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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】電縫鋼管の渦流探傷方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/90 20210101AFI20250325BHJP
【FI】
G01N27/90
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021100980
(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公開番号】P2023000265
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2024-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】522502680
【氏名又は名称】日鉄鋼管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 繁俊
(72)【発明者】
【氏名】今村 健二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勇己
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-025959(JP,U)
【文献】特開平05-034319(JP,A)
【文献】特開2010-223719(JP,A)
【文献】実開平06-069835(JP,U)
【文献】特開平08-136508(JP,A)
【文献】特開平08-105862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72-27/9093
B23K 13/00
B23K 31/00
B21C 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状に成形された板材の端部同士を突き合わせて溶接することで、電縫鋼管を製造する造管工程と、前記造管工程後に、前記電縫鋼管を冷間抽伸する冷間抽伸工程と、を有する前記電縫鋼管の製造過程において、
前記造管工程で前記電縫鋼管を渦流探傷する第1渦流探傷ステップと、
前記冷間抽伸工程後の前記電縫鋼管を渦流探傷する第2渦流探傷ステップと、を含み、
前記第1渦流探傷ステップでの探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値の校正に用いる欠陥の寸法と前記第1渦流探傷ステップで用いる貫通型の検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第1欠陥体積比と、前記第2渦流探傷ステップで検出対象とする欠陥の寸法と前記第2渦流探傷ステップで用いる貫通型の検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第2欠陥体積比と、を算出する欠陥体積比算出ステップを更に含み、
前記第1渦流探傷ステップにおいて、前記校正に用いる欠陥を前記検出コイルで渦流探傷することで得られる探傷信号の大きさが予め定めた値となるように予め校正された校正後の探傷感度及び/又は前記校正に用いる欠陥を前記検出コイルで渦流探傷することで得られる探傷信号が検出可能となるように予め校正された校正後の欠陥検出しきい値を、前記欠陥体積比算出ステップで算出した前記第1欠陥体積比に対する前記第2欠陥体積比の割合に基づき補正し、補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いて前記電縫鋼管を渦流探傷する、
ことを特徴とする電縫鋼管の渦流探傷方法。
なお、「欠陥体積比」は、欠陥の体積/(電縫鋼管の断面積×検出コイルのコイル幅)を意味する。
【請求項2】
前記欠陥体積比算出ステップは、
前記冷間抽伸工程後の電縫鋼管であって、互いに寸法の異なる複数の欠陥が形成された電縫鋼管を校正用鋼管として用意する手順と、
前記校正用鋼管の前記複数の各欠陥を前記第2渦流探傷ステップで用いる前記検出コイルで渦流探傷することで、欠陥の寸法と欠陥検出能との関係を算出する手順と、
前記関係に基づき、所望する欠陥検出能が得られる欠陥の最小寸法を決定する手順と、
前記決定した最小寸法を、前記検出対象とする欠陥の寸法として用いて、前記第2欠陥体積比を算出する手順と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電縫鋼管の渦流探傷方法。
【請求項3】
前記第1渦流探傷ステップにおいて、前記補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いた前記電縫鋼管の渦流探傷と、前記校正後で且つ前記補正前の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いた前記電縫鋼管の渦流探傷と、の双方を実行する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電縫鋼管の渦流探傷方法。
【請求項4】
前記第1渦流探傷ステップにおいて、
前記補正後の探傷感度で前記電縫鋼管を渦流探傷することで得られる探傷信号について、前記探傷信号の時間軸を所定の時間幅を有する複数個の第1区間に分割し、前記第1区間毎に前記第1区間内での探傷信号の最大値をノイズ値として検出する第1手順と、
前記第1手順後に、前記複数個の第1区間のうち連続するL(L≧2)個の前記第1区間で構成される第2区間内での前記ノイズ値の移動平均値を算出し、前記第2区間に後続する前記第1区間の前記ノイズ値と前記算出した前記第2区間内での移動平均値との差が所定のしきい値を超える場合、前記後続する前記第1区間の前記ノイズ値を前記第2区間を構成する最後の前記第1区間の前記ノイズ値に置き換える第2手順と、
前記第2手順後に、前記複数個の第1区間のうち連続するM(M>L)個の前記第1区間で構成される第3区間内での前記ノイズ値の移動平均値をノイズレベルとして算出する第3手順と、
前記第3手順で算出したノイズレベルに基づき、前記欠陥検出しきい値を前記第1区間毎に決定し、決定した前記欠陥検出しきい値を用いて前記電縫鋼管を渦流探傷する第4手順と、を含む、
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の電縫鋼管の渦流探傷方法。
【請求項5】
管状に成形された板材の端部同士を突き合わせて溶接することで、電縫鋼管を製造する造管工程と、前記造管工程後に、前記電縫鋼管を二次加工する二次加工工程と、を有する前記電縫鋼管の製造過程において、
前記造管工程で前記電縫鋼管を渦流探傷する第1渦流探傷ステップを含み、
前記第1渦流探傷ステップでの探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値の校正に用いる欠陥の寸法と前記第1渦流探傷ステップで用いる貫通型の検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第1欠陥体積比と、前記二次加工工程で前記電縫鋼管の溶接部に生じた欠陥の寸法を実測し、当該実測した欠陥の寸法と前記第1渦流探傷ステップで用いる前記検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第2欠陥体積比を算出する欠陥体積比算出ステップを更に含み、
前記第1渦流探傷ステップにおいて、前記校正に用いる欠陥を前記検出コイルで渦流探傷することで得られる探傷信号の大きさが予め定めた値となるように予め校正された校正後の探傷感度及び/又は前記校正に用いる欠陥を前記検出コイルで渦流探傷することで得られる探傷信号が検出可能となるように予め校正された校正後の欠陥検出しきい値を、前記欠陥体積比算出ステップで算出した前記第1欠陥体積比に対する前記第2欠陥体積比の割合に基づき補正し、補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いて前記電縫鋼管を渦流探傷する、
ことを特徴とする電縫鋼管の渦流探傷方法。
なお、「欠陥体積比」は、欠陥の体積/(電縫鋼管の断面積×検出コイルのコイル幅)を意味する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電縫鋼管の溶接部等に存在する欠陥を検出する渦流探傷方法及び渦流探傷設備に関する。特に、本発明は、電縫鋼管を製造する造管工程と、造管工程後に電縫鋼管を二次加工(冷間抽伸、曲げ加工、拡管・縮径など)する二次加工工程と、を有する電縫鋼管の製造過程において、造管工程で電縫鋼管の微細な欠陥を検出可能な渦流探傷方法及び渦流探傷設備に関する。
【背景技術】
【0002】
電縫鋼管(電気抵抗溶接鋼管、ERW鋼管ともいう)は、公知のように、造管工程において、コイルから巻き出された板材(フープ材と称される)をロールで管状に成形し、管状に成形された板材の端部同士を突き合わせて電気抵抗溶接することで製造される。この電気抵抗溶接は、高周波電力が印加されたインダクションコイルを用いて、板材の端部に渦電流を生成し、この渦電流によって加熱(誘導加熱)された板材の端部をロールで圧接する方法である。電気抵抗溶接によって鋼管の内外面に押し出された溶鋼は、冷却してビードとして鋼管に残存するため、このビードは溶接直後に切削工具で切削される。
【0003】
上記の造管工程で得られた電縫鋼管には、二次加工工程として、一般的に、冷間抽伸工程が実行される。冷間抽伸工程は、鋼管内にプラグやマンドレルを挿入した状態で、ダイスに鋼管を通して引き抜く冷間抽伸を行う工程である。この冷間抽伸工程は、造管工程後の鋼管を素材として、種々の寸法を有する電縫鋼管を製造するのに適したものであり、内外面にビードの切削痕が残る造管工程後の鋼管に比べて、冷間抽伸工程後の電縫鋼管は、外径・肉厚寸法が均一で、表面粗さが改善されるという利点がある。
【0004】
ここで、従来、造管工程では、一般的に、貫通型の検出コイルを用いた電縫鋼管の渦流探傷が行われている。同様に、冷間抽伸工程後の電縫鋼管にも貫通型の検出コイルを用いた渦流探傷が行なわれる場合がある。
造管工程での電縫鋼管の渦流探傷では、工程の都合上、管状に成形された未溶接の板材を検出コイル内に通過させる必要もあるため、溶接後の鋼管の外径と検出コイルの内径との差であるギャップ量としては、通常、5mm以上の大きさが必要である。すなわち、検出コイルの充填率が比較的小さい状態で渦流探傷を行う必要がある。また、板材を管状に成形することで製造される電縫鋼管には、外径の寸法変動が残存するため、これが渦流探傷におけるノイズの発生要因となる。
一方、冷間抽伸工程後の電縫鋼管の渦流探傷では、鋼管の外径・肉厚の変動が少ないため、鋼管の外径と検出コイルの内径との差であるギャップ量を、通常、2mm程度に小さくすることができる。すなわち、検出コイルの充填率が比較的大きな状態で渦流探傷を行うことが可能である。一般的に、検出コイルの充填率が大きいほど、渦流探傷の欠陥検出能(以下、適宜、「S/N比」という)は高くなる。
【0005】
上記のような理由から、冷間抽伸工程後の電縫鋼管の渦流探傷は、造管工程での電縫鋼管の渦流探傷に比べて、高いS/N比が得られるのが一般的である。このため、渦流探傷における探傷感度(探傷信号の増幅度)や欠陥検出しきい値(このしきい値を超える探傷信号を欠陥に対応する探傷信号として検出する)の校正に用いる欠陥(人工欠陥)としては、造管工程での渦流探傷については、欠陥の寸法がJIS等の規格によって定められており、例えば、小径鋼管の場合には、鋼管の肉厚方向に貫通する直径(内径)1.2mmのドリルホール(貫通穴)が用いられる。一方、冷間抽伸工程後の渦流探傷については、造管工程での渦流探傷に用いられる欠陥よりも小さな、例えば、鋼管の肉厚方向に貫通する直径0.5mmのドリルホールが用いられる。冷間抽伸工程後の渦流探傷については、校正に用いる欠陥の寸法は特に規格で定められておらず、電縫鋼管のユーザの要求等に応じて決まる検出対象とする欠陥の寸法が、校正に用いる欠陥の寸法とされている。
【0006】
ここで、造管工程において、突き合わせた板材の端部間にスケールが侵入すると、溶接部に微細な欠陥(溶接欠陥)が生じる場合がある。侵入するスケールは、造管工程で使用する冷却水に含有される場合や、板材の成形の際に雰囲気中に浮遊している場合が考えられる。造管工程で生じた溶接欠陥のような微細な欠陥は、従来のように校正された造管工程での渦流探傷では検出困難である一方、冷間抽伸工程後の渦流探傷では検出可能であることが期待できる。しかしながら、造管工程で生じた微細な欠陥が冷間抽伸工程まで残存すると、冷間抽伸工程において、この微細な欠陥に応力集中が生じることで、鋼管に割れが生じる可能性がある。鋼管に割れが生じると、鋼管の歩留まりが低下する他、冷間抽伸工程にトラブルが発生してその修復に多大な工数が掛かるおそれがある。このため、造管工程においても、溶接欠陥のような微細な欠陥を、冷間抽伸工程後と同程度に検出可能とすることが望まれている。
また、二次加工工程として、造管工程後の電縫鋼管(造管工程後に冷間抽伸工程を行わなかった電縫鋼管)又は冷間抽伸工程後の電縫鋼管(造管工程後に冷間抽伸工程を行なった電縫鋼管)に曲げ加工工程や拡管・縮径工程を行う場合も同様に、造管工程で生じた微細な欠陥がこれらの二次加工工程まで残存すると、二次加工工程において、この微細な欠陥に応力集中が生じることで、鋼管に割れが生じる可能性がある。このため、造管工程においても、溶接欠陥のような微細な欠陥を検出可能とすることが望まれている。
【0007】
例えば、特許文献1~3には、鋼管の渦流探傷方法が提案されているものの、上記の問題を解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実公平2-8210号公報
【文献】特開2003-4708号公報
【文献】特開2007-121193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、電縫鋼管を製造する造管工程と、造管工程後に電縫鋼管を二次加工(冷間抽伸、曲げ加工、拡管・縮径など)する二次加工工程と、を有する電縫鋼管の製造過程において、造管工程で電縫鋼管の微細な欠陥を検出可能な渦流探傷方法及び渦流探傷設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を行った。まず、本発明者らは、渦流探傷の校正に用いる欠陥(人工欠陥)の直径と、この欠陥について得られる探傷信号の大きさ(振幅)との関係について検討し、両者の間に良好な正の相関があり、ひいては、欠陥の体積と、この欠陥について得られる探傷信号の大きさとの間にも良好な正の相関があることを確認した。そして、本発明者らは、渦流探傷の対象とする電縫鋼管の外径・肉厚寸法が異なる場合であっても、欠陥体積比(=欠陥の体積/(電縫鋼管の断面積×検出コイルのコイル幅)と、この欠陥について得られる探傷信号の大きさとの間にも良好な正の相関があることを見出した。
このため、造管工程での電縫鋼管の渦流探傷の校正に従来用いられている欠陥(例えば、直径1.2mmのドリルホール)の欠陥体積比と、冷間抽伸工程後の電縫鋼管の渦流探傷で検出対象とする(校正に用いる)欠陥(例えば、直径0.5mmのドリルホール)の欠陥体積比とを算出し、前者の欠陥体積比に対する後者の欠陥体積比の割合に基づき、造管工程での渦流探傷の校正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を補正すれば、造管工程においても、冷間抽伸工程後と同程度の微細な欠陥を検出可能であることを見出した。
【0011】
二次加工工程が冷間抽伸工程である場合に適用される本発明の第1の渦流探傷方法は、上記の本発明者らの知見に基づき、完成したものである。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、第1の渦流探傷方法として、管状に成形された板材の端部同士を突き合わせて溶接することで、電縫鋼管を製造する造管工程と、前記造管工程後に、前記電縫鋼管を冷間抽伸する冷間抽伸工程と、を有する前記電縫鋼管の製造過程において、前記造管工程で前記電縫鋼管を渦流探傷する第1渦流探傷ステップと、前記冷間抽伸工程後の前記電縫鋼管を渦流探傷する第2渦流探傷ステップと、を含み、前記第1渦流探傷ステップでの探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値の校正に用いる欠陥の寸法と前記第1渦流探傷ステップで用いる貫通型の検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第1欠陥体積比と、前記第2渦流探傷ステップで検出対象とする欠陥の寸法と前記第2渦流探傷ステップで用いる貫通型の検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第2欠陥体積比と、を算出する欠陥体積比算出ステップを更に含み、
前記第1渦流探傷ステップにおいて、前記校正に用いる欠陥を前記検出コイルで渦流探傷することで得られる探傷信号の大きさが予め定めた値となるように予め校正された校正後の探傷感度及び/又は前記校正に用いる欠陥を前記検出コイルで渦流探傷することで得られる探傷信号が検出可能となるように予め校正された校正後の欠陥検出しきい値を、前記欠陥体積比算出ステップで算出した前記第1欠陥体積比に対する前記第2欠陥体積比の割合に基づき補正し、補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いて前記電縫鋼管を渦流探傷する、ことを特徴とする電縫鋼管の渦流探傷方法を提供する。
なお、「欠陥体積比」は、欠陥の体積/(電縫鋼管の断面積×検出コイルのコイル幅)を意味する。
【0012】
本発明に係る第1の渦流探傷方法によれば、欠陥体積比算出ステップにおいて、第1渦流探傷ステップ(造管工程で電縫鋼管を渦流探傷するステップ)での探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値の校正に用いる欠陥の寸法と第1渦流探傷ステップで用いる貫通型の検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第1欠陥体積比を算出する。また、第2渦流探傷ステップ(冷間抽伸工程後の電縫鋼管を渦流探傷するステップ)で検出対象とする欠陥の寸法と第2渦流探傷ステップで用いる貫通型の検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第2欠陥体積比を算出する。
前述のように、欠陥体積比(第1欠陥体積比、第2欠陥体積比)と、欠陥について得られる探傷信号の大きさとの間には、良好な正の相関があるため、第1渦流探傷ステップにおいて、校正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を、欠陥体積比算出ステップで算出した第1欠陥体積比に対する第2欠陥体積比の割合に基づき補正し、補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いて電縫鋼管を渦流探傷することで、造管工程においても、冷間抽伸工程後と同程度の微細な欠陥を検出可能である。
【0013】
本発明に係る第1の渦流探傷方法において、好ましくは、前記欠陥体積比算出ステップは、前記冷間抽伸工程後の電縫鋼管であって、互いに寸法の異なる複数の欠陥が形成された電縫鋼管を校正用鋼管として用意する手順と、前記校正用鋼管の前記複数の各欠陥を前記第2渦流探傷ステップで用いる前記検出コイルで渦流探傷することで、欠陥の寸法と欠陥検出能との関係を算出する手順と、前記関係に基づき、所望する欠陥検出能が得られる欠陥の最小寸法を決定する手順と、前記決定した最小寸法を、前記検出対象とする欠陥の寸法として用いて、前記第2欠陥体積比を算出する手順と、を含む。
【0014】
上記の好ましい方法によれば、所望する欠陥検出能(S/N比)が得られる欠陥の最小寸法を、第2渦流探傷ステップで検出対象とする欠陥の寸法として用いて、第2欠陥体積比を算出するため、造管工程においても、所望する欠陥検出能で微細な欠陥を検出可能になることが期待できる。
【0015】
好ましくは、前記第1渦流探傷ステップにおいて、前記補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いた前記電縫鋼管の渦流探傷と、前記校正後で且つ前記補正前の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いた前記電縫鋼管の渦流探傷と、の双方を実行する。
【0016】
上記の好ましい方法によれば、第1渦流探傷ステップにおいて、補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いた電縫鋼管の渦流探傷を実行するため、造管工程においても、電縫鋼管のユーザの要求等に応じて、冷間抽伸工程後と同程度の微細な欠陥を検出可能である。また、第1渦流探傷ステップにおいて、校正後で且つ補正前の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いた電縫鋼管の渦流探傷を実行するため、校正に用いる欠陥をJIS等の規格に即したものとすることで、規格に準拠した渦流探傷が可能である。すなわち、電縫鋼管のユーザの要求等に応じた微細な欠陥を対象とする渦流探傷と、JIS等の規格に準拠した渦流探傷との双方を並行して実行可能である。
【0017】
本発明に係る第1の渦流探傷方法において、好ましくは、前記第1渦流探傷ステップにおいて、前記補正後の探傷感度で前記電縫鋼管を渦流探傷することで得られる探傷信号について、前記探傷信号の時間軸を所定の時間幅を有する複数個の第1区間に分割し、前記第1区間毎に前記第1区間内での探傷信号の最大値をノイズ値として検出する第1手順と、前記第1手順後に、前記複数個の第1区間のうち連続するL(L≧2)個の前記第1区間で構成される第2区間内での前記ノイズ値の移動平均値を算出し、前記第2区間に後続する前記第1区間の前記ノイズ値と前記算出した前記第2区間内での移動平均値との差が所定のしきい値を超える場合、前記後続する前記第1区間の前記ノイズ値を前記第2区間を構成する最後の前記第1区間の前記ノイズ値に置き換える第2手順と、前記第2手順後に、前記複数個の第1区間のうち連続するM(M>L)個の前記第1区間で構成される第3区間内での前記ノイズ値の移動平均値をノイズレベルとして算出する第3手順と、前記第3手順で算出したノイズレベルに基づき、前記欠陥検出しきい値を前記第1区間毎に決定し、決定した前記欠陥検出しきい値を用いて前記電縫鋼管を渦流探傷する第4手順と、を含む。
【0018】
上記の好ましい方法によれば、第1手順において、探傷信号の時間軸を所定の時間幅を有する複数個の第1区間に分割し、第1区間毎に第1区間内での信号の最大値をノイズ値として検出する。このノイズ値には、ノイズではなく、欠陥に対応する探傷信号の大きさが含まれる可能性がある。このため、上記の好ましい方法では、第2手順において、第1手順後に、複数個の第1区間のうち連続するL(L≧2)個の第1区間で構成される第2区間を設定し、この第2区間内でのノイズ値の移動平均値を算出する。そして、第2区間に後続する第1区間のノイズ値と算出した第2区間内での移動平均値との差が所定のしきい値を超えるか否かを判定する。両者の差が所定のしきい値を超える場合、第2区間に後続する第1区間のノイズ値は、欠陥に対応する探傷信号の大きさに相当する可能性がある。このため、第2手順では、両者の差が所定のしきい値を超える場合、後続する第1区間のノイズ値を第2区間を構成する最後の第1区間のノイズ値に置き換える。これにより、置き換えた後の第1区間のノイズ値は、いずれもノイズに対応する探傷信号の大きさに相当する可能性が高くなる。
そして、上記の好ましい方法では、第3手順において、第2手順後に、複数個の第1区間のうち連続するM(M>L)個の第1区間で構成される第3区間内でのノイズ値の移動平均値をノイズレベルとして算出し、第4手順において、算出したノイズレベルに基づき、欠陥検出しきい値を第1区間毎に決定し、決定した欠陥検出しきい値を用いて電縫鋼管を渦流探傷する。
すなわち、上記の好ましい方法によれば、第1渦流探傷ステップにおいて、常に一定の欠陥検出しきい値を用いて電縫鋼管を探傷するのではなく、算出したノイズレベルに基づき第1区間毎に決定した欠陥検出しきい値(換言すれば、ノイズレベルの変動に追従する欠陥検出しきい値)を用いて電縫鋼管を探傷するため、造管工程においてノイズレベルが変動したとしても、過検出や未検出が抑制され、電縫鋼管を精度良く渦流探傷することが可能である。
【0019】
また、前記課題を解決するため、本発明は、第1の渦流探傷設備として、管状に成形された板材の端部同士を突き合わせて溶接することで、電縫鋼管を製造する造管工程と、前記造管工程後に、前記電縫鋼管を冷間抽伸する冷間抽伸工程と、を有する前記電縫鋼管の製造過程において、前記電縫鋼管を渦流探傷する渦流探傷設備であって、前記造管工程で前記電縫鋼管を渦流探傷する第1渦流探傷装置と、前記冷間抽伸工程後の前記電縫鋼管を渦流探傷する第2渦流探傷装置と、を備え、前記第1渦流探傷装置における探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値の校正に用いる欠陥の寸法と前記第1渦流探傷装置が具備する貫通型の検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第1欠陥体積比と、前記第2渦流探傷装置で検出対象とする欠陥の寸法と前記第2渦流探傷装置が具備する貫通型の検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第2欠陥体積比と、が予め算出され、前記第1渦流探傷装置には、校正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を、前記算出した前記第1欠陥体積比に対する前記第2欠陥体積比の割合に基づき補正した補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値が設定されており、前記第1渦流探傷装置は、前記補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いて前記電縫鋼管を渦流探傷する、ことを特徴とする電縫鋼管の渦流探傷設備としても提供される。
なお、「欠陥体積比」は、欠陥の体積/(電縫鋼管の断面積×検出コイルのコイル幅)を意味する。
【0020】
ここで、前述のように、電縫鋼管の二次加工工程としては、冷間抽伸工程に限られるものではなく、曲げ加工工程や、拡管・縮径工程なども存在する。冷間抽伸工程後と異なり、これらの二次加工工程後に電縫鋼管を渦流探傷することは困難である。一方で、造管工程で生じた微細な欠陥がこれらの二次加工工程まで残存すると、二次加工工程において、この微細な欠陥に応力集中が生じることで、鋼管に割れが生じる可能性があり、割れが生じた場合には、欠陥の寸法を実測することが可能である。
このため、前述の第1の渦流探傷方法の欠陥体積比算出ステップでは、第2渦流探傷ステップで検出対象とする欠陥の寸法と第2渦流探傷ステップで用いる貫通型の検出コイルの寸法とによって第2欠陥体積比を算出していたが、これに代えて、電縫鋼管の二次加工工程で電縫鋼管の溶接部に生じた欠陥の寸法を実測し、当該実測した欠陥の寸法と第1渦流探傷ステップで用いる貫通型の検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比を第2欠陥体積比として算出することも考えられる。
【0021】
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、第2の渦流探傷方法として、管状に成形された板材の端部同士を突き合わせて溶接することで、電縫鋼管を製造する造管工程と、前記造管工程後に、前記電縫鋼管を二次加工する二次加工工程と、を有する前記電縫鋼管の製造過程において、前記造管工程で前記電縫鋼管を渦流探傷する第1渦流探傷ステップを含み、前記第1渦流探傷ステップでの探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値の校正に用いる欠陥の寸法と前記第1渦流探傷ステップで用いる貫通型の検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第1欠陥体積比と、前記二次加工工程で前記電縫鋼管の溶接部に生じた欠陥の寸法を実測し、当該実測した欠陥の寸法と前記第1渦流探傷ステップで用いる前記検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第2欠陥体積比を算出する欠陥体積比算出ステップを更に含み、前記第1渦流探傷ステップにおいて、前記校正に用いる欠陥を前記検出コイルで渦流探傷することで得られる探傷信号の大きさが予め定めた値となるように予め校正された校正後の探傷感度及び/又は前記校正に用いる欠陥を前記検出コイルで渦流探傷することで得られる探傷信号が検出可能となるように予め校正された校正後の欠陥検出しきい値を、前記欠陥体積比算出ステップで算出した前記第1欠陥体積比に対する前記第2欠陥体積比の割合に基づき補正し、補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いて前記電縫鋼管を渦流探傷する、ことを特徴とする電縫鋼管の渦流探傷方法を提供する。
なお、「欠陥体積比」は、欠陥の体積/(電縫鋼管の断面積×検出コイルのコイル幅)を意味する。具体的には、第2の渦流探傷方法で算出される第2欠陥体積比は、二次加工工程で実際に生じた欠陥の体積/(二次加工工程後の電縫鋼管の断面積×第1渦流探傷ステップで用いる検出コイルのコイル幅)で表される。
【0022】
本発明に係る第2の渦流探傷方法によっても、欠陥体積比(第1欠陥体積比、第2欠陥体積比)と、欠陥について得られる探傷信号の大きさとの間には、良好な正の相関があるため、第1渦流探傷ステップにおいて、校正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を、欠陥体積比算出ステップで算出した第1欠陥体積比に対する第2欠陥体積比の割合に基づき補正し、補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いて電縫鋼管を渦流探傷することで、造管工程においても、二次加工工程によって生じる欠陥と同程度の微細な欠陥を検出可能である。
なお、本発明に係る第2の渦流探傷方法における「二次加工工程」には、(1)造管工程後の電縫鋼管に対して行う曲げ加工工程や拡管・縮径工程などの二次加工工程、(2)造管工程及びこれに続く冷間抽伸工程後の電縫鋼管に対して行う曲げ加工工程や拡管・縮径工程などの二次加工工程、及び、(3)造管工程後の電縫鋼管に対して行う冷間抽伸工程が含まれる。すなわち、本発明に係る第2の渦流探傷方法は、二次加工工程が、二次加工工程後に渦流探傷することが困難(すなわち、第1の渦流探傷方法の第2渦流探傷ステップを実行することが困難)である曲げ加工工程や、拡管・縮径工程の場合(上記(1)及び(2)の場合)に好適に用いられるが、必ずしもこれに限るものではなく、二次加工工程が冷間抽伸工程の場合(上記(3)の場合)に用いることも可能である。
【0023】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、第2の渦流探傷設備として、管状に成形された板材の端部同士を突き合わせて溶接することで、電縫鋼管を製造する造管工程と、前記造管工程後に、前記電縫鋼管を二次加工する二次加工工程と、を有する前記電縫鋼管の製造過程において、前記電縫鋼管を渦流探傷する渦流探傷設備であって、前記造管工程で前記電縫鋼管を渦流探傷する第1渦流探傷装置を備え、前記第1渦流探傷装置における探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値の校正に用いる欠陥の寸法と前記第1渦流探傷装置が具備する貫通型の検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第1欠陥体積比と、前記二次加工工程で前記電縫鋼管の溶接部に生じた欠陥の実測した寸法と前記第1渦流探傷ステップで用いる前記検出コイルの寸法とによって決まる欠陥体積比である第2欠陥体積比と、が予め算出され、前記第1渦流探傷装置には、校正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を、前記算出した前記第1欠陥体積比に対する前記第2欠陥体積比の割合に基づき補正した補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値が設定されており、前記第1渦流探傷装置は、前記補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いて前記電縫鋼管を渦流探傷する、ことを特徴とする電縫鋼管の渦流探傷設備を提供する。
なお、「欠陥体積比」は、欠陥の体積/(電縫鋼管の断面積×検出コイルのコイル幅)を意味する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、造管工程の電縫鋼管と、冷間抽伸工程後の電縫鋼管との双方について渦流探傷する場合において、造管工程で微細な欠陥を検出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係る渦流探傷設備が備える第1渦流探傷装置及び第2渦流探傷装置の概略構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る渦流探傷方法の概略手順を示すフロー図である。
図3図1に示す第1渦流探傷装置10によって、互いに直径の異なる複数の欠陥が形成された電縫鋼管Pを渦流探傷し、各欠陥について得られる探傷信号の大きさを評価した結果の一例を示す。
図4図1に示す第1渦流探傷装置10によって、互いに外径・肉厚寸法の異なる複数の電縫鋼管Pに、互いに直径の異なる複数の欠陥を形成し、これらの電縫鋼管Pを渦流探傷し、各欠陥について得られる探傷信号の大きさから算出されるS/N比を評価した結果の一例を示す。
図5】S/N比を考慮して検出対象とする欠陥の寸法を決定し、この欠陥の寸法を用いて第2欠陥体積比を算出する場合における、図2に示す欠陥体積比算出ステップST1(ステップST12)の概略手順を示すフロー図である。
図6図5に示す手順ST122で算出した欠陥の寸法とS/N比との関係の一例を示す図である。
図7図1に示す第1渦流探傷装置10の第1判定部35aによる欠陥検出しきい値の決定手順を説明する説明図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る渦流探傷方法の概略手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の実施形態に係る電縫鋼管の渦流探傷設備及びこれを用いた電縫鋼管の渦流探傷方法について説明する。
【0027】
<第1実施形態>
[渦流探傷設備]
図1は、本発明の第1実施形態に係る渦流探傷設備100が備える第1渦流探傷装置10及び第2渦流探傷装置20の概略構成を模式的に示す図である。図1(a)は第1渦流探傷装置10の概略構成を、図1(b)は第2渦流探傷装置20の概略構成を示す。図1において、電縫鋼管P及び貫通型コイル(励磁コイル1、検出コイル2)は断面で示している。また、図1において、第1渦流探傷装置10及び第2渦流探傷装置20が具備する同様の構成要素については同じ符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
第1実施形態に係る渦流探傷設備100は、管状に成形された板材の端部同士を突き合わせて溶接することで、電縫鋼管Pを製造する造管工程と、造管工程後に、電縫鋼管Pを冷間抽伸する冷間抽伸工程と、を有する電縫鋼管Pの製造過程において、電縫鋼管Pを渦流探傷する設備である。図1に示すように、渦流探傷設備100は、造管工程で電縫鋼管Pを渦流探傷する第1渦流探傷装置10と、冷間抽伸工程後の電縫鋼管Pを渦流探傷する第2渦流探傷装置20と、を備えている。
第1渦流探傷装置10は、例えば、造管工程を実行する造管ラインに設置された溶接装置の出側に配置される。また、第2渦流探傷装置20は、例えば、冷間抽伸工程を実行する冷間抽伸ラインの搬出テーブル直後に設置される曲がり矯正機の出側や、冷間抽伸工程後の電縫鋼管Pが搬入されるオフラインに配置される。
【0028】
図1(a)に示すように、第1渦流探傷装置10は、内部に電縫鋼管Pが挿入される貫通型コイル(1、2)と、貫通型コイル(1、2)に接続された探傷器3と、を具備する。第1実施形態の貫通型コイル(1、2)は、貫通型の励磁コイル1と、励磁コイル1内に配置された貫通型の検出コイル2とを有する相互誘導型のコイルである。また、第1実施形態の貫通型コイル(1、2)は、検出コイル2として、一対の検出コイル2a及び検出コイル2bを有し、各検出コイル2a、2bの差動信号が出力される、自己比較方式のコイルである。第1渦流探傷装置10では、電縫鋼管Pの外径と検出コイル2の内径との差であるギャップ量Gが、例えば5mm以上の大きさに設定されており、検出コイル2の充填率が比較的小さい。
第1実施形態では、貫通型コイル(1、2)として、励磁コイル1と検出コイル2とが別体とされた相互誘導型のコイルを用いているが、本発明は必ずしもこれに限るものではなく、同一のコイルが励磁コイル及び検出コイルの双方として機能する自己誘導型のコイルを用いることも可能である。ただし、本発明者らの知見によれば、第1実施形態のように相互誘導型のコイルを用いることで、検出コイル2の充填率が比較的小さくても、自己誘導型のコイルを用いる場合に比べてノイズレベルが低減され、ひいてはS/N比を高めることができる点で好ましい。
【0029】
探傷器3は、励磁回路31と、受信回路32と、同期検波回路33と、増幅器34と、判定部35と、を具備する。
励磁回路31は、励磁コイル1に交流の励磁電流を供給する。これにより、電縫鋼管Pに交流磁界が作用し、電縫鋼管Pに渦電流が誘起される。
検出コイル2は、電縫鋼管Pに誘起された渦電流を検出することで得られる探傷信号(第1実施形態では、差動信号)を受信回路32に出力する。受信回路32は、受信した探傷信号をその後の処理に必要な大きさに調整し、同期検波回路33に出力する。
同期検波回路33は、励磁回路31から出力される参照信号(励磁コイル1に供給する励磁電流と同一の周波数を有する参照信号)に基づき、受信回路32から出力された探傷信号を同期検波し、同期検波後の探傷信号を増幅器34に出力する。同期検波回路33は、位相調整機能を有し、欠陥に対応する探傷信号を所定の位相に調整している。
増幅器34には、探傷感度(探傷信号の増幅度)が設定されている。増幅器34は、同期検波回路33から出力された探傷信号を、設定された探傷感度に応じて増幅し、判定部35に出力する。
判定部35には、欠陥検出しきい値が設定されている。判定部35は、増幅器34から出力された探傷信号をA/D変換した後、A/D変換後の探傷信号と欠陥検出しきい値とを比較し、欠陥検出しきい値を超える探傷信号を欠陥に対応する探傷信号として検出する。
【0030】
以上に述べた探傷器3の基本的な構成は、渦流探傷に通常用いられる公知の探傷器と同様の構成である。
ただし、第1実施形態の探傷器3は、増幅器34として、複数の増幅器34(第1増幅器34a及び第2増幅器34b)を具備する点に特徴を有する。第1増幅器34a及び第2増幅器34bは、同期検波回路33に並列接続されており、第1増幅器34a及び第2増幅器34bには、同期検波回路33から同じ探傷信号が入力される。第1増幅器34aには、後述のように補正した後の探傷感度(ただし、欠陥検出しきい値のみを補正する場合には、補正していない校正後の探傷感度)が設定されている。また、第2増幅器34bには、後述のように校正した後で且つ補正する前の探傷感度が設定されている。
また、第1実施形態の探傷器3は、判定部35として、複数の判定部35(第1判定部35a及び第2判定部35b)を具備する点に特徴を有する。第1判定部35aには、第1増幅器34aから増幅後の探傷信号が入力され、第2判定部35bには、第2増幅器34bから増幅後の探傷信号が入力される。第1判定部35aには、後述のように補正した後の欠陥検出しきい値(ただし、探傷感度のみを補正する場合には、補正していない欠陥検出しきい値)が設定されている。また、第2判定部35bには、後述のように校正した後で且つ補正する前の欠陥検出しきい値が設定されている。
第1実施形態では、造管工程で電縫鋼管Pを渦流探傷する第1渦流探傷装置10の探傷器3が具備する増幅器34及び判定部35が上記の構成を有することで、電縫鋼管のユーザの要求等に応じた微細な欠陥を検出対象とする渦流探傷(第1増幅器34a及び第1判定部35aを用いた渦流探傷)と、JIS等の規格に準拠した渦流探傷(第2増幅器34b及び第2判定部35bを用いた渦流探傷)との双方を並行して実行可能である。
【0031】
図1(b)に示すように、第2渦流探傷装置20も、内部に電縫鋼管P(後述のステップST12では、校正用管P’)が挿入される貫通型コイル(1、2)と、貫通型コイル(1、2)に接続された探傷器3Aと、を具備する。第2渦流探傷装置20が具備する貫通型コイル(1、2)も、第1渦流探傷装置10が具備する貫通型コイル(1、2)と同様に、貫通型の励磁コイル1と、励磁コイル1内に配置された貫通型の検出コイル2(検出コイル2a、2b)とを有する相互誘導型で自己比較方式のコイルである。
ただし、第2渦流探傷装置20が具備する貫通型コイル(1、2)については、電縫鋼管Pの外径と検出コイル2の内径との差であるギャップ量Gが、例えば2mm程度の大きさに設定されており、検出コイル2の充填率が比較的大きい点で、第1渦流探傷装置10が具備する貫通型コイル(1、2)と異なる。
【0032】
第2渦流探傷装置20が具備する探傷器3Aも、第1渦流探傷装置10が具備する探傷器30と同様に、励磁回路31と、受信回路32と、同期検波回路33と、増幅器34と、判定部35と、を具備する。
ただし、第2渦流探傷装置20が具備する探傷器3Aは、従来公知の探傷器と同様に、単一の増幅器34及び単一の判定部35を具備する点で、第1渦流探傷装置10が具備する探傷器3と異なる。
【0033】
[渦流探傷方法]
以下、上記の構成を有する渦流探傷設備100を用いた電縫鋼管Pの渦流探傷方法について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る渦流探傷方法の概略手順を示すフロー図である。
図2に示すように、第1実施形態に係る渦流探傷方法は、欠陥体積比算出ステップST1と、第1渦流探傷ステップST2と、第2渦流探傷ステップST3と、を含んでいる。欠陥体積比算出ステップST1は、後述のようにして、第1欠陥体積比及び第2欠陥体積比を算出するステップである。第1渦流探傷ステップST2は、第1渦流探傷装置10が、造管工程で電縫鋼管Pを渦流探傷するステップである。第2渦流探傷ステップST3は、第2渦流探傷装置20が、冷間抽伸工程後の電縫鋼管Pを渦流探傷するステップである。
以下、各ステップST1~ST3の詳細について説明する。
【0034】
(欠陥体積比算出ステップST1)
欠陥体積比算出ステップST1では、図1(a)に示す第1渦流探傷装置10における(換言すれば、第1渦流探傷ステップST2での)探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値の校正に用いる欠陥の寸法と、第1渦流探傷装置10が具備する(換言すれば、第1渦流探傷ステップST2で用いる)貫通型の検出コイル2の寸法とによって決まる欠陥体積比である第1欠陥体積比を算出する(図2のステップST11)。
同様に、欠陥体積比算出ステップST1では、図1(b)に示す第2渦流探傷装置20で(換言すれば、第2渦流探傷ステップST3で)検出対象とする欠陥の寸法と、第2渦流探傷装置20が具備する(換言すれば、第2渦流探傷ステップST3で用いる)貫通型の検出コイル2の寸法とによって決まる欠陥体積比である第2欠陥体積比を算出する(図2のステップST12)。
欠陥体積比は、欠陥の体積/(電縫鋼管Pの断面積×検出コイル2のコイル幅W)を意味する。第1実施形態では、検出コイル2が一対の検出コイル2a、2bで構成されており、検出コイル2aのコイル幅W1と検出コイル2bのコイル幅W2とが等しい。検出コイル2のコイル幅Wは、検出コイル2aのコイル幅W1、又は、検出コイル2bのコイル幅W2で表されるが、本実施形態では、W=W1=W2である。
【0035】
図3は、第1渦流探傷装置10によって、互いに直径(内径)の異なる複数の欠陥(人工欠陥、電縫鋼管Pの肉厚方向に貫通するドリルホール)が形成された電縫鋼管Pを渦流探傷し、各欠陥について得られる探傷信号(具体的には、第1増幅器34aの出力信号)の大きさ(振幅)を評価した結果の一例を示す。
図3に示すように、欠陥の直径と、この欠陥について得られる探傷信号の大きさとの間には、良好な正の相関がある。このため、欠陥の体積と、この欠陥について得られる探傷信号の大きさとの間にも良好な正の相関がある。さらには、欠陥体積比と、この欠陥について得られる探傷信号の大きさ(ひいては、欠陥のS/N比)との間にも良好な正の相関がある。
【0036】
図4は、第1渦流探傷装置10によって、互いに外径・肉厚寸法の異なる複数の電縫鋼管Pに、互いに直径(内径)の異なる複数の欠陥(人工欠陥)を形成し、これらの電縫鋼管Pを渦流探傷し、各欠陥について得られる探傷信号(具体的には、第1増幅器34aの出力信号)の大きさ(振幅)から算出されるS/N比を評価した結果の一例を示す。
図4に示す結果は、以下の表1に示す各欠陥が形成された各電縫鋼管Pについて得られたものである。なお、探傷周波数(励磁電流の周波数)は8kHz、検出コイル2のコイル幅Wは2mm、検出コイル2a、2bの間隔は2mm、電縫鋼管Pの外径と検出コイル2の内径との差であるギャップ量は5mmとした。
【表1】
図4に示すように、欠陥の直径≦検出コイル2のコイル幅Wである限りにおいて、欠陥体積比と欠陥のS/N比との間にも良好な正の相関があることが分かる。
したがって、第1実施形態に係る渦流探傷方法では、欠陥体積比算出ステップST1で欠陥体積比(第1欠陥体積比、第2欠陥体積比)を算出し、これを用いて、後述のように、第1渦流探傷ステップST2で探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を補正することにしている。
【0037】
欠陥体積比算出ステップST1のステップST11では、例えば、第1渦流探傷装置10によって外径21.7mmで肉厚1.4mmの電縫鋼管Pが渦流探傷され、外径1.2mmのドリルホールが第1渦流探傷装置10の校正に用いる欠陥とされる場合を想定する。
第1渦流探傷装置10が具備する検出コイル2の内径が27mmであれば、この場合の検出コイル2の簡易充填率は、(21.7)/(27)×100≒65%となる。なお、検出コイル2の充填率は、厳密には、(被探傷材(第1実施形態では電縫鋼管P)の外径)/(検出コイル2の平均径)で表される。上記の計算では、検出コイル2の平均径の代わりに内径を用いて充填率を算出しているため、厳密な充填率と区別するために、「簡易充填率」と表記している。後述の「簡易充填率」についても同様である。
欠陥の体積は、(1.2/2)×3.14×1.4≒1.583mmとなる。
また、第1渦流探傷装置10が具備する検出コイル2のコイル幅Wが2.0mmであれば、電縫鋼管Pの断面積×検出コイル2のコイル幅Wは、(21.7-1.4)×1.4×3.14×2.0≒178.48mmとなる。
したがって、上記の例では、第1欠陥体積比は、1.583/178.48×100≒0.887%となる。
【0038】
欠陥体積比算出ステップST1のステップST12では、例えば、第2渦流探傷装置20によって外径18.0mmで肉厚1.0mmの冷間抽伸工程後の電縫鋼管Pが渦流探傷され、直径0.5mmのドリルホールが第2渦流探傷装置20で検出対象とする欠陥とされる場合を想定する。
第2渦流探傷装置20が具備する検出コイル2の内径が20mmであれば、この場合の検出コイル2の簡易充填率は、(18.0)/(20)×100=81%となる。
欠陥の体積は、(0.5/2)×3.14×1.0≒0.1963mmとなる。
また、第2渦流探傷装置20が具備する検出コイル2のコイル幅Wが2.0mmであれば、電縫鋼管Pの断面積×検出コイル2のコイル幅Wは、(18.0-1.0)×1.0×3.14×2.0=106.76mmとなる。
したがって、上記の例では、第2欠陥体積比は、0.1963/106.76×100≒0.184%となる。
【0039】
(第1渦流探傷ステップST2)
第1渦流探傷ステップST2では、第1渦流探傷装置10が、造管工程で電縫鋼管Pを渦流探傷する。
この際、第1渦流探傷装置10の第2増幅器34bには、例えば、前述のように、直径1.2mmのドリルホールを用いて校正された探傷感度が予め設定される。具体的には、このドリルホールについて得られる探傷信号(第2増幅器34bの出力信号)の大きさが予め定めた値となるように、第2増幅器34bの探傷感度が設定される。
また、第1渦流探傷装置10の第2判定部35bには、例えば、前述のように、直径1.2mmのドリルホールを用いて校正された欠陥検出しきい値が予め設定される。具体的には、このドリルホールについて得られる探傷信号(第2増幅器34bの出力信号)が検出可能となるように(探傷信号の大きさが欠陥検出しきい値を超えるように)、第2判定部35bの欠陥検出しきい値が設定される。
【0040】
一方、第1渦流探傷装置10の第1増幅器34aには、校正後の探傷感度(第2増幅器34bに設定されている探傷感度)を欠陥体積比算出ステップST1で算出した第1欠陥体積比に対する第2欠陥体積比の割合に基づき補正した補正後の探傷感度が予め設定される。具体的には、前述の例では、第1欠陥体積比が0.887%であり、第2欠陥体積比が0.184%であるため、第1欠陥体積比に対する第2欠陥体積比の割合は、0.184/0.887≒0.207となる。これをdB換算すると、およそ-13.7dBとなる。したがって、例えば、第1増幅器34aの探傷感度のみを補正する場合(第1判定部35aの欠陥検出しきい値を補正しない場合)には、校正後の探傷感度を13.7dBだけ高めるように補正し、この補正後の探傷感度が第1増幅器34aに設定される。
また、第1渦流探傷装置10の第1判定部35aには、校正後の欠陥検出しきい値(第2判定部35bに設定されている欠陥検出しきい値)を欠陥体積比算出ステップST1で算出した第1欠陥体積比に対する第2欠陥体積比の割合に基づき補正した補正後の欠陥検出しきい値が予め設定される。具体的には、前述の例では、第1欠陥体積比に対する第2欠陥体積比の割合は、dB換算すると、-13.7dBであるため、例えば、第1判定部35aの欠陥検出しきい値のみを補正する場合(第1増幅器34aの探傷感度を補正しない場合)には、校正後の欠陥検出しきい値を13.7dBだけ低下させるように補正し、この補正後の欠陥検出しきい値が第1判定部35aに設定される。
なお、第1渦流探傷装置10の第1増幅器34aの探傷感度及び第1判定部35aの欠陥検出しきい値の双方を補正する場合には、上記の例では、双方の補正代の合計が13.7dBとなるように、第1増幅器34aの探傷感度及び第1判定部35aの欠陥検出しきい値を補正し、補正後の値をそれぞれ第1増幅器34a及び第1判定部35aに設定すればよい。この場合には、例えば、校正後の探傷感度を7.7dBだけ高めるように補正し、この補正後の探傷感度が第1増幅器34aに設定され、校正後の欠陥検出しきい値を6dBだけ低下させるように補正し、この補正後の欠陥検出しきい値が第1判定部35aに設定される。
【0041】
第1実施形態の第1渦流探傷ステップST2では、第1渦流探傷装置10が、補正後の探傷感度が設定された第1増幅器34aと、補正後の欠陥検出しきい値が設定された第1判定部35aとによって渦流探傷を実行するため、造管工程においても、電縫鋼管Pのユーザの要求等に応じて、冷間抽伸工程後と同程度の微細な欠陥を検出可能である。また、第1渦流探傷装置10が、校正後で且つ補正前の探傷感度が設定された第2増幅器34bと、校正後で且つ補正前の欠陥検出しきい値が設定された第2判定部35bとによっても渦流探傷を実行するため、校正に用いる欠陥をJIS等の規格に即したものとすることで、規格に準拠した渦流探傷が可能である。すなわち、電縫鋼管Pのユーザの要求等に応じた微細な欠陥を検出対象とする渦流探傷と、JIS等の規格に準拠した渦流探傷との双方を並行して実行可能である。
【0042】
ただし、本発明は必ずしもこれに限られるものではなく、第1増幅器34a及び第1判定部35aのみを備えた構成(第2増幅器34b及び第2判定部35bを備えない構成)を採用して、電縫鋼管Pのユーザの要求等に応じた微細な欠陥を検出対象とする渦流探傷のみを行うことも可能である。
【0043】
<第2渦流探傷ステップST3>
第2渦流探傷ステップST3では、第2渦流探傷装置20が、冷間抽伸工程後の電縫鋼管Pを渦流探傷する。
この際、第2渦流探傷装置20の増幅器34には、例えば、前述のように、直径0.5mmのドリルホールが検出対象とする欠陥とされ、この欠陥を用いて校正された探傷感度が予め設定される。具体的には、このドリルホールについて得られる探傷信号(増幅器34の出力信号)の大きさが予め定めた値となるように、増幅器34の探傷感度が設定される。
また、第2渦流探傷装置20の判定部35には、例えば、前述のように、検出対象欠陥である直径0.5mmのドリルホールを用いて校正された欠陥検出しきい値が予め設定される。具体的には、このドリルホールについて得られる探傷信号(増幅器34の出力信号)が検出可能となるように(探傷信号の大きさが欠陥検出しきい値を超えるように)、判定部35の欠陥検出しきい値が設定される。
【0044】
第1実施形態の第2渦流探傷ステップST3では、第2渦流探傷装置20が、校正後の探傷感度が設定された増幅器34と、校正後の欠陥検出しきい値が設定された判定部35とによって渦流探傷を実行するため、校正に用いる欠陥を検出対象とする欠陥とすることで、電縫鋼管Pのユーザの要求等に応じた微細な欠陥を検出可能である。
【0045】
[S/N比を考慮した第2欠陥体積比の算出]
以上に説明した第1実施形態では、第2渦流探傷装置20で検出対象とする欠陥(前述の例では直径0.5mmのドリルホール)の寸法(具体的には、直径)を決定するに際して、特にこの欠陥のS/N比を考慮していない。
しかしながら、所望するS/N比が得られる欠陥の寸法を、第2渦流探傷装置20で検出対象とする欠陥の寸法とすれば(この欠陥の寸法を用いて第2欠陥体積比を算出すれば)、造管工程においても、第1渦流探傷装置10によって所望するS/N比で微細な欠陥を検出可能になることが期待できる点で好ましい。以下、この好ましい態様について説明する。
【0046】
図5は、S/N比を考慮して検出対象とする欠陥の寸法を決定し、この欠陥の寸法を用いて第2欠陥体積比を算出する場合における、欠陥体積比算出ステップST1(ステップST12)の概略手順を示すフロー図である。
図5に示すように、S/N比を考慮する場合の欠陥体積比算出ステップST1(ステップST12)では、まず、手順ST121において、冷間抽伸工程後の電縫鋼管であって、互いに寸法の異なる複数の欠陥が形成された電縫鋼管を校正用鋼管P’として用意する。具体的には、例えば、実際に第2渦流探傷装置20で渦流探傷する電縫鋼管Pと断面寸法が同一であって、直径の異なる複数のドリルホールが形成された校正用鋼管P’を用意する。
【0047】
次に、手順ST122において、校正用鋼管P’の複数の各欠陥を第2渦流探傷装置20で渦流探傷する(図1(b)参照)ことで、欠陥の寸法とS/N比との関係を算出する。
図6は、手順ST122で算出した欠陥の寸法とS/N比との関係の一例を示す図である。具体的には、図6の横軸は、校正用鋼管P’に形成したドリルホールの直径であり、図6の縦軸は、探傷信号(第2渦流探傷装置の増幅器34の出力信号)の大きさ(振幅)である。すなわち、図6は、直接的には、欠陥の寸法と探傷信号の大きさとの関係を示している。そして、欠陥の寸法(図6に示す例では、直径0.4mm、0.5mm、0.6mm)毎の探傷信号の大きさを用いて、最小二乗法等の近似計算を行うことで、両者の関係を近似直線で近似している。図6に示す例では、破線で示す探傷信号のノイズレベルNLが0.13Vであるため、縦軸の探傷信号の大きさをこのノイズレベルNLで除算することで、S/N比が算出される。このため、図6の近似直線は、実質的には、欠陥の寸法とS/N比との関係を示していることになる。
【0048】
次に、手順ST123において、手順ST122で算出した関係(近似直線)に基づき、所望するS/N比が得られる欠陥の最小寸法を決定する。
例えば、所望するS/N比が2であるとすれば、図6に示す例では、このS/N比が得られる探傷信号の大きさは0.26Vである。この探傷信号の大きさが得られる欠陥の最小寸法は、図6に示す例では、直径0.4mmとなる。
【0049】
最後に、手順ST124において、手順ST123で決定した最小寸法を、検出対象とする欠陥の寸法として用いて、第2欠陥体積比を算出する。
例えば、前述の例と同様に、第2渦流探傷装置20によって外径18.0mmで肉厚1.0mmの冷間抽伸工程後の電縫鋼管Pが渦流探傷され、手順ST123で決定した直径0.4mmのドリルホールが第2渦流探傷装置20で検出対象とする欠陥とされると、この欠陥の体積は、(0.4/2)×3.14×1.0≒0.1256mmとなる。このため、前述の例と同様に、電縫鋼管Pの断面積×検出コイル2のコイル幅Wが106.76mmであるとすれば、第2欠陥体積比は、0.1256/106.76×100≒0.118%となる。
【0050】
前述の例と同様に、第1欠陥体積比が0.887%であるとすれば、第2欠陥体積比が0.118%であるため、第1欠陥体積比に対する第2欠陥体積比の割合は、0.118/0.887≒0.133となる。これをdB換算すると、およそ-17.5dBとなる。
以上のように、S/N比を考慮して第2欠陥体積比を算出する場合、例えば、第1増幅器34aの探傷感度のみを補正する場合(第1判定部35aの欠陥検出しきい値を補正しない場合)には、校正後の探傷感度を17.5dBだけ高めるように補正し、この補正後の探傷感度が第1増幅器34aに設定される。また、例えば、第1判定部35aの欠陥検出しきい値のみを補正する場合(第1増幅器34aの探傷感度を補正しない場合)には、校正後の欠陥検出しきい値を17.5dBだけ低下させるように補正し、この補正後の欠陥検出しきい値が第1判定部35aに設定される。さらに、第1渦流探傷装置10の第1増幅器34aの探傷感度及び第1判定部35aの欠陥検出しきい値の双方を補正する場合には、双方の補正代の合計が17.5dBとなるように、第1増幅器34aの探傷感度及び第1判定部35aの欠陥検出しきい値が補正され、それぞれ第1増幅器34a及び第1判定部35aに設定される。
【0051】
[ノイズレベルの変動に追従する欠陥検出しきい値の決定]
第1実施形態では、第1渦流探傷装置10の第1判定部35aに設定する欠陥検出しきい値を常に一定の値にする(例えば、1本の電縫鋼管Pを渦流探傷する間、一定の値にする)ことも可能である。しかしながら、S/N比を高める上では、第1判定部35aが、ノイズレベル(ノイズに対応する探傷信号の大きさ)の変動に追従する欠陥検出しきい値を決定し、これを用いて電縫鋼管Pを渦流探傷することが好ましい。以下、この好ましい態様について説明する。
【0052】
図7は、第1渦流探傷装置10の第1判定部35aによる欠陥検出しきい値(ノイズレベルに追従する欠陥検出しきい値)の決定手順を説明する説明図である。図7(a)はノイズレベルの算出手順を説明する図であり、図7(b)は欠陥検出しきい値の決定手順を説明する図である。
図7(a)に示すように、第1判定部35aは、第1増幅器34aから入力された増幅後の探傷信号について、探傷信号の時間軸を所定の時間幅(例えば、長さに換算して50mm)を有する複数個の第1区間S図7(a)の左から順にS11、S12・・・)に分割する。そして、第1判定部35aは、第1区間S毎に第1区間S内での探傷信号の最大値(振幅の最大値)をノイズ値として検出する。図7(a)に示す例では、例えば、第1区間S11内での探傷信号の最大値がノイズ値Nとして検出され、第1区間S12内での探傷信号の最大値がノイズ値Nとして検出され、第1区間S13内での探傷信号の最大値がノイズ値Nとして検出され、第1区間S14内での探傷信号の最大値がノイズ値Nとして検出されている。第1判定部35aは、この第1区間Sのノイズ値の検出を全ての第1区間Sについて行なう。
【0053】
次に、第1判定部35aは、複数個の第1区間Sのうち連続するL(L≧2)個の第1区間Sで構成される第2区間S(例えば、長さに換算して800mm)内でのノイズ値の移動平均値を算出する。図7(a)では、便宜上、第2区間Sが4個(L=4)の第1区間Sで構成される場合を図示しており、図7(a)の最も左側の第2区間S21が第1区間S11~S14で構成され、これに後続する(右側に1つの第1区間S分だけずれて位置する)第2区間S22が第1区間S12~S15で構成されている。例えば、第2区間S21内でのノイズ値の移動平均値は、第1区間S11~S14の各ノイズ値の平均値として算出される。第2区間S22内でのノイズ値の移動平均値は、第1区間S12~S15の各ノイズ値の平均値として算出される。第1判定部35aは、この第2区間S内でのノイズ値の移動平均値の算出を全ての第2区間Sについて行なう。
【0054】
次に、第1判定部35aは、第2区間Sに後続する第1区間Sのノイズ値と、算出した第2区間S内での移動平均値との差が所定のしきい値を超えるか否かを判定する。図7(a)に示す例では、例えば、第2区間S21に後続する第1区間S15のノイズ値と、算出した第2区間S21内での移動平均値との差が所定のしきい値を超えるか否かを判定する。また、第2区間S22に後続する第1区間S16のノイズ値と、算出した第2区間S22内での移動平均値との差が所定のしきい値を超えるか否かを判定する。
そして、しきい値を超えると判定した場合、第1判定部35aは、後続する第1区間Sのノイズ値を第2区間Sを構成する最後の第1区間Sのノイズ値に置き換える。図7(a)に示す例では、例えば、第2区間S21に後続する第1区間S15のノイズ値と、算出した第2区間S21内での移動平均値との差が所定のしきい値を超えると判定した場合、第1判定部35aは、第1区間S15のノイズ値を第2区間S21を構成する最後の第1区間S14のノイズ値に置き換える。また、第2区間S22に後続する第1区間S16のノイズ値と、算出した第2区間S22内での移動平均値との差が所定のしきい値を超えると判定した場合、第1判定部35aは、第1区間S16のノイズ値を第2区間S22を構成する最後の第1区間S15のノイズ値に置き換える。第1判定部35aは、以上の演算を全ての第2区間S及びこれに後続する第1区間Sについて行なう。
第2区間Sに後続する第1区間Sのノイズ値と、算出した第2区間S内での移動平均値との差が所定のしきい値を超える場合、第2区間Sに後続する第1区間Sのノイズ値は、欠陥に対応する探傷信号の大きさに相当する可能性がある。このため、上記のように、後続する第1区間Sのノイズ値を第2区間Sを構成する最後の第1区間Sのノイズ値に置き換えることで、置き換えた後の第1区間Sのノイズ値は、いずれもノイズに対応する探傷信号の大きさに相当する可能性が高くなる。
【0055】
次に、第1判定部35aは、複数個の第1区間Sのうち連続するM(M>L)個の第1区間Sで構成される第3区間S(例えば、長さに換算して6400mm)内でのノイズ値の移動平均値をノイズレベルNL(図7(b)参照)として算出する。図7(a)では、便宜上、第3区間Sが7個(M=7)の第1区間Sで構成される場合を図示しており、図7(a)の最も左側の第3区間S31が第1区間S11~S17で構成され、これに後続する(右側に1つの第1区間S分だけずれて位置する)第3区間S32が第1区間S12~S18で構成されている。例えば、第3区間S31内でのノイズ値の移動平均値は、第1区間S11~S17の各ノイズ値の平均値として算出される。第3区間S32内でのノイズ値の移動平均値は、第1区間S12~S18の各ノイズ値の平均値として算出される。第1判定部35aは、この第3区間S内でのノイズ値の移動平均値の算出(すなわち、ノイズレベルNLの算出)を全ての第3区間Sについて行なう。
【0056】
最後に、第1判定部35aは、図7(b)に示すように、算出したノイズレベルNLに基づき、欠陥検出しきい値Thを第1区間S毎に決定する。図7(b)に示す例では、欠陥検出しきい値ThがノイズレベルNLの2倍(すなわち、S/N比=2)となるように決定している。そして、第1判定部35aは、決定した欠陥検出しきい値Thを用いて電縫鋼管Pを渦流探傷する。
【0057】
以上のように、ノイズレベルNLの変動に追従する欠陥検出しきい値Thを決定することで、過検出や未検出が抑制され、電縫鋼管Pを精度良く渦流探傷することができる。例えば、図7(b)に示す例では、欠陥F1及び欠陥F2に対応する探傷信号に対して、しきい値Thを超えたことを示す欠陥検出フラグが立っているが、図7(b)に示す探傷信号全体のノイズレベルで考えるとS/N比は1.5程度であり、通常は検出が困難である。しかしながら、ノイズレベルNLの変動に追従する欠陥検出しきい値Thを決定することで、検出可能であることが分かる。
【0058】
<第2実施形態>
[渦流探傷設備]
第2実施形態に係る渦流探傷設備は、管状に成形された板材の端部同士を突き合わせて溶接することで、電縫鋼管Pを製造する造管工程と、造管工程後に、電縫鋼管Pを二次加工(第2実施形態では、曲げ加工、拡管・縮径など)する二次加工工程と、を有する電縫鋼管Pの製造過程において、電縫鋼管Pを渦流探傷する設備である。第2実施形態に係る渦流探傷設備は、第1実施形態に係る渦流探傷設備100と同様に、図1(a)に示すような造管工程で電縫鋼管Pを渦流探傷する第1渦流探傷装置10を備えているが、第1実施形態に係る渦流探傷設備100と異なり、図1(b)に示すような第2渦流探傷装置20は備えていない。
第2実施形態に係る渦流探傷設備が備える第1渦流探傷装置10の具体的構成は、第1実施形態に係る渦流探傷設備100の場合と同様であるため、図1(a)を転用して、その詳細な説明は省略する。
【0059】
[渦流探傷方法]
図8は、上記の構成を有する渦流探傷設備を用いた、本発明の第2実施形態に係る渦流探傷方法の概略手順を示すフロー図である。なお、図8では、説明の便宜上、第2実施形態に係る渦流探傷方法を実行した後に行う二次加工工程ST3’も併せて図示している。
図8に示すように、第2実施形態に係る渦流探傷方法は、欠陥体積比算出ステップST1’と、第1渦流探傷ステップST2と、を含んでいる。
第2実施形態に係る渦流探傷方法の欠陥体積比算出ステップST1’は、第1実施形態に係る渦流探傷方法の欠陥体積比算出ステップST1と異なる一方、第2実施形態に係る渦流探傷方法の第1渦流探傷ステップST2は、第1実施形態に係る渦流探傷方法の第1渦流探傷ステップST2と同様である。このため、以下では、第1実施形態に係る渦流探傷方法と異なる欠陥体積比算出ステップST1’について説明し、第1渦流探傷ステップST2の詳細な説明は省略する。
【0060】
第2実施形態に係る渦流探傷方法の欠陥体積比算出ステップST1’でも、第1欠陥体積比の算出方法は、第1実施形態と同様である。すなわち、図8のステップST11において、図1(a)に示す第1渦流探傷装置10における(換言すれば、第1渦流探傷ステップST2での)探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値の校正に用いる欠陥の寸法と、第1渦流探傷装置10が具備する(換言すれば、第1渦流探傷ステップST2で用いる)貫通型の検出コイル2の寸法とによって決まる欠陥体積比である第1欠陥体積比を算出する。
【0061】
一方、第2実施形態に係る渦流探傷方法の欠陥体積比算出ステップST1’では、第2欠陥体積比の算出方法が、第1実施形態と異なる。具体的には、図8のステップST12’において、二次加工工程ST3’で電縫鋼管Pの溶接部に生じた欠陥の寸法を予め実測する。この欠陥の寸法のうち、欠陥の断面積は、例えば、二次加工工程ST3’で電縫鋼管Pに割れが生じた場合に、割れた部分に含まれる欠陥を拡大鏡や顕微鏡を用いて撮像し、この欠陥の撮像画像に画像処理を施したり、印刷した撮像画像を用いることで、測定可能である。また、欠陥の深さは、例えば、研磨工具を用いて欠陥を研磨し、研磨開始点から欠陥が消失した点までの研磨工具の移動距離から測定可能である。そして、ステップST12’において、この実測した欠陥の寸法と、第1渦流探傷装置10が具備する(換言すれば、第1渦流探傷ステップST2で用いる)検出コイル2の寸法とによって決まる欠陥体積比である第2欠陥体積比を算出する。具体的には、第2実施形態で算出される第2欠陥体積比は、二次加工工程ST3’で実際に生じた欠陥の体積/(二次加工工程ST3’後の電縫鋼管Pの断面積×第1渦流探傷ステップST2で用いる検出コイル2のコイル幅W)で表される。
【0062】
第2実施形態に係る渦流探傷方法の第1渦流探傷ステップST2でも、造管工程で電縫鋼管Pを渦流探傷するが、この際、第1実施形態と同様に、校正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を、欠陥体積比算出ステップST1’で算出した第1欠陥体積比に対する第2欠陥体積比の割合に基づき補正し、補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いる。これにより、造管工程においても、二次加工工程ST3’によって生じる欠陥と同程度の微細な欠陥を検出可能である。
そして、第1渦流探傷ステップST2を実行した後の電縫鋼管Pは、二次加工工程ST3’において二次加工される。
【0063】
なお、第2実施形態に係る渦流探傷方法についても、第1実施形態に係る渦流探傷方法と同様に、第1増幅器34a及び第1判定部35aのみを備えた構成(第2増幅器34b及び第2判定部35bを備えない構成)を採用して、微細な欠陥を検出対象とする渦流探傷のみを行うことも可能である。
また、第2実施形態に係る渦流探傷方法についても、第1実施形態に係る渦流探傷方法と同様に、第1判定部35aが、ノイズレベル(ノイズに対応する探傷信号の大きさ)の変動に追従する欠陥検出しきい値を決定し、これを用いて電縫鋼管Pを渦流探傷することが好ましい。
【0064】
また、第2実施形態では、造管工程後に、冷間抽伸工程を行わずに電縫鋼管Pを二次加工(曲げ加工、拡管・縮径など)する二次加工工程ST3’と、を有する電縫鋼管Pの製造過程において、造管工程で電縫鋼管Pを渦流探傷する方法について説明したが、本発明はこれに限るものではない。第2実施形態に係る渦流探傷方法は、造管工程及びこれに続く冷間抽伸工程後の電縫鋼管Pに対して曲げ加工工程や拡管・縮径工程などの二次加工工程ST3’を行う製造過程や、造管工程後の電縫鋼管に対して二次加工工程としての冷間抽伸工程を行う(曲げ加工工程や拡管・縮径工程などは行わない)製造過程に対しても適用可能である。
【0065】
第2実施形態に係る渦流探傷方法を前者の製造過程(造管工程、冷間抽伸工程、及び曲げ加工工程や拡管・縮径工程などの二次加工工程ST3’)に対して適用する場合、造管工程で電縫鋼管Pを渦流探傷する第1渦流探傷ステップST2だけではなく、第1実施形態と同様に、冷間抽伸工程後(曲げ加工工程や拡管・縮径工程などの二次加工工程ST3’の前)の電縫鋼管Pを渦流探傷する第2渦流探傷ステップST3(図2参照)を実行することも可能である。第2渦流探傷ステップST3を実行する場合には、前述のように、第1渦流探傷ステップST2において、校正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を、欠陥体積比算出ステップST1’で算出した第1欠陥体積比に対する第2欠陥体積比の割合に基づき補正し、補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いて電縫鋼管Pを渦流探傷するだけでなく、第2渦流探傷ステップST3においても、同様にして補正した後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いて電縫鋼管Pを渦流探傷してもよい。第2渦流探傷ステップST3においても、補正した後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いて電縫鋼管Pを渦流探傷する場合には、二次加工工程ST3’で電縫鋼管Pの溶接部に生じた欠陥の実測した寸法と第2渦流探傷ステップST3で用いる検出コイル2(図1(b)の検出コイル2に対応)の寸法とによって決まる欠陥体積比である第3欠陥体積比を算出すればよい。この第3欠陥体積比は、二次加工工程ST3’で実際に生じた欠陥の体積/(二次加工工程ST3’後の電縫鋼管Pの断面積×第2渦流探傷ステップST3で用いる検出コイル2のコイル幅W)で表される。そして、第2渦流探傷ステップST3において、校正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を、第1実施形態と同様の第2欠陥体積比(第2渦流探傷ステップST3で検出対象とする欠陥の寸法と第2渦流探傷ステップST3で用いる検出コイル2の寸法とによって決まる欠陥体積比)に対する第3欠陥体積比の割合に基づき補正し、補正後の探傷感度及び/又は欠陥検出しきい値を用いて電縫鋼管Pを渦流探傷すればよい。これにより、第2渦流探傷ステップST3において、二次加工工程ST3’によって生じる欠陥と同程度の微細な欠陥を検出可能である。
【符号の説明】
【0066】
1・・・励磁コイル
2、2a、2b・・・検出コイル
3、3A・・・探傷器
10・・・第1渦流探傷装置
20・・・第2渦流探傷装置
31・・・励磁回路
32・・・受信回路
33・・・同期検波回路
34・・・増幅器
34a・・・第1増幅器
34b・・・第2増幅器
35・・・判定部
35a・・・第1判定部
35b・・・第2判定部
100・・・渦流探傷設備
P・・・電縫鋼管
P’・・・校正用管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8