドウレタン樹脂の溶解性、及び塗料組成物として用いる場合に乾燥効率性等の観点から、トルエン、メチルエチルケトン、及び炭酸ジメチルが好ましい。
【0061】
樹脂組成物には、必要に応じて、前述のイミドウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及び有機溶剤以外のその他の成分をさらに含有させることができる。その他の成分としては、硬化促進剤、イソシアネート系架橋剤、熱可塑性ポリマー、粘着付与樹脂、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、及び充填剤等を挙げることができる。
【0062】
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、所望とする基材等に塗布した後、好ましくは40~200℃、さらに好ましくは130~180℃の温度条件下に保持することで硬化させることができる。
【実施例
【0063】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0064】
<材料の用意>
以下に示す各種の材料を用意した。
【0065】
(ポリオール)
・UH-100:商品名「エタナコール UH-100」、UBE社製、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、数平均分子量984
・UH-200:商品名「エタナコール UH-200」、UBE社製、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、数平均分子量1,968
・P-1050:商品名「クラレポリオール P-1050」、クラレ社製、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとセバシン酸とのポリエステルポリオール、数平均分子量988
・1,6-HD:1,6-ヘキサンジオール
・PP2033:商品名「プリポール2033」、CRODA社製、ダイマージオール、数平均分子量505
【0066】
(ポリアミン)
・P1074:商品名「プリアミン1074」、CRODA社製、ダイマージアミン、数平均分子量529
・ODA:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
・1,3-BAC:1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン
【0067】
(酸無水物)
・TMEG-100:商品名「リカシッド TMEG-100」、新日本理化社製、無水トリメリット酸とエチレングリコールのエステル
・BPADA:4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物
・BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
【0068】
(ポリイソシアネート)
・TDI:トリレンジイソシアネート
・IPDI:イソホロンジイソシアネート
【0069】
(硬化剤)
・エポキシ樹脂A:商品名「YD-017」、日鉄ケミカル&マテリアル社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量1,900g/eq
・エポキシ樹脂B:商品名「XD-1000」、日本化薬社製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量252g/eq
【0070】
<樹脂の製造>
(実施例1)
撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、UH-100 100.0部(0.10mol)、P1074 61.0部(0.12mol)、TMEG-100 64.0部(0.16mol)、及びトルエン40.7部を入れた。130℃で4時間反応させて、その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂を得た。トルエン132.4部を添加して希釈した後、TDI9.9部(0.06mol)を添加し、90℃で4時間反応させた。赤外吸収スペクトル分析によって、遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失したことを確認した後、メチルエチルケトン173.1部を添加して希釈し、室温まで冷却して、固形分濃度40%である樹脂Aの溶液を得た。得られた樹脂Aの数平均分子量(Mn)は30,000、材料の仕込み量から算出したダイマージアミン由来のイミド結合濃度は1.00mmol/g、ウレタン結合濃度は0.50mmol/g、酸価(実測値)は20mgKOH/gであった。
【0071】
(比較例1)
撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、UH-100 100.0部(0.10mol)、及びTMEG-100 9.2部(0.02mol)を入れた。100℃で2時間反応させて、その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステル樹脂を得た。トルエン21.5部を添加して希釈した後、TDI12.9部(0.08mol)を添加し、90℃で4時間反応させた。赤外吸収スペクトル分析によって、遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失したことを確認した後、メチルエチルケトン91.6部を添加して希釈し、室温まで冷却して、固形分濃度40%である樹脂Mの溶液を得た。樹脂Mの数平均分子量(Mn)は30,000、材料の仕込み量から算出したウレタン結合濃度は1.2mmol/g、酸価(実測値)は20mgKOH/gであった。
【0072】
(比較例2)
撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、UH-100 100.0部(0.10mol)、1,6-HD 3.0部(0.03mol)、ODA 18部(0.09mol)、TMEG-100 50.7部(0.12mol)、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)183.7部を入れた。150℃で4時間反応させて、その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂を得た。TDI15.2部(0.09mol)を添加し、90℃で4時間反応させた。赤外吸収スペクトル分析によって、遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失したことを確認した後、NMP91.9部を添加して希釈し、室温まで冷却して、固形分濃度40%である樹脂Nの溶液を得た。樹脂Nの数平均分子量(Mn)は30,000、材料の仕込み量から算出したイミド結合濃度は1.0mmol/g、ウレタン結合濃度は1.0mmol/g、酸価(実測値)は20mgKOH/gであった。
【0073】
(比較例5)
特許文献3の記載に準じて、ポリイソシアネートとテトラカルボン酸二無水物の反応によって形成されるイミド結合を有するイミドウレタン樹脂を製造した。撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、UH-100 100.0部(0.10mol)、及びNMP 169.7部を入れた。60℃に昇温した後、IPDI 40.6部(0.18mol)を添加し、100℃で2時間反応させた。BPDA 32.7部(0.11mol)を添加し、150℃で3時間反応させ、赤外吸収スペクトル分析によって遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失したことを確認し、その末端に酸無水物基を有するイミドウレタン樹脂を得た。1,6-HD 3.5部(0.03mol)を添加し、120℃で3時間反応させた。赤外吸収スペクトル分析によって遊離酸無水物基に由来する1,850cm-1の吸収が消失したことを確認した後、NMP 84.9部を添加して希釈し、室温まで冷却して、固形分濃度40%である樹脂Qの溶液を得た。樹脂Qの数平均分子量(Mn)は10,000、材料の仕込み量から算出したイミド結合濃度は1.0mmol/g、ウレタン結合濃度は1.2mmol/g、酸価(実測値)は20mgKOH/gであった。
【0074】
(実施例2~12)
表1-1に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、固形分濃度40%である樹脂B~Lの溶液を得た。得られた樹脂の物性を表1-1に示す。
【0075】
(比較例3~4、6~7)
表1-2に示す配合としたこと以外は、前述の比較例1又は2と同様にして、樹脂O~P、R~Sの溶液を得た。得られた樹脂の物性を表1-2に示す。
【0076】
<樹脂の評価>
(低沸点溶剤への溶解性)
樹脂の溶液を乾燥後の厚さが40μmとなるようにPETフィルムに塗布した後、加熱条件下で乾燥させて試験片を作成した。得られた試験片を500mm×500mmのサイズにカットした後、常温のメチルエチルケトン(MEK)に10分間浸漬させた。そして、120℃のオーブンで3分間乾燥させて得た試験片について、PETフィルム上の塗膜状態を観察し、以下に示す評価基準にしたがって、低沸点溶剤への樹脂の溶解性を評価した。結果を表1-1及び1-2に示す。
○:PETフィルム上に未溶解の塗膜が残留していなかった。
×:PETフィルム上に未溶解の塗膜が残留していた。
【0077】
(柔軟性)
樹脂の溶液を乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、加熱条件下で乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。形成した塗膜を長さ60mm×幅15mmのサイズにカットして試験片を得た。得られた試験片についてオートグラフ(商品名「AGS-J」、島津製作所製)を使用し、JIS K-7127:1999に準拠した引張試験を室温(25℃)条件下で実施した。そして、試験片の20%モジュラスの値を測定し、以下に示す評価基準にしたがって樹脂の柔軟性を評価した。結果を表1-1及び1-2に示す。
◎:20%モジュラスの値が5MPa未満であった。
〇:20%モジュラスの値が5MPa以上10MPa未満であった。
△:20%モジュラスの値が10MPa以上20MPa未満であった。
×:20%モジュラスの値が20MPa以上であった。
【0078】
(低吸水性)
樹脂の溶液を乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、加熱条件下で乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。塗膜の厚さが約300μmになるように折り重ねた後、熱ラミネート機を使用し、150℃、0.1MPaの条件下で熱圧着した。次いで、500×500mmのサイズにカットして試験片を得た。得られた試験片を25℃の純水に24時間浸漬させた。浸漬前後の試験片の質量を測定するとともに、下記式(C)から吸水率を算出し、以下に示す評価基準にしたがって樹脂の低吸水性を評価した。結果を表1-1及び1-2に示す。
吸水率(%)=(浸漬前の試験片質量/浸漬後の試験片質量)×100
・・・(C)
○:吸水率が1.0%未満であった。
△:吸水率が1.0%以上1.5%未満であった。
×:吸水率が1.5%以上であった。
【0079】
(比誘電率・誘電正接)
樹脂の溶液を、乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、加熱条件下で乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。塗膜の厚さが約150μmになるように折り重ねた後、熱ラミネート機を使用し、150℃、0.1MPaの条件下で熱圧着させ、試験片を作成した。この試験片について、誘電率測定装置(AET・Anritsu社製)を使用し、空洞共振器法により、測定温度23℃、測定周波数1GHzにおける比誘電率及び誘電正接を測定した。そして、以下に示す評価基準にしたがって樹脂の低誘電特性を評価した。結果を表1-1及び1-2に示す。
[比誘電率の評価基準]
○:比誘電率が2.8未満であった。
△:比誘電率が2.8以上3.0未満であった。
×:比誘電率が3.0以上であった。
[誘電正接の評価基準]
○:誘電正接が0.010未満であった。
△:誘電正接が0.010以上0.013未満であった。
×:誘電正接が0.013以上であった。
【0080】
【0081】
【0082】
<樹脂組成物の製造>
(実施例13~24、比較例8~14)
主剤(樹脂)の溶液及び硬化剤(エポキシ樹脂)を表2に示す組成となるように混合して、樹脂組成物を得た。
【0083】
<樹脂組成物の評価>
(エポキシ樹脂との相溶性)
樹脂組成物の外観を観察し、以下に示す基準にしたがってエポキシ樹脂との相溶性を評価した。結果を表2に示す。
○:外観が完全に透明であった。
△:外観がやや不透明であった。
×:外観が完全に不透明であった。
【0084】
(耐熱性)
樹脂組成物を乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、加熱条件下で乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。形成した塗膜を150℃で3時間加熱し、熱硬化させて試験片(硬化膜)を得た。得られた試験片について、以下に示す条件で線膨張係数(CTE、25~275℃)を測定するとともに、以下に示す基準にしたがって硬化膜の耐熱性を評価した。結果を表2に示す。
(1)機器装置:商品名「熱機械分析装置 TMA-7100E」(日立ハイテクサイエンス社製)
(2)プローブ:石英製引張プローブ
(3)荷重:10mN
(4)昇温速度:5℃/min
(5)測定温度範囲:20~320℃
(6)サンプル長:10mm
○:CTEが300ppm/℃未満であった。
△:CTEが300ppm/℃以上、500ppm/℃未満であった。
×:CTEが500ppm/℃以上であった。
【0085】
(柔軟性)
樹脂組成物を乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、加熱条件下で乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。形成した塗膜を150℃で3時間加熱し、熱硬化させて硬化膜を形成した。形成した硬化膜を長さ60mm×幅15mmのサイズにカットして試験片を得た。得られた試験片についてオートグラフ(商品名「AGS-J」、島津製作所製)を使用し、JIS K-7127:1999に準拠した引張試験を室温(25℃)条件下で実施した。そして、試験片の100%モジュラスの値を測定し、以下に示す評価基準にしたがって硬化膜の柔軟性を評価した。結果を表2に示す。
◎:20%モジュラスの値が5MPa未満であった。
○:20%モジュラスの値が5MPa以上15MPa未満であった。
△:20%モジュラスの値が15MPa以上30MPa未満であった。
×:20%モジュラスの値が30MPa以上であった。
【0086】
(低吸水性)
樹脂組成物を乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、加熱条件下で乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。塗膜の厚さが約300μmになるように折り重ねた後、熱プレス機を使用し、100℃、1MPaの条件下で熱圧着した。次いで、150℃で3時間加熱し、熱硬化させて硬化膜を形成した後、500×500mmのサイズにカットして試験片を得た。得られた試験片を25℃の純水に24時間浸漬させた。浸漬前後の試験片の質量を測定するとともに、下記式(C)から吸水率を算出し、以下に示す評価基準にしたがって硬化膜の低吸水性を評価した。結果を表2に示す。
吸水率(%)=(浸漬前の試験片質量/浸漬後の試験片質量)×100
・・・(C)
○:吸水率が0.5%未満であった。
△:吸水率が0.5%以上1.0%未満であった。
×:吸水率が1.0%以上であった。
【0087】
(比誘電率・誘電正接)
樹脂組成物を、乾燥後の厚さが40μmとなるように離型紙に塗布した後、加熱条件下で乾燥させて塗膜(乾燥膜)を形成した。塗膜の厚さが約150μmになるように折り重ねた後、熱ラミネート機を使用し、150℃、0.1MPaの条件下で熱圧着した。さらに、150℃で3時間加熱し、熱硬化させて試験片を形成した。この試験片について、誘電率測定装置(AET・Anritsu社製)を使用し、空洞共振器法により、測定温度23℃、測定周波数1GHzにおける比誘電率及び誘電正接を測定した。そして、以下に示す評価基準にしたがって硬化膜の低誘電特性を評価した。結果を表2に示す。
[比誘電率の評価基準]
○:比誘電率が2.8未満であった。
△:比誘電率が2.8以上3.0未満であった。
×:比誘電率が3.0以上であった。
[誘電正接の評価基準]
○:誘電正接が0.010未満であった。
△:誘電正接が0.010以上0.013未満であった。
×:誘電正接が0.013以上であった。
【0088】
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂は、例えば、フレキシブル基板用の素材等として有用である。
【要約】
【課題】柔軟性、低吸水性、低誘電特性、及びエポキシ樹脂との相溶性に優れているとともに、低沸点溶剤に良好に溶解しうるカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂を提供する。
【解決手段】その末端に水酸基を有するカルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂に由来する構成単位と、ポリイソシアネート(d)に由来する構成単位とを有し、カルボキシ基含有ポリエステルイミド樹脂が、ポリオール(a)に由来する構成単位、ポリアミン(b)に由来する構成単位、及びテトラカルボン酸二無水物(c)に由来する構成単位を有し、ポリアミン(b)が、ダイマージアミンであるカルボキシ基含有イミドウレタン樹脂である。
【選択図】なし