(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】海底ケーブルシステムおよび海底ケーブルシステムを敷設するための方法
(51)【国際特許分類】
H01B 7/14 20060101AFI20250324BHJP
H02G 9/00 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
H01B7/14
H02G9/00
(21)【出願番号】P 2024532476
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2022081758
(87)【国際公開番号】W WO2023099175
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2024-07-29
(31)【優先権主張番号】102021131422.4
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523383587
【氏名又は名称】エル・ヴェー・エー オフショア ウィンド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】RWE Offshore Wind GmbH
【住所又は居所原語表記】RWE Platz 4,45141 Essen,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ドミンゲス イービッチ
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン オーベルメイヤー
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111899927(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0026662(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/14
H02G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底ケーブルシステムであって、
- 海底ケーブルの2つの遠位端の間を案内される少なくとも2つのエネルギーラインを有する海底ケーブルを備え、
- それぞれのエネルギーラインは、ストランドワイヤーと、前記ストランドワイヤーを囲む少なくとも1つの絶縁層とを備え、
- 前記2つのエネルギーラインは、共通の金属補強材および前記金属補強材を囲む外側絶縁層の中を案内され、
- 前記海底ケーブルの第1のセクションは、前記海底ケーブルの前記遠位端のうちの第1の遠位端から移行領域まで形成されており、前記第1のセクションでは、前記エネルギーラインは、前記金属補強材および前記金属補強材を囲む前記外側絶縁層の中を案内され、
- 前記海底ケーブルの第2のセクションは、前記移行領域から前記海底ケーブルの前記遠位端のうちの第2の遠位端まで形成されており、前記第2のセクションでは、前記エネルギーラインには、前記金属補強材および前記金属補強材を囲む前記外側絶縁層がなく、
前記海底ケーブルシステムはさらに、
- 貫通開口部を有するスリーブ形の移行部片を備え、
- 前記移行領域は前記貫通開口部内に配設される、海底ケーブルシステムであって、
- ケーブルダクトが設けられ、前記ケーブルダクトの開口部は、前記移行部片のシェル外面が前記開口部の領域で前記ケーブルダクトのシェル内面に当接するように、前記移行部片を受けるように形成されていることを特徴とする、海底ケーブルシステム。
【請求項2】
前記移行部片はフランジ様の径方向突出部を有することを特徴とする、請求項1に記載の海底ケーブルシステム。
【請求項3】
前記フランジ様の突出部は、前記ケーブルダクトの端面に当接することを特徴とする、請求項2に記載の海底ケーブルシステム。
【請求項4】
前記移行部片は2つの部分から形成され、前記2つの部分はそれぞれの突出部によって互いに取り付けられることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の海底ケーブルシステム。
【請求項5】
前記移行部片の前記第1の部分は、前記海底ケーブルの前記第1のセクションに向かって延び、前記移行部片の前記第2の部分は、前記海底ケーブルの前記第2のセクションに向かって延びることを特徴とする、請求項4に記載の海底ケーブルシステム。
【請求項6】
前記移行部片の1つの外側面は、圧力嵌めおよび/または形状嵌めによって前記ケーブルダクトの内側面に固定され、具体的には、前記移行部片の前記外側面にある径方向突出部は、前記ケーブルダクトの前記内側面にある径方向の凹所に係合することを特徴とする、請求項1に記載の海底ケーブルシステム。
【請求項7】
前記補強材は、圧力嵌めおよび/または形状嵌めによって、具体的には締め付けるようにして、前記移行部片に締結されることを特徴とする、請求項1に記載の海底ケーブルシステム。
【請求項8】
前記海底ケーブルは、その第1のセクションが洋上ステーションから前記移行部片まで案内され、前記移行部片を通って前記ケーブルダクト中に案内され、その第2のセクションが地中のケーブルダクト内を陸上ステーション/渚接続箱(TJB)まで案内されることを特徴とする、請求項1に記載の海底ケーブルシステム。
【請求項9】
前記ケーブルダクトは、少なくとも部分的に水平の
掘削ダクトであることを特徴とする、請求項1に記載の海底ケーブルシステム。
【請求項10】
請求項1に記載の海底ケーブルシステムを敷設する方法であって、
- 前記海底ケーブルは前記2つのセクションが陸上で組み立てられ、
- 前記第1のセクションは、洋上ステーションに機械的および電気的に接続され、
- 前記海底ケーブルは前記移行領域が前記移行部片の前記貫通開口部中に挿入され、
- 前記海底ケーブルの前記補強材は、前記移行部片に機械的に固定され、
- 前記海底ケーブルは前記第2のセクションが、前記移行部片か
ら埋め込まれたケーブルダクトを少なくとも部分的に通って陸上ステーション/渚接続箱(TJB)に向かって案内される、方法。
【請求項11】
前記海底ケーブルは、陸上で前記移行
領域が前記移行部片の前記貫通開口部中に挿入され、前記海底ケーブルの前記補強材は、陸上で前記移行部片に機械的に固定されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、海底ケーブルシステムおよびこのような海底ケーブルシステムを敷設するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外洋(洋上)発電の拡大が加速しているため、海底電気ケーブルも洋上プラントと陸上プラントとの間にますます敷設されている。通常、いくつかの発電プラント、例えば風力タービンが、洋上で変電所とも呼ばれる変圧ステーションに接続されている。発電プラントで生成された電気エネルギーは、そのような変電所から海底電気ケーブルを介して陸上プラントに伝送される。電気エネルギーは、陸上プラントを介して配電網に供給される。
【0003】
一方で、海底ケーブルは大電力を輸送できなければならない。したがって、海底ケーブルは送電容量が大きくなければならない。そのことから、電気エネルギーラインの導体の断面が大きくされる。さらに、海底ケーブルは、高い機械的負荷を受け、そのため、適切な機械的保護を施さなければならない。これは、引っ張り、せん断、曲げ、ねじり、または他の力に対する機械的保護とすることができる。このような保護は通常、金属補強材によってもたらされる。そのために、海底ケーブルには1つまたは複数の補強材層を設けることがある。さらに、海底ケーブルは、通常、腐食性の高い塩水にさらされている。エネルギーラインのストランドも、塩水に対して保護されていなければならず、したがって、海水の浸入または海水の拡散を可能な限り完全に防ぐために様々な絶縁層が設けられる。
【0004】
機械的安定性および環境の影響に対する安定性の両方に関するこれら2つの要件は、海底ケーブルで大電力を送信するという必要に相反する。一方で、大電力であると、抵抗損のせいでストランドの温度が上昇する。このような抵抗損は、可能な限り大きいケーブル断面を選択することによって、およびアルミニウム、銅、または銅合金など、導電値の高い金属を使用することによって、可能な限り最小限に抑えられる。しかし、他方で、海底ケーブルがACラインとして使用される場合は、補強材が金属であるため補強材内で誘導電流が起きる。このような誘導渦電流も補強材に抵抗損を生成する。両方とも熱損失を引き起こし、その結果、ケーブルが加熱される。
【0005】
海底ケーブルに沿った熱損失は、通常、周囲の水および/または海底によって良好に放散され、そのため、非常に大きい電力が伝送されるときでも、海底ケーブルの十分な放熱がもたらされる。
【0006】
上記で言及したように、海底ケーブルは陸上施設(ステーション)まで引かれている。そのために、海底ケーブルは、現在では、移行点において沿岸近くで地中ケーブルダクトに切り換えられる。このようなケーブルダクトは、HDD(弧状推進工法)ダクトとして設計されることが多く、海底ケーブルの移行点から地中を通って陸上設備または渚接続箱(TJB)まで延び、そこで、陸上ケーブルへの移行が行われる。ケーブルダクトは空である(ケーブルが空気に囲まれている)ことが多いが、ケーブルの熱伝導率を改善するために、通常はグラウトまたは別の充填材、好ましくは鉱物である充填材で充填できる。プラスチックのチューブは、海底ケーブルの断熱を高める。
【0007】
水がないことおよび条件がより過酷であること(ケーブルが、非常に深いところに設置され、場合によってはプラスチックパイプ内で空気に囲まれること)によって、海底ケーブルは、水中または海底に設置された場合ほど良好には冷却されない。総合的には、海底ケーブルを排他的に水中/海底に設置する場合と比べて、このタイプの施設が陸上にあると海底ケーブルによって伝送できる最大電力が限定される。これらの欠点を打ち消すために、現在では、海底ケーブルを介して伝送される電力を抑制しなければならないか、またはケーブル断面を有意に増大させなければならない。両方とも大幅にコストを上昇させる。
【0008】
本主題は、敷設される海底ケーブルの最大送電容量を増大させるという目的に基づいていた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、請求項1に記載の海底ケーブルシステムおよび請求項10に記載の方法によって達成される。
【0010】
本主題による海底ケーブルは2つの遠位端を有する。それら2つの遠位端の間を少なくとも2つのエネルギーラインが延びる。ただし、好ましくは、2つ以上、特に、3つ、4つ、または5つのエネルギーラインが、本主題による海底ケーブルの内部で引かれている場合がある。エネルギーラインは電気エネルギーを輸送するように働く。好ましくは、エネルギーラインは交流ラインとして動作される。その場合、本解決策は、渦電流損失が低くなるため、特に有利である。それでも、本解決策を直流ラインに使用することもできる。電気エネルギーの伝送のために、エネルギーラインはそれぞれ、ストランドワイヤーを有する。ストランドは、マルチフィラメントのストランドまたは中実材料のストランドとすることができる。好ましくは、マルチフィラメントのストランドは、好ましくは撚り合わせられたまたは捩られた、多数のフィラメント(ワイヤー/ストランド)から形成される。各エネルギーラインのストランドはそれぞれ絶縁層によって囲まれている。
【0011】
したがって、絶縁層は、1つの材料または異なる材料および/もしくは層のラミネートから形成できる。具体的には、絶縁層は、ストランド上に押し出し成形できる。絶縁層をストランドの周りに巻き付けることもできる。
【0012】
それぞれのエネルギーラインのストランドは、絶縁層を介して互いから絶縁されている。絶縁耐力は、少なくとも1000V、好ましくは、1000V超である。
【0013】
少なくとも2つのエネルギーラインは、それぞれ個別に案内できるが、客観的に少なくとも金属補強材と一緒に案内される。金属補強材は、単層または複数層とすることができ、好ましくは、金属ワイヤーによって形成される。それぞれの補強材層の金属ワイヤーは、互いに順撚りまたは逆撚りに案内できる。まず、個々のエネルギーラインの絶縁層を、共通の絶縁層中で案内できる。次いで、これを金属補強材で囲むことができる。最後に、金属補強材を少なくとも1つのさらなる外側絶縁層で囲む。内側絶縁層および外側絶縁層は両方とも、複数層、ラミネート、複数層、および/または同様のものでよい。絶縁層の材料は、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0014】
海底ケーブルは、典型的には、洋上ステーションから陸上ステーションまたは渚接続箱(TJB)まで敷設される。ここで、海底ケーブルの第1の遠位端は、洋上ステーションにおいて機械的に、特に電気的にも接続されており、海底ケーブルの第2の遠位端は、陸上ステーションまたは渚接続箱(TJB)において機械的に、特に電気的にも接続されている。
【0015】
本主題による海底ケーブルは、2つのセクションを特徴とする。エネルギーラインは両方のセクションで延在し、具体的には、遠位端の間にエネルギーラインの中断がない。つまり、海底ケーブル、具体的には海底ケーブルのエネルギーラインは、中断することなく洋上ステーションと陸上ステーションまたは渚接続箱(TJB)との間で引かれている。海底ケーブルの第1のセクションは、海底ケーブルの遠位端のうちの第1の遠位端から移行領域まで形成されている。海底ケーブルの第2のセクションは、移行領域から海底ケーブルの遠位端のうちの第2の遠位端まで形成されている。したがって、移行領域は、海底ケーブルの2つのセクションの間の移行部を形成する。
【0016】
海底ケーブルの第1のセクションでは、エネルギーラインは、金属補強材および金属補強材を囲む外側絶縁層の中を案内される。具体的には、海底ケーブルは第1のセクションにおいて、従来の海底ケーブルと同様に、すなわち、従来から実現されているようにすべての絶縁層および補強材層を有して形成される。
【0017】
エネルギーラインは、第1のセクションから、好ましくは、中断なしに移行領域を越えて第2のセクションに延びる。
【0018】
第2のセクションでは、エネルギーラインには、金属補強材および金属補強材を囲む外側絶縁層がない。その結果、第2のセクションの補強材には渦電流による熱損失が起こらない。さらに、外側絶縁体が取り外されているため、第1のセクションの熱対流と比べてエネルギーラインでの熱対流が増加する。
【0019】
ここで、第2のセクションは、海底ケーブルのうちの陸上で引かれているセクションであり、ケーブルの第1のセクションは、海底ケーブルのうちの洋上で、水中/海底で引かれているセクションである。移行セクションにおいて、海底ケーブルはスリーブ形の移行部片を備える。この移行部片は貫通開口部を有する。好ましくは、移行領域は貫通開口部内に配置される。
【0020】
一実施形態によれば、海底ケーブルが陸上で製造され、好ましくは移行部片も既に陸上で海底ケーブルに接合されており、そのため、第1のセクション、具体的には移行領域が貫通開口部内に位置することが可能である。ただし、さらなる実施形態によれば、海底ケーブルが移行部片なしに陸上で製造され、洋上で移行部片と単に接合されることも可能である。
【0021】
一実施形態によれば、移行部片は、好ましくは、2つの部分に少なくとも分けられており、第1の部分が、好ましくは、通路を有する1部片のスリーブとして形成される。スリーブの通路には、海底ケーブルのうちの外側絶縁体を有する第1のセクションが案内され得る。この第1のスリーブは移行部片の第2の部分で終端できる。第2の部分は、海底ケーブルのエネルギーラインの数に対応する数の通路を有する、複部構成のスリーブとして形成することができる。エネルギーラインは、それぞれの絶縁層と共に複部構成のスリーブのそれぞれの通路の中に案内できる。
【0022】
2つのスリーブの通路は、好ましくは、特にプラスチック製の内側面を有する。具体的には、通路は、その直径が、一方で外側絶縁層の外径と、他方でストランドを囲む絶縁層の外径と締まり嵌めするように形成されている。好ましくは、通路の内側面は、スリーブの通路の内側面に当接するそれぞれの絶縁層と同じかまたは同様のプラスチックから形成される。
【0023】
移行部片は、海底ケーブルの洋上の敷設箇所から地中ケーブルダクトの敷設箇所を機械的に連結するために使用される。この文脈では、移行部片は、好ましくは、海底ケーブルと一緒にケーブルダクト中に挿入されるか、またはケーブルダクトに接続されており、具体的にはねじ留めされている。
【0024】
一実施形態によれば、海底ケーブルシステムがケーブルダクトを備えることが提案される。ケーブルダクトは、移行部片を受けるための開口部を有する。そうすることで、移行部片は、好ましくは、移行部片の外側面が開口部の領域でケーブルダクトの内側面に接して着座するようにケーブルダクトの開口部中に挿入されるかまたは押し込まれる。移行部片は、好ましくは、プラグの形態でケーブルダクトの開口部中に挿入される。また、移行部片は、ケーブルダクトの開口部においてフランジのように配置できる。この点において、ケーブルの第1のセクションを受ける移行部片のスリーブは、好ましくは、少なくとも部分的にケーブルダクトの外側にあってよく、および/またはケーブルの第2のセクションを受ける移行部片のスリーブは、好ましくは、少なくとも部分的にケーブルダクトの内側にあってよい。
【0025】
海底ケーブルは、第1のセクションが第1のスリーブに入るように移行部片中に挿入できる。この第1のスリーブは、その端面にフランジ様の突出部を有することができる。補強材は、フランジ様の突出部の端面に載置できる。その場合、補強材のワイヤーは、好ましくは、扇形に広がるように径方向外向きに曲げられ、そのため、それらはフランジの端面に着座できる。
【0026】
補強材が敷設されるフランジの端面またはスリーブの端面は、補強材が2つのフランジ間で締め付けられるようにして、ケーブルダクトの開口部でフランジ様の径方向突出部に機械的に接続できる。
【0027】
移行部片の第2のセクションのスリーブが、補強材が着座する第1のセクションのフランジ面の上にねじ留めされ、そのため、そのときに補強材が2つの部分のフランジ様の面の間に締め付けられることも可能である。したがって、移行部片において補強材が2つのフランジ様の径方向突出部の間で締め付けられることが好ましい。補強材は接地されてよい。
【0028】
一実施形態によれば、海底ケーブルの第1のセクションが貫通開口部中に水密に挿入されることが提案される。そのために、海底ケーブルの外側絶縁体は、移行部片の第1のスリーブの内側面に当接することができる。第1のスリーブは、海底ケーブルの第1のセクションの領域に貫通開口部を形成する。海底ケーブルは、好ましくは移行領域まで、その貫通開口部に接合され、具体的には押し込まれる。
【0029】
一実施形態によれば、海底ケーブルの第2のセクションが貫通開口部から水密に導き出されることが提案される。そのために、移行部片の第2の部分に第2のスリーブが設けられてよい。これは複数の通路を有することができ、通路はそれぞれ、エネルギーラインの1つを封入する。ここでも、それぞれのストランドを囲む絶縁層の外面は、第2のスリーブのそれぞれの通路の内面と接触状態にできる。
【0030】
移行部片は、そのフランジ様の径方向突出部がケーブルダクトのフランジ様の径方向突出部に当接することができる。ケーブルダクトの端面に、径方向に突出するフランジを形成でき、そのフランジは移行部片のための止め具として形成される。シーリング手段、具体的にはプラスチックシールは、2つのフランジ様の突出部の間に配置できる。
【0031】
移行部片は、既に言及したように2つの部分から形成できる。2つの部分はスリーブのように形成することができる。2つの部分はそれぞれ、1つの端面にフランジ様の突出部を有することができる。これらのフランジ様の突出部は、互いに幾何学的に一致でき、接続時に互いに取り付けることができる。補強材は、移行部片の2つの部分の2つのフランジの間に締め付けるようにして固定できる。そのために、補強材は、径方向に扇形に広がることができ、2つの突出部の間に載置できる。次いで、2つの部分は、互いに接合でき、具体的には互いにねじ留めされ、そのため、補強材は互いに接するフランジ面の間に固定される。また、互いに接触状態にある2つの部分の2つのフランジの間に、ガスケット、具体的にはプラスチックガスケットを配置できる。
【0032】
2つの部分は、上記で言及したようにスリーブ様でよい。第1の部分は、通路を有する第1のスリーブでよく、海底ケーブルの外側絶縁体がその通路に受け入れられる。第2の部分は、海底ケーブルのエネルギーラインの数に対応する数の通路を有する第2のスリーブでよい。具体的には、第2のスリーブは、軸方向に延びる接合面に沿って互いに接合される2つの個別の部分から形成することもできる。そのときに、それぞれのエネルギーラインをスリーブのブッシングに通す必要がなくなる。エネルギーラインは、第2のスリーブの通路に収容することができる。
【0033】
第1の部分の通路は、海底ケーブルの第1のセクションに向かって延びることができる。第2の部分の通路は、海底ケーブルの第2のセクションに向かって延びることができる。組み立てられた状態では、海底ケーブルの第1のセクションは第1の部分の中を案内される。組み立てられた状態では、海底ケーブルの第2のセクションは、好ましくは、第2の部分の中を案内される。組み立てられた状態では、海底ケーブルは、その第2のセクションが第2の部分から突出する。
【0034】
移行部片の2つの部分、具体的にはスリーブは、通路を有し、エネルギーラインおよび海底ケーブルがその通路中に挿入される。スリーブは、1部片または複数部片の接合部とすることができる。
【0035】
移行部片は、ケーブルダクトに対してシールされるべきである。したがって、移行部片の外側面がケーブルダクトの内側面に確実に取り付けられることが提案される。具体的には、軸に沿って互いから離間できる径方向突出部は、移行部片の外側面に配置できる。それらの径方向突出部は、径方向外向きに口唇形状に突出できる。径方向突出部は、ケーブルダクトの内側面に当たっていてよい。移行部片の外側面にある径方向突出部に対応する径方向の凹所がケーブルダクトの内側面に配置されることが特に好ましい。このようにして、移行部片は、ケーブルダクトの内側面に確実に固定される。径方向突出部は、移行部片とケーブルダクトとのインターフェースからの水の浸入に対するシーリング効果を最適化することができる。
【0036】
既に説明したように、補強材は、補強材の個々のワイヤーを径方向外向きに曲げることによって、移行領域において扇形に広がっている。扇形に広がった補強材は、好ましくは、エネルギーラインの周りで周方向に位置することができる。補強材は、星形に径方向外向きに曲げることができる。移行部片は補強材を締め付けることができる。そのために、補強材は、移行部片の各部分の間で締め付けられ得るか、または移行部片のフランジ様の突出部とケーブルダクトのフランジとの間で補強材が締め付けられることも可能である。
【0037】
締め付けによる摩擦連結に加えて、確実な連結を行うこともできる。そのために、補強材が外向きに扇形になる端面に、対応するプロファイリングを設けることができる。フランジの端面は、溝を備えることができ、その溝は径方向外向きに延び、その溝の中に補強材のワイヤーを挿入できる。好ましくは、それらの溝は、フランジの表面に互いに対応付けて接合されるように形成できる。
【0038】
一実施形態によれば、海底ケーブルの第1のセクションが洋上ステーションから移行部片に案内され、移行部片がケーブルダクト中に案内されることが提案される。その後、海底ケーブルは、その第2のセクションが地中のケーブルダクト内で陸上ステーションまたは渚接続箱(TJB)まで引かれている。したがって、海底ケーブルは、エネルギーラインが中断されることなく陸上ならびに洋上で引かれている。海底ケーブルは、洋上ではケーブルを囲む水を用いて冷却される。第2のセクションでは補強材および外側絶縁体が取り外されているので、そこで取り除かれている補強材では渦電流がもはや発生しないため、ケーブルダクトでの熱損失が減少し、一方で、外側絶縁層がアセンブリを妨げることもないため、エネルギーラインはより効率的に冷却できる。
【0039】
ケーブルダクトは、少なくとも部分的に水平の掘削ダクト、具体的には、弧状推進工法ダクト(HDDダクト)である。海底ケーブルをケーブルダクト内で安定させるために、エネルギーラインをケーブルダクトの内壁からある距離に維持するように、ケーブルダクトの内壁にスペーサーを設けることができる。これは、ケーブルダクト内のエネルギーラインがケーブルダクトの壁に接して着座することがないことを保証する。
【0040】
具体的には、ケーブルダクト内でエネルギーラインが三角形に並ぶことが好ましい。
【0041】
別の態様において、対応する海底ケーブルシステムを敷設するための方法が提供される。ここで、海底ケーブルは2つのセクションが陸上で組み立てられる。海底ケーブルの作製の際に、第1のセクションは補強材および外側絶縁体の両方を有して作製でき、第2のセクションは補強材および外側絶縁体なしで作製される。エネルギーラインは、2つのセクションの間を中断なしに延びる。
【0042】
このように作られたケーブルは、洋上で洋上ステーションに接続される。その接続は、電気的接続および機械的接続の両方を含む。機械的接続は、具体的にはいわゆるケーブルハングオフの形態で行われ、ケーブルの補強材は、圧力嵌めおよび/または形状嵌めによって洋上ステーションに固定される。
【0043】
移行領域は、海底ケーブルの2つのセクションの間に形成される。海底ケーブルは、移行部片の貫通孔内で移行領域と接合される。そのプロセスは、陸上でのハーネスプロセス中または洋上での敷設プロセス中に行うことができる。敷設船で海底ケーブルの第1のセクションを移行点まで敷設することができる。次いで、海底ケーブルがケーブルダクト中に引き込まれる前に移行部片を海底ケーブルに取り付けることができる。
【0044】
陸上での設置のために、海底ケーブルの第2のセクションが、移行部片から少なくとも部分的に埋められたケーブルダクトを通って陸上ステーションまたは渚接続箱(TJB)まで引かれている。陸上ステーション/TJBでは、海底ケーブルは、特にエネルギーラインに電気的に接続されており、そのため、エネルギーラインを通して陸上ステーション/TJBと洋上ステーションとの間で電気接触が行われる。
【0045】
移行部片は、陸上で作製して海底ケーブルに取り付けることができる。そのために、海底ケーブルは、その移行領域を移行部片の貫通孔に接合できる。海底ケーブルの補強材は、記載したように外向きに扇のように曲げられ、移行部片に機械的に固定することができる。固定は、移行部片の2つの部分のフランジによって行うことができる。
【0046】
本主題は、実施形態を示す図面を参照しながら以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】一実施形態による、敷設された海底ケーブルシステムである。
【
図2】2つのエネルギーラインを有する海底ケーブルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、海底ケーブルシステムの敷設を示す。
図1には、洋上ステーション4、例えば変電所4が示されている。変電所4は、浮体式であるかまたは海底に基礎で固定されている。電気接続ブラケット8の領域において、海底ケーブル2の電気的ならびに機械的な接触が従来通りに行われている。海底ケーブル2は、第1のセクション2aが水面10の下方または海底6で切換え点12まで案内される。切換え点12は、海底ケーブル2の海底/地下の敷設から海底ケーブル2の地下のHDD敷設への移行を表す。
【0049】
ケーブルダクト14、例えばHDDダクトは、切換え点12から案内される。このケーブルダクト14は、例えば砂丘16の下を案内される。ケーブルダクト14は、陸上ステーションまたは渚接続箱(TJB)18に至る。陸上ステーション/TJB18は、例えば、電気エネルギー網への電力供給のための切換え点である。ここでも、海底ケーブル2のエネルギーラインの電気接続が接続ブラケット20において行われる。海底ケーブル2の敷設、特に、接続ブラケット8、20の接続は十分に知られている。
【0050】
本主題によれば、ここで、海底ケーブル2は、海中/地中で引かれる第1のセクション2aと、地中で引かれる第2のセクション2bに分けることが提案される。第1のセクション2aは補強材および外側絶縁体を有し、第2のセクションには、補強材がなく、特に外側絶縁体がない。
【0051】
海底ケーブル2の移行セクションが
図2に例示されている。海底ケーブル2は、少なくとも2つのエネルギーライン22a、22bから形成される。エネルギーライン22a、22bのストランド24a、24bは、具体的には捩られたまたは撚り合わせられた、マルチフィラメントから形成される。ストランド24a、24bの周りに、単一絶縁層またはラミネート状絶縁層26a、26bを形成できる。絶縁層26a、26bの構造または絶縁層26a、26bは、十分に知られており、詳細には説明しない。
【0052】
海底ケーブル2内では、エネルギーライン22a、22bは好ましくはスペーサー28によって離間配置されている。
【0053】
エネルギーライン22a、22bは、少なくとも単一層の、好ましくはやはり複数層の補強材30によって囲まれている。補強材30は金属ワイヤーから形成される。そうすることで、金属ワイヤーは、好ましくは、エネルギーライン22a、22bの周りでコイル巻きにされるかまたは巻き付けられる。補強材30が複数層の場合、ワイヤーは、逆向きに巻き付けられてよい。複数層の補強材30が設けられる場合に、それらはそれぞれ互いから絶縁できる。最後に、海底ケーブル2は外側絶縁体32を備える。
【0054】
図2には、移行セクションが示されている。右側には、第1のセクション2aが示されており、左側には、第2のセクション2bが示されている。ケーブル2は、移行領域において絶縁体32および補強材30が取り除かれている。スペーサー28も取り外されていてよい。第2のセクション2bにおいて、ケーブル2は、ストランド24a、24bおよび単一層または複数層の絶縁層26a、26bによって形成されたそのエネルギーライン22a、22bだけが延びる。
【0055】
【0056】
図3Aはスリーブ形の移行部片34を示し、スリーブ形の移行部片34は、第1の部分34aおよび第2の部分34bから形成できる。それらの部分34a、34bは、1部片でも複数部片でもよい。移行部片34は、部分34a、34bから1部片で形成されてもよく、少なくとも部分34a、34bから複数部片で形成されてもよい。第1の部分34aは、海底ケーブル2の第1のセクション2aを受けるように形成されている。そのために、第1の部分34aは、スリーブのように形成され、貫通開口部36aを有する。その貫通開口部36aにはケーブル2を、その絶縁層32を用いて組み付けでき、具体的には押し込むかまたははめ込むことができる。絶縁体32は、貫通開口部36aの内側面と接触状態にある。
【0057】
移行領域において、第2の部分34bは第1の部分34aに隣接する。第2の部分34bは、エネルギーライン22a、22bの数に対応する数の貫通開口部36bを有する。第2の部分34bもスリーブ形でよい。それぞれのエネルギーライン24a、24bは、それらのそれぞれの絶縁層26a、26bが貫通開口部36bの内側面に接して着座する。第2の部分34bはその端面38においてフランジ形である。その端面38で、補強材30は、径方向外向きに扇のように曲げられている。補強材30は端面38に着座する。
【0058】
図3Bは、ケーブルダクト14を概略的に示し、ケーブルダクト14はその端面にフランジ40を有する。このフランジ40は端面38を受けるように形成されている。具体的には、ねじ連結を行うことができる。
【0059】
図3Cは、移行部片34をケーブルダクト14に接続できるようにする方法を示す。移行部片34は、その端面38がフランジ40にねじ留めされるかまたは何らかの他の手法で固定される。補強材30は、端面38とフランジ40との間で締め付けられる。さらに、ガスケット42を設けることができる。ケーブル2は、その第1のセクション2aが移行部片34に挿入される。移行部片34は、フランジ40においてケーブルチャネル14にねじ留めされる。ケーブルダクト14の内側では、ケーブルは、その第2のセクション2b、具体的には個々のエネルギーライン22が延びる。
【0060】
ケーブルダクト14の内壁に1つまたは複数のスペーサーを設けることができ、そのため、個々のエネルギーライン22はケーブルダクト14の内壁から離間される。
【0061】
図4A~
図4Cは、移行部片34を形成できるようにする別の手法を示す。
図4Aは、第1の部分34aの図を示す。第1の部分34aはフランジ46を有する。第1の部分34aは、スリーブ形状になるように形成され、ケーブル2の第1のセクション2aを受ける。端面48において、補強材30は外向きに扇形に敷設できる。
図4Bに示すように、このように形成されたその第1の部分34aの上に、第2の部分34bを載置できる。その場合、第2の部分34bは、2部片であり、領域2bにおいてエネルギーライン22の周りでスリーブのように載置できる。
【0062】
第2の部分34bは、第1の部分34aの端面48に対してフランジ46を用いてねじ留めされる。ここで、補強材30は、2つの部分34a、34bの間に締め付けられる。端面48にシール42を設けることもできる。
【0063】
エネルギーライン22は、スリーブの形態の第2の部分34bに受け入れられ、好ましくはシールされた状態で、そこから導き出される。このように組み立てられた移行部片34は、
図4Cに示すように、ケーブルダクト14中に挿入できる。そのために、エネルギーライン22は第2のセクション2bがケーブルダクト14中に引き込まれる。そのプロセスで、第2の部分34bもケーブルダクト14中に挿入される。第1の部分34aのフランジ46はフランジ40と接触し、シール42を設けることができる。フランジ40はフランジ46にねじ留めされる。ここで、接合された状態において、ケーブル2は、その第1のセクション2aがケーブルダクト14の実質的に外側にあり、その第2のセクション2bがケーブルダクト14の内側で延びる。
【0064】
本海底ケーブルシステムを用いると、HDDで地中に敷設されているときの海底ケーブルの送電容量を増大させることが可能である。同時に、海中/地中で連続して、ならびにHDDで地中に、温度の問題なしに海底ケーブルを敷設することができる。補強材の渦電流による熱損失が軽減される。
【符号の説明】
【0065】
2 海底ケーブルシステム
4 変電所
6 海底
8、20 接続ブラケット
10 水面
12 切換え点
14 ケーブルダクト
16 ノズル
18 陸上ステーションまたは渚接続箱(TJB)
22a、22b エネルギーライン
24a、24b ストランドワイヤー
26a、26b 絶縁層
28、44 スペーサー
30 補強材
32 絶縁体
34 移行部片
34a、34b 部分
36a、36b 貫通孔
38、48 面
40、46 フランジ
42 ガスケット