(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】電力変換装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250324BHJP
【FI】
H02M7/48 R
(21)【出願番号】P 2023572321
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2022000392
(87)【国際公開番号】W WO2023132065
(87)【国際公開日】2023-07-13
【審査請求日】2024-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 雪菜
(72)【発明者】
【氏名】河内 駿介
(72)【発明者】
【氏名】工藤 悠生
(72)【発明者】
【氏名】坂内 容子
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 廣次
(72)【発明者】
【氏名】三ッ本 憲史
(72)【発明者】
【氏名】竹田 大輔
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-196531(JP,A)
【文献】国際公開第2021/205700(WO,A1)
【文献】特開2017-011929(JP,A)
【文献】特開平10-210685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から出力された直流電力を交流電力に変換して出力する変換部と、
前記変換部からの出力電圧の振幅及び位相を所定の設定値に維持する系統形成制御により前記出力電圧の振幅及び位相を変化させるための第1変調指令を生成する系統形成制御部と、
前記出力電圧の振幅及び位相を所定の電力系統の電圧である系統電圧の振幅及び位相に追従させる系統追従制御により前記出力電圧の振幅及び位相を変化させるための第2変調指令を生成する系統追従制御部と、
前記第1変調指令又は前記第2変調指令に基づいて前記出力電圧の振幅及び位相を変化させる変調部と、
切替信号に応じて前記第1変調指令又は前記第2変調指令のどちらか一方が前記変調部に入力されるように前記変調部への入力を切り替える切替部と、
前記系統形成制御から前記系統追従制御への切り替えを指示する前記切替信号を受信した場合に、前記系統電圧の振幅を入力とする位相同期処理により同期位相を演算する位相同期処理部と、
前記系統電圧の振幅と前記同期位相とに基づいて初期振幅指令値を演算する初期値演算部と、
前記初期振幅指令値を前記系統形成制御からの切り替え後の前記系統追従制御における前記出力電圧の振幅の指令値の初期値に設定する同期調整部と、
を備え
、
前記系統追従制御は、有効電力及び無効電力がそれぞれ有効電力指令値及び無効電力指令値と一致するように有効電流及び無効電流を変化させる定電力制御処理を含み、
前記同期調整部は、前記系統追従制御に切り替わる前の前記系統形成制御において演算された有効電力及び無効電力を、切り替え後の前記系統追従制御の前記定電力制御処理における前記有効電力指令値の初期値及び前記無効電力指令値の初期値にそれぞれ設定する、電力変換装置。
【請求項2】
前記同期調整部は、前記系統形成制御が実行中であるときに、前記系統追従制御における前記出力電圧の振幅の指令値を生成する振幅指令生成処理を停止させ、前記系統追従制御への切り替え後に、前記振幅指令生成処理を開始させる、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
電源から出力された直流電力を交流電力に変換して出力する変換部を制御する情報処理装置に、
前記変換部からの出力電圧の振幅及び位相を所定の設定値に維持する系統形成制御により前記出力電圧の振幅及び位相を変化させるための第1変調指令を生成する処理と、
前記出力電圧の振幅及び位相を所定の電力系統の電圧である系統電圧の振幅及び位相に追従させる系統追従制御により前記出力電圧の振幅及び位相を変化させるための第2変調指令を生成する処理と、
前記第1変調指令又は前記第2変調指令に基づいて前記出力電圧の振幅及び位相を変化させる処理と、
切替信号に応じて、前記出力電圧の振幅及び位相を変化させる変調部に前記第1変調指令又は前記第2変調指令のどちらか一方が入力されるように前記変調部への入力を切り替える処理と、
前記系統形成制御から前記系統追従制御への切り替えを指示する前記切替信号を受信すると、前記系統電圧の振幅を入力とする位相同期処理により同期位相を演算する処理と、
前記系統電圧の振幅と前記同期位相とに基づいて初期振幅指令値を演算する処理と、
前記初期振幅指令値を前記系統形成制御からの切り替え後の前記系統追従制御における前記出力電圧の振幅の指令値の初期値に設定する
同期調整処理と、
を実行させる
ためのプログラム
であって、
前記系統追従制御は、有効電力及び無効電力がそれぞれ有効電力指令値及び無効電力指令値と一致するように有効電流及び無効電流を変化させる定電力制御処理を含み、
前記同期調整処理は、前記系統追従制御に切り替わる前の前記系統形成制御において演算された有効電力及び無効電力を、切り替え後の前記系統追従制御の前記定電力制御処理における前記有効電力指令値の初期値及び前記無効電力指令値の初期値にそれぞれ設定する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーを利用した発電機、蓄電池等の電源から出力される直流電力を交流電力に変換して出力するインバータ電源の利用が進められている。インバータ電源の制御方式として、系統形成(GFM:Grid Forming)型及び系統追従(GFL:Grid Following)型が知られている。系統形成型の制御(以下、GFM制御と記載する)は、インバータ電源の出力電圧の振幅及び位相を所定の設定値に維持する制御である。系統追従型の制御(以下、GFL制御と記載する)は、インバータ電源の出力電圧の振幅及び位相を所定の電力系統の電圧の振幅及び位相に追従させる制御である。上記のようなGFM制御及びGFL制御は、インバータ電源の使用状況等に応じて切り替えられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、GFM制御からGFL制御への切り替え時に出力電圧の位相や振幅が大きく変動し、インバータ電源の動作が不安定になる可能性がある。
【0005】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、制御方式の切り替え時における安定性を向上させることが可能な電力変換装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電力変換装置は、変換部と、系統形成制御部と、系統追従制御部と、変調部と、切替部と、位相同期処理部と、初期値演算部と、同期調整部とを備える。変換部は、電源から出力された直流電力を交流電力に変換して出力する。系統形成制御部は、変換部からの出力電圧の振幅及び位相を所定の設定値に維持する系統形成制御により出力電圧の振幅及び位相を変化させるための第1変調指令を生成する。系統追従制御部は、出力電圧の振幅及び位相を所定の電力系統の電圧である系統電圧の振幅及び位相に追従させる系統追従制御により出力電圧の振幅及び位相を変化させるための第2変調指令を生成する。変調部は、第1変調指令又は第2変調指令に基づいて出力電圧の振幅及び位相を変化させる。切替部は、切替信号に応じて第1変調指令又は第2変調指令のどちらか一方が変調部に入力されるように変調部への入力を切り替える。位相同期処理部は、系統形成制御から系統追従制御への切り替えを指示する切替信号を受信した場合に、系統電圧の振幅を入力とする位相同期処理により同期位相を演算する。初期値演算部は、系統電圧の振幅と同期位相とに基づいて初期振幅指令値を演算する。同期調整部は、初期振幅指令値を系統形成制御からの切り替え後の系統追従制御における出力電圧の振幅の指令値の初期値に設定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態の電力システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電力変換装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態の電力変換装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態のGFL制御部における処理の第1例を示す制御ブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態のGFL制御部における処理の第2例を示す制御ブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態の電力変換装置のGFM制御からGFL制御への切り替え時における処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
【0009】
図1は、実施形態の電力システム1の構成の一例を示すブロック図である。電力システム1は、インバータ電源11、変圧器12、及び電力系統13を含む。電力システム1は、例えば、インバータ電源11等の複数の電源を含む分散電源を利用して自立した電力系統13を構成する、いわゆるマイクログリッドシステム等であり得る。
【0010】
インバータ電源11は、電源20及び電力変換装置21を含む。電源20は、直流電力を出力するユニットであり、例えば、再生可能エネルギー(例えば太陽光、風力等)を利用した発電機、蓄電池等であり得る。電力変換装置21は、電源20から出力される直流電力を交流電力に変換して出力する装置である。なお、1つの電力変換装置21に複数の電源20が接続されてもよい。
【0011】
本実施形態の電力変換装置21は、出力電圧の振幅及び位相を所定の設定値を維持するGFM制御(系統形成制御)と、出力電圧の振幅及び位相を電力系統13の電圧の振幅及び位相に追従させるGFL制御(系統追従制御)とを適宜切り替えて実行する機能を備える。
【0012】
インバータ電源11(電力変換装置21)から出力された交流電力は、変圧器12により昇圧された後、電力系統13に出力される。なお、インバータ電源11や電力系統13の特性によっては変圧器12が不要となる場合がある。
【0013】
図2は、実施形態の電力変換装置21のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。ここで例示する電力変換装置21は、電力変換回路31、高周波フィルタ回路32、及び制御装置33(情報処理装置の一例)を備える。
【0014】
電力変換回路31は、電源20から出力された直流電力を交流電力に変換する回路であり、例えば、コンバータ回路、PWM(Pulse Width Modulation)回路等を利用して構成され得る。高周波フィルタ回路32は、電力変換回路31の出力に対して高周波フィルタ(ローパスフィルタ)処理を行う回路(例えばリアクトル)である。制御装置33は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等を含み、メモリに記憶されたプログラムに従って所定の演算処理や制御処理を実行する集積回路である。制御装置33は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を利用して構成されてもよい。
【0015】
電力変換回路31は、制御装置33から出力される変調指令に基づいて出力電圧の振幅及び位相を変化させる。制御装置33は、電力変換回路31からの出力のフィードバック信号、電力系統13の電圧に関する系統電圧情報等に基づいてGFM制御又はGFL制御を行い、電力変換装置21からの出力電力Pout(出力電圧VS)の振幅及び位相を変化させる変調指令を生成する。ここで例示する構成においては、制御装置33は、高周波フィルタ回路32を流れるリアクトル電流IL、高周波フィルタ回路32からの出力電流IS、高周波フィルタ回路32からの出力電圧VS等に基づいて有効電力及び無効電力を算出する。
【0016】
また、本実施形態の制御装置33は、GFM制御とGFL制御とを所定の条件に応じて切り替える機能、GFM制御からGFL制御への切り替え時における安定性の向上(例えば出力電圧VSの急変動の抑制等)を図るための機能等を有する。
【0017】
図3は、実施形態の電力変換装置21の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の電力変換装置21は、変換部101、GFM制御部102(系統形成制御部)、GFL制御部103(系統追従制御部)、変調部104、及び切替部105を備える。これらの機能的構成要素101~105は、例えば、
図2に例示したようなハードウェア要素と、制御装置33を制御するプログラム等のソフトウェア要素との協働により構成され得る。
【0018】
変換部101は、電源20から出力された直流電力を交流電力に変換した出力電力(有効出力電力)Poutを出力する。このとき、変換部101からの出力電圧VSの振幅及び位相は、変調部104により調整される。
【0019】
GFM制御部102は、出力電圧VSの振幅及び位相を所定の設定値に維持するGFM制御を実行し、当該GFM制御により出力電圧VSの振幅及び位相を変化させるための第1変調指令を生成する。GFL制御部103は、出力電圧VSの振幅及び位相を所定の電力系統(例えば電力系統13)の電圧(系統電圧)の振幅及び位相に追従させるGFL制御を実行し、当該GFL制御により出力電圧VSの振幅及び位相を変化させるための第2変調指令を生成する。
【0020】
切替部105は、所定の制御機構から出力される切替信号に応じて、第1変調指令又は第2変調指令のどちらか一方が変調部104に入力されるように、変調部104への入力を切り替える。変調部104は、第1変調指令又は第2変調指令に基づいて、出力電圧VSの振幅及び位相を変化させる。
【0021】
本実施形態のGFL制御部103は、位相同期処理部111、初期値演算部112、及び同期調整部113を備える。
【0022】
位相同期処理部111は、GFM制御からGFL制御への切り替えを指示する切替信号を受信すると、系統電圧の振幅を入力とする位相同期処理により同期位相を演算する。
【0023】
初期値演算部112は、系統電圧の振幅と位相同期処理部111により演算された同期位相とに基づいて初期振幅指令値を演算する。
【0024】
同期調整部113は、初期値演算部112により演算された初期振幅指令値をGFM制御からの切り替え後のGFL制御における出力電圧VSの振幅の指令値の初期値に設定する。
【0025】
図4は、実施形態のGFL制御部103における処理の第1例を示す制御ブロック図である。GFL制御部103において、三相の系統振幅V
gridに対するdq変換処理(abc/dq変換)により有効電圧V
d及び無効電圧V
qを演算し、三相の出力電流I
S(
図2参照)に対するdq変換処理により有効電流I
d及び無効電流I
qを演算する。有効電圧V
dと有効電流I
dと無効電圧V
qと無効電流I
qとに基づいて有効電力P
S及び無効電力Q
Sを演算する。有効電力P
S及び無効電力Q
Sに対して目標値を有効電力指令値P
ref及び無効電力指令値Q
refとする定電力制御処理(APR・AQR)を行うことにより、有効電流指令値I
d_ref及び無効電流指令値I
q_refを演算する。有効電流指令値I
d_ref及び無効電流指令値I
q_refに対する三相変換処理(dq/abc変換)により演算された電流値I
1からリアクトル電流I
L(
図2参照)を減算した値に対して定電流制御処理(ACR)を行う。当該定電流制御処理により演算された電圧値V
1と高周波フィルタ回路32のリアクタンスL
Sとの積算値を振幅指令値V
refとする。
【0026】
位相同期処理部111において、系統振幅Vgridを入力とする位相同期処理(PLL)により系統位相に同期する同期位相θPLL及び系統周波数に同期する同期周波数ωPLLを演算する。位相同期処理の完了後、初期値演算部112において、系統振幅Vgridに対するdq変換処理により演算された有効電圧Vd及び無効電圧Vqに対し、同期位相θPLLを用いた三相変換処理を行うことにより、初期振幅指令値としてのフィードフォワード振幅指令値Vffを演算する。なお、位相同期処理が完了したか否かの判定は適宜な手法を用いて行われ得るが、例えば、位相同期処理部111が演算した同期周波数ωPLLと接続先の系統(例えば電力系統13)の基準周波数(50Hzや60Hz)との差分が閾値以下に維持されている状態が所定時間継続した場合に位相同期処理が完了したと判定できる。
【0027】
同期調整部113は、GFM制御が実行中であるときに、GFL制御における出力電圧VSの振幅の指令値を生成する振幅指令生成処理(本実施形態ではAPR・AQR及びACR)を停止させる(APR・AQR及びACRに対する停止指令を出力する)。振幅指令生成処理が停止されるこれにより、振幅指令値Vrefが0となり、GFL制御部103から出力される最終的な振幅指令値Vref_GFLは、フィードフォワード振幅指令値Vffとなる。
【0028】
上記のように、Vref_GFL=Vffとなった後、切替部105は、出力電圧VSを変調するPWM120への入力をGFM制御部102の振幅指令値Vref_GFMからGFL制御部103の振幅指令値Vref_GFLへ切り替える。その後、同期調整部113は、振幅指令生成処理を開始させる(APR・AQR及びACRに対して起動指令を出力する)。これにより、GFM制御からGFL制御への切り替え直後においては、系統振幅Vgird及び系統位相に近い値であるフィードフォワード振幅指令値Vffを目標値としてGFL制御が開始され、その後徐々に通常のGFL制御に移行していく。これにより、電力変換装置21の動作を停止させることなく、GFM制御からGFL制御への切り替えをスムーズに行うことができる。
【0029】
また、本実施形態の同期調整部113は、GFL制御の開始時に定電力制御処理(APR・AQR)において使用される有効電力指令値Pref及び無効電力指令値Qrefの初期値として、GFL制御に切り替わる前のGFM制御において演算された有効電力及び無効電力を設定する。これにより、切り替え後のGFL制御を安定的に開始できる。
【0030】
なお、
図4においては、通常時における振幅指令生成処理の一例として、三相軸で定電流制御処理(ACR)を行う場合を例示したが、振幅指令生成処理はこれに限定されるものではなく、適宜な手法を用いて実行され得るものである。例えば、振幅指令生成処理は、dq軸で定電流制御処理を行うものであってよい。
【0031】
図5は、実施形態のGFL制御部103における処理の第2例を示す制御ブロック図である。
図5において、dq軸で定電流制御処理を行う場合の振幅指令生成処理が例示されている。この場合、リアクトル電流I
Lに対するdq変換処理(abc/dq変換)により有効リアクトル電流値I
Ld及び無効リアクトル電流値I
Lqを算出する。そして、当該有効リアクトル電流値I
Ld及び無効リアクトル電流値I
Lqと、有効電流指令値I
d_ref及び無効電流指令値I
q_refとに基づく定電流制御処理(ACR)により有効電圧V
1d及び無効電圧V
1qを算出する。そして、有効電圧V
1d及び無効電圧V
1qに対する三相変換処理(dq/abc変換)により算出された電圧値V
1とリアクタンスL
Sとの積算値を振幅指令値V
refとする。
【0032】
図6は、実施形態の電力変換装置21のGFM制御からGFL制御への切り替え時における処理の一例を示すフローチャートである。位相同期処理部111は、GFM制御の実行中であるか(変調部104に第1変調指令が入力されているか)否かを判定し(S101)、GFM制御の実行中でない場合(S101:No)、本ルーチンを終了する。GFM制御の実行中である場合(S101:Yes)、同期調整部113は、GFL制御における通常時の振幅指令生成処理(APR・AQR及びACR)を停止させ(S102)、位相同期処理部111は、GFL制御へ切り替える切替信号が受信されたか否かを判定する(S103)。GFL制御への切替信号が受信されていない場合(S103:No)、本ルーチンを終了する。
【0033】
GFL制御への切替信号が受信された場合(S103:Yes)、位相同期処理部111は、系統振幅Vgridを入力とする位相同期処理を実行し(S104)、同期位相θPLLを演算する。その後、位相同期処理部111は、位相同期処理が完了したか否かを判定し(S105)、位相同期処理が完了していない場合(S105:No)、位相同期処理が継続される(S104)。位相同期処理が完了した場合(S105:Yes)、初期値演算部112は、系統振幅Vgrid及び同期位相θPLLに基づいて初期振幅指令値(フィードフォワード振幅指令値Vff)を演算する(S106)。これにより、GFL制御の振幅指令値Vref_GFLの初期値が初期振幅指令値(フィードフォワード振幅指令値Vff)に設定される(S107)。その後、切替部105は、変調部104(PWM120)への入力をGFM制御の振幅指令値Vref_GFMからGFL制御の振幅指令値Vref_GFLへ切り替え(S108)、同期調整部113は、振幅指令生成処理を開始させる(S109)。
【0034】
上記実施形態によれば、GFM制御からGFL制御へ切り替わる際に、系統振幅Vgird及び系統位相θgridに近いフィードフォワード振幅指令値Vffを指令値の初期値としてGFL制御が開始される。これにより、切り替え時における出力電圧の変動を抑制でき、電力変換装置21を停止させることなく、安定的にGFM制御からGFL制御への切り替えを実施できる。
【0035】
上述した実施形態の電力変換装置21の機能を実現するためのプログラムは、主に電力変換装置21が備える記憶装置に予め組み込んで提供されるものであるが、これに限らず、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成されてもよい。また、記憶媒体は、コンピュータ又は組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LAN、インターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0036】
また、上記プログラムをインターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよく、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0037】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1…電力システム、11…インバータ電源、12…変圧器、13…電力系統、20…電源、21…電力変換装置、31…電力変換回路、32…高周波フィルタ回路、33…制御装置、101…変換部、102…GFM制御部、103…GFL制御部、104…変調部、105…切替部、111…位相同期処理部、112…初期値演算部、113…同期調整部、120…PWM