(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】オークチップ浸出物含有果実酒
(51)【国際特許分類】
C12G 1/04 20060101AFI20250325BHJP
【FI】
C12G1/04
(21)【出願番号】P 2018170087
(22)【出願日】2018-09-11
【審査請求日】2021-09-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】河野 新
(72)【発明者】
【氏名】中村 有里
(72)【発明者】
【氏名】副嶋 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】相澤 理丞
(72)【発明者】
【氏名】波来谷 綾子
(72)【発明者】
【氏名】中村 繁幸
【合議体】
【審判長】淺野 美奈
【審判官】柴田 昌弘
【審判官】天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5356641(US,A)
【文献】特開2002-051762(JP,A)
【文献】ロシア国登録特許2083654(RU,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オークチップを、アルコール濃度が5~20v/v%の
ワインに浸漬してオークチップ
浸漬液を得る工程、及び
前記工程により得られたオークチップ
浸漬液を
ワインに添加する工程を含む、亜硫酸無添加である
ワインの製造方法。
【請求項2】
オークチップを浸漬するワインが、オークチップ浸漬液を添加するワインとは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バニリンの含有量を0.0001~0.5ppmに調整する工程を含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
ワインの原料に濃縮還元果汁を含有させる工程を含む、請求項1
~3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オークチップ浸出物を含有する果実酒に関し、より詳細には、オークチップ浸出物を含有し、且つ亜硫酸の添加量が極めて少ない果実酒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向や自然志向の高まりから、保存料や着色料等といった食品添加物に対する関心が高まってきている。様々な飲食品ではこのような食品添加物を低減或いは無添加とする試みも行われているが、製造後一定期間流通経路に滞留することを必要とする飲食品においては、消費者に満足される品質水準を満たす上では品質安定に寄与する食品添加物を無配合とすることは容易ではない。
【0003】
一般に、市販されているワイン等の果実酒においては、製品安定化に関する代表的な食品添加物として亜硫酸が用いられている。亜硫酸は、果実酒の原料となる果実の破砕時やアルコール発酵時など各種製造過程で用いられることがあるが、特に、果実酒の製造後ボトリングを行う前に添加されることが多い。これは、果実酒が市場での流通経路をたどる上で長期間にわたって品質劣化を起こさせないようにするためである。
【0004】
しかしながら、上述した通り近年の傾向では、品質安定化剤となる食品添加物の配合は一般消費者に対して負の印象を与えることが多い。かかる観点から亜硫酸を無配合とする果実酒も開発されるようになってきており、その手法としては、亜硫酸との結合により異臭を発するアセトアルデヒドの生成量を抑える方法や、醸造工程及びボトリング工程の中で極力果実酒が外気に接触しないようにする方法等が用いられている。また、これまでの報告では、500ppm以上のプロアントシアニジンを配合することにより品質の優れた亜硫酸無添加果実酒が得られる技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、亜硫酸の添加量を抑制した果実酒において、保存安定性が向上した果実酒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、オークチップの存在に着目した。そして、果実酒にオークチップを浸漬することにより得られたオークチップ浸出物には、亜硫酸の添加量が少ない果実酒に対して著しく保存安定性を高めることを見出した。かかる知見に基づき、本発明者らは、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、これに限定されるものではないが、以下に関する。
(1)オークチップ浸出物を含有し、亜硫酸の添加量が130ppm以下である、果実酒。
(2)バニリンの含有量が0.0001~0.5ppmである、(1)に記載の果実酒。
(3)果実酒の原料として濃縮還元果汁を含有する、(1)又は(2)に記載の果実酒。
(4)ワインである、(1)~(3)のいずれか1に記載の果実酒。
(5)オークチップを果実酒に浸漬する工程を含む、亜硫酸の添加量が130ppm以下である果実酒の製造方法。
(6)オークチップをアルコール含有溶媒に浸漬してオークチップ浸出物を得る工程、及びオークチップ浸出物を果実酒に添加する工程を含む、亜硫酸の添加量が130ppm以下である果実酒の製造方法。
(7)バニリンの含有量を0.0001~0.5ppmに調整する工程を含む、(5)又は(6)に記載の方法。
(8)果実酒の原料に濃縮還元果汁を含有させる工程を含む、(5)~(7)のいずれか1に記載の方法。
(9)果実酒がワインである、(5)~(8)のいずれか1に記載の方法。
(10)オークチップを果実酒に浸漬する工程を含む、亜硫酸の添加量が130ppm以下である果実酒の安定化方法。
(11)オークチップをアルコール含有溶媒に浸漬してオークチップ浸出物を得る工程、及びオークチップ浸出物を果実酒に添加する工程を含む、亜硫酸の添加量が130ppm以下である果実酒の安定化方法。
(12)バニリンの含有量を0.0001~0.5ppmに調整する工程を含む、(10)又は(11)に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、亜硫酸の添加量が少ない、或いは亜硫酸が添加されていない果実酒であっても、効果的に保存安定性が向上した果実酒を提供することができる。これにより、品質安定化に関する食品添加物が低減或いは無添加とされた果実酒を長期間にわたって市場に流通させることが可能となり、消費者の満足度も高めることができる。
【0010】
また、本発明者らの検討の中では、亜硫酸が存在することによって果実酒本来の果実味の提供が妨げられ、また、オークチップ由来の芳醇な香りが大きく損なわれることが見出された。そのため、亜硫酸の添加量が抑制された本発明の果実酒は、果実酒本来の果実味が提供されるとともに、オークチップが果実酒に対して付与する芳醇な香りをより発揮させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様は、オークチップ浸出物を含有し、亜硫酸の添加量が130ppm以下である、果実酒である。なお、特に断りがない限り、本明細書において用いられる「ppm」は、重量/容量(w/v)のppmを意味する。
【0012】
(オークチップ浸出物)
本発明の果実酒はオークチップ浸出物を含有する。ここで、本明細書においてオークチップ浸出物とは、液体中に浸漬されたオークチップから溶出した成分を意味する。本明細書において、オークチップは、オーク材と呼ばれる木材の小片である。オーク材としてはブナ科コナラ属に属する植物を用いることができ、例えば、ホワイトオーク、ヨーロッパナラ(イングリッシュオークとも称する)、ツクバネガシ(セシルオークとも称する)、コモンオーク(リムザンオークとも称する)、スパニッシュオーク等が挙げられる。これらのオーク材は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。オークチップの大きさは、オークチップ中の成分が溶出できる限りにおいて特に限定されないが、通常は0.1~10cmの立方体の中に納まる程度の大きさである。
【0013】
オークチップは、既に何らかの用途で使用済みのオーク材を小片化したものを用いてもよいし、製造直後のオーク材を小片化したもの、或いはオーク材の製造過程で発生した小片を用いてもよく、その使用履歴は特に限定されない。本発明ではオークチップの浸出物を利用することから、製造後のオーク材を小片化したもの、或いは製造過程で発生したオーク材の小片であって、未だ液体に接触していないものを用いることが好ましい。また、オークチップは、オーク材の小片をそのまま用いてもよいし、或いは使用する前に焙煎等の加熱処理が行われたものを用いてもよい。焙煎等の加熱処理が行われたオークチップは、加熱処理が行われていないオークチップに対して浸出成分に違いが生じることがあり、果実酒の種類によっては好ましい場合もある。
【0014】
オークチップ浸出物を得るためにオークチップを浸漬する液体は、特に限定されないが、アルコール含有溶媒が用いられる。溶媒中のアルコール濃度は、例えば1~50%であり、好ましくは3~40%、より好ましくは5~20%である。アルコールとしては、特に好ましくはエタノールが用いられる。アルコール含有溶媒は、溶媒中にアルコールが存在する限り特に限定されず、果実酒それ自体をアルコール含有溶媒として用いることもできる。
【0015】
オークチップ浸出物は、オークチップを液体に浸漬することにより得ることができる。液体中に浸漬するオークチップの量としては、使用する液体の種類に応じて適宜設定することができ、例えば、液体1Lあたり1~100g、好ましくは2~70g、より好ましくは3~50gである。また、オークチップを浸漬する時間は、例えば、1~90日、好ましくは2~30日、より好ましくは3~21日であり、これも使用する液体の種類に応じて適宜設定することができる。
【0016】
上記の通り得られたオークチップ浸出物としては、オークチップの浸漬液をそのまま用いることができる。このとき、オークチップ浸漬液から濾過等によりオークチップを除去してから当該浸漬液を用いてもよいし、或いはオークチップが存在している状態においてスポイト等でオークチップ浸漬液を抜き取って使用してもよい。
【0017】
(亜硫酸)
本発明の果実酒において、亜硫酸の添加量は130ppm以下である。亜硫酸は、化学式H2SO3で表される硫黄のオキソ酸である。本明細書では、亜硫酸の添加量は、製造後の果実酒に対して添加される亜硫酸の量を意味する。本発明のように亜硫酸の添加量が極めて少なくなることにより、果実酒本来の果実味が十分に得られ、また、それによってオークチップ特有の芳醇な香りを十分に知覚することが可能となる。亜硫酸の添加量は、好ましくは120ppm以下、より好ましくは80ppm以下であり、最も好ましくは0ppm(即ち、亜硫酸無添加)である。
【0018】
本明細書において亜硫酸は、亜硫酸の塩も包含することを意味する。亜硫酸の塩としては、特に限定されないが、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸鉄等が挙げられる。なお、亜硫酸塩が用いられる場合は、これを亜硫酸の遊離体(即ち、SO2)の量に換算した上で亜硫酸の添加量を算出することができる。
【0019】
果実酒の製造過程の中で亜硫酸は、果実酒の原料となる果実の破砕時やアルコール発酵時などに用いられたり、アルコール発酵中に酵母によって亜硫酸が生成されたりする場合がある。そのような場合には、製造後の果実酒においても若干量の亜硫酸は存在することになる。そのため、本発明の果実酒は、上記の通りの亜硫酸添加量である上で、果実酒中の亜硫酸含有量は150ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。
【0020】
本発明の果実酒において亜硫酸は、重亜硫酸イオン(HSO3
-)、亜硫酸イオン(SO3
2-)及び亜硫酸(H2SO3)を包含する遊離型として、又はアセトアルデヒドなどのカルボニル化合物と結合した結合型として存在し得る。本明細書においては、これら遊離型及び結合型の亜硫酸の合計値を果実酒中の亜硫酸含有量と定義し、その量をppm(w/v)で表す。亜硫酸含有量の測定方法としては、ランキン法(Aeration-Oxidation法)、ヨード滴定法のリッパー法、及び酵素法が知られているが、本明細書では、ランキン法によって分析するものとする。
【0021】
(バニリン)
本発明の果実酒は、バニリンを含有し得る。バニリン(vanillin)は、化学式C8H8O3で表される化合物であり、バニラの香りの主要な成分として知られている。本発明の果実酒におけるバニリンの含有量は、例えば0.0001~0.5ppmであり、好ましくは0.0005~0.1ppm、より好ましくは0.001~0.05ppmである。オークチップ浸出物が存在し、且つバニリンの含有量が上記の範囲内である場合に、亜硫酸の添加量が少量であっても効果的に果実酒を安定化させることができ、さらには果実酒における芳醇な香りを高めることができる。果実酒におけるバニリンの含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又は液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)を用いて測定することができる。
【0022】
本発明においてバニリンは、オークチップ浸出物由来であることが好ましい。そのため、本発明の果実酒においてオークチップ浸出物或いはこれを含むオークチップの浸漬液は、バニリンの果実酒中の含有量が上記の範囲となるように、果実酒に対して含有させることができる。
【0023】
(濃縮還元果汁)
本発明の果実酒は、ストレート果汁、ストレート果汁を希釈した果汁、濃縮果汁、及び濃縮還元果汁のいずれを原料として用いて調製したものであってもよく、果実酒の原料として濃縮還元果汁を含有することが好ましい。ストレート果汁とは、果実の搾汁に対し、濃縮や希釈などを行っていない果汁をいう。また、濃縮果汁とは、ストレート果汁に対し、加熱濃縮法や冷凍濃縮法などによって果汁中の水分を取り除き、果汁の濃度を高めたものをいう。また、濃縮還元果汁とは、濃縮果汁に対し、計算上、ストレート果汁と同等の濃度となるように水等で希釈した果汁をいう。本発明の果実酒において濃縮還元果汁を原料に使用した場合、果実の搾汁液をそのまま使用して調製した場合よりも品質安定性が向上することが期待される。また、濃縮還元果汁では果実の搾汁液と比べて揮発性香気成分の組成が異なることから、果実酒における果実らしい香りや味わい、或いは芳醇な香りをより強く感じられることもある。
【0024】
濃縮還元果汁は、非加熱殺菌されたものであってもよいし、加熱殺菌されたものであってもよい。非加熱殺菌としては、例えば、メンブレンフィルターや中空糸を用いたろ過滅菌、紫外線殺菌などが挙げられる。また、加熱殺菌としては、例えば、100℃以上で行う高温殺菌、100℃未満で行う低温殺菌などが挙げられる。
【0025】
濃縮還元果汁を用いる場合、通常は濃縮果汁を水等で希釈するが、元の果汁(濃縮前の果汁)に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは100%の果汁率となるように調整して希釈することができる。即ち、例えば10倍濃縮された濃縮果汁を用いた場合は、これを10倍希釈することにより、元の果汁(濃縮前の果汁)に対して100%の果汁率となるように調整されたとすることができる。
【0026】
(その他の成分)
上述した通り、本発明の果実酒はバニリンを含み得るが、それ以外の香気成分を含んでいてもよい。そのような香気成分としては、例えば、エラグタンニン(エラジタンニンとも称する)、ラクトン、グアヤコール、エチルグアヤコール、オイゲノール、イソオイゲノール、フルフラール、5-メチルフルフラール、5-ヒドロキシメチルフルフラール、クマリン、シリンゴール、バニリン酸、アポシニン、シリンガアルデヒド、コニフェリルアルデヒド、コニフェリルアルコール等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて本発明の果実酒に含有させることができる。これらの香気成分は、それぞれ本発明の果実酒において0.0001~1ppmの含有量とすることができ、オークチップ浸出物由来であることが好ましい。
【0027】
また、本発明の果実酒はその他の揮発性成分を含んでいてもよく、例えば、酢酸、ヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、1-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘプタノール、2-エチルー1-ヘキサノール、2,3-ブタンジオール、1-オクタノール、1-ノナノール、2-フランメタノール等を含むことができる。これらの揮発性成分は、それぞれ本発明の果実酒において0.0001~5ppmの含有量とすることができ、果実酒またはオークチップ浸出物由来であることが好ましい。また、前述の揮発性成分は、1種又は2種以上を組み合わせて本発明の果実酒に含有させることができる。
【0028】
本発明の果実酒はまた、味(例えば、甘味)の調整のために、糖類を含有してもよい。糖類の種類は特に限定されないが、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース等が挙げられ、これらの糖類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、糖類を含む原料、例えば、糖液や蜂蜜を用いてもよい。本発明の果実酒に糖類が含まれる場合には、その含有量は、Brix値を指標として見積もることができる。Brix値は、好ましくは3~20、より好ましくは5~15である。飲料のBrixは、公知の方法を用いて測定してもよく、例えば、市販のBrix計を使用することができる。
【0029】
本発明の果実酒には、飲料に通常配合する添加剤、例えば、香料、ビタミン、色素、着色剤、乳化剤、甘味料(サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム等)、保存料(ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等)、粘ちょう剤(グリセリン、カラギナン、アラビアガム等)、有機酸(乳酸、酒石酸、リンゴ酸等)、アミノ酸(アラニン、グリシン、グルタミン酸等)、無機塩類(炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等)、エキス類、pH調整剤等を配合することができる。
【0030】
(果実酒)
本明細書において果実酒とは、原料となる果汁を酵母の作用によりアルコール発酵させて得られる発酵飲料、及びそのような発酵飲料を主な原料として含む飲料を意味する。本発明の果実酒に用いられる発酵原料としては、ブドウ果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、グレープフルーツ果汁、パイナップル果汁、マンゴー果汁等が挙げられ、これらの果汁を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。前記定義を満たす限り、本発明における果実酒は、酒税法等の法律に基づくカテゴリーに限定されないが、本発明における果実酒の範囲には、日本の酒税法による果実酒、甘味果実酒、リキュール、その他の醸造酒が含まれる。
【0031】
本発明の果実酒は、好ましくはワインである。ここで、本明細書においてワインとは、ブドウ果汁を主な原料として製造される発酵飲料、及びそのような発酵飲料を主な原料として含む飲料を意味する。ワインとしては、赤ワイン、白ワイン、及びロゼワインが挙げられる。本明細書において赤ワインとは、ブドウの果肉、果皮、及び種を含む果実全体から搾り取った果汁を原料として製造される発酵飲料、及びそのような発酵飲料を主な原料として含む飲料を意味する。また、本明細書において白ワインとは、ブドウの果肉のみから搾り取った果汁を原料として製造される発酵飲料、及びそのような発酵飲料を主な原料として含む飲料を意味する。さらに、本明細書においてロゼワインとは、前記赤ワインの製造方法と前記白ワインの製造方法を組み合わせて、又は前記赤ワインと前記白ワインを混合して製造される発酵飲料、及びそのような発酵飲料を主な原料として含む飲料を意味する。
【0032】
本発明の果実酒のpHは特に限定されないが、好ましくはpH2.5~4.0、より好ましくはpH3.0~3.5である。果実酒のpHは、pH調整剤を用いて調整することができる。pH調整剤の具体例としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム(クエン酸三ナトリウム等)、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リンゴ酸、リン酸、グルコン酸、コハク酸等が挙げられる。
【0033】
本発明の果実酒のアルコール度数は、特に限定されないが、好ましくは1~16v/v%、より好ましくは2~14v/v%、さらにより好ましくは3~12v/v%である。アルコール度数の調整方法は、添加するアルコール成分の量の調整などの、公知のいずれの方法を用いてもよい。
【0034】
本明細書に記載の「アルコール」との用語は、特に断らない限りエタノールを意味する。本明細書において、果実酒のアルコール度数は公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、果実酒を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。アルコール度数が1.0%未満の低濃度の場合は、市販のアルコール測定装置や、ガスクロマトグラフィーを用いても良い。なお、果実酒が炭酸を含む場合は、濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いて測定用の試料とすることができる。
【0035】
本発明の果実酒は、炭酸ガスを含んでいてもよい。例えば、発酵過程で発生する二酸化炭素が果実酒に溶け込んだものでもよい。また、炭酸ガスは当業者に通常知られる方法を用いて果実酒に付与することもできる。具体的には、二酸化炭素を加圧下で果実酒に溶解させてもよく、カーボネーター等のミキサーを用いて配管中で二酸化炭素と果実酒とを混合してもよく、二酸化炭素が充満したタンク中に果実酒を噴霧することにより二酸化炭素を果実酒に吸収させてもよく、果実酒と炭酸水とを混合してもよいが、これらに限定されるものではない。また、これらの手段を適宜用いて炭酸ガス圧を調節する。
【0036】
炭酸ガス圧の測定は、公知の方法によって行うことができる。例えば、京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500Aを用いて測定することができる。より詳細には、試料温度を20℃とし、前記ガスボリューム測定装置において容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とう後、炭酸ガス圧を測定する。本明細書においては、特段の記載がない限り、当該方法によって炭酸ガス圧を測定する。
【0037】
本発明の果実酒の炭酸ガス圧は、特に限定されないが、測定時の液温が20℃の際の果実酒のスニフト後のガス圧が、好ましくは0.7~3.5kgf/cm2、より好ましくは0.8~2.8kgf/cm2、さらにより好ましくは0.8~2.5kgf/cm2である。
【0038】
本発明の果実酒は、容器詰め飲料(容器詰め果実酒)とすることができる。容器詰め飲料とすることにより長期間に渡って安定に保存することが可能になるため好適である。容器詰め飲料の容器は特に限定されず、金属製容器、樹脂製容器、紙容器、ガラス製容器など、通常用いられる容器のいずれも用いることができる。具体的には、アルミ缶やスチール缶などの金属製容器、PETボトルなどの樹脂製容器、紙パックなどの紙容器、ガラス瓶などのガラス製容器などを挙げることができる。これらの中では、ガラス瓶又はPETボトルを用いることが好ましく、ガラス瓶詰め又はPETボトル詰めの果実酒とすることができる。
【0039】
また、本発明の果実酒には殺菌処理を施すこともできる。殺菌処理としては、加熱殺菌処理と非加熱殺菌処理とが挙げられ、これらのうち加熱殺菌を行うことが好ましい。加熱殺菌処理は、例えば50~80℃(好ましくは60~70℃)で5分以上(好ましくは10分以上)の条件で行うことができる。非加熱殺菌としては、例えば、メンブレンフィルターや中空糸を用いたろ過滅菌、紫外線殺菌などが挙げられる。また、上記の通り本発明の果実酒を容器詰め飲料とする場合には、殺菌処理の有無に関わらず無菌充填法を用いることができ、無菌充填された容器詰め飲料とすることができる。
【0040】
(果実酒の製造方法、及び果実酒の安定化方法)
本発明は、別の側面では、亜硫酸の添加量が130ppm以下である果実酒の製造方法である。本発明の製造方法は、オークチップを果実酒に浸漬する工程を含むことができる。オークチップに関する説明は上述した通りであり、オーク材と呼ばれる木材の小片が本発明の製造方法で用いられる。
【0041】
オークチップを果実酒に浸漬する場合に用いられるオークチップの量としては、例えば、果実酒1Lあたり1~100g、好ましくは2~70g、より好ましくは3~50gである。また、オークチップを果実酒に浸漬する時間としては、例えば、1~90日、好ましくは2~30日、より好ましくは3~21日である。オークチップを果実酒に浸漬する量や時間は、果実酒の種類に応じて適宜設定することができる。
【0042】
オークチップを果実酒に浸漬している間は、そのまま放置していてもよいが、オークチップからの浸出物を効果的に得るという観点から、好ましくは撹拌処理が行われる。撹拌方法は特に限定されず、自体公知の方法が用いられる。撹拌処理を行う回数も特に限定されないが、通常、浸漬期間中1~20回、好ましくは2~15回、より好ましくは3~10回の撹拌処理が行われる。また、撹拌処理は浸漬期間中定期的に継続して行ってもよく、或いは浸漬期間の一定期間のみに集中して行ってもよい。例えば、オークチップを浸漬直後に数回(例えば、2~5回)撹拌を行い、放置を開始してから最初の数日間(例えば、2~5日間)のみ撹拌を行ってもよい。撹拌処理を行う時間間隔も特に限定されず、例えば6~48時間、好ましくは12~36時間、より好ましくは18~30時間の間隔で撹拌処理を行うことができる。
【0043】
オークチップの果実酒への浸漬処理を行った後は、オークチップの浸出物が継続して漏出してくることを防ぐ観点から、果実酒からオークチップを取り出すことが好ましい。オークチップを取り出す方法としては、自体公知の方法を用いることができ、例えば濾過等により果実酒からオークチップを取り出すことができる。
【0044】
本発明の製造方法は、別の側面では、亜硫酸の添加量が130ppm以下である果実酒の製造方法であって、オークチップをアルコール含有溶媒に浸漬してオークチップ浸出物を得る工程(第1工程)、及びオークチップ浸出物を果実酒に添加する工程(第2工程)を含むものである。オークチップに関する説明は上述した通りであり、オーク材と呼ばれる木材の小片が本発明の製造方法で用いられる。
【0045】
上記の第1工程でオークチップ浸出物(オークチップをアルコール含有溶媒に浸漬することにより得られるオークチップ浸漬液)を入手すれば、この中から必要な量のみを第2工程に使用することができるため、第1工程と第2工程を含む本発明の製造方法は、果実酒を大量生産する上で好ましい。また、第1工程で得られたオークチップ浸出物は、長期間にわたって保存することも可能であり、オークチップ浸出物の長期間保存を行いながら果実酒を製造することもできる。
【0046】
オークチップを浸漬するアルコール含有溶媒について、溶媒中のアルコール濃度は、例えば1~50%であり、好ましくは3~40%、より好ましくは5~20%である。アルコールとしては、特に好ましくはエタノールが用いられる。アルコール含有溶媒は、溶媒中にアルコールが存在する限り特に限定されないが、特に好ましくは果実酒が用いられる。オークチップ浸出物を得るためのアルコール含有溶媒に果実酒を用いる場合、当該果実酒は、第2工程でオークチップ浸出物を添加する果実酒と異なる果実酒であってもよいが、目的の果実酒を効率よく製造する観点から同一の果実酒であることが好ましい。
【0047】
上記の第1工程でアルコール含有溶媒に浸漬するオークチップの量は、使用する溶媒の種類に応じて適宜設定することができ、例えば、溶媒1Lあたり1~100g、好ましくは2~70g、より好ましくは3~50gである。また、また、オークチップをアルコール含有溶媒に浸漬する時間としては、例えば、5~40日、好ましくは7~30日、より好ましくは10~20日であり、これも使用する溶媒の種類に応じて適宜設定することができる。
【0048】
オークチップをアルコール含有溶媒に浸漬している間は、そのまま放置していてもよいが、オークチップからの浸出物を効果的に得るという観点から、好ましくは撹拌処理が行われる。撹拌方法は特に限定されず、自体公知の方法が用いられる。撹拌処理を行う回数も特に限定されないが、通常、浸漬期間中1~20回、好ましくは2~15回、より好ましくは3~10回の撹拌処理が行われる。また、撹拌処理は浸漬期間中定期的に継続して行ってもよく、或いは浸漬期間の一定期間のみに集中して行ってもよい。例えば、オークチップを浸漬直後に数回(例えば、2~5回)撹拌を行い、放置を開始してから最初の数日間(例えば、2~5日間)のみ撹拌を行ってもよい。撹拌処理を行う時間間隔も特に限定されず、例えば6~48時間、好ましくは12~36時間、より好ましくは18~30時間の間隔で撹拌処理を行うことができる。
【0049】
第1工程で得られたオークチップ浸出物としては、オークチップの浸漬液をそのまま用いることができる。なお、オークチップのアルコール含有溶媒への浸漬処理を行った後は、オークチップの浸出物が継続して漏出してくることを防ぐ観点から、アルコール含有溶媒からオークチップを取り出すことが好ましい。このとき、オークチップ浸漬液から濾過等によりオークチップを除去してから当該浸漬液を用いてもよいし、或いはオークチップが存在している状態においてスポイト等でオークチップ浸漬液を抜き取って使用してもよい。
【0050】
第1工程で得られたオークチップ浸出物は、第2工程において果実酒に添加されることも可能である。オークチップ浸出物を果実酒に添加する量は、最終的に製造される果実酒において本発明の効果が得られる限り特に限定されず、適宜設定することができる。例えば、第2工程でのオークチップ浸出物の添加量は、最終的に製造される果実酒における所定の成分の量を基準として調整することができる。具体例としては、第1工程で得られたオークチップの浸漬液に含まれるバニリンの量を予め測定しておき、最終的に製造される果実酒においてバニリンの含有量が0.0001~0.5ppm、好ましくは0.0005~0.1ppm、より好ましくは0.001~0.05ppmとなるように、オークチップ浸出物(即ち、オークチップ浸漬液)の添加量を設定することができる。また、特に限定されるわけではないが、第2工程でのオークチップ浸出物の添加量は、例えば、最終的に製造される果実酒1Lにおいて0.0001~10v/v%、好ましくは0.0005~5v/v%、より好ましくは0.0006~1v/v%とすることができる。
【0051】
上述した2つの側面を含む本発明の製造方法で用いられる果実酒は、当業者に公知の方法により得ることができる。例えば、ブドウ、リンゴ、モモ、グレープフルーツ、パイナップル、マンゴー等の果実より得られた果汁に、場合により、ブドウ糖、果糖、ショ糖等の糖類や酒石酸、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸を加えて発酵原料とし、これにサッカロミセス属等の酵母を接種して常法によりアルコール発酵させて、以下、滓引き、貯蔵、熟成、濾過等を行って果実酒を得ることができる。
【0052】
本発明の製造方法では、本明細書に記載した各種成分を添加する工程や、所定の含有量範囲に調整する工程を含めることができる。例えば、本発明の製造方法は、バニリンの含有量を0.0001~0.5ppm、好ましくは0.0005~0.1ppm、より好ましくは0.001~0.05ppmに調整する工程を含むことができる。バニリンの含有量は、上記で説明した通りである。
【0053】
また、本発明の製造方法は、果実酒の原料に濃縮還元果汁を含有させる工程を含むことができる。即ち、本発明の製造方法は、濃縮還元果汁を原料として用いて発酵させる工程(濃縮還元果汁を発酵させる工程)を含むことができる。濃縮還元果汁に関しても上記に説明した通りであり、濃縮還元果汁を発酵原料として用いて果実酒に含有させることによって品質安定性の向上が期待されるとともに、果実らしさや芳醇な香りをより強く感じることができる可能性がある。
【0054】
本発明の製造方法により得られる果実酒についても、上記に果実酒として説明した通りである。即ち、本発明の製造方法により得られる果実酒は、好ましくはワインである。また、本発明の製造方法により得られる果実酒は亜硫酸の添加量が130ppm以下であるが、亜硫酸に関しても上記に説明した通りである。その他、本発明の製造方法では、上記の説明に従って、炭酸ガスを含有させる工程や果実酒のpHを調整する工程等も含めることができる。各種工程は、どの順序で行ってもよく、最終的に得られた果実酒における含有量や比率が所要の範囲にあればよい。
【0055】
また、本発明の製造方法では、容器詰めの果実酒を得るべく、果実酒を容器に充填する工程、果実酒を殺菌する工程、容器詰めを行う工程というような容器詰めに関連する工程も含めることができる。容器詰めに関連する各種工程における条件や使用材料等は、果実酒に関して上記に説明した通りであり、例えば、果実酒の充填工程では好ましくは無菌充填法が用いられる。
【0056】
本発明の果実酒の製造方法では、亜硫酸の添加量が130ppm以下である果実酒を安定化することができる。従って、当該製造方法は、別の側面では、亜硫酸の添加量が130ppm以下である果実酒の安定化方法である。
【0057】
(数値範囲)
明確化のために記載すると、本明細書において下限値と上限値によって表されている数値範囲、即ち「下限値~上限値」は、それら下限値及び上限値を含む。例えば、「1~2」により表される範囲は、1及び2を含む。
【実施例】
【0058】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定される
ものではない。
【0059】
(ベース果実酒)
亜硫酸無添加の赤ブドウ濃縮果汁と亜硫酸無添加の白ブドウ濃縮果汁とを使用した。各濃縮果汁は、糖度が20.7%となるように水で希釈した。その後、リン酸水素二アンモニウムと酵母を添加して発酵を行った。発酵後は酵母を取り除いてベース果実酒(ベースワイン)とした。当該ベース果実酒のアルコール度数は12v/v%であった。
【0060】
(オークチップ浸漬果実酒)
上記の通り得られたベース果実酒にオークチップを浸漬した。オークチップは、大きさとして2mm以上のものを使用した。また、浸漬に際して使用したオークチップの量は、ベース果実酒1Lあたり30gとした。ベース果実酒にオークチップを浸漬してから3回撹拌し、14日間保管した。保管開始から最初の3日間は、24時間おきに撹拌を行った。保管終了後、網を用いてオークチップを取り除き、オークチップ浸漬果実酒(オークチップ浸漬ワイン)を製造した。
【0061】
(サンプル果実酒)
上記の通り得られたオークチップ浸漬果実酒をベース果実酒に添加して、サンプル果実酒(サンプルワイン)を調製した。オークチップ浸漬果実酒の添加量は、サンプル果実酒1kLあたり0.2L(0.02%)、3L(0.3%)、又は30L(3%)とした。いずれのサンプル果実酒のアルコール度数も12v/v%であった。
【0062】
(バニリンの分析)
上記の通り製造したオークチップ浸漬果実酒について、外部分析機関として日本食品分析センターに委託してバニリンの含有量を測定した。その結果、オークチップ浸漬果実酒中のバニリンの含有量は0.007g/kgであった。オークチップ浸漬果実酒及びベース果実酒はいずれも密度がほぼ1.0g/mLであることから、上記の通り0.02%、0.3%、及び30L(3%)のオークチップ浸漬果実酒を添加したサンプル果実酒のバニリン含有量は、それぞれ0.0014ppm、0.021ppm、及び0.21ppmであることが算出された。
【0063】
試験例1.亜硫酸添加による香味の評価
各サンプル果実酒(サンプルワイン)に対し、亜硫酸を添加しないもの(0ppm)、及び亜硫酸の添加量が40ppm、80ppm、又は120ppmの濃度となるようにピロ亜硫酸カリウムを添加したものを調製し、官能評価試験を行った。官能評価試験は、2名のパネラーが試飲して、「ワインらしい果実味」、「芳醇な香り」及び「おいしさについての総合評価」について以下の基準(1~5点の間で0.1点刻み)で官能評価を行い、評価点数(評点)の平均値を算出し、「ワインらしい果実味」、「芳醇な香り」及び「おいしさについての総合評価」のいずれも2点以上の時を合格点とした。なお、パネラー間では、各評価項目について評価基準となるサンプルを使用して、ワインらしさ等の評価内容とそれに対応する点数との関係を確認し、点数付けがなるべく共通化するようにしてから官能評価試験を実施した。
【0064】
<ワインらしい果実味>
5点:非常に強く発揮している
4点:とても発揮している
3点:発揮している
2点:やや発揮している
1点:発揮していない
【0065】
<芳醇な香り>
5点:非常に強く発揮している
4点:とても発揮している
3点:発揮している
2点:やや発揮している
1点:発揮していない
【0066】
<総合評価>
5点:非常においしい
4点:とてもおいしい
3点:おいしい
2点:ややおいしい
1点:おいしくない
【0067】
結果を下表に示す。
【0068】
【0069】
上記に示された通り、「ワインらしい果実味」及び「芳醇な香り」はいずれも亜硫酸無添加の場合が最も高い評点であり、亜硫酸の添加量が増えるにつれて評点が減少する結果となった。これらは、オークチップ浸漬果実酒の添加量が増大しても同様の傾向であることが確認できた。また、パネラーが受けた印象としては、亜硫酸の添加によってやさしい味わいや自然なワインらしい香味が単調になり、亜硫酸の添加量が増えるにつれて不自然な味わいが増し、単調な香味となる感じを受けた。以上の結果から、亜硫酸の添加量を減らし、特に好ましくは亜硫酸を無添加にすることによって、ワインらしい果実味及び芳醇な香りの効果が十分に発揮されることが示唆された。
【0070】
試験例2.安定性(色調変化)の評価
各サンプル果実酒(サンプルワイン)について、容器に充填して容器詰め果実酒とし、その後、37℃の条件で放置安定性試験を行った。放置前(0日)及び放置してから24日後に、波長525nm及び420nmで各サンプル果実酒の吸光度を測定し、各吸光度の比率(525nm/420nm)を算出して色調比を調べた。なお、赤のサンプルワインについてはイオン交換水を用いて5倍希釈したもの、白のサンプルワインについては希釈していないものを測定用サンプルとして準備し、メンブランフィルター(ミリポア)で濾過したものついて、分光光度計(島津製UV-1700)を用いてそれぞれの波長での吸光度を測定した。結果を以下に示す。
【0071】
【0072】
上記に示された結果より、オークチップ浸漬果実酒をベース果実酒に添加することによって、保存することによる吸光度の比率(525nm/420nm)の値の減り方が少なくなることから、無添加の場合よりも色調変化に関する劣化が抑制され、安定性が向上することが示唆された。