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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】うがい薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4425 20060101AFI20250325BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20250325BHJP
   A61K 31/185 20060101ALI20250325BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20250325BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250325BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250325BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20250325BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20250325BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20250325BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20250325BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20250325BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20250325BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20250325BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20250325BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20250325BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20250325BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20250325BHJP
【FI】
A61K31/4425
A61K31/045
A61K31/185
A61P1/02
A61P29/00
A61P31/04
A61K47/22
A61K47/14
A61K47/38
A61K47/44
A61K8/49
A61K8/86
A61K8/39
A61K8/73
A61K8/37
A61K8/46
A61Q11/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023048809
(22)【出願日】2023-03-24
(65)【公開番号】P2023147255
(43)【公開日】2023-10-12
【審査請求日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2022053607
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594176958
【氏名又は名称】福地製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 美貴
(72)【発明者】
【氏名】金箱 眞
【審査官】池田 百合香
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-162725(JP,A)
【文献】特開2019-123706(JP,A)
【文献】特開2019-077670(JP,A)
【文献】特開2009-051802(JP,A)
【文献】特開2009-178215(JP,A)
【文献】特開2009-161483(JP,A)
【文献】国際公開第2009/031643(WO,A1)
【文献】特開2007-001884(JP,A)
【文献】特開2018-052887(JP,A)
【文献】特開2019-059690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アズレンスルホン酸及び/又はその塩、セチルピリジニウム及び/又はその塩、及びl-メントールを含有する液体組成物において、下記(A)、(B)、(C)及び(D)の各成分が配合されている(ただし、酢酸ベタイン型界面活性剤及びポリソルベート80を除く)ことを特徴とするうがい薬。
(A)サッカリンナトリウム及びアセスルファムカリウムから選択される1種以上の矯味剤、
(B)グリセリン脂肪酸エステル
(C)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒプロメロースからなる群から選択される1種以上であるセルロース類、
(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100からなる群から選択される1種以上であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアズレンスルホン酸及び/又はその塩を含むうがい薬(含嗽剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
アズレンスルホン酸及びその塩は、従来より抗炎症剤として汎用され、これを希釈させた水溶液でうがいをすることにより、扁桃炎、咽頭炎、口内炎、歯肉炎を鎮める効果が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-105082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
うがい薬には、のどのはれを抑えるアズレンスルホン酸及び/又はその塩等の抗炎症剤、口中やのどの粘膜で細菌の増殖を抑えるセチルピリジニウム及び/又はその塩等の殺菌剤、そして口中に清涼感を与え、口臭除去の効果を有するl-メントール等のテルペン類が配合されることが多い。
これらのうち、アズレンスルホン酸及び/又はその塩とセチルピリジニウム及び/又はその塩を同時に配合すると使用時の泡立ちが大きく、アズレンスルホン酸及び/又はその塩とl-メントール等のテルペン類を同時に配合するとこれら一方又は双方の結晶が析出し、さらに、アズレンスルホン酸及び/又はその塩、セチルピリジニウム及び/又はその塩とl-メントール等のテルペン類を同時に配合すると使用時に液垂れし、しかも使用感(含嗽時の風味)が悪いことが問題であった。
【0005】
前記の泡立ちについて、抗炎症作用が知られているグリチルリチン酸又はその塩を、発泡抑制剤としてうがい薬に配合した提案がなされている(特許文献1)。前記提案では、グリチルリチン酸又はその塩が矯味剤や甘味剤として医薬品に添加される旨の記載があるが、うがい薬の使用感(風味)を改善する程の十分な矯味性がグリチルリチン酸又はその塩にあるとは言い難い。
【0006】
本発明は、アズレンスルホン酸及び/又はその塩、セチルピリジニウム及び/又はその塩、そしてl-メントール等を含有するうがい薬において、使用時の泡立ち、結晶析出、そして使用時の液垂れを抑制し、含嗽時の風味にも優れるうがい薬を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、以下の[1]~[4]を対象とする。
[1]
アズレンスルホン酸及び/又はその塩、セチルピリジニウム及び/又はその塩、及びl-メントールを含有する液体組成物において、下記(A)、(B)、(C)及び(D)の各成分が配合されていることを特徴とするうがい薬。
(A)サッカリンナトリウム及びアセスルファムカリウムから選択される1種以上の矯味剤、
(B)多価アルコール脂肪酸エステル、
(C)セルロース類、
(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類。
[2]
前記(B)多価アルコール脂肪酸エステルが、グリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする、[1]に記載のうがい薬。
[3]
前記(C)セルロース類が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒプロメロースからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、[1]に記載のうがい薬。
[4]
前記(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、[1]乃至[3]のうちいずれか一項に記載のうがい薬。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アズレンスルホン酸及び/又はその塩、セチルピリジニウム及び/又はその塩及びl-メントールを含有するうがい薬(液体組成物)において、うがい薬使用時の泡立ちや液垂れを抑制し、またアズレンスルホン酸及び/又はその塩やl-メントールの結晶析出を抑制するとともに、口に含んだ際には苦味等の不快な風味が抑制されてなる、うがい薬を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[うがい薬]
本発明にうがい薬は、アズレンスルホン酸及び/又はその塩、セチルピリジニウム及び/又はその塩及びl-メントールを含有する液体組成物において、さらに、(A)特定の矯味剤、(B)多価アルコール脂肪酸エステル、(C)セルロース類、及び(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類の各成分が配合されてなることを特徴とする。
【0010】
〈アズレンスルホン酸及び/又はその塩〉
前記アズレンスルホン酸の塩とは、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸の薬理学上許容される塩及びその水和物を指す。
前記アズレンスルホン酸及び/又はその塩は、抗炎症作用、抗アレルギー作用、肉芽新生及び上皮形成促進作用を有することが知られている。
薬理学上許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げることができ、中でもナトリウム塩(通常、アズレンスルホン酸ナトリウムと称する)を挙げることができる。
【0011】
〈セチルピリジニウム及び/又はその塩〉
前記セチルピリジニウム及び/又はその塩とは、例えば、セチルピリジニウム塩酸塩が挙げられ、すなわち、1-ヘキサデシルピリジニウムクロリド及びその水和物を挙げることができる。本成分は、殺菌作用を有し、粘膜において細菌の増殖を抑え、のどの炎症を緩和し、歯周病や口臭を予防する効果が知られている。
【0012】
〈l-メントール〉
l-メントールは、前述の通り口中に清涼感を与え、口臭除去の効果を有するとともに、一般に経口薬剤の風味を矯正し摂取しやすくする矯味剤としての役割をも担うものである。
【0013】
(A)特定の矯味剤
本発明のうがい薬は、(A)矯味剤として、サッカリンナトリウム及びアセスルファム
カリウムから選択される少なくとも一種を含む。
前記サッカリンナトリウム及びアセスルファムカリウムは非糖質性合成甘味料として知られており、本発明のうがい薬では甘味料且つ矯味剤としての役割を担うとともに、後述する(B)多価アルコール脂肪酸エステルと(C)セルロース類と組み合わせて使用することで、うがい薬使用時の泡立ちを抑制する役割をも担うことができる。
【0014】
(B)多価アルコール脂肪酸エステル、
本発明のうがい薬は(B)多価アルコール脂肪酸エステルを含む。多価アルコール脂肪酸エステルは、一般に溶解補助剤として使用されることが多いが、本発明のうがい薬においては、うがい薬使用時の泡立ちを抑制する役割をも担うことができる。
前記(B)多価アルコール脂肪酸エステルの中でも、グリセリン脂肪酸エステルを好ましく用いることができる。
【0015】
(C)セルロース類
本発明のうがい薬は(C)セルロース類を含む。セルロース類は、一般に粘稠化剤として粘度の調整(粘度増加)のために添加され得、うがい薬使用時の液垂れを防止する働きを担うとともに、うがい薬使用時の泡立ちを抑制する役割をも担うことができる。
前記(C)セルロース類の中でも、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)からなる群から選択される1種以上を好ましく用いることができる
なお、これらセルロース類は、セルロース中のヒドロキシ基の置換度や粘度等によって種々のグレードが市販されており、うがい薬中の溶解性やうがい薬製品としての粘度を考慮し、種々選択できる。例えばヒプロメロースの場合、メトキシ基の置換度:22~30%、ヒドロキシプロポシ基の置換モル数:7~12%、粘度(20℃、2質量%水溶液):3000~5600mPa・sであるものを選択することができるが、これに限定されない。
【0016】
(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類
本発明のうがい薬は(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類を含む。本成分は、l-メントールやアズレンスルホン酸及び/又はその塩などの結晶析出を抑制する、可溶化剤としての働きを担うものである。
前記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類の中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100等からなる群から選択される1種以上を好ましく用いることができる。
【0017】
〈その他添加剤〉
本発明に係るうがい薬は、本発明の効果並びにうがい薬としての効果(薬効)を損なわない範囲において、前記以外の任意成分としてその他添加剤を配合してもよい。
以下に、その他添加剤として挙げられる代表的な成分を例示するが、これら例示に限定されるものではなく、うがい薬として慣用の各種添加剤を配合することができる。また、これら添加剤の添加的も下記のものに限定されない。
【0018】
消炎剤として、例えば、グリチルリチン酸二カリウム等を使用することができる。
殺菌剤として、例えば、ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物等を使用することができる。
前記(A)以外の矯味剤として、例えば、カンフル、レモン油、ウイキョウ油、ユーカリ油、ケイヒ油、チョウジ油、バニリン、香料等を使用することができる。
安定化剤として、例えば、アスコルビン酸、ポリビニルアルコール、マクロゴール等を
使用することができる。
アルコール類として、例えば、エタノール、プロピルアルコール等のモノアルコール類、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、糖アルコール(マンニトール等)等の多価アルコール類が挙げられる。
糖アルコール類として、例えば、キシリトール、ソルビトール、グリセリン等を使用することができる。
キレート剤として、例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、及びそれらの水和物等を使用することができる。
界面活性剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル等を使用することができる。
等張化剤として、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等の無機塩類、プロピレングリコール、D-マンニトール等の多価アルコール類等を使用することができる。
防腐剤として、例えば、パラベン、チモール、ソルビン酸等を使用することができる。
溶解補助剤として、例えば、トリアセチン、白糖、ベンジルアルコール、ポリビニルピロリドン等を使用することができる。
粘稠(化)剤として、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、ゼラチン等を使用することができる。
pH調節剤として、例えば、クエン酸、乳酸、リン酸、炭酸、及びそれらの塩、それらの塩の水和物等が挙げられる。前記それらの塩、それらの塩の水和物としては、例えば、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸水和物、乳酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム水和物、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0019】
本発明のうがい薬において、各成分の配合量は、それら所望の効果を得ることができる配合量範囲であれば特に限定されず、例えば以下の通りとすることができる。なお本濃度は、うがい薬原液としての濃度であり、通常、うがい薬原液を1~300倍に希釈して使用し、調整濃度によってはそのまま(希釈せずに)使用することもできる。
・アズレンスルホン酸及び/又はその塩:0.001~0.6w/v%
・セチルピリジニウム及び/又はその塩:0.001~10w/v%
・l-メントール:0.001~10w/v%
・(A)サッカリンナトリウム及びアセスルファムカリウムから選択される1種以上の矯味剤:0.05~20w/v%
・(B)多価アルコール脂肪酸エステル:0.001~5w/v%
・(C)セルロース類:0.001~5w/v%
・(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類:0.001~5w/v%
【0020】
本発明のうがい薬は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の慣用の樹脂製容器や、ガラス製容器にて保存できる。また、容器の形状は特に限定されない。
【0021】
[うがい薬の製造方法]
本発明のうがい薬の製造方法の一例を以下に挙げるが、本法に特に限定されることなく製造可能である。
例えば、セチルピリジニウム及び/又はその塩、l-メントール、(B)多価アルコール脂肪酸エステル及び(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類を混合してセチルピリジニウム相とする。セチルピリジニウム相調製時、必要により加熱を行ってもよいし、またアルコール類を添加するなどして溶解性を高めてもよい。なお調製時に系内に水が存在するとセチルピリジニウム相が泡立ち易くなり、泡立ちが収まるまで時間を要する場合がある。
セチルピリジニウム相とは別に、(A)特定の矯味剤と(C)セルロース類、必要に応じて水を添加し、矯味剤相とする。
前記セチルピリジニウム相と矯味剤相を合わせて均一な相とした後、ここにアズレンスルホン酸及び/又はその塩、あるいは必要に応じてその水溶液を加えて溶解する。また前述の〈その他添加剤〉は、セチルピリジニウム相又は矯味剤相の調製時に添加してもよいし、これらを合わせて均一な相とする際、アズレンスルホン酸類を加える前又は後に、適時加えることができる。なおアズレンスルホン酸類を、各成分の溶解を確認した後に投入することで、各成分・添加剤の未溶解物や析出物を容易に確認できる。
またアズレンスルホン酸類を投入時、系内のpHを弱酸性(pH6.5~8.5)に維持することでアズレンスルホン酸類の安定性高めることができる(含量低下を抑制する)ことが期待できるため、必要に応じて系内のpHを調整することができる。
その後、必要により水を添加して容量補正し、うがい薬(原液)を得ることができる。
【実施例
【0022】
以下、本発明を実施例により、さらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0023】
[うがい薬原液及びうがい薬の調製(1)]
〈実施例1〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.1gを加熱して溶解後、プロピレングリコール 55gに溶解した。ここに、エタノール 7.5mL、グリセリン脂肪酸エステル
0.1g、セチルピリジニウム塩化物水和物 1.25g及びl-メントール 5gを加えて室温下、撹拌して溶解させ、セチルピリジニウム相とした。
次に、精製水 30gに、サッカリンナトリウム 2.5g及びヒドロキシエチルセルロースSE-600 0.1gを加えて室温下、撹拌して溶解させ、矯味剤相とした。
前記セチルピリジニウム相に前記矯味剤相を加えて、室温下撹拌して溶解させた後、アズレンスルホン酸ナトリウム 0.5gを加えて溶解させ、精製水を加えて全量100mLとし、実施例1のうがい薬原液を得た(表1)。
うがい薬原液 0.4mLを、水 100mLに希釈し、実施例1のうがい薬を得た(表2)。
〈実施例2〉
実施例1のサッカリンナトリウムを、アセスルファムカリウムに変えたほかは実施例1と同様にして、実施例2のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
【0024】
〈比較例1〉
実施例1のサッカリンナトリウムを、グリチルリチン酸二カリウムに変えたほかは実施例1と同様にして、比較例1のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例2〉
実施例1のサッカリンナトリウムを配合しなかったほかは実施例1と同様にして、比較例2のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例3〉
実施例1のヒドロキシエチルセルロースSE-600を配合しなかったほかは実施例1と同様にして、比較例3のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例4〉
実施例1のグリセリン脂肪酸エステルを配合しなかったほかは実施例1と同様にして、比較例4のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例5〉
実施例1のヒドロキシエチルセルロースSE-600及びグリセリン脂肪酸エステルを配合しなかったほかは実施例1と同様にして、比較例5のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例6〉
実施例1のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を配合しなかったほかは実施例1と同
様にして、比較例6のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例7〉
実施例1のサッカリンナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースSE-600、グリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を配合しなかったほかは実施例1と同様にして、比較例7のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
【0025】
実施例1~2及び比較例1~7で調製したうがい薬原液の処方を表1に、またうがい薬(希釈後)の処方を表2に、夫々示す。
【0026】
【表1】
【0027】
[試験例1:使用感(矯味)]
実施例1~2及び比較例1~7のうがい薬を、適量口に含み、下記基準により官能評価を行った。
<使用感(矯味) 評価基準>
〇:苦味を感じにくく、うがいしやすい(矯味を感じる)
△:苦味が僅かにあり、うがいがしにくい(わずかに矯味を感じる)
×:苦味があり、うがいに困難を感じる(矯味を感じない)
【0028】
[試験例2:泡立ち抑制評価]
JISの泡立ち試験を参照(JIS K3362-2008 8.5起泡力及び泡の安定度、ロス・マイルス法参照)し、以下の手順にて実施例1~2及び比較例1~7のうがい薬の泡立ち試験を行った。
50mLビュレットに各うがい薬(検体)約50mLを入れ、更に、100mLメスシリンダーに前記検体約20mLを加え、ビュレットの先端(コック側)からメスシリンダー中の検液の液面まで約45cmとなるようにビュレットを設置した。
ビュレットのコックを全開にし、全量をメスシリンダーに加え、直ちに生じた泡の高さを測定し、下記基準により泡立ち抑制について評価した。
<泡立ち抑制 評価基準>
〇:0~20cm
△:21~40cm
×:41cm以上
【0029】
[試験例3:液垂れ抑制評価]
一般にうがい薬は、うがい薬(原液)の入った容器から付属するカップやコップ等に適量を量り取り、これを水で希釈して使用(含嗽)する。以下の手順にて、うがい薬(原液)をコップ等にとる際の液垂れ性を評価した。
プラスチック容器(市販のうがい薬容器)に実施例1~2及び比較例1~7のうがい薬原液を適量充填した。うがい薬使用時と同様に、付属コップに約0.4mLのうがい薬原液を量り取る時の液垂れ抑制について下記基準により評価した。
<液垂れ抑制 評価基準>
〇:液垂れせずに量り取れる
×:液垂れし、使用しにくい
【0030】
[試験例4:結晶析出抑制評価]
実施例1~2及び比較例1~7のうがい薬を、一夜室温で放置し、目視にて結晶析出の有無を確認し、結晶析出の抑制について下記基準により評価した。
<結晶析出抑制 評価基準>
〇:結晶析出しない
×:結晶析出する
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示すように、(A)矯味剤としてサッカリンナトリウム(実施例1)及びアセスルファムカリウム(実施例2)を配合したうがい薬は、使用感(うがいのしやすさ(矯味(苦味の抑制など))に優れ、泡立ち抑制、液垂れ抑制及び結晶析出抑制をしていたが、従来矯味剤としても配合されているグリチルリチン酸二カリウム(比較例1)を配合したうがい薬は、使用感が悪いとする結果となった。
(A)矯味剤(サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム)を配合しないうがい薬(比較例2)は、使用感が著しく悪く、しかも後述する(C)セルロース類や、泡立ち抑制への寄与が期待できる界面活性剤とされる(B)多価アルコール脂肪酸エステルを配合していても、泡立ち抑制に至らなかった。(C)セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース)を配合しないうがい薬(比較例3)は、液垂れが著しく生じ、また泡立ち抑制効果も低いとする結果となった。(B)多価アルコール脂肪酸エステル(グリセリン脂肪酸エステル)を配合しないうがい薬(比較例4)は、泡立ち抑制効果が低いとする結果となった。更に、(C)セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース)及び(B)多価アルコール脂肪酸エステル(グリセリン脂肪酸エステル)を配合しないうがい薬(比較例5)も
、泡立ち抑制効果が低い結果となった。
一方、結晶析出抑制に寄与する(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類を配合しないうがい薬(比較例6)は、結晶析出抑制効果が低かった。
また、(A)矯味剤(サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム)、(B)多価アルコール脂肪酸エステル(グリセリン脂肪酸エステル)、(C)セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース)及び(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類をいずれも非配合としたうがい薬(比較例7)は、使用感が悪く、泡立ち、液垂れ及び結晶析出抑制効果が低かった。
なお本処方では、糖類の泡立ち抑制効果及びl-メントールの結晶析出抑制効果を明確とするため、一般的な処方と比べて糖類並びにl-メントールを多めに配合しており、またそのため、この一連の試験に係る評価基準は、後述する同様の試験における評価基準とは異なることがある。
【0033】
[うがい薬原液及びうがい薬の調製(2)]
〈実施例3〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.1gを加熱して溶解後、プロピレングリコール 50gに溶解した。ここに、エタノール 7.5mL、グリセリン脂肪酸エステル
0.1g、セチルピリジニウム塩化物水和物 1.25g及びl-メントール 1gを加えて室温下、撹拌して溶解させ、セチルピリジニウム相とした。
次に、精製水 30gに、サッカリンナトリウム 1g及びヒプロメロース60SH-4000 0.1gを加えて室温下、撹拌して溶解させ、矯味剤相とした。
前記セチルピリジニウム相に前記矯味剤相を加えて、室温下撹拌して溶解させた後、アズレンスルホン酸ナトリウム 0.5g及び適量のpH調節剤を加えて溶解させ、精製水を加えて全量100mLとし、実施例3のうがい薬原液(pH7.5)を得た(表3)。
うがい薬原液 0.4mLを、水 100mLに希釈し、実施例3のうがい薬を得た(表4)。
〈実施例4〉
実施例3のヒプロメロース60SH-4000の配合量を0.12gに変えたほかは実施例3と同様にして、実施例4のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈実施例5〉
実施例3のヒプロメロース60SH-4000をヒプロメロース90SH-4000SRに変え、配合量を0.15gに変えたほかは実施例3と同様にして、実施例5のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈実施例6〉
実施例3のヒプロメロース60SH-4000をヒドロキシエチルセルロースSE-900に変えたほかは実施例3と同様にして、実施例6のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
【0034】
〈比較例8〉
実施例3のヒプロメロース60SH-4000を配合しないほかは実施例3と同様にして、比較例8のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
【0035】
実施例3~6及び比較例8で調製したうがい薬原液の処方を表3に、またうがい薬(希釈後)の処方を表4に、夫々示す。
【0036】
【表3】
【0037】
[試験例5:粘度評価]
実施例3~6及び比較例8のうがい薬原液100mLが入った100mLのビーカーを用意し、室温(20±5℃)下、回転粘度計(VISCOMETER TV-10、東機産業(株))を用いて試験を行った。ローターはM-1ローターを用い、回転速度100rpmで120秒間測定を行った。
なお、粘度が10mPa・s以下であると、うがい薬原液として粘度が低く、これを量り取る際に液垂れを生じやすくなるとが懸念される。
【0038】
また、実施例3~6及び比較例8のうがい薬原液について、前述の[試験例3:液垂れ抑制評価]の手順に従い、うがい薬原液を量り取る時の液垂れ抑制について評価した。
これらの結果をあわせて表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
本処方では、粘稠化剤であるヒドロキシエチルセルロースSE-900、ヒプロメロース60SH-4000及びヒプロメロース90SH-4000SRの配合量を変えた製剤の粘度と液垂れ抑制効果を評価した。
粘稠化剤を配合していない比較例8では、うがい薬原液の粘度が10mPa・s以下となり、また原液を量り取る際に液垂れし、使用しにくいとする結果となった。それに対して、粘稠化剤を0.10%~0.15%配合した実施例3~6のうがい薬原液では、使用した粘稠化剤の種類やグレードによらず粘度が15mPa・s以上となり、液垂れせずに量り取れた。
【0041】
[うがい薬原液及びうがい薬の調製(3)]
〈実施例7〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ニッコールHCO-40) 0.5gを加熱して溶解後、プロピレングリコール 55gに溶解した。ここに、エタノール 7.5mL、グリセリン脂肪酸エステル 0.1g、セチルピリジニウム塩化物水和物 1.25g及びl-メントール 1gを加えて室温下、撹拌して溶解させ、セチルピリジニウム相とした。
次に、精製水 30gに、サッカリンナトリウム 1g及びヒプロメロース(メトロー
ズ90SH-4000SR) 0.5gを加えて室温下、撹拌して溶解させ、矯味剤相とした。
前記セチルピリジニウム相に前記矯味剤相を加えて、室温下撹拌して溶解させた後、アズレンスルホン酸ナトリウム 0.5gを加えて溶解させ、精製水を加えて全量100mLとし、実施例7のうがい薬原液を得た(表5)。
うがい薬原液 0.4mLを、水 100mLに希釈し、実施例7のうがい薬を得た(表6)。
〈実施例8〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ニッコールHCO-40)を、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(ニッコールHCO-50)に変えたほかは、実施例7と同様にして実施例8のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈実施例9〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ニッコールHCO-40)を、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(ニッコールHCO-60)に変えたほかは、実施例7と同様にして実施例9のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈実施例10〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ニッコールHCO-40)を、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100(ニッコールHCO-100)に変えたほかは、実施例7と同様にして実施例10のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
【0042】
〈比較例9〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ニッコールHCO-40)を、ポリラウリン酸デカグリセリル(ニッコールDecaglyn 1-L)に変えたほかは、実施例7と同様にして比較例Aのうがい薬原液を得た(表A)。
うがい薬原液 0.4mLを、水 100mLに希釈し、比較例Aのうがい薬を得た(表B)。
〈比較例10〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ニッコールHCO-40)を、ポリソルベート20(ニッコールTL-10)に変えたほかは、実施例7と同様にして比較例10のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例11〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ニッコールHCO-40)を、ポリソルベート40(ニッコールTP-10EX)に変えたほかは、実施例7と同様にして比較例11のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例12〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ニッコールHCO-40)を、ポリソルベート60(ニッコールTS-10MV)に変えたほかは、実施例7と同様にして比較例12のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例13〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ニッコールHCO-40)を、ポリソルベート80(ニッコールTO-10MV)に変えたほかは、実施例7と同様にして比較例13のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例14〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ニッコールHCO-40)を、ラウロマクロゴール(ニッコールBL-21)に変えたほかは、実施例7と同様にして比較例14のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例15〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ニッコールHCO-40)を、ラウロマクロゴール(ニッコールBL-25)に変えたほかは、実施例7と同様にして比較例15のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例16〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ニッコールHCO-40)を、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(ニッコールBO-20V)に変えたほかは、実施例7と同様にして比較例16のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例17〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ニッコールHCO-40)を、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(ニッコールBO-50V)に変えたほかは、実施例7と同様にして比較例17のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
【0043】
実施例7~10及び比較例9~17で調製したうがい薬原液の処方を表5に、またうがい薬(希釈後)の処方を表6に、夫々示す。
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
[試験例6:アズレンスルホン酸ナトリウム添加前のうがい薬原液の外観評価]
アズレンスルホン酸ナトリウムを添加すると濃紺色となり、うがい薬原液の外観(濁り等)が評価できないため、アズレンスルホン酸ナトリウム添加前にうがい薬原液の外観を
評価した。
実施例7~10及び比較例9~17のうがい薬原液の外観を、アズレンスルホン酸ナトリウム添加前に、下記基準により目視にて評価を行った。得られた結果を表7に示す。
<アズレンスルホン酸ナトリウム添加前のうがい薬原液の外観 評価基準>
〇:澄明である
△:わずかに濁りがある
×:濁りがある
【0047】
[試験例7:うがい薬(希釈後)の使用感(甘味)]
実施例7~10及び比較例9~17のうがい薬(希釈後)を適量口に含み、使用感(甘味)を、官能試験で下記基準により評価を行った。得られた結果を表7に示す。
<うがい薬(希釈後)の使用感(甘味) 評価基準>
〇:甘味があり、うがいしやすい
△:やや甘味があるが、うがいしにくい
×:甘味がなく、うがいに困難を感じる
【0048】
[試験例8:うがい薬原液の滴下(希釈操作時)における結晶析出評価]
50mLビーカーに水道水50mLを入れ、そこに実施例7~10及び比較例9~17のうがい薬原液を適量滴下した。滴下して5分間放置後、結晶析出の有無を目視にて確認し、下記基準により評価した。得られた結果を表7に示す。
<うがい薬原液の滴下(希釈操作時)の結晶析出 評価基準>
〇:結晶析出しない
×:結晶析出した
【0049】
[試験例9:うがい薬(希釈後)の液の濁度評価]
実施例7~10及び比較例9~17のうがい薬を調製後、紫外可視分光光度計(UV-1600、(株)島津製作所)を用いて、波長660nmの濁度(OD660)を測定し、下記評価基準にて評価した。得られた結果を表7に示す。なお濁りが生じると結晶析出しやすいため、濁度測定は結晶析出の一つの指標といえる。
<うがい薬(希釈後)の液の濁度(濁度:OD660) 評価基準>
〇:0.035以下
△:0.035~0.044
×:0.045以上
【0050】
[試験例10:うがい薬(希釈後)の低温下における結晶析出評価]
実施例7~10及び比較例9~17のうがい薬を、一夜5℃で保存し、目視にて結晶析出の有無を確認し、結晶析出の抑制について下記基準により評価した。得られた結果を表7に示す。
<うがい薬(希釈後)低温(5℃)下の結晶析出 評価基準>
〇:結晶析出せず、液が澄明である。
△:結晶析出しないが、液が濁る。
×:結晶析出する。
【0051】
[試験例11:うがい薬(希釈後)の泡立ち抑制評価]
JISの泡立ち試験を参照(JIS K3362-2008 8.5起泡力及び泡の安定度、ロス・マイルス法参照)し、以下の手順にて実施例7~10及び比較例9~17のうがい薬の泡立ち試験を行った。
50mLビュレットに各うがい薬(検体)約50mLを入れ、更に、100mLメスシリンダーに前記検体約20mLを加え、ビュレットの先端(コック側)からメスシリンダー中の検液の液面まで約45cmとなるようにビュレットを設置した。
ビュレットのコックを全開にし、全量をメスシリンダーに加え、直ちに生じた泡の高さを測定し、下記基準により泡立ち抑制について評価し、得られた結果を表7に示す。
<うがい薬(希釈後)泡立ち抑制 評価基準>
〇:0~10cm
△:10.5~12.5cm
×:13.0cm以上
【0052】
【表7】
【0053】
本処方では、うがい薬原液中の室温における結晶析出(原液の外観)、またうがい薬原液の滴下(希釈操作時)の結晶析出及びうがい薬(希釈後)の液の濁度並びに低温(5℃)下における結晶析出を抑制する目的で、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類の代わりに
可溶化剤として知られている界面活性剤を種々変更して配合した場合の効果を評価した。またうがい薬の使用感(希釈後の甘味)や(希釈後の)泡立ち抑制についても評価した。
本発明の(D)成分であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類は、希釈操作時の結晶析出抑制効果(原液の滴下)及びうがい薬(希釈後)の使用感(甘味)が多少低下するグレードがあるものの、原液の外観、結晶析出抑制効果(液の濁度、低温下における結晶析出)及び泡立ち抑制効果は良好であり、すべての評価において概ね満足できる結果となった。(実施例7~10)
可溶化剤としてラウリン酸デカグリセリルを用いた場合、うがい薬原液の滴下(希釈操作時)において結晶析出が確認され、また原液の外観に濁りが生じ、うがい薬(希釈後)の使用感(甘味)及び泡立ち抑制効果についても低下する傾向がみられた。(比較例9)
またポリソルベート類は、全てのグレードでうがい薬原液の滴下(希釈操作時)において結晶析出が認められ、また原液の外観、うがい薬(希釈後)の使用感(甘味)、泡立ち抑制効果において低下するグレードが認められた。(比較例10~13)
ラウロマクロゴール類は、全てのグレードでうがい薬(希釈後)の低温下の保存において結晶析出があり、また泡立ち抑制効果が低く、うがい薬(希釈後)の使用感(甘味)やうがい薬原液の滴下(希釈操作時)の結晶析出評価にもやや劣る結果となった。(比較例14及び15)
ポリオキシエチレンオレイルエーテル類は、使用感が悪いグレードや、うがい薬(希釈後)の低温下の保存において結晶析出が認められるグレードがあった。(比較例16及び17)
以上の結果から、うがい薬(希釈後)の使用感(甘味)及び泡立ち抑制効果を損なうことなく、うがい薬原液中の室温における結晶析出(原液の外観)、うがい薬原液の滴下(希釈操作時)の室温における結晶析出抑制(目視)及びうがい薬(希釈後)の液の濁度評価による結晶析出抑制、並びに低温下(5℃)における結晶析出抑制(目視)を満足できる可溶化剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類が良好であることがわかった。
【0054】
[うがい薬原液及びうがい薬の調製(4)]
〈実施例11〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.5gを加熱して溶解後、プロピレングリコール 55gに溶解した。ここに、エタノール 7.5mL、グリセリン脂肪酸エステル
0.1g、セチルピリジニウム塩化物水和物 1.25g及びl-メントール 1gを加えて室温下、撹拌して溶解させ、セチルピリジニウム相とした。
次に、精製水 30gに、サッカリンナトリウム 1g及びヒプロメロース90SH-4000SR 0.15gを加えて室温下、撹拌して溶解させ、矯味剤相とした。
前記セチルピリジニウム相に前記矯味剤相を加えて、室温下撹拌して溶解させた後、アズレンスルホン酸ナトリウム 0.5g及び適量のpH調節剤を加えて溶解させ、精製水を加えて全量100mLとし、実施例11のうがい薬原液(pH7.5)を得た(表8)。
うがい薬原液 0.4mLを、水 100mLに希釈し、実施例11のうがい薬を得た(表9)。
【0055】
〈比較例18〉
グリセリン脂肪酸エステルの配合量を0.05g及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60の配合量を0.10gに変え、セチルピリジニウム相にポリソルベート80を0.30g配合したほかは実施例11と同様にして、比較例18のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例19〉
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60の配合量を0.10gに変え、セチルピリジニウム相にポリソルベート80を0.30g配合したほかは実施例11と同様にして、比較例19のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例20〉
セチルピリジニウム相にポリソルベート80を0.05g配合したほかは実施例11と同様にして、比較例20のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例21〉
セチルピリジニウム相にポリソルベート80を0.10g配合したほかは実施例11と同様にして、比較例21のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
〈比較例22〉
セチルピリジニウム相にポリソルベート80を0.30g配合したほかは実施例11と同様にして、比較例22のうがい薬原液及びうがい薬を得た。
【0056】
実施例11及び比較例18~22で調製したうがい薬原液の処方を表8に、またうがい薬(希釈後)の処方を表9に、夫々示す。
【0057】
【表8】
【0058】
[試験例12:原液の希釈操作時の結晶析出評価]
50mLビーカーに水道水50mLを入れ、そこに実施例11及び比較例18~22のうがい薬原液を適量滴下した。滴下して5分間放置後、結晶析出の有無を目視にて確認し、下記基準により評価した。
<原液の希釈操作時の結晶析出 評価基準>
〇:結晶析出しない
×:結晶析出した
【0059】
[試験例13:希釈時の濁り評価]
実施例11及び比較例18~22のうがい薬を調製後、紫外可視分光光度計(UV-1600、(株)島津製作所)を用いて、波長660nmで濁度(OD660)を測定し、下記評価基準にて評価した。
<希釈時の濁り(濁度:OD660) 評価基準>
〇:0.020以下
△:0.020~0.025
×:0.026以上
【0060】
[試験例14:低温保存時(5℃)の結晶析出評価]
実施例11及び比較例18~22のうがい薬(希釈後)を使用し、これを5℃にて7日間保存した後、結晶析出の有無を目視にて確認し、下記基準により評価した。
<低温保存時の結晶析出評価基準>
〇:結晶析出しない
×:結晶析出した
【0061】
また、実施例11及び比較例18~22のうがい薬について、前述の[試験例1:使用感(矯味)]及び[試験例2:泡立ち抑制評価]の手順に従い、うがい薬の使用感(矯味)及び泡立ち抑制について評価した。
これらの結果をあわせて表9に示す。
【0062】
【表9】
【0063】
表8及び表9に示すように、うがい薬原液においてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60の配合量を0.1%とし、代わりにポリソルベート80を0.30%配合した場合は、グリセリン脂肪酸エステルの配合量を変えても、使用感(矯味)、希釈時の結晶析出、低温保存時の結晶析出及び泡立ちを抑制することは困難であった(比較例18及び19)。
またうがい薬原液においてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を0.5%に増量した場合(ポリソルベート:0.30%配合、比較例22)は、前述の比較例10と比べて希釈時及び低温保存時の結晶析出抑制に改善がみられたが、使用感(矯味)に欠けたままの結果となり、ポリソルベート80の配合量が0.1%以下では、使用感(矯味)は改善するものの、希釈時の濁りが生じた(比較例20及び21)。また、ポリソルベート80を0.05~0.3%の範囲で配合した比較例20~22のいずれも、泡立ち抑制がされなかった。以上の結果より、ポリソルベート80の配合は、特に泡立ち抑制の観点から、少量であっても好ましくないことが確認された。
一方で、グリセリン脂肪酸エステルを0.1%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60
を0.5%配合し、ポリソルベート80を配合しない実施例11は、使用感、希釈時の析出、希釈時の濁り、低温保存時の結晶析出及び泡立ち抑制効果に優れていた。
【0064】
以上の結果から、アズレンスルホン酸及び/又はその塩、セチルピリジニウム及び/又はその塩及びl-メントールを含有するうがい薬において、(A)特定の矯味剤、(B)多価アルコール脂肪酸エステル、(C)セルロース類、(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類の配合により、うがい薬の使用感、泡立ち抑制、液垂れ抑制及び結晶析出抑制のすべてにおいて満足する効果を得られることが確認された。
そして上記(B)~(D)成分を配合し、矯味剤として紹介されている別の化合物を配合した場合にはうがい薬の使用感において満足する結果を得られず、(A)特定の矯味剤を用いない場合には泡立ち抑制効果を全く得られず、(A)特定の矯味剤を用いた場合においても(B)及び(C)成分のいずれか若しくは両方を配合しない場合には満足する泡立ち抑制効果を得ることができない結果となり、(C)成分を未配合とした場合には液垂れ抑制効果を得らない結果となった。そして(D)成分を未配合とした場合は結晶析出抑制効果を得られず、また、界面活性剤であるラウリン酸デカグリセリルやポリソルベート類、ラウロマウロゴール類、ポリオキシエチレンオレイルエーテル類では結晶析出抑制、泡立ち抑制、使用感(矯味・甘み)のすべてを満足する結果を得ることはできない結果となった。