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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】ゴムストリップ製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/35 20190101AFI20250325BHJP
【FI】
B29C48/35
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021095974
(22)【出願日】2021-06-08
(65)【公開番号】P2022187794
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(72)【発明者】
【氏名】野坂 有
(72)【発明者】
【氏名】浜地 健一
(72)【発明者】
【氏名】北田 武司
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-039594(JP,A)
【文献】特開昭51-034974(JP,A)
【文献】特開2016-196100(JP,A)
【文献】特開2010-197366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 7/00 - 11/14
B29C 48/00 - 48/96
B29C 55/00 - 55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム押出機と、一対のカレンダーロールを備えたカレンダーヘッドとを備えており、前記ゴム押出機から押し出されたゴム組成物を前記一対のカレンダーロールで所定の形状に圧延することにより、テープ状のゴムストリップを製造するゴムストリップ製造装置であって、
ベアリングの軸受に支持された前記カレンダーロールの回転軸が、前記カレンダーヘッドのサイド部に設けられた挿通孔に、挿通されており、
前記カレンダーロールの側縁部周面に、前記カレンダーロールの回転軸と前記挿通孔との隙間を覆うように、前記挿通孔の直径よりも大きな外径のカラーが嵌め込まれており、
前記カラーが、鋼鉄製であることを特徴とするゴムストリップ製造装置。
【請求項2】
前記鋼鉄が、ミガキ棒鋼であることを特徴とする請求項に記載のゴムストリップ製造装置。
【請求項3】
前記カラーが、リング状の一体物として形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴムストリップ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムストリップ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生タイヤの製造方法として、テープ状のゴムストリップを成形ドラムに螺旋状に巻き重ねて、所定形状の生タイヤに成形するストリップワインド工法(STW工法)が知られている。このストリップワインド工法において、テープ状のゴムストリップは、ゴムストリップ製造装置を用いて製造される。
【0003】
ゴムストリップ製造装置は、ゴム押出機と、一対のカレンダーロールからなるカレンダーヘッドとを備えており、ゴム押出機の押出口から押し出された未加硫のゴム組成物が、その先に設けられたカレンダーヘッドのロール間で圧延されることにより、所定形状(プロファイル)のゴムストリップに成形される(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-82277号公報
【文献】特開2015-116704号公報
【文献】特開2016-196100号公報
【文献】特開2018-62109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したゴムストリップ製造装置のカレンダーヘッドにおいて、カレンダーロールの回転軸の軸受けとしてベアリングが使用されており、従来より、ベアリングの破損に伴う故障が発生しないように、定期的にベアリングを交換して設備の維持を図っている。
【0006】
しかしながら、ベアリングの交換に際しては、重量のあるカレンダーヘッドの解体と再組付けが必要であり、また、一般的に、1台の成型機には、使用されるタイヤ部材に合わせて、複数台のゴムストリップ製造装置が配置されている。このため、ベアリングの交換には多大の時間が掛かると共に、作業者に掛かる負担も大きく、ベアリングの交換頻度が少ないゴムストリップ製造装置が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、ベアリングの破損の発生を長期に亘って抑制して、ベアリングの交換頻度の低減を図ることができるゴムストリップ製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題の解決について鋭意検討を行い、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
請求項1に記載の発明は、
ゴム押出機と、一対のカレンダーロールを備えたカレンダーヘッドとを備えており、前記ゴム押出機から押し出されたゴム組成物を前記一対のカレンダーロールで所定の形状に圧延することにより、テープ状のゴムストリップを製造するゴムストリップ製造装置であって、
ベアリングの軸受に支持された前記カレンダーロールの回転軸が、前記カレンダーヘッドのサイド部に設けられた挿通孔に、挿通されており、
前記カレンダーロールの側縁部周面に、前記カレンダーロールの回転軸と前記挿通孔との隙間を覆うように、前記挿通孔の直径よりも大きな外径のカラーが嵌め込まれており、
前記カラーが、鋼鉄製であることを特徴とするゴムストリップ製造装置である。
【0011】
請求項に記載の発明は、
前記鋼鉄が、ミガキ棒鋼であることを特徴とする請求項に記載のゴムストリップ製造装置である。
【0012】
請求項に記載の発明は、
前記カラーが、リング状の一体物として形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴムストリップ製造装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベアリングの破損の発生を長期に亘って抑制して、ベアリングの交換頻度の低減を図ることができるゴムストリップ製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係るゴムストリップ製造装置のカレンダーヘッドの模式断面図である。
図2】本実施の形態に係るゴムストリップ製造装置のカレンダーヘッドの軸受部近傍の模式断面図である。
図3】本発明の一実施の形態において使用されるカラーの一例を示す図である。
図4】ゴムストリップ製造装置の概略を示す模式図である。
図5】従来のゴムストリップ製造装置のカレンダーヘッドの模式断面図である。
図6】従来のゴムストリップ製造装置のカレンダーヘッドの軸受部近傍の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.従来のゴムストリップ製造装置とその問題点
本発明者は、ゴムストリップ製造装置において、ベアリングの交換頻度の低減を図るためには、まず、ベアリングの破損が何故に発生するのか、その原因を知ることが必要と考え、種々の実験と検討を行った。その結果、カレンダーロールの回転軸と、カレンダーロールの回転軸が挿通できるように形成された挿通孔との隙間から、ゴム組成物がカレンダーロールの回転軸に侵入することにより、回転軸の周囲に配置されたベアリングの破損が発生することが分かった。以下、具体的に説明する。
【0016】
図4は、ゴムストリップ製造装置の概略を示す模式図であり、ゴム押出機とカレンダーヘッドとを備えており、ゴム押出機の押出口から押出されたゴムを、カレンダーヘッドの上下一対のカレンダーロールで、所定の幅、厚みに圧延することにより、所定の断面形状のゴムストリップを形成しており、この点は、従来のゴムストリップ製造装置も、本発明のゴムストリップ製造装置も、基本的に同様である。
【0017】
具体的には、ゴムストリップ製造装置1は、ゴム押出機11とカレンダーヘッド12とを備えており、ゴム押出機11の押出口11aから押出されたゴム組成物Gを、カレンダーヘッド12の上下一対のカレンダーロール121、122で、所定の幅、厚みに圧延することにより、所定の断面形状のゴムストリップGSを形成する。その後、形成されたゴムストリップGSを引取りロール13に引取り、次工程へと送り出す。
【0018】
図5は、従来のゴムストリップ製造装置のカレンダーヘッドの模式断面図である。そして、図6は、従来のゴムストリップ製造装置のカレンダーヘッドの軸受部近傍の模式断面図であり、図5に示す上ロール31aの紙面右側における軸受部近傍の模式断面図である。図5図6において、3はカレンダーヘッド、31はカレンダーロール、34はハウジングである。
【0019】
図5に示すように、カレンダーヘッド3は、上ロール31aと下ロール31bの上下一対のロールからなるカレンダーロール31を備えている。なお、一方のロール(図5では上ロール31a)の周面には、対象となるゴムストリップGSの断面形状(幅、厚さ)に相当する周方向溝32が設けられている。
【0020】
カレンダーロール31(上ロール31aおよび下ロール31b)は、ハウジング34に収納されている。具体的には、軸受としてのベアリング36に支持された各ロール31a、31bの回転軸33が、ハウジング34のサイド部(サイドプレート35)に設けられた挿通孔に挿通されることにより、ハウジング34に収納されている。なお、ベアリング36の周囲には、回転軸33とベアリング36との間の摺動性を維持するために潤滑油が充填されている。
【0021】
そして、上ロール31aおよび下ロール31bの回転軸33は、片方の端部がハウジングのサイドプレート35の外部まで延びており、それぞれにギア37が取り付けられている。ギア同士は互いに噛み合っており、一方のギアの回転駆動により、他方のギアも回転し、上ロール31aおよび下ロール31bが、互いに連動して回転するように構成されている。
【0022】
このとき、上ロール31aおよび下ロール31bのそれぞれがスムーズに回転できるように、各回転軸33と挿通孔との間には、若干のクリアランス(隙間35a)が形成されている。
【0023】
ゴムストリップの製造中、押出条件や圧延条件など、何らかの要因によってロール上にゴム組成物が過密着して、所定の断面形状のゴムストリップが得られなくなる状態が発生する場合があり、対応策として、ゴムストリップ製造装置を一旦停止させる(所謂「チョコ停」)ことが行われるが、その際、ロール上のゴム組成物が、ロールの中央部から側縁部へと移動する。
【0024】
ロールの側縁部に移動したゴム組成物は、その後、図6に示すように、回転軸33と挿通孔との隙間35aからサイドプレート35の内側に侵入する。そして、侵入したゴム組成物は、ベアリング36の周囲に充填されている潤滑油と混じり合うため、潤滑性の低下を招いて、最終的には、ベアリング36を破損してしまうことが分かった。
【0025】
そこで、従来のゴムストリップ製造装置においては、カレンダーヘッドを定期的に検査する必要があった。具体的には、カレンダーヘッドを解体して、ゴム組成物の侵入状況を確認し、適宜、ベアリングの交換を行った後、カレンダーヘッドの再組付けを行うが、前記したように、1台の成型機に複数台配置されたゴムストリップ製造装置の各々について重量のあるカレンダーヘッドの解体および再組付けを行うことは、多大の時間が掛かると共に、作業者に掛かる負担も大きいため、ベアリングの交換頻度の低減が望まれていた。
【0026】
2.本発明に係るゴムストリップ製造装置
(1)本発明における基本的な考え方
本発明者は、上記したゴムストリップ製造装置におけるベアリングの交換頻度の低減を図るためには、回転軸と挿通孔との隙間からのゴム組成物の侵入を防止する必要があると考え、具体的な侵入防止方法について鋭意実験と検討を行った。
【0027】
その結果、カレンダーロールの側縁部の周面に、カレンダーロールの回転軸と挿通孔との隙間を覆うようにカラーを嵌め込むことに思い至った。
【0028】
即ち、カレンダーロールの回転軸と挿通孔との隙間を覆うように、挿通孔の直径よりも大きな外径のカラーが、カレンダーロールの側縁部の周面に嵌め込まれている場合、前記したチョコ停においてロール上のゴム組成物が、ロールの中央部から側縁部へと移動したとしても、ゴム組成物は、嵌め込まれたカラーに沿ってロールの径方向外方向に移動していくため、サイドプレートの内側に隙間から侵入することがない。この結果、ゴム組成物の侵入に伴うベアリングの破損の発生を十分に抑制して、ベアリングの寿命が来るまでベアリングを交換する必要がなくなり、ベアリングの交換頻度の低減を図ることができる。
【0029】
(2)具体的な実施の形態
以下、具体的な実施の形態に基づいて説明する。
【0030】
本実施の形態に係るゴムストリップ製造装置は、前記したように、ゴム押出機とカレンダーヘッドとを備えており、ゴム押出機の押出口から押出されたゴムを、カレンダーヘッドの上下一対のカレンダーロールで、所定の幅、厚みに圧延することにより、所定の断面形状のゴムストリップを形成する点において、基本的に、従来のゴムストリップ製造装置と同様の構成となっている。
【0031】
しかしながら、本実施の形態に係るゴムストリップ製造装置は、上記したように、カレンダーロールの側縁部周面に、カレンダーロールの回転軸と挿通孔との隙間を覆うようにカラーが嵌め込まれている点において、従来のゴムストリップ製造装置と異なっている。
【0032】
図1は、本実施の形態に係るゴムストリップ製造装置のカレンダーヘッドの模式断面図である。そして、図2は、本実施の形態に係るゴムストリップ製造装置のカレンダーヘッドの軸受部近傍の模式断面図であり、図1に示す上ロール31aの紙面右側における軸受部近傍の模式断面図である。また、図3は、本実施の形態において使用されるカラーの一例を示す図である。なお、図1図2において、カラー38以外の符号は、図5図6と同様である。
【0033】
図1に示すように、本実施の形態のカレンダーヘッドは、図5図6に示した従来のカレンダーヘッドとは、カラー38が、ロールの回転軸33の側縁部周面に、回転軸33と挿通孔との隙間35aを覆うように嵌め込まれている点で異なっている。
【0034】
カラー38は、図2図3に示すように、挿通孔の直径rよりも大きな外径Rを有している。このようなカラー38を設けることにより、ロール上のゴム組成物Gがロール(図2では、上ロール31a)の中央部から側縁部へと移動したとしても、ゴム組成物Gはカラー38に沿って、ロールの径方向外方向にさらに移動していくため、隙間35aからサイドプレート35の内側に侵入することがない。この結果、ゴム組成物の侵入に伴うベアリングの破損の発生を十分に抑制することができ、ベアリングの寿命が来るまでベアリングを交換する必要がなくなるため、ベアリングの交換頻度の低減を図ることができる。なお、カラー38の固定は、例えば、回転軸33の側縁部周面にネジ止めすることにより行うことができる。
【0035】
このように、本実施の形態においては、カレンダーヘッド自体に大きな改造を施す必要がなく、また、このようなカラーは、安価に入手可能であるため、従来のゴムストリップ製造装置を改造するにあたっても、コストの上昇を十分に抑制することができる。
【0036】
なお、本実施の形態において、カラー38としては、ロールに嵌めこまれてロールと共に回転することを考慮すると、強度や耐久性などに優れた鋼鉄製のカラーが好ましく、その内でも、SS400Dなどのミガキ棒鋼製のカラーが好ましい。
【0037】
そして、カラー38は、複数の部材の組み合わせにより形成されてもよいが、製造コストを考慮すると、リング状の一体物として形成されていることが好ましい。
【0038】
以上、本実施の形態によれば、ゴム組成物の侵入に伴うベアリングの破損の発生を十分に抑制することができるため、ベアリングの交換を、ベアリングの寿命(約10年)の直前まで行う必要がなくなり、ベアリングの交換頻度の大幅な低減を図ることができる。
【0039】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ゴムストリップ製造装置
3、12 カレンダーヘッド
11 ゴム押出機
11a ゴム押出機の押出口
13 引取りロール
31、121、122 カレンダーロール
31a 上ロール
31b 下ロール
32 周方向溝
33 (ロールの)回転軸
34 ハウジング
35 (ハウジングの)サイドプレート
35a 隙間
36 ベアリング
37 ギア
38 カラー
G ゴム組成物
GS ゴムストリップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6