(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
H05K 5/04 20060101AFI20250324BHJP
H05K 7/04 20060101ALI20250324BHJP
H05K 7/06 20060101ALI20250324BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
H05K5/04
H05K7/04 A
H05K7/06 F
H05K9/00 C
(21)【出願番号】P 2024572607
(86)(22)【出願日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2023024540
【審査請求日】2024-12-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 健二
(72)【発明者】
【氏名】大塚 喬太
(72)【発明者】
【氏名】萩原 開人
(72)【発明者】
【氏名】明石 憲彦
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-044113(JP,A)
【文献】実開昭60-035584(JP,U)
【文献】特開2000-133971(JP,A)
【文献】実開昭60-138268(JP,U)
【文献】特開2023-044111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00- 5/30
H05K 7/04
H05K 7/06
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する母材が絶縁被膜で覆われた複数の板金を、板厚方向に重ね合わせた構造体であって、
互いに隣接して締結部材によって締結された板金同士における一方の板金に設けられ、他方の板金に向けて突出する一方の突出部と、
前記一方の板金において、前記一方の突出部の周囲を囲うように設けられ、前記締結部材による締結時に弾性変形する一方の弾性変形部と、
前記他方の板金において、前記一方の板金に向けて突出し、且つ、前記一方の突出部と交差するように配置される他方の突出部と、
前記他方の板金において、前記他方の突出部の周囲を囲うように設けられ、前記締結部材による締結時に弾性変形する他方の弾性変形部とを備え、
前記締結部材による締結時において、前記一方の突出部の先端と、前記他方の突出部の先端とは、互いに接触する
ことを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記一方の弾性変形部は、
前記一方の突出部の先端の長さ方向と直交する断面形状が、当該先端を中心として、その両側において、非対称である
ことを特徴とする請求項1記載の構造体。
【請求項3】
前記一方の突出部の先端は、
当該一方の突出部の先端を中心として、前記一方の弾性変形部の変形量が大きい側に向けて移動する
ことを特徴とする請求項2記載の構造体。
【請求項4】
前記一方の突出部の先端は、
前記他方の突出部の先端の長さ方向に沿って移動する
ことを特徴とする請求項3記載の構造体。
【請求項5】
前記一方の突出部と前記一方の弾性変形部との組みを、複数組み備えると共に、前記他方の突出部と前記他方の弾性変形部との組みを、1組み備え、
前記一方の突出部と前記一方の弾性変形部との各組みと、前記他方の突出部と前記他方の弾性変形部との組みとを、対向させる
ことを特徴とする
請求項1記載の構造体。
【請求項6】
前記他方の突出部と前記他方の弾性変形部とは、前記締結部材を中心として、円形状に形成される
ことを特徴とする請求項5に係る構造体記載の構造体。
【請求項7】
前記一方の突出部と前記一方の弾性変形部との組み数と、前記他方の突出部と前記他方の弾性変形部との組み数を、同じ複数の組み数とし、
前記一方の突出部と前記一方の弾性変形部との各組みと、前記他方の突出部と前記他方の弾性変形部との各組みとを、それぞれ対向させる
ことを特徴とする
請求項1記載の構造体。
【請求項8】
前記一方の突出部と前記一方の弾性変形部との各組みは、前記締結部材を中心として、等角度間隔で配置される
ことを特徴とする請求項5から請求項7のうちのいずれか1項記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の筐体には、板金が用いられる場合がある。この場合、板金同士の電気導通性を向上させることで、ノイズ電流又は漏洩電流に対する対策を採ることがある。そこで、特許文献1には、構造体となる板金同士の電気導通性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構造体は、板金同士の各対向面に、山部と谷部とを交互に配置している。このとき、一方の板金における山部及び谷部と、他方の板金における山部及び谷部とは、互いに交差するように配置されている。このような状態において、板金同士をねじで締め付けることにより、対向する山部の先端同士が、互いに接触して潰し合う。このため、その潰れた部分から、絶縁被膜が剥がれる。この結果、各板金の母材同士(導体同士)が、互いに接触し合い導通する。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された構造体は、板金同士の締結に、ねじを用いているため、当該ねじが、何らかの事情で緩んでしまった場合、母材同士の導通が無くなるおそれがある。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、締結部材が緩んでしまった場合でも、板金の母材同士の導通を確保することができる構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る構造体は、導電性を有する母材が絶縁被膜で覆われた複数の板金を、板厚方向に重ね合わせた構造体であって、互いに隣接して締結部材によって締結された板金同士における一方の板金に設けられ、他方の板金に向けて突出する一方の突出部と、一方の板金において、一方の突出部の周囲を囲うように設けられ、締結部材による締結時に弾性変形する一方の弾性変形部と、他方の板金において、一方の板金に向けて突出し、且つ、一方の突出部と交差するように配置される他方の突出部と、他方の板金において、他方の突出部の周囲を囲うように設けられ、締結部材による締結時に弾性変形する他方の弾性変形部とを備え、締結部材による締結時において、一方の突出部の先端と、他方の突出部の先端とは、互いに接触するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、締結部材が緩んでしまった場合でも、板金の母材同士の導通を確保することができる。このため、板金の母材同士を導通させるための、特殊なねじ及びワッシャ等が、不必要となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る構造体の概略構成図である。
図1Aは、実施の形態1に係る構造体の正面図である。
図1Bは、一方の板金を表面側から見た図である。
図1Cは、他方の板金を裏面側から見た図である。
【
図2】実施の形態1に係る構造体の概略斜視図である。
図2Aは、実施の形態1に係る構造体の斜視図である。
図2Bは、一方の板金の斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る構造体における締結動作を示す図である。
図3Aは、一方の板金と他方の板金とを締結する前の断面図である。
図3Bは、一方の板金と他方の板金とを締結した後の断面図である。
【
図4】実施の形態2に係る構造体の概略構成図である。
図4Aは、実施の形態2に係る構造体の正面図である。
図4Bは、一方の板金を表面側から見た図である。
図4Cは、他方の板金を裏面側から見た図である。
【
図5】実施の形態2に係る構造体における締結動作を示す図である。
図5Aは、一方の板金と他方の板金とを締結する前の断面図である。
図5Bは、一方の板金を他方の板金に対して締結した後の断面図である。
【
図6】実施の形態3に係る構造体の概略構成図である。
図6Aは、実施の形態3に係る構造体の正面図である。
図6Bは、一方の板金を表面側から見た図である。
図6Cは、他方の板金を裏面側から見た図である。
【
図7】実施の形態3に係る構造体における他の他方の板金を裏側から見た図である。
【
図8】実施の形態4に係る構造体の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示をより詳細に説明するために、本開示を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0011】
実施の形態1.
実施の形態1に係る構造体について、
図1から
図3を用いて説明する。
【0012】
先ず、実施の形態1に係る構造体の構成について、
図1から
図3を用いて説明する。
図1は、実施の形態1に係る構造体の概略構成図である。
図2は、実施の形態1に係る構造体の概略斜視図である。
図3は、実施の形態1に係る構造体の締結動作を示す図である。
【0013】
図1A及び
図2Aに示すように、実施の形態1に係る構造体は、例えば、電子機器の筐体(図示省略)を構成する複数の板金のうち、板厚方向において互に重ね合わされた2つの板金10,20間に適用されるものである。
【0014】
板金10,20は、導電性を有する母材と、当該母材の表面及び裏面に形成される、絶縁性を有する絶縁被膜(板金10,20の表層)とから、構成されている。母材は、例えば、金属等の導体である。また、絶縁被膜は、例えば、腐食防止用の塗装被膜又は保護被膜等である。
【0015】
一方の板金10と他方の板金20とは、互いの一部分同士が対向し重ね合わされて、この重ね合わせ部分がねじ51によって締結される。このねじ51は、締結部材を構成するものである。なお、締結部材は、リベット及びスナップフィット等でも構わない。
【0016】
図1及び
図2に示すように、板金10は、突出部11及び弾性変形部12を備えている。突出部11及び弾性変形部12は、板金10における板金20との対向領域内に設けられている。
【0017】
図3に示すように、板金10は、表面10a、裏面10b、及び、ねじ孔10cを有している。表面10aは、板金20と対向する対向面である。裏面10bは、表面10aの反対側に位置する面である。ねじ孔10cは、板金10を板厚方向に向けて貫通している。即ち、ねじ孔10cは、表面10a及び裏面10bにそれぞれ開口している。このねじ孔10cには、ねじ51が締め付け可能となっている。
【0018】
突出部11は、板金10の表面10aから外側に向けて突出している。言い換えれば、突出部11は、板金10の表面10aから板金20に向けて突出している。この突出部11は、板金10の板厚全体を変形させることで、形成されている。即ち、突出部11は、板金10の表面10aと裏面10bとが一体となって形成されたものである。
【0019】
また、突出部11は、長さ方向と直交する断面が、略三角形をなしている。この三角形の1つの頂点が、突出部11の先端を形成するものである。この先端は、直線的に延びている。
【0020】
弾性変形部12は、突出部11の周囲を囲むように、環状に設けられている。突出部11と弾性変形部12とは、連続して形成されている。具体的には、突出部11の外周縁と、弾性変形部12の内周縁部とは、継ぎ目なく滑らかに接続されている。
【0021】
弾性変形部12は、板金10の裏面10bから外側に向けて突出している。言い換えれば、弾性変形部12は、板金10の裏面10bから、板金20から遠ざかる方向に向けて突出している。突出部11の板金10からの突出方向と、弾性変形部12に板金10からの突出方向とは、互いに反対の方向である。弾性変形部12は、板金10の板厚全体を変形させることで、形成されている。また、弾性変形部12は、周回方向と直交する断面が略三角形となっている。弾性変形部12は、上述したように形成されることで、板金10の板厚方向において、弾性変形可能となる。
【0022】
図1及び
図2に示すように、板金20は、突出部21及び弾性変形部22を備えている。突出部21及び弾性変形部22は、板金20における板金10との対向領域内に設けられている。
【0023】
図3に示すように、板金20は、表面20a、裏面20b、及び、ねじ通し孔20cを有している。表面20aは、板金10の表面10aと対向する対向面である。裏面20bは、表面20aの反対側の位置する面である。ねじ通し孔20cは、板金20を板厚方向に向けて貫通する、所謂、ばか孔である。即ち、ねじ通し孔20cは、表面20a及び裏面20bにそれぞれ開口している。このねじ通し孔20cは、ねじ孔10cと対応するものであって、当該ねじ通し孔20cには、ねじ51が貫通可能となっている。
【0024】
突出部21は、板金20の表面20aから外側に向けて突出している。言い換えれば、突出部21は、板金20の表面20aから板金10に向けて突出している。この突出部21は、板金20の板厚全体を変形させることで、形成されている。即ち、突出部21は、板金20の表面20aと裏面20bとが一体となって形成されたものである。
【0025】
また、突出部21は、長さ方向と直交する断面が、略三角形をなしている。この三角形の1つの頂点が、突出部21の先端を形成するものである。この先端は、直線的に延びている。
【0026】
弾性変形部22は、突出部21の周囲を囲むように、環状に設けられている。突出部21と弾性変形部22とは、連続して形成されている。具体的には、突出部21の外周縁と、弾性変形部22の内周縁部とは、継ぎ目なく滑らかに接続されている。
【0027】
弾性変形部22は、板金20の裏面20bから外側に向けて突出している。言い換えれば、弾性変形部22は、板金20の裏面20bから、板金10から遠ざかる方向に向けて突出している。突出部21の板金20からの突出方向と、弾性変形部22の板金20からの突出方向とは、互いに反対の方向である。弾性変形部22は、板金20の板厚全体を変形させることで、形成されている。また、弾性変形部22は、周回方向と直交する断面が略三角形となっている。弾性変形部22は、上述したように形成されることで、板金20の板厚方向において、弾性変形可能となる。
【0028】
そして、板金10と板金20とは、突出部11の先端と、突出部21に先端とが、互に交差するように配置されている。
【0029】
次に、実施の形態1に係る構造体の締結動作について、
図3を用いて説明する。
【0030】
先ず、
図3Aに示すように、板金10の表面10aと、板金20の表面20aとが、対向して配置される。即ち、板金10,20は、突出部11の先端と突出部21の先端とが交差するように配置される。
【0031】
次いで、
図3Bに示すように、ねじ51が、板金20のねじ通し孔20cを介して、板金10のねじ孔10cに締め付けられる。この結果は、板金10と板金20とは、ねじ51によって、締結される。このとき、突出部11の先端と突出部21の先端とが、互いに接触し、微小面積に圧力が集中する。このため、2つの先端における絶縁被膜が、破壊されて、当該2つの先端における母材同士が、接触する。この結果、突出部11における母材と、突出部21における母材とが、導通する。よって、板金10,20間において、ノイズ電流又は漏洩電流の経路が確保される。
【0032】
また、上記の如く、板金10,20が締結されると、弾性変形部12は、突出部11が裏面10b側に押し込まれることで、弾性変形する。また、弾性変形部22は、突出部21が裏面20b側に押し込まれることで、弾性変形する。
【0033】
ここで、仮に、ねじ51が何らかの事情で緩んでしまい、締結力が低下した場合、突出部11,21間に隙間が生じてしまい、導通が無くなってしまう。しかしながら、実施の形態1に係る構造体は、弾性変形部12,22を備えているため、当該弾性変形部12,22の弾性変形を利用して、言い換えれば、弾性変形部12,22における元の形状(位置)への復帰力を利用して、突出部11,21同士の接触を維持することができる。このため、ねじ51が緩んでしまった場合でも、板金10,20間の導通を維持することができ、ノイズ電流又は漏洩電流の影響を防止することができる。
【0034】
以上、実施の形態1に係る構造体は、導電性を有する母材が絶縁被膜で覆われた複数の板金10,20を、板厚方向に重ね合わせた構造体であって、互いに隣接してねじ51によって締結された板金10,20同士における一方の板金10に設けられ、他方の板金20に向けて突出する一方の突出部11と、一方の板金10において、一方の突出部11の周囲を囲うように設けられ、ねじ51による締結時に弾性変形する一方の弾性変形部12と、他方の板金20において、一方の板金10に向けて突出し、且つ、一方の突出部11と交差するように配置される他方の突出部21と、他方の板金20において、他方の突出部21の周囲を囲うように設けられ、ねじ51による締結時に弾性変形する他方の弾性変形部22とを備える。ねじ51による締結時において、一方の突出部11の先端と、他方の突出部21の先端とは、互いに接触する。このため、実施の形態1に係る構造体は、ねじ51が緩んでしまった場合でも、板金10,20の母材同士の導通を確保することができる。また、実施の形態1に係る構造体は、板金10,20の母材同士を導通させるための、特殊なねじ及びワッシャ等を必要としない。
【0035】
実施の形態2.
実施の形態2に係る構造体について、
図4及び
図5を用いて説明する。なお、上述した実施の形態1で説明した構成と同様の機能を有する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
先ず、実施の形態2に係る構造体の構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、実施の形態2に係る構造体の概略構成図である。
【0037】
図4に示すように、実施の形態2に係る構造体は、板金10の弾性変形部12に替えて、弾性変形部13を備えている。
【0038】
図4Bに示すように、弾性変形部13は、突出部11の周囲を囲むように、環状に設けられている。突出部11と弾性変形部12とは、連続して形成されている。具体的には、突出部11の外周縁と、弾性変形部12の内周縁部とは、継ぎ目なく滑らかに接続されている。
【0039】
弾性変形部13は、板金10の裏面10bから外側に向けて突出している。言い換えれば、弾性変形部13は、板金10の裏面10bから、板金20から遠ざかる方向に向けて突出している。弾性変形部13は、板金10の板厚全体を変形させることで、形成されている。弾性変形部12は、上述したように形成されることで、板金10の板厚方向において、弾性変形可能となる。
【0040】
また、弾性変形部13は、突出部11の先端の長さ方向と直交する断面形状が、当該先端を中心として、その両側において、非対称となっている。例えば、弾性変形部13における突出部11の先端を中心とした一方側は、裏面10b側への膨出部を1つ有するものである。これに対して、弾性変形部13における突出部11の先端を中心とした他方側は、裏面10b側への膨出部を1つと、表面10a側への膨出部を1つ有するものである。このとき、表面10a側への膨出部は、裏面10b側への膨出部よりも板金10の外側に配置されている。
【0041】
このように、弾性変形部13は、突出部11の先端の長さ方向と直交する断面形状を、当該先端を中心として、その両側において、非対称とすることにより、突出部11の先端を中心として、一方側の弾性変形量と他方側の弾性変形量との間で、弾性変形量の差を持たせることができる。具体的には、弾性変形部13における突出部11の先端を中心とした他方側は、弾性変形部13における突出部11の先端を中心とした一方側よりも形状が複雑となっている。このため、その他方側の弾性変形量は、その一方側の弾性変形量よりも大きくなる。
【0042】
次に、実施の形態2に係る構造体の締結動作について、
図5を用いて説明する。
図5は、実施の形態2に係る構造体の締結動作を示す図である。なお、
図5Bにおいては、板金20を省略している。
【0043】
先ず、
図5Aに示すように、板金10の表面10aと、板金20の表面20aとが、対向して配置される。即ち、板金10,20は、突出部11の先端と突出部21の先端とが交差するように配置される。
【0044】
次いで、
図5Bに示すように、ねじ51が、板金20のねじ通し孔20cを介して、板金10のねじ孔10cに締め付けられる。この結果は、板金10と板金20とは、ねじ51によって、締結される。このとき、突出部11の先端と突出部21の先端とが、互いに接触し、微小面積に圧力が集中する。また、弾性変形部13の他方側の弾性変形量は、その一方側の弾性変形量よりも大きくなる。このため、突出部11の先端位置が、他方側に向けてずれる。即ち、突出部11の先端は、突出部21の先端に接触しつつ、当該先端の長さ方向に沿って移動する。これに伴って、2つの先端における絶縁被膜が、十分に破壊されて、当該2つの先端における母材同士が、接触する。この結果、突出部11における母材と、突出部21における母材とが、導通する。よって、板金10,20間において、ノイズ電流又は漏洩電流の経路が確保される。
【0045】
また、上記の如く、板金10,20が締結されると、弾性変形部13は、突出部11が裏面10b側に押し込まれることで、弾性変形する。また、弾性変形部22は、突出部21が裏面20b側に押し込まれることで、弾性変形する。
【0046】
ここで、仮に、ねじ51が何らかの事情で緩んでしまい、締結力が低下した場合、突出部11,21間に隙間が生じてしまい、導通が無くなってしまう。しかしながら、実施の形態2に係る構造体は、弾性変形部13,22を備えているため、当該弾性変形部13,22の弾性変形を利用して、言い換えれば、弾性変形部13,22における元の形状(位置)への復帰力を利用して、突出部11,21同士の接触を維持することができる。このため、ねじ51が緩んでしまった場合でも、板金10,20間の導通を維持することができ、ノイズ電流又は漏洩電流の影響を防止することができる。
【0047】
なお、実施の形態2に係る構造体においては、板金10における弾性変形部13の断面形状を非対称としているが、板金20における弾性変形部22の断面形状を非対称としても良い。
【0048】
以上、実施の形態2に係る構造体においては、弾性変形部13は、突出部11の先端の長さ方向と直交する断面形状が、当該先端を中心として、その両側において、非対称である。このため、実施の形態2に係る構造体は、弾性変形部13と先端と弾性変形部22の先端との間における絶縁被膜の剥離を、効果的に行うことができる。
【0049】
また、実施の形態2に係る構造体においては、突出部11の先端は、当該先端を中心として、弾性変形部13の変形量が大きい側に向けて移動する。このため、実施の形態2に係る構造体は、絶縁被膜の剥離範囲を拡大させることができ、導通性の向上を図ることができる。
【0050】
更に、実施の形態2に係る構造体においては、突出部11の先端は、突出部21の先端の長さ方向に沿って移動する。このため、実施の形態2に係る構造体は、突出部11の先端と突出部21の先端との間の接触を、時間的及び距離的に長く維持することができる。この結果、実施の形態2に係る構造体は、絶縁被膜の剥離範囲を拡大させることができる。
【0051】
実施の形態3.
実施の形態3に係る構造体について、
図6及び
図7を用いて説明する。なお、上述した実施の形態1で説明した構成と同様の機能を有する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
先ず、実施の形態3に係る構造体の構成について、
図6を用いて説明する。
図6は、実施の形態3に係る構造体の概略構成図である。
【0053】
図6に示すように、実施の形態3に係る構造体は、突出部11と弾性変形部12との組みを、複数組み備えると共に、突出部23と弾性変形部24との組みを、1組み備えるものである。
図6は、実施の形態3に係る構造体が、突出部11と弾性変形部12との組みを、4組み備えると共に、突出部23と弾性変形部24との組みを、1組み備える例である。
【0054】
図6に示すように、突出部11と弾性変形部12との各組は、ねじ孔10c及びねじ51を中心として、等角度間隔で配置されている。これに対して、突出部23及び弾性変形部24は、ねじ通し孔20c及びねじ51を中心として、円形状に形成されている。4組みの突出部11及び弾性変形部12と、1組みの突出部23及び弾性変形部24とは、板厚方向において対向している。
【0055】
具体的には、突出部23は、板金20の表面10aから外側に向けて突出している。言い換えれば、突出部23は、板金20の表面20aから板金10に向けて突出している。この突出部11は、板金10の板厚全体を変形させることで、形成されている。即ち、突出部11は、板金10の表面10aと裏面10bとが一体となって形成されたものである。
【0056】
また、突出部23は、長さ方向と直交する断面が、略三角形をなしている。この三角形の1つの頂点が、突出部23の先端を形成するものである。この先端は、ねじ通し孔20c及びねじ51を中心とした円形状に形成されている。
【0057】
弾性変形部24は、突出部23を囲むように設けられている。この弾性変形部24は、突出部23の径方向内側及び径方向外側に配置されている。即ち、弾性変形部24は、突出部23を、その径方向両側から挟み込むように配置されている。
【0058】
弾性変形部24は、板金20の裏面20bから外側に向けて突出している。言い換えれば、弾性変形部24は、板金20の裏面10bから、板金20から遠ざかる方向に向けて突出している。突出部23の板金20からの突出方向と、弾性変形部24の板金10からの突出方向とは、互いに反対の方向である。弾性変形部24は、板金20の板厚全体を変形させることで、形成されている。また、弾性変形部24は、周回方向と直交する断面が略三角形となっている。弾性変形部24は、上述したように形成されることで、板金20の板厚方向において、弾性変形可能となる。
【0059】
このように、実施の形態3に係る構造体は、1組みの突出部23及び弾性変形部24に対して、4組みの突出部11及び弾性変形部12を備えることにより、絶縁被膜が破壊されて道通する確率を、1組みの突出部21及び弾性変形部22に対して、1組みの突出部11及び弾性変形部12を備えるときと比べて、16倍に向上させることができる。また、実施の形態3に係る構造体は、導通時における板金10,20間の抵抗値を、そのときと比べて、4分の1にまで小さくすることができる。更に、実施の形態3に係る構造体は、締結時における板金10,20の安定化を図ることができる。このため、構造体は、板金10,20間の組み付け精度を向上させることができる。
【0060】
また、実施の形態3に係る構造体は、
図7に示す構成を採用しても良い。この
図7は、実施の形態3に係る構造体における他の板金20を裏側から見た図である。
図7に示すように、実施の形態3に係る構造体は、突出部11と弾性変形部12との組み数と、突出部21と弾性変形部22との組み数とを、同じ複数の組み数とし、板金10における各組みと、板金20における各組みとを、それぞれ対向させるようにしても構わない。このような構成を採用しても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、実施の形態3に係る構造体においては、板金20の突出部23及び弾性変形部24を円形状に形成しているが、板金10の突出部11及び弾性変形部12を円形状に形成しても構わない。
【0062】
以上、実施の形態3に係る構造体は、突出部11と弾性変形部12との組みを、複数組み備えると共に、突出部23と弾性変形部24との組みを、1組み備え、突出部11と弾性変形部12との各組みと、突出部23と弾性変形部24との組みとを、対向させる。このため、実施の形態3に係る構造体は、弾性変形部12と先端と弾性変形部24の先端との間における絶縁被膜の剥離を、効果的に行うことができる。
【0063】
また、実施の形態3に係る構造体は、突出部23と弾性変形部24とは、ねじ51を中心として、円形状に形成される。このため、実施の形態3に係る構造体は、締結時における板金10,20の安定化を図ることができる。この結果、実施の形態3に係る構造体は、板金10,20間の組み付け精度を向上させることができる。
【0064】
また、実施の形態3に係る構造体は、突出部11と弾性変形部12との組み数と、突出部21と弾性変形部22との組み数を、同じ複数の組み数とし、突出部11との弾性変形部12との各組みと、突出部21と弾性変形部22との各組みとを、それぞれ対向させる。このため、実施の形態3に係る構造体は、弾性変形部12と先端と弾性変形部22の先端との間における絶縁被膜の剥離を、効果的に行うことができる。
【0065】
更に、実施の形態3に係る構造体においては、突出部11と弾性変形部12との各組みは、締結部材を中心として、等角度間隔で配置される。このため、実施の形態3に係る構造体は、締結時における板金10,20の安定化を図ることができる。この結果、実施の形態3に係る構造体は、板金10,20間の組み付け精度を向上させることができる。
【0066】
実施の形態4.
実施の形態4に係る構造体について、
図8を用いて説明する。
図8は、実施の形態4に係る構造体の概略構成図である。なお、上述した実施の形態1で説明した構成と同様の機能を有する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図8に示すように、実施の形態4に係る構造体は、板金10,20に加えて、板金30を備えたものである。この実施の形態4に係る構造体は、板金10,20,30を板厚方向に順に重ね合わせている。板金10の表面10aと板金20の表面20aとが、対向しており、板金20の裏面20bと板金30の表面30aとが、対向している。このため、裏面20b及び表面30aは、対向面を構成している。
【0068】
板金20は、突出部25及び弾性変形部26を備えている。突出部25及び弾性変形部26は、板金20における板金30との対向領域に設けられている。
【0069】
突出部25は、板金20の裏面20bから外側に向けて突出している。言い換えれば、突出部25は、板金20の裏面20bから板金30に向けて突出している。この突出部25は、板金20の板厚全体を変形させることで、形成されている。即ち、突出部25は、板金20の表面20aと裏面20bとが一体となって形成されたものである。
【0070】
また、突出部25は、長さ方向と直交する断面が、略三角形をなしている。この三角形の1つの頂点が、突出部25の先端を形成するものである。この先端は、直線的に延びている。
【0071】
弾性変形部26は、突出部25の周囲を囲むように、環状に設けられている。突出部25と弾性変形部26とは、連続して形成されている。具体的には、突出部25の外周縁と、弾性変形部26の内周縁部とは、継ぎ目なく滑らかに接続されている。
【0072】
弾性変形部26は、板金20の表面20aから外側に向けて突出している。言い換えれば、弾性変形部26は、板金20の表面20aから、板金30から遠ざかる方向に向けて突出している。突出部25の板金20からの突出方向と、弾性変形部26の板金20からの突出方向とは、互いに反対の方向である。弾性変形部26は、板金20の板厚全体を変形させることで、形成されている。また、弾性変形部26は、周回方向と直交する断面が略三角形となっている。弾性変形部26は、上述したように形成されることで、板金20の板厚方向において、弾性変形可能となる。
【0073】
これに対して、板金30は、突出部31及び弾性変形部32を備えている。突出部31及び弾性変形部32は、板金30における板金20との対向領域内に設けられている。
【0074】
板金30は、表面30a、裏面30b、及び、ねじ通し孔30cを有している。表面30aは、板金20と対向する対向面である。裏面30bは、表面30aの反対側に位置する面である。ねじ通し孔30cは、板金30を板厚方向に向けて貫通する、所謂、ばか孔である。即ち、ねじ通し孔30cは、表面30a及び裏面30bにそれぞれ開口している。このねじ通し孔30cは、ねじ孔10c及びねじ通し孔20cと対応するものであって、当該ねじ通し孔30cには、ねじ51が貫通可能となっている。
【0075】
突出部31は、板金30の表面10aから外側に向けて突出している。言い換えれば、突出部31は、板金30の表面10aから板金20に向けて突出している。この突出部31は、板金30の板厚全体を変形させることで、形成されている。即ち、突出部31は、板金30の表面30aと裏面30bとが一体となって形成されたものである。
【0076】
また、突出部31は、長さ方向と直交する断面が、略三角形をなしている。この三角形の1つの頂点が、突出部31の先端を形成するものである。この先端は、直線的に延びている。
【0077】
弾性変形部32は、突出部31の周囲を囲むように、環状に設けられている。突出部31と弾性変形部32とは、連続して形成されている。具体的には、突出部31の外周縁と、弾性変形部32の内周縁部とは、継ぎ目なく滑らかに接続されている。
【0078】
弾性変形部32は、板金30の裏面30bから外側に向けて突出している。言い換えれば、弾性変形部32は、板金30の裏面30bから、板金20から遠ざかる方向に向けて突出している。突出部31の板金10からの突出方向と、弾性変形部32に板金10からの突出方向とは、互いに反対の方向である。弾性変形部32は、板金30の板厚全体を変形させることで、形成されている。また、弾性変形部32は、周回方向と直交する断面が略三角形となっている。弾性変形部32は、上述したように形成されることで、板金30の板厚方向において、弾性変形可能となる。
【0079】
そして、一方の板金20と他方の板金30とは、突出部25の先端と、突出部31に先端とが、互に交差するように配置されている。
【0080】
以上、実施の形態4に係る構造体は、導電性を有する母材が絶縁被膜で覆われた複数の板金10,20,30を、板厚方向に重ね合わせた構造体であって、互いに隣接してねじ51によって締結された板金20,30同士における一方の板金20に設けられ、他方の板金30に向けて突出する一方の突出部25と、一方の板金20において、一方の突出部25の周囲を囲うように設けられ、ねじ51による締結時に弾性変形する一方の弾性変形部26と、他方の板金30において、一方の板金20に向けて突出し、且つ、一方の突出部25と交差するように配置される他方の突出部31と、他方の板金30において、他方の突出部31の周囲を囲うように設けられ、ねじ51による締結時に弾性変形する他方の弾性変形部32とを備える。ねじ51による締結時において、一方の突出部25の先端と、他方の突出部31の先端とは、互いに接触する。このため、実施の形態4に係る構造体は、ねじ51が緩んでしまった場合でも、板金20,30の母材同士の導通を確保することができる。また、実施の形態4に係る構造体は、板金30,30の母材同士を導通させるための、特殊なねじ及びワッシャ等を必要としない。
【0081】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、或いは、各実施の形態における任意の構成要素の変形、若しくは、各実施の形態における任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示に係る構造体は、突出部の周囲を囲う弾性変形部を設けることで、板金の母材同士の導通を確保することができ、構造体等に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0083】
10 板金、10a 表面、10b 裏面、10c ねじ孔、11 突出部、12,13 弾性変形部、20 板金、20a 表面、20b 裏面、20c ねじ通し孔、21,23,25 突出部、22,24,26 弾性変形部、30 板金、30a 表面、30b 裏面、30c ねじ通し孔、31 突出部、32 弾性変形部、51 ねじ。
【要約】
構造体は、導電性を有する母材が絶縁被膜で覆われた複数の板金(10,20)を、板厚方向に重ね合わせた構造体であって、互いに隣接してねじ(51)によって締結された板金(10,20)同士における一方の板金(10)に設けられ、他方の板金(20)に向けて突出する突出部(11)と、板金(10)において、突出部(11)の周囲を囲うように設けられ、ねじ(51)による締結時に弾性変形する弾性変形部(12)と、板金(20)において、板金(10)に向けて突出し、且つ、突出部(11)と交差するように配置される突出部(21)と、板金(20)において、突出部(21)の周囲を囲うように設けられ、ねじ(51)による締結時に弾性変形する弾性変形部(22)とを備える。ねじ(51)による締結時において、突出部(11)の先端と突出部(21)の先端とは、互いに接触する。