(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】加工プログラム修正支援装置、加工プログラム修正支援方法および加工システム
(51)【国際特許分類】
B23Q 15/00 20060101AFI20250324BHJP
G05B 19/4093 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
B23Q15/00 301J
G05B19/4093 A
(21)【出願番号】P 2024545046
(86)(22)【出願日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2024009727
【審査請求日】2024-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】金子 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】松原 晋
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 健太
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-111007(JP,A)
【文献】特開平03-294906(JP,A)
【文献】特開2022-047702(JP,A)
【文献】特開2020-086759(JP,A)
【文献】特開2019-200661(JP,A)
【文献】特開2019-053718(JP,A)
【文献】特開2018-180734(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0068858(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00-15/28
G05B 19/18-19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工プログラムおよび前記加工プログラムを実行する数値制御工作機械に設定される数値制御パラメータにもとづいて前記数値制御工作機械の数値制御処理動作を模擬して工具経路およ
び工具
位置を示す位置指令を生成する数値制御シミュレーション実行部と、
前記数値制御工作機械が加工するワークの形状である素材形状、前記加工で使用する工具の形状である工具形状、前記数値制御工作機械の機械モデルおよび前記位置指令に従って加工シミュレーションを行う加工シミュレーション実行部と、
前記位置指令、前記加工シミュレーションの結果および定められた短縮可能経路検出条件にもとづいて、加工時間を短縮可能な経路である短縮可能経路を前記工具経路から検出する短縮可能経路検出部と、
を備えることを特徴とする加工プログラム修正支援装置。
【請求項2】
前記短縮可能経路検出部で検出された前記短縮可能経路に関する情報を提示するインタフェース部、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の加工プログラム修正支援装置。
【請求項3】
前記インタフェース部は、前記工具経路の形状と、前記工具経路内の前記短縮可能経路の位置および範囲とを提示する、
ことを特徴とする請求項2に記載の加工プログラム修正支援装置。
【請求項4】
前記インタフェース部は、前記短縮可能経路検出部で検出された前記短縮可能経路のそれぞれに対応する前記短縮可能経路検出条件を前記短縮可能経路とともに提示する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の加工プログラム修正支援装置。
【請求項5】
前記工具経路に含まれる前記短縮可能経路を前記位置指令および前記加工シミュレーションの結果である加工シミュレーション結果にもとづいて修正して修正工具経路を生成する経路修正部と、
前記修正工具経路にもとづいて前記加工プログラムを修正する加工プログラム修正部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の加工プログラム修正支援装置。
【請求項6】
前記インタフェース部は、前記工具経路と、前記修正工具経路の前記工具経路から変化した部分とを対比させて表示する、
ことを特徴とする請求項5に記載の加工プログラム修正支援装置。
【請求項7】
前記加工プログラム修正部は、前記工具経路に含まれる前記短縮可能経路の加工時間と、前記修正工具経路に含まれる、前記短縮可能経路に対応する経路の加工時間とにもとづいて、前記修正工具経路を再修正し、再修正後の前記修正工具経路にもとづいて前記加工プログラムを修正する、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の加工プログラム修正支援装置。
【請求項8】
前記経路修正部は、複数の経路修正方法を組み合わせた複数の修正パターンで前記短縮可能経路を修正して複数の修正工具経路を生成し、
前記加工プログラム修正部は、複数の前記修正工具経路のうち、最も加工時間が短い前記修正工具経路にもとづいて前記加工プログラムを修正する、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の加工プログラム修正支援装置。
【請求項9】
前記経路修正部は、複数の経路修正方法を組み合わせた複数の修正パターンで前記短縮可能経路を修正して複数の修正工具経路を生成し、
前記インタフェース部は、複数の前記修正工具経路と、複数の前記修正工具経路の指標をユーザに提示し、
前記加工プログラム修正部は、複数の前記修正工具経路のうち、前記ユーザに選択された前記修正工具経路にもとづいて前記加工プログラムを修正する、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の加工プログラム修正支援装置。
【請求項10】
数値制御工作機械が修正対象の加工プログラムを実行して加工を行う際に生成された位置指令、前記数値制御工作機械が加工するワークの形状である素材形状、前記加工で使用する工具の形状である工具形状、前記数値制御工作機械の機械モデルおよび前記位置指令に従って加工シミュレーションを行う加工シミュレーション実行部と、
前記位置指令、前記加工シミュレーションの結果および定められた短縮可能経路検出条件にもとづいて、加工時間を短縮可能な経路である短縮可能経路を、前記数値制御工作機械が修正対象の加工プログラムを実行して加工を行う際に生成された工具経路から検出する短縮可能経路検出部と、
を備えることを特徴とする加工プログラム修正支援装置。
【請求項11】
数値制御工作機械を制御する加工プログラムの修正作業を支援する加工プログラム修正支援方法であって、
加工プログラム修正支援装置が、前記加工プログラムおよび前記数値制御工作機械に設定される数値制御パラメータにもとづいて前記数値制御工作機械の数値制御処理動作を模擬して工具経路およ
び工具
位置を示す位置指令を生成する第1ステップと、
前記加工プログラム修正支援装置が、前記数値制御工作機械が加工するワークの形状である素材形状、前記加工で使用する工具の形状である工具形状、前記数値制御工作機械の機械モデルおよび前記位置指令に従って加工シミュレーションを行う第2ステップと、
前記位置指令、前記加工シミュレーションの結果および定められた短縮可能経路検出条件にもとづいて、加工時間を短縮可能な経路である短縮可能経路を前記工具経路から検出する第3ステップと、
を含むことを特徴とする加工プログラム修正支援方法。
【請求項12】
加工プログラムを実行して工具経路およ
び工具
位置を示す位置指令を生成し、生成した位置指令に従って工具を移動させてワークを加工する数値制御工作機械と、
前記数値制御工作機械が実行する前記加工プログラムの修正作業を支援する加工プログラム修正支援装置と、
を備え、
前記加工プログラム修正支援装置は、
前記ワークの形状である素材形状、前記工具の形状である工具形状、前記数値制御工作機械の機械モデルおよび前記位置指令に従って加工シミュレーションを行う加工シミュレーション実行部と、
前記位置指令、前記加工シミュレーションの結果および定められた短縮可能経路検出条件にもとづいて、加工時間を短縮可能な経路である短縮可能経路を前記工具経路から検出する短縮可能経路検出部と、
を備えることを特徴とする加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械を制御する加工プログラムの修正を支援する加工プログラム修正支援装置、加工プログラム修正支援方法および加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、数値制御(NC:Numerical Control)工作機械ではCAM(Computer Aided Manufacturing)システムにより生成され、加工対象物または工具を移動させるための移動指令が記述された加工プログラムを用いて加工が行われる。CAMシステムでは、機械干渉回避のため過剰な余裕を持った工具経路を生成する、加工途中形状を考慮していない、工作機械の数値制御の特性を考慮していない、などの要因により加工プログラムでは加工時間が冗長となっていることがあった。
【0003】
このような課題に対し、特許文献1には、加工プログラムに含まれる冗長指令を検出して冗長指令の削除または削減を行うことで加工プログラムを最適化する加工プログラム最適化装置が開示されている。特許文献1に記載の加工プログラム最適化装置においては、冗長指令として、無駄な待ち時間を生成する指令、無駄な動きを生成する指令、及び過剰な余裕を生成する指令の少なくとも1つを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の加工プログラム最適化装置による最適化では、加工プログラムに含まれる冗長指令を検出するため、数値制御の実際の処理、具体的には、補間処理、加減速処理などを考慮していない。このため、加工時の実際の速度や実際の工具移動経路を考慮できておらず、冗長指令には該当しないが実際には加工時間の短縮が可能な箇所の検出漏れが発生したり、修正すべきではない箇所を過剰に検出したりするおそれがある、という問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、加工時間の短縮が可能な修正箇所を精度よく検出できる加工プログラム修正支援装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる加工プログラム修正支援装置は、加工プログラムおよび加工プログラムを実行する数値制御工作機械に設定される数値制御パラメータにもとづいて数値制御工作機械の数値制御処理動作を模擬して工具経路および工具位置を示す位置指令を生成する数値制御シミュレーション実行部と、数値制御工作機械が加工するワークの形状である素材形状、加工で使用する工具の形状である工具形状、数値制御工作機械の機械モデルおよび位置指令に従って加工シミュレーションを行う加工シミュレーション実行部と、位置指令、加工シミュレーションの結果および定められた短縮可能経路検出条件にもとづいて、加工時間を短縮可能な経路である短縮可能経路を工具経路から検出する短縮可能経路検出部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる加工プログラム修正支援装置は、加工時間の短縮が可能な修正箇所を精度よく検出できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】加工プログラム修正支援装置の構成例を示す図
【
図2】実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置の動作の一例を示すフローチャート
【
図3】実施の形態2にかかる加工プログラム修正支援装置の構成例を示す図
【
図4】実施の形態2にかかる加工プログラム修正支援装置の動作の一例を示すフローチャート
【
図5】実施の形態2にかかる加工プログラム修正支援装置が工具経路を修正する方法の例を示す図
【
図6】実施の形態3にかかる加工プログラム修正支援装置の動作の一例を示すフローチャート
【
図7】実施の形態4にかかる加工プログラム修正支援装置の動作の一例を示すフローチャート
【
図8】実施の形態5にかかる加工プログラム修正支援装置の動作の一例を示すフローチャート
【
図9】実施の形態6にかかる加工プログラム修正支援装置の構成例を示す図
【
図10】加工プログラム修正支援装置を実現するハードウェアの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態にかかる加工プログラム修正支援装置、加工プログラム修正支援方法および加工システムを図面にもとづいて詳細に説明する。なお、各実施の形態の説明では数値制御をNCと記載する場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1の構成例を示す図である。
【0012】
加工プログラム修正支援装置1は、数値制御(NC)シミュレーション実行部11、加工シミュレーション実行部12、短縮可能経路検出部13およびインタフェース部14と、加工プログラム記憶部21、数値制御(NC)パラメータ記憶部22、素材形状記憶部23、工具形状記憶部24、機械モデル記憶部25および短縮可能経路検出条件記憶部26とを備える。
【0013】
なお、加工プログラム修正支援装置1は、複数の装置が連携して動作することにより実現されてもよい。例えば、NCシミュレーション実行部11、加工シミュレーション実行部12、短縮可能経路検出部13およびインタフェース部14を備え、加工プログラムの修正作業の支援を実現する各種処理を実行する第1の装置と、加工プログラム記憶部21、NCパラメータ記憶部22、素材形状記憶部23、工具形状記憶部24、機械モデル記憶部25および短縮可能経路検出条件記憶部26を備える第2の装置とが連携して動作することで加工プログラム修正支援装置1が実現されてもよい。
【0014】
加工プログラム記憶部21は、修正対象の加工プログラム、すなわち、加工プログラム修正支援装置1が支援する修正作業で修正が行われる加工プログラムを記憶する。
【0015】
NCパラメータ記憶部22は、加工プログラム記憶部21が記憶している加工プログラムを実行するNC工作機械(図示せず)に設定されるパラメータである数値制御パラメータ(NCパラメータ)を記憶する。NCパラメータ記憶部22が記憶しているNCパラメータは、後述するNCシミュレーション実行部11が加工プログラムにもとづいてNC処理動作を模擬する際に使用される。
【0016】
素材形状記憶部23は、加工プログラム記憶部21で記憶されている加工プログラムを実行するNC工作機械により加工されるワークの形状である素材形状を記憶する。なお、ワークは素材とも称される。これ以降の説明ではワークを素材と称する場合がある。
【0017】
工具形状記憶部24は、加工プログラム記憶部21で記憶されている加工プログラムを実行するNC工作機械が素材の加工で使用する工具の形状である工具形状を記憶する。
【0018】
機械モデル記憶部25は、加工プログラム記憶部21で記憶されている加工プログラムを実行するNC工作機械の機械モデルを記憶する。NC工作機械の機械モデルは、NC工作機械が加工プログラムを実行して素材を加工する動作を模擬する。
【0019】
短縮可能経路検出条件記憶部26は、後述する短縮可能経路検出部13が工具経路に含まれる加工時間を短縮可能な経路を検出する際に用いられる短縮可能経路検出条件を記憶する。これ以降の説明では、加工時間を短縮可能な経路を短縮可能経路と称する。短縮可能経路検出部13が短縮可能経路を検出する工具経路は、加工プログラム記憶部21で記憶されている加工プログラム中に記述されている経路であり、加工プログラムに従ってNC工作機械が行う加工において工具が移動する経路である。なお、加工プログラムに従ってNC工作機械が行う加工において工具の位置が固定され、加工される素材が移動する場合、素材が移動する経路が工具経路となる。また、NC工作機械が行う加工において工具および素材の両方が移動する場合、工具と素材との間の相対的な移動経路が工具経路となる。短縮可能経路は、例えば、加工プログラムが指令する速度よりも高速に工具を移動させることが可能な経路、経路自体を変更して工具の移動距離を短縮できる経路などである。
【0020】
NCシミュレーション実行部11は、加工プログラム記憶部21で記憶されている加工プログラムと、NCパラメータ記憶部22で記憶されているNCパラメータとにもとづいてNC工作機械の数値制御処理動作を模擬する。NCシミュレーション実行部11は、数値制御処理を模擬して得られた数値制御処理結果を加工シミュレーション実行部12および短縮可能経路検出部13に出力する。詳細には、NCシミュレーション実行部11は、数値制御処理結果に含まれる位置指令を加工シミュレーション実行部12に出力し、数値制御処理結果に含まれる工具経路および位置指令を短縮可能経路検出部13に出力する。
【0021】
加工シミュレーション実行部12は、NCシミュレーション実行部11から入力される位置指令と、素材形状記憶部23で記憶されている素材形状と、工具形状記憶部24で記憶されている工具形状と、機械モデル記憶部25で記憶されている機械モデルとにもとづいて加工シミュレーションを実行する。加工シミュレーション実行部12は、加工シミュレーションを実行して得られた加工シミュレーション結果を短縮可能経路検出部13に出力する。加工シミュレーション結果は、素材の加工が完了するまでの間に工具がどのタイミングでどのように素材を加工したかを示す情報、具体的には、工具経路のどの区間で素材の切削が行われたかを示す情報を含む。
【0022】
短縮可能経路検出部13は、NCシミュレーション実行部11から入力される工具経路に含まれている短縮可能経路を検出する。詳細には、短縮可能経路検出部13は、短縮可能経路検出条件記憶部26で記憶されている短縮可能経路検出条件に該当する経路を工具経路から検出する。
【0023】
インタフェース部14は、短縮可能経路検出部13による短縮可能経路の検出結果を外部に出力する。インタフェース部14は、検出結果を表示して外部に通知してもよいし、検出結果をデータとして外部に出力してもよい。インタフェース部14は、検出結果を紙に印刷するなどして外部に出力してもよい。
【0024】
つづいて、加工プログラム修正支援装置1が加工プログラムの修正作業を支援する動作について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0025】
まず、NCシミュレーション実行部11が、加工プログラム記憶部21が記憶している加工プログラムを解析して工具経路を取得する(ステップS1)。NCシミュレーション実行部11は、加工プログラム記憶部21が記憶している加工プログラムに従った加工において工具または素材が移動する経路を工具経路として取得する。NCシミュレーション実行部11は、取得した工具経路を短縮可能経路検出部13に出力する。
【0026】
次に、NCシミュレーション実行部11が、NC処理動作を模擬して位置指令を生成する(ステップS2)。詳細には、NCシミュレーション実行部11は、NCパラメータ記憶部22が記憶しているNCパラメータと、ステップS1で取得した工具経路とにもとづいてNC処理動作を模擬して位置指令を生成する。位置指令は、NC処理動作によって算出される単位時間ごとの工具位置を示す。ここでの単位時間はNCの制御周期である。NCシミュレーション実行部11は、単位時間ごとの工具位置を示す一連の位置指令を生成する。NCシミュレーション実行部11は、生成した位置指令を短縮可能経路検出部13および加工シミュレーション実行部12に出力する。
【0027】
次に、加工シミュレーション実行部12が、加工シミュレーションを実行する(ステップS3)。詳細には、加工シミュレーション実行部12は、素材形状記憶部23が記憶している素材形状と、工具形状記憶部24が記憶している工具形状と、機械モデル記憶部25が記憶している機械モデルと、ステップS2でNCシミュレーション実行部11が生成した位置指令とにもとづいて、加工シミュレーションを実行する。加工シミュレーションは、位置指令が示す位置を工具が通過した時に工具が素材を素材形状から除去するシミュレーションであり、このときの加工シミュレーション結果を加工シミュレーション実行部12は得る。加工シミュレーション結果には、位置指令が示す工具位置ごとに工具が素材を除去した体積である工具切削体積を含めてもよい。またさらに、位置指令が示す工具位置ごとに、工具と素材および機械モデルとの間の最短距離および方向を加工シミュレーション結果に含めてもよい。加工シミュレーション実行部12は、加工シミュレーションを実行して得られた加工シミュレーション結果を短縮可能経路検出部13に出力する。
【0028】
次に、短縮可能経路検出部13が、工具経路に含まれる短縮可能経路を検出する(ステップS4)。詳細には、短縮可能経路検出部13は、ステップS1でNCシミュレーション実行部11が取得した工具経路と、ステップS2でNCシミュレーション実行部11が生成した位置指令と、ステップS3で加工シミュレーション実行部12が実行した加工シミュレーションの結果と、短縮可能経路検出条件記憶部26が記憶している短縮可能経路検出条件とにもとづいて、短縮可能経路を検出する。短縮可能経路検出部13は、まず、短縮可能経路の検出のために、位置指令が示す各工具位置がいずれの工具経路と関連するかを求めておく。関連を求める方法としては、例えば、ステップS2でNCシミュレーション実行部11が工具経路にもとづいて位置指令を生成する場合にいずれの工具経路から位置指令が生成されたかを記憶しておいてもよいし、例えば、位置指令が示す工具位置ごとに空間的に最も近い工具経路を関連する工具経路として求めてもよい。
【0029】
短縮可能経路検出部13が、短縮可能経路の検出で使用する短縮可能経路検出条件は、例えば、以下の(A)~(D)である。短縮可能経路検出部13は、以下の(A)~(D)に記載の範囲が工具経路に含まれているか否かを確認し、含まれていれば、その範囲に含まれる工具経路を短縮可能経路として検出する。
【0030】
(A)工具が素材の除去に寄与しない工具経路の範囲
この範囲の検出方法は、例えば、加工プログラムのG01指令である切削指令として指令されている位置指令から、加工シミュレーション結果に含まれる工具切削体積がゼロの工具位置を抽出し、抽出した工具位置に関連する工具経路を、工具が素材の除去に寄与しない工具経路とする。このとき、一つの移動経路に関連して位置指令の工具切削体積がゼロの工具位置の区間と工具切削体積がゼロでない工具位置の区間が存在する場合に、移動経路を2つ以上に分割して工具切削体積がゼロの工具位置の区間のみを検出するようにしてもよい。工具切削体積がゼロの工具位置とは、切削を行わない工具位置、すなわち、工具が素材に接触しない工具位置である。よって、工具が素材の除去に寄与しない工具経路は、ステップS2でNCシミュレーション実行部11が生成した位置指令で示される経路における、工具と素材とが接触しない区間となる。
【0031】
(B)NC処理動作に伴う意図しない減速が発生する工具経路の範囲
この範囲の検出方法は、例えば、位置指令から工具が移動する実速度を算出し、実速度と加工プログラムで指令された指令速度とを比較して、実速度が指令速度より遅い位置指令の範囲に関連する工具経路を、NC処理動作に伴う意図しない減速が発生する工具経路とする。このとき、あらかじめ定めた減速割合係数に応じて、指令速度に減速割合係数を乗じた値と指令速度とを比較してもよい。
【0032】
(C)冗長に工具の退避移動が行われる工具経路の範囲
この範囲の検出方法は、例えば、位置指令のうち、加工シミュレーション結果に含まれる工具と、素材および機械モデルとの間の最短距離が定められた距離より大きい位置指令の範囲に関連する工具経路を、冗長に工具の退避移動が行われる工具経路とする。
【0033】
(D)過小な加工条件が設定されている工具経路の範囲
この範囲の検出方法は、例えば、位置指令のうち、加工シミュレーション結果に含まれる工具切削体積が定められた体積より小さいかつゼロでない位置指令の範囲に関連する工具経路を、過小な加工条件が設定されている工具経路とする。
【0034】
なお、短縮可能経路検出条件は上記の(A)~(D)に限定されない。加工プログラム修正支援装置1は、短縮可能経路の検出で用いる短縮可能経路検出条件をユーザが追加したり変更したりできるように構成されてもよい。
【0035】
次に、インタフェース部14が、短縮可能経路と検出理由とを提示する(ステップS5)。詳細には、インタフェース部14は、NCシミュレーション実行部11で取得された工具経路と、短縮可能経路検出部13で検出された短縮可能経路とを短縮可能経路検出部13から取得し、工具経路に含まれる短縮可能経路を、短縮可能経路に該当しない他の工具経路と区別して、検出理由とともに提示する。例えば、インタフェース部14は、工具経路のどの区間が短縮可能経路であるかを視認できるよう、短縮可能経路を工具経路の他の区間と色分けするなどして表示装置に表示させてもよい。また、インタフェース部14は、提示した短縮可能経路の検出理由、例えば、上述した(A)~(D)のどの条件と一致する短縮可能経路であるかを表示させる。インタフェース部14は、短縮可能経路を表す線の種類と工具経路の他の区間を表す線の種類とを異ならせることで両者を区別可能とするなどしてもよい。短縮可能経路が複数存在する場合、インタフェース部14は、複数の短縮可能経路それぞれと検出理由との対応関係が分かるように提示を行う。インタフェース部14は、例えば、対応している短縮可能経路と検出理由との表示色を同一とすることで対応関係が分かるようにする。インタフェース部14は、短縮可能経路の検出理由をテキスト表示以外の方法で提示してもよい。インタフェース部14は、短縮可能経路および検出理由に加えて、加工シミュレーション結果、加工前の素材の形状など、短縮可能経路に関連する情報を提示するようにしてもよい。
【0036】
また、インタフェース部14は、加工プログラムの短縮可能経路に該当する行を提示するようにしてもよい。この場合、例えば、短縮可能経路に該当する行の文字色を変更することで、他の行と区別可能にする。加工プログラムの短縮可能経路に該当する行の特定は、例えば、短縮可能経路検出部13が行う。
【0037】
ユーザは、インタフェース部14により短縮可能経路の提示を受けることで、加工プログラムの短縮可能経路に対応する箇所を修正することが可能となり、加工時間を短縮させることができる。
【0038】
以上説明したように、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1は、加工プログラムを解析して工具経路を取得するとともに、NC処理動作を模擬して位置指令を生成するNCシミュレーション実行部11と、位置指令、素材形状、加工に用いる工具の形状、および、素材の加工を模擬する機械モデルにもとづいて加工シミュレーションを実行する加工シミュレーション実行部12と、工具経路、位置指令、加工シミュレーション結果、および、短縮可能経路検出条件にもとづいて、工具経路に含まれる短縮可能経路を検出する短縮可能経路検出部13と、検出した短縮可能経路を提示するインタフェース部14とを備える。加工プログラム修正支援装置1は、NCシミュレーション実行部11を備えるため、補間処理、加減速処理などの実際の数値制御処理を考慮したうえで、加工時間を短縮可能な経路を工具経路から検出することができ、短縮可能経路の検出漏れや過剰検出を抑制できる。また、加工プログラム修正支援装置1は、検出した短縮可能経路をそれ以外の経路と区別して提示するので、工具経路中のどの経路が短縮可能経路であるかを分かりやすくユーザに提示できる。また、加工プログラム修正支援装置1は、検出した短縮可能経路と検出条件とを提示するので、ユーザは短縮可能経路が検出された要因を把握することができ、短縮可能経路の修正方策を考える手間を低減できる。
【0039】
実施の形態2.
つづいて、実施の形態2について説明する。本実施の形態では、上述した実施の形態1と異なる部分を中心に説明を行う。
【0040】
図3は、実施の形態2にかかる加工プログラム修正支援装置1aの構成例を示す図である。
【0041】
加工プログラム修正支援装置1aは、
図1に示す実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1に経路修正部15、加工プログラム修正部16および経路修正方法記憶部27が追加された構成である。加工プログラム修正支援装置1aの経路修正部15、加工プログラム修正部16および経路修正方法記憶部27以外の他の構成要素の動作は、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1の同じ符号が付された構成要素と同様である。このため、本実施の形態では、経路修正部15、加工プログラム修正部16および経路修正方法記憶部27以外の他の構成要素については説明を省略する。
【0042】
経路修正部15は、NCシミュレーション実行部11が加工プログラムから取得した工具経路と、短縮可能経路検出部13が検出した短縮可能経路とを受け取り、工具経路に含まれる短縮可能経路を修正して、修正後の工具経路である修正工具経路を生成する。
【0043】
加工プログラム修正部16は、経路修正部15で生成された修正工具経路にもとづいて、加工プログラム記憶部21で記憶されている加工プログラムを修正する。
【0044】
経路修正方法記憶部27は、経路修正部15が工具経路内の短縮可能経路を修正する際に使用する経路修正方法を記憶する。
【0045】
つづいて、加工プログラム修正支援装置1aが加工プログラムの修正作業を支援する動作について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、実施の形態2にかかる加工プログラム修正支援装置1aの動作の一例を示すフローチャートである。
図4では、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1の動作例を示す
図2のフローチャートと同じ処理に同じステップ番号を付している。
図2のフローチャートと同じ処理であるステップS1~S4の処理については説明を省略する。
【0046】
実施の形態2にかかる加工プログラム修正支援装置1aにおいては、ステップS4で短縮可能経路検出部13が短縮可能経路を検出した後、経路修正部15が、工具経路に含まれる短縮可能経路を修正して修正工具経路を生成する(ステップS6)。詳細には、経路修正部15は、短縮可能経路検出部13で検出された、工具経路に含まれる短縮可能経路を経路修正方法記憶部27で記憶されている経路修正方法で修正する。経路修正部15は、短縮可能経路の修正が完了した後の工具経路である修正工具経路をインタフェース部14および加工プログラム修正部16に出力する。
【0047】
経路修正部15が、短縮可能経路を修正する方法、すなわち、経路修正方法記憶部27が記憶している経路修正方法は、例えば、以下の(a)~(d)である。経路修正部15は、短縮可能経路の検出理由に対応する経路修正方法を使用して、短縮可能経路を修正する。
【0048】
(a)工具が素材の除去に寄与しない工具経路の範囲に該当する短縮可能経路の修正方法
(a-1)短縮可能経路における指令を切削指令から早送り指令に変更する。
(a-2)短縮可能経路における指令送り速度を大きくする。
(a-3)短縮可能経路を経路長がより短い経路に変更する。
【0049】
短縮可能経路を経路長がより短い経路に変更する具体例を
図5に示す。なお、
図5は、実施の形態2にかかる加工プログラム修正支援装置1aが工具経路を修正する方法の例を示す図である。
【0050】
例えば、
図5に示すように、工具201のP1からP2までの移動経路が実線で示す短縮可能経路である場合、加工対象の素材である加工ワークと工具201との距離が必要以上に大きい区間が存在する。このような場合、経路修正部15は、例えば、短縮可能経路の一部を削除し、工具201の移動経路を破線で示す直進軸移動の修正工具経路#1に変更する。経路修正部15は、工具201の移動経路を回転軸移動の修正工具経路#2に変更してもよい。
【0051】
(b)NC処理動作に伴う意図しない減速が発生する工具経路の範囲に該当する短縮可能経路の修正方法
(b-1)短縮可能経路における工具の移動速度について、変更後の実速度が元の指令速度と同じになるように指令速度を大きくする。
(b-2)短縮可能経路のコーナ部に円弧経路を挿入する。
【0052】
(c)冗長に工具の退避移動が行われる工具経路の範囲に該当する短縮可能経路の修正方法
(c-1)工具と素材および機械モデルとの間の最短距離が定められた距離に近づくように短縮可能経路を修正する。
【0053】
(d)過小な加工条件が設定されている工具経路の範囲に該当する短縮可能経路の修正方法
(d-1)短縮可能経路における位置指令の工具切削体積が定められた体積に近づくように指令送り速度を大きくする。
(d-2)短縮可能経路における位置指令の工具切削体積が定められた体積に近づくように切込み量を大きくする。
【0054】
修正方法(d-2)では、意図して位置指令の工具切削体積を大きくする修正方法を除いて、位置指令のうち工具によって素材が加工される位置指令の範囲を特定し、加工プログラムの修正前後で、特定した範囲の位置指令が変化しないように短縮可能経路を修正してもよい。位置指令のうち工具によって素材が加工される位置指令の範囲は、加工シミュレーション結果の元指令の工具切削体積がゼロでない範囲として求めることができる。
【0055】
経路修正部15は、上述した複数の修正方法のうち、組み合わせて使用することが可能な2つ以上を同時に使用して1つの短縮可能経路を修正してもよい。例えば、(a-2)の修正方法と(c-1)の修正方法とを組み合わせて使用してもよい。
【0056】
なお、経路修正部15は、工具の移動経路そのものを修正する方法とは異なる方法、すなわち、実行する指令の変更、指令送り速度の変更、工具の移動速度の変更などを行うことにより加工時間を短縮する経路修正方法を適用する場合、短縮可能経路と適用する経路修正方法との対応関係を示す情報を生成し、この情報を修正工具経路に含ませる。
【0057】
次に、インタフェース部14が、経路修正部15で生成された修正工具経路を提示する(ステップS7)。インタフェース部14は、ユーザが修正工具経路の詳細について確認することができるのであれば、どのような方法で修正工具経路を提示してもよい。例えば、インタフェース部14は、修正工具経路を表示し、このとき元の工具経路から変化した部分を区別して表示する。このとき、修正工具経路と元の工具経路とを2つの画面等で対比させて表示するようにしてもよい。
【0058】
また、加工プログラム修正部16が、加工プログラム記憶部21で記憶されている加工プログラムを修正する(ステップS8)。詳細には、加工プログラム修正部16は、加工プログラムで表される工具経路が経路修正部15で生成された修正工具経路となるように、加工プログラムを修正する。
【0059】
なお、ステップS7とステップS8の順番は問わない。ステップS7およびステップS8は並列に実行してもよいし、ステップS8を先に実行してからステップS7を実行するようにしてもよい。
【0060】
以上説明したように、実施の形態2にかかる加工プログラム修正支援装置1aは、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1と同様の方法で検出された短縮可能経路を修正して修正工具経路を生成する経路修正部15と、修正工具経路にもとづいて加工プログラムを修正する加工プログラム修正部16とを備える。これにより、工具経路内の短縮可能経路の検出から加工プログラムの修正までを自動で行うことができ、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1で得られる効果に加えて、修正漏れの防止、ユーザの作業負荷の軽減といった効果が得られる。
【0061】
また、加工プログラム修正支援装置1aは、修正工具経路のうち元の工具経路から修正された部分を区別して提示するので、ユーザは、修正された経路を簡単に認識でき、修正後の加工プログラムが意図通りに動作するかどうかのチェックに要する手間や時間を低減できる。
【0062】
また、加工プログラム修正支援装置1aは、工具によって素材が加工される位置指令の範囲を特定し、加工プログラムの修正前後で特定した範囲の位置指令が変化しないように工具経路を修正するので、実際の切削加工が変化しない範囲で加工プログラムを修正することができる。すなわち、切削加工への影響が生じないように加工プログラムを修正でき、修正後の加工プログラムが意図通りに素材を加工するかどうかのチェックに要する手間や時間を低減できる。
【0063】
実施の形態3.
つづいて、実施の形態3について説明する。本実施の形態では、上述した実施の形態1,2と異なる部分を中心に説明を行う。実施の形態3にかかる加工プログラム修正支援装置の構成は実施の形態2と同様であり、動作の一部が実施の形態2と異なる。このため、
図3に示す構成例を用いて説明を行う。
【0064】
図6は、実施の形態3にかかる加工プログラム修正支援装置1aの動作の一例を示すフローチャートである。
図6では、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1の動作例を示す
図2のフローチャートと同じ処理、および、実施の形態2にかかる加工プログラム修正支援装置1aの動作例を示す
図4のフローチャートと同じ処理に同じステップ番号を付している。
図2または
図4のフローチャートと同じ処理であるステップS1~S4、S6の処理については説明を省略する。
【0065】
実施の形態3にかかる加工プログラム修正支援装置1aにおいては、ステップS6で経路修正部15が修正工具経路を生成した後、NCシミュレーション実行部11が、NC処理動作を模擬して修正後の位置指令を生成する(ステップS9)。詳細には、NCシミュレーション実行部11は、経路修正部15で生成された修正工具経路と、NCパラメータ記憶部22が記憶しているNCパラメータとにもとづいてNC処理動作を模擬して位置指令を生成する。このステップS9は、ステップS2と同様の処理である。ステップS9は、経路修正部15が生成する修正工具経路を工具経路(修正前の工具経路)の代わりに使用する点がステップS2と異なる。
【0066】
次に、加工プログラム修正部16が、修正前の位置指令および修正後の位置指令にもとづいて、修正前の工具経路および修正後の工具経路それぞれの加工時間を算出する(ステップS10)。詳細には、加工プログラム修正部16は、修正前の位置指令にもとづき修正前の工具経路の加工時間を算出し、また、修正後の位置指令にもとづき修正工具経路の加工時間を算出する。このとき、加工プログラム修正部16は、工具経路の各々ごとに加工時間を算出する。具体的には、加工プログラム修正部16は、修正前の工具経路と修正工具経路とで経路が異なる区間ごとに加工時間を算出する。すなわち、加工プログラム修正部16は、修正前の工具経路については、ステップS4で短縮可能経路検出部13が検出した短縮可能経路のそれぞれについて、加工時間を算出する。加工プログラム修正部16は、修正工具経路については、ステップS4で短縮可能経路検出部13が検出した短縮可能経路のそれぞれに対応する、修正工具経路内の区間それぞれについて、加工時間を算出する。
【0067】
次に、加工プログラム修正部16が、ステップS10で算出した加工時間にもとづいて加工プログラムを修正する(ステップS11)。詳細には、加工プログラム修正部16は、まず、修正前の工具経路に含まれる短縮可能経路それぞれの加工時間(第1の加工時間とする)と、短縮可能経路に対応する修正工具経路内の区間それぞれの加工時間(第2の加工時間とする)とを比較する。そして、加工プログラム修正部16は、比較結果にもとづいて修正加工経路を再修正する。具体的には、加工プログラム修正部16は、第1の加工時間よりも第2の加工時間が長い区間の経路を修正前の経路に戻すことで、経路全体の加工時間がより短くなるように修正加工経路を再修正する。例えば、修正前の工具経路に3つの短縮可能経路が含まれ、これらを短縮可能経路#1~#3とする。また、これらの短縮可能経路#1~#3に対応する、修正工具経路内の経路を修正経路#1~#3としたとき、「短縮可能経路#1の加工時間>修正経路#1の加工時間」、「短縮可能経路#2の加工時間>修正経路#2の加工時間」、「短縮可能経路#3の加工時間<修正経路#3の加工時間」という関係が成り立っているとする。この場合、加工プログラム修正部16は、修正経路#1および#2と、短縮可能経路#3とを選択し、選択した3つの経路と、短縮可能経路に該当しない、修正前の工具経路の他の経路とを組み合わせて、最終的な工具経路である再修正後の修正工具経路とする。加工プログラム修正部16は、修正工具経路を再修正した後、再修正後の修正工具経路にもとづいて、加工プログラム記憶部21で記憶されている加工プログラムを修正する。詳細には、加工プログラム修正部16は、加工プログラムで表される工具経路が、再修正後の修正工具経路となるように、加工プログラムを修正する。
【0068】
以上説明したように、実施の形態3にかかる加工プログラム修正支援装置1aは、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1と同様の方法で検出した短縮可能経路について、修正前の短縮可能経路の加工時間と、修正後の短縮可能経路の加工時間とを比較し、加工時間が短い方の経路を選択して最終的な修正工具経路を作成する。これにより、加工時間がより短くなる経路で加工を行うように加工プログラムを修正することが可能となる。
【0069】
実施の形態4.
つづいて、実施の形態4について説明する。本実施の形態では、上述した実施の形態1~3と異なる部分を中心に説明を行う。実施の形態4にかかる加工プログラム修正支援装置の構成は実施の形態2および3と同様であり、動作の一部が実施の形態2および3と異なる。このため、
図3に示す構成例を用いて説明を行う。
【0070】
図7は、実施の形態4にかかる加工プログラム修正支援装置1aの動作の一例を示すフローチャートである。
図7では、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1の動作例を示す
図2のフローチャートと同じ処理に同じステップ番号を付している。
図2のフローチャートと同じ処理であるステップS1~S4の処理については説明を省略する。
【0071】
実施の形態4にかかる加工プログラム修正支援装置1aにおいては、ステップS4で短縮可能経路検出部13が短縮可能経路を検出した後、経路修正部15が、複数の経路修正方法にもとづいて、複数のパターンで短縮可能経路を修正して複数の修正工具経路を生成する(ステップS12)。例えば、
図5に示した短縮可能経路を修正する場合、経路修正部15は、図示した修正工具経路#1への修正と、修正工具経路#2への修正とを行い、2つの修正工具経路を生成する。このとき、工具の移動速度の変更が可能であれば、工具201の移動経路の変更と移動速度の変更とを組み合わせて、修正工具経路を生成してもよい。指令の種類を変更可能であれば、指令の種類を変更してもよい。また、例えば、工具経路に短縮可能経路が2箇所存在し、それぞれの短縮可能経路に適用可能な修正方法が2つずつ存在する場合、修正方法の組み合わせが4パターンであることから、経路修正部15は、各パターンに対応する合計4つの修正工具経路を生成する。
【0072】
次に、NCシミュレーション実行部11が、NC処理動作を模擬して複数の修正工具経路のそれぞれについて複数の修正後の位置指令を生成する(ステップS13)。詳細には、NCシミュレーション実行部11は、経路修正部15で生成された複数の修正工具経路の1つと、NCパラメータ記憶部22が記憶しているNCパラメータとにもとづいてNC処理動作を模擬して位置指令を生成する処理を、複数の修正工具経路の全てについて実行する。
【0073】
次に、加工プログラム修正部16が、複数の修正工具経路について加工時間を算出し、最も加工時間が短い修正工具経路にもとづいて加工プログラムを修正する(ステップS14)。詳細には、加工プログラム修正部16は、まず、ステップS13でNCシミュレーション実行部11が生成した複数の修正工具経路のそれぞれについての修正後の位置指令にもとづいて、複数の修正工具経路それぞれの加工時間を算出する。加工プログラム修正部16は、次に、加工時間が最も短い修正工具経路にもとづいて、加工プログラムを修正する。
【0074】
以上説明したように、実施の形態4にかかる加工プログラム修正支援装置1aは、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1と同様の方法で検出した短縮可能経路のそれぞれについて、適用可能な1つ以上の修正方法を組み合わせて複数のパターンで修正を行い複数の修正工具経路を作成し、加工時間が最も短くなる修正工具経路にもとづいて加工プログラムを修正する。これにより、加工時間がより短くなるように加工プログラムを修正することができる。
【0075】
実施の形態5.
つづいて、実施の形態5について説明する。本実施の形態では、上述した実施の形態1~4と異なる部分を中心に説明を行う。実施の形態5にかかる加工プログラム修正支援装置の構成は実施の形態2~4と同様であり、動作の一部が実施の形態2~4と異なる。このため、
図3に示す構成例を用いて説明を行う。
【0076】
図8は、実施の形態5にかかる加工プログラム修正支援装置1aの動作の一例を示すフローチャートである。
図8では、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1の動作例を示す
図2のフローチャートと同じ処理、および、実施の形態4にかかる加工プログラム修正支援装置1aの動作例を示す
図7のフローチャートと同じ処理に同じステップ番号を付している。
図2または
図7のフローチャートと同じ処理であるステップS1~S4、S12の処理については説明を省略する。
【0077】
実施の形態5にかかる加工プログラム修正支援装置1aにおいては、ステップS12で経路修正部15が複数の修正工具経路を生成した後、インタフェース部14が、複数の修正工具経路それぞれについて指標を算出する(ステップS15)。インタフェース部14が算出する指標は、例えば、加工時間、工作機械の消費エネルギー、コスト、加工面精度、加工面品位、工具摩耗、工作機械の最大加速度などである。これらの指標の算出については、公知の算出方法を適宜適用して算出してもよい。インタフェース部14は、2種類以上の指標を算出してもよい。
【0078】
次に、インタフェース部14が、複数の修正工具経路と、各修正工具経路の指標とを提示し、ユーザによる選択を受け付ける(ステップS16)。インタフェース部14は、実施の形態2で説明した
図4のステップS7と同様の方法で修正工具経路の提示を行う。インタフェース部14は、各修正工具経路の指標について、修正工具経路との対応関係をユーザが把握できる形式で行う。インタフェース部14は、提示した修正工具経路の中の1つを選択する操作を受け付ける。
【0079】
次に、加工プログラム修正部16が、ユーザに選択された修正工具経路にもとづいて加工プログラムを修正する(ステップS17)。
【0080】
以上説明したように、実施の形態5にかかる加工プログラム修正支援装置1aは、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1と同様の方法で検出した短縮可能経路のそれぞれについて、適用可能な1つ以上の修正方法を組み合わせて複数のパターンで修正を行い複数の修正工具経路を作成する。また、加工プログラム修正支援装置1aは、生成した複数の修正工具経路についての指標を算出して修正工具経路とともにユーザに提示し、修正工具経路の1つがユーザに選択されると、選択された修正工具経路にもとづいて加工プログラムを修正する。これにより、ユーザは、修正工具経路ごとに提示される指標にもとづいて修正工具経路を選択でき、ユーザの嗜好に合致する修正加工プログラムの生成が可能となる。
【0081】
実施の形態6.
つづいて、実施の形態6について説明する。本実施の形態では、上述した実施の形態1~5と異なる部分を中心に説明を行う。
【0082】
図9は、実施の形態6にかかる加工プログラム修正支援装置1bの構成例を示す図である。
【0083】
加工プログラム修正支援装置1bは、
図1に示す実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1のNCシミュレーション実行部11およびNCパラメータ記憶部22が省略され、数値制御工作機械31が接続された構成である。加工プログラム修正支援装置1bの構成要素の動作は、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1の同じ符号が付された構成要素と同様である。
【0084】
上述した実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1においては、NCシミュレーション実行部11が、修正対象の加工プログラムを解析して工具経路を取得し、また、工具経路およびNCパラメータにもとづいてNC処理動作を模擬して位置指令を生成する。これに対して、本実施の形態にかかる加工プログラム修正支援装置1bは、工具経路および位置指令を外部の数値制御工作機械31から取得して、加工プログラムの修正支援動作を行う。具体的には、加工プログラム修正支援装置1bは、加工プログラム記憶部21で記憶している加工プログラムを数値制御工作機械31に出力し、この加工プログラムを数値制御工作機械31が実行して素材を加工する際に生成される工具経路および位置指令を数値制御工作機械31から取得する。そして、数値制御工作機械31から取得した位置指令にもとづいて加工シミュレーション実行部12が加工シミュレーションを実行する。また、短縮可能経路検出部13が、数値制御工作機械31から取得した工具経路および位置指令と、加工シミュレーション実行部12が実行した加工シミュレーションの結果とにもとづいて短縮可能経路を検出する。
【0085】
このように、実施の形態6にかかる加工プログラム修正支援装置1bは、加工プログラムの修正支援動作で使用する工具経路および位置指令を外部の数値制御工作機械31から取得する。これにより、工具経路および位置指令の生成に必要なNCシミュレーション実行部を備える必要がなくなり、装置構成を簡略化することができ、また、処理負荷を軽減することができる。
【0086】
なお、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1のNCシミュレーション実行部11およびNCパラメータ記憶部22を省略して数値制御工作機械31が接続される構成例について説明したが、実施の形態2~5にかかる加工プログラム修正支援装置1aのNCシミュレーション実行部11およびNCパラメータ記憶部22を省略して数値制御工作機械31が接続される構成としてもよい。また、修正対象の加工プログラムを記憶する加工プログラム記憶部21を省略し、修正対象の加工プログラムを数値制御工作機械31から取得する構成としてもよい。
【0087】
つづいて、上述した各実施の形態にかかる加工プログラム修正支援装置1,1a,1bのハードウェア構成について説明する。加工プログラム修正支援装置1,1a,1bは、例えば、
図10に示す構成のハードウェアで実現される。
【0088】
図10は、加工プログラム修正支援装置1,1a,1bを実現するハードウェアの一例を示す図である。
【0089】
プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、システムLSI(Large Scale Integration)などである。メモリ102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ハードディスクドライブなどである。出力装置103は、例えば、液晶モニタ、ディスプレイなどである。入力装置104は、タッチパネル、キーボードなどである。
【0090】
図10に示すプロセッサ101、メモリ102、出力装置103および入力装置104で加工プログラム修正支援装置1,1a,1bを実現する場合、各実施の形態で説明した加工プログラム修正支援装置1,1a,1bの各機能を実現するためのプログラムをプロセッサ101が実行することで実現される。例えば、実施の形態1にかかる加工プログラム修正支援装置1を実現する場合、加工プログラム修正支援装置1のNCシミュレーション実行部11、加工シミュレーション実行部12、短縮可能経路検出部13およびインタフェース部14として動作するためのプログラムをメモリ102に予め格納しておく。このプログラムをプロセッサ101がメモリ102から読み出して実行することにより、加工プログラム修正支援装置1のNCシミュレーション実行部11、加工シミュレーション実行部12、短縮可能経路検出部13およびインタフェース部14が実現される。
【0091】
加工プログラム修正支援装置1の加工プログラム記憶部21、NCパラメータ記憶部22、素材形状記憶部23、工具形状記憶部24、機械モデル記憶部25および短縮可能経路検出条件記憶部26はメモリ102により実現される。
【0092】
メモリ102に格納される、NCシミュレーション実行部11、加工シミュレーション実行部12、短縮可能経路検出部13およびインタフェース部14として動作するためのプログラムは、例えば、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROMなどの記憶媒体に書き込まれた状態でユーザ等に提供される形態であってもよいし、ネットワークを介してユーザ等に提供される形態であってもよい。
【0093】
なお、汎用の処理回路であるプロセッサ101およびメモリ102でNCシミュレーション実行部11、加工シミュレーション実行部12、短縮可能経路検出部13およびインタフェース部14を実現する場合について説明したが、これらの各部を専用ハードウェアである処理回路で実現してもよい。この処理回路は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせた回路で実現される。また、NCシミュレーション実行部11、加工シミュレーション実行部12、短縮可能経路検出部13およびインタフェース部14の一部を専用のハードウェアで実現し、残りをプロセッサ101およびメモリ102で実現してもよい。
【0094】
また、
図10に示すプロセッサ101、メモリ102、出力装置103および入力装置104は、電子計算機を構成するハードウェアであってもよい。すなわち、加工プログラム修正支援装置1,1a,1bは、電子計算機と、電子計算機で実行されるプログラムとで実現される形態であってもよい。複数の電子計算機が連携して動作することで加工プログラム修正支援装置1の各機能が実現される形態であってもよい。
【0095】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0096】
1,1a,1b 加工プログラム修正支援装置、11 数値制御シミュレーション実行部、12 加工シミュレーション実行部、13 短縮可能経路検出部、14 インタフェース部、15 経路修正部、16 加工プログラム修正部、21 加工プログラム記憶部、22 数値制御パラメータ記憶部、23 素材形状記憶部、24 工具形状記憶部、25 機械モデル記憶部、26 短縮可能経路検出条件記憶部、27 経路修正方法記憶部、31 数値制御工作機械、201 工具。
【要約】
加工プログラム修正支援装置(1)は、加工プログラムおよび加工プログラムを実行する数値制御工作機械に設定される数値制御パラメータにもとづいて数値制御工作機械の数値制御処理動作を模擬して工具経路および工具経路を表す位置指令を生成する数値制御シミュレーション実行部(11)と、数値制御工作機械が加工するワークの形状である素材形状、加工で使用する工具の形状である工具形状、数値制御工作機械の機械モデルおよび位置指令に従って加工シミュレーションを行う加工シミュレーション実行部(12)と、位置指令、加工シミュレーションの結果および定められた短縮可能経路検出条件にもとづいて、加工時間を短縮可能な経路である短縮可能経路を工具経路から検出する短縮可能経路検出部(13)と、を備える。