(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
A61H 33/12 20060101AFI20250325BHJP
F24F 6/10 20060101ALI20250325BHJP
F24F 6/00 20060101ALI20250325BHJP
【FI】
A61H33/12 K
F24F6/10
F24F6/00 E
F24F6/00 B
(21)【出願番号】P 2021005865
(22)【出願日】2021-01-18
【審査請求日】2023-11-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)ウェブサイトへの掲載、 https://corporate.ya-man.com/topics/pressrelease/consumer/11566/、2020.9.15 (2)販売、ヤーマン公式オンラインストア、 https://www.ya-man.com/shop/commodity/0000/rr00470/、2020.9.17 (3)販売、Amazon.com.、2020.9.17 (4)販売、楽天市場、2020.9.17 (5)販売、PayPayモール、2020.9.17 (6)販売、ヨドバシカメラ、2020.9.17 (7)販売、ビックカメラ、2020.9.17 (8)販売、ノジマ、2020.9.17 (9)販売、エディオン、2020.9.17 (10)販売、ヤマダデンキ、2020.9.17 (11)販売、Joshin、2020.9.17 (12)販売、100満ボルト、2020.9.17
(73)【特許権者】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木部 陽一
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-130075(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1705147(KR,B1)
【文献】特開2015-39399(JP,A)
【文献】特開2009-297088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/12
F24F 6/00-18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯蔵するタンクと、
前記液体を加熱して蒸気を発生させる加熱部と、
前記蒸気を導く
管と、
前記管からの蒸気が流入する流入口と該流入した蒸気を放出する放出口とを有する、第1の噴出部および第2の噴出部を備え、
前記第1の噴出部の中心から前記第2の噴出部の中心までの距離は10mm~45mm(ミリメートル)であり、
前記第1の噴出部および前記第2の噴出部において、前記流入口から前記放出口までの
流路の内壁において、前記放出口へ向かうにしたがって拡がっている部分を有し、当該部
分の内壁面は当該流路の中心軸に対して40度以上傾斜しており、
前記流入口の直径は3.5mm~5mmであり、前記放出口の直径は6mm~10mm
である、
加湿器。
【請求項2】
前記第1の噴出部および前記第2の噴出部は、それぞれ高さが0.3mm~0.9mmである円筒状の流路部分を有する
請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記第1の噴出部の中心から前記第2の噴出部の中心までの距離は20mm~35mmである
請求項1または2に記載の加湿器。
【請求項4】
ユーザの顔の肌面の温度を計測する温度センサと、
該計測された温度に基づいて、前記加熱部における前記蒸気の発生量を制御する制御部と
をさらに有する請求項1~3のいずれか一項に記載の加湿器。
【請求項5】
前記第1の噴出部および前記第2の噴出部の前記放出口が向いている方向を制御する駆動機構をさらに備え、
前記制御部は、前記温度センサにより計測された温度に基づいて、前記駆動機構を制御する
請求項4に記載の加湿器。
【請求項6】
前記第1の噴出部および前記第2の噴出部から前記ユーザの顔までの距離を計測する測距センサを備え、
前記制御部は、前記測距センサにより計測された距離に基づいて、前記駆動機構を制御する
請求項5に記載の加湿器。
【請求項7】
前記制御部は、前記温度センサにより計測された温度に基づいて、前記顔に到達する蒸気の温度が40℃を基準として所定範囲内に収まるように制御を実行する
請求項4~6のいずれか一項に記載の加湿器。
【請求項8】
前記温度センサは、前記顔内の複数の位置の肌面の温度を計測するように複数設けられ、
前記制御部は、複数の前記温度センサの計測結果に基づいて前記制御を実行する
請求項4~7のいずれか一項に記載の加湿器。
【請求項9】
複数の前記温度センサの計測結果に基づいて、前記ユーザに顔の肌面の温度分布状態を通知する通知部をさらに有する
請求項8に記載の加湿器。
【請求項10】
前記測距センサにより計測された距離が所定範囲外にある場合は前記ユーザに通知する通知部をさらに有する
請求項6に記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気を発生させる加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の顔の位置に向けて蒸気を発生させる加湿器が提供されている。例えば、特許文献1においては、使用者の顔の位置を検出して、顔の位置に基づいて蒸気の発生量、送風量を制御する加湿器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸気を顔等の肌面に向けて放出する場合、蒸気の拡散範囲や温度を適切に調整するのが好ましいが、特許文献1の加湿器においては、これらの点が考慮されていない。
上記の背景に鑑み、本発明は、放出される蒸気の拡散範囲、温度を適切に調整可能な手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、液体を貯蔵するタンクと、前記液体を加熱して蒸気を発生させる加熱部と、前記蒸気を導く菅と、前記管からの蒸気が流入する流入口と該流入した蒸気を放出する放出口とを有する、第1の噴出部および第2の噴出部を備え、前記第1の噴出部の中心から前記第2の噴出部の中心までの距離は10~45mm(ミリメートル)である加湿器を第1の態様として提供する。
第1の態様の加湿器によれば、想定される顔の位置に対して噴出する蒸気の拡散範囲と温度を適切な状態にすることができる。
【0006】
第1の態様の加湿器において、前記第1の噴出部および前記第2の噴出部は、それぞれ高さが0.3mm~0.9mmである円筒状の流路部分を有する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
第2の態様の加湿器によれば、放出口付近に水滴が溜まりにくいため水滴によって蒸気の温度が下がることが抑止され、噴出する蒸気を適切な温度に保つことができる。
【0007】
第1または第2の態様の加湿器において、前記第1の噴出部および前記第2の噴出部において、前記流入口から前記放出口までの流路の内壁において、前記放出口へ向かうにしたがって拡がっている部分を有し、当該部分の内壁面は当該流路の中心軸に対して40度以上傾斜している、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
第3の態様の加湿器によれば、放出口付近に水滴が溜まりにくくなり、噴出する蒸気の温度が下がるのを抑止できる。また、蒸気が程よく拡散しやすいので、蒸気がユーザの顔全体に当たりやすくなる。
【0008】
第1~第3のいずれかの態様の加湿器において、前記流入口の直径は3.5mm~5mmであり、前記放出口の直径は6mm~10mmである、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
第4の態様の加湿器によれば、噴出してユーザの顔に当たる蒸気を適切な温度にすることができる。
【0009】
第1~第4のいずれかの態様の加湿器において、前記第1の噴出部の中心から前記第2の噴出部の中心までの距離は20~35mmである、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
第5の態様の加湿器によれば、蒸気が適切な範囲に拡散され、ユーザの顔全体に当たりやすくなる。
【0010】
第1~第5のいずれかの態様の加湿器において、ユーザの顔の肌面の温度を計測する温度センサと、該計測された温度に基づいて、前記加熱部における前記蒸気の上記の発生量を制御する制御部とをさらに有する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
第6の態様の加湿器によれば、ユーザの肌面の温度に基づいて、顔に当たる蒸気の量を適切に制御することができる。
【0011】
第6の態様の加湿器において、前記第1の噴出部および前記第2の噴出部の前記放出口が向いている方向を制御する駆動機構をさらに備え、前記制御部は、前記温度センサにより計測された温度に基づいて、前記駆動機構を制御する、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
第7の態様の加湿器によれば、ユーザの顔の肌面の温度に応じて、顔に当たる蒸気の濃度を変化させることができる。
【0012】
第7の態様の加湿器において、前記第1の噴出部および前記第2の噴出部から前記ユーザの顔までの距離を計測する測距センサを備え、前記制御部は、前記測距センサにより計測された距離に基づいて、前記駆動機構を制御する、という構成が第8の態様として採用されてもよい。
第8の態様の加湿器によれば、ユーザの顔までの距離に応じて、顔に当たりやすい方向に蒸気を放出させることができる。
【0013】
第6~第8のいずれかの態様の加湿器において、前記制御部は、前記温度センサにより計測された温度に基づいて、前記顔に到達する蒸気の温度が40℃を基準として所定範囲内に収まるように制御を実行する、という構成が第9の態様として採用されてもよい。
第9の態様の加湿器によれば、顔の肌面の温度に基づいて、顔に到達する蒸気を適切な温度とすることができる。
【0014】
第6~第9のいずれかの態様の加湿器において、前記温度センサは、前記顔内の複数の位置の肌面の温度を計測するように複数設けられ、前記制御部は、複数の前記温度センサの計測結果に基づいて前記制御を実行する、という構成が第10の態様として採用されてもよい。
第10の態様の加湿器によれば、顔の肌面の温度分布が均一となるように制御を行うことができる。
【0015】
第10の態様の加湿器において、複数の前記温度センサの計測結果に基づいて、前記ユーザに顔の肌面の温度分布状態を通知する通知部をさらに有する、という構成が第11の態様として採用されてもよい。
第11の態様の加湿器によれば、複数の温度センサによる計測結果に基づいて、ユーザの顔の肌面の温度分布状態をユーザに対して通知することができる。
【0016】
第8の態様の加湿器において、前記測距センサにより計測された距離が所定範囲外にある場合は前記ユーザに通知する通知部をさらに有する、という構成が第12の態様として採用されてもよい。
第12の態様の加湿器によれば、加湿器に対して顔が適切な位置に来るように、ユーザを誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態に係る加湿器の外観を示した図。
【
図2】第1の実施形態に係る加湿器の内部構造を示した図。
【
図3】第1の実施形態に係る加湿器のノズル部の構造を示した図。
【
図4】第1の実施形態に係る加湿器における蒸気の拡散状態を説明するための図。
【
図5】第1の実施形態に係る加湿器の噴出部の構造を示した図。
【
図6】第1の実施形態に係る加湿器における2つの噴出部間の距離と蒸気の拡散範囲の関係を示した図。
【
図7】第1の実施形態に係る加湿器における2つの噴出部間の距離と蒸気の拡散範囲の関係を説明するための図。
【
図8】第1の実施形態に係る加湿器の構成を示したブロック図。
【
図9】第2の実施形態に係る加湿器の外観を示した図。
【
図10】第2の実施形態に係る加湿器の構成を示したブロック図。
【
図11】第2の実施形態に係る加湿器における制御フローを示した図。
【
図12】第2の実施形態に係る加湿器におけるノズル部の駆動制御を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態]
以下に本発明の第1の実施形態に係る加湿器1を説明する。
図1は、加湿器1の外観を示した図である。加湿器1は、円筒形状の本体部11と、本体部11の上面に対して開閉が可能なカバー12とから構成されている。本体部11の前側面には動作ランプ13が設けられている。動作ランプ13は、本体部11の後面側下部に設けられている電源スイッチをオンにすることにより点灯する。
【0019】
本体部11の上面には、ノズル部14と複数の操作ボタン15が設けられている。ノズル部14には、蒸気(スチーム)を放出する開口を有する一対の噴出部141L、141Rが左右方向に並ぶように設けられている。また、ノズル部14の左右各々の端部側には、ユーザがノズル部14を回動させて噴出部141L、141Rの方向を変更する操作を行うための調整つまみ142L、142Rが設けられている。
【0020】
噴出部141L、141Rは、蒸気の放出方向が本体部11の前側の斜め上方向となるような向きに設けられているが、放出方向の角度は、調整つまみ142L、142Rにより放出方向を上下方向に調整が可能である。
【0021】
複数の操作ボタン15は、ユーザが動作モードを選択するのに用いられ、蒸気の放出を短時間行うか長時間行うか等の動作時間の設定等を行うことができる。ノズル部14、操作ボタン15が設けられた本体部11の上面は、カバー12を閉じることにより隠すことが可能である。
【0022】
図2は、加湿器1の内部構造を示した図である。
図2は、カバー12が閉じられた状態を示している。蒸気を発生させる際には、カバー12は、
図1に示されるように、ユーザによって開けられた状態とする。
【0023】
タンク21には、蒸気を生成するための液体である水が貯蔵されている。タンク21は、本体部11からの着脱が可能である。ユーザは、本体部11からタンク21を外して、タンク21内に給水を行い、本体部11に取り付けることができる。
【0024】
タンク21に貯蔵された水は、給水管路を介してボイラ室22に供給される。ボイラ室22では、供給された水を沸騰させて蒸気を生成する処理が行われる。ボイラ室22の左右の各々の外面には、加熱部であるヒータ23a、23bが設けられている。ヒータ23a、23bによりボイラ室22に対して加熱を行うことにより、ボイラ室22内の水を沸騰させて蒸気を発生させることができる。
【0025】
ボイラ室22の上部とノズル部14とは、管路24で接続されている。ボイラ室22内で発生した蒸気は、ボイラ室22の上部から管路24内を上昇し、矢印Aに示す経路を流れてノズル部14に達する。ノズル部14に達した蒸気は、2つの噴出部141L、141Rから外部へと放出される。
【0026】
図3は、ノズル部14の構造を示す図であり、
図3(A)は、噴出部141L、141Rの上方側から見た上面図、
図3(B)は
図3(A)におけるB―Bに沿った断面図である。ノズル部14は、円筒形状の部材であり、噴出部141L、141Rを含む上側が
図1に示すように本体部11の上面から露出するように設けられている。
【0027】
ノズル部14の上側面の左端には、突起した調整つまみ142Lが設けられ、右端には、突起した調整つまみ142Rが設けられている。両端の調整つまみ142L、142Rの間に2つの噴出部141L、141Rが設けられている。噴出部141Lは、ノズル部14の中心位置から左側寄り(調整つまみ142L側)に設けられ、噴出部141Rは、ノズル部14の中心位置から右側寄り(調整つまみ142R側)に設けられている。
【0028】
噴出部141L、141Rの各々は、ノズル部14の外面側から内面側へと貫通する円形状の開口部145を有している。2つの噴出部141L、141Rの各々の中心間の距離LO(本実施形態では、2つの開口部145の中心間の距離と同等となる)は、10mm(ミリメートル)以上40mm(ミリメートル)以下であることが好ましい。さらには、20mm以上35mm以下であることがより好ましい。このような距離LOの好ましい値については、後に詳しく説明する。
【0029】
図4は、ノズル部14の噴出部141から放出される蒸気の拡散状態を説明するための図である。
図4は、ノズル部14を上方から見た状態を示している。
拡散範囲SRは、噴出部141Rから放出される蒸気が拡散する範囲を示しており、拡散範囲SLは、噴出部141Lから放出される蒸気が拡散する範囲を示している。
図4においては、拡散範囲SR、SLは水平方向の拡散範囲を示しており、実施には、垂直方向にも同様に拡散している。
【0030】
距離LUは、噴出部141L、141Rからユーザの顔までの距離を示している。本実施形態では、距離LUの基準値として200mmを想定している。
図4に示されるように、拡散範囲SRと拡散範囲SLとは、重なり合う部分がある。重なり合う部分では、噴出部141L、141Rの各々から放出された蒸気が混ざり合い、蒸気を高い温度に維持することができる。
【0031】
本実施形態では、蒸気がユーザの顔に当たる位置(距離LUの位置)において、蒸気の温度を40℃に保つことを想定している。
図4において、幅LLRは、距離LUにおける噴出部141L、141Rの各々から放出された蒸気の全体の拡散範囲の幅を示している。そして、幅LWは、蒸気がユーザの顔に当たる位置(距離LUの位置)において、噴出部141L、141Rの各々から放出された蒸気の拡散範囲が重なり合う範囲の幅を示している。
【0032】
拡散範囲SAは、噴出部141L、141Rの各々から放出された蒸気の拡散範囲が重なり合う範囲のうち、蒸気の温度が40℃前後に保たれている範囲を示している。この範囲は、
図4においては楕円形状に近い形状となっているが、実際の空間では垂直方向にも延びた形状であり、楕円体に近い形状となっている。距離LDは、拡散範囲SAの奥行き(楕円体の短径)を示している。
【0033】
加湿器1の使用時は、ユーザの顔面が、拡散範囲SA内の位置に来るようにすることが好ましい。そのようにすることにより、ユーザの顔の肌面に温度40℃の蒸気が当てられた状態とすることができ、肌面の温度を40℃にすることができる。肌面の温度を40℃に保つことにより、肌面の皮膚においてコラーゲンの生成が促進され、美肌へと導かれる。
【0034】
図5は、噴出部141(以下、2つの噴出部141L、141Rを総称して噴出部141と記載する場合がある)の構造を示した断面図である。
噴出部141の開口部145は、内周側に形成された開口部145aと外周側に形成された開口部145bを有している。内周側の開口部145aは、蒸気が流入する流入口146を有しており、外周側の開口部145bは、蒸気が放出される放出口147を有している。
【0035】
内周側に形成された開口部145aは、流入口146から外周側(開口部145b側)で向かって内壁の直径が変化しない円筒状の流路148により形成されている。外周側に形成された開口部145bは、開口部145aの外周側端から放出口147に向かうにしたがって内壁の直径が拡大する傾斜部149により形成されている。
以上のような、噴出部141は、本実施形態においては、樹脂材料を用いて形成されている。
【0036】
流入口146の直径、すなわち流路148の直径D1は、3.5mm以上5mm以下であることが好ましい。また、放出口147の直径D2は、6mm以上10mm以下であることが好ましい。流入口146、放出口147をこのような範囲の径サイズとすることにより、流路148から蒸気が放出される流速を適切な値とすることができ、
図4における温度40℃近傍の拡散範囲SAを実現させることができる。
【0037】
流路148の高さT1は、0.3mm以上0.9mm以下であることが好ましい。流路148の厚みをこのような範囲とすることにより、放出される蒸気の温度が下がりにくく、流路148の外側(傾斜部149や放出口147付近)に水滴が溜まりにくい。そのため、
図4における温度40℃近傍の拡散範囲SAを実現させることができる。
【0038】
なお、本実施形態のように、噴出部141を樹脂で形成した場合、強度の問題が発生するため、流路148の厚みはあまり薄くないほうがよいが、厚みが1mmを超えると、水分が放出してしまい、放出口147付近に水滴が溜まることになる。これらのことから、T1は、0.5mm以上0.8mm以下であることがより好ましい。
【0039】
傾斜部149の傾斜角度φ1、φ2(流路148の中心軸Cに対しての傾斜部149の内壁面の傾斜角度)は、40度以上であることが好ましい。このように、放出口147の内側に傾斜部149を設けることにより、放出口147付近に水滴が溜まりにくくなり、かつ、蒸気が程よく拡散されやすくなる。そのため、拡散範囲SAの幅LWを大きくすることができ、ユーザの顔の広い範囲に40℃近傍の温度の蒸気が当たりやすくなる。
【0040】
なお、2つの噴出部141L、141Rは、同一の形状であることが好ましいが、直径D1、直径D2、高さT1、角度φ1、φ2が上述の範囲に入るように形成されていれば、必ずしも同一の形状である必要はない。
【0041】
図6は、噴出部141L、141R間の距離LOと蒸気の拡散範囲の関係を示した図であり、距離LOを10mm~70mmの間で変更したノズル部14を各々用いて、拡散範囲の大きさと拡散範囲内における蒸気の温度を計測した結果を示している。
【0042】
図6の表によれば、距離LOが短くなるほど、拡散範囲SAの面積と幅LWは大きくなる。温度(拡散範囲内の蒸気の温度)は、距離LOが20mm、25mm、35mmの場合は、40.0℃となる。距離LOが40mmの場合は39.5℃、45mmの場合は39.0℃であり、理想的な40℃の近傍の温度が保たれているが、50mmの場合は、38.5℃となり低くなり過ぎる。距離LOが15mmの場合は40.5℃、10mmの場合は41.0℃であり、理想的な40℃の近傍の温度が保たれている。この結果から、10mm未満になると、温度が高くなり過ぎると考えられる。
【0043】
以上のことから、距離LOは、拡散範囲SA内の蒸気の温度が40℃近傍(39℃~41℃)に保たれる10mm以上45mm以下であることが好ましいことがわかる。特に好ましいのは、20mm以上35mm以下であり、これらの場合は、拡散範囲SA内の蒸気の温度が40℃となる。
【0044】
図7は、噴出部141L、141R間の距離LOと蒸気の拡散範囲の関係を示した図であり、蒸気の拡散範囲とユーザの顔面での蒸気が当たる範囲との関係を示した図である。
図7においては、ユーザの顔の肌面が噴出部141L、141Rから200mmの距離(LU=200mm)にあるものとし、拡散範囲SA、SR,SLは、LU=200mmの位置における範囲を示している。
【0045】
図7(A)は、距離LOが10mmの場合、
図7(B)は、距離LOが20mmの場合、
図7(C)は、距離LOが30mmの場合、
図7(D)は、距離LOが40mmの場合、
図7(E)は、距離LOが50mmの場合を示している。
【0046】
図7(A)、
図7(B)、
図7(C)(LO=10~30mm)の場合は、拡散範囲SAが顔の肌面全体を覆うことになり、顔の肌面全体を40℃の温度とすることができる。
図7(D)(LO=40mm)の場合も、顔の縁部以外は拡散範囲SAが覆っており、顔の肌面のほぼ全体の温度を40℃とすることが可能である。
図7(E)(LO=50mm)の場合は、顔全体に対して拡散範囲SAが覆う範囲が狭すぎるため、顔の肌面の一部分しか40℃とすることができない。以上のことから、距離LOは、40mm以下であることが好ましいと言える。
【0047】
図8は、加湿器1の構成を示したブロック図である。
制御部31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備えた回路基板及びヒータ23a、23bを制御するための駆動基板等で構成されている。CPUは、記憶されたプログラムに従った処理を実行することにより、加湿器1内の各部材の動作の制御を行う。電源スイッチ32は、本体部11の後面側下部に設けられており(
図1では不図示)、ユーザの操作によりオン状態とされることにより、制御部31および他の部材に電力が供給され、動作が可能な状態となる。
【0048】
制御部31は、電力が供給され動作が開始されると、動作ランプ13を点灯させる制御を行う。また、操作ボタン15からの出力信号を受け付ける。
操作ボタンからの出力信号によって設定された動作モードに基づいて、2つのヒータ23a、23bの制御を行う。動作モードあるいは時間経過により、ヒータ23a、23bの両方をオン状態とする制御を行い、あるいは、ヒータ23a、23bのうち一方のみをオン状態とする制御を行う。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態に係る加湿器51を説明する。
図9は、加湿器51の外観を示した図である。本体部11、カバー12、動作ランプ13,ノズル部14、操作ボタン15は、
図1の加湿器1と同様であるが、加湿器51は、本体部11の前面側に2つの温度センサ61a、61bと、測距センサ62と、通知ランプ63a、63b、64が設けられている。
【0050】
温度センサ61a、61bは、例えば、放射温度計が用いられる。放射温度計は、物体から放射される赤外線あるいは可視光線の強度を測定して、物体と接触することとなく(すなわち非接触で)、物体の表面温度を計測することができる。
放射温度計は、例えば、物体から放射された赤外線をレンズ等で赤外線センサへ集光させることにより、入射された赤外線エネルギーに応じた信号を出力する。
【0051】
2つの温度センサ61a、61bの各々の赤外線の入射方向は、互いに交差しないように設置されている。したがって、2つの温度センサ61a、61bへの入射する赤外線は、対象物の異なる位置から放射される赤外線となる。すなわち、対象物である顔の2つの異なる位置の各々の表面温度を計測することができる。
【0052】
測距センサ62は、例えば、レーザ距離センサが用いられる。本体部11から斜め上方向に向けてレーザ光を照射し、対象物に当たって反射する戻り光を受光することにより、対象物までの距離を計測する。
通知ランプ63a、63bは、例えば、3色のLED(発光ダイオード)が用いられる。温度センサ61a、61bによる計測結果に基づいて、各々の通知ランプにおいて点灯させるLEDの色を切り替えることにより、ユーザに対して通知を行う。
通知ランプ64は、例えば、3色のLED(発光ダイオード)が用いられる。測距センサ62による計測結果に基づいて、点灯させるLEDの色を切り替えることにより、ユーザに対して通知を行う。
【0053】
図10は、加湿器51の構成を示したブロック図である。
制御部65は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備えた回路基板及びヒータ23a、23bを制御するための駆動基板等で構成されている。CPUは、記憶されたプログラムに従った処理を実行することにより、加湿器51内の各部材の動作の制御を行う。電源スイッチ32、動作ランプ13、操作ボタン15については、
図8の場合と同様である。
【0054】
駆動機構66は、ノズル部14を駆動するための機構である。駆動機構66は、円柱形状のノズル部14を中心軸に対して回動させることにより、噴出部141L、141Rの放出口147の向いている方向を変更する制御を行うことができる。その制御により、ユーザが調整つまみ142L、142Rを用いて調整しなくても、蒸気が放出される角度を自動的に変更することができる。
【0055】
制御部65は、駆動機構66の動作を制御することができ、その制御により、噴出部141L、141Rの放出口147の向いている方向を設定することができる。また、制御部65は、駆動機構66によるノズル部14の駆動量を記憶し、ノズル部14の回動角度、すなわち噴出部141L、141Rの放出口147の現在の動作状況(回動動作中か否か)、及び向いている方向(角度)を認識することができる。
【0056】
制御部65は、温度センサ61a、61bからの計測値を示す出力信号を入力する。そして、計測値を温度に換算することにより、対象物(ユーザの顔)の表面(肌面)の温度を取得する。対象物がユーザの顔である場合、2つの温度センサ61a、61bにより、ユーザの顔の2箇所の位置の肌面の温度を取得することができる。
【0057】
制御部65は、測距センサ62からの計測値を示す出力信号を入力する。そして、計測値に基づいて、噴出部141L、141Rから対象物(ユーザの顔)までの距離を算出する。測距センサ62と噴出部141L、141Rとは、加湿器51において、異なる位置に設けられている。また、噴出部141L、141Rが向いている角度は、駆動機構66により可変であるから、測距センサ62から計測のために照射されるレーザ光の照射角度と噴出部141L、141Rが向いている角度とは同一であるとは限らない。
【0058】
したがって、測距センサ62と噴出部141L、141Rとの設置位置の差、および測距センサ62のレーザ光の照射方向と記憶されている噴出部141L、141Rが向いている方向との差に基づいて、測距センサ62からの取得した計測値を補正することにより、噴出部141L、141Rから対象物(ユーザの顔)までの距離を算出する。
【0059】
制御部65は、温度センサ61a、61bからの計測値により取得したユーザの顔の肌面の温度に基づいて、蒸気の発生量を制御する。蒸気の発生量は、2つのヒータ23a、23bの動作を制御することにより行う。例えば、制御部65は、動作開始時に2つのヒータ23a、23bの両方をオン状態にする制御を行う。そして、取得した温度が所定範囲よりも高くなった場合、蒸気の発生量を減少させるために、2つのヒータ23a、23bのうち一方のヒータをオフ状態とする制御を行う。このようにして、加熱力を弱めることにより、蒸気の発生量を減少させる。
【0060】
また、制御部65は、2つのヒータ23a、23bのうち一方のヒータをオフ状態となっている場合に取得した温度が所定範囲よりも低い場合、オフ状態となっているヒータをオン状態にする制御を行い、加熱力を強め、蒸気の発生量を増大させる。
【0061】
また、制御部65は、温度センサ61a、61bからの計測値により取得したユーザの顔の肌面の温度に基づいて、駆動機構66を駆動してノズル部14を上下に繰り返して回動させる制御を行う。この制御は、ユーザの肌面の温度が所定範囲より高くなった場合に、噴出部141L、141Rの方向を上下に振ることによりユーザの顔付近の蒸気の濃度を下げ、ユーザの顔の肌面の温度が高くなり過ぎないようにするために行う。
【0062】
また、制御部65は、測距センサ62からの計測値により取得したユーザの顔までの距離に基づいて、駆動機構66を駆動してノズル部14の角度を変更する制御を行う。この制御は、ユーザの顔までの距離に応じて、ユーザの顔に蒸気が当たりやすい角度に噴出部141L、141Rの方向を設定するために行う。
【0063】
図11は、制御部65がプログラムに従って行う処理を示したフローチャートである。
図11のフローチャートは、加湿器51がユーザによる電源スイッチ32の操作により電源オンの状態となっており、ヒータ23a、23bの少なくとも1つがオン状態であり、噴出部141L、141Rから蒸気が放出されている状態である場合において、所定時間間隔で実行される処理を示している。
【0064】
まず、制御部65は、測距センサ62から距離情報である計測値を示す出力信号を入力し、対象物であるユーザの顔までの距離を取得する(ステップS201)。
続いて、測距センサ62から取得した距離が所定範囲内であるか否かを判断する(ステップS202)。温度センサ61a、61bによる温度計測は、対象物までの距離が遠すぎると正確な値が得られない可能性がある。距離が所定範囲内ではない場合(ステップS202:No)、すなわち距離が遠すぎる場合は、ユーザが加湿器51の近くにいないと判断して、ステップS201の処理を繰り返す。距離が所定範囲内である場合(ステップS202:Yes)、制御部65は、温度センサ61a、61bから温度情報である計測値を示す出力信号を入力し、ユーザの顔の肌面の温度計測値を取得する(ステップS203)。
【0065】
続いて、制御部65は、取得した温度が人肌の温度範囲であるか否かを判断する(ステップS204)。この処理は、温度センサ61a、61bが、ユーザの顔以外の物体の温度を計測した場合に、その計測値を以後の処理に採用しないようにするために行う。人肌の温度範囲としては、例えば35℃~43℃とし、この範囲内でない計測値は、人の顔以外の物体の温度計測値であると判断する。
【0066】
本実施形態においては、温度センサは2つ設けられているので、制御部65は、温度計測値を2つ取得する。2つの温度計測値のいずれも人肌の温度範囲でない場合(ステップS204:No)、ステップS201に戻り処理を繰り返す。2つの温度計測値のうち少なくとも一方が人肌の温度範囲である場合(ステップS204:Yes)、温度計測値が40度近傍の所定範囲であるか否かを判断する(ステップS205)。40℃近傍の所定範囲としては、例えば39℃~41℃とする。
【0067】
温度計測値が所定範囲より高い場合(すなわち41℃より高い場合)、ステップS211へ進み、温度計測値が所定範囲より低い場合(すなわち39℃より低い場合)、ステップS231へ進む。温度計測値が所定範囲である場合(ステップS205:Yes)、ステップS221へ進む。そして、各々のステップにおいて、ノズル部14の回動の制御、ヒータ23a、23bの制御を行う。
【0068】
上述のステップS204において、人肌の温度範囲内でないと判断された温度計測値は、ステップS205での判断では用いない。すなわち、一方の人肌の温度範囲内と判断された温度計測値のみを用いて判断を行う。
ステップS204において、2つの温度計測値がともに人肌の温度範囲内と判断された場合は、2つの温度計測値の各々の温度計測値が所定範囲内であるか否かに基づいて以下のように判断する。
【0069】
2つの温度計測値がともに所定範囲より高い場合、あるいは一方の温度計測値が所定範囲より高く、他方が所定範囲内の場合は、ステップS211へ進む。
2つの温度計測値がともに所定範囲より低い場合、あるいは一方の温度計測値が所定範囲より低く、他方が所定範囲内の場合は、ステップS231へ進む。
2つの温度計測値がともに所定範囲内の場合、あるいは、一方の温度計測値が所定範囲より高く、他方が所定範囲より低い場合、ステップS221へ進む。
【0070】
ステップS211において、制御部65は、駆動機構66の動作状態を確認する。そして、駆動機構66がノズル部14を上下に繰り返して回動させる動作(以下、「上下動作」という)を行っていない場合(ステップS211:No)、駆動機構66を制御してノズル部14の上下動作を開始させ(ステップS212)、ステップS241へ進む。
【0071】
駆動機構66がノズル部14の上下動作を行っている場合(ステップS211:Yes)、制御部65は、ヒータ23a、23bの動作状態を確認する(ステップS213)。そして、複数のヒータがオン状態である場合(ステップS213:Yes、本実施形態では、ヒータは2つなので、2つのヒータがオン状態の場合)、1つのヒータをオフにする制御を行い(ステップS214)、ステップS241へ進む。
【0072】
ステップS211~S214の処理は、ユーザの顔の肌面の温度が所定範囲より高いため、所定範囲内に下げるための処理である。まず、ノズル部14を上下動作させる制御を行うことにより、顔付近の蒸気の濃度を下げるようにする。この制御がすでに行われている場合は、オン状態とするヒータの数を減らす。ヒータが1つのみがオン状態である場合(ステップS213:No)、ヒータの動作状態は現状のままとし、ステップS241へ進む。
【0073】
ステップS231において、制御部65は、駆動機構66の動作状態を確認する。そして、駆動機構66がノズル部14の上下動作を行っている場合(ステップS231:Yes)、駆動機構66を制御してノズル部14の上下動作を停止させ(ステップS232)、ステップS241へ進む。
【0074】
駆動機構66がノズル部14の上下動作を行っていない場合(ステップS231:No)、制御部65は、ヒータ23a、23bの動作状態を確認する(ステップS233)。そして、すべてのヒータがオン状態である場合(ステップS233:Yes、本実施形態では、ヒータは2つなので、2つのヒータがオン状態の場合)、ヒータの動作状態は現状のままとし、ステップS241へ進む。オフ状態となっているヒータがある場合(ステップS233:No、)、オフとなっているヒータのうち1つをオン状態とする制御を行う(ステップS234)。すなわち、本実施形態では、ヒータは2つなので、一方のオフ状態のヒータをオン状態とする。そして、ステップS241へ進む。
【0075】
ステップS231~S234の処理は、ユーザの顔の肌面の温度が所定範囲より低いため、所定範囲内に上げるための処理である。まず、ノズル部14を上下動作させる制御が行われている場合は停止し、顔付近の蒸気の濃度を上げるようにする。ノズル部14を上下動作させる制御が行われていない場合は、オン状態とするヒータの数を増やす。
【0076】
ステップS221において、制御部65は、駆動機構66の動作状態を確認する。そして、駆動機構66がノズル部14の上下動作を行っている場合(ステップS221:Yes)、駆動機構66を制御してノズル部14の上下動作を停止させ(ステップS232)、ステップS241へ進む。駆動機構66がノズル部14の上下動作を行っていない場合(ステップS221:No)、そのままステップS241へ進む。
【0077】
以上のように、制御部65は、
図4に示される拡散範囲SAにおける蒸気の温度が40℃を基準とした所定範囲(例えば、39℃~41℃)に収まるように、ノズル部14の上下動作の開始あるいは停止の制御、2つのヒータのオン、オフの制御を行う。このようにして、ユーザの顔に当たる蒸気の温度を40℃近傍となるように制御することができる。
【0078】
続いて、制御部65は、通知ランプ63a、63b、64の点灯状態を切り替える制御を行う(ステップS241)。
まず、制御部65は、温度センサ61a、61bから取得した2つの温度計測値に基づいて、通知ランプ63a、63bの点灯の制御を行う。本実施形態では、通知ランプ63a、63bの点灯により、ユーザの顔の表面温度が均一となっているか否かをユーザに通知する。
【0079】
温度センサ61aから取得した温度計測値が所定範囲内(例えば、39℃~41℃)である場合は、通知ランプ63aの青色LEDを点灯させる制御を行う。温度センサ61aから取得した温度計測値が所定範囲より低い場合は、通知ランプ63aの緑色LEDを点灯させる制御を行う。温度センサ61aから取得した温度計測値が所定範囲より高い場合は、通知ランプ63aの赤色LEDを点灯させる制御を行う。
【0080】
同様にして、温度センサ61bから取得した温度計測値が所定範囲内である場合は、通知ランプ63bの青色LEDを点灯させる制御を行う。温度センサ61bから取得した温度計測値が所定範囲より低い場合は、通知ランプ63bの緑色LEDを点灯させる制御を行う。温度センサ61bから取得した温度計測値が所定範囲より高い場合は、通知ランプ63bの赤色LEDを点灯させる制御を行う。
以上のようにして、2つの温度センサの各々対応した2つの通知ランプの点灯色を制御することによって、ユーザに対して顔の肌面の温度分布を通知することができる。
【0081】
続いて、制御部65は、測距センサ62から取得した計測値から算出された噴出部141L、141Rからユーザの顔までの距離に基づいて、通知ランプ64の点灯状態を切り替える制御を行う(ステップS242)。
【0082】
制御部65は、算出された噴出部141L、141Rからユーザの顔までの距離が、所定範囲内(基準値である200mmから大きく外れていない)である場合は、通知ランプ64の青色LEDを点灯させる制御を行う。また、制御部65は、算出されたユーザの顔までの距離が、所定範囲より近い位置である場合は、通知ランプ64の赤色LEDを点灯させる制御を行う。また、制御部65は、算出されたユーザの顔までの距離が、所定範囲より遠い位置である場合は、通知ランプ64の緑色LEDを点灯させる制御を行う。
【0083】
このようにして、ユーザの顔までの距離に基づいて、通知ランプ64の点灯色を切り替えることにより、ユーザに対して、顔を所定範囲内の位置に移動するように誘導することができる。
【0084】
続いて、制御部65は、測距センサ62からの取得した計測値から算出された噴出部141L、141Rから対象物までの距離に基づいて、駆動機構66を動作させて、ノズル部14の角度を変更することにより、噴出部141L、141Rの放出口147が向いている方向を変更する制御を行う(ステップS243)。
【0085】
図12は、対象物までの距離に基づいた駆動機構66の制御を説明するための図である。
図12(A)は、ユーザの顔が加湿器51に比較的近い位置にある場合を示した図であり、
図12(B)は、ユーザの顔が加湿器51から比較的遠い位置にある場合を示した図である。矢印Rは、測距センサ62ら照射されるレーザ光を示しており、矢印Sは、噴出部141L、141Rから放出される蒸気の方向と拡散範囲を示している。
【0086】
図12(A)に示されるように、ユーザの顔が加湿器51に比較的近い位置にある場合、ユーザの顔は加湿器51の上方にある場合が多く、蒸気を水平方向に対して大きい角度方向に放出させることが好ましい。したがって、制御部65は、算出された噴出部141L、141Rからユーザの顔までの距離が所定範囲よりも近い場合は、噴出部141L、141Rの放出口147が向いている方向を水平方向に対して大きい角度になるように設定する制御を行う。
【0087】
図12(B)に示されるように、ユーザの顔が加湿器51から比較的遠い位置にある場合は、蒸気を遠い位置まで放出させるために、
図12(A)の場合と比べて蒸気を水平方向に対して小さい角度方向に放出させることが好ましい。したがって、制御部65は、算出された噴出部141L、141Rからユーザの顔までの距離が所定範囲よりも遠い場合は、噴出部141L、141Rの放出口147が向いている方向を水平方向に対して小さい角度になるように設定する制御を行う。
【0088】
ステップS243におけるノズル部14の角度を変更する制御は、ステップS211、S221、S231で説明したノズル部14の上下動作と同時に行うことができる。ノズル部14の上下動作は、ノズル部14の回動を所定の角度範囲内で繰り返し行う動作である。その回動を所定の角度範囲の中心角度をステップS243で設定される角度とすれば、その設定された角度を中心とした所定の角度範囲内において、ノズル部14が上下動作を行うことができる。
【0089】
以上のような、
図11のステップS201~S243の処理を、制御部65は、所定時間経過毎に繰り返して行う。
【0090】
[変形例]
上述した実施形態は様々に変形することができる。以下にそれらの変形の例を示す。なお、上述した実施形態及び以下に示す変形例は適宜組み合わされてもよい。
【0091】
(1)上述した実施形態においては、噴出部141L、141Rからユーザの顔までの距離の基準値であるLUを200mmとしたが、この値に限定されない。適宜所望の距離に設定し、設定した距離に応じて、ヒータの加熱能力、噴出部の形状等を変更すればよい。
【0092】
(2)上述した実施形態においては、加熱部であるヒータを2つ設ける構成としたが、3つ以上設けるものとしてもよい。ヒータの個数が増えることにより、オンにするヒータの個数の選択肢が広がり、蒸気の拡散範囲SAの位置の制御が容易になる。
【0093】
(3)上述した第1の実施形態においては、噴出部141L、141Rからの蒸気の放出方向の変更操作として、ノズル部14を回動させることにより、放出方向を上下方向に変更できるものとしたが、放出方向を左右方向に変更できるものとしてもよい。第2の実施形態においても同様に、駆動機構66により、放出方向を左右方向に変更できるものとしてもよい。
【0094】
この場合、
図11ステップS212、S222、S232で行うノズル部14の上下動作、すなわち駆動機構66がノズル部14を上下に繰り返して回動させる動作は、左右に繰り返して回動させる動作とすればよい。
【0095】
また、
図11ステップS243における測距センサから取得した距離に基づいたノズル部14の角度制御は、以下に説明するような、温度センサ61a、61bにより取得した温度計測値に基づいた制御としてもよい。
【0096】
第2実施形態において、ノズル部14を左右方向に回動させて放出方向を左右方向に変更できる構成とした場合、制御部65は、温度センサ61a、61bにより取得した温度計測値に基づいて、以下のようにノズル部14の方向を変更させる制御を行ってもよい。
【0097】
例えば、2つの温度センサ61a、61bのうち、一方の温度センサにより計測した温度計測値が所定範囲より高い場合、所定範囲より高い計測値を計測した温度センサが設けられている側とは反対の方向へノズル部14を回動させる。そして、温度が高くなっている側の顔の位置に当たる蒸気の濃度を下げる。
【0098】
また、例えば、2つの温度センサ61a、61bのうち、一方の温度センサにより計測した温度計測値が所定範囲より低い場合、所定範囲より低い計測値を計測した温度センサが設けられている側へノズル部14を回動させる。そして、温度が低くなっている顔の位置に当たる蒸気の濃度を下げる。
【0099】
(4)上述した第2の実施形態においては、測距センサ62は一定方向にレーザ光を照射するものとしたが、照射方向を上下あるいは左右に変更する制御ができるようにしてもよい。このような構成により、ユーザの顔が加湿器の正面方向からずれている場合でも、ユーザの顔までの距離を計測することができる。
【0100】
(5)上述した第2の実施形態においては、温度センサは一定方向からの赤外線を入射するものとしたが、入射方向を上下あるいは左右に変更する制御ができるようにしてもよい。このような構成により、ユーザの顔が加湿器の正面方向からずれている場合でも、ユーザの顔の肌面の温度を計測することができる。
【0101】
(6)上述した第2の実施形態においては、温度センサ61a、61bは本体部11の正面側に設けるものとしたが、ノズル部14に設けてもよい。この場合、ノズル部14に設けられた噴出部141における蒸気の放出方向と同方向からの赤外線を受光して温度を計測することとすれば、蒸気の放出方向にある対象物の温度を計測できる。また、ノズル部14を回動させて放出方向を変更した場合も、それに追従して温度センサによる赤外線の入射方向も変わるので、対象物の温度の計測が正確にできる。
【0102】
(7)上述した第2の実施形態においては、測距センサ62は本体部11の正面側に設けるものとしたが、ノズル部14に設けてもよい。この場合、ノズル部14に設けられた噴出部141における蒸気の放出方向と同方向にレーザ光を照射することとすれば、噴出部141から対象物までの距離が正確に計測できる。また、ノズル部14を回動させて放出方向を変更した場合も、それに追従して測距センサによるレーザ光の照射方向も変わるので、距離の計測が正確にできる。
【0103】
(8)上述した第2の実施形態においては、測距センサ62は、レーザ線を照射するものとしたが、レーザ光以外の電磁波(電波、超音波等)を照射するものであってもよい。
なお、温度センサ61a、61bが赤外線を入射して計測を行う場合は、測距センサ62で照射する光は、温度センサ61a、61bでの計測への影響を避けるため、赤外域より短い波長の光を用いることが好ましい。
(9)上述した第2の実施形態においては、温度センサ61a、61bは物体が発する赤外線を入射することにより物体の温度を計測するものとしたが、これとは異なる方法で物体の温度を計測するものであってもよい。例えば、物体が発する可視光を入射して物体の温度を計測するものであってもよい。
【0104】
(10)上述した第2の実施形態においては、
図11のフローチャートにおいて、測距センサ62により計測された距離が遠すぎる場合は以後の処理をしないこととしたが(
図11ステップS202)、温度センサによる温度計測可能な範囲が数メートル程度であれば、測距センサによる距離の計測は行わなくてもよい。
【0105】
室内で加湿器を用いる場合、加湿器の正面にユーザがいない場合、数メートル先の壁や家具の温度を計測してしまう可能性があるが、その場合は、計測された温度が人肌の温度範囲とならない可能性が高いので(
図11ステップS204)、以後の処理に問題は生じない。
【0106】
(11)上述した第2の実施形態においては、2つの温度センサ61a、61bは本体部11の正面側に横方向に並べて設けるものとしたが、温度センサは上下方向に並べて設けてもよい。この場合、制御部65は、上下方向に並べて設けられた2つの温度センサにより取得した温度計測値に基づいて、以下のようにノズル部14の角度を変更する制御を行ってもよい。
【0107】
例えば、上側に設けられた温度センサによる温度計測値が所定範囲よりも高い場合は、ノズル部14の角度を水平方向に対して小さい角度とする。そして、蒸気の放出方向を下に向けることによりユーザの顔の上側位置に当たる蒸気の濃度を下げる。また、下側に設けられた温度センサによる温度計測値が所定範囲よりも高い場合は、ノズル部14の角度を水平方向に対して大きい角度とする。そして、蒸気の放出方向を上に向けることによりユーザの顔の下側位置に当たる蒸気の濃度を下げる。
【0108】
また、例えば、下側に設けられた温度センサによる温度計測値が所定範囲より低い場合、ノズル部14の角度を水平方向に対して小さい角度とする。そして、蒸気の放出方向を下に向けることによりユーザの顔の下側位置に当たる蒸気の濃度を上げる。また、上側に設けられた温度センサによる温度計測値が所定範囲より低い場合、ノズル部14の角度を水平方向に対して大きい角度とする。そして、蒸気の放出方向を上に向けることによりユーザの顔の上側位置に当たる蒸気の濃度を上げる。
【0109】
(12)上述した第2の実施形態においては、通知ランプ63a、63bは、対応する温度センサ61a、61bによる温度計測値に基づいて点灯させる色を切り替え、顔の肌面の温度分布をユーザに通知するものとしたが、ユーザに対して顔の左右方向の移動を促す通知を行うものとしてもよい。
【0110】
例えば、通知ランプ63a、63bを矢印形状とし、通知ランプ63aを、
図9において左方向を指す矢印形状(すなわち、加湿器51の前方のユーザから見て左方向の矢印形状)とし、通知ランプ63bを、
図9において右方向を指す矢印形状とする。
【0111】
そして、例えば、温度センサ61aよる温度計測値が所定範囲よりも高い場合は、通知ランプ63aを点灯させる。この場合、ユーザの顔の左側が
図4における拡散範囲SAの中心付近にあると考えられるので、通知ランプ63aが示すユーザから見て左方向へ顔を移動させることを促す。また、温度センサ61bよる温度計測値が所定範囲よりも高い場合は、通知ランプ63bを点灯させる。この場合、ユーザの顔の右側が
図4における拡散範囲SAの中心付近にあると考えられるので、通知ランプ63bが示すユーザから見て右方向へ顔を移動させることを促す。
【0112】
また、例えば、温度センサ61aよる温度計測値が所定範囲よりも低い場合は、通知ランプ63bを点灯させる。この場合、ユーザの顔の左側が
図4における拡散範囲SAから外れていると考えられるので、通知ランプ63bが示すユーザから見て右方向へ顔を移動させることを促す。また、温度センサ61bよる温度計測値が所定範囲よりも低い場合は、通知ランプ63aを点灯させる。この場合、ユーザの顔の右側が
図4における拡散範囲SAから外れていると考えられるので、通知ランプ63bが示すユーザから見て左方向へ顔を移動させることを促す。
【0113】
(13)上述の第2の実施形態においては、
図11ステップS205において、2つの温度センサのうち一方の温度センサの温度計測値が所定範囲内でない場合、所定範囲内でない温度計測値が所定範囲より高いか低いかによって、
図11ステップS211あるいはステップS231へと進む判断をしたが、判断方法はこれに限定されない。
【0114】
例えば、2つの温度計測値の平均値を算出し、その平均値が所定範囲内であればステップS221へ進み、その平均値が所定範囲より高ければステップS211へ進み、その平均値が所定範囲より低ければステップS231へ進むこととしてもよい。
【0115】
(14)上述の第2の実施形態においては、温度センサは2つ設けるものとしたが、1つのみ設けるものとしてもよい。この場合、
図11ステップS204、ステップS205における判断は、1つの温度センサによる温度計測値のみに基づいて行なえばよい。
【0116】
なお、上述の第2の実施形態においては、温度センサ61a、61bに対応して2つの通知ランプ63a、63bを設けるものとしたが、温度センサを1つのみ設ける場合、通知ランプ63a、63bの一方は設けなくてもよい。
【0117】
(15)上述の第2の実施形態においては、温度センサは2つ設けるものとしたが、3つ以上設けてもよい。この場合、3つ以上の温度センサの各々の赤外線の入射方向は、互いに交差しないように設置し、対象物である顔の異なる複数の位置の各々の温度を計測できるようにする。
【0118】
3つ以上の温度センサを設けた場合、
図11ステップS205における判断は、例えば、3つ以上の温度センサの温度計測値の平均値を算出して行うこととしてもよい。例えば、その平均値が所定範囲内であればステップS221へ進み、その平均値が所定範囲より高ければステップS211へ進み、その平均値が所定範囲より低ければステップS231へ進むこととすればよい。
【0119】
また、3つ以上の温度センサの温度計測値を所定範囲内の温度計測値、所定範囲より高い温度計測値、所定範囲より低い温度計測値の各々のグループに分類し、最も多くの計測値が分類されたグループに対応する処理を行なえばよい。例えば、所定範囲内の温度計測値が最も多い場合はステップS221へ進み、所定範囲より高い温度計測値が最も多い場合はステップS211へ進み、所定範囲より低い温度計測値が最も多い場合はステップS231へ進むこととすればよい。
【0120】
なお、各々のグループに分類された温度計測値が同数の場合はステップS221へ進み、2つのグループに分類された温度計測値が同数の場合は、進むべきステップ(S211、S221、S231)の優先順位を決めておけばよい。
【0121】
例えば、所定範囲より高い温度計測値と同数の他のグループがある場合は、ステップS211へ進む。所定範囲より高い温度計測値と所定範囲より低い温度計測値が同数の場合は、ステップS221へ進む。所定範囲より低い温度計測値と所定範囲内の計測値が同数の場合はステップS231へ進む。
【0122】
なお、上述の第2の実施形態においては、温度センサ61a、61bに対応して2つの通知ランプ63a、63bを設けるものとしたが、温度センサを3つ以上設ける場合、通知ランプのそれらに対応して3つ以上設けることとしてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1・・加湿器、11・・本体部、12・・カバー、13・・動作ランプ、14・・ノズル部、15・・操作ボタン、21・・タンク、22・・ボイラ室、23、23a、23b・・ヒータ、24・・管路、31・・制御部、32・・電源スイッチ、51・・加湿器、61a、61b・・温度センサ、62・・測距センサ、63a、63b、64・・通知ランプ、65・・制御部、66・・駆動機構、141L、141R・・噴出部、142L、142R・・調整つまみ、145、145a、145b・・開口部、146・・流入口、147・・放出口、148・・流路、149・・傾斜部。