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特許7654078コンプレッサホイールの取付構造および過給機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】コンプレッサホイールの取付構造および過給機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20250324BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
F04D29/28 L
F02B39/00 T
F02B39/00 Q
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023528840
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2021022876
(87)【国際公開番号】W WO2022264313
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂本 慶吾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 永護
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 茂吉
(72)【発明者】
【氏名】秋山 洋二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6566043(JP,B2)
【文献】特開2013-164054(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087414(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0093233(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
F02B 33/00-41/10
F01D 1/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転シャフトと、
前記回転シャフトの外周面に装着されるスリーブと、
前記回転シャフトを軸方向に沿って挿通させる貫通孔が形成されたハブ、および前記ハブの外周面に設けられた複数のブレード、を含むコンプレッサホイールと、を備え、
前記回転シャフトの前記外周面と前記ハブの前記貫通孔とは締り嵌めにより結合され、
前記ハブの背面は、
前記背面の外周縁よりも前記軸方向の一方側に突出して前記スリーブに当接する当接面を含む平坦面であって、前記平坦面の外周端が前記スリーブの外周端よりも径方向における外側に位置するように構成された平坦面と、
前記平坦面の前記外周端から前記背面の前記外周縁に亘って形成される凹面であって、
前記平坦面の前記外周端を一方端として前記一方端から前記軸方向の他方側に向かって延在する第1線分領域であって、前記軸方向に対する傾斜角θ1が0度超45度以下であり、且つ、前記傾斜角θ1が前記軸方向の前記他方側に向かうにつれて大きくなる曲線が、前記第1線分領域の他方端を含む位置に少なくとも形成される第1線分領域、および、
前記第1線分領域の前記他方端から径方向の外周側に向かって延在する第2線分領域であって、前記軸方向に対する傾斜角θ2が45度以上且つ90度以下であり、且つ、前記傾斜角θ2が前記外周側に向かうにつれて大きくなる曲線が、前記第1線分領域との接続部を含む位置に少なくとも形成される第2線分領域、
を含む凹面と、を含み、
前記第1線分領域の前記他方端は、前記軸方向に直交する方向において、前記ハブの前記背面の外形寸法の1/2よりも内周側の位置に設けられた、
コンプレッサホイールの取付構造。
【請求項2】
前記凹面は、
前記平坦面の前記外周端を含む位置に形成された、第1の曲率を有する第1湾曲面と、
前記第1湾曲面に接続するとともに、前記第1の曲率よりも小さい曲率を有する第2湾曲面と、を含む、
請求項1に記載のコンプレッサホイールの取付構造。
【請求項3】
前記コンプレッサホイールの取付構造は、前記回転シャフトの前記外周面と前記ハブの前記貫通孔とを締り嵌めにより結合する少なくとも1つの結合部を有し、
前記少なくとも1つの結合部は、
前記背面の前記外周縁よりも前記軸方向の前記一方側に設けられた一方側結合部を含む、
請求項1に記載のコンプレッサホイールの取付構造。
【請求項4】
前記コンプレッサホイールの取付構造は、前記回転シャフトの前記外周面と前記ハブの前記貫通孔とを締り嵌めにより結合する少なくとも1つの結合部を有し、
前記少なくとも1つの結合部は、
前記ブレードの前縁よりも前記軸方向の前記他方側に少なくとも一部が設けられた他方側結合部を含む、
請求項1に記載のコンプレッサホイールの取付構造。
【請求項5】
前記ハブは、前記ブレードの前記前縁よりも前記軸方向の前記他方側に突出するボス部を含み、
前記他方側結合部は、前記ボス部に設けられた、
請求項に記載のコンプレッサホイールの取付構造。
【請求項6】
前記コンプレッサホイールの取付構造は、前記回転シャフトの前記外周面と前記ハブの前記貫通孔とを締り嵌めにより結合する少なくとも1つの結合部を有し、
前記少なくとも1つの結合部は、
前記ブレードの前縁よりも前記軸方向の前記一方側、且つ前記ブレードの後縁よりも前記軸方向の前記他方側に設けられた中央側結合部を含む、
請求項1に記載のコンプレッサホイールの取付構造。
【請求項7】
前記コンプレッサホイールの取付構造は、前記回転シャフトの前記外周面と前記ハブの前記貫通孔とを締り嵌めにより結合する少なくとも1つの結合部を有し、
前記少なくとも1つの結合部は、
第1の結合部と、
前記第1の結合部よりも前記軸方向の前記他方側に設けられた第2の結合部と、を含む、
請求項1に記載のコンプレッサホイールの取付構造。
【請求項8】
前記回転シャフトは、
前記貫通孔の内周面に対向するシャフト側小径部と、
前記第1の結合部に設けられるとともに前記シャフト側小径部よりも大径に形成されたシャフト側大径部と、を含み、
前記貫通孔は、
前記シャフト側小径部に対して前記軸方向に直交する方向に離隔する貫通孔側大径部と、
前記第2の結合部に設けられるとともに前記貫通孔側大径部よりも小径に形成された貫通孔側小径部と、を含む、
請求項に記載のコンプレッサホイールの取付構造。
【請求項9】
前記貫通孔は、
前記回転シャフトに対して前記軸方向に直交する方向に離隔する貫通孔側大径部と、
前記第1の結合部に設けられるとともに前記貫通孔側大径部よりも小径に形成された第1の貫通孔側小径部と、
前記第2の結合部に設けられるとともに前記貫通孔側大径部よりも小径に形成された第2の貫通孔側小径部と、を含む、
請求項に記載のコンプレッサホイールの取付構造。
【請求項10】
前記回転シャフトは、
前記貫通孔の内周面に対して前記軸方向に直交する方向に離隔するシャフト側小径部と、
前記第1の結合部に設けられるとともに前記シャフト側小径部よりも大径に形成された第1のシャフト側大径部と、
前記第2の結合部に設けられるとともに前記シャフト側小径部よりも大径に形成された第2のシャフト側大径部と、を含む、
請求項に記載のコンプレッサホイールの取付構造。
【請求項11】
前記第1の結合部は、前記背面の前記外周縁よりも前記軸方向の前記一方側に設けられた、
請求項に記載のコンプレッサホイールの取付構造。
【請求項12】
請求項1に記載のコンプレッサホイールの取付構造を備える過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンプレッサホイールの取付構造および過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機に搭載されるコンプレッサホイールには、軸方向に貫通する貫通孔が形成されたハブと、ハブの外周面に設けられた複数のブレードと、を含むものがある。上記コンプレッサホイールの取付構造として、ハブに形成された貫通孔に回転シャフトを挿通させ、回転シャフトのホイール前縁端から突出した突出部にナットを螺合することで、コンプレッサホイールを回転シャフトに機械的に連結させる、いわゆるスルーボア構造が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、回転シャフトの貫通孔に挿通された部位に、小径部を挟んで2つの大径部が形成することが開示されている。2つの大径部を貫通孔に嵌合させることで、コンプレッサホイールの軸芯を安定させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6566043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の2つの大径部の夫々と貫通孔との嵌合部のうち、コンプレッサホイールの背面側の嵌合部は、過給機の運転時に遠心応力や温度が高くなる部位であるため、過給機の運転時に上記嵌合部が遊離する虞がある。また、コンプレッサホイールの背面側の嵌合部は、高い遠心応力により塑性変形し、過給機の停止時においても上記嵌合部が遊離する虞がある。上記嵌合部が遊離すると、コンプレッサホイールのバランスが悪化する虞がある。
【0006】
上述した事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態の目的は、コンプレッサホイールのバランス変化リスクを低減できるコンプレッサホイールの取付構造および過給機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態にかかるコンプレッサホイールの取付構造は、
回転シャフトと、
前記回転シャフトの外周面に装着されるスリーブと、
前記回転シャフトを軸方向に沿って挿通させる貫通孔が形成されたハブ、および前記ハブの外周面に設けられた複数のブレード、を含むコンプレッサホイールと、を備え、
前記回転シャフトの前記外周面と前記ハブの前記貫通孔とは締り嵌めにより結合され、
前記ハブの背面は、
前記背面の外周縁よりも前記軸方向の一方側に突出して前記スリーブに当接する当接面を含む平坦面と、
前記平坦面の外周端から前記背面の前記外周縁に亘って形成される凹面であって、
前記平坦面の前記外周端を一方端として前記一方端から前記軸方向の他方側に向かって延在する第1線分領域であって、前記軸方向に対する傾斜角θ1が45度以下であり、且つ、前記傾斜角θ1が前記軸方向の前記他方側に向かうにつれて大きくなる曲線が、前記第1線分領域の他方端を含む位置に少なくとも形成される第1線分領域、および、
前記第1線分領域の前記他方端から径方向の外周側に向かって延在する第2線分領域であって、前記軸方向に対する傾斜角θ2が45度以上且つ90度以下であり、且つ、前記傾斜角θ2が前記外周側に向かうにつれて大きくなる曲線が、前記第1線分領域との接続部を含む位置に少なくとも形成される第2線分領域、
を含む凹面と、を含み、
前記第1線分領域の前記他方端は、前記軸方向に直交する方向において、前記ハブの前記背面の外形寸法の1/2よりも内周側の位置に設けられた。
【0008】
本開示の一実施形態にかかる過給機は、前記コンプレッサホイールの取付構造を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、コンプレッサホイールのバランス変化リスクを低減できるコンプレッサホイールの取付構造および過給機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態にかかる過給機の軸線に沿った概略断面図である。
図2】本開示の一実施形態にかかるコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。
図3】本開示の一実施形態にかかるコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。
図4】比較例にかかるコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。
図5図4に示されるコンプレッサホイールの径方向変位量を説明するための説明図である。
図6図4に示されるコンプレッサホイールに生じる塑性ひずみのコンター図である。
図7図2に示されるコンプレッサホイールの径方向変位量を説明するための説明図である。
図8図2に示されるコンプレッサホイールに生じる塑性ひずみのコンター図である。
図9】本開示の一実施形態にかかる、方側結合部を有するコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。
図10】本開示の一実施形態にかかる、方側結合部を有するコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。
図11図10に示されるコンプレッサホイールの径方向変位量を説明するための説明図である。
図12】本開示の一実施形態にかかる、中央側結合部を有するコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。
図13】本開示の一実施形態にかかる、複数の結合部を有するコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。
図14】本開示の一実施形態にかかる、複数の結合部を有するコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。
図15】本開示の一実施形態にかかる、複数の結合部を有するコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0012】
(コンプレッサホイールの取付構造)
図1は、本開示の一実施形態にかかる過給機の軸線に沿った概略断面図である。幾つかの実施形態にかかるコンプレッサホイールの取付構造1は、図1に示されるように、回転シャフト2と、回転シャフト2の外周面21に装着されるコンプレッサホイール3と、回転シャフト2の外周面21に装着されるスリーブ4と、を備える。スリーブ4は、コンプレッサホイール3の背面54側(図中右側)において回転シャフト2に取り付けられる。
【0013】
以下、回転シャフト2の軸線LAが延在する方向を軸方向Xと定義する。軸方向Xにおいて、コンプレッサホイール3に対してスリーブ4が位置する側(図1中右側)を一方側X1とし、軸方向Xのうち、スリーブ4に対してコンプレッサホイール3が位置する側(図1中左側)を他方側X2とする。コンプレッサホイール3は、回転シャフト2の他方側X2に取り付けられる。回転シャフト2の径方向Yは、軸線LAを基準とし、軸方向Xに直交する方向である。
【0014】
(過給機)
コンプレッサホイールの取付構造1は、図1に示されるように、過給機11に搭載される。換言すると、過給機11は、コンプレッサホイールの取付構造1を備える。具体的には、過給機11は、上記回転シャフト2と、上記コンプレッサホイール3と、上記スリーブ4と、回転シャフト2、コンプレッサホイール3およびスリーブ4を回転可能に収容するケーシング12と、を備える。
【0015】
図示される実施形態では、過給機11は、自動車用のターボチャージャからなる。過給機(ターボチャージャ)11は、図1に示されるように、回転シャフト2の外周面21に装着されるタービン翼13と、回転シャフト2を回転可能に支持する軸受14と、をさらに備える。タービン翼13は、回転シャフト2の軸方向Xの一方側X1に機械的に連結されている。コンプレッサホイール3は、回転シャフト2の軸方向Xの他方側X2に機械的に連結されている。タービン翼13は、コンプレッサホイール3と同軸上に設けられている。コンプレッサホイール3とタービン翼13とは、同軸上に設けられるとともに、回転シャフト2を介して一体的に回転可能になっている。回転シャフト2は、軸方向Xにおけるコンプレッサホイール3とタービン翼13との間に配置された軸受14に回転可能に支持されている。
【0016】
ケーシング12は、コンプレッサホイール3を収容するコンプレッサハウジング15と、タービン翼13を収容するタービンハウジング16と、軸受14を収容する軸受ハウジング17と、を含む。軸受ハウジング17は、コンプレッサハウジング15とタービンハウジング16との間に配置され、コンプレッサハウジング15およびタービンハウジング16の夫々に、例えばボルトやVクランプなどの締結部材により機械的に連結されている。
【0017】
過給機(ターボチャージャ)11は、不図示の排ガス発生装置(例えば、エンジンなどの内燃機関)からタービンハウジング16内に導入された排ガスのエネルギにより、タービン翼13を回転させる。コンプレッサホイール3は、回転シャフト2を介してタービン翼13に連結されているため、タービン翼13の回転に連動して回転する。過給機(ターボチャージャ)11は、コンプレッサホイール3の回転により、コンプレッサハウジング15内に導入された流体(例えば、燃焼用空気)を圧縮し、圧縮された流体を流体の供給先(例えば、エンジンなどの内燃機関)に送るようになっている。
【0018】
(コンプレッサホイール)
コンプレッサホイール3は、図1に示されるように、回転シャフト2を軸方向Xに沿って挿通させる貫通孔51が形成されたハブ5と、ハブ5の外周面52に設けられた複数のブレード(フルブレード)6と、を含む。ハブ5は、回転シャフト2の他方側X2に機械的に固定されているため、ハブ5や複数のブレード6は、回転シャフト2と一体的に回転可能である。コンプレッサホイール3は、軸方向Xの他方側X2から導入される流体を径方向Yにおける外側に導くように構成された遠心式のインペラからなる。
【0019】
ハブ5は、上記外周面52と、上記貫通孔51を形成する内周面53と、外周面52よりも一方側X1に形成される背面54と、外周面52よりも他方側X2に形成されるとともに径方向Yに沿って延在する他方側平坦面55と、を有する。貫通孔51は、他方側平坦面55から背面54までに亘り形成されている。外周面52は、軸方向Xにおける他方側X2から一方側X1に向かうにつれて回転シャフト2の軸線LAからの距離が大きくなる凹湾曲状に形成されている。
【0020】
複数のブレード6の夫々は、ハブ5の他方側X2における外周面52から径方向に沿って延在する前縁61と、ハブ5の一方側X1における外周面52から径方向に沿って延在する後縁62と、前縁61の外周端から後縁62の外周端までに亘り延在するチップ側縁63と、を有する。チップ側縁63は、軸方向Xにおける他方側X2から一方側X1に向かうにつれて回転シャフト2の軸線LAからの距離が大きくなる凹湾曲状に形成されている。チップ側縁63は、チップ側縁63に対向するように凸状に湾曲するコンプレッサハウジング15のシュラウド面151との間に隙間G(クリアランス)が形成されている。
【0021】
図2および図3の夫々は、本開示の一実施形態にかかるコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。
コンプレッサホイールの取付構造1は、図2図3に示されるように、内周面に雌ネジ部181が形成された環状のナット部材18と、回転シャフト2のスリーブ4よりも一方側X1における外周面21に装着されるスラストリング19と、をさらに備えていてもよい。回転シャフト2は、他方側X2に径方向に沿って延在する段差面22を有する。回転シャフト2の段差面22よりも他方側X2は、段差面22よりも一方側X1に比べて、外形寸法が小さくなっている。コンプレッサホイール3は、ハブ5の貫通孔51に回転シャフト2の段差面22よりも他方側X2が挿通され、ハブ5の他方側平坦面55から回転シャフト2の他端部23が突出している。コンプレッサホイール3は、回転シャフト2の他端部23における外周面に形成された雄ネジ部231に、ナット部材18の雌ネジ部181が螺合することで、回転シャフト2の段差面22とナット部材18との間に、スリーブ4やスラストリング19とともに挟持されている。
【0022】
スリーブ4は、軸方向に沿って貫通する貫通孔41を有する筒状に形成されている。スリーブ4は、コンプレッサホイール3と回転シャフト2の段差面22との間に配置され、貫通孔41に回転シャフト2が挿通されている。スリーブ4は、軸方向の他方側に径方向に沿って延在する端面42を有し、この端面42がハブ5の当接面561(背面54)に当接している。
【0023】
コンプレッサホイールの取付構造1では、回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51とは、締り嵌めにより結合されている。図示される実施形態では、回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51とは、焼き嵌めにより固定されている。具体的には、回転シャフト2の貫通孔51に挿入される外周面21A(21)の少なくとも一部が貫通孔51よりも径が大きく形成されている、又は、貫通孔51の少なくとも一部が回転シャフト2の貫通孔51に挿入される外周面21A(21)よりも径が小さく形成されている。ハブ5の貫通孔51を加熱して貫通孔51の径を膨張させて広げて回転シャフト2を嵌め入れる。その後に冷却すると回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51とが固着状態になり、互いに強固に固定される。
【0024】
回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51とは、貫通孔51の軸方向範囲における一部において、締り嵌めにより結合している。コンプレッサホイールの取付構造1は、回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51とを締り嵌めにより結合する少なくとも1つの結合部7を有する。回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51とは結合部7以外の部分に隙間70が形成されている。上記少なくとも1つの結合部7の夫々は、所定の軸方向長さを有する。或る実施形態では、上記少なくとも1つの結合部7の夫々は、ハブ5の背面54の外形寸法D1の10%~20%の軸方向長さを有する。
【0025】
背面54は、背面54の外周縁541よりも軸方向の一方側X1に突出してスリーブ4に当接する上記当接面561を含む平坦面56と、平坦面56の外周562から背面54の外周縁541に亘って形成される凹面57と、を含む。
【0026】
(比較例にかかるコンプレッサホイールの取付構造)
図4は、比較例にかかるコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。図5は、図4に示されるコンプレッサホイールの径方向変位量を説明するための説明図である。図6は、図4に示されるコンプレッサホイールに生じる塑性ひずみのコンター図である。
比較例にかかるコンプレッサホイールの取付構造01は、背面054の形状がコンプレッサホイールの取付構造1における背面54の形状とは異なっている。また、比較例にかかるコンプレッサホイールの取付構造01は、結合部07が形成される軸方向位置が、コンプレッサホイールの取付構造1における結合部7が形成される軸方向位置とは異なっている。なお、図4に示されるコンプレッサホイールの取付構造01は、上述したコンプレッサホイールの取付構造1と構成が同じ部分には、同じ符号を付している。
【0027】
図4に示されるように、背面054は、背面054の外周縁0541よりも軸方向の一方側X1に突出してスリーブ4に当接する当接面0561を含む平坦面056と、平坦面056の外周0562から背面054の外周縁0541に亘って形成される凹面057と、を含む。凹面057は、軸方向Xに沿っ断面において、軸方向に対する傾斜角θ0が45度以上且つ90度以下であり、且つ、傾斜角θ0が外周側に向かうにつれて大きくなる曲線C0が形成されている。結合部07は、背面054の外周縁0541の軸方向位置P0を含む位置に形成されている。
【0028】
図5では、貫通孔51の軸方向位置を横軸とし、貫通孔51の径方向変位量を縦軸とするグラフが示されている。上記横軸は、他方側平坦面55の軸方向位置を0%とし、平坦面056の軸方向位置を100%としている。図5中の直線L0は、回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51との間の締め代を示している。図5中の曲線C01は、過給機11の運転時において、コンプレッサホイール3に作用する遠心力による貫通孔51の径方向変位量を示している。図5中の曲線C02は、過給機11の運転時における、コンプレッサホイール3に作用する熱および遠心力による貫通孔51の径方向変位量を示している。図5中の曲線C03は、過給機11が運転後の停止時における貫通孔51の径方向変位量を示している。
【0029】
図5に示されるように、ハブ5の一方側X1は、ハブ5の他方側X2に比べて、外形寸法が大きいので、過給機11の運転時(コンプレッサホイール3の回転時)に作用する遠心力が大きく、過給機11の運転時に貫通孔51の孔径が拡大する。また、ハブ5の一方側X1は、ハブ5の他方側X2に比べて、過給機11の運転時(コンプレッサホイール3の回転時)に作用する熱による熱膨張量が大きく、過給機11の運転時に貫通孔51の孔径が拡大する。比較例にかかるコンプレッサホイールの取付構造01では、過給機11の運転時に作用する遠心力や熱により、ハブ5の一方側X1において貫通孔51の孔径が拡大するため、過給機11の運転時に上記結合部07における結合を維持するためには、締め代を増やしたり、コンプレッサホイール3を冷却するための冷却構造を設けたりすることが必要となる可能性が高い。
【0030】
図6に示されるように、過給機11の運転時に作用する遠心応力が大きいハブ5の一方側X1における貫通孔51近傍に、広範囲に亘り塑性ひずみが発生する虞がある。貫通孔51近傍に生じる塑性変形により、ハブ5の一方側X1において貫通孔51の孔径が拡大すると、過給機11の運転時だけでなく停止時においても上記結合部07における結合が解除される虞がある。また、図6に示されるように、過給機11の運転時に平坦面056に、広範囲に亘り塑性ひずみが発生する虞がある。塑性ひずみは、当接面0561のスリーブ4の外周縁に当接する部分0562に特に発生する。平坦面056に生じる塑性変形により、コンプレッサホイール3の周方向位置がずれて、コンプレッサホイール3のバランスが変化する虞がある。
【0031】
幾つかの実施形態にかかるコンプレッサホイールの取付構造1は、図2図3に示されるように、上述した回転シャフト2と、上述したハブ5および複数のブレード6を含むコンプレッサホイール3と、上述したスリーブ4と、を備え、回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51とは締り嵌めにより結合されている。ハブ5の背面54は、背面54の外周縁541よりも軸方向の一方側X1に突出してスリーブ4に当接する当接面561を含む平坦面56と、平坦面56の外周端562から背面54の外周縁541に亘って形成される凹面57と、を含む。凹面57は、図2図3に示されるように、平坦面56の外周端562を一方端として上記一方端から軸方向の他方側X2に向かって延在する第1線分領域A1であって、軸方向に対する傾斜角θ1が45度以下であり、且つ、傾斜角θ1が軸方向の前記他方側X2に向かうにつれて大きくなる曲線CA1が、第1線分領域A1の他方端571を含む位置に少なくとも形成される第1線分領域A1、および、第1線分領域A1の他方端571から径方向の外周側に向かって延在する第2線分領域A2であって、前記軸方向に対する傾斜角θ2が45度以上且つ90度以下であり、且つ、傾斜角θ2が外周側に向かうにつれて大きくなる曲線CA2が、第1線分領域A1との接続部571Aを含む位置に少なくとも形成される第2線分領域A2、を含む。上記コンプレッサホイールの取付構造1では、第1線分領域A1の他方端571は、軸方向に直交する方向において、ハブ5の背面54の外形寸法D1の1/2よりも内周側の位置に設けられた。
【0032】
好ましくは、第1線分領域A1の他方端571は、軸方向に直交する方向において、ハブ5の背面54の外形寸法D1の20%よりも外周側の位置、且つ上記外形寸法D1の40%よりも内周側の位置に設けられる。
【0033】
図示される実施形態では、第2線分領域A2の一方端が上記接続部571Aにおいて第1線分領域A1の他方端571に接続され、第2線分領域A2の他方端が背面54の外周縁541に接続されている。上記接続部571Aでは、軸方向に対する傾斜角θ1、θ2が45度になっている。上記曲線CA1は、第1線分領域A1の一方端(平坦面56の外周端562)を含む位置にも形成されてもよい。つまり、上記曲線CA1は、第1線分領域A1の一方端から他方端までに亘り形成されていてもよい。また、上記曲線CA2は、第2線分領域A2の他方端を含む位置にも形成されてもよい。つまり、上記曲線CA2は、第2線分領域の一方端から他方端までに亘り形成されていてもよい。
【0034】
図7および後述する図11では、貫通孔51の軸方向位置を横軸とし、貫通孔51の径方向変位量を縦軸とするグラフが示されている。上記横軸は、他方側平坦面55の軸方向位置を0%とし、平坦面56の軸方向位置を100%としている。図7図11中の直線L0は、回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51との間の締め代を示している。図7図11中の曲線C1は、過給機11の運転時において、コンプレッサホイール3に作用する遠心力による貫通孔51の径方向変位量を示している。図7図11中の曲線C2は、過給機11の運転時における、コンプレッサホイール3に作用する熱および遠心力による貫通孔51の径方向変位量を示している。図7図11中の曲線C3は、過給機11が運転後の停止時における貫通孔51の径方向変位量を示している。
【0035】
図2図3に示されるような、ハブ5の背面54を、平坦面56と、第1線分領域A1および第2線分領域A2を含む凹面57と、を含む形状にすることで、図7に示されるように、ハブ5の背面54の外周縁541よりも軸方向の一方側X1の部分である、ハブ5の背面部には作用する遠心応力が小さく、径方向変位量小さい領域A3が形成される。上記領域A3では、過給機11の運転時および停止時における径方向変位量が、背面054の外周縁0541の軸方向位置P0に比べて小さくなっている。
【0036】
図2図3に示されるような、ハブ5の背面54を、平坦面56と、第1線分領域A1および第2線分領域A2を含む凹面57と、を含む形状にすることで、図8に示されるように、貫通孔51の内周面53における平坦面56の近傍に、内周面53における軸方向位置P0近傍に比べて、塑性ひずみが生じ難い領域A4が形成される。上記領域A4が形成されることで、過給機11の運転時に平坦面56に生じる塑性ひずみを抑制できる。
【0037】
上記の構成によれば、ハブ5の背面54を、平坦面56と、第1線分領域A1および第2線分領域A2を含む凹面57と、を含む形状にすることで、ハブ5の背面54の外周縁541よりも軸方向の一方側X1の部分である、ハブ5の背面部の強度低下を抑制しつつ、ハブ5の背面部に作用する遠心応力を低減できる。これにより、コンプレッサホイール3の取付構造1を備える過給機11の運転時において、ハブ5に作用する熱や遠心応力によって、ハブ5の貫通孔51が塑性変形することを抑制できる。ハブ5の貫通孔51が塑性変形することを抑制することで、上記過給機11の運転時や停止時において、回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51との間の結合が解除されてコンプレッサホイール3のバランスが変化することを抑制できる。
【0038】
図2図3に示されるような、ハブ5の背面54を、平坦面56と、第1線分領域A1および第2線分領域A2を含む凹面57と、を含む形状にすることで、平坦面56の外形寸法D2やスリーブ4の平坦面56に当接する端面42の外形寸法を大きなものにすることが可能となる。平坦面56の外形寸法D2やスリーブ4の端面42の外形寸法を大きくすることで、平坦面56と端面42との接触面積を増やすことができるため、平坦面56の塑性変形を抑制できる。或る実施形態では、当接面561の外形寸法D3は、ハブ5の背面54の外形寸法D1の10%~20%の範囲内になっている。
【0039】
幾つかの実施形態では、図2に示されるように、上述した凹面57は、平坦面56の外周端562を含む位置に形成された、第1の曲率R1を有する第1湾曲面581と、第1湾曲面581に接続するとともに、第1の曲率R1よりも小さい曲率R2を有する第2湾曲面583と、を含む。
【0040】
図示される実施形態では、第1湾曲面581の一方端は、平坦面56の外周端562であり、第1湾曲面581の他方端は、第1湾曲面581と第2湾曲面583との接続部582において、第2湾曲面583の一方端に接続されている。第2湾曲面583の他方端は、背面54の外周縁541に接続されていてもよい。背面54の外周縁541よりも一方側X1に位置していてもよい。また、図示される実施形態では、上記接続部582は、軸方向に直交する方向において、ハブ5の背面54の外形寸法D1の1/2よりも内周側の位置に設けられている。
【0041】
上記の構成によれば、凹面57を第1湾曲面581と第2湾曲面583とを含む形状にすることで、ハブ5の上記背面部の強度低下を抑制しつつ、ハブ5の上記背面部、特に第1湾曲面581と第2湾曲面583との接続部582よりも平坦面56側(軸方向の上記一方側)に作用する遠心応力を低減できる。
【0042】
幾つかの実施形態では、図3に示されるように、上述した凹面57は、平坦面56の外周端562を含む位置に形成された第1平坦面591と、第1平坦面591に接続する湾曲面593と、湾曲面593に接続するとともに背面54の外周縁541を含む位置に形成された第2平坦面595と、を含む。
【0043】
第1平坦面591は、軸方向Xに沿って延在している。第2平坦面595は、径方向Yに沿って延在している。第1平坦面591と湾曲面593との接続部592は、第2平坦面595と湾曲面593との接続部594よりも径方向Yにおける内周側に位置している。なお、上記接続部592は、径方向Yにおける位置が平坦面56の外周端562と同じであってもよいし、平坦面56の外周端562よりも径方向Yにおける外周側に位置していてもよい。また、上記接続部594は、軸方向Xにおける位置が背面54の外周縁541と同じであってもよいし、背面54の外周縁541よりも軸方向Xにおける一方側X1に位置していてもよい。
【0044】
図示される実施形態では、上記接続部594は、軸方向に直交する方向において、ハブ5の背面54の外形寸法D1の1/2よりも内周側の位置に設けられている。
【0045】
上記の構成によれば、凹面57を第1平坦面591と湾曲面593と第2平坦面595とを含む形状にすることで、ハブ5の上記背面部の強度低下を抑制しつつ、ハブ5の上記背面部、特に第2平坦面595と湾曲面593との接続部594よりも平坦面56側(軸方向の一方側X1)に作用する遠心応力を低減できる。
【0046】
(一方側結合部)
幾つかの実施形態では、図2図3に示されるように、コンプレッサホイールの取付構造1は、回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51とを締り嵌めにより結合する少なくとも1つの結合部7を有する。上述した少なくとも1つの結合部7は、背面54の外周縁541よりも軸方向の一方側X1に設けられた一方側結合部7Aを含む。
【0047】
図示される実施形態では、上述した貫通孔51は、回転シャフト2の外周面21に対して軸方向Xに直交する方向に離隔する貫通孔側大径部511と、一方側結合部7Aに設けられるとともに、貫通孔側大径部511よりも小径に形成された貫通孔側小径部512A(512)と、を含む。図示例では、一方側結合部7A以外には貫通孔側小径部512が形成されていない。なお、一方側結合部7Aは、平坦面56の内周端を含む位置に形成されていてもよい。
【0048】
貫通孔側小径部512A(512)は、回転シャフト2の貫通孔51に挿入される外周面21A(21)との間に締め代を有する。回転シャフト2の外周面21Aと貫通孔側小径部512Aの内周面とが締り嵌めにより結合することで、一方側結合部7Aが形成される。
【0049】
上記の構成によれば、一方側結合部7Aは、過給機11の運転時に作用する遠心応力が小さいハブ5の上記背面部に設けられる。ハブ5の上記背面部における内周面53は、過給機11の運転時に塑性変形する可能性が低いので、過給機11の運転時および停止時の何れにおいても一方側結合部7Aによる結合が維持される。これにより、コンプレッサホイール3のバランス変化リスクを低減できる。
【0050】
(他方側結合部)
図9および図10の夫々は、本開示の一実施形態にかかる、方側結合部を有するコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。図11は、図10に示されるコンプレッサホイールの径方向変位量を説明するための説明図である。
幾つかの実施形態では、図9図10に示されるように、コンプレッサホイールの取付構造1は、回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51とを締り嵌めにより結合する少なくとも1つの結合部7を有する。上述した少なくとも1つの結合部7は、ブレード6の前縁61よりも軸方向の他方側X2に少なくとも一部が設けられた他方側結合部7Bを含む。
【0051】
図示される実施形態では、上述した貫通孔51は、回転シャフト2の外周面21に対して軸方向Xに直交する方向に離隔する貫通孔側大径部511と、他方側結合部7Bに設けられるとともに、貫通孔側大径部511よりも小径に形成された貫通孔側小径部512B(512)と、を含む。図示例では、他方側結合部7B以外には貫通孔側小径部512が形成されていない。図9に示される実施形態では、他方側結合部7Bは、前縁61の外周端611よりも軸方向における一方側X1までに亘り形成されている。なお、他方側結合部7Bは、他方側平坦面55の内周端を含む位置に形成されていてもよい。
【0052】
貫通孔側小径部512B(512)は、回転シャフト2の貫通孔51に挿入される外周面21A(21)との間に締め代を有する。回転シャフト2の外周面21Aと貫通孔側小径部512Bの内周面とが締り嵌めにより結合することで、他方側結合部7Bが形成される。
【0053】
上記の構成によれば、他方側結合部7Bは、過給機11の運転時に作用する遠心応力が小さいハブ5の前方部(ハブ5のブレード6の前縁61よりも軸方向の上記他方側の部分)に少なくとも一部が設けられる。ハブ5の上記前方部における内周面53は、過給機11の運転時に塑性変形する可能性が低いので、過給機11の運転時および停止時の何れにおいても他方側結合部7Bによる結合が維持される。これにより、コンプレッサホイール3のバランス変化リスクを低減できる。
【0054】
幾つかの実施形態では、図10に示されるように、上述したハブ5は、ブレード6の前縁61よりも軸方向の他方側X2に突出するボス部551を含み、上述した他方側結合部7Bは、ボス部551に設けられている。他方側結合部7Bは、前縁61の内周端612よりも軸方向の一方側X1には形成されていない。ボス部551は、他方側結合部7Bが所定の軸方向長さを確保できるように、通常のボス部に比べて、軸方向の他方側X2に延長していてもよい。
【0055】
図11に示されるように、ハブ5のボス部551には、作用する遠心応力が小さく、径方向変位量小さい領域A5が形成される。上記領域A5では、過給機11の運転時および停止時における径方向変位量が、背面54の外周縁541の軸方向位置P0に比べて小さくなっている。
【0056】
上記の構成によれば、他方側結合部7Bを、ハブ5の上記前方部のうち、過給機11の運転時に作用する遠心応力が小さいボス部551に設けることで、他方側結合部7Bを上記前方部におけるボス部551以外に設ける場合に比べて、過給機11の運転時および停止時の何れにおいても他方側結合部7Bによる結合が効果的に維持される。これにより、コンプレッサホイール3のバランス変化リスクを効果的に低減できる。
【0057】
(中央側結合部)
図12は、本開示の一実施形態にかかる、中央側結合部を有するコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。
幾つかの実施形態では、図12に示されるように、コンプレッサホイールの取付構造1は、回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51とを締り嵌めにより結合する少なくとも1つの結合部7を有する。上述した少なくとも1つの結合部7は、ブレード6の前縁61よりも軸方向の一方側X1、且つブレード6の後縁62よりも軸方向の他方側X2に設けられた中央側結合部7Cを含む。
【0058】
図示される実施形態では、上述した貫通孔51は、回転シャフト2の外周面21に対して軸方向Xに直交する方向に離隔する貫通孔側大径部511と、中央側結合部7Cに設けられるとともに、貫通孔側大径部511よりも小径に形成された貫通孔側小径部512C(512)と、を含む。図示例では、中央側結合部7C以外には貫通孔側小径部512が形成されていない。
【0059】
貫通孔側小径部512C(512)は、回転シャフト2の貫通孔51に挿入される外周面21A(21)との間に締め代を有する。回転シャフト2の外周面21Aと貫通孔側小径部512Cの内周面とが締り嵌めにより結合することで、中央側結合部7Cが形成される。
【0060】
上記の構成によれば、中央側結合部7Cは、過給機11の運転時に作用する遠心応力が小さいハブ5の中央部(ハブ5のブレード6の前縁61よりも軸方向の上記一方側X1、且つブレード6の後縁62よりも軸方向の上記他方側X2の部分)に設けられる。ハブ5の中央部における内周面53は、過給機11の運転時に塑性変形する可能性が低いので、過給機11の運転時および停止時の何れにおいても中央側結合部7Cによる結合が維持される。これにより、コンプレッサホイール3のバランス変化リスクを低減できる。
【0061】
上述した幾つかの実施形態では、貫通孔51に貫通孔側大径部511よりも小径に形成された貫通孔側小径部512を設けることで、結合部7が形成されていたが、他の幾つかの実施形態では、例えば図13図15に示されるように、回転シャフト2の貫通孔51に挿入される部位に、シャフト側小径部24と、シャフト側小径部24よりも大径に形成されたシャフト側大径部25(25D、25Eなど)と、を設けることで、結合部7が形成されていてもよい。シャフト側大径部25は、貫通孔51の内周面53との間に締め代を有する。
【0062】
(複数の結合部)
図13図15の夫々は、本開示の一実施形態にかかる、複数の結合部を有するコンプレッサホイールの取付構造の軸線に沿った概略断面図である。
幾つかの実施形態では、図13図15に示されるように、コンプレッサホイールの取付構造1の上述した少なくとも1つの結合部7は、第1の結合部7Dと、第1の結合部7Dよりも軸方向の他方側X2に設けられた第2の結合部7Eと、を含む。
【0063】
図13図15に示されるように、第1の結合部7Dは、上述した一方側結合部7Aであり、且つ、第2の結合部7Eは、上述した他方側結合部7B又は中央側結合部7Cの何れかであってもよい。他の幾つかの実施形態では、第1の結合部7Dは、中央側結合部7Cであり、且つ、第2の結合部7Eは、他方側結合部7Bであってもよい。
【0064】
上記の構成によれば、コンプレッサホイールの取付構造1は、軸方向Xにおける複数の箇所に結合部7(第1の結合部7D、第2の結合部7E)を設けることで、コンプレッサホイール3が回転シャフト2に対して傾くことを抑制でき、コンプレッサホイール3の軸芯を正確に保持できる。これにより、コンプレッサホイール3のバランス変化リスクを低減できる。
【0065】
幾つかの実施形態では、図13に示されるように、上述した少なくとも1つの結合部7は、上述した第1の結合部7Dと、上述した第2の結合部7Eと、を含む。上述した回転シャフト2は、貫通孔51に挿通される部位に、貫通孔51の内周面53に対向するシャフト側小径部24と、第1の結合部7Dに設けられるとともにシャフト側小径部24よりも大径に形成されたシャフト側大径部25D(25)と、を含む。上述した貫通孔51は、シャフト側小径部24に対して軸方向に直交する方向に離隔する貫通孔側大径部511と、第2の結合部7Eに設けられるとともに貫通孔側大径部511よりも小径に形成された貫通孔側小径部512E(512)と、を含む。
【0066】
図13に示される実施形態では、第1の結合部7Dは、上述した一方側結合部7Aからなり、第2の結合部7Eは、上述した他方側結合部7Bからなる。
【0067】
上記の構成によれば、シャフト側大径部25Dの外周面と貫通孔側大径部511の内周面とが締り嵌めにより結合することで、第1の結合部7D(図示例では、7A)が形成される。また、シャフト側小径部24の外周面と貫通孔側小径部512の内周面とが締り嵌めにより結合することで、第2の結合部7E(図示例では、7B)が形成される。第1の結合部7Dにおける回転シャフト2の径を大きくし、且つ第2の結合部7Eにおける貫通孔51の径を小さくすることで、回転シャフト2をコンプレッサホイール3の貫通孔51に軸方向における一方側X1から他方側X2に向かって挿入させ易い。これにより、コンプレッサホイール3と回転シャフト2との組立性を良好なものになる。また、上記の構成によれば、回転シャフト2に複数のシャフト側大径部25(25D、25E)を形成する場合やハブ5に複数の貫通孔側小径部512(512D、512E)を形成する場合に比べて、回転シャフト2やハブ5の形成が容易なため、回転シャフト2やハブ5の製造コストを低減できる。
【0068】
幾つかの実施形態では、図14に示されるように、上述した少なくとも1つの結合部7は、上述した第1の結合部7Dと、上述した第2の結合部7Eと、を含む。上述した貫通孔51は、回転シャフト2に対して軸方向に直交する方向に離隔する貫通孔側大径部511と、第1の結合部7Dに設けられるとともに貫通孔側大径部511よりも小径に形成された第1の貫通孔側小径部512D(512)と、第2の結合部7Eに設けられるとともに貫通孔側大径部511よりも小径に形成された第2の貫通孔側小径部512E(512)と、を含む。
【0069】
貫通孔側大径部511は、第1の貫通孔側小径部512Dと第2の貫通孔側小径部512Eとの間に形成される。図14に示される実施形態では、第1の結合部7Dは、上述した一方側結合部7Aからなり、第2の結合部7Eは、上述したボス部551に設けられた他方側結合部7Bからなる。
【0070】
上記の構成によれば、第1の貫通孔側小径部512Dの内周面と回転シャフト2の外周面21とが締り嵌めにより結合することで、第1の結合部7D(図示例では、7A)が形成される。また、第2の貫通孔側小径部512Eの内周面と回転シャフト2の外周面21とが締り嵌めにより結合することで、第2の結合部7E(図示例では、7B)が形成される。この場合には、回転シャフト2に上述したようなシャフト側大径部25を形成しなくてもよく、回転シャフト2の形成が容易なため、回転シャフト2の製造コストを低減できる。
【0071】
幾つかの実施形態では、図15に示されるように、上述した少なくとも1つの結合部7は、上述した第1の結合部7Dと、上述した第2の結合部7Eと、を含む。上述した回転シャフト2は、貫通孔51に挿通される部位に、貫通孔51の内周面53に対して前記軸方向に直交する方向に離隔するシャフト側小径部24と、第1の結合部7Dに設けられるとともにシャフト側小径部24よりも大径に形成された第1のシャフト側大径部25D(25)と、第2の結合部7Eに設けられるとともにシャフト側小径部24よりも大径に形成された第2のシャフト側大径部25E(25)と、を含む。
【0072】
シャフト側小径部24は、第1のシャフト側大径部25Dと第2のシャフト側大径部25Eとの間に形成される。図15に示される実施形態では、第1の結合部7Dは、上述した一方側結合部7Aからなり、第2の結合部7Eは、上述した中央側結合部7Cからなる。
【0073】
上記の構成によれば、第1のシャフト側大径部25Dの外周面と貫通孔51の内周面53とが締り嵌めにより結合することで、第1の結合部7D(図示例では、7A)が形成される。また、第2のシャフト側大径部25Eの外周面と貫通孔51の内周面53とが締り嵌めにより結合することで、第2の結合部7E(図示例では、7C)が形成される。この場合には、ハブ5の貫通孔51に上述したような貫通孔側小径部512を形成しなくてもよく、上記貫通孔51の形成が容易なため、コンプレッサホイール3の製造コストを低減できる。
【0074】
幾つかの実施形態では、図13図15に示されるように、上述した第1の結合部7Dは、背面54の外周縁541よりも軸方向の一方側X1に設けられた一方側結合部7Aからなる。
【0075】
上記の構成によれば、第1の結合部7Dは、過給機11の運転時に作用する遠心応力が小さいハブ5の上記背面部に設けられる。ハブ5の上記背面部における内周面は、過給機11の運転時に塑性変形する可能性が低いので、過給機11の運転時および停止時の何れにおいても第1の結合部7Dによる結合が維持される。また、第2の結合部7Eを過給機11の運転時に作用する遠心応力が小さいハブ5の上記前方部や上記中央部に設けることで、過給機11の運転時および停止時の何れにおいても第2の結合部7Eによる結合が維持されるため、コンプレッサホイール3が回転シャフト2に対して傾くことを効果的に抑制でき、コンプレッサホイール3の軸芯を正確に保持できる。これにより、コンプレッサホイール3のバランス変化リスクを効果的に低減できる。
【0076】
幾つかの実施形態にかかる過給機11は、図1に示されるように、上述したコンプレッサホイールの取付構造(1)を備える。上記の構成によれば、過給機11の運転時において、ハブ5に作用する熱や遠心応力によって、ハブ5の貫通孔51が塑性変形することを抑制できる。これにより、過給機11の運転時や停止時において、回転シャフト2の外周面21とハブ5の貫通孔51との間の結合が解除されることを抑制でき、ひいてはコンプレッサホイール3のバランスが変化することを抑制できる。
【0077】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0078】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0079】
1)本開示の少なくとも一実施形態にかかるコンプレッサホイールの取付構造(1)は、
回転シャフト(2)と、
前記回転シャフト(2)の外周面(21)に装着されるスリーブ(4)と、
前記回転シャフト(2)を軸方向に沿って挿通させる貫通孔(51)が形成されたハブ(5)、および前記ハブ(5)の外周面(52)に設けられた複数のブレード(6)、を含むコンプレッサホイール(3)と、を備え、
前記回転シャフト(2)の前記外周面(21)と前記ハブ(5)の前記貫通孔(51)とは締り嵌めにより結合され、
前記ハブ(5)の背面(54)は、
前記背面(54)の外周縁(541)よりも前記軸方向の一方側(X1)に突出して前記スリーブ(4)に当接する当接面(561)を含む平坦面(56)と、
前記平坦面(56)の外周端(562)から前記背面(54)の前記外周縁(541)に亘って形成される凹面(57)であって、
前記平坦面(56)の前記外周端(562)を一方端として前記一方端から前記軸方向の他方側(X2)に向かって延在する第1線分領域(A1)であって、前記軸方向に対する傾斜角θ1が45度以下であり、且つ、前記傾斜角θ1が前記軸方向の前記他方側(X2)に向かうにつれて大きくなる曲線(CA1)が、前記第1線分領域(A1)の他方端(571)を含む位置に少なくとも形成される第1線分領域(A1)、および、
前記第1線分領域(A1)の前記他方端(571)から径方向の外周側に向かって延在する第2線分領域(A2)であって、前記軸方向に対する傾斜角θ2が45度以上且つ90度以下であり、且つ、前記傾斜角θ2が前記外周側に向かうにつれて大きくなる曲線CA2が、前記第1線分領域(A2)との接続部(571A)を含む位置に少なくとも形成される第2線分領域(A2)、
を含む凹面(57)と、を含み、
前記第1線分領域(A1)の前記他方端(571)は、前記軸方向に直交する方向において、前記ハブ(5)の前記背面(54)の外形寸法(D1)の1/2よりも内周側の位置に設けられた。
【0080】
上記1)の構成によれば、ハブ(5)の背面(54)を、平坦面(56)と、第1線分領域(A1)および第2線分領域(A2)を含む凹面(57)と、を含む形状にすることで、ハブ(5)の背面(54)の外周縁(541)よりも軸方向の上記一方側(X1)の部分である、ハブ(5)の背面部の強度低下を抑制しつつ、ハブ(5)の背面部に作用する遠心応力を低減できる。これにより、コンプレッサホイール(3)の取付構造(1)を備える過給機(11)の運転時において、ハブ(5)に作用する熱や遠心応力によって、ハブ(5)の貫通孔(51)が塑性変形することを抑制できる。ハブ(5)の貫通孔(51)が塑性変形することを抑制することで、上記過給機(11)の運転時や停止時において、回転シャフト(2)の外周面(21)とハブ(5)の貫通孔(51)との間の結合が解除されてコンプレッサホイール(3)のバランスが変化することを抑制できる。
【0081】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のコンプレッサホイールの取付構造(1)であって、
前記凹面(57)は、
前記平坦面(56)の前記外周端(562)を含む位置に形成された、第1の曲率(R1)を有する第1湾曲面(581)と、
前記第1湾曲面(581)に接続するとともに、前記第1の曲率(R1)よりも小さい曲率(R2)を有する第2湾曲面(583)と、を含む。
【0082】
上記2)の構成によれば、凹面(57)を第1湾曲面(581)と第2湾曲面(583)とを含む形状にすることで、ハブ(5)の背面部の強度低下を抑制しつつ、ハブ(5)の背面部、特に第1湾曲面(581)と第2湾曲面(583)との接続部(582)よりも平坦面(56)側(軸方向の上記一方側)に作用する遠心応力を低減できる。
【0083】
3)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のコンプレッサホイールの取付構造(1)であって、
前記凹面(57)は、
前記平坦面(56)の前記外周端(562)を含む位置に形成された第1平坦面(591)と、
前記第1平坦面(591)に接続する湾曲面(593)と、
前記湾曲面(593)に接続するとともに前記背面(54)の前記外周縁(541)を含む位置に形成された第2平坦面(595)と、を含む。
【0084】
上記3)の構成によれば、凹面(57)を第1平坦面(591)と湾曲面(593)と第2平坦面(595)とを含む形状にすることで、ハブ(5)の背面部の強度低下を抑制しつつ、ハブ(5)の背面部、特に第2平坦面(595)と湾曲面(593)との接続部(594)よりも平坦面(56)側(軸方向の上記一方側)に作用する遠心応力を低減できる。
【0085】
4)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のコンプレッサホイールの取付構造(1)であって、
前記コンプレッサホイールの取付構造(1)は、前記回転シャフト(2)の前記外周面(21)と前記ハブ(5)の前記貫通孔(51)とを締り嵌めにより結合する少なくとも1つの結合部(7)を有し、
前記少なくとも1つの結合部(7)は、
前記背面(54)の前記外周縁(541)よりも前記軸方向の前記一方側(X1)に設けられた一方側結合部(7A)を含む。
【0086】
上記4)の構成によれば、一方側結合部(7A)は、過給機(11)の運転時に作用する遠心応力が小さいハブ(5)の背面部に設けられる。ハブ(5)の背面部における内周面(53)は、過給機(11)の運転時に塑性変形する可能性が低いので、過給機(11)の運転時および停止時の何れにおいても一方側結合部(7A)による結合が維持される。これにより、コンプレッサホイール(3)のバランス変化リスクを低減できる。
【0087】
5)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のコンプレッサホイールの取付構造(1)であって、
前記コンプレッサホイールの取付構造(1)は、前記回転シャフト(2)の前記外周面(21)と前記ハブ(5)の前記貫通孔(51)とを締り嵌めにより結合する少なくとも1つの結合部(7)を有し、
前記少なくとも1つの結合部(7)は、
前記ブレード(6)の前縁(61)よりも前記軸方向の前記他方側(X2)に少なくとも一部が設けられた他方側結合部(7B)を含む。
【0088】
上記5)の構成によれば、他方側結合部(7B)は、過給機(11)の運転時に作用する遠心応力が小さいハブ(5)の前方部(ハブ5のブレード6の前縁61よりも軸方向の上記他方側の部分)に少なくとも一部が設けられる。ハブ(5)の前方部における内周面(53)は、過給機(11)の運転時に塑性変形する可能性が低いので、過給機(11)の運転時および停止時の何れにおいても他方側結合部(7B)による結合が維持される。これにより、コンプレッサホイール(3)のバランス変化リスクを低減できる。
【0089】
6)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のコンプレッサホイールの取付構造(1)であって、
前記ハブ(5)は、前記ブレード(6)の前記前縁(61)よりも前記軸方向の前記他方側(X2)に突出するボス部(551)を含み、
前記他方側結合部(7B)は、前記ボス部(551)に設けられた。
【0090】
上記6)の構成によれば、他方側結合部(7B)を、ハブ(5)の前方部のうち、過給機(11)の運転時に作用する遠心応力が小さいボス部(551)に設けることで、他方側結合部(7B)を上記前方部におけるボス部(551)以外に設ける場合に比べて、過給機(11)の運転時および停止時の何れにおいても他方側結合部(7B)による結合が効果的に維持される。これにより、コンプレッサホイール(3)のバランス変化リスクを効果的に低減できる。
【0091】
7)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のコンプレッサホイールの取付構造(1)であって、
前記コンプレッサホイールの取付構造(1)は、前記回転シャフト(2)の前記外周面(21)と前記ハブ(5)の前記貫通孔(51)とを締り嵌めにより結合する少なくとも1つの結合部(7)を有し、
前記少なくとも1つの結合部(7)は、
前記ブレード(6)の前縁(61)よりも前記軸方向の前記一方側(X1)、且つ前記ブレード(6)の後縁(62)よりも前記軸方向の前記他方側(X2)に設けられた中央側結合部(7C)を含む。
【0092】
上記7)の構成によれば、中央側結合部(7C)は、過給機(11)の運転時に作用する遠心応力が小さいハブ(5)の中央部(ハブ5のブレード6の前縁61よりも軸方向の上記一方側X1、且つブレード6の後縁62よりも軸方向の上記他方側X2の部分)に設けられる。ハブ(5)の中央部における内周面(53)は、過給機(11)の運転時に塑性変形する可能性が低いので、過給機(11)の運転時および停止時の何れにおいても中央側結合部(7C)による結合が維持される。これにより、コンプレッサホイール(3)のバランス変化リスクを低減できる。
【0093】
8)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のコンプレッサホイールの取付構造(1)であって、
前記コンプレッサホイールの取付構造(1)は、前記回転シャフト(2)の前記外周面(21)と前記ハブ(5)の前記貫通孔(51)とを締り嵌めにより結合する少なくとも1つの結合部(7)を有し、
前記少なくとも1つの結合部(7)は、
第1の結合部(7D)と、
前記第1の結合部(7D)よりも前記軸方向の前記他方側(X2)に設けられた第2の結合部(7E)と、を含む。
【0094】
上記8)の構成によれば、コンプレッサホイールの取付構造(1)は、軸方向(X)における複数の箇所に結合部(第1の結合部7D、第2の結合部7E)を設けることで、コンプレッサホイール(3)が回転シャフト(2)に対して傾くことを抑制でき、コンプレッサホイール(3)の軸芯を正確に保持できる。これにより、コンプレッサホイール(3)のバランス変化リスクを低減できる。
【0095】
9)幾つかの実施形態では、上記8)に記載のコンプレッサホイールの取付構造(1)であって、
前記回転シャフト(2)は、
前記貫通孔(51)の内周面(53)に対向するシャフト側小径部(24)と、
前記第1の結合部(7D)に設けられるとともに前記シャフト側小径部(24)よりも大径に形成されたシャフト側大径部(25D)と、を含み、
前記貫通孔(51)は、
前記シャフト側小径部(24)に対して前記軸方向に直交する方向に離隔する貫通孔側大径部(511)と、
前記第2の結合部(7E)に設けられるとともに前記貫通孔側大径部(511)よりも小径に形成された貫通孔側小径部(512E)と、を含む。
【0096】
上記9)の構成によれば、シャフト側大径部(25D)の外周面と貫通孔側大径部(511)の内周面とが締り嵌めにより結合することで、第1の結合部(7D)が形成される。また、シャフト側小径部(24)の外周面と貫通孔側小径部(512E)の内周面とが締り嵌めにより結合することで、第2の結合部(7E)が形成される。第1の結合部(7D)における回転シャフト(2)の径を大きくし、且つ第2の結合部(7E)における貫通孔(51)の径を小さくすることで、回転シャフト(2)をコンプレッサホイール(3)の貫通孔(51)に軸方向における上記一方側(X1)から上記他方側(X2)に向かって挿入させ易い。これにより、コンプレッサホイール(3)と回転シャフト(2)との組立性を良好なものになる。また、上記9)の構成によれば、回転シャフト(2)に複数のシャフト側大径部(25D、25E)を形成する場合やハブ(5)に複数の貫通孔側小径部(512D、512E)を形成する場合に比べて、回転シャフト(2)やハブ(5)の形成が容易なため、回転シャフト(2)やハブ(5)の製造コストを低減できる。
【0097】
10)幾つかの実施形態では、上記8)に記載のコンプレッサホイールの取付構造(1)であって、
前記貫通孔(51)は、
前記回転シャフト(2)に対して前記軸方向に直交する方向に離隔する貫通孔側大径部(511)と、
前記第1の結合部(7D)に設けられるとともに前記貫通孔側大径部(511)よりも小径に形成された第1の貫通孔側小径部(512D)と、
前記第2の結合部(7E)に設けられるとともに前記貫通孔側大径部(511)よりも小径に形成された第2の貫通孔側小径部(512E)と、を含む。
【0098】
上記10)の構成によれば、第1の貫通孔側小径部(512D)の内周面と回転シャフト(2)の外周面とが締り嵌めにより結合することで、第1の結合部(7D)が形成される。また、第2の貫通孔側小径部(512E)の内周面と回転シャフト(2)の外周面とが締り嵌めにより結合することで、第2の結合部(7E)が形成される。この場合には、回転シャフト(2)に上述したようなシャフト側大径部を形成しなくてもよく、回転シャフト(2)の形成が容易なため、回転シャフト(2)の製造コストを低減できる。
【0099】
11)幾つかの実施形態では、上記8)に記載のコンプレッサホイールの取付構造(1)であって、
前記回転シャフト(2)は、
前記貫通孔(51)の内周面(53)に対して前記軸方向に直交する方向に離隔するシャフト側小径部(24)と、
前記第1の結合部(7D)に設けられるとともに前記シャフト側小径部(24)よりも大径に形成された第1のシャフト側大径部(25D)と、
前記第2の結合部(7E)に設けられるとともに前記シャフト側小径部(24)よりも大径に形成された第2のシャフト側大径部(25E)と、を含む。
【0100】
上記11)の構成によれば、第1のシャフト側大径部(25D)の外周面とハブ(5)の貫通孔(51)の内周面とが締り嵌めにより結合することで、第1の結合部(7D)が形成される。また、第2のシャフト側大径部(25E)の外周面とハブ(5)の貫通孔(51)の内周面とが締り嵌めにより結合することで、第2の結合部(7E)が形成される。この場合には、ハブ(5)の貫通孔(51)に上述したような貫通孔側小径部を形成しなくてもよく、上記貫通孔(51)の形成が容易なため、コンプレッサホイール(3)の製造コストを低減できる。
【0101】
12)幾つかの実施形態では、上記8)に記載のコンプレッサホイールの取付構造(1)であって、
前記第1の結合部(7D)は、前記背面(54)の前記外周縁(541)よりも前記軸方向の前記一方側(X1)に設けられた。
【0102】
上記12)の構成によれば、第1の結合部(7D)は、過給機(11)の運転時に作用する遠心応力が小さいハブ(5)の背面部に設けられる。ハブ(5)の背面部における内周面は、過給機(11)の運転時に塑性変形する可能性が低いので、過給機(11)の運転時および停止時の何れにおいても第1の結合部(7D)による結合が維持される。また、第2の結合部(7E)を過給機(11)の運転時に作用する遠心応力が小さいハブ(5)の上記前方部や上記中央部に設けることで、過給機(11)の運転時および停止時の何れにおいても第2の結合部(7E)による結合が維持されるため、コンプレッサホイール(3)が回転シャフト(2)に対して傾くことを効果的に抑制でき、コンプレッサホイール(3)の軸芯を正確に保持できる。これにより、コンプレッサホイール(3)のバランス変化リスクを効果的に低減できる。
【0103】
13)本開示の少なくとも一実施形態にかかる過給機(11)は、
上記1)に記載のコンプレッサホイールの取付構造(1)を備える。
【0104】
上記13)の構成によれば、過給機(11)の運転時において、ハブ(5)に作用する熱や遠心応力によって、ハブ(5)の貫通孔(51)が塑性変形することを抑制できる。これにより、過給機(11)の運転時や停止時において、回転シャフト(2)の外周面(21)とハブ(5)の貫通孔(51)との間の結合が解除されることを抑制でき、ひいてはコンプレッサホイール(3)のバランスが変化することを抑制できる。
【符号の説明】
【0105】
1,01 コンプレッサホイールの取付構造
2 回転シャフト
3 コンプレッサホイール
4 スリーブ
5 ハブ
6 ブレード
7,07 結合部
7A 一方側結合部
7B 他方側結合部
7C 中央側結合部
7D 第1の結合部
7E 第2の結合部
11 過給機
12 ケーシング
13 タービン翼
14 軸受
15 コンプレッサハウジング
16 タービンハウジング
17 軸受ハウジング
18 ナット部材
19 スラストリング
21 外周面
22 段差面
23 他端部
24 シャフト側小径部
25 シャフト側大径部
41 貫通孔
42 端面
51 貫通孔
52 外周面
53 内周面
54,054 背面
55 他方側平坦面
56,056 平坦面
57,057 凹面
61 前縁
62 後縁
63 チップ側縁
70,G 隙間
A1 第1線分領域
A2 第2線分領域
LA 軸線
P0 軸方向位置
R1,R2 曲率
X 軸方向
X1 (軸方向の)一方側
X2 (軸方向の)他方側
Y 径方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15