(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】液状調味料
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20250325BHJP
A23L 27/60 20160101ALI20250325BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L27/60 Z
(21)【出願番号】P 2020186109
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2020000850
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】猪川 友美
【審査官】楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-029031(JP,A)
【文献】特開2013-085505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0058761(US,A1)
【文献】特開昭61-289858(JP,A)
【文献】特開2015-104318(JP,A)
【文献】特開2000-050838(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143152(WO,A1)
【文献】特開2016-185086(JP,A)
【文献】特開2000-060476(JP,A)
【文献】特開平07-274824(JP,A)
【文献】特開平10-108652(JP,A)
【文献】特開2018-201475(JP,A)
【文献】特開2013-000095(JP,A)
【文献】特開2015-100335(JP,A)
【文献】特許第6585245(JP,B1)
【文献】国際公開第2015/147043(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳タンパク質とチーズを含む乳原料、酢酸、乳酸、
エタノール、食塩、脂質、有機酸塩、及び水を含む液状調味料であって、
pHが、4.7以上5.1以下であり、
水分活性が、0.88以上0.94未満であり、
前記乳タンパク質の含有量が、前記液状調味料全体の1質量%以上7質量%以下であり、
前記チーズの含有量が、前記液状調味料全体の3質量%以上30質量%以下であり、
前記酢酸の含有量が、前記液状調味料全体の0.05質量%以上0.5質量%以下であり、
前記乳酸の含有量が、前記酢酸1質量部に対して、1質量部超10質量部以下であり、
前記
エタノールの含有量が、前記液状調味料全体の0.5質量%以上5質量%以下であり、
前記食塩の含有量が、前記液状調味料全体の1質量%以上7質量%以下であり、
前記脂質の含有量が、前記液状調味料全体の10質量%以上40質量%以下であり、
前記脂質として食用油脂が含まれ、前記食用油脂の含有量が、前記液状調味料全体の5質量%以上30質量%以下であり、
前記有機酸塩が、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記有機酸塩の含有量が、前記液状調味料全体の0.01質量%以上1.0質量%以下であることを特徴とする、
液状調味料。
【請求項2】
前記有機酸塩が、クエン酸ナトリウム
及び乳酸ナトリウ
ムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、
請求項1に記載の液状調味料。
【請求項3】
前記
エタノールの含有量が、前記液状調味料全体の1質量%以上3質量%以下であることを特徴とする、
請求項1または2に記載の液状調味料。
【請求項4】
前記乳酸の含有量が、前記酢酸1質量部に対して、1.1質量部以上5質量部以下であることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の液状調味料。
【請求項5】
前記脂質の含有量が、前記液状調味料全体の20質量%以上35質量%以下であることを特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載の液状調味料。
【請求項6】
前記液状調味料が乳化状であり、
前記液状調味料中に乳化分散した脂質の粒径の最頻値が、10μm以上150μm以下であることを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の液状調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状調味料に関し、詳細には、少なくとも、乳タンパク質を含む乳原料、酢酸、乳酸、アルコール、食塩、脂質、有機酸塩、及び水を含む液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マヨネーズ、ソース、及びドレッシング等の液状調味料が市販されており、これらの液状調味料には、様々な具材が配合されてきた。様々な具材の中でもチーズは、酸味や油のコクとの相性、またサラダとの相性が良いため、近年ではチーズを配合したソースやドレッシングが開発されている。例えば、水相にチーズを配合した分離液状タイプのソースや、水相中に油相が分散した乳化タイプのソースが存在している。
【0003】
分離液状タイプとしては、例えば、5~75%の食用油脂、5~50%(生換算)の農産物の細断物、0.5~15%(ナチュラルチーズ換算)の溶融したチーズ、5~15%の食塩及び0.3~5%のエタノールを配合した容器詰め分離液状ソースが提案されている(特許文献1参照)。しかし、特許文献1に記載の分離液状ソースでは、使用の度に振とうによりソース全体を略均一に混合することが必要であり、煩雑であった。
【0004】
また、常温流通可能な液状調味料は、通常レトルト殺菌していたが、高温殺菌のため、凝集や風味の劣化が起こっていた。そのため、風味の劣化が起こらず、常温流通可能な液状調味料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、常温流通可能な液状調味料の開発の際に、腐敗防止のために酢酸添加によりpHを4.5以下に低下させることを試みたが、酸味が増して食味のバランスが崩れた。また、腐敗防止のために塩分を添加して水分活性を0.85以下に低下させることを試みたが、塩味が増して食味のバランスが崩れた。
【0007】
したがって、本発明の目的は、チーズ風味等の乳風味に優れ、酸味及び塩味が弱く、さらに乳タンパク質の安定性及び保存性に優れ、常温流通可能な液状調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、液状調味料に酢酸と乳酸とを添加し、pH及び水分活性を調節しながら、乳タンパク質の含有量を特定の範囲内に調整することによって、チーズ風味等の乳風味に優れ、酸味及び塩味が弱く、さらに乳タンパク質の安定性及び保存性に優れ、常温流通可能な液状調味料が得られることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明の一態様によれば、
乳タンパク質を含む乳原料、酢酸、乳酸、アルコール、食塩、脂質、有機酸塩、及び水を含む液状調味料であって、
pHが、4.7以上5.1以下であり、
水分活性が、0.88以上0.94未満であり、
前記乳タンパク質の含有量が、前記液状調味料全体の1質量%以上7質量%以下であり、
前記酢酸の含有量が、前記液状調味料全体の0.05質量%以上0.5質量%以下であり、
前記食塩の含有量が、前記液状調味料全体の1質量%以上7質量%以下であることを特徴とすることが好ましい。
【0010】
本発明の態様においては、前記有機酸塩が、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
本発明の態様においては、前記アルコールの含有量が、前記液状調味料全体の0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の態様においては、前記乳酸の含有量が、前記酢酸1質量部に対して、1質量部超10質量部以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、前記脂質の含有量が、前記液状調味料全体の10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の態様においては、前記液状調味料が乳化状であり、前記液状調味料中に乳化分散した脂質の粒径の最頻値が、10μm以上150μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、チーズ風味等の乳風味に優れ、酸味及び塩味が弱く、さらに乳タンパク質の安定性及び保存性に優れ、常温流通可能な液状調味料を提供することができる。このような液状調味料の品質向上によって、消費者の購買意欲を高め、液状調味料のさらなる市場拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<液状調味料>
本発明の液状調味料は、少なくとも、乳タンパク質を含む乳原料、酢酸、乳酸、アルコール、食塩、脂質、有機酸塩、及び水を含むものであり、食用油脂、増粘剤、及び酵母エキス等の他の原料等をさらに含んでもよい。
【0017】
本発明の液状調味料は、乳化状であることが好ましい。乳化状液状調味料は、水中油型(O/W型)エマルションやW/O/W型複合エマルションの構成を有してもよく、水中油型(O/W型)エマルションの構成がより好ましい。液状調味料としては、例えば、ドレッシング、ソース、タレ、及びこれらに類する他の食品が挙げられる。
【0018】
(pH)
本発明の液状調味料のpHは、4.7以上5.1以下であり、より好ましくは4.8以上であり、また好ましくは5.0以下である。pHが上記範囲内であれば、酸味を抑えながら、保存性に優れ、常温流通可能な液状調味料を提供することができる。液状調味料のpHの値は、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF-72)を用いて測定した値である。
【0019】
(乳原料)
本発明の液状調味料に用いる乳原料は、少なくとも乳タンパク質を含むものである。乳原料としては、例えば、チーズ、バター、生クリーム、牛乳、乳清(ホエイ)、脱脂粉乳、乳脂肪等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
(チーズ)
乳原料に用いるチーズは、特に限定されないが、ナチュラルチーズ及び/又はこれを用いて製したプロセスチーズを用いることができる。例えば、ナチュラルチーズとしては、パルメザンチーズ、グラナチーズ、チェダー、エメンタール、ゴーダ、マリボー等の原料チーズが挙げられる。本発明においては、これらの1種又は2種以上の原料チーズを用いることができ、液状調味料のチーズ風味を際立たせるために2種以上用いることが好ましい。
【0021】
チーズの配合量(チーズを含有する食品原料を用いた場合は、その中に含まれるチーズの配合量を意味する)は、液状調味料全体に対して、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。チーズの配合量が上記範囲内であれば、乳タンパク質の凝集を抑えながら、液状調味料にチーズ風味を与え易くなる。
【0022】
乳原料中の乳タンパク質の含有量は、原料の種類に応じて適宜、調節することができる。例えば、乳原料中の乳タンパク質の含有量は、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。乳原料中の乳タンパク質の含有量が上記数値範囲内であれば、液状調味料中の乳タンパク質の含有量を好適な範囲内に調節し易くなる。
【0023】
乳原料の配合量は、液状調味料全体に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。乳原料の配合量が上記範囲内であれば、乳風味が十分に感じられ、また、液状調味料中の乳タンパク質の含有量を好適な範囲内に調節し易くなる。
【0024】
(乳タンパク質の含有量)
本発明の液状調味料中の乳タンパク質の含有量は、液状調味料全体の1質量%以上7質量%以下であり、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは6質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは4質量%未満である。乳タンパク質の含有量が上記数値範囲内であれば、乳タンパク質の凝集を抑えながら、液状調味料に乳風味を与えることができる。なお、液状調味料中の乳タンパク質の含有量は、液状調味料の製造に用いる乳原料の配合量や乳原料の組成によって、調節することができる。
【0025】
(脂質の含有量)
本発明の液状調味料中の脂質の含有量は、液状調味料全体に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以上である。脂質の含有量が上記数値範囲内であれば、液状調味料のコクや乳風味を感じ易くなる。なお、液状調味料中の脂質の含有量は、配合する食用油脂だけでなく、乳原料等に含まれる脂質も含めた値である。
【0026】
(水分活性)
本発明の液状調味料の水分活性は、0.88以上0.94未満であり、好ましくは0.89以上であり、より好ましくは0.90以上であり、また、好ましくは0.935以下であり、より好ましくは0.93以下である。液状調味料の水分活性が上記数値範囲内であれば、水分活性を低下させるための塩分の添加量を抑えることで、液状調味料の塩味を弱くし、食味のバランスを向上させることができる。また、殺菌温度が低くなるため、液状調味料の乳風味の劣化を抑制することができる。
【0027】
(乳化分散した脂質の粒径)
本発明の液状調味料中の乳化分散した脂質の粒径の最頻値は、好ましくは10μm以上150μm以下であり、より好ましくは20μm以上であり、さらに好ましくは30μm以上であり、また、好ましくは140μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下である。乳化分散した脂質の粒径の最頻値が上記数値範囲内であれば、液状調味料の乳風味を向上させることができる。
なお、本発明における粒径は、最頻値の粒径(モード径)を指し、レーザー回折式粒度分布測定装置「粒度分布計MT3300EXII(日機装株式会社製)」を用いて、分析条件:非球形、屈折率1.6で、測定される値である。
【0028】
(粘度)
本発明の液状調味料の25℃における粘度は、好ましくは1.0Pa・s以上であり、より好ましくは2.0Pa・s以上であり、さらに好ましくは3.0Pa・s以上であり、また、好ましくは15.0Pa・s以下であり、より好ましくは12.5Pa・s以下、さらに好ましくは10.0Pa・s以下である。液状調味料に上記範囲内の粘度を付与することで、液状調味料の風味をより感じることができる。
なお、粘度の測定方法は、BH形粘度計を使用し、品温25℃、回転数10rpmの条件で、粘度が1.5Pa・s以上10.0Pa・s未満のとき:ローターNo.3、10.0Pa・s以上15Pa・s以下のとき:ローターNo.4を使用し、測定開始後ローターが2回転した時の示度により算出した値である。
【0029】
(酸材)
本発明の液状調味料は、酸材を配合することで、上記のpHに調整することができる。酸材としては、酢酸(食酢)と乳酸とを併用することで、液状調味料の酸味を抑えながら、乳風味を向上させることができる。
【0030】
酸材の配合量は、目的とするpHに応じて適宜調節することができる。酢酸の配合量は、液状調味料全体に対して、0.05質量%以上0.5質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは0.3質量%以下である。また、乳酸の配合量は、酢酸1質量部に対して、好ましくは1質量部超であり、より好ましくは1.1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下である。酢酸及び乳酸の配合量が上記範囲内であれば、液状調味料の酸味を抑えながら、乳風味を向上させることができる。
【0031】
(有機酸塩)
本発明の液状調味料に用いる有機酸塩の酸の種類としては、通常食品素材として利用されているものであれば特に限定されず、例えば、クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、コハク酸、及びフマル酸等が挙げられる。また、有機酸塩の塩の種類としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、及びアンモニウム等が挙げられる。液状調味料に有機酸塩を配合することにより、食味のバランスが良好になり、乳風味をより感じやすくなる。これらの中でも、液状調味料の食味の観点から、クエン酸塩、乳酸塩、及び酢酸塩が好ましく、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、及び酢酸ナトリウムがより好ましく、クエン酸ナトリウム及び乳酸ナトリウムがさらに好ましい。
【0032】
有機酸塩の配合量は、液状調味料全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。有機酸塩の配合量が上記範囲内であれば、液状調味料の食味のバランスがより良好となり、乳風味をさらに感じやすくなる。
【0033】
(アルコール)
本発明の液状調味料に用いるアルコールとしては、エタノールが挙げられる。液状調味料にエタノールを加えることで、pHを低下させるための酸材や水分活性を低下させるための塩分の添加量を抑えながら、液状調味料の保存性を向上させることができる。
【0034】
アルコールの配合量は、液状調味料全体に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。アルコールの配合量が上記範囲内であれば、液状調味料の保存性を向上させることができる。また、アルコールを配合するとタンパク質の凝集を引き起こす可能性があるが、意外にも、アルコールを低濃度で配合することで、乳風味を向上することができる。
【0035】
(食用油脂)
本発明の液状調味料に用いる食用油脂としては、特に限定されないが、例えば、菜種油、大豆油、パーム油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、魚油、牛脂、豚脂、鶏脂、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂等を挙げることができる。これらの中でも、菜種油、大豆油又はパーム油を用いることが好ましい。
【0036】
食用油脂の配合量は、液状調味料全体に対して、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。食用油脂の配合量が上記範囲内であれば、油のコクを感じ易く、また液状調味料の食味を滑らかにすることができる。
【0037】
(増粘剤)
本発明の液状調味料は、粘度調節のために増粘剤を配合することが好ましい。本発明の酸性乳化液状調味料に用いる増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びアラビアガム等のガム類、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉コーンスターチ(例えば、スイートコーン由来、デントコーン由来、ワキシーコーン由来のコーンスターチ)、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、及びそれらの澱粉に、架橋処理、エステル化処理、エーテル化処理、酸化処理等を行った加工澱粉等が挙げられる。
【0038】
増粘剤の配合量は、液状調味料全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは3.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。増粘剤の配合量が上記範囲内であれば、液状調味料は保存後でも安定した乳化状態を維持することができる。
【0039】
(食塩)
本発明の液状調味料は、食塩を配合することで水分活性を調節することができる。食塩の配合量は、液状調味料全体に対して、1質量%以上7質量%以下であり、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは6質量%以下である。食塩の配合量が上記範囲内であれば、液状調味料の塩味を調節して食味のバランスを保ちながら水分活性を下げて、液状調味料の保存性を向上させることができる。
【0040】
(他の原料)
本発明の液状調味料は、上述した原料以外に、本発明の効果を損なわない範囲で液状調味料に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、醤油、みりん、胡麻、グルタミン酸ナトリウム、ブイヨン等の調味料、ぶどう糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、オリゴ糖、トレハロース等の糖類、からし粉、胡椒等の香辛料、レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、静菌剤等が挙げられる。
【0041】
<液状調味料の製造方法>
本発明の液状調味料の製造方法の一例について説明する。例えば、まず、清水、乳原料(チーズ、乳等の混合物)、酢酸(食酢)、乳酸、有機酸、アルコール、食塩、増粘剤、及び他の原料を均一になるように混合して、水相を調整する。その後、調整した水相を攪拌しながら食用油脂を注加して乳化し、液状調味料を調整することができる。
【0042】
本発明の液状調味料の製造には、通常の液状調味料の製造に使われる装置を用いることができる。このような装置としては、例えば、一般的な攪拌機、スティックミキサー、スタンドミキサー、ホモミキサー、ホモディスパー等が挙げられる。撹拌機の撹拌羽形状としては、例えばプロペラ翼、タービン翼、パドル翼、アンカー翼等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0044】
<液状調味料の製造例>
[実施例1~10、比較例1~5]
表1に記載の配合割合に準じて、液状調味料を製造した。具体的には、まず、下記の乳原料(チーズ、乳等の混合物)、食酢(酢酸含有量5%)、乳酸(50%溶液)、クエン酸ナトリウム、エタノール、食塩、アミノ酸等、及び増粘剤(キサンタンガム、加工澱粉)を均一になるように混合して、水相を調整した。その後、調整した水相を攪拌しながら食用油脂を注加して乳化し、液状調味料を調整した。
・乳原料A:乳タンパク質の含有量7.3%、チーズ含有量15.6%
・乳原料B:乳タンパク質の含有量7.7%、チーズ含有量28.8%
・乳原料C:乳タンパク質の含有量25.0%、チーズ含有量50.0%
・乳原料D:乳タンパク質の含有量16.7%、チーズ含有量33.3%
・乳原料E:乳タンパク質の含有量18.2%、チーズ含有量60.0%
【0045】
(pHの測定)
上記で得られた実施例1~10及び比較例1~5の液状調味料について、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF-72)を用いて、pHを測定した。測定結果を表2に示した。
【0046】
(粘度の測定)
上記で得られた実施例1~10及び比較例1~5の液状調味料について、BH形粘度計を使用し、品温25℃、回転数10rpmの条件で、粘度が1.5Pa・s以上10.0Pa・s未満のとき:ローターNo.3、10.0Pa・s以上15Pa・s以下のとき:ローターNo.4を使用し、測定開始後ローターが2回転した時の示度により算出した。粘度を測定したところ、実施例1~10についてはいずれも3~10Pa・sであり、比較例1~5についてはいずれも1~15Pa・sであった。
【0047】
(粒径の測定)
上記で得られた実施例1~10及び比較例1~5の液状調味料について、5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液で10倍希釈したものをサンプルとして、レーザー回折式粒度分布測定装置「粒度分布計MT3300EXII(日機装株式会社製)」(分析条件:非球形、屈折率1.6)を用いて、乳化分散した脂質の粒径の最頻値を測定した。実施例1~10の液状調味料中の乳化分散した脂質の粒径の最頻値はいずれも30~100μmであり、比較例1~5の液状調味料中の乳化分散した脂質の粒径の最頻値はいずれも10~150μmであった。
【0048】
(官能評価)
上記で得られた実施例1~10及び比較例1~5の液状調味料について、訓練されたパネルにより、下記の基準で、「乳風味」、「酸味」、及び「塩味」を官能評価した。評価結果を表2に示した。
[乳風味の評価基準]
◎:乳風味(特にチーズ風味)を非常に良く感じた。
〇:乳風味(特にチーズ風味)を良く感じた。
×:乳風味(特にチーズ風味)をあまり感じなかった。
[酸味の評価基準]
◎:酸味が弱く、食味のバランスが良かった。
〇:酸味が普通であり、食味のバランスは問題無かった。
×:酸味が強く、食味のバランスが悪かった。
[塩味の評価基準]
◎:塩味が弱く、食味のバランスが良かった。
〇:塩味が普通であり、食味のバランスは問題無かった。
×:塩味が強く、食味のバランスが悪かった。
【0049】
(乳タンパク質の安定性)
上記で得られた実施例1~10及び比較例1~5の液状調味料について、10℃で7日間静置後、乳タンパク質が凝集しているか否かを下記の基準で目視にて確認した。評価結果を表2に示した。
[乳タンパク質の安定性の評価基準]
◎:乳タンパク質は全く凝縮していなかった。
〇:乳タンパク質は僅かに凝集していたが、実用上問題無かった。
×:乳タンパク質は凝集して、沈殿していた。
【0050】
(液状調味料の保存性)
上記で得られた実施例1~10及び比較例1~5の液状調味料について、35℃で28日間静置後、対象とする生菌数を一般的な微生物試験法にて確認し、保存性を評価した。評価結果を表2に示した。
[乳タンパク質の安定性の評価基準]
〇:生菌数は10以下/gであり、保存性が良好であった。
×:生菌数は10超/gであり、保存性が悪かった。
【0051】
【0052】
【0053】
表1に示す通り、実施例1~10の液状調味料はいずれも、乳風味(特にチーズ風味)に優れ、酸味及び塩味が弱く、乳タンパク質の安定性に優れ、保存性も良好であった。
比較例1の液状調味料は、pHが低く、酸味が強く、食味のバランスが悪かった。
比較例2の液状調味料は、pHが低く、保存性が悪かった。
比較例3の液状調味料は、乳タンパク質の量が少なく、乳風味(特にチーズ風味)をあまり感じなかった。
比較例4の液状調味料は、乳タンパク質の量が多く、乳タンパク質の安定性が悪かった。
比較例5の液状調味料は、水分活性が低く、塩味が強く、食味のバランスが悪かった。