(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】トリガー式噴出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20250325BHJP
B05B 11/00 20230101ALI20250325BHJP
【FI】
B65D47/34 200
B05B11/00 102B
B05B11/00 102E
(21)【出願番号】P 2021161886
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2024-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏太郎
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-091145(JP,A)
【文献】特開2005-066497(JP,A)
【文献】登録実用新案第3142863(JP,U)
【文献】米国特許第05988530(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴出口を有するノズルを有し、容器本体の口部に取り付けられた状態で牽曵操作によるトリガーの作動によって前記容器本体内の内容物を前記噴出口から噴射可能なトリガー式噴出器であって、
前記口部の中心軸線に沿う方向を上下方向とし、前記上下方向と前記トリガーの作動方向に垂直な方向を左右方向としたときに、前記ノズルが、前記噴出口の向きを前記左右方向に垂直な面内で変更するために変形可能
であり、
前記ノズルが、ノズル基部と、前記噴出口を有するノズル先端部と、前記ノズル基部と前記ノズル先端部とを連ねる可撓性チューブと、を有し、
前記トリガー噴出容器が、前記ノズル先端部に連なる被案内部を前記左右方向に垂直な面内で移動可能に案内する案内部を有し、
前記案内部が、前記左右方向において前記ノズルの両側に設けられるとともにそれぞれが前記ノズル基部に連なる前記左右方向に垂直な一対の案内板で構成され、
前記一対の案内板はそれぞれ前記左右方向に見て円弧状をなす円弧状端縁を有し、
前記ノズルが前記左右方向に垂直な面内で中立軸線に沿って直線状に延びる中立姿勢をとる時に、前記被案内部が前記一対の案内板のそれぞれの前記円弧状端縁の中央部に当接するトリガー式噴出器。
【請求項2】
前記案内部が、前記被案内部を前記左右方向に垂直な面内の複数位置のそれぞれにおいて凹凸形状を介した係合によって保持する、請求項
1に記載のトリガー式噴出器。
【請求項3】
前記左右方向と前記中立軸線に沿う方向に垂直な方向を傾倒方向としたときに、一方の前記案内板が、前記傾倒方向に並ぶ複数の傾倒方向上側リブと前記傾倒方向に並ぶ複数の傾倒方向下側リブとを有し、前記被案内部が、前記複数の傾倒方向上側リブのそれぞれと前記複数の傾倒方向下側リブのそれぞれとに選択的に係合可能な係合突起を有する、請求項
1又は2に記載のトリガー式噴出器。
【請求項4】
前記左右方向と前記中立軸線に沿う方向に垂直な方向を傾倒方向としたときに、一方の前記案内板の前記円弧状端縁が、前記傾倒方向に並ぶ複数の傾倒方向上側凸部と前記傾倒方向に並ぶ複数の傾倒方向下側凸部とを有し、前記被案内部が、前記複数の傾倒方向上側凸部のそれぞれと前記複数の傾倒方向下側凸部のそれぞれとに選択的に係合可能である、請求項
1又は2に記載のトリガー式噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトリガー式噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体の口部に取り付けられた状態で牽曵操作によるトリガーの作動によって容器本体内の内容物を噴出口から噴射可能なトリガー式噴出器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
口部の中心軸線に沿う方向を上下方向とし、上下方向とトリガーの作動方向に垂直な方向を左右方向としたときに、左右方向には持ち手の手首を大きく曲げることができる。しかし、左右方向に垂直な面内では、持ち手の手首を大きく曲げることができないので、所望の方向に噴出口を容易に向けることはできなかった。
【0005】
そこで本発明の目的は、左右方向に垂直な面内で所望の方向に噴出口を容易に向けることができるトリガー式噴出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトリガー式噴出器は、噴出口を有するノズルを有し、容器本体の口部に取り付けられた状態で牽曵操作によるトリガーの作動によって前記容器本体内の内容物を前記噴出口から噴射可能なトリガー式噴出器であって、前記口部の中心軸線に沿う方向を上下方向とし、前記上下方向と前記トリガーの作動方向に垂直な方向を左右方向としたときに、前記ノズルが、前記噴出口の向きを前記左右方向に垂直な面内で変更するために変形可能であり、前記ノズルが、ノズル基部と、前記噴出口を有するノズル先端部と、前記ノズル基部と前記ノズル先端部とを連ねる可撓性チューブと、を有し、前記トリガー噴出容器が、前記ノズル先端部に連なる被案内部を前記左右方向に垂直な面内で移動可能に案内する案内部を有し、前記案内部が、前記左右方向において前記ノズルの両側に設けられるとともにそれぞれが前記ノズル基部に連なる前記左右方向に垂直な一対の案内板で構成され、前記一対の案内板はそれぞれ前記左右方向に見て円弧状をなす円弧状端縁を有し、前記ノズルが前記左右方向に垂直な面内で中立軸線に沿って直線状に延びる中立姿勢をとる時に、前記被案内部が前記一対の案内板のそれぞれの前記円弧状端縁の中央部に当接するトリガー式噴出器である。
【0009】
本発明のトリガー式噴出器は、上記構成において、前記案内部が、前記被案内部を前記左右方向に垂直な面内の複数位置のそれぞれにおいて凹凸形状を介した係合によって保持するトリガー式噴出器であるのが好ましい。
【0011】
本発明のトリガー式噴出器は、上記構成において、前記左右方向と前記中立軸線に沿う方向に垂直な方向を傾倒方向としたときに、一方の前記案内板が、前記傾倒方向に並ぶ複数の傾倒方向上側リブと前記傾倒方向に並ぶ複数の傾倒方向下側リブとを有し、前記被案内部が、前記複数の傾倒方向上側リブのそれぞれと前記複数の傾倒方向下側リブのそれぞれとに選択的に係合可能な係合突起を有するトリガー式噴出器であるのが好ましい。
【0012】
本発明のトリガー式噴出器は、上記構成において、前記左右方向と前記中立軸線に沿う方向に垂直な方向を傾倒方向としたときに、一方の前記案内板の前記円弧状端縁が、前記傾倒方向に並ぶ複数の傾倒方向上側凸部と前記傾倒方向に並ぶ複数の傾倒方向下側凸部とを有し、前記被案内部が、前記複数の傾倒方向上側凸部のそれぞれと前記複数の傾倒方向下側凸部のそれぞれとに選択的に係合可能であるのも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、左右方向に垂直な面内で所望の方向に噴出口を容易に向けることができるトリガー式噴出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態のトリガー式噴出器を有する噴出容器を示す一部断面側面図である。
【
図2】
図1に示す噴出ノズルとその周辺部の垂直断面図である。
【
図5】
図2に示す状態から噴出口の向きを上方に変更した時の状態を示す垂直断面図である。
【
図6】
図1に示す噴出容器の使用状態を示す垂直断面図である。
【
図9】
図7に示す状態から噴出口の向きを上方に変更した時の状態を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態においてトリガー式噴出器1(以下、噴出器1ともいう)は、容器本体2の口部2aに取り付けられて噴出容器3を形成する。つまり噴出容器3は噴出器1と容器本体2を有する。噴出器1は、容器本体2の口部2aに取り付けられた状態で牽曵操作によるトリガー4の作動によって容器本体2内の内容物を噴出口5から噴射可能である。
【0017】
容器本体2は、中心軸線Oを中心とする円筒状の口部2aと、口部2aの下端部に連なる胴部2bと、胴部2bの下端部に連なる底部2cと、を有する。なお、口部2aは角筒状など、円筒状以外の筒状をなす構成であってもよい。
【0018】
説明の便宜上、口部2aの中心軸線Oに沿う方向を上下方向ともいい、上下方向に沿って底部2cから口部2aに向かう方向を上方ともいい、その反対方向を下方ともいい、上下方向とトリガー4の作動方向に垂直な方向を左右方向ともいい、上下方向と左右方向に垂直な方向を前後方向ともいう。
【0019】
容器本体2内には液状の内容物が収容され、噴出器1は内容物を霧状にして噴射する。なお噴出器1は液状の内容物を霧状に噴射する構成に限らず、例えば、液状の内容物を泡状又はストレート状に噴射する構成としてもよいし、粉状など、液状以外の内容物を噴射する構成としてもよい。
【0020】
噴出器1は、本体部6、装着キャップ7、トリガー4及び噴出ノズル8を有する。本体部6は、流出口9aを有する接続部9と、内部流路10(
図2参照)と、トリガー4の作動によって容器本体2内の内容物を内部流路10を通じて接続部9の流出口9aに送るポンプ機構11と、を有し、装着キャップ7を口部2aに取り付けることにより、容器本体2に取り付けられる。トリガー4は、左右方向に延びる回動軸線Pを中心に回動可能に本体部6に支持される。つまりトリガー4の作動方向は回動軸線Pを中心とする周方向(
図1に二点鎖線矢印で示す方向)である。なお、トリガー4は本体部6に回動可能に支持される構成に限らず、例えば、本体部6にスライド可能に支持される構成としてもよい。噴出ノズル8は本体部6の接続部9に接続される。
【0021】
図2~
図4に示すように、噴出ノズル8は、ノズル基部12a、可撓性チューブ12b及びノズル先端部12cを有するノズル12と、ノズル先端部12cに連なる被案内部13と、一対の案内板14aで構成される案内部14と、取り付けキャップ15と、を有する。また噴出ノズル8は、ノズル本体部材8a、案内部材8b、被案内部材8c及び噴出口部材8dを組み付けて形成される組み立て体である。ノズル12はノズル本体部材8aと噴出口部材8dからなり、ノズル先端部12cはノズル本体部材8aの先端部と噴出口部材8dからなる。被案内部13は被案内部材8cからなる。案内部材8bは案内部14と取り付けキャップ15からなる。
【0022】
ノズル本体部材8aは、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE:High Density PolyEthylene)や低密度ポリエチレン(LDPE:Low Density Polyethylene、軟質ポリエチレン)などの軟質の樹脂で形成され、弾性を有する。なお、樹脂に代えてエラストマー又はゴムなどで形成してもよい。案内部材8b、被案内部材8c及び噴出口部材8dは例えば樹脂で形成される。
【0023】
ノズル基部12aは本体部6の接続部9に流体的且つ構造的に接続され、可撓性チューブ12bはノズル基部12aとノズル先端部12cとを連ね、ノズル先端部12cは噴出口部材8dによって形成される噴出口5を有し、ノズル12の内部には、接続部9の流出口9aを噴出口5に連通させるノズル流路12dが形成される。噴出口部材8dは、ノズル12の軸心Rを中心とする筒状の周壁16と、周壁16の一端に連なり噴出口5を有する端部壁17とを有し、ノズル本体部材8aの先端面の嵌合穴に周壁16の他端側から嵌め込まれる。噴出口部材8dの内面とノズル本体部材8aの間には、内容物を噴出口5から霧状に噴出させるための溝が設けられる。
【0024】
ノズル12は弾性変形していない自然状態では、左右方向に垂直な面内で前後方向に平行な中立軸線Qに沿って直線状に延びる中立姿勢をとる。つまり、中立姿勢ではノズル12の軸心Rは中立軸線Qに一致する。なお、ノズル12は中立軸線Qが前後方向に平行な構成に限らず、例えば、中立軸線Qが左右方向に垂直な面内で前後方向に対して傾斜する構成としてもよい。
【0025】
なお、接続部9と案内部材8bについて、中立軸線Qに沿って先端に向かう側を先端側ともいい、その反対方向を基端側ともいう。またノズル12と被案内部材8cについて、ノズル12の軸心Rに沿って先端に向かう側を先端側ともいい、その反対方向を基端側ともいう。
【0026】
接続部9は、流路壁9bと、流路壁9bから先端側(前側)に突出し中立軸線Qを中心とする中空柱部9cと、中空柱部9cよりも径方向外側で流路壁9bから先端側に突出し中立軸線Qを中心とする円筒状の外筒部9dと、を有する。流路壁9bは、中空柱部9cと外筒部9dの間に流出口9aを有する。
【0027】
ノズル基部12aは、中空柱部9cの外周面に嵌合する基部筒18と、基部筒18の先端と基端の間の部分から径方向外側に延びるフランジ19と、フランジ19から基端側(後側)に突出し中立軸線Qを中心とする円筒状の筒体20と、を有する。基部筒18の内周面と中空柱部9cの外周面との間には、流出口9aをノズル流路12dに連通させる溝が設けられる。フランジ19の外周縁部は接続部9の外筒部9dの先端面に当接し、筒体20の外周面は外筒部9dの内周面に当接する。
【0028】
取り付けキャップ15は、中立軸線Qを中心とする開口を有する矩形板状の先端壁15aと、先端壁15aの内周縁と外周縁の間の部分から基端側に突出し中立軸線Qを中心とする円筒状の内周壁15bと、先端壁15aの外周縁から基端側に突出し中立軸線Qを中心とする角筒状の外周壁15cと、を有する。取り付けキャップ15は、先端壁15aがフランジ19に被さった状態で内周壁15bの内周面が外筒部9dの外周面に凹凸形状を介した係合によって係止される。また取り付けキャップ15は、先端壁15aの内周縁部が基部筒18の先端部の外周面に凹凸形状を介した係合によって係止されることで、ノズル本体部材8aに組み付けられる。外周壁15cの内周面は、外筒部9dから径方向外側に突出する突起を収容する凹部からなる回り止め部15dを有する。突起が回り止め部15dに当接することで、接続部9に対する取り付けキャップ15の中立軸線Qを中心とする相対回転が規制される。
【0029】
一対の案内板14aは、左右方向においてノズル12の両側に設けられるとともにそれぞれが取り付けキャップ15を介してノズル基部12aに連なり左右方向に垂直である。一方の案内板14aは先端壁15aの左右方向の両端縁の一方に連なり、他方の案内板14aは先端壁15aの左右方向の両端縁の他方に連なる。また一対の案内板14aはそれぞれ、左右方向に見て円弧状をなす円弧状端縁21を有し、ノズル12が中立姿勢をとる時に、ノズル先端部12cに連なる被案内部13が一対の案内板14aのそれぞれの円弧状端縁21の中央部に当接する。それぞれの円弧状端縁21は略半周に亘って延びる。被案内部13は、左右方向に垂直な面内で、可撓性チューブ12bを曲げ変形させながら一対の案内板14aのそれぞれの円弧状端縁21上を摺動可能である。つまり、一対の案内板14a(案内部14)は被案内部13を左右方向に垂直な面内で摺動可能に案内する。
【0030】
被案内部13を構成する被案内部材8cは、ノズル本体部材8aの先端部の外周面に凹凸形状を介した係合によって係止される内周面を有する円筒状の係合筒22と、係合筒22の基端から左右方向の両側に突出する被案内板23と、被案内板23の外周縁から先端側に突出する外壁24と、を有する。ノズル本体部材8aの先端部の外周面は、軸心Rを中心とし、係合筒22の内周面に対応する大きさを有する円柱面状をなす。ノズル本体部材8aの先端部の外周面は、係合筒22が中立軸線Qに沿って先端側に移動するのを規制するように凹凸形状を介した係合によって係合筒22の内周面を係止する。被案内板23は、軸心Rに沿う方向から見て矩形の外形を有し、基端面の左右方向両側端縁において一対の案内板14aの円弧状端縁21に摺動可能に当接する。また被案内板23は、左右方向に見て一対の案内板14aの円弧状端縁21に倣って円弧状に湾曲する湾曲板状をなす。外壁24は被案内板23の外周縁に全周に亘って設けられるとともに係合筒22に連なる。
【0031】
使用者は外壁24を摘まんで被案内部材8cを一対の案内板14aの円弧状端縁21上を傾倒方向上側(
図5参照)に摺動させることにより、可撓性チューブ12bを曲げ変形させながら被案内部材8cとともにノズル12の先端部を移動させて噴出口5の向きを傾倒方向上側に変更することができる。また反対に、被案内部材8cを傾倒方向下側に摺動させることで噴出口5の向きを傾倒方向下側に変更することができる(
図6参照)。
【0032】
なお、左右方向と中立軸線Qに沿う方向に垂直な方向を傾倒方向ともいい、傾倒方向に沿って上側に向かう方向を傾倒方向上側ともいい、その反対側を傾倒方向下側ともいう。
【0033】
図2~
図5に示すように、一対の案内板14a(案内部14)は、被案内部材8c(被案内部13)を左右方向に垂直な面内で複数位置のそれぞれにおいて凹凸形状を介した係合によって保持する。より具体的には、一対の案内板14aは凸リブ群25を有し、被案内板23は一対の係合突起26を有し、一対の案内板14aは、被案内部材8cを左右方向に垂直な面内で複数位置のそれぞれにおいて凸リブ群25と一対の係合突起26との係合によって保持する。
【0034】
凸リブ群25は、中立軸線Qよりも傾倒方向上側において一方の案内板14aの左右方向の内面(他方の案内板14aに対向する面)上に設けられる複数(本実施形態では3つ)の傾倒方向上側リブ25a(以下、上リブ25aともいう)を含む。一対の係合突起26は、被案内板23の基端面に設けられるとともに一方の案内板14aの上リブ25aのそれぞれに選択的に係合可能な一方の係合突起26を含む。複数の上リブ25aは、傾倒方向に並べて設けられ、それぞれ中立軸線Qに沿う方向に延びる。左右方向に見たときにそれぞれの上リブ25aの先端部と円弧状端縁21との間には、一方の係合突起26がその上リブ25aを可撓性チューブ12bなどの弾性変形によって傾倒方向に乗り越えるのを許容する間隔が設けられる。
【0035】
また凸リブ群25は、中立軸線Qよりも傾倒方向下側において一方の案内板14aの左右方向の内面上に設けられる複数(本実施形態では3つ)の傾倒方向下側リブ25b(以下、下リブ25bともいう)を含む。複数の下リブ25bは、中立軸線Qを含み傾倒方向に垂直な面に関して複数の上リブ25aに対称に設けられる。したがって、一方の係合突起26は、一方の案内板14aの下リブ25bのそれぞれに選択的に係合可能である。
【0036】
最も傾倒方向下側の上リブ25aと最も傾倒方向上側の下リブ25bとの間には、これらのリブによって一方の係合突起26を狭持可能とするために傾倒方向に間隔が設けられる。また一方の係合突起26は左右方向に見てノズル12の軸心R上に設けられる。したがって、一方の係合突起26が上記のリブによって狭持されることで、ノズル12が中立姿勢に保たれ、その結果、噴出口5の向きが中立軸線Qに沿って先端側に向かう方向に保たれる。この状態から被案内部材8cに傾倒方向上側に力を加えることで、一方の係合突起26を可撓性チューブ12bなどの弾性変形によって最も傾倒方向下側の上リブ25aを乗り越えさせて、ノズル12を中立姿勢よりも傾倒方向上側に傾倒するように変形させることができる。
【0037】
そして、一方の係合突起26を最も傾倒方向下側の上リブ25aの傾倒方向上側の面に当接させることで、傾倒方向上側の第1位置に被案内部材8cを保持することができる。また、ノズル12をもっと傾倒させて、一方の係合突起26をもう1つ傾倒方向上側の上リブ25aの傾倒方向上側の面に当接させることで、傾倒方向上側の第2位置に被案内部材8cを保持することができる。さらに、ノズル12をもっと傾倒させて、一方の係合突起26を最も傾倒方向上側の上リブ25aの傾倒方向上側の面に当接させることで、
図5に示すように、傾倒方向上側の第3位置に被案内部材8cを保持することができる。したがって、噴出口5の向きを段階的に傾倒方向上側に変更することができる。
【0038】
またノズル12が中立姿勢をとる状態から上記の場合とは逆に被案内部材8cに傾倒方向下側に力を加えることで、ノズル12を中立姿勢よりも傾倒方向下側に傾倒させ、傾倒方向下側の第1位置、第2位置及び第3位置に選択的に被案内部材8cを保持することができる。したがって、噴出口5の向きを段階的に傾倒方向下側に変更することができる。
【0039】
被案内部材8cを複数位置(本実施形態では7つの位置)でより安定して保持するために、中立軸線Qを含み左右方向に垂直な面に関して対称に、他方の案内板14aの左右方向の内面上にも複数の上リブ25aと複数の下リブ25bが設けられ、被案内板23の基端面に他方の係合突起26が設けられる。つまり、凸リブ群25は、一方の案内板14aの複数(3つ)の上リブ25aと複数(3つ)の下リブ25bと、他方の案内板14aの複数(3つ)の上リブ25aと複数(3つ)の下リブ25bとからなり、一対の係合突起26は、一方の係合突起26と他方の係合突起26からなる。
【0040】
本実施形態によれば、ノズル12が噴出口5の向きを左右方向に垂直な面内で変更するために変形できるので、下向き又は上向きに噴射する際、持ち手を大きくひねる必要がない。例えば、浴槽の手前側へ噴射する際、通常は容器本体2が上にくる倒立姿勢で噴射する必要があるが、ノズル12を下向きに角度を変更することで、少し傾ける程度で噴射することができる。また、
図6に示すように、便器の縁の裏側などの奥まった位置にも容易に噴射することができる。さらに、ノズル12を上向きにすると、園芸などでしゃがんだり、手をひねり噴出容器3を倒立姿勢にすることなく葉の裏側へ噴射することができる。このように、本実施形態によれば、左右方向に垂直な面内で所望の方向に噴出口5を容易に向けることができる。
【0041】
本発明は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0042】
したがって、前述した実施形態のトリガー式噴出器1は、例えば以下に述べるような種々の変更が可能である。
【0043】
前述した実施形態のトリガー式噴出器1は、噴出口5を有するノズル12を有し、容器本体2の口部2aに取り付けられた状態で牽曵操作によるトリガー4の作動によって容器本体2内の内容物を噴出口5から噴射可能なトリガー式噴出器1であって、口部2aの中心軸線Oに沿う方向を上下方向とし、上下方向とトリガー4の作動方向に垂直な方向を左右方向としたときに、ノズル12が、噴出口5の向きを左右方向に垂直な面内で変更するために変形可能なトリガー式噴出器1である限り、種々変更可能である。
【0044】
例えば、凸リブ群25の数と配置は適宜変更できる。一方の案内板14aに設ける傾倒方向上側リブ25aの数は、他方の案内板14aに設ける傾倒方向上側リブ25aの数に合わせて適宜変更できる。また、一方の案内板14aに設ける傾倒方向下側リブ25bの数は、他方の案内板14aに設ける傾倒方向下側リブ25bの数に合わせて適宜変更できる。傾倒方向上側リブ25aを設けずに傾倒方向下側リブ25bのみを設ける構成としてもよいし、傾倒方向下側リブ25bを設けずに傾倒方向上側リブ25aのみを設ける構成としてもよい。傾倒方向上側リブ25a及び/又は傾倒方向下側リブ25bを一方の案内板14aのみに設ける構成としてもよい。
【0045】
トリガー式噴出器1は、一方の案内板14aが、傾倒方向に並ぶ複数の傾倒方向上側リブ25aと傾倒方向に並ぶ複数の傾倒方向下側リブ25bとを有し、被案内部13が、複数の傾倒方向上側リブ25aのそれぞれと複数の傾倒方向下側リブ25bのそれぞれとに選択的に係合可能な係合突起26を有する構成に限らない。例えば、
図7~
図9に示す変形例のように、トリガー式噴出器1は、一方の案内板14aの円弧状端縁21が、傾倒方向に並ぶ複数(3つ)の傾倒方向上側凸部27a(以下、上凸部27aともいう)と傾倒方向に並ぶ複数(3つ)の傾倒方向下側凸部27b(以下、下凸部27bともいう)とを有し、被案内部13が、複数の上凸部27aのそれぞれと複数の下凸部27bのそれぞれとに選択的に係合可能である構成としてもよい。本変形例では被案内部13は、ノズル12が中立姿勢をとる時に、最も傾倒方向下側の上凸部27aと最も傾倒方向上側の下凸部27bとのそれぞれに係合する。また本変形例では、他方の案内板14aにも、中立軸線Qを含み左右方向に垂直な面に関して対称に、複数の上凸部27aと複数の下凸部27bが設けられる。一方の案内板14aの複数(3つ)の上凸部27aと複数(3つ)の下凸部27bと、他方の案内板14aの複数(3つ)の上凸部27aと複数(3つ)の下凸部27bとからなる凸部群27の数と配置は、凸リブ群25の場合と同様に適宜変更できる。
【0046】
案内部14は、被案内部13を左右方向に垂直な面内の複数位置のそれぞれにおいて凸リブ群25も凸部群27も含まない凹凸形状を介した係合によって保持する構成としてもよい。案内部14が、被案内部13を複数位置のそれぞれにおいて凹凸形状を介した係合以外の手段、例えば摩擦力によって保持する構成としてもよい。案内部14は被案内部13を左右方向に垂直な面内で摺動可能に案内する構成に限らず、被案内部13を左右方向に垂直な面内で移動可能に案内する構成であればよい。案内部14は一対の案内板14aで構成するものに限らない。噴出ノズル8は案内部14を有する構成に限らない。ノズル12は自然状態で直線状に延びる構成に限らない。可撓性チューブ12bは弾性を有する構成に限らない。ノズル12は可撓性チューブ12bを有する構成に限らない。
【0047】
なお、前述した実施形態のトリガー式噴出器1は、上記構成において、ノズル12が、ノズル基部12aと、噴出口5を有するノズル先端部12cと、ノズル基部12aとノズル先端部12cとを連ねる可撓性チューブ12bと、を有するトリガー式噴出器1であるのが好ましい。
【0048】
前述した実施形態のトリガー式噴出器1は、上記構成において、ノズル先端部12cに連なる被案内部13を左右方向に垂直な面内で移動可能に案内する案内部14を有するトリガー式噴出器1であるのが好ましい。
【0049】
前述した実施形態のトリガー式噴出器1は、上記構成において、案内部14が、被案内部13を左右方向に垂直な面内の複数位置のそれぞれにおいて凹凸形状を介した係合によって保持するトリガー式噴出器1であるのが好ましい。
【0050】
前述した実施形態のトリガー式噴出器1は、上記構成において、案内部14が、左右方向においてノズル12の両側に設けられるとともにそれぞれがノズル基部12aに連なる左右方向に垂直な一対の案内板14aで構成され、一対の案内板14aはそれぞれ左右方向に見て円弧状をなす円弧状端縁21を有し、ノズル12が左右方向に垂直な面内で中立軸線Qに沿って直線状に延びる中立姿勢をとる時に、被案内部13が一対の案内板14aのそれぞれの円弧状端縁21の中央部に当接するトリガー式噴出器1であるのが好ましい。
【符号の説明】
【0051】
1 トリガー式噴出器
2 容器本体
2a 口部
2b 胴部
2c 底部
3 噴出容器
4 トリガー
5 噴出口
6 本体部
7 装着キャップ
8 噴出ノズル
8a ノズル本体部材
8b 案内部材
8c 被案内部材
8d 噴出口部材
9 接続部
9a 流出口
9b 流路壁
9c 中空柱部
9d 外筒部
10 内部流路
11 ポンプ機構
12 ノズル
12a ノズル基部
12b 可撓性チューブ
12c ノズル先端部
12d ノズル流路
13 被案内部
14 案内部
14a 案内板
15 取り付けキャップ
15a 先端壁
15b 内周壁
15c 外周壁
15d 回り止め部
16 周壁
17 端部壁
18 基部筒
19 フランジ
20 筒体
21 円弧状端縁
22 係合筒
23 被案内板
24 外壁
25 凸リブ群
25a 傾倒方向上側リブ(上リブ)
25b 傾倒方向下側リブ(下リブ)
26 係合突起
27 凸部群
27a 傾倒方向上側凸部(上凸部)
27b 傾倒方向下側凸部(下凸部)
O 中心軸線
P 回動軸線
Q 中立軸線
R 軸心