(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】レーダ信号処理装置及びレーダ信号処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/32 20060101AFI20250325BHJP
G01S 13/58 20060101ALI20250325BHJP
G01S 13/42 20060101ALI20250325BHJP
G01S 13/34 20060101ALN20250325BHJP
【FI】
G01S7/32 210
G01S13/58 200
G01S13/42
G01S13/34
(21)【出願番号】P 2021094695
(22)【出願日】2021-06-04
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】西山 拓真
(72)【発明者】
【氏名】小田 康明
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-184156(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3822663(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0011147(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112835009(CN,A)
【文献】特表2005-520161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダからの距離、前記レーダに対する速度及び前記レーダからの方向のいずれか2つ以上を座標軸とする座標空間を、複数のブロックに分割するブロック分割部と、
複数の前記ブロックからノイズ強度を有するノイズブロックを選択し、前記ノイズブロックの前記ノイズ強度を前記座標空間のノイズフロアに設定するノイズ設定部と、
前記ノイズフロアを基準とするS/N(Signal/Noise)比に基づいて、前記座標空間から不要信号を除外し物標信号を検出する物標信号検出部と、
を備えることを特徴とするレーダ信号処理装置。
【請求項2】
前記ブロック分割部は、前記座標空間を各々の前記ブロックよりサイズの大きい複数のグループに分割し、各々の前記グループを複数の前記ブロックに分割し、
前記ノイズ設定部は、各々の前記グループから前記ノイズブロックを選択し、前記ノイズブロックの前記ノイズ強度を各々の前記グループの前記ノイズフロアに設定する
ことを特徴とする、請求項1に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項3】
前記ノイズ設定部は、受信強度の平均値又は分散値が最も小さい前記ブロックを前記ノイズブロックに選択し、前記ノイズブロックの前記平均値を前記ノイズフロアに設定する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項4】
前記ブロック分割部は、前記物標信号を有さず前記不要信号のみを有する前記ブロックが少なくとも1つは存在するように、かつ、各々の前記ブロックの受信強度の統計精度が所定精度より向上するように、各々の前記ブロックのサイズを設定する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のレーダ信号処理装置。
【請求項5】
レーダからの距離、前記レーダに対する速度及び前記レーダからの方向のいずれか2つ以上を座標軸とする座標空間を、複数のブロックに分割するブロック分割ステップと、
複数の前記ブロックからノイズ強度を有するノイズブロックを選択し、前記ノイズブロックの前記ノイズ強度を前記座標空間のノイズフロアに設定するノイズ設定ステップと、
前記ノイズフロアを基準とするS/N(Signal/Noise)比に基づいて、前記座標空間から不要信号を除外し物標信号を検出する物標信号検出ステップと、
を順にコンピュータに実行させるためのレーダ信号処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ不要信号を除外したうえで、レーダ物標信号を検出するために、レーダ不要信号とレーダ物標信号との間の判別閾値を設定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3では、FMCW(Frequency Modulation Contious Wave)レーダを用いて、レーダからの距離を1つの座標軸とする1次元の座標空間において、レーダ不要信号を除外したうえで、レーダ物標信号を検出するために、レーダ不要信号とレーダ物標信号との間の判別閾値を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-091642号公報
【文献】特開2004-271262号公報
【文献】国際公開第2005/059588号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3では、複数の物標が同一の距離及び異なる速度に存在するときや、広範囲の物標が短い距離から長い距離まで分布するとき等、物標が不規則に存在するときは、レーダ不要信号とレーダ物標信号との間の判別閾値を安定に設定することができない。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、物標が不規則に存在するときも、レーダ不要信号とレーダ物標信号との間の判別閾値を安定に設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、レーダからの距離、レーダに対する速度及びレーダからの方向のいずれか2つ以上を座標軸とする座標空間を、複数のブロックに分割する。そして、複数のブロックから物標強度を有する物標ブロックを除外しノイズ強度を有するノイズブロックを選択し、ノイズブロックのノイズ強度を座標空間のノイズフロアに設定する。
【0007】
具体的には、本開示は、レーダからの距離、前記レーダに対する速度及び前記レーダからの方向のいずれか2つ以上を座標軸とする座標空間を、複数のブロックに分割するブロック分割部と、複数の前記ブロックからノイズ強度を有するノイズブロックを選択し、前記ノイズブロックの前記ノイズ強度を前記座標空間のノイズフロアに設定するノイズ設定部と、前記ノイズフロアを基準とするS/N(Signal/Noise)比に基づいて、前記座標空間から不要信号を除外し物標信号を検出する物標信号検出部と、を備えることを特徴とするレーダ信号処理装置である。
【0008】
また、本開示は、レーダからの距離、前記レーダに対する速度及び前記レーダからの方向のいずれか2つ以上を座標軸とする座標空間を、複数のブロックに分割するブロック分割ステップと、複数の前記ブロックからノイズ強度を有するノイズブロックを選択し、前記ノイズブロックの前記ノイズ強度を前記座標空間のノイズフロアに設定するノイズ設定ステップと、前記ノイズフロアを基準とするS/N(Signal/Noise)比に基づいて、前記座標空間から不要信号を除外し物標信号を検出する物標信号検出ステップと、を順にコンピュータに実行させるためのレーダ信号処理プログラムである。
【0009】
これらの構成によれば、物標が不規則に存在するときも、ノイズフロアひいては不要信号と物標信号との間の判別閾値を安定に設定することができる。
【0010】
また、本開示は、前記ブロック分割部は、前記座標空間を各々の前記ブロックよりサイズの大きい複数のグループに分割し、各々の前記グループを複数の前記ブロックに分割し、前記ノイズ設定部は、各々の前記グループから前記ノイズブロックを選択し、前記ノイズブロックの前記ノイズ強度を各々の前記グループの前記ノイズフロアに設定することを特徴とするレーダ信号処理装置である。
【0011】
この構成によれば、ノイズフロアが座標空間で一定でなくても、ノイズフロアひいては不要信号と物標信号との間の判別閾値を安定に設定することができる。
【0012】
また、本開示は、前記ノイズ設定部は、受信強度の平均値又は分散値が最も小さい前記ブロックを前記ノイズブロックに選択し、前記ノイズブロックの前記平均値を前記ノイズフロアに設定することを特徴とするレーダ信号処理装置である。
【0013】
この構成によれば、各々のブロックの受信強度の統計情報に基づいて、ノイズフロアひいては不要信号と物標信号との間の判別閾値を安定に設定することができる。
【0014】
また、本開示は、前記ブロック分割部は、前記物標信号を有さず前記不要信号のみを有する前記ブロックが少なくとも1つは存在するように、かつ、各々の前記ブロックの受信強度の統計精度が所定精度より向上するように、各々の前記ブロックのサイズを設定することを特徴とするレーダ信号処理装置である。
【0015】
この構成によれば、不要信号のみを有するブロックの存在と、各々のブロックの受信強度の統計精度と、の間のトレードオフに関わらず、両者を両立させることができる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本開示は、物標が不規則に存在するときも、レーダ不要信号とレーダ物標信号との間の判別閾値を安定に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態のレーダ信号処理装置の構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態のレーダ信号処理プログラムの手順を示す図である。
【
図3】第1実施形態のレーダ信号処理手順の具体例を示す図である。
【
図4】第2実施形態のレーダ信号処理装置の構成を示す図である。
【
図5】第2実施形態のレーダ信号処理プログラムの手順を示す図である。
【
図6】第2実施形態のレーダ信号処理手順の具体例を示す図である。
【
図7】第3実施形態のレーダ信号処理手順の具体例を示す図である。
【
図8】第3実施形態のレーダ信号処理手順の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0019】
(第1実施形態のレーダ信号処理装置)
第1実施形態のレーダ信号処理装置の構成を
図1に示す。レーダ信号処理装置R1は、送信アンテナ1、受信アンテナ2、ミキサ3、発振器4、A/D(Analog/Digital)変換部5、距離解析部6、速度解析部7、ブロック分割部8、ノイズ設定部9及び物標信号検出部10を備える。レーダ信号処理装置R1は、
図2に示すレーダ信号処理プログラムをコンピュータにインストールし実現することができる。
【0020】
第1実施形態のレーダ信号処理プログラムの手順を
図2に示す。第1実施形態のレーダ信号処理手順の具体例を
図3に示す。レーダ信号処理装置R1は、第1実施形態では、FMCWレーダを用いているが、変形例として、パルスレーダ等を用いてもよい。
【0021】
ミキサ3、発振器4及びA/D変換部5は、送信アンテナ1での送信信号と受信アンテナ2での受信信号との間のビート信号をA/D変換する(ステップS1)。距離解析部6は、時間経過方向において、ミキサ3、発振器4及びA/D変換部5で算出されたビート信号をフーリエ変換し、レーダ信号処理装置R1からの距離を解析する(ステップS2)。速度解析部7は、チャープ回数方向において、距離解析部6でのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換し、レーダ信号処理装置R1に対する速度を解析する(ステップS2)。
【0022】
図3の左上欄では、レーダ信号処理装置R1からの距離及びレーダ信号処理装置R1に対する速度を、2つの座標軸とする2次元の座標空間C1を示す。複数の物標が同一の距離及び異なる速度に存在しており、広範囲の物標(ガードレール、柵又は枕木等)が短い距離から長い距離まで分布しており、物標が不規則に存在している。
【0023】
ブロック分割部8は、座標空間C1を複数のブロックB11~B1mに分割する(ステップS3)。
図3の右上欄では、座標空間C1の距離方向を9個のブロックに分割し、座標空間C1の速度方向を6個のブロックに分割し、座標空間C1を54個のブロックに分割する。各々のブロックB11~B1mのサイズは、後に詳述する。
【0024】
ノイズ設定部9は、複数のブロックB11~B1mから、ノイズ強度を有するノイズブロックN1を選択する(ステップS4)。
図3の左下欄では、座標空間C1での受信強度の平均値又は分散値が最も小さいブロックを、ノイズブロックN1に選択する。不要信号のみを有するノイズブロックN1では、物標信号を有する他のブロックB11~B1mと比べて、座標空間C1での受信強度の平均値又は分散値が小さいからである。
【0025】
各々のブロックB11~B1mでの受信強度を、レーダ信号処理装置R1からの距離及びレーダ信号処理装置R1に対する速度についての線形関数に近似したうえで、当該線形関数の傾きの絶対値が最も小さいブロックを、ノイズブロックN1に選択してもよい。
【0026】
ノイズ設定部9は、ノイズブロックN1のノイズ強度を、座標空間C1のノイズフロアに設定する(ステップS5)。
図3の右下欄では、ノイズブロックN1での受信強度の平均値を、ノイズブロックN1を含む座標空間C1全体の一定のノイズフロアに設定する。
【0027】
ブロック分割部8は、物標信号を有さず不要信号のみを有するブロックが座標空間C1で少なくとも1つは存在するように、かつ、各々のブロックB11~B1mの受信強度の統計精度が所定精度より向上するように、各々のブロックB11~B1mのサイズを設定する(ステップS3)。各々のブロックB11~B1mのサイズが大き過ぎれば、不要信号のみを有するノイズブロックN1が存在しない。各々のブロックB11~B1mのサイズが小さ過ぎれば、受信強度の統計精度(平均値又は分散値等の算出精度)が向上しない。
【0028】
物標信号検出部10は、ノイズフロアを基準とするS/N比に基づいて、座標空間C1から不要信号を除外し物標信号を検出する(ステップS6)。
【0029】
このように、物標が不規則に存在するときも、各々のブロックB11~B1mの受信強度の統計情報(平均値又は分散値等)に基づいて、ノイズフロアひいては不要信号と物標信号との間の判別閾値を安定に設定することができる。そして、不要信号のみを有するノイズブロックN1の存在と、各々のブロックB11~B1mの受信強度の統計精度(平均値又は分散値等)と、の間のトレードオフに関わらず、両者を両立させることができる。
【0030】
(第2実施形態のレーダ信号処理装置)
第2実施形態のレーダ信号処理装置の構成を
図4に示す。レーダ信号処理装置R2は、送信アンテナ11、受信アンテナ12、ミキサ13、発振器14、バンドパスフィルタ部15、A/D変換部16、距離解析部17、速度解析部18、ブロック分割部19、ノイズ設定部20及び物標信号検出部21を備える。レーダ信号処理装置R2は、
図5に示すレーダ信号処理プログラムをコンピュータにインストールし実現することができる。
【0031】
第2実施形態のレーダ信号処理プログラムの手順を
図5に示す。第2実施形態のレーダ信号処理手順の具体例を
図6に示す。レーダ信号処理装置R2は、第2実施形態では、FMCWレーダを用いているが、変形例として、パルスレーダ等を用いてもよい。
【0032】
ミキサ13、発振器14及びA/D変換部16は、送信アンテナ11での送信信号と受信アンテナ12での受信信号との間のビート信号をA/D変換する(ステップS12)。バンドパスフィルタ部15については、後に詳述する。距離解析部17は、時間経過方向において、ミキサ13、発振器14及びA/D変換部16で算出されたビート信号をフーリエ変換し、レーダ信号処理装置R2からの距離を解析する(ステップS13)。速度解析部18は、チャープ回数方向において、距離解析部17でのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換し、レーダ信号処理装置R2に対する速度を解析する(ステップS13)。
【0033】
図6の左上欄では、レーダ信号処理装置R2からの距離及びレーダ信号処理装置R2に対する速度を、2つの座標軸とする2次元の座標空間C2を示す。複数の物標が同一の距離及び異なる速度に存在しており、広範囲の物標(ガードレール、柵又は枕木等)が短い距離から長い距離まで分布しており、物標が不規則に存在している。
【0034】
A/D変換部16は、数ビット分の有効スケールを有する。
図6の左上欄では、レーダ信号処理装置R2から0m近傍の距離において、近距離シグナルSNの電力が大きく当該有効スケールを超える。そして、ナイキスト周波数に対応する折り返しの距離において、遠距離シグナルSFの電力が大きく当該有効スケールを超える。
【0035】
バンドパスフィルタ部15は、送信アンテナ11での送信信号と受信アンテナ12での受信信号との間のビート信号をバンドパスフィルタ処理する(ステップS11)。
図6の中上欄では、レーダ信号処理装置R2から0m近傍の距離において、近距離シグナルSNの電力が抑えられるが、中間的な距離と比べて、ノイズフロアの電力も抑えられる。そして、ナイキスト周波数に対応する折り返しの距離において、遠距離シグナルSFの電力が抑えられるが、中間的な距離と比べて、ノイズフロアの電力も抑えられる。
【0036】
ブロック分割部19は、座標空間C2を複数のグループG21、G22、G23に分割する(ステップS14)。
図6の右上欄では、座標空間C2の距離方向を3個のグループに分割し、座標空間C2の速度方向を1個のグループにまとめ、座標空間C2を3個のグループに分割する。グループG21は、ナイキスト周波数に対応する折り返しの距離に対応し、グループG23は、レーダ信号処理装置R2から0m近傍の距離に対応し、グループG22は、折り返しの距離と0m近傍の距離との中間的な距離に対応する。
【0037】
ブロック分割部19は、各々のグループG21、G22、G23を、複数のブロックB211~B21n、B221~B22n、B231~B23nに分割する(ステップS15)。
図6の右上欄では、各々のグループG21、G22、G23の距離方向を3個のブロックに分割し、各々のグループG21、G22、G23の速度方向を6個のブロックに分割し、各々のグループG21、G22、G23を18個のブロックに分割する。各々のグループG21、G22、G23のサイズは、上述した通りであるが、各々のブロックB211~B21n、B221~B22n、B231~B23nのサイズは、後に詳述する。
【0038】
ノイズ設定部20は、各々のグループG21、G22、G23から、ノイズ強度を有するノイズブロックN21、N22、N23を選択する(ステップS16)。
図6の左下欄では、各々のグループG21、G22、G23での受信強度の平均値又は分散値が最も小さいブロックを、ノイズブロックN21、N22、N23に選択する。不要信号のみを有するノイズブロックN21、N22、N23では、物標信号を有する他のブロックB211~B21n、B221~B22n、B231~B23nと比べて、各々のグループG21、G22、G23での受信強度の平均値又は分散値が小さいからである。
【0039】
各々のブロックB211~B21n、B221~B22n、B231~B23nでの受信強度を、レーダ信号処理装置R2からの距離及びレーダ信号処理装置R2に対する速度についての線形関数に近似したうえで、当該線形関数の傾きの絶対値が最も小さいブロックを、ノイズブロックN21、N22、N23に選択してもよい。
【0040】
ノイズ設定部20は、ノイズブロックN21、N22、N23のノイズ強度を、各々のグループG21、G22、G23のノイズフロアに設定する(ステップS17)。
図6の右下欄では、ノイズブロックN21での受信強度の平均値を、ノイズブロックN21を含むグループG21全体の比較的低めのノイズフロアに設定し、ノイズブロックN23での受信強度の平均値を、ノイズブロックN23を含むグループG23全体の比較的低めのノイズフロアに設定し、ノイズブロックN22での受信強度の平均値を、ノイズブロックN22を含むグループG22全体の比較的高めのノイズフロアに設定する。
【0041】
ブロック分割部19は、物標信号を有さず不要信号のみを有するブロックが各々のグループG21、G22、G23に少なくとも1つは存在するように、かつ、各々のブロックB211~B21n、B221~B22n、B231~B23nの受信強度の統計精度が所定精度より向上するように、各々のブロックB211~B21n、B221~B22n、B231~B23nのサイズを設定する(ステップS15)。各々のブロックB211~B21n、B221~B22n、B231~B23nのサイズが大き過ぎれば、不要信号のみを有するノイズブロックN21、N22、N23が存在しない。各々のブロックB211~B21n、B221~B22n、B231~B23nのサイズが小さ過ぎれば、受信強度の統計精度(平均値又は分散値等の算出精度)が向上しない。
【0042】
物標信号検出部21は、ノイズフロアを基準とするS/N比に基づいて、座標空間C2から不要信号を除外し物標信号を検出する(ステップS18)。
【0043】
このように、物標が不規則に存在するときも、ノイズフロアが座標空間C2で一定でなくても、各々のブロックB211~B21n、B221~B22n、B231~B23nの受信強度の統計情報(平均値又は分散値等)に基づいて、ノイズフロアひいては不要信号と物標信号との間の判別閾値を安定に設定することができる。そして、不要信号のみを有するノイズブロックN21、N22、N23の存在と、各々のブロックB211~B21n、B221~B22n、B231~B23nの受信強度の統計精度(平均値又は分散値等)と、の間のトレードオフに関わらず、両者を両立させることができる。
【0044】
(第3実施形態のレーダ信号処理装置)
第3実施形態のレーダ信号処理手順の具体例を
図7に示す。
図7の左欄では、第1実施形態の変形例として、ブロック分割部8は、レーダ信号処理装置R1からの距離、レーダ信号処理装置R1に対する速度及びレーダ信号処理装置R1からの方向のいずれか2つを座標軸とする2次元の座標空間C3を、複数のブロックB31~B3mに分割する。ノイズ設定部9は、複数のブロックB31~B3mから、ノイズ強度を有するノイズブロックを選択し、ノイズブロックのノイズ強度を、座標空間C3のノイズフロアに設定する。
【0045】
図7の右欄では、第2実施形態の変形例として、ブロック分割部19は、レーダ信号処理装置R2からの距離、レーダ信号処理装置R2に対する速度及びレーダ信号処理装置R2からの方向のいずれか2つを座標軸とする2次元の座標空間C4を、複数のグループG41、G42、G43に分割する。ブロック分割部19は、各々のグループG41、G42、G43を、複数のブロックB411~B41n、B421~B42n、B431~B43nに分割する。ノイズ設定部20は、各々のグループG41、G42、G43から、ノイズ強度を有するノイズブロックを選択し、ノイズブロックのノイズ強度を、各々のグループG41、G42、G43のノイズフロアに設定する。
【0046】
第3実施形態のレーダ信号処理手順の具体例を
図8にも示す。
図8の左欄では、第1実施形態の変形例として、ブロック分割部8は、レーダ信号処理装置R1からの距離、レーダ信号処理装置R1に対する速度及びレーダ信号処理装置R1からの方向のうちのすべてを座標軸とする3次元の座標空間C5を、複数のブロックB51~B5mに分割する。ノイズ設定部9は、複数のブロックB51~B5mから、ノイズ強度を有するノイズブロックを選択し、ノイズブロックのノイズ強度を、座標空間C5のノイズフロアに設定する。
【0047】
図8の右欄では、第2実施形態の変形例として、ブロック分割部19は、レーダ信号処理装置R2からの距離、レーダ信号処理装置R2に対する速度及びレーダ信号処理装置R2からの方向のうちのすべてを座標軸とする3次元の座標空間C6を、複数のグループG61、G62、G63に分割する。ブロック分割部19は、各々のグループG61、G62、G63を、複数のブロックB611~B61n、B621~B62n、B631~B63nに分割する。ノイズ設定部20は、各々のグループG61、G62、G63から、ノイズ強度を有するノイズブロックを選択し、ノイズブロックのノイズ強度を、各々のグループG61、G62、G63のノイズフロアに設定する。
【0048】
図7、8の左欄及び右欄において、方向解析部(
図1、4に不図示)は、アンテナ配列方向において、速度解析部7、18でのフーリエ変換結果の位相値をフーリエ変換し、レーダ信号処理装置R1、R2からの方向を解析すればよい。
【0049】
図7、8の右欄において、ブロック分割部8、19は、座標空間C4、C6の速度方向を複数のグループに分割するにあたり、低速、中速及び高速等に分割すればよい。
図7、8の右欄において、ブロック分割部8、19は、座標空間C4、C6の角度方向を複数のグループに分割するにあたり、鋭角、正面及び鈍角等に分割すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示のレーダ信号処理装置及びレーダ信号処理プログラムは、ミリ波帯等を用いるFMCWレーダ又はパルスレーダ等において、複数の物標が同一の距離及び異なる速度に存在するときや、広範囲の物標(ガードレール、柵又は枕木等)が短い距離から長い距離まで分布するとき等、物標が不規則に存在するときも、ノイズフロアひいてはレーダ不要信号とレーダ物標信号との間の判別閾値を安定に設定することができる。
【符号の説明】
【0051】
R1、R2:レーダ信号処理装置
1、11:送信アンテナ
2、12:受信アンテナ
3、13:ミキサ
4、14:発振器
15:バンドパスフィルタ部
5、16:A/D変換部
6、17:距離解析部
7、18:速度解析部
8、19:ブロック分割部
9、20:ノイズ設定部
10、21:物標信号検出部
C1、C2、C3、C4、C5、C6:座標空間
B11~B1m、B211~B21n、B221~B22n、B231~B23n、B31~B3m、B411~B41n、B421~B42n、B431~B43n、B51~B5m、B611~B61n、B621~B62n、B631~B63n:ブロック
G21、G22、G23、G41、G42、G43、G61、G62、G63:グループ
N1、N21、N22、N23:ノイズブロック
SN:近距離シグナル
SF:遠距離シグナル