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7654233防音積層体とその製造に用いる遮音膜、および遮音膜シート
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  • -防音積層体とその製造に用いる遮音膜、および遮音膜シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】防音積層体とその製造に用いる遮音膜、および遮音膜シート
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/162 20060101AFI20250325BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20250325BHJP
   B32B 7/02 20190101ALN20250325BHJP
【FI】
G10K11/162
G10K11/168
B32B7/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024011109
(22)【出願日】2024-01-29
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000156042
【氏名又は名称】株式会社麗光
(72)【発明者】
【氏名】相馬 幸良
(72)【発明者】
【氏名】宮地 大介
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099690(JP,A)
【文献】特開2023-099881(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/162
G10K 11/168
B32B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、1層以上の吸音材と、2層以上の遮音膜が形成されている防音積層体であって、
1層以上の吸音材を含む吸音体の両面に遮音膜が形成されている構造を少なくとも有し、
かつ、遮音膜が少なくとも、樹脂、金属粒子、セルロースナノファイバーを含有する遮音膜であることを特徴とする防音積層体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮音膜、遮音膜シート、および、防音積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防音性(音の透過を防ぐ作用)を有する防音材料として、遮音性(音を反射させ透過させない作用)を有する遮音材料や吸音性(音の運動エネルギーを熱エネルギーに変換して減衰させる作用)を有する吸音材料を用いた防音材料が開発されてきている。例えば、遮音材料として、鋼板のような高比重の重量材を用いた遮音シートがあった、また吸音材料として、樹脂中に発泡剤を添加して発泡させたクッション性を有する多孔質吸音材料などがあった。あるいはこれらの遮音材料と吸音材料を組み合わせた防音材料が知られている。これらの防音材料は建築物の壁面や、自動車などの移動体、あるいは電子機器等に用いられている。
【0003】
しかしながら、従来の遮音材料を用いて十分な防音性を得ようとする場合、質量則に従い、重量材を用いなければ十分な防音性が得られないことがあった。また、従来の多孔質吸音材料のみでは十分な防音性を得られないことがあった。特に近年、電気自動車の普及に伴い、エネルギー効率の改善のため、車両の軽量化が求められている。自動車の軽量化に伴い、遮音性を有する鋼板を重量の観点から、より軽量の防音材料に置換するという要望がある。さらには設計自由度の観点から、立体的な形状に追従する柔軟性を備えた防音材料であることが好ましいとされる。
【0004】
そして、特許文献1には、遮音板、制振材等に用いられる、紙、布、不織布、金属箔、樹脂シートのいずれか1種から形成される第1シート部材と、有機バインダーに金属粉末を混合してシート状に形成した第2シート部材(遮音膜)とを一体結合した防音シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7―266488
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の防音シートは、鋼板よりも軽量であり、一定の防音性を発揮するものであったが、第2シート部材(遮音膜)を軽量化のため、より薄膜とする場合には、従来の圧延等によりシート化する方法では均一な厚さとすることが困難であった。また、有機バインダーに金属粒子のみを混合して圧延する場合、金属粒子が局在する場合があった。他に、遮音膜を薄膜化するための方法としては、希釈溶剤を加えて塗布法により、遮音膜を形成する方法がある。しかし、塗布法であっても、金属粒子が樹脂中で沈殿し、遮音膜中に金属粒子が均一に分散されない欠点、均一な厚さで形成することができない欠点、あるいは、遮音膜中に金属粒子が存在しない状態で形成される場合があるという欠点があった。そのため、得られた遮音膜は、防音性を測定する箇所によって防音性にバラツキが生じ、常に所望の防音性を発揮するものとならない欠点があった。本発明は、薄膜でかつ、防音性を測定する箇所によって防音性にバラツキが生じず、常に所望の防音性を発揮する防音膜、及びそれを使用した防音積層体、並びに防音積層体の製造に適した遮音膜シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の各態様からなる。すなわち、
(項1)
少なくとも、樹脂、金属粒子、セルロースナノファイバーを含有することを特徴とする遮音膜
【0008】
項1に記載の遮音膜を用いることで、遮音膜中にセルロースナノファイバーを含有することにより、金属粒子が遮音膜中に均一に安定して分散し、遮音性を遮音膜にバラツキなく付与することができ、さらにロールトゥロール方式での連続加工が可能となる。したがって、本発明の遮音膜は生産性に優れる。本発明の遮音膜を用いることで、後述する本発明の防音積層体に、遮音膜による遮音性を容易に付与することができ、吸音体の吸音性と相まって、防音積層体の防音性をより向上させることができる。
【0009】
(項2)
少なくとも、1層以上の吸音材と、2層以上の遮音膜が形成されている防音積層体であって、1層以上の吸音材を含む吸音体の両面に遮音膜が形成されている構造を少なくとも有し、かつ、遮音膜が項1に記載の遮音膜であることを特徴とする防音積層体
【0010】
項2に記載の防音積層体を用いることで、吸音材に優れた遮音性を付与することができ、防音積層体の防音性を向上させることができる。
【0011】
(項3)
基材上に、少なくとも、項1に記載の遮音膜が形成された遮音膜シート
【0012】
項3に記載の遮音膜シートを用いることによって、上記本発明の遮音膜を吸音体上に容易に形成することが可能となる。したがって、本発明の遮音膜シートを用いることで、本発明の防音積層体を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の遮音膜は、少なくとも、樹脂、金属粒子、セルロースナノファイバーを含有することを特徴としている為、後述する基材に塗布する場合に、金属粒子が樹脂中で沈殿せず、遮音膜中に金属粒子が均一に分散され、かつ均一な厚さで形成することができる。そのため、得られた遮音膜は、薄膜でかつ、測定する箇所によって防音性にバラツキが生じず、常に所望の遮音性を発揮する遮音膜となり、本発明の遮音膜を使用した防音積層体も、常に所望の防音性を発揮するものとなる。そして、本発明の遮音膜シートを使用することで、本発明の防音積層体を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】基材上に、遮音膜が形成されている本発明の遮音膜シートの一形態の断面構造の模式図である。
図2】吸音体(吸音材1層)の対向する2つの面(両面)に遮音膜シート(基材/遮音膜)が形成されている本発明の防音積層体の一形態の断面構造の模式図である。
図3】吸音体(吸音材1層)の対向する2つの面(両面)に遮音膜が形成されている本発明の防音積層体の一形態の断面構造の模式図である
図4】複数の吸音体(それぞれは吸音材1層)と複数の遮音膜が形成されている本発明の防音積層体の一形態の断面構造の模式図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
(防音積層体)
本発明の防音積層体は、少なくとも、後述する吸音体表面の対向する2つの面(両面)に、後述する遮音膜が形成されている。このような構成を有する積層体とすることにより、2つの遮音膜に挟まれた吸音体内に効率よく、吸音させることができ、優れた防音効果を得ることができる。なお、以下では、後述する接着層を省略し、防音積層体を模式的に、「遮音膜/吸音体/遮音膜」のように記載する場合がある。
【0016】
そして、本発明の遮音膜と吸音体とを接着させる方法は、本発明の遮音膜と吸音体とを接着させることができる方法であれば特に限定しないが、本発明の遮音膜と吸音体とを接着層を介して接着させる方法が、容易に接着することができ好ましい。
また、遮音膜と吸音体とを熱圧着する等の方法により、接着層を介さずに、遮音膜と吸音体とが接着されてもよい。
【0017】
本発明の防音積層体は少なくとも、吸音体の第1の面に第1の遮音膜が形成され、かつ、吸音体の第1の面と対向する、第2の面に第2の遮音膜が形成されている。すなわち、吸音体の両面に遮音膜が形成されている。本発明の防音積層体は例えば、下記に例示される構成を取ることができる。
・遮音膜/吸音体(吸音材)/遮音膜
・基材/遮音膜/吸音体(吸音材)/遮音膜/基材
・遮音膜/接着層/吸音体(吸音材)/接着層/遮音膜
・遮音膜/吸音体(吸音材/吸音材)/遮音膜
・遮音膜/吸音体(吸音材/接着層/吸音材)/遮音膜
・遮音膜/吸音体(吸音材)/遮音膜/吸音材(吸音材)
・遮音膜/吸音体(吸音材)/遮音膜/吸音材(吸音材)/遮音膜
上記の例示構成の中でも、本発明の防音積層体が優れた防音性を備えるためには、少なくとも、吸音体の第1の面及び、第1の面と対向する第2の面、すなわち両面に本発明の遮音膜が形成されている構成が、好ましい。各遮音膜および、吸音材並びに吸音体はそれぞれ同一の材料であってもよく、また、異なる材料であってもよく、さらにこれらに加え、遮音膜の組成、遮音膜の厚さ、吸音材の数、若しくは吸音材の種類、又はそれらの組み合わせを変化させることにより、特定の周波数(例えば1000Hz以下の音)の防音性を向上させることができる。
【0018】
(接着層)
接着層は、本発明の遮音膜を吸音材と接着させるために、本発明の遮音膜と吸音材との間に形成する層である。接着層は、従来公知の樹脂からなる接着層であってもよい。接着層に使用する樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂(ナイロン系)、アクリル系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、及び塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。接着層を樹脂からなる接着層とする場合、該遮音膜側若しくは吸音材側の一方又は双方の上に形成されてよい。あるいは、接着層として上記樹脂が不織布等に予め吹き付けてある接着芯を用いてもよい。
【0019】
(機能層)
また、本発明の防音積層体は、印刷層、金属蒸着層、意匠層、保護層等の任意の機能を有する層(機能層)が本発明の目的に合致する範囲で1層以上形成されていてもよい。
機能層に使用する材料、機能層の厚さ、及び機能層を形成する位置は、本発明の目的に合致する範囲で適宜選択すればよい。
【0020】
(遮音膜)
本発明の遮音膜は、少なくとも、樹脂、金属粒子、セルロースナノファイバーからなる。さらに分散剤、粘度調整剤、安定化剤、染料、顔料などの公知の添加剤を本発明の効果を阻害しない範囲で添加することができる。遮音膜の厚さは5μm~100μmが好ましく、20μm~80μmがより好ましい。本発明の遮音膜の厚さが、5μmより薄い場合、十分な遮音性が得られない虞がある。本発明の遮音膜の厚さが100μmより厚い場合、本発明の遮音膜中に金属粒子が均一に分散されない虞がある。
【0021】
(樹脂)
本発明の遮音膜に用いられる樹脂は、金属粒子を保持するためのバインダーとなるものであり、薄膜状に加工可能な従来公知の各種の樹脂を用いることができる。本発明の効果を得るためには、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などのような熱可塑性樹脂が好適であり、柔軟性の観点からウレタン系樹脂が特に好適である。
【0022】
(金属粒子)
本発明の遮音膜に用いられる金属粒子の形状は球状、フレーク状、不定形状等、任意の形状であってよい。金属粒子の粒径は1μm~50μmであってよく、2μm~40μmであってもよい。金属粒子の粒径が1μmより小さい場合、金属粒子が高価となり、本発明の遮音膜を製造するのにコストがかかりすぎる虞がある。金属粒子の粒径が50μmより大きい場合、本発明の遮音膜を製造する際に、金属粒子が十分に分散しない虞がある。
本発明の遮音膜に用いる金属粒子に用いることができる材料は、従来公知の、アルミニウム、鉄、鉛、タングステン、銅、銀、ケイ素等の金属、若しくは、酸化ケイ素、酸化鉄、炭化ケイ素等の、金属化合物、またはそれらの混合物(例えばステンレス鋼)の粒子を使用することができる。特に、密度の大きい金属を用いることで、本発明の遮音膜の遮音性を良好にすることができる。本発明の金属粒子としては、鉄、鉛、タングステン、銅、または、銀からなる金属粒子が好適であり、コストや取り扱い性の観点から、鉄またはタングステンからなる金属粒子が特に好適である。金属粒子の量は、樹脂100質量部に対し100質量部~2000質量部が好ましく、500質量部~1500質量部がより好ましい。100質量部以下であると2000Hz以下の周波数の防音性が弱くなる虞がある。2000質量部以上であると膜の柔軟性が損なわれ、脆い膜となる虞がある。
【0023】
(セルロースナノファイバー)
本発明の遮音膜に用いられるセルロースナノファイバーは、金属粒子を遮音膜中に均一に分散させるための分散剤となる。セルロースナノファイバーを含有させることで、金属粒子を均一かつ安定して、遮音膜中に分散させることができる。そのため、得られた遮音膜は、薄膜でかつ、測定する箇所によって防音性にバラツキが生じず、常に所望の遮音性を発揮する遮音膜となる。さらに、本発明の遮音膜をロールトゥロール方式で連続的に製造することができる。本発明の遮音膜に用いられるセルロースナノファイバーとしては、従来公知のセルロースナノファイバーを用いることができる。特に、分散性の観点から、リグニンを含有したリグノセルロースナノファイバーが好適である。セルロースナノファイバーの繊維幅は3~200nm程度、繊維長は100μm以下程度の一般的なセルロースナノファイバーを使用することができる。セルロースナノファイバーの量は樹脂100質量部に対し10質量部~40質量部が好ましく、20質量部~30質量部がより好ましい。10質量部以下であると、金属粒子の量や、粒径等によっては、金属粒子が十分に分散しない虞がある。40質量部以上であると膜の柔軟性が損なわれ、脆い膜となる虞がある
【0024】
(組成物)
本発明における組成物は前記の、少なくとも樹脂、金属粒子、セルロースナノファイバーに従来公知の溶剤を加え、塗布法に適した状態としたものである。組成物を塗布法などにより、薄膜状に形成して、乾燥させると、本発明の遮音膜となる。上記のように、組成物を塗布法による遮音膜の製造に用いることで、金属粒子を遮音膜中に均一かつ、安定して分散させることができる。従って、本発明の遮音膜および、防音積層体の防音性を均一なものとすることができ、かつ生産性良く製造することができる。
【0025】
(遮音膜の形成)
本発明の遮音膜を薄膜状に形成するためには、後述する基材上に、前述の組成物を塗布する方法(塗布法)が挙げられる、塗布法を用いることで、本発明の遮音膜を薄膜状に容易に形成することができる。塗布方法としては、例えば、ダイコート法、グラビアコート法、リバースコート法、といった従来公知の塗布方法を使用することができる。また、塗布方式は、バッチ方式でもよく、ロールトゥロール方式でもよいが、特にロールトゥロール方式が、連続的に遮音膜を製造することができ、生産性に優れ、好ましい。
【0026】
(吸音体)
本発明の防音積層体に使用する吸音体は、吸音性を発揮するものであればよい。本発明の吸音体は吸音材を1層以上含み、2層以上の吸音材である場合、異種又は同種の吸音材を、例えば、接着層を介して接着、熱圧着により接着、又は単に重ね合わせる方法などで積層されたものである。吸音材は例えば、チップクッション、グラスウール、ロックウール、多孔質ウレタン、ポリエステル繊維などの従来公知の吸音材を用いることができる。吸音材及び吸音体の厚さ、材質、及び形状は、本発明の防音積層体を使用する目的に応じて、適宜選択すればよい。
【0027】
(遮音膜シート)
本発明の遮音膜シートは、少なくとも、基材上に本発明の遮音膜が形成されたものであり、前記吸音材上に、本発明の遮音膜シートを積層することにより、本発明の遮音膜を吸音材上に容易に生産性良く形成させることができる。また、本発明の防音積層体を容易に得るために用いられる。本発明の遮音膜シートは、前述の機能層を本発明の目的に合致する範囲で含んでいてもよい。該機能層が形成された本発明の遮音膜シートを使用すれば、本発明の遮音膜と同時に機能層を吸音材上に形成することができ、機能層を備えた本発明の防音積層体を容易に得ることができる。
後述する基材を、離型性を有しない基材とした場合には、本発明の遮音膜シートを使用して得た本発明の防音積層体には、図2のように、吸音体上に遮音膜と共に基材が形成される。また、後述する基材を、離型性を有する基材とした場合には、本発明の遮音膜シートを使用して得た本発明の防音積層体は、遮音膜シートから基材を取り除くことで、図3のように、吸音体上に遮音膜のみが形成される。
【0028】
(基材)
本発明の遮音膜シートで使用する基材は、前記組成物を塗布することができるものであればよく、プラスチックフイルム、不織布、紙などの従来公知のものを用いることができるが、プラスチックフイルムが加工性の観点から好ましい。基材の厚さ、材料などは目的に応じて適宜選択すればよい。前記の通り、基材を、離型性を有する基材とした場合、本発明の遮音膜シートを吸音体上に形成後に、基材を取り除くことで、遮音膜を吸音体上に転写することができる。このとき、前記の任意の機能層を同時に転写することができる。遮音膜シートから遮音膜を吸音体上に転写することで、本発明の防音積層体は基材を含まず、より軽量とすることができる。離型性を有する基材として、シリコン系樹脂層、フッ素系樹脂層、ワックス層、メラミン系樹脂層等の離型性を有する離型層が形成された基材であってもかまわない。この場合、該離型層は、本発明の遮音膜を吸音体上に転写し形成する際に基材とともに取り除かれ、吸音体上には形成されない。
【実施例
【0029】
以下に、実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
(遮音膜を得るための組成物の作成)
(組成物A)
樹脂としてポリウレタン系樹脂を使用し、樹脂100質量部に対し、金属粒子としてメジアン径が4~8μmである鉄(Fe)粒子を1000質量部、セルロースナノファイバーとしてリグノセルロースナノファイバー(アスペクト比 525、繊維長45μm)を30質量部、さらに希釈溶剤と安定化剤を加え、本発明の遮音膜を得るための組成物Aを得た。
【0031】
(組成物B~G)
組成物Aのセルロースナノファイバーのアスペクト比、繊維長並びに量、及び金属粒子の素材並びに量を表1に記載の通りとした以外は組成物Aと同様にして、組成物B~Gを得た。なお組成物Fに用いたタングステン(W)粒子はメジアン径が2~9μmのものを使用した。
【表1】
【0032】
(遮音膜シートの作成)
(実施例1~8・ 比較例1)
基材として厚さ50μm、幅1100mmのポリエチレンテレフタレートフイルムに厚さ1μmのメラミン系樹脂からなる離型層を形成したフイルムを使用し、離型層上に、ロールトゥロール方式のダイコート法を用いて連続的に組成物Aを塗布し、乾燥させ、厚さ50μmの本発明の遮音膜を形成し、実施例1の本発明の遮音膜シートを得た。また、実施例1の遮音膜の厚さを表2に記載の通りに代えてこと以外は実施例1と同様にして遮音膜を形成した実施例2及び3の本発明の遮音膜シートを得た。また、組成物Aに代えて、組成物B~Gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして遮音膜を形成した本発明の実施例4~8、及び比較例1の遮音膜シートをそれぞれ得た。尚、比較例1の遮音膜シートは、鉄粒子が組成物中で沈殿してしまい、遮音膜中に鉄粒子が存在しないポリウレタン系樹脂のみからなる遮音膜が形成されていた。なお、比較例1の遮音膜シートを用いた防音積層体の作成、および評価は行わなかった。
【0033】
(防音積層体の作成)
前記各実施例で得た遮音膜シートを用いて、下記の手順で本発明の防音積層体を得た。まず、ナイロン系樹脂からなる両面接着芯(接着層)を、遮音膜シートの遮音膜と、吸音材である厚さ10mmのチップクッションとの間に配置し、熱圧着することで、吸音材上に遮音膜シートを形成した。その後、遮音膜シートの基材を取り除いた。さらに吸音材の他方の面にも同様に遮音膜を形成し、遮音膜/接着層/吸音材/接着層/遮音膜という層構成からなる実施例1~8の本発明の防音積層体を得た。さらに実施例1-2として、前記実施例1の一方の遮音膜の、吸音材が形成されていない面と、第2の吸音材である、前記と同じ、厚さ10mmのチップクッションとの間にナイロン系樹脂からなる両面接着芯を配置し、熱圧着した。さらに、該第2の吸音材の遮音膜が形成されていない面に、実施例1と同様に遮音膜を形成し、遮音膜/吸音材/遮音膜/(第2の)吸音材/遮音膜という積層構成を有する実施例1-2の本発明の防音積層体を得た。
【0034】
(防音性の評価-透過損失)
上記で得た、実施例1~8、1-2の防音積層体について、直径102mm音響管(日本音響エンジニアリング株式会社製WinZac MTX)を用い、16 マイクロホン法にて垂直入射音響透過損失を測定し、防音性を評価した。さらに比較例2として、厚さ0.8mmの鉄板のみからなる遮音材を使用した。比較例3として、厚さ10mmのチップクッションのみからなる吸音材を使用した。
防音性の評価は以下のように行った。各実施例及び各比較例の結果は表2に示されるとおりであった。なお、表2の測定結果は、各実施例1~8及び1―2の防音積層体については、遮音膜シートの長さ方向の加工終了部の、幅方向の中央部を使用したものある。
(防音性の評価基準)
500Hz、1000Hz、2000Hz及び4000Hzの周波数における透過損失が、
〇:いずれの周波数でも10dB以上である。
△:いずれかの周波数で10dB以上である。
×:いずれの周波数でも10dB未満である。
【0035】
(重量の評価-面密度)
上記で得た、実施例1~8、1-2の防音積層体、比較例2の遮音材、及び比較例3の吸音材について、Φ102mmの円形に切り出したサンプルの重量を測定し、面密度(kg/m2)を算出した。結果は表2に示されるとおりであった。
【0036】
(加工適性の評価)
組成物A~Fを使用し、ロールトゥロール方式で連続的に塗布することで、それぞれ塗布幅1050mm(基材1100mm)、長さ50mの実施例1~8の遮音膜シートを得ることができた。長さ方向、幅方向いずれについても金属粒子(鉄粒子、またはタングステン粒子)が遮音膜中に均一に分散された本発明の遮音膜が形成されていた。また、前記の通り、組成物Gを用いた比較例1の遮音膜シートは、金属粒子が組成物中で沈殿してしまい、遮音膜中に鉄粒子が存在しないポリウレタン樹脂のみからなる遮音膜が形成され、所望の防音性が明らかに得られなかった。
【表2】
【0037】
表2に示される通り、本発明の防音積層体は、比較例2の遮音材に対して、面密度が低い、すなわち軽量であった。さらに、比較例3の吸音材単体と比べて、より大きな透過損失を得ることができた、すなわち、より優れた防音性を発揮した。本発明の遮音膜を製造するための組成物A~Fは、セルロースナノファイバーを含有することで、金属粒子が均一かつ安定して分散していた。そのため、ロールトゥロール方式により連続して塗布を行った場合であっても、金属粒子が均一に分散した本発明の遮音膜を連続的に得ることができた。従って、本発明の遮音膜シートは生産性に優れる。さらに、本発明の防音積層体の製造に、本発明の遮音膜シートを使用することで本発明の防音積層体を容易に得ることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 基材
2 遮音膜
3 接着層
4 吸音体(吸音材1層)
10 遮音膜シート
11 防音積層体
【要約】      (修正有)
【課題】薄膜でかつ、防音性を測定する箇所によって防音性にバラツキが生じず、常に所望の防音性を発揮する遮音膜及びそれを使用した防音積層体並びに防音積層体の製造に適した遮音膜シートを提供する。
【解決手段】防音積層体11は、少なくとも、樹脂、金属粒子及びセルロースナノファイバーを含有することを特徴とする遮音膜2と、吸音体4と、を含み、吸音体4の両面に遮音膜2が形成されている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4