(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】フェロモン拡散ゲル
(51)【国際特許分類】
A61K 31/215 20060101AFI20250324BHJP
A61K 31/23 20060101ALI20250324BHJP
A61K 31/231 20060101ALI20250324BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20250324BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20250324BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20250324BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20250324BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20250324BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20250324BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20250324BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20250324BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20250324BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250324BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
A61K31/215
A61K31/23
A61K31/231
A61K9/00
A61K9/06
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/18
A61P25/20
A61P25/22
A61P43/00 171
A01K29/00 H
(21)【出願番号】P 2023546507
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2022052271
(87)【国際公開番号】W WO2022167389
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-10-02
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】596183491
【氏名又は名称】ヴィルバック
【氏名又は名称原語表記】VIRBAC
【住所又は居所原語表記】lere avenue 2065 m-L.I.D.06516 CARROS FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジラルダン、オレリー
(72)【発明者】
【氏名】モンジヌー、パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】ダ シルヴァ ピント、ヴィトー マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ラモス ダ シルヴァ ライーニョ、ヴェラ モニカ
(72)【発明者】
【氏名】メンデス ロドリゲス、カティア フィリパ
(72)【発明者】
【氏名】ノヴォ デ カルヴァーリョ、シンディー
(72)【発明者】
【氏名】マチャド パルラ シルヴァ、マリア エレナ
【審査官】宮地 慧
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-094230(JP,A)
【文献】特表2017-510634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌ用及び/又はネコ用の情報化学物質組成物のパッシブディフューザーゲル(passive diffuser gel)であって:
多糖ゲルマトリックス;
脂肪酸エステルの混合物を含む、イヌ用及び/又はネコ用の鎮静作用情報化学物質組成物(appeasing semiochemical composition);
前記ゲルマトリックス中の前記情報化学物質組成物の可溶化剤;
pKaが3より大きい有機酸;
を含
み、
前記ゲルマトリックスが、水と、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、アガロース(寒天)、ジェランガム、アミロースガム、カードランガム、アルギネート、キサンタンガム、キトサン、脱アセチル化ラムザンガム、及びこれらの多糖ゲル化剤の混合物からなる群から選択される少なくとも1つのゲル化剤とから構成され、
前記可溶化剤が炭素数1~4のアルコールから選択される可溶化剤であり、
pKaが3より大きい前記有機酸がクエン酸を含む、パッシブディフューザーゲル。
【請求項2】
防腐剤、着色剤、苦味剤からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のディフューザーゲル。
【請求項3】
前記ゲルマトリックスが水性カラギーナンゲルであることを特徴とする、請求項1
又は請求項2に記載のディフューザーゲル。
【請求項4】
前記情報化学物質組成物が、32%~38%のオレイン酸メチル、1%~3%のラウリン酸メチル、13%~16%のステアリン酸メチル、18%~24%のリノール酸メチル、3%~7%のミリスチン酸メチル、及び18~24%のパルミチン酸メチルを含む、脂肪酸エステルの混合物である、請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載のディフューザーゲル。
【請求項5】
前記情報化学物質組成物が、前記ディフューザーゲルの総質量の1質量%~10質量%含まれる、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載のディフューザーゲル。
【請求項6】
以下の組成を有することを特徴とする、請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載のディフューザーゲル:
水性カラギーナンゲルを含むゲルマトリックス;
1%~10%の情報化学物質組成物、ここで、前記情報化学物質組成物は、32%~38%のオレイン酸メチル、1%~3%のラウリン酸メチル、13%~16%のステアリン酸メチル、18%~24%のリノール酸メチル、3%~7%のミリスチン酸メチル、及び18%~24%のパルミチン酸メチルを含む、脂肪酸エステルの混合物である;
2%~10%の、炭素数1~4のアルコールから選択される、前記ゲルマトリックス中の前記情報化学物質組成物の可溶化剤;
0.1%~1%のクエン酸;
0.1%~0.5%の、イソチアゾリノン類(isothiazolinone family)から選ばれる防腐剤;
着色剤;
苦味剤としての安息香酸デナトニウム。
【請求項7】
ディフューザーゲルからの情報化学物質組成物をネコ又はイヌの環境に制御放出するための携帯可能ディフューザーであって、
ディフューザーゲル-空気交換エリア(diffuser gel-to-air exchange area)を備える容器からな
り、
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のディフューザーゲルを含むことを特徴とする、携帯可能ディフューザー。
【請求項8】
前記ディフューザーゲル-空気交換エリアが、前記情報化学物質組成物がそこを通って拡散することができる1又は複数の開口部からなることを特徴とする、請求項
7に記載のディフューザー。
【請求項9】
前記ディフューザーゲル-空気交換エリアが、取り外し可能な気密蓋によって覆われていることを特徴とする、請求項
7又は請求項
8に記載のディフューザー。
【請求項10】
前記ディフューザーゲル-空気交換エリアにおける空気接触表面が、前記開口部を閉鎖する調節可能な手段によって制御されることを特徴とする、
請求項8に記載のディフューザー。
【請求項11】
以下を行うための、請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載のディフューザーゲル又は請求項
7~請求項
10のいずれか1項に記載のディフューザーの使用:
動物の環境における動物の福祉を確保すること;
動物がストレスの多い及び/又は不安が生じる状況に対処するのを助けること;
動物における別れによるストレス(separation-related stress)を低減すること;
動物における離乳によるストレス(weaning-related stress)を低減すること;
動物における孤独によるストレス(solitude-related stress)を低減すること;
輸送前及び/又は輸送中の動物のストレスを低減すること;
雷雨又は花火などの騒音に付随するストレスを低減すること;
医学的状態、医学的処置、聴診又はさらには外科手術を必要とし得る獣医の往診に付随するストレスを低減すること;
動物の攻撃性を低減すること;
動物の行動、特に攻撃的な動物又は恐怖に満ちた動物、を改善すること;
動物にリラックス効果をもたらすこと;
動物が新しい状況に適応、例えば、里子になったとき(adoption)、新しい動物又は赤ん坊がその環境に到着したとき、家を移動するときに適応するのを助けること;
動物におけるストレスによる排尿マーキングを低減すること;
動物のしつけに関する問題を低減すること(reduce an animal’s housebreaking issues);
動物が同種の他の動物になつく状態を改善すること;
テリトリーの引っ掻き又は破壊を防止すること;
クンクン鳴く、吠えるなどの騒々しい示威行為を軽減すること;又は
イヌ又はネコである動物において、
1ヶ月を超える期間
にわたって、特に飼い主に対する、より攻撃性が低く、よりリラックスした、より優しい行動を達成すること。
【請求項12】
ネコ又はイヌのストレス、不安及び/又は攻撃的行動を処置するための、請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載のディフューザーゲル又は請求項
7~請求項
10のいずれか1項に記載のディフューザーの使用。
【請求項13】
ネコ又はイヌのストレス、不安及び/又は攻撃的行動の処置に使用するための、請求項
7~請求項
10のいずれか1項に記載のディフューザー。
【請求項14】
請求項
7~請求項
10のいずれか1項に記載のディフューザーのディフューザーゲル-空気交換エリアを開放することからなる、ネコ又はイヌのストレス、不安及び/又は攻撃的行動を処置するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報化学物質組成物(semiochemical compositions)を受動的に拡散させることが可能な製剤を含有する、イヌ用及びネコ用のディフューザー(diffuser)に関する。
【0002】
本発明は、特に、従来技術で知られている装置よりも長期間にわたってイヌ又はネコに有効な情報化学物質組成物を拡散させることが可能な製剤を含有し、作動するために電源に接続する必要がない装置に関する。本発明はまた、そのような装置に含有される拡散製剤、特にイヌ及びネコに有効な情報化学物質組成物を含むディフューザーゲル(diffuser gel)に関する。
【背景技術】
【0003】
情報化学物質組成物を受動的に拡散させることが可能な装置は、従来技術において知られている。情報化学物質組成物は、同じ種内で伝達するために動物によって天然に分泌される化合物又は化合物の混合物である。例えば、授乳中、雌イヌは、子イヌが自分の近くにいるときに、子イヌを安心させるためにフェロモンを分泌する。同様に、ネコは、顔フェロモンを顔に分泌し、慣れ親しんだテリトリーをマークするために見知った場所に堆積させる。
【0004】
これらの化合物混合物を同定し、それらを合成的に再現するために多くの研究が行われてきた。
【0005】
例えば、そのような化合物混合物は、イヌがストレスを生じる状況(別れ(separation)、離乳、輸送、騒音又は花火の恐怖など)により良好に対処するのを助け、イヌが新しい状況により良好に適応することを可能にするために必要とされる。
【0006】
特にイヌ用及びネコ用の問題のペット製品としては、例えば、噴霧器(sprays)、アクティブディフューザー(active diffusers)(有機溶媒中に分散又は可溶化された情報化学物質組成物を加熱する電気差し込み型)、及び首輪(collars)がある。従来技術のアクティブディフューザー(ADAPTIL(登録商標)Calm for dogs)は、有機溶媒中に分散又は可溶化された情報化学物質組成物を含有し、芯が浸漬されたリザーバを備える。装置が差し込まれると、芯が加熱され、これにより、この芯を介して情報化学物質組成物が動物環境に拡散され、ここで、上記情報化学物質組成物は、脂肪酸メチルエステルの混合物又は脂肪酸メチルエステルと脂肪酸との混合物からなる。このアクティブディフューザーは4週間有効である。
【0007】
イヌ又はネコに使用されるこのタイプの装置の1つの主要な欠点は、装置を作動させ、情報化学物質組成物の拡散を作動させるために電源を必要とすることである。また、イヌやネコがいる場所によっては使用できない。
【0008】
情報化学物質組成物の受動的拡散(passive diffusion)のための装置が、家畜に使用されてきた。例えば、ブタの場合、PAPすなわち「ブタ鎮静フェロモン」を含むブロックが存在し、このブロックは、離乳期群の攻撃性を低減し、福祉を確保するために、ブロックの使用範囲にわたって1.5メートルの高さの家畜用の囲いの中にブタを配置することによって畜産場で使用されている(Temple et al.,Porcine Health Management 2,13(2016))。しかしながら、これらの家畜用装置に含有される徐放性ブロックの組成は記載されておらず、その有効性は6週間に限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、揮発性脂肪酸誘導体の混合物を含む情報化学物質組成物を含むディフューザーゲルの形態で、制限なく自由に移動することが可能な携帯可能装置に含有される拡散製剤(diffusion formulation)を開発した。このディフューザーゲルは、情報化学物質組成物の環境中への効率的な受動的拡散を可能にし、したがって、この製剤は、上記製剤を組み込んだディフューザーを使用する際に電源の必要性を省くことを可能にし、したがって、所望の場所に運搬して使用することができる。さらに、従来技術のディフューザーと比較して有効期間が長い。
【課題を解決するための手段】
【0010】
さらに、この拡散製剤に製剤化された情報化学物質組成物は、その成分の脆弱性にもかかわらず、湿度及び光に曝露されたときに良好な安定性を示し、受動的拡散装置(passive diffusion device)は、上記情報化学物質組成物の拡散を有利に制御することを可能にする容器からなる。
【0011】
したがって、本発明は、揮発性脂肪酸誘導体の混合物を含む情報化学物質組成物を含む、従来技術の装置、特にイヌ用及び/又はネコ用のディフューザーを改善することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1のディフューザーゲルに製剤化された情報化学物質組成物の拡散プロファイルを示すグラフである。
【
図2】本発明によるディフューザー又はAdaptil(登録商標)Calmディフューザーに曝露されたイヌの行動の発展を比較するグラフである(実施例4を参照)。点線の曲線は、Adaptil(登録商標)Calmディフューザーで得られた結果を表し、実線の曲線は、本発明によるディフューザーで得られた結果を表す。
【
図3】本発明によるディフューザー又はAdaptil(登録商標)Calmディフューザーに曝露されたイヌの徴候の発展を比較するグラフである(実施例4を参照)。点線の曲線は、Adaptil(登録商標)Calmディフューザーで得られた結果を表し、実線の曲線は、本発明によるディフューザーで得られた結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特に明記しない限り、すべての百分率は、列挙した成分の総質量に対する成分の質量(m/m)によって列挙されている。
【0014】
本発明の第1の目的は、以下を含む、パッシブディフューザーゲルを提供することである:
・多糖ゲルマトリックス;
・揮発性脂肪酸誘導体の混合物を含む、イヌ用及び/又はネコ用の鎮静作用情報化学物質組成物(appeasing semiochemical composition);
・上記ゲルマトリックス中の上記情報化学物質組成物の可溶化剤;
・pKaが3より大きい有機酸;
・任意選択的に(optionally)、防腐剤、
・任意選択的に(optionally)、着色剤、
・任意選択的に(optionally)、苦味剤。
【0015】
上記多糖ゲルマトリックスは、水性多糖ゲルであり、したがって、多糖ゲル化剤及び水から構成され、多糖ゲル化剤は、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、アガロース(寒天)、ジェランガム、アミロースガム、カードランガム、アルギネート、キサンタンガム、キトサン及び脱アセチル化ラムザンガム、又はこれらの多糖ゲル化剤の混合物であり得る。
【0016】
特定の実施形態によれば、上記ゲルマトリックスはカラギーナンから調製され、好ましくは、この実施形態によれば、カラギーナンは、ディフューザーゲルの総重量に対して0.5重量%~5重量%、好ましくは1重量%~2重量%の含有量で含まれる。
【0017】
上記情報化学物質組成物の安定化及び適切な量の上記情報化学物質組成物の制御された連続放出に関して本発明の利点を有する、適切な粘度を有するゲルを得るためには、特にpKaが3より大きい有機酸を使用してゲルのpHを調整することが必要である。有機酸は、任意の有機酸であればよいが、クエン酸が好ましく使用され、クエン酸は、本発明による情報化学物質組成物に特に適していることが判明している。pKaが3より大きい有機酸、特にクエン酸は、一般的に、ディフューザーゲルの総質量の0.01質量%~0.5質量%、好ましくは約0.05質量%で含まれる含有量で存在する。
【0018】
使用される情報化学物質組成物は、揮発性脂肪酸誘導体の混合物を含む、イヌ用及び/又はネコ用の鎮静作用情報化学物質組成物(appeasing semiochemical composition)である。
【0019】
本発明の意味の範囲内で、「鎮静作用情報化学物質組成物」とは、例えば生物から抽出された生物間のシグナル値を有する天然に存在する化学物質の混合物、又は例えば動物にリラックス効果若しくは鎮静効果をもたらすことができる脂肪酸の揮発性誘導体を混合することによって得られる合成により生じる化学物質の混合物を指す。
【0020】
本発明の意味の範囲内で、「脂肪酸の揮発性誘導体」とは、装置に外部熱源を加えることなく動物の環境に拡散可能な脂肪酸の任意の誘導体を指す。
【0021】
本発明の意味の範囲内で、「脂肪酸」とは、4~22個の炭素原子を有する直鎖又は分岐、飽和又は不飽和の炭化水素鎖モノカルボン酸又はジカルボン酸を指す。有利には、脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、アラキドン酸、n-酪酸、イソ酪酸、α-メチル酪酸、カプロン酸、ピバル酸、γ-リノール酸、エイコサペンタエン酸、ペンタデカン酸、トリデカン酸、及びドコサヘキサエン酸からなる群から選択される。
【0022】
揮発性脂肪酸誘導体は、特に脂肪酸エステル、例えば脂肪酸及びC1~C6アルコールから形成されるエステルである。有利には、脂肪酸エステルは、エチル又はメチルエステルである。好ましくは、脂肪酸エステルは、脂肪酸メチルエステルである。
【0023】
したがって、有利には、イヌ用及び/又はネコ用の鎮静作用情報化学物質組成物は、揮発性脂肪酸誘導体の混合物を含み、脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、アラキドン酸、n-酪酸、イソ酪酸、α-メチル酪酸、カプロン酸、ピバル酸、γ-リノール酸、エイコサペンタエン酸、ペンタデカン酸、トリデカン酸、及びドコサヘキサエン酸からなる群から選択され、有利には、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、リノール酸、ステアリン酸、及びペンタデカン酸からなる群から選択される。
【0024】
より有利には、イヌ用及び/又はネコ用の鎮静作用情報化学物質組成物は、オレイン酸メチル、パルミチン酸メチル、アゼライン酸メチル、ピメリン酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミトレイン酸メチル、リノール酸メチル、ステアリン酸メチル、アラキドン酸メチル、n-酪酸メチル、イソ酪酸メチル、メチルα-メチルブチレート、カプロン酸メチル、ピバル酸メチル、メチルγ-リノレエート、エイコサペンタエン酸メチル、ペンタデカン酸メチル、トリデカン酸メチル、ドコサヘキサエン酸メチルからなる群から選択され、有利には、オレイン酸メチル、パルミチン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、リノール酸メチル、ステアリン酸メチル、及びペンタデカン酸メチルからなる群から選択される揮発性脂肪酸誘導体の混合物を含むか、又はそれからなる。
【0025】
脂肪酸の揮発性誘導体及び鎮静作用情報化学物質組成物中のそれらの相対的割合は、標的動物に依存する。
【0026】
標的動物がイヌである場合、イヌ用及び/又はネコ用の鎮静作用情報化学物質組成物は、国際公開第2009144321号に記載されているものから選択され得る。
【0027】
イヌを鎮静させることを意図した、脂肪酸エステル、好ましくはメチルエステルの特定の混合物は、以下の脂肪酸のエステルである:
・オレイン酸及びn-酪酸の混合物A、
・オレイン酸、パルミチン酸及びリノール酸の混合物B、
・オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸及びパルミトレイン酸の混合物C、
・カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、パルミチン酸、リノール酸及びオレイン酸の混合物D、
・オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸及びミリスチン酸の混合物E、
・オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸及びミリスチン酸の混合物F、
・オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ミリスチン酸及びペンタデカン酸の混合物G、
・オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸及びステアリン酸の混合物H、
・オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ミリスチン酸、ラウリン酸及びペンタデカン酸の混合物I、
・ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸の混合物J、
・オレイン酸、アゼライン酸、ピメリン酸及びパルミチン酸の混合物K。
【0028】
イヌを鎮静させることを意図した脂肪酸エステル、好ましくはメチルエステルの混合物は、以下の脂肪酸のエステルである:
・約55%~約65%のオレイン酸及び45%~35%のパルミチン酸を含むか又はそれらからなる混合物L、
・約45%のオレイン酸、16%のアゼライン酸、18%のピメリン酸及び21%のパルミチン酸を含むか又はそれらからなる混合物M、
・約30%のパルミチン酸、30%のオレイン酸及び40%のリノール酸を含むか又はそれらからなる混合物N、
・約30%のパルミチン酸、40%のリノール酸、10%のパルミトレイン酸及び20%のオレイン酸を含むか又はそれらからなる混合物O。
【0029】
イヌを鎮静させるための脂肪酸エステルの特定の混合物Pは、約35%のオレイン酸メチル、約2%のラウリン酸メチル、約13%のステアリン酸メチル、約21%のリノール酸メチル、約5%のミリスチン酸メチル、約4%のペンタデカン酸メチル及び約20%のパルミチン酸メチルを含むか、又はそれらからなる。
【0030】
本発明の発明者らはまた、ペンタデカン酸メチルを含まない揮発性脂肪酸誘導体の混合物を含むか又はそれからなる情報化学物質組成物が、イヌにおいてP混合物の効果と同様の効果をもたらすことを実証した。ペンタデカン酸は、天然状態では比較的希少な脂肪酸であり、その主な供給源は少量(1.2%)で存在する牛乳の脂肪画分であるため、手頃なコストで入手することは困難である。したがって、この脂肪酸が存在しないことが情報化学物質組成物の鎮静有効性を低下させないという発見は、本発明による装置の製造に付随するコストを削減することを可能にする。本発明によるイヌを鎮静させるための脂肪酸エステルの別の特定の混合物Qは、32%~38%のオレイン酸メチル、1%~3%のラウリン酸メチル、13%~16%のステアリン酸メチル、18%~24%のリノール酸メチル、3%~7%のミリスチン酸メチル、及び18%~24%のパルミチン酸メチルを含むか、又はそれらからなる。
【0031】
本発明によるイヌを鎮静させるための脂肪酸エステルのより特定の混合物Rは、約35%のオレイン酸メチル、約2%のラウリン酸メチル、約15.5%のステアリン酸メチル、約21%のリノール酸メチル、約5%のミリスチン酸メチル、及び約21%のパルミチン酸メチルを含むか、又はそれらからなる。
【0032】
標的動物がネコである場合、鎮静作用情報化学物質組成物は、国際公開第2015140631号に記載されているものから選択され得る。
【0033】
鎮静作用情報化学物質組成物は、例えば、ネコの肩甲骨と耳との間のエリアからの皮膚分泌物に由来するネコ用の鎮静フェロモンである。
【0034】
ネコを鎮静させるための情報化学物質組成物は、有利には、パルミチン酸メチル、リノール酸メチル、オレイン酸メチル、ステアリン酸メチル、ラウリン酸メチル及びミリスチン酸メチルを含むか、又はそれらからなる。
【0035】
ネコを鎮静させるための脂肪酸エステルの特定の混合物Sは、15%~25%のパルミチン酸メチル、10%~27%のリノール酸メチル、25%~35%のオレイン酸メチル、5%~15%のステアリン酸メチル、5%~15%のラウリン酸メチル、及び5%~15%のミリスチン酸メチルを含むか、又はそれらからなる。
【0036】
ネコを鎮静させるための脂肪酸エステルの別の特定の混合物Tは、19%~26%のパルミチン酸メチル、14%~20%のリノール酸メチル、26%~32%のオレイン酸メチル、8%~14%のステアリン酸メチル、8%~14%のラウリン酸メチル、及び8%~14%のミリスチン酸メチルを含むか、又はそれらからなる。
【0037】
さらにより特定の混合物Uは、22%のパルミチン酸メチル、17%のリノール酸メチル、28%のオレイン酸メチル、11%のステアリン酸メチル、11%のラウリン酸メチル、及び11%のミリスチン酸メチルを含むか、又はそれらからなる。
【0038】
本発明による装置に使用することができる別の情報化学物質組成物Vが、米国特許第10227321号明細書に記載されており、少なくとも1つの揮発性脂肪酸誘導体は、以下の式のエステルであり、
【0039】
【0040】
式中、n=0であり、Rは、9~30個の炭素原子を含む飽和又は不飽和直鎖アルキルであるか、又は、n=1であり、Rは、8~22個の炭素原子を含む飽和又は不飽和直鎖アルキルである。
【0041】
上記装置中の情報化学物質組成物の量は、大きな割合で変動し得る。情報化学物質組成物の割合は、典型的には、ディフューザーゲルの総質量の0.1質量%~25質量%で含まれる。有利には、情報化学物質組成物は、ディフューザーゲルの総質量の1質量%~10質量%、より有利には3質量%~8質量%、好ましくは約6質量%に相当する。
【0042】
本発明の意味の範囲内で、「約x%」とは、記載された割合から約0.2%の変動を指す。
【0043】
情報化学物質組成物が水不混和性分子からなること、及びゲルの含水量が高いことから、本発明によるディフューザーゲルは、2つの相の形成、すなわち、第1の相が水からなり、第2の相が情報化学物質組成物からなること(脱混合)を回避するために、ゲルマトリックス中に情報化学物質組成物の少なくとも1つの可溶化剤を含む。
【0044】
可溶化剤の役割はまた、情報化学物質組成物の成分の蒸発を促進することである。この蒸発は、情報化学物質組成物の放出、したがって本発明による装置の有効性に影響を及ぼす。
【0045】
可溶化剤は、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つの水混和性有機溶媒、又は少なくとも1つの界面活性剤と少なくとも1つの水混和性有機溶媒との混合物であり得る。
【0046】
界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両性界面活性剤から選択され得る。
【0047】
アニオン性界面活性剤としては、アシルアミノ酸(及び塩);カルボン酸(及び塩)、リン酸(及び塩);スルホン酸(及び塩)、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルホネート、アルキルスルホスクシネート(及び塩)、並びに硫酸エステル、例えばアルキルエーテルサルフェート、アルキルサルフェート、アルキルフェノールエトキシレート、及びアルキルフェノールサルフェートが挙げられる。
【0048】
非イオン性界面活性剤としては、脂肪族アルコールエトキシレート;ポリオキシエチレン;カルボン酸エステル;ポリエチレングリコールエステル;アンヒドロソルビトールエステル及びそのエトキシル化誘導体;脂肪酸グリコールエステル;カルボン酸アミド;ポリオキシエチレン脂肪酸アミドが挙げられる。
【0049】
カチオン性界面活性剤には、主に長鎖第四級アルキルアンモニウム塩が含まれる。
【0050】
両性界面活性剤としては、ベタイン(例えば、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、スルホベタイン、スルフィトベタイン、スルファトベタイン、ホスフィネートベタイン、ホスホネートベタイン、ホスフィトベタイン、ホスファトベタイン、スルホニウムベタイン及びホスフェニウムベタイン)などの双性イオン界面活性剤が挙げられる。
【0051】
水混和性有機溶媒は、情報化学物質組成物が可溶性である任意の水混和性溶媒であり得る。
【0052】
水と混和性の有機溶媒の中でも、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール及びtert-ブタノールなどのアルコール類;アセトンなどのケトン類;ジオキサン又はジメトキシエタンなどのエーテル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;ジメチルホルムアミド又はN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類;アセトニトリルなどのニトリル類;1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール又はトリエチレングリコールなどのポリオール類を参照することができる。
【0053】
有利には、可溶化剤は、特に炭素数1~4(C1~C4)のアルコール及びポリオールから選択される水混和性有機溶媒である。好ましくは、炭素数1~4(C1~C4)のアルコールは、1-プロパノール又は2-プロパノール、より優先的には2-プロパノールである。
【0054】
可能な限り少ない量の可溶化剤を使用する。一般に、ディフューザーゲルの総質量の1質量%~10質量%で含まれる可溶化剤含有量が、脱混合が観察されない、均質で経時的に安定なゲルを得ることを可能にする。
【0055】
可溶化剤がC1~C4のアルコール又はポリオール、特に1-プロパノール又は2-プロパノール、より優先的には2-プロパノールである場合、可溶化剤は、ディフューザーゲルの総質量の1質量%~10質量%、有利には2質量%~8質量%、好ましくは約4質量%で含まれる含有量で存在する。
【0056】
任意の防腐剤、特に殺生物剤型防腐剤がディフューザーゲルに添加されてもよく、この製品群は当業者に周知であり、特にイソチアゾリノン類(ベンゾイソチアゾリノン、イソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノン、n-オクチル-イソチアゾリノンなど)、第四級アンモニウム類(ベンザルコニウム)を含む。
【0057】
特定の実施形態によれば、防腐剤は、ベンゾイソチアゾリノンであり、ディフューザーゲルの総質量の0.05質量%~1質量%、好ましくは約0.18質量%で含まれる含有量で存在する。
【0058】
さらに、本発明によるディフューザーゲルの安定性、特に、情報化学物質組成物の成分の安定性は、酸化防止剤を組み込むことによってさらに改善することができる。酸化防止剤の中でも、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸、没食子酸プロピル及びピロガロールなどのフェノール化合物、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)及びジ-tert-ブチルヒドロキノン(DTBHQ)などのヒドロキノン類、トコフェロール類、オクチルブチルジフェニルアミン(OBPA)、ポリ(1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン(Orox PK)、N,N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(DPD)及びエトキシキンなどのアミン類、並びにこれらの酸化防止剤の混合物を参照することができる。そのような化合物は当業者に周知であり、過度の努力なしに選択することができ、好ましくは、使用される酸化防止剤はtBHQである。情報目的として、使用される酸化防止剤の量は、0.001%~0.1%で含まれ得る。
【0059】
ディフューザーゲルの視覚的外観をより魅力的にするために、任意の着色剤をディフューザーゲルに添加してもよい。
【0060】
最後に、子供又は動物によるディフューザーゲルの偶発的な摂取を回避するために、例えば、苦味剤をディフューザーゲルに添加してもよく、これらの薬剤は当業者に公知であり、その例としては安息香酸デナトニウムが挙げられ、この化合物は、ディフューザーゲルの総質量に対して0.05質量%~0.15質量%で含まれる含有量で添加してもよい。
【0061】
本発明は、以下を含むディフューザーゲルにさらに関する:
・多糖ゲルマトリックス;
・上記で定義した揮発性脂肪酸誘導体の混合物を含む、1%~10%(好ましくは約6%)のイヌ用及び/又はネコ用の鎮静作用情報化学物質組成物、特に、上記情報化学物質組成物は、ラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル及びリノール酸エステル、並びに任意選択的に(optionally)ペンタデカン酸エステルの中から選択される、脂肪酸エステルの混合物を含み得る;
・1%~10%(好ましくは約4%)の、上記ゲルマトリックス中の上記情報化学物質組成物の可溶化剤;
・0.1%~1%の、pKaが3より大きい有機酸(特にクエン酸);
・任意選択的に(optionally)、0.1%~0.5%の防腐剤;
・任意選択的に(optionally)、着色剤;
・任意選択的に(optionally)、苦味剤。
【0062】
特定の実施形態では、本発明による装置は、以下を含む:
・水性カラギーナンゲルからなるゲルマトリックス;
・上記で定義した1%~10%(好ましくは約6%)の、鎮静作用情報化学物質組成物、特に、上記情報化学物質組成物は、ラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル及びリノール酸エステル、並びに任意選択的に(optionally)ペンタデカン酸エステルの中から選択される脂肪酸エステルの混合物を含み得る;
・1%~10%(好ましくは約4%)の、C1~C4アルコールから選択される、上記ゲルマトリックス中の上記情報化学物質組成物の可溶化剤;
・0.1%~1%のクエン酸;
・任意選択的に(optionally)、0.1%~0.5%のイソチアゾリノン類(isothiazolinone family)から選ばれる防腐剤;
・任意選択的に(optionally)、着色剤;
・任意選択的に(optionally)、苦味剤としての安息香酸デナトニウム。
【0063】
特定の実施形態では、本発明による装置は、以下を含む:
・水性カラギーナンゲルを含むゲルマトリックス;
・32%~38%のオレイン酸メチル、1%~3%のラウリン酸メチル、13%~16%のステアリン酸メチル、18%~24%のリノール酸メチル、3%~7%のミリスチン酸メチル、及び18%~24%のパルミチン酸メチルを含む、脂肪酸エステルの混合物である、1%~10%(好ましくは約6%)の情報化学物質組成物;
・2%~10%の、C1~C4アルコールから選択される、上記ゲルマトリックス中の上記情報化学物質組成物の可溶化剤;
・0.1%~1%のクエン酸;
・0.1%~0.5%の、イソチアゾリノン類から選ばれる防腐剤;
・着色剤;
・苦味剤としての安息香酸デナトニウム。
【0064】
本発明の第2の目的は、本発明の第1の目的に従って記載されるようなディフューザーゲルを含有するディフューザーであって、情報化学物質組成物をイヌ及び/又はネコの環境に拡散することを可能にし、それにより、動物に対するその鎮静効果をもたらすディフューザーを提供することである。
【0065】
上記ディフューザーは、以下を含むディフューザーゲルを保持することができる容器である:
・多糖ゲルマトリックス;
・揮発性脂肪酸誘導体の混合物を含む、イヌ用及び/又はネコ用の鎮静作用情報化学物質組成物;
・上記ゲルマトリックス中の上記情報化学物質組成物の可溶化剤;
・pKaが3より大きい有機酸;
・任意選択的に(optionally)、防腐剤、
・任意選択的に(optionally)、着色剤、
・任意選択的に(optionally)、苦味剤。
【0066】
上記ディフューザーは、ディフューザーゲルを保持するための容器であり、情報化学物質組成物の制御放出を可能にするための容器である。上記ディフューザーは、任意の形状を有していてよく、少なくとも1つのディフューザーゲル-空気交換エリア(diffuser gel-to-air exchange area)を必ず備えており、それにより、イヌ及び/又はネコのための鎮静作用情報化学物質組成物が上記ディフューザーの周りの空気中に拡散される。したがって、上記ディフューザーをイヌ及び/又はネコの近くに配置することにより、ネコ及び/又はイヌが鎮静作用情報化学物質組成物と接触することが可能になる。上記ディフューザーは、運搬又は輸送、又はさらには移動させることができ、これは、上記ディフューザーの効果を生み出すために、イヌ又はネコの飼い主によって、ペットが存在する場所から場所に、上記ディフューザーを輸送及び配置することが可能であることを意味する。本発明に係るディフューザーは、情報化学物質組成物の不必要な風による分散を回避するために、イヌ又はネコが存在する囲まれた場所に主に設置される。これらの場所には、例えば、リビングルーム、車両(車)、又は獣医診療所の待合室が含まれる。
【0067】
ディフューザーゲル-空気交換エリアは、ディフューザーゲルが容器から漏れるリスクを回避するために、好ましくは容器の上部に配置される。
【0068】
ディフューザーゲル-空気交換エリアは、有利には、容器の壁で作られ、この壁には、情報化学物質組成物が拡散し得る1又は複数の開口部が配置されている。開口部は、円、正方形、ひし形、長方形、及び三角形などの単純な幾何学的形状を有してもよく、又は装置が意図される動物の頭、装置が意図される動物の体のシルエット、若しくは装置が意図される動物の足などの審美的機能を有する形状を有してもよい。このタイプの視覚的表示は、標的動物であるイヌ又はネコを識別する場合、ディフューザーの適切な使用において、高齢の飼い主にとって貴重な補助となり得る。
【0069】
有利には、ディフューザーゲル-空気交換エリアで空気と接触する表面は、開口部を閉鎖する調節可能な手段によって制御される。これらの調節可能な閉鎖手段は、ディフューザーゲル-空気交換エリアを制御することによって、動物の必要性及び/又は部屋の大きさに応じて環境内の情報化学物質組成物の拡散速度を低下又は上昇させることを可能にする。開口部の必要な直径、及び適切な拡散を達成するために必要な開口部の数は、実験的に決定することができる。
【0070】
ディフューザーゲル-空気交換エリアは、有利には、取り外し可能な気密蓋によって覆われ、気密蓋は、所定の場所にあるときに、情報化学物質組成物の空気中への拡散を停止することを可能にする。したがって、ディフューザーがもはやイヌ又はネコの近くにない場合(例えば、イヌ又はネコが散歩に出ているとき、又は鎮静組成物を投与する必要がないとき)、情報化学物質組成物の自然拡散又は蒸発を大幅に低減又は停止することができ、経済的及び生態学的であるため特に有用である。
【0071】
上記の特徴を組み込んだ特定の実施形態では、本発明は、底壁、側壁、上壁又は複数の開口部を有するディフューザーゲル-空気交換エリア、及び複数の開口部を有する蓋を有する容器に関し、複数の開口部を有する蓋は、上壁の複数の開口部と蓋の複数の開口部とを整列させるか又は位置ずれさせるために、上壁に対して回転することができる。この実施形態では、上壁及び蓋は、動物の環境におけるディフューザーゲル-空気交換を増加、減少、又は終了することによる、情報化学物質組成物の拡散を制御するためのシステムを画定する。ディフューザーゲル-空気交換の表面を制御するためのこのようなシステムは、動物が存在する部屋の大きさに放出を適合させることを可能にし、ディフューザーの使用が不要なときにディフューザーがしっかりと閉鎖されると、ディフューザーゲルを含有する情報化学物質組成物の安定性を確保することによって、ディフューザーの有効寿命を延ばすことを可能にする。
【0072】
別の特定の実施形態によれば、容器は、二重の蓋を有し、第1の蓋は孔を有し、容器に直接取り付けられ、第2の蓋は第1の蓋の上方に取り付けられ、第1の蓋の開口部を閉じることを可能にする。この実施形態の装置を使用するために、ユーザは、装置を設置するための適切な場所を選択したら、第2の蓋を開けばよく、それにより、情報化学物質組成物は、ディフューザーゲルを第1の蓋の開口部を通して空気中に受動的に拡散させることができる。
【0073】
容器に詰められたディフューザーゲルの輸送及び/又は保存を容易にするために、容器は、蓋及び/又はシールなどの気密閉鎖手段を備え得る。輸送を容易にするために、ディフューザーにハンドルを設けてもよい。任選択的に、装置は、フック、接着ストリップなどの取り付け手段を備えてもよい。
【0074】
本発明はまた、以下の工程を含む、先に定義されたようなディフューザーゲルを調製するための方法に関する:
【0075】
1)多糖ゲル化剤を可溶化するのに十分な温度まで、及び十分な時間加熱する工程であって、混合物が以下を含む工程:
・多糖ゲル化剤、
・情報化学物質組成物、
・上記情報化学物質組成物の可溶化剤、
・pKaが3より大きい有機酸、
・任意選択的に(optionally)、防腐剤、
・任意選択的に(optionally)、着色剤、
・任意選択的に(optionally)、苦味剤、
2)工程1)で得られた溶液を冷却して、先に定義したようなディフューザーゲルを得る工程。
【0076】
本発明に係るディフューザーゲルは、有利には、第1のプレミックスを得るために、情報化学物質組成物と情報化学物質組成物の可溶化剤とを混合することによって調製される。
【0077】
全ての混合工程及び/又は加熱工程は、好ましくは撹拌下で実行される。
【0078】
水、pKaが3より大きい有機酸、着色剤、及び苦味剤を含む第2のプレミックスが調製される。有利には、第2のプレミックスは、最初に、水と、pKaが3より大きい有機酸と、任意選択的に(optionally)着色剤及び苦味剤とを混合し、成分が完全に可溶化された第1の溶液を得るために十分な温度まで十分な時間加熱することによって調製される。典型的には、この第1の溶液は、50℃~100℃に含まれる温度まで、特に約70℃の温度まで加熱することによって得られる。
【0079】
次いで、この第1の溶液に多糖ゲル化剤を添加し、多糖ゲル化剤が完全に溶解した第2の溶液を得るために、混合物を十分な温度まで十分な時間加熱する。多糖ゲル化剤は、過度に高い温度まで、及び/又は過度に長い時間加熱すると分解する可能性があるため、混合物は、適切な温度まで、及び適切な時間加熱する必要がある。
【0080】
温度及び加熱時間は、定常試験によって決定することができる。典型的には、多糖ゲル化剤がカラギーナンである場合、溶液を約70℃の温度まで少なくとも1時間加熱する。簡単な目視検査により、多糖ゲル化剤が完全に溶解していることを確認することができる。
【0081】
多糖ゲル化剤が完全に溶解したら、第1のプレミックスを第1の溶液に添加する。
【0082】
第1のプレミックスは、第1の溶液が調製される温度と同じ温度又は異なる温度で添加してもよい。有利な実施形態では、第1のプレミックスは、第1の溶液が調製される温度よりも低いが、多糖ゲル化剤が常に可溶化される温度で添加される。防腐剤を添加する場合、有利には第1のプレミックスの後に、第1の溶液に添加する。
【0083】
第1のプレミックスと、任意選択的に(optionally)保存剤と、が第1の溶液に添加された後、以下を含む第2の溶液が得られる:
・多糖ゲル化剤;
・情報化学物質組成物;
・上記情報化学物質組成物の可溶化剤;
・pKaが3より大きい有機酸;
・任意選択的に(optionally)、防腐剤;
・任意選択的に(optionally)、着色剤;
・任意選択的に(optionally)、苦味剤。
【0084】
第2の溶液は、上記のように、ディフューザーに充填することができる均質な溶液の形成を可能にするのに十分な温度に保たれる。約15℃~25℃(室温)の温度に冷却することにより、第2の溶液は凝固して、上記のようなディフューザーゲルを形成する。代替的に、均質な溶液を直接冷却し、室温で冷却した後に形成されたゲルブロックを所望の数の部分に分割してもよい。
【0085】
有利な実施形態では、本発明は、以下の工程を含む、先に定義されたようなディフューザーゲルを調製するための方法に関する:
1)情報化学物質組成物と上記情報化学物質組成物の可溶化剤とを混合して、第1のプレミックスを得る工程、
2)水と、pKaが3より大きい有機酸と、任意選択的に(optionally)着色剤及び苦味剤と、を混合し、十分な温度まで十分な時間加熱して、第1の溶液を得る工程、
3)多糖ゲル化剤を上記第1の溶液に添加し、十分な温度まで十分な時間加熱して、上記多糖ゲル化剤が完全に溶解した第2のプレミックスを得る工程、
4)工程1)で得られた第1のプレミックスと、任意選択的に(optionally)防腐剤と、を工程3)で得られた第1の溶液に添加し、混合物を加熱して、均質な溶液を得る工程、
5)工程4で得られた均質な溶液を冷却して、先に定義したようなディフューザーゲルを得る工程。
【0086】
好ましい実施形態では、本発明は、以下の工程を含む、先に定義されたようなディフューザーゲルを調製するための方法に関する:
1)情報化学物質組成物とイソプロパノールとを混合して、第1のプレミックスを得る工程、
2)水と、クエン酸と、着色剤と、苦味剤とを混合し、十分な温度まで十分な時間加熱して、第1の溶液を得る工程、
3)カラギーナンを上記第1の溶液に添加し、その溶液を十分な温度まで十分な時間加熱して、カラギーナンが完全に溶解した第2の溶液を得る工程、
4)工程1)で得られた第1のプレミックスと、任意選択的に(optionally)防腐剤と、を工程3)で得られた第2の溶液に添加し、混合物を加熱して、均質な溶液を得る工程、
5)工程4)で得られた均質な溶液を冷却して、先に定義したようなディフューザーゲルを得る工程。
【0087】
本発明はまた、有利には1ヶ月を超える期間、より有利には2ヶ月を超える期間、好ましくは約3ヶ月の期間にわたる、上記のディフューザーからの情報化学物質組成物の拡散を含む、以下の効果の1又は複数を得るための方法に関する:
・動物の環境における動物の福祉を確保すること;
・動物がストレスの多い及び/又は不安が生じる状況に対処するのを助けること;
・動物における別れによるストレス(separation-related stress)を低減すること;
・動物における離乳によるストレス(weaning-related stress)を低減すること;
・動物における孤独によるストレス(solitude-related stress)を低減すること;
・輸送前及び/又は輸送中の動物のストレスを低減すること;
・雷雨又は花火などの騒音に付随するストレスを低減すること;
・医学的状態、医学的処置、聴診又はさらには外科手術を必要とし得る獣医の往診に付随するストレスを低減すること;
・動物の攻撃性を低減すること;
・動物の行動、特に攻撃的な動物又は恐怖に満ちた動物、を改善すること;
・動物にリラックス効果をもたらすこと;
・動物が新しい状況に適応、例えば、里子になったとき(adoption)、新しい動物又は赤ん坊がその環境に到着したとき、家を移動するときに適応するのを助けること;
・動物におけるストレスによる排尿マーキングを低減すること;
・動物のしつけに関する問題を低減すること(reduce an animal’s housebreaking issues);
・動物が同種の他の動物になつく状態を改善すること;
・テリトリーの引っ掻き又は破壊を防止すること;
・クンクン鳴く、吠えるなどの騒々しい示威行為を軽減すること;
・イヌ又はネコであるである動物において、特に飼い主に対する、より攻撃性が低く、よりリラックスした、より優しい行動を達成すること。
【0088】
別の態様では、本発明は、ネコ又はイヌのストレス、不安及び/又は攻撃的行動を処置するための、及び/又は、有利には1ヶ月を超える期間、より有利には2ヶ月を超える期間、好ましくは約3ヶ月の期間にわたって、以下の効果のうちの1又は複数を得るための、本発明によるディフューザーゲル又は上記のディフューザーの使用に関する:
・動物の環境における動物の福祉を確保すること;
・動物がストレスの多い及び/又は不安が生じる状況に対処するのを助けること;
・動物における別れによるストレス(separation-related stress)を低減すること;
・動物における離乳によるストレス(weaning-related stress)を低減すること;
・動物における孤独によるストレス(solitude-related stress)を低減すること;
・輸送前及び/又は輸送中の動物のストレスを低減すること;
・雷雨又は花火などの騒音に付随するストレスを低減すること;
・医学的状態、医学的処置、聴診又はさらには外科手術を必要とし得る獣医の往診に付随するストレスを低減すること;
・動物の攻撃性を低減すること;
・動物の行動、特に攻撃的な動物又は恐怖に満ちた動物、を改善すること;
・動物にリラックス効果をもたらすこと;
・動物が新しい状況に適応、例えば、里子になったとき、新しい動物又は赤ん坊がその環境に到着したとき、家を移動するときに適応するのを助けること;
・動物におけるストレスによる排尿マーキングを低減すること;
・動物のしつけに関する問題を低減すること(reduce an animal’s housebreaking issues);
・動物が同種の他の動物になつく状態を改善すること;
・テリトリーの引っ掻き又は破壊を防止すること;
・クンクン鳴く、吠えるなどの騒々しい示威行為を軽減すること;
・イヌ又はネコであるである動物において、特に飼い主に対する、より攻撃性が低く、よりリラックスした、より優しい行動を達成すること。
【0089】
最後に、本発明は、ネコ又はイヌのストレス、不安及び/又は攻撃的行動の処置に使用するための、本発明による装置に関する。
【0090】
本発明は、特に以下を行うための、動物を鎮静させる非治療的方法であって、動物の環境における本発明によるディフューザーの使用を含む、方法にさらに関する:
・動物の環境における動物の福祉を確保すること;
・動物がストレスの多い及び/又は不安が生じる状況に対処するのを助けること;
・動物における別れによるストレス(separation-related stress)を低減すること;
・動物における離乳によるストレス(weaning-related stress)を低減すること;
・動物における孤独によるストレス(solitude-related stress)を低減すること;
・輸送前及び/又は輸送中の動物のストレスを低減すること;
・雷雨又は花火などの騒音に付随するストレスを低減すること;
・医学的状態、医学的処置、聴診又はさらには外科手術を必要とし得る獣医の往診に付随するストレスを低減すること;
・動物の攻撃性を低減すること;
・動物の行動、特に攻撃的な動物又は恐怖に満ちた動物、を改善すること;
・動物にリラックス効果をもたらすこと;
・動物が新しい状況に適応、例えば、里子になったとき、新しい動物又は赤ん坊がその環境に到着したとき、家を移動するときに適応するのを助けること;
・動物におけるストレスによる排尿マーキングを低減すること;
・動物のしつけに関する問題を低減すること(reduce an animal’s housebreaking issues);
・動物が同種の他の動物になつく状態を改善すること;
・テリトリーの引っ掻き又は破壊を防止すること;
・クンクン鳴く、吠えるなどの騒々しい示威行為を軽減すること;
・動物において、特に飼い主に対する、より攻撃性が低く、よりリラックスした、より優しい行動を達成すること。
【0091】
本発明はまた、ネコ又はイヌのストレス、不安及び/又は攻撃的行動を処置するための方法であって、本発明によるディフューザーのディフューザーゲル-空気交換エリアを開放することからなる、方法に関する。
【0092】
本発明は、1ヶ月を超える期間、より有利には2ヶ月を超える期間、好ましくは約3ヶ月の期間にわたって、ペットのストレスの示威行為を予防する、及び/又は不安を低減するための上記で定義されるような情報化学物質組成物であって、本発明によるディフューザーゲル中に存在することを特徴とする、情報化学物質組成物にさらに関する。
【0093】
特に、本発明は、特に以下を行うための、動物を鎮静させるのに使用するための上記で定義されるような情報化学物質組成物に関する:
・動物の環境における動物の福祉を確保すること;
・動物がストレスの多い及び/又は不安が生じる状況に対処するのを助けること;
・動物における別れによるストレス(separation-related stress)を低減すること;
・動物における離乳によるストレス(weaning-related stress)を低減すること;
・動物における孤独によるストレス(solitude-related stress)を低減すること;
・輸送前及び/又は輸送中の動物のストレスを低減すること;
・雷雨又は花火などの騒音に付随するストレスを低減すること;
・医学的状態、医学的処置、聴診又はさらには外科手術を必要とし得る獣医の往診に付随するストレスを低減すること;
・動物の攻撃性を低減すること;
・動物の行動、特に攻撃的な動物又は恐怖に満ちた動物、を改善すること;
・動物にリラックス効果をもたらすこと;
・動物が新しい状況に適応、例えば、里子になったとき、新しい動物又は赤ん坊がその環境に到着したとき、家を移動するときに適応するのを助けること;
・動物におけるストレスによる排尿マーキングを低減すること;
・動物のしつけに関する問題を低減すること(reduce an animal’s housebreaking issues);
・動物が同種の他の動物になつく状態を改善すること;
・テリトリーの引っ掻き又は破壊を防止すること;
・クンクン鳴く、吠えるなどの騒々しい示威行為を軽減すること;
・動物において、特に飼い主に対する、より攻撃性が低く、よりリラックスした、より優しい行動を達成すること;
・動物の訓練及び/又は教育を容易にすること;
ここで、上記情報化学物質組成物は、先に定義されたようなディフューザーゲルに含まれ、以下を含む:
・ゲルマトリックス;
・情報化学物質組成物;
・上記ゲルマトリックス中の上記情報化学物質組成物の可溶化剤;
・pKaが3より大きい有機酸;
・任意選択的に(optionally)、防腐剤;
・任意選択的に(optionally)、着色剤;
・任意選択的に(optionally)、苦味剤。
【実施例】
【0094】
実施例1:本発明によるディフューザーゲルの調製
フェロモン画分及びイソプロパノールを反応器内で撹拌する。別の反応器に、クエン酸、安息香酸デナトニウム、Food yellow 3着色剤及び水を添加し、撹拌下で70℃に加熱する。すべての成分が溶解したら、カラギーナンを添加し、70℃の均質な溶液が得られるまで混合物を撹拌する(典型的には少なくとも1時間)。(フェロモン画分中のエステルを損傷しないように)混合物を50℃の温度に冷却する。イソプロパノールに溶解したフェロモン画分を冷却した混合物に添加し、続いてベンゾイソチアゾリノンを添加する。最終混合物を50℃で約1時間撹拌し、次いで、ディフューザーに充填する。
【0095】
ディフューザーは、ゲルが形成されるまで室温で放置する。その後、ディフューザーをシールする。
【0096】
【0097】
実施例2-実施例1のディフューザーゲルからの情報化学物質組成物の拡散プロファイルの評価:制御された温度、湿度及び換気条件下(平均22.5℃/54% RH、期間にわたって換気した室内)で行われた研究。
【0098】
サンプルを7日間隔で63日間採取するのに十分な数のディフューザーを、制御された温度、湿度及び換気条件下(平均22.5℃/54% RH、期間にわたって換気した室内)の換気室内のT0に配置する。装置をD7、D17、D21、D28、D35、D42、D52、D56及びD63でサンプリングし、その含有量をガスクロマトグラフィー(GC)によって分析する。サンプルは以下のように調製する:
【0099】
1.ゲルをそれぞれ約3gの小片に分割する、
2.60mLのNaOH 30%を、完全に溶解するまで、3gの試料に添加する、
3.ゲルのすべてがNaOHに溶解したら、30mLの酢酸エチルを添加し、混合物を撹拌し、静置する、
4.有機相のサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィー(FIDによる検出)によって分析する。
【0100】
実施例1のディフューザーゲルに製剤化された情報化学物質組成物の拡散プロファイルを
図1のグラフに示す。
【0101】
これらの結果は、本発明による情報化学物質組成物が、ディフューザーゲルが空気と接触しているとき、60日間を超えて継続的かつ定期的に環境に放出されることを示している。
【0102】
実施例3-実施例1のディフューザーゲル中の情報化学物質組成物の安定性研究
閉鎖されたディフューザーに詰められた実施例1のディフューザーゲルのバッチを異なる保存条件下で保存した:
・54℃で3週間(CIPAC MT46.3「Accelerated Storage Procedure」条件)、
・40℃で6ヶ月。
【0103】
次いで、フェロモンのアッセイをクロマトグラフィーによって行った。
【0104】
結果は、フェロモン含有量が保存期間全体にわたって一定のままであること、及び本発明によるディフューザーゲルが確かに情報化学物質組成物を保存し、装置が気密であるときにその保存を確実にすることを示している。
【0105】
実施例4-有効性の知覚研究
この研究は、フランス(93人の飼い主)及び英国(103人の飼い主)のイヌの飼い主の家で行われた。この研究のために選択された家庭は、主に屋内/アパートで生活し(1日4時間未満の屋外)、軽度の行動障害(例えば分離不安など)を有する4ヶ月齢を超えるイヌを1匹のみ飼っており、ネコを飼っていない。イヌは、研究前及び研究中に行動障害について処置されなかった。
【0106】
2つの製品を独立した対象の群によって3ヶ月間評価した:
・実施例1のディフューザーゲルを含有するディフューザー(単一の装置を3ヶ月間使用した)、及び
・市販のAdaptil(登録商標)Calm製品(電動ディフューザー及び1つの補充品+2つの補充品を含む1つのスタータキットであり、1ヶ月ごとに各補充品を使用した)。
【0107】
以下の17種の行動の変遷(evolution of 17 behaviors):
【0108】
【0109】
及び、以下の11種の徴候(signs):
あくびをする、
身震いする、
遠吠えする/吠える、
足をなめる、
興奮する、
尾を挟みこむ、
耳を伏せる、背中を丸めた/うずくまった身体位置、
隠れる/隠れようとする、
が、いずれかのディフューザーが設置された環境のイヌの飼い主によって評価された。
【0110】
図2及び
図3は、すべての動物について得られた結果を示す。これらの結果は、本発明によるディフューザーが、補充品が毎月交換された電動ディフューザーの有効性と同等の、3ヶ月間の有効性を有することを示している。
[1]
イヌ用及び/又はネコ用の情報化学物質組成物のパッシブディフューザーゲル(passive diffuser gel)であって:
多糖ゲルマトリックス;
揮発性脂肪酸誘導体の混合物を含む、イヌ用及び/又はネコ用の鎮静作用情報化学物質組成物(appeasing semiochemical composition);
前記ゲルマトリックス中の前記情報化学物質組成物の可溶化剤;
pKaが3より大きい有機酸;
任意選択的に(optionally)、防腐剤;
任意選択的に(optionally)、着色剤;
任意選択的に(optionally)、苦味剤
を含む、パッシブディフューザーゲル。
[2]
前記ゲルマトリックスが水性カラギーナンゲルであることを特徴とする、前記[1]に記載のディフューザーゲル。
[3]
前記可溶化剤が炭素数1~4のアルコールであることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載のディフューザーゲル。
[4]
pKaが3より大きい前記有機酸がクエン酸であることを特徴とする、前記[1]~[3]のいずれか1項に記載のディフューザーゲル。
[5]
前記情報化学物質組成物が、32%~38%のオレイン酸メチル、1%~3%のラウリン酸メチル、13%~16%のステアリン酸メチル、18%~24%のリノール酸メチル、3%~7%のミリスチン酸メチル、及び18~24%のパルミチン酸メチルを含む、脂肪酸エステルの混合物である、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載のディフューザーゲル。
[6]
前記情報化学物質組成物が、前記ディフューザーゲルの総質量の1質量%~10質量%含まれる、前記[1]~[5]のいずれか1項に記載のディフューザーゲル。
[7]
以下の組成を有することを特徴とする、前記[1]~[6]のいずれか1項に記載のディフューザーゲル:
水性カラギーナンゲルを含むゲルマトリックス;
1%~10%(好ましくは約6%)の情報化学物質組成物、ここで、前記情報化学物質組成物は、32%~38%のオレイン酸メチル、1%~3%のラウリン酸メチル、13%~16%のステアリン酸メチル、18%~24%のリノール酸メチル、3%~7%のミリスチン酸メチル、及び18%~24%のパルミチン酸メチルを含む、脂肪酸エステルの混合物である;
2%~10%の、炭素数1~4のアルコールから選択される、前記ゲルマトリックス中の前記情報化学物質組成物の可溶化剤;
0.1%~1%のクエン酸;
0.1%~0.5%の、イソチアゾリノン類(isothiazolinone family)から選ばれる防腐剤;
着色剤;
苦味剤としての安息香酸デナトニウム。
[8]
前記[1]~[7]のいずれか1項に記載のディフューザーゲルからの情報化学物質組成物をネコ又はイヌの環境に制御放出するための携帯可能ディフューザーであって、
ディフューザーゲル-空気交換エリア(diffuser gel-to-air exchange area)を備える容器からなることを特徴とする、携帯可能ディフューザー。
[9]
前記ディフューザーゲル-空気交換エリアが、前記情報化学物質組成物がそこを通って拡散することができる1又は複数の開口部からなることを特徴とする、前記[8]に記載のディフューザー。
[10]
前記ディフューザーゲル-空気交換エリアが、取り外し可能な気密蓋によって覆われていることを特徴とする、前記[8]又は[9]に記載のディフューザー。
[11]
前記ディフューザーゲル-空気交換エリアにおける空気接触表面が、前記開口部を閉鎖する調節可能な手段によって制御されることを特徴とする、前記[8]~[10]のいずれか1項に記載のディフューザー。
[12]
以下を行うための、前記[1]~[7]のいずれか1項に記載のディフューザーゲル又は前記[8]~[11]のいずれか1項に記載のディフューザーの使用:
動物の環境における動物の福祉を確保すること;
動物がストレスの多い及び/又は不安が生じる状況に対処するのを助けること;
動物における別れによるストレス(separation-related stress)を低減すること;
動物における離乳によるストレス(weaning-related stress)を低減すること;
動物における孤独によるストレス(solitude-related stress)を低減すること;
輸送前及び/又は輸送中の動物のストレスを低減すること;
雷雨又は花火などの騒音に付随するストレスを低減すること;
医学的状態、医学的処置、聴診又はさらには外科手術を必要とし得る獣医の往診に付随するストレスを低減すること;
動物の攻撃性を低減すること;
動物の行動、特に攻撃的な動物又は恐怖に満ちた動物、を改善すること;
動物にリラックス効果をもたらすこと;
動物が新しい状況に適応、例えば、里子になったとき(adoption)、新しい動物又は赤ん坊がその環境に到着したとき、家を移動するときに適応するのを助けること;
動物におけるストレスによる排尿マーキングを低減すること;
動物のしつけに関する問題を低減すること(reduce an animal’s housebreaking issues);
動物が同種の他の動物になつく状態を改善すること;
テリトリーの引っ掻き又は破壊を防止すること;
クンクン鳴く、吠えるなどの騒々しい示威行為を軽減すること;又は
イヌ又はネコである動物において、有利には1ヶ月を超える期間、より有利には2ヶ月を超える期間、好ましくは約3ヶ月の期間にわたって、特に飼い主に対する、より攻撃性が低く、よりリラックスした、より優しい行動を達成すること。
[13]
ネコ又はイヌのストレス、不安及び/又は攻撃的行動を処置するための、前記[1]~[7]のいずれか1項に記載のディフューザーゲル又は前記[8]~[11]のいずれか1項に記載のディフューザーの使用。
[14]
ネコ又はイヌのストレス、不安及び/又は攻撃的行動の処置に使用するための、前記[8]~[11]のいずれか1項に記載のディフューザー。
[15]
前記[8]~[11]のいずれか1項に記載のディフューザーのディフューザーゲル-空気交換エリアを開放することからなる、ネコ又はイヌのストレス、不安及び/又は攻撃的行動を処置するための方法。