(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】空気圧縮装置、及び、空気吸引装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/10 20060101AFI20250325BHJP
B61C 17/00 20060101ALI20250325BHJP
B61C 17/12 20060101ALI20250325BHJP
F04B 39/08 20060101ALI20250325BHJP
F04B 41/00 20060101ALI20250325BHJP
F04C 28/26 20060101ALI20250325BHJP
F04B 49/24 20060101ALI20250325BHJP
【FI】
F04B49/10 331C
B61C17/00 B
B61C17/12 A
F04B39/08 C
F04B41/00 B
F04C28/26 Z
F04B49/24
(21)【出願番号】P 2020191648
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕
(72)【発明者】
【氏名】財前 剣也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 洋司
(72)【発明者】
【氏名】田中 源平
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-041591(JP,U)
【文献】特開2017-080707(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082552(WO,A1)
【文献】米国特許第03369736(US,A)
【文献】特開2016-120812(JP,A)
【文献】特開平11-324708(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101539315(CN,A)
【文献】特開2008-214109(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110905774(CN,A)
【文献】特開平11-342720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/10
B61C 17/00
B61C 17/12
F04B 39/08
F04B 41/00
F04C 28/26
F04B 49/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入した空気を圧縮して吐出する圧縮機と、
前記圧縮機を内部に収容するとともに、前記圧縮機が吸入する空気を導入するための主吸気口及び補助吸気口を有するケーシングと、
前記主吸気口に導入される空気を濾過する主吸気口フィルターと、
前記ケーシングの内外の圧力差が所定値以上になると前記補助吸気口を開放して前記ケーシングの外部の空気を前記ケーシング内に流入させる開閉機構部と、
を備え、
前記補助吸気口は、空気流れの上流部が前記主吸気口フィルターに連通しない位置に配置され
、
前記ケーシングには、前記補助吸気口を、前記ケーシングの前記主吸気口を形成する壁の外側から覆い、かつ、鉛直方向の下側に向かって開口する開口部を形成するカバー部が設けられ、
前記開口部は、前記主吸気口とは別に独立して設けられている、空気圧縮装置。
【請求項2】
前記開閉機構部は、
前記補助吸気口が開放された開放位置と前記補助吸気口が閉塞された閉塞位置との間を移動可能な蓋体と、
前記閉塞位置に前記蓋体を規制する規制部であって、前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値以上になった場合に、前記規制を解除する前記規制部と、
を備える、請求項1に記載の空気圧縮装置。
【請求項3】
前記規制部は、前記蓋体に前記閉塞位置に向けて弾性力を付与するばねである、請求項2に記載の空気圧縮装置。
【請求項4】
前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値よりも大きくなって、前記蓋体の開放方向の変位が所定量以上になったときに、前記蓋体のそれ以上の開放を規制するストッパ部材を備える、請求項2または3に記載の空気圧縮装置。
【請求項5】
前記開閉機構部は、
前記補助吸気口が開放された開放位置と前記補助吸気口が閉塞された閉塞位置との間を移動可能な蓋体と、
前記ケーシングの内部の圧力、前記圧縮機の吐出流量、及び、前記圧縮機の発熱量の少なくとも一つに基づいて、前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値以上であるか否かを検出する検出器と、
前記検出器が、前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値以上であることを検出したときに、前記蓋体を開放位置に移動させるアクチュエータと、
を備える、請求項1に記載の空気圧縮装置。
【請求項6】
前記検出器は、前記圧縮機の吐出流量と発熱量の少なくとも一つに基づいて、前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値以上であるか否かを検出し、
前記圧縮機は、
前記ケーシングの内部に流入した空気を吸入する吸気導入部と、
前記吸気導入部を通して吸入する空気を濾過する導入部フィルターと、を有し、
前記アクチュエータが前記蓋体を開放する方向に動作しても、前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値以上であるとの検出が継続されるときに、前記導入部フィルターの通気機能の低下を報知する導入部フィルター報知器を備える、請求項5に記載の空気圧縮装置。
【請求項7】
前記補助吸気口には、前記主吸気口フィルターよりも捕集性能の低い補助フィルターが設置されている、請求項
1から6のいずれか1項に記載の空気圧縮装置。
【請求項8】
前記補助吸気口が前記開閉機構部によって開放されたことを報知する開放報知器を備える、請求項
1から6のいずれか1項に記載の空気圧縮装置。
【請求項9】
前記ケーシングの内部には、前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値以上でないときには、前記主吸気口フィルターを通して前記ケーシングの内部に流入した外気を前記圧縮機に冷却風として送り、かつ、前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値以上のときには、前記開閉機構部によって開放された前記補助吸気口を通して前記ケーシングの内部に流入した外気を前記圧縮機に冷却風として送る冷却ファンが配置されている、請求項
1から8のいずれか1項に記載の空気圧縮装置。
【請求項10】
前記ケーシングは、鉄道車両の車体の下方に取り付けられる、請求項1から
9のいずれか1項に記載の空気圧縮装置。
【請求項11】
前記補助吸気口の吸入側は、前記鉄道車両の走行方向と直交する方向を向いて開口している、請求項
10に記載の空気圧縮装置。
【請求項12】
空気を吸引する吸引機と、
前記吸引機を内部に収容するとともに、前記吸引機が吸引する空気を導入するための主吸引口及び補助吸引口を有するケーシングと、
前記主吸引口に導入される空気を濾過する主吸引口フィルターと、
前記ケーシングの内外の圧力差が所定値以上になると前記補助吸引口を開放して前記ケーシングの外部の空気を前記ケーシング内に流入させる開閉機構部と、
を備え、
前記補助吸引口は、空気流れの上流部が前記主吸引口フィルターに連通しない位置に配置され
、
前記ケーシングには、前記補助吸引口を、前記ケーシングの前記主吸引口を形成する壁の外側から覆い、かつ、鉛直方向の下側に向かって開口する開口部を形成するカバー部が設けられ、
前記開口部は、前記主吸引口とは別に独立して設けられている、空気吸引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮装置、及び、空気吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両では、ドアの開閉装置やブレーキ装置等の駆動源として圧縮空気が用いられている。このため、鉄道車両では、圧縮空気を生成するための空気圧縮装置を搭載している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
鉄道車両で用いられる空気圧縮装置として、圧縮機がケーシングに収容された状態で車両に搭載されるものがある。ケーシングには、圧縮機が吸入する空気を導入するための吸気口が形成され、吸気口には、外気に混入している塵埃等を除去するための吸気口フィルターが取り付けられている。また、ケーシング内に配置された圧縮機の吐出部は、配管を通して外部の圧縮空気タンクに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の空気圧縮装置は、ケーシングの吸気口に取り付けられた吸気口フィルターに塵埃による目詰まりが生じた場合や、吸気口フィルターにビニル袋のような大きな異物が付着した場合、吸気口フィルターに着雪や凍結が生じた場合等に、圧縮機で本来必要となる空気の吸入量が大きく制限される。この結果、圧縮機の負荷が増大し圧縮機での発熱量が増大したり、吸入空気の不足によって圧縮空気タンクへの空気充填の遅れが生じる不都合を招く。
【0006】
本発明は、吸気側の主のフィルターの通気抵抗が増加した場合にも、吸入側に充分な空気を導入することができる空気圧縮装置、及び、空気吸引装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る空気圧縮装置は、吸入した空気を圧縮して吐出する圧縮機と、前記圧縮機を内部に収容するとともに、前記圧縮機が吸入する空気を導入するための主吸気口及び補助吸気口を有するケーシングと、前記主吸気口に導入される空気を濾過する主吸気口フィルターと、前記ケーシングの内外の圧力差が所定値以上になると前記補助吸気口を開放して前記ケーシングの外部の空気を前記ケーシング内に流入させる開閉機構部と、を備え、前記補助吸気口は、空気流れの上流部が前記主吸気口フィルターに連通しない位置に配置され、前記ケーシングには、前記補助吸気口を、前記ケーシングの前記主吸気口を形成する壁の外側から覆い、かつ、鉛直方向の下側に向かって開口する開口部を形成するカバー部が設けられ、前記開口部は、前記主吸気口とは別に独立して設けられている。
【0008】
上記の構成により、ケーシングの内外の圧力差が所定値に達しないときには、開閉機構部が補助吸気口を閉塞している。この場合、外気は主吸気口フィルターを通って圧縮機の吸入部に吸入される。一方、主吸気口フィルター部分の通気抵抗が増加してケーシングの内外の圧力差が所定値以上になると、開閉機構部が補助吸気口を開放する。この場合、外気は補助吸気口を通って圧縮機の吸入部に吸入される。したがって、主吸気口フィルター部分の通気抵抗が増加した場合であっても、圧縮機の吸入側に充分な空気を導入することができる。
【0009】
前記開閉機構部は、前記補助吸気口が開放された開放位置と前記補助吸気口が閉塞された閉塞位置との間を移動可能な蓋体と、前記閉塞位置に前記蓋体を規制する規制部であって、前記ケーシングの内外の前記圧力差が所定値以上になった場合に、前記規制を解除する前記規制部と、を備える構成であっても良い。
【0010】
前記規制部は、前記蓋体に前記閉塞位置に向けて弾性力を付与するばねであっても良い。
【0011】
前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値よりも大きくなって、前記蓋体の開放方向の変位が所定量以上になったときに、前記蓋体のそれ以上の開放を規制するストッパ部材を備えるようにしても良い。
【0012】
前記開閉機構部は、前記補助吸気口が開放された開放位置と前記補助吸気口が閉塞された閉塞位置との間を移動可能な蓋体と、前記ケーシングの内部の圧力、前記圧縮機の吐出流量、及び、前記圧縮機の発熱量の少なくとも一つに基づいて、前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値以上であるか否かを検出する検出器と、前記検出器が、前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値以上であることを検出したときに、前記蓋体を開放位置に移動させるアクチュエータと、を備える構成であっても良い。
【0013】
前記検出器は、前記圧縮機の吐出流量と発熱量の少なくとも一つに基づいて、前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値以上であるか否かを検出し、前記圧縮機は、前記ケーシングの内部に流入した空気を吸入する吸気導入部と、前記吸気導入部を通して吸入する空気を濾過する導入部フィルターと、を有し、前記アクチュエータが前記蓋体を開放する方向に動作しても、前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値以上であるとの検出が継続されるときに、前記導入部フィルターの通気機能の低下を報知する導入部フィルター報知器を備えるようにしても良い。
【0015】
前記補助吸気口には、前記主吸気口フィルターよりも捕集性能の低い補助フィルターが設置されるようにしても良い。
【0016】
前記補助吸気口が前記開閉機構部によって開放されたことを報知する開放報知器を備えるようにしても良い。
【0017】
前記ケーシングの内部には、前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値以上でないときには、前記主吸気口フィルターを通して前記ケーシングの内部に流入した外気を前記圧縮機に冷却風として送り、かつ、前記ケーシングの内外の圧力差が前記所定値以上のときには、前記開閉機構部によって開放された前記補助吸気口を通して前記ケーシングの内部に流入した外気を前記圧縮機に冷却風として送る冷却ファンが配置されるようにしても良い。
【0018】
前記ケーシングは、鉄道車両の車体の下方に取り付けられるようにしても良い。
【0019】
前記補助吸気口の吸入側は、前記鉄道車両の走行方向と直交する方向を向いて開口していることが望ましい。
【0022】
本発明の一形態の空気吸引装置は、空気を吸引する吸引機と、前記吸引機を内部に収容するとともに、前記吸引機が吸引する空気を導入するための主吸引口及び補助吸引口を有するケーシングと、前記主吸引口に導入される空気を濾過する主吸引口フィルターと、前記ケーシングの内外の圧力差が所定値以上になると前記補助吸引口を開放して前記ケーシングの外部の空気を前記ケーシング内に流入させる開閉機構部と、を備え、前記補助吸引口は、空気流れの上流部が前記主吸引口フィルターに連通しない位置に配置され、前記ケーシングには、前記補助吸引口を、前記ケーシングの前記主吸引口を形成する壁の外側から覆い、かつ、鉛直方向の下側に向かって開口する開口部を形成するカバー部が設けられ、前記開口部は、前記主吸引口とは別に独立して設けられている。
【0023】
上記の構成により、ケーシングの内外の圧力差が所定値以上でないときには、開閉機構部が補助吸引口を閉塞している。この場合、外気は主吸引口フィルターを通って吸引機の吸入部に吸引される。一方、主吸引口フィルターの通気抵抗が増加してケーシングの内外の圧力差が所定値以上になると、開閉機構部が補助吸引口を開放する。この場合、外気は補助吸引口を通って吸引機の吸入部に吸引される。したがって、主吸引口フィルターの通気機能が低下した場合であっても、吸引機の吸入側に充分な空気を導入することができる。
【発明の効果】
【0026】
上述の空気圧縮装置は、吸気口フィルターの通気抵抗が大きく増加した場合に、開閉機構部によって補助吸気口が開かれるため、圧縮機の吸入側に充分な空気を導入することができる。
また、上述の空気吸引装置は、主吸引口フィルターの通気抵抗が大きく増加した場合に、開閉機構部によって補助吸引口が開かれるため、吸引機の吸入側に充分な空気を導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態における鉄道車両の模式的な側面図。
【
図2】本発明の実施形態における鉄道車両の模式的な平面図。
【
図3】本発明の第1実施形態の空気圧縮装置の側面図。
【
図4】本発明の第1実施形態の空気圧縮装置の正面図。
【
図5】本発明の第1実施形態の空気圧縮装置の
図3のV部に対応する部分の断面図。
【
図6】本発明の第1実施形態の空気圧縮装置の作動状態を示す模式的な断面図。
【
図7】本発明の第1実施形態の空気圧縮装置の作動状態を示す模式的な断面図。
【
図8】本発明の第2実施形態の空気圧縮装置の作動状態を示す模式的な断面図。
【
図9】本発明の第2実施形態の空気圧縮装置の作動状態を示す模式的な断面図。
【
図10】本発明の第3実施形態の空気圧縮装置の作動状態を示す模式的な断面図。
【
図11】本発明の第3実施形態の空気圧縮装置の作動状態を示す模式的な断面図。
【
図12】本発明の第4実施形態の空気圧縮装置の模式的な部分断面側面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で説明する各実施形態では、共通部分に同一符号を付し、重複する説明を一部省略するものとする。
【0029】
<鉄道車両>
図1は、実施形態に係る空気圧縮装置1を搭載した鉄道車両100の模式的な側面図である。
図1に示すように、空気圧縮装置1は鉄道車両100の車体100aの下方に、例えば、二つ設けられている。
以下の説明では、鉄道車両100の進行する方向を「進行方向」と称し、進行方向に直交する方向を「車幅方向」と称する。また、「上」「下」については、鉄道車両100をレール103(
図2参照)上に載置した状態での上と下を意味するものとする。
【0030】
空気圧縮装置1は、外気を吸入して鉄道車両100で用いる圧縮空気を生成する。すなわち、空気圧縮装置1で生成された圧縮空気は、鉄道車両100に搭載されるブレーキ装置やドアの開閉装置等の空気圧機器を作動させるため等に用いられる。
【0031】
図2は、空気圧縮装置1の配置を示す鉄道車両100の模式的な平面図である。
図2では、空気圧縮装置1、鉄道車両100が走行するレール103(軌道)、及び枕木102を2点鎖線で示している。
なお、本実施形態では、
図2に示すように、空気圧縮装置1が車両の進行方向に沿って前後に二つ並んで配置されているが、搭載する空気圧縮装置1の数は一つであっても良い。
【0032】
<第1実施形態の空気圧縮装置>
図3は、第1実施形態の空気圧縮装置1を進行方向から見た側面図であり、
図4は、同じ空気圧縮装置1を車幅方向外側から見た正面図である。また、
図5は、空気圧縮装置1の
図3のV部に対応する部分の断面図(車幅方向に沿って切った断面図)である。
空気圧縮装置1は、吸入した空気を圧縮して吐出する圧縮機10と、圧縮機10に冷却風を送る冷却ファン11と、圧縮機10及び冷却ファン11を収容するケーシング12と、を備えている。本実施形態のケーシング12は、車幅方向の一端側に開口部9(
図5参照)を有する略直方体状のケーシング本体13と、ケーシング本体13の開口部9側の端部に脱着可能に取り付けらた端部カバー14と、を備えている。ケーシング本体13の開口部9は、ケーシング本体13の一端側の壁部の上部寄りに配置されている。ケーシング本体13の一端側の壁部と端部カバー14の間には、鉛直下方に向かって開口する主吸気口15が形成されている。主吸気口15には、主吸気口15を通してケーシング12内に導入される空気(外気)を濾過する主吸気口フィルター16が取り付けられている。
【0033】
圧縮機10は、図示しない電動モータによって駆動される。圧縮機10の形式(構造)は、例えば、スクロール式等を採用することができる。また、本実施形態の圧縮機10は、吸入した空気を圧縮して吐出する圧縮機本体10Aと、圧縮機本体10Aの吸入側に接続されて、ケーシング12の内部に流入した空気を吸入する吸気導入部10Bと、を有する。吸気導入部10Bの内部には、吸気導入部10Bの吸気口10Baを通して吸入した空気を濾過する導入部フィルター17が装着されている。また、圧縮機本体10Aの吐出側には、外部の圧縮空気タンク18(
図6,
図7参照)に繋がる吐出配管19(
図6,
図7参照)が接続されている。
【0034】
端部カバー14の上部寄りの端面には、横長の長方形状の補助吸気口20が形成されている。補助吸気口20は、ケーシング本体13の開口部9に臨む位置の壁を貫通している。補助吸気口20は、外気をケーシング12内に導入することができる。端部カバー14には、補助吸気口20を開閉する開閉機構部21が取り付けられている。
【0035】
開閉機構部21は、補助吸気口20が開放された開放位置と補助吸気口20が閉塞された閉塞位置との間を移動可能な蓋体22と、蓋体22に閉塞位置に向けて弾性力を付与するばね23と、を備えている。蓋体22は、補助吸気口20よりも一回り大きい横長の長方形状の板材22aと、板材22aの周縁部に取り付けられたシール部材22bと、を有する。蓋体22は、その上縁部がケーシング12の内側において、端部カバー14の補助吸気口20の上縁部に回動可能に支持されている。蓋体22は、蝶番24によって回動可能に端部カバー14に取り付けられている。蝶番24は、補助吸気口20の上辺に沿って延びる支持軸24aの周りに、蓋体22に弾性力を付与する前記ばね23が組み付けられている。本実施形態では、ばね23は、捩りばねによって構成されている。
【0036】
蓋体22は、ばね23の弾性力を受け、板材22aの周縁部のシール部材22bが補助吸気口20の周囲に密接する。蓋体22は、これによって補助吸気口20をケーシング12の内側から閉塞する。また、蓋体22のケーシング12内に臨む面には、ケーシング12内の空気の圧力が作用し、蓋体22の補助吸気口20に臨む面には、ケーシング12の外部の空気(外気)の圧力が作用する。蓋体22は、ケーシング12の内外の圧力差と、ばね23による押し付け力とのバランスに応じて補助吸気口20を開閉する。
【0037】
蓋体22とばね23を備えた開閉機構部21は、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上に増加していない状況(正常な状況)では、蓋体22がばね23の弾性力を受けて補助吸気口20を閉塞する。また、この状態から主吸気口フィルター16の目詰まりや、大型の異物の付着、着雪、凍結等によって主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が増加してケーシング12の内外の圧力差が所定値以上に増大すると、開閉機構部21の蓋体22が補助吸気口20を開放する。
なお、本実施形態では、蝶番24のばね23が、蓋体22を閉塞位置に規制する規制部を構成している。ばね23は、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上になった場合に、閉塞位置での蓋体22の規制を解除する。
【0038】
端部カバー14の補助吸気口20の下縁部には、ケーシング12内において、蓋体22の開放方向の過大な変位を規制するストッパ部材25が取り付けられている。ストッパ部材25は、補助吸気口20の形成される端部カバー14の壁から所定距離離間した位置において、蓋体22の回動軌道方向に略L字状に屈曲する係止爪25aを備えている。係止爪25aの一部は、蓋体22の回動軌道内に位置されている。
ストッパ部材25は、ケーシング12の内外の圧力差が所定値よりも大きくなって、蓋体22の開放方向の変位が所定量以上になったときに、係止爪25aが蓋体22の下縁に当接することにより、蓋体22のそれ以上の開放変位を規制する。
【0039】
また、端部カバー14(ケーシング12)には、補助吸気口20の周囲を端部カバー14の外側から覆い、鉛直方向の下方に向かって開口するカバー部26が設けられている。カバー部26は、補助吸気口20の車幅方向外側の前方と、上方及び左右の側方(進行方向の側方)を覆い、下方側には、鉛直下方に向かって開口する開口部26aが設けられている。補助吸気口20が蓋体22によって開放されたときには、外気はカバー部26の開口部26aと補助吸気口20を通ってケーシング12の内部に導入される。
【0040】
ここで、ケーシング12内に配置された冷却ファン11は、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上でないときには、主吸気口フィルター16を通してケーシング12の内部に流入した外気を圧縮機10に冷却風として送る。また、冷却ファン11は、主吸気口フィルター16の目詰まり等によってケーシング12の内外の圧力差が所定値以上に増加したときには、開閉機構部21によって開放された補助吸気口20から流入した外気を圧縮機10に冷却風として送る。
【0041】
なお、本実施形態の空気圧縮装置1は、ケーシング12内に外気を取り入れる主吸気口15と補助吸気口20の吸入側が、鉄道車両100の進行方向と略直交する方向を向くように開口している。すなわち、主吸気口15の吸入側は、鉛直方向の下方に向くように開口しており、補助吸気口20の吸入側は、カバー部26の開口部26aによって鉛直方向の下方に開口している。
【0042】
<空気圧縮装置の作動>
図6は、通常時(主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が所定値未満のとき)の空気圧縮装置1の作動状態を示す模式的な断面図である。
ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上でないときには、
図6に示すように、開閉機構部21が補助吸気口20を閉塞している。この状態で圧縮機10と冷却ファン11が作動すると、ケーシング12の外部の空気(外気)がこれらの吸引力を受けて、主吸気口フィルター16を通過してケーシング12内に導入される。ケーシング12内に導入された空気は、圧縮機10の吸気導入部10Bから圧縮機本体10Aに吸入され、圧縮機本体10Aで加圧されて圧縮空気として吐出される。圧縮機本体10Aから吐出された圧縮空気は、吐出配管19を通って圧縮空気タンク18に充填される。
【0043】
上記のように空気圧縮装置1が作動している間は、外気が主吸気口フィルター16を通過してケーシング12内に導入されるため、外気に混入している比較的大きな塵埃は主吸気口フィルター16によって除去される。また、主吸気口フィルター16の目を通り抜けてケーシング12の内部に入り込んだ塵埃は、圧縮機10の吸気導入部10Bに設けられた導入部フィルター17によって除去される。
なお、導入部フィルター17は、主吸気口フィルター16の目よりも細かい目のものが用いられている。
【0044】
また、主吸気口フィルター16を通過してケーシング12内に導入された空気の一部は、冷却ファン11により冷却風として圧縮機10に送られる。これによって相対的に温度の低い外気によって圧縮機10が冷却される。この結果、圧縮機10の昇温が抑制されることになり、圧縮機10の圧縮性能が良好に維持される。
【0045】
図7は、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上に増加したときの作動状態を示す空気圧縮装置1の模式的な断面図である。
主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が増加すると、主吸気口15を通したケーシング12内への外気の導入が妨げられるようになる。これにより、ケーシング12の内外の圧力差が次第に増大し、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上になると、
図7に示すように、内外の差圧がばね23の弾性力に打ち勝ち、開閉機構部21の蓋体22を押し開くようになる。この結果、ケーシング12の補助吸気口20が蓋体22によって開放され、外気が補助吸気口20を通って圧縮機10の吸気導入部10Bから圧縮機本体10Aに吸入される。圧縮機本体10Aで生成された圧縮空気は、吐出配管19を通って圧縮空気タンク18に充填される。
【0046】
上記のように補助吸気口20がケーシング12の内外の差圧によって押し開かれると、外気が補助吸気口20を通して直接ケーシング12内に流入する。しかし、このとき外気は、鉛直方向の下向きに開口するカバー部26の開口部26a(
図3,
図4参照)を通過して補助吸気口20に流入するため、外気に混入している塵埃はカバー部26の内部に入り込みにくくなる。
ただし、
図6,
図7に二点鎖線で示すように、補助吸気口20に補助フィルター35を設置するようにしても良い。ここで用いる補助フィルター35は、主吸気口フィルター16よりも目が粗いものを用いることが望ましい。
また、
図6,
図7に示すように、蓋体22が開放されたことを検知する開放検知センサ30を設け、開放検知センサ30が蓋体22の開放を検知したときに開放報知器31を作動させるようにしても良い。開放報知器31は、蓋体22の開放を運転手や車両管理者に知らせることできるものであれば良く、例えば、ランプやチャイム、ブザー等を採用することができる。
【0047】
また、補助吸気口20を通してケーシング12内に導入された空気の一部は、冷却ファン11により冷却風として圧縮機10に送られる。これによって相対的に温度の低い外気によって圧縮機10が冷却される。
【0048】
<第1実施形態の効果>
以上のように、本実施形態の空気圧縮装置1は、主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が増加してケーシング12の内外の圧力差が所定値以上になったときには、開閉機構部21によってケーシング12の補助吸気口20が開かれるため、圧縮機10の吸入側に充分な空気を導入することができる。したがって、本実施形態の空気圧縮装置1を採用した場合には、主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が増加した場合であっても、吸入空気の不足による圧縮機10の負荷の増大や、圧縮空気タンク18への空気充填の遅れが生じるのを抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態の空気圧縮装置1では、開閉機構部21が、開放位置と閉塞位置との間を移動可能な蓋体22と、蓋体22を閉塞位置に規制する規制部(ばね23)と、を備えている。そして、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上になった場合に規制部(ばね23)が閉塞位置での蓋体22の規制を解除する構成とされている。このため、本実施形態の空気圧縮装置1を採用した場合には、アクチュエータ等の大掛かりな機器を用いることなく、主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が増加した場合に補助吸気口20を開放することができる。
なお、本実施形態では、蓋体22を閉塞位置に規制する規制部としてばね23を採用しているが、規制部は必ずしもばね23に限定されるものではない。例えば、蓋体22を閉塞位置に規制する規制部を、所定値以上の荷重が作用したときに破壊される脆弱部材によって構成するようにしても良い。
また、本実施形態では、蓋体22が蝶番24の支持軸24aを中心に回動して補助吸気口20を開閉する構造とされているが、蓋体22がケーシング12の壁面に沿ってスライド移動して補助吸気口20を開閉する構造であっても良い。
【0050】
ただし、本実施形態の空気圧縮装置1は、規制部が、蓋体22に閉塞位置に向けて弾性力を付与するばね23によって構成されているため、雪の付着等によって主吸気口フィルター16の通気が一時的に低下した場合には、主吸気口フィルター16の通気が回復したときに蓋体22を元の閉塞位置に自然に戻すことができる。
また、規制部としてばね23を採用した場合には、ばね23の初期荷重の調整等により、蓋体22の開動作の開始圧を容易に設定調整することができる。
【0051】
また、本実施形態の空気圧縮装置1は、ケーシング12の内外の圧力差が所定値よりも大きくなって、蓋体22の開放方向の変位が所定量以上になったときに、蓋体22のそれ以上の開放を規制するストッパ部材25を備えている。このため、蓋体22の過大な開放変位をストッパ部材25によって規制することができる。したがって、本構成を採用した場合には、補助吸気口20が開放される際に蓋体22がケーシング12内の他の部材と干渉するのを回避し、蓋体22や他の部材が損傷するのを未然に防止することができる。
【0052】
さらに、本実施形態の空気圧縮装置1は、ケーシング12に、補助吸気口20をケーシング12の外側から覆うカバー部26が取り付けられ、カバー部26の開口部26aが鉛直方向の下方に開口している。このため、補助吸気口20が蓋体22によって開放されたときに、外気に混入している塵埃や雪等が直接補助吸気口20に入り込むのを可及的に抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態の空気圧縮装置1では、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上でないときには、ケーシング12内の冷却ファン11が、主吸気口フィルター16を通してケーシング12内に流入した外気を圧縮機10に冷却風として送る。そして、主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が増加してケーシング12の内外の圧力差が所定値以上となったときには、ケーシング12内の冷却ファン11が、補助吸気口20を通してケーシング12の内部に流入した外気を圧縮機10に冷却風として送る。このため、目詰まり等によって主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が増加したときには、補助吸気口20を通して流入した充分な外気を冷却ファン11によって圧縮機10に送風することができる。したがって、本実施形態の空気圧縮装置1を採用した場合には、主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が増加した場合においても、圧縮機10を外気によって確実に冷却し、圧縮機10の発熱によっての圧縮機10の性能が低下するを抑制することができる。
【0054】
さらに、本実施形態の空気圧縮装置1は、鉄道車両100の車体100aの下方に取り付けられているため、鉄道車両100の走行時に走行風を利用してケーシング12と、その内部に導入された空気を効率良く冷却することができる。
【0055】
また、本実施形態の空気圧縮装置1では、補助吸気口20の吸入側が、鉄道車両100の走行方向と直交する方向を向いて開口している。このため、鉄道車両100の走行時に補助吸気口20が開かれたときに、走行風によって塵埃や雪等が補助吸気口20に入り込むのを効率良く抑制することができる。
【0056】
また、
図6,
図7に二点鎖線で示すように、ケーシング12の補助吸気口20に、主吸気口フィルター16よりも捕集性能の低い補助フィルター35を設置した場合には、補助吸気口20が開かれたときに、補助吸気口20を通して外部の塵埃がケーシング12内に進入するのをより確実に抑制することができる。
【0057】
また、
図6,
図7に示すように、補助吸気口20が開閉機構部21によって開放されたことを報知する開放報知器31を設けた場合には、主吸気口フィルター16の点検や交換、清掃等が必要であることを運転者や鉄道管理者に迅速に知らせることができる。
【0058】
<第2実施形態の空気圧縮装置>
図8,
図9は、第2実施形態の空気圧縮装置101の模式的な断面図である。
図8は、ケーシング12の内外の圧力差が所定値未満のときの空気圧縮装置101の作動状態を示す図であり、
図9は、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上になったときの空気圧縮装置101の作動状態を示す図である。
本実施形態の空気圧縮装置101は、ケーシング12の補助吸気口20を開閉する開閉機構部121の構成以外は、第1実施形態の空気圧縮装置1と同様の構成とされている。このため、以下では、開閉機構部121を中心として空気圧縮装置101の構成について説明する。
【0059】
開閉機構部121は、補助吸気口20が開放された開放位置と補助吸気口20が閉塞された閉塞位置との間を移動可能な蓋体22と、ケーシング12の内部の圧力を検出する圧力センサ41と、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上になったことを示す検出値を圧力センサ41が検出したときに、蓋体22を開放位置に移動させる電動式のモータ40と、を備えている。蓋体22は、ケーシング12に回動可能に支持されており、モータ40の駆動力によって回動操作される。モータ40は、制御装置42によって制御される。
【0060】
圧力センサ41は、主吸気口フィルター16部分の通気抵抗の増加を検出することができる。すなわち、目詰まり等によって主吸気口フィルター16の通気抵抗が増大すると、その通気抵抗の増大に伴ってケーシング12の内部が次第に低圧になる。このため、ケーシング12の内部の圧力が所定値以下であるか否かを調べることによって、主吸気口フィルター16部分の通気抵抗の増加を判定することができる。
【0061】
モータ40は、蓋体22を閉塞位置と開放位置の間で移動させるアクチュエータを構成している。本実施形態では、モータ40がアクチュエータを構成しているがアクチュエータは、モータ40に限定されるものでなく、油圧式のアクチュエータや空気圧式のアクチュエータであっても良い。
【0062】
また、制御装置42には、開放報知器31が接続されている。圧力センサ41が、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上になったことを検出し、その信号が制御装置42に入力されると、制御装置42は、モータ40を制御して蓋体22を開放方向に作動させるとともに開放報知器31を作動させる。これにより、補助吸気口20が開放されたことを運転者や車両管理者に知らせることができる。
【0063】
<空気圧縮装置の作動>
ケーシング12の内外の圧力差の増加(圧力差が所定値以上になったこと)が圧力センサ41によって検出されない間は、
図8に示すように、開閉機構部
121が補助吸気口20を閉塞している。この状態で圧縮機10と冷却ファン11が作動すると、ケーシング12の外部の空気(外気)がこれらの吸引力を受けて、主吸気口フィルター16を通過してケーシング12内に導入される。ケーシング12内に導入された空気は、圧縮機10の吸気導入部10Bから圧縮機本体10Aに吸入され、圧縮機本体10Aで加圧されて圧縮空気として吐出される。圧縮機本体10Aから吐出された圧縮空気は、吐出配管19を通って圧縮空気タンク18に充填される。
【0064】
上記のように空気圧縮装置101が作動している間は、外気に混入している比較的大きな塵埃は主吸気口フィルター16によって除去される。主吸気口フィルター16の目を通り抜けてケーシング12の内部に入り込んだ塵埃は、圧縮機10の吸気導入部10Bに設けられた導入部フィルター17によって除去される。
【0065】
主吸気口フィルター16を通過してケーシング12内に導入された空気の一部は、冷却ファン11により冷却風として圧縮機10に送られる。これにより、相対的に温度の低い外気によって圧縮機10が冷却される。この結果、圧縮機10の昇温が抑制されることになり、圧縮機10の圧縮性能が良好に維持され、圧縮空気タンク18に対する圧縮空気の早期の充填が可能になる。
【0066】
ケーシング12の内外の圧力差の増加(圧力差が所定値以上になったこと)が圧力センサ41によって検出されると、制御装置42による制御によって、
図9に示すように、開閉機構部121のモータ40が蓋体22を開放位置に移動させる。この結果、ケーシング12の補助吸気口20が蓋体22によって開放され、外気が補助吸気口20を通って圧縮機10の吸気導入部10Bから圧縮機本体10Aに吸入される。圧縮機本体10Aで生成された圧縮空気は、吐出配管19を通って圧縮空気タンク18に充填される。
【0067】
また、補助吸気口20を通してケーシング12内に導入された空気の一部は、冷却ファン11により冷却風として圧縮機10に送られる。これによって相対的に温度の低い外気によって圧縮機10が冷却される。
【0068】
<第2実施形態の効果>
以上のように、本実施形態の空気圧縮装置101は、主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が増加してケーシング12の内外の圧力差が所定値以上になると、開閉機構部121によってケーシング12の補助吸気口20が開かれるため、圧縮機10の吸入側に充分な空気を導入することができる。したがって、本実施形態の空気圧縮装置101を採用した場合には、主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が増加した場合であっても、吸入空気の不足による圧縮機10の負荷の増大や、圧縮空気タンク18への空気充填の遅れが生じるのを抑制することができる。
【0069】
特に、本実施形態の空気圧縮装置101では、ケーシング12の内外の圧力差の増加(圧力差が所定値以上になったこと)を検出器(圧力センサ41)によって検出し、その検出結果に基づいてアクチュエータ(モータ40)によって蓋体22を開動作させることができる。このため、本実施形態の空気圧縮装置101を採用した場合には、主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が増加したときに、アクチュエータ(モータ40)によって補助吸気口20を迅速に、かつ確実に開放することができる。
【0070】
また、本実施形態の空気圧縮装置101は、補助吸気口20が開閉機構部121によって開放されたことを報知する開放報知器31が設けられているため、主吸気口フィルター16の点検や交換、清掃等が必要であることを運転者や鉄道管理者に迅速に知らせることができる。
【0071】
<第3実施形態の空気圧縮装置>
図10,
図11は、第3実施形態の空気圧縮装置201の模式的な断面図である。
図10は、ケーシング12の内外の圧力差が所定値未満のときの空気圧縮装置201の作動状態を示す図であり、
図11は、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上のときの空気圧縮装置201の作動状態を示す図である。
本実施形態の空気圧縮装置201は、ケーシング12の補助吸気口20を開閉する開閉機構部121の制御系統の構成以外は、第2実施形態の空気圧縮装置101と同様の構成とされている。このため、以下では、第2実施形態の空気圧縮装置101との相違点を中心として空気圧縮装置201の構成について説明する。
【0072】
開閉機構部121は、補助吸気口20が開放された開放位置と補助吸気口20が閉塞された閉塞位置との間を移動可能な蓋体22と、圧縮機10の圧縮機本体10Aの温度を検出する温度センサ44と、温度センサ44がケーシング12の内外の圧力差が所定値以上であることを示す検出値を検出したときに、蓋体22を開放位置に移動させる電動式のモータ40と、を備えている。なお、温度センサ44は、圧縮機本体10Aに直接固定せずに、ケーシング12の内側の圧縮機本体10Aの近傍部に取り付けることが望ましい。モータ40は、制御装置42によって制御される。制御装置42は、温度センサ44が、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上であることを示す検出値を検出したときに、モータ40を制御して蓋体22を開放位置に移動させる(補助吸気口20を開放する)。
【0073】
本実施形態の開閉機構部121は、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上であることを判定するための検出器として、温度センサ44を採用している点で第2実施形態のものと異なっている。主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が増大すると、ケーシング12内への外気の導入量が低下するために圧縮機10での吸入負荷が増大し、その結果、圧縮機本体10Aにおいて発熱が生じる。本実施形態では、このことに着目し、圧縮機本体10Aの温度(温度センサ44による検出温度)に基づいて、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上であるか否か(主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が所定値以上に増加したか否か)を判定するようにしている。
【0074】
ところで、圧縮機10の圧縮機本体10Aが発熱する要因としては、主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が増加すること以外にも、圧縮機10の吸気導入部10Bの導入部フィルター17部分の通気抵抗が増加することも考えられる。このため、本実施形態の空気圧縮装置201では、モータ40によって蓋体22を開放位置に移動させたとき(補助吸気口20を開放したとき)に、温度センサ44の検出値が所定値(主吸気口フィルター16の通気抵抗の増加を示す値)よりも低下したか否かを制御装置42で判定する。ここで、温度センサ44の検出値が所定値よりも低下していない場合(主吸気口フィルター16部分の通気抵抗の増加状態が検出器によって継続して検出される場合)には、制御装置42は、導入部フィルター17の通気機能の低下を報知する導入部フィルター報知器46を作動させる。
【0075】
なお、本実施形態では、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上であるか否か(主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が所定値以上に増加したか否か)を判定するための検出器として、温度センサ44を採用しているが、温度センサ44に代えて圧縮機10の吐出流量を検出する流量センサ48(
図10,
図11中の二点鎖線参照。)を用いることも可能である。つまり、吸気口フィルター16の通気抵抗が
増加した場合には、吸気抵抗の増大に伴って圧縮機10の吐出流量が減少するため、流量センサ48によって吐出流量の変化を検出することによっても、ケーシング12の内外の圧力差が所定値以上であるか否か(主吸気口フィルター16部分の通気抵抗が所定値以上に増加したか否か)を判定することができる。
【0076】
<第3実施形態の効果>
以上のように、本実施形態の空気圧縮装置201は、第2実施形態の空気圧縮装置101とほぼ同様の基本構成を備えているため、第2実施形態と同様の基本的な効果を得ることができる。
【0077】
また、本実施形態の空気圧縮装置201は、モータ40(アクチュエータ)が蓋体22を開放位置に移動させても、検出器(温度センサ44、若しくは、流量センサ48)によって通気抵抗の増加を示す値が検出される続けるときには、制御装置42が導入部フィルター報知器46を作動させる。このため、本実施形態の空気圧縮装置201を採用した場合には、導入部フィルター17の通気機能の低下を検出するための専用の検出器を追加することなく、導入部フィルター17の通気機能が低下したことを運転手や車両管理者に知らせることができる。
【0078】
<第4実施形態の空気圧縮装置>
図12は、第4実施形態の空気圧縮装置301の模式的な部分断面側面図である。
本実施形態の空気圧縮装置301は、吸入した空気を圧縮して吐出する圧縮機10の圧縮機本体10Aと、圧縮機本体10Aに空気を導入する圧縮機10の吸気導入部310Bと、を備えている。圧縮機本体10Aの吐出側には、吐出配管19を介して圧縮空気タンク18が接続されている。吸気導入部310Bは、主吸気導入口50と補助吸気導入口51を有する、主吸気導入口50の下流側には、主吸気導入口50に導入される空気を濾過する導入部フィルター17が配置されている。補助吸気導入口51には、開閉機構部321が設置されている。
【0079】
開閉機構部321は、補助吸気導入口51が開放された開放位置と補助吸気導入口51が閉塞された閉塞位置との間を移動可能な蓋体52を備えている。開閉機構部321は、吸気導入部310Bの内外の圧力差が所定値以上でないときには蓋体52によって補助吸気導入口51を閉塞し、吸気導入部310Bの内外の圧力差が所定値以上になったときに、蓋体52によって補助吸気導入口51を開放する。蓋体52を開放位置と閉塞位置に移動させるための開閉機構部321の機構は、第1~第3実施形態の開閉機構部21,121と同様のものを用いることができる。
【0080】
<空気圧縮装置の作動>
吸気導入部310Bの内外の圧力差が所定値以上でないとき(導入部フィルター17の通気抵抗が所定値以上でないとき)には、開閉機構部321の蓋体52が補助吸気導入口51を閉塞している。この状態で圧縮機本体10Aが作動すると、外部の空気が圧縮機本体10Aからの吸引力を受け、吸気導入部310Bでは導入部フィルター17を通過して外部の空気が導入される。吸気導入部310Bに導入された空気は、圧縮機本体10Aで加圧されて圧縮空気として吐出される。圧縮機本体10Aから吐出された圧縮空気は、吐出配管19を通って圧縮空気タンク18に充填される。
【0081】
一方、吸気導入部310Bの内外の圧力差が所定値以上になると(導入部フィルター17部分の通気抵抗が所定値以上になると)、開閉機構部321の蓋体52が補助吸気導入口51を開放するようになる。この状態で圧縮機本体10Aの作動が継続されると、外気が補助吸気導入口51を通って圧縮機本体10Aに吸入される。そして、圧縮機本体10Aで生成された圧縮空気は、吐出配管19を通って圧縮空気タンク18に充填される。
【0082】
<第4実施形態の効果>
以上のように、本実施形態の空気圧縮装置301は、導入部フィルター17の通気抵抗が増加して吸気導入部310Bの内外の圧力差が所定値以上になると、開閉機構部321によって補助吸気導入口51が開かれるため、圧縮機本体10Aの吸入側に充分な空気を導入することができる。したがって、本実施形態の空気圧縮装置301を採用した場合には、導入部フィルター17部分の通気抵抗が増加した場合であっても、吸入空気の不足による圧縮機10の負荷の増大や、圧縮空気タンク18への空気充填の遅れが生じるのを抑制することができる。
【0083】
<空気吸引装置の実施形態>
以上では空気圧縮装置の実施形態について説明したが、上記の各実施形態の圧縮機10を吸引機に変更することによって、供給対象に圧縮空気を供給することを目的としない吸引装置を得ることができる。吸引装置の実施形態は、上記の空気圧縮装置の各実施形態の用語を以下のように置き換えることによって得ることができる。こうして得られた各実施形態の吸引装置は、上記の空気圧縮装置の各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
<第1~第3実施形態に対応する空気吸引装置の実施形態>
圧縮機10→吸引機10
主吸気口15→主吸引口15
補助吸気口20→補助吸引口20
主吸気口フィルター16→主吸引口フィルター16
【0085】
<第4実施形態に対応する空気吸引装置の実施形態>
圧縮機10→吸引機10
圧縮機本体10A→吸引機本体10A
吸気導入部310B→吸引導入部310B
主吸気導入口50→主吸引導入口50
補助吸気導入口51→補助吸引導入口51
【0086】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1,101,201,301…空気圧縮装置、10…圧縮機、10A…圧縮機本体、10B…吸気導入部、11…冷却ファン、12…ケーシング、15…主吸気口、16…主吸気口フィルター、17…導入部フィルター、20…補助吸気口、21…開閉機構部、22…蓋体、23…ばね(規制部)、25…ストッパ部材、26…カバー部、31…開放報知器、35…補助フィルター、40…モータ(アクチュエータ)、41…圧力センサ(検出器)、44…温度センサ(検出器)、46…導入部フィルター報知器、48…流量センサ(検出器)、50…主吸気導入口、51…補助吸気導入口、100…鉄道車両、100a…車体、310B…吸気導入部、321…開閉機構部