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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】タグ読取装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20250325BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20250325BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20250325BHJP
【FI】
G06K7/10 144
G06N20/00 130
H04B5/48
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021115533
(22)【出願日】2021-07-13
(65)【公開番号】P2023012092
(43)【公開日】2023-01-25
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】槌田 直
(72)【発明者】
【氏名】大石 禎利
【審査官】田名網 忠雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/117298(WO,A1)
【文献】特表2002-535860(JP,A)
【文献】特開2020-181571(JP,A)
【文献】特開2008-160769(JP,A)
【文献】特開平08-213944(JP,A)
【文献】特表2020-520497(JP,A)
【文献】米国特許第10586082(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
G06N 20/00
H04B 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを符号化して得られたデータ信号を無線信号から抽出する抽出部と、
学習対象の無線タグが送信するタグデータを、当該学習対象の無線タグからの送信によらずに取得する取得部と、
学習対象の無線タグから送信された無線信号から前記抽出部により抽出されたデータ信号を、前記取得部により取得されたタグデータを正解データとして、前記抽出部により抽出されたデータ信号における1ビット期間の変動の特徴量と関連付けて機械学習し、当該の機械学習した関係に基づいて、読み取り対象の無線タグから送信された無線信号から前記抽出部により抽出されたデータ信号に含まれる応答データを判定する機械学習部と、
を具備するタグ読取装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記学習対象の無線タグが送信するタグデータに含まれる無線タグ毎に固有のデータを取得し、当該の取得したデータに、複数の無線タグが送信するタグデータに共通のデータと、誤り検出用のデータとを付加してタグデータを生成する、
請求項1に記載のタグ読取装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記学習対象の無線タグが送信するタグデータに含まれる無線タグ毎に固有のデータを、タグ読取装置の外部の記憶デバイスから取得する、
請求項2に記載のタグ読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タグ読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線タグは、タグデータを予め定められた符号化速度で符号化したデータ信号をバックスキャッタし、無線送信する。タグデータの先頭には、符号化速度に応じた周波数のクロック信号を生成するためのプリアンブル部が設けられる。そしてタグ読取装置では、受信したデータ信号に含まれるプリアンブル部に同期させて生成したクロック信号に応じたタイミングでデータ信号からタグデータを復号している。
しかしながら、無線タグの低価格化などにともなう精度低下に起因して、無線タグにおける符号化速度が1回のデータ送信期間中においてばらつく恐れがある。そして、このばらつきが大きくなると、プリアンブル部に応じて生成したクロック信号によりタグデータを正しく復号できなくなる恐れがあった。
このような事情から、無線タグにおいて符号化速度がばらつくとしてもタグデータを正しく復号できる可能性を高めることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-35407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、無線タグにおいて符号化速度がばらつくとしてもタグデータを正しく復号できる可能性を高めることができるタグ読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のタグ読取装置は、抽出部、取得部及び機械学習部を備える。抽出部は、データを符号化して得られたデータ信号を無線信号から抽出する。取得部は、学習対象の無線タグが送信するタグデータを、当該学習対象の無線タグからの送信によらずに取得する。機械学習部は、学習対象の無線タグから送信された無線信号から抽出部により抽出されたデータ信号を、取得部により取得されたタグデータを正解データとして、抽出部により抽出されたデータ信号における1ビット期間の変動の特徴量と関連付けて機械学習し、当該の機械学習した関係に基づいて、読み取り対象の無線タグから送信された無線信号から抽出部により抽出されたデータ信号に含まれる応答データを判定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係るタグ読取装置の要部回路構成を示すブロック図。
図2】タグデータの構造の一例を示す図。
図3】タグデータテーブルに含まれるデータレコードの1つのデータ構造を模式的に示す図。
図4】符号化速度が徐々に遅くなった場合におけるデータ信号の波形の一例を示す図。
図5図1に示される制御部による学習制御処理のフローチャート。
図6図1に示される制御部による読取制御処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を用いて説明する。なお、以下においては、無線タグからデータを読み取るタグ読取装置を例に説明する。なお、無線タグは、広くRFID(radio frequency identification)タグとも称されるので、以下においてはRFIDタグと記すこととする。
図1は一実施形態に係るタグ読取装置100の要部回路構成を示すブロック図である。
【0008】
タグ読取装置100は、発振器1、DA(digital to analog)変換器2、変調器3、電力増幅器4、アンテナ共用器5、アンテナ6、直交検波器7、増幅器8、AD(analog to digital)変換器9、操作部10及びベースバンド処理部11を含む。なお、アンテナ6は、タグ読取装置100に含まれず、タグ読取装置100に外付けされる形態であってもよい。
【0009】
発振器1は、予め定められた周波数の正弦波及び余弦波を搬送波として発生する。
DA変換器2は、ベースバンド処理部11からディジタル状態で出力される送信用のデータ信号を、アナログ化する。
変調器3は、DA変換器2でアナログ化されたデータ信号を変調波とし、発振器1により発生された搬送波を変調して、送信信号を得る。
電力増幅器4は、変調器3から出力される送信信号を、無線送信に適するレベルまで電力増幅する。
【0010】
アンテナ共用器5は、電力増幅器4が入力端に接続される。アンテナ共用器5は、アンテナ6が入出力端に接続される。アンテナ共用器5は、直交検波器7が出力端に接続される。アンテナ共用器5は、電力増幅器4で増幅された後の送信信号が入力端に入力されると、この送信信号を入出力端からアンテナ6へと供給する。アンテナ共用器5は、アンテナ6から出力される受信信号を入出力端から入力し、出力端から出力する。
【0011】
アンテナ6は、アンテナ共用器5から供給される送信信号に応じた電波を放射する。アンテナ6は、RFIDタグ200から送信されて到来する電波に応じた電気信号を受信信号として生じさせる。なお、RFIDタグ200から送信されて到来する電波に応じてアンテナ6に生じる受信信号は、アンテナ6から放射した電波をRFIDタグ200バックスキャッタし、タグデータを符号化して得られたデータ信号により変調した信号である。上記の符号化には、例えばRZ(return to zero)符号が用いられる。
【0012】
直交検波器7は、アンテナ共用器5の出力端から出力された受信信号を、発振器1により発生された搬送波を用いて直交検波する。直交検波器7は、検波により得られるアナログ状態のデータ信号を出力する。
増幅器8は、直交検波器7から出力されるデータ信号を、AD変換器9でのディジタル化に適するレベルまで増幅する。増幅器8は、直流成分の影響により飽和することを防止するために、増幅に先立ってコンデンサを通して直流成分を遮断する。
AD変換器9は、増幅器8により増幅されたのちのデータ信号をディジタル化する。
【0013】
操作部10は、タグ読取装置100を操作者が操作するためのユーザインタフェースを提供する。操作部10は、操作者による各種の指示を入力するための操作デバイスを少なくとも備える。操作デバイスは、例えばタッチパネルなどの周知のデバイスであってよい。操作部10は例えば、操作者に対して各種の情報を通知するための表示を行う表示デバイスを備えてもよい。表示デバイスは、例えば液晶表示器などの周知のデバイスであってよい。
ただし、タグ読取装置100の操作に関わるユーザインタフェースは、後述するホストコンピュータ300で行うようにし、タグ読取装置100には操作部10を備えなくてもよい。
【0014】
ベースバンド処理部11は、符号部111、復調部112、機械学習部113及び制御部114を含む。
符号部111は、RFIDタグ200へと送るために制御部114から出力される送信データを予め定められた符号化方式で符号化して送信用のデータ信号を得て、DA変換器2へと出力する。
復調部112は、増幅器8でのコンデンサ通過により微分波形となっているデータ信号から、元のRZ符号に準じた波形のデータ信号を生成する。
かくして、直交検波器7、増幅器8、AD変換器9及び復調部112による一連の処理によって、アンテナ6により受けられた無線信号からデータ信号が抽出されているのであり、これら直交検波器7、増幅器8、AD変換器9及び復調部112の協働によって抽出部としての機能が実現される。
【0015】
機械学習部113は、動作モードとして、学習モード及び復号モードを有する。そして機械学習部113は、復号モードにおいては、学習モードにおける学習結果に基づいて、復調部112から与えられるデータ信号からタグデータを復号する。
制御部114は、RFIDタグ200との通信時に、予め定められたシーケンスに従って送信データを符号部111へと与える。制御部114は、予め定められたシーケンスに従ってRFIDタグ200から送信されたタグデータとして、機械学習部113が出力するタグデータを取り込む。制御部114は、取り込んだタグデータに関して、予め定められた処理を行う。当該の処理は例えば、タグデータに基づいて読取結果を表した画面を操作部10で表示させるための処理である。あるいは当該の処理は例えば、取り込んだタグデータ又はその一部のデータをホストコンピュータ300に通知するための処理である。
【0016】
ホストコンピュータ300は、タグ読取装置100に接続されて、タグ読取装置100の制御のため、あるいはタグ読取装置100での読取結果の確認のためのユーザインタフェースとして用いられる情報処理装置である。本実施形態では、ホストコンピュータ300が備える記憶ユニット301にタグデータテーブルTAAを保存している。
【0017】
タグデータテーブルTAAは、機械学習部113の学習に用いる複数のRFIDタグ200に関して、それらのRFIDタグ200が送信するタグデータを制御部114が参照するためのデータテーブルである。
図2はタグデータの構造の一例を示す図である。
タグデータは、プリアンブル部、スタートビット、データ部及びチェックサム部を含む。プリアンブル部及びスタートビットは、全てのRFIDタグ200で共通である。データ部は、複数のRFIDタグ200が個々に記憶しているデータがセットされる。このデータ部にセットされるデータが、タグ読取装置100での読み取りの対象となるデータである。以下、データ部にセットされるデータを実データと称する。実データには、RFIDタグ200の個々を識別するための識別子としての識別コードが少なくとも含まれる。なお実データは、識別コードのみであることが多い。しかしながら、実データには、識別コードの他に、識別コードとは異なる任意のデータが含まれていてもよい。チェックサム部は、実データに対して予め定められたルールに従って算出された誤り検出符号がセットされる。
【0018】
図3はタグデータテーブルTAAに含まれるデータレコードREAの1つのデータ構造を模式的に示す図である。
タグデータテーブルTAAは、複数のRFIDタグ200のそれぞれに関連付けられた複数のデータレコードREAの集合である。
データレコードREAは、フィールドFAA,FABを含む。フィールドFAAには、関連付けられたRFIDタグ200の識別コードがセットされる。フィールドFABには、関連付けられたRFIDタグ200が送信する実データがセットされる。なおフィールドFABには、実データの他に、プリアンブル部、スタートビット及びチェックサム部にそれぞれセットされるデータのうちの少なくとも1つが含まれてもよい。
【0019】
次に以上のように構成されたタグ読取装置100の動作について説明する。なお、RFIDタグ200を読み取るための動作のうちの多くは、既に知られた動作と同様である。ここでは、タグ読取装置100で特徴的な動作を中心として説明する。また、以下に説明する各種の処理の内容は一例であって、一部の処理の順序の変更、一部の処理の省略、あるいは別の処理の追加などは適宜に可能である。
【0020】
タグ読取装置100の動作の説明を開始するのに先立ち、復調部112で生成されるデータ信号の性質について説明する。
データ信号は、本来は、データを予め定められた符号化速度で符号化して得られる信号である。従ってデータ信号は、RZ符号の場合は、「1」であるビットに関しては1/2周期毎に高レベルと低レベルが表れるパターンと、「0」であるビットに関しては1周期に渡り低レベルが表れるパターンとのいずれかが、1周期毎に表れる信号であるべきである。
しかしながら、RFIDタグ200の低価格化などに伴う動作精度の低下などに起因して、符号化速度がばらつくと、データ信号の変化周期がタグデータの一度の受信期間中で変動することになる。
【0021】
図4は符号化速度が徐々に遅くなった場合におけるデータ信号の波形の一例を示す図である。
図4に示すデータ信号では、プリアンブル部の1ビット目の期間PAに比べて、データ部の12ビット目の期間PBが長くなっている。このため、プリアンブル部に基づいて生成されたクロック信号では、データ部及びチェックサム部を正しく復号することが困難となっている。
また、タグデータの一度の受信期間中の符号化速度は一定であっても、タグの応答毎やタグ毎に符号化速度が大きくばらつく場合も想定される。符号化速度が大きくばらつくと、プリアンブル部をプリアンブル部と認識できずに復号できないことになる。
【0022】
例えば、タグ読取装置100の管理者又はサービスマンなどのメンテナンス作業者は、タグ読取装置100の使用開始の準備作業時、あるいはメンテナンス時に、操作部10又はホストコンピュータ300にて、学習の開始を指示する。なお、学習を開始するに当たってメンテナンス作業者は、複数のRFIDタグ200を学習用として用意しておき、これら複数の学習用のRFIDタグ200のそれぞれに関連付けたデータレコードREAをタグデータテーブルTAAに追加しておく。あるいはメンテナンス作業者は、既にタグデータテーブルTAAに含まれているデータレコードREAに関連付けられているRFIDタグ200を複数、学習用のRFIDタグ200として用意しておく。
【0023】
制御部114は、学習の開始指示を操作部10で入力するか、ホストコンピュータ300から通知されると、学習制御処理を実行する。
図5は制御部114による学習制御処理のフローチャートである。
【0024】
ACT1として制御部114は、操作部10での操作により識別コードが入力されたか否かを確認する。そして制御部114は、該当の事象を確認できないならばNOと判定し、ACT2へと進む。
ACT2として制御部114は、ホストコンピュータ300から識別コードが通知されたか否かを確認する。そして制御部114は、該当の事象を確認できないならばNOと判定し、ACT1へと戻る。
かくして制御部114はACT1及びACT2としては、識別コードが入力されるか、通知されるのを待ち受ける。
【0025】
メンテナンス作業者は、学習用のRFIDタグ200の1つを選び、その識別コードを入力するべく操作部10を操作する。あるいはメンテナンス作業者は、学習用のRFIDタグ200の1つを選び、その学習用のRFIDタグ200をホストコンピュータ300で指定する。この指定は、例えば識別コードの入力により行われてもよいし、タグデータテーブルTAAに含まれるデータレコードREAに関連付けられたRFIDタグ200のリストを表した画面上での指定により行われてもよい。
【0026】
制御部114は、識別コードを入力する上記のような操作が操作部10で行われると、ACT1にてYESと判定し、ACT3へと進む。
ACT3として制御部114は、操作部10での操作に基づき識別コードを入力する。
一方、ホストコンピュータ300は、識別コードが上記のように指定されると、その指定された識別コードをタグ読取装置100に通知する。そしてこれに応じて制御部114は、ACT2にてYESと判定し、ACT4へと進む。
ACT4として制御部114は、ホストコンピュータ300から通知された識別コードを取得する。
制御部114は、ACT3又はACT4を終えると、いずれの場合もACT5へと進む。
なお制御部114は、ACT1及びACT3、あるいはACT2及びACT4を省略して、識別コードの指定を、操作部10又はホストコンピュータ300のいずれかのみで受けるようにしてもよい。
【0027】
ACT5として制御部114は、ACT3で入力した識別コード又はACT4で取得した識別コードにタグデータテーブルTAAで関連付けられているデータを取得する。制御部114は、例えば該当の識別コードを含んだ要求データをホストコンピュータ300に送る。そうするとホストコンピュータ300は、要求データに含まれている識別コードがフィールドFAAにセットされているデータレコードREAをタグデータテーブルTAAから選び出し、該当するデータレコードREAのフィールドFABにセットされている実データを含んだ応答データをタグ読取装置100に送る。そこで制御部114は、この応答データに含まれた実データを取得する。なお、ホストコンピュータ300は、前述のように識別コードを通知するのに付帯して、その識別コードにタグデータテーブルTAAで関連付けられている実データを通知するのでもよい。この場合に制御部114は、このように通知された実データをACT4にて取得し、ACT5をパスしてACT6へと進むようにする。また、実データが識別コードのみを含む場合には、ACT3で入力した識別コード又はACT4で取得した識別コードがそのまま実データとなるから、制御部114は、ACT5をパスしてACT6へと進む。
【0028】
ACT6として制御部114は、ACT5で取得したデータを含んだタグデータを、正解データとして生成する。制御部114は、例えば、ACT5で取得した実データに関するチェックサムを算出し、規定のプリアンブル部及びスタートビットを含むとともに、データ部にACT5で取得した実データを、さらにチェックサム部に上記の算出したチェックサムをそれぞれセットしたデータとして正解データを生成する。制御部114は、例えば記憶デバイスに予め記憶されているプリアンブル部及びスタートビットを読み出して正解データに含める。プリアンブル部及びスタートビットは、例えば制御部114に内蔵されるメモリ、あるいはベースバンド処理部11に別途設けられるメモリなどの任意の記憶デバイスに記憶されていてよい。なお制御部114は、プリアンブル部、スタートビット及びチェックサム部のうちの少なくとも一部がACT5で取得したデータに含まれるならば、そのデータをそのまま正解データに含めてもよい。なお制御部114は、例えばタグデータテーブルTAAのフィールドFABに、プリアンブル部、スタートビット、実データ及びチェックサムの全てが含まれるならば、当該データをそのまま正解データとして採用し、上述した正解データの生成は省略してもよい。
かくして制御部114は、学習対象のRFIDタグ200が送信するタグデータに相当する正解データを、当該のRFIDタグ200からの送信によらずに取得する取得部としての機能を備える。
【0029】
ACT7として制御部114は、機械学習部113に対して学習の開始を指令する。制御部114は、この指令と同時に、あるいはこの指令と前後して、上記のように生成した正解データを機械学習部113に通知する。機械学習部113は、学習の開始が指令されると、学習モードでの動作を開始する。
【0030】
ACT8として制御部114は、タグ読取装置100との通信が可能な状態にあるRFIDタグ200からのタグデータの読み取りを行うための読取送信を開始する。このときに制御部114は、RFIDタグ200が、アンテナ6から放射した電波をバックスキャッタし、タグデータで変調した反射波を発生させるように、周知のシーケンスで送信データを出力する。
【0031】
メンテナンス作業者は、選択している学習用のRFIDタグ200とアンテナ6とを近付ける。そうすると、当該のRFIDタグ200は、上述のように開始された読取送信によりアンテナ6から放射される電波をバックスキャッタし、記憶しているタグデータに応じたデータ信号により変調した反射波を発生する。このようにして学習用のRFIDタグ200から送信されるタグデータは、正解データと同一である。
【0032】
RFIDタグ200からの反射波に応じてアンテナ6に生じる受信信号から、直交検波器7、増幅器8、AD変換器9及び復調部112により生成されたデータ信号が機械学習部113に入力される。機械学習部113は学習モードにおいては、例えば入力されるデータ信号の1ビット毎の期間の変動などの特徴量を抽出し、正解データと関連付けて学習する。機械学習部113は例えば、この学習のための処理には、周知の機械学習モデルを用いる。
【0033】
メンテナンス作業者は、選択する学習用のRFIDを順次に変更する。そしてメンテナンス作業者は、操作部10又はホストコンピュータ300での予め定められた操作によって変更を指示する。
【0034】
制御部114は、ACT8を終えるとACT9へと進む。
ACT9として制御部114は、変更が指示されたか否かを確認する。そして制御部114は、該当の事象を確認できないならばNOと判定し、ACT10へと進む。
ACT10として制御部114は、終了が指示されたか否かを確認する。そして制御部114は、該当の事象を確認できないならばNOと判定し、ACT9へと戻る。
かくして制御部114はACT9及びACT10としては、変更又は終了が指示されるのを待ち受ける。
【0035】
制御部114は、上述のようにメンテナンス作業者により変更が指示されたならば、ACT9にてYESと判定し、ACT11へと進む。
ACT11として制御部114は、読取送信を停止する。
ACT12として制御部114は、機械学習部113に学習の終了を指令する。
制御部114はこののち、ACT1及びACT2の待受状態に戻る。
【0036】
メンテナンス作業者は、上記のように変更を指示したのに続けて、新たに選択した学習用のRFIDタグ200の識別コードを、前述と同様に入力又は指定する。これに応じてタグ読取装置100では、前述と同様にして機械学習部113での学習を行う。
【0037】
メンテナンス作業者は、複数の学習用のRFIDタグ200のそれぞれに関する学習を終えたならば、操作部10又はホストコンピュータ300での予め定められた操作によって終了を指示する。
【0038】
制御部114は、このような終了指示に応じてACT10にてYESと判定し、ACT13へと進む。
ACT13として制御部114は、読取送信を停止する。
ACT14として制御部114は、機械学習部113に学習の終了を指令する。
そして制御部114は、学習制御処理を終了する。
【0039】
タグ読取装置100を利用してRFIDタグ200の読み取り作業を行う読取作業者は、操作部10又はホストコンピュータ300にて、読み取りの開始を指示する。
【0040】
制御部114は、読み取りの開始指示を操作部10で入力するか、ホストコンピュータ300から通知されると、読取制御処理を実行する。
図6は制御部114による読取制御処理のフローチャートである。
【0041】
ACT21として制御部114は、機械学習部113に対して復号の開始を指令する。機械学習部113は、復号の開始が指令されると、復号モードでの動作を開始する。
ACT22として制御部114は、読取送信を開始する。このときに制御部114は、通信可能な状態にある未知のRFIDタグ200が、アンテナ6から放射した電波をバックスキャッタし、データ信号により変調した反射波を発生させるように、周知のシーケンスで送信データを出力する。
【0042】
読取作業者は、読み取りの対象となるRFIDタグ200とアンテナ6とを近付ける。そうすると、当該のRFIDタグ200は、上述のように開始された読取送信によりアンテナ6から放射される電波をバックスキャッタし、記憶しているタグデータに応じたデータ信号により変調した反射波を発生させる。
【0043】
RFIDタグ200からの反射波に応じてアンテナ6に生じる受信信号から、直交検波器7、増幅器8、AD変換器9及び復調部112により生成されたデータ信号が機械学習部113に入力される。機械学習部113は復号モードにおいては、学習モードでの学習結果に基づいて、入力されたデータ信号に含まれているタグデータを判定し、当該タグデータを復号結果として制御部114に通知する。
【0044】
制御部114は、ACT22にて読取送信を開始した後には、ACT23へと進む。
ACT23として制御部114は、機械学習部113からタグデータが通知されたか否かを確認する。そして制御部114は、該当の事象を確認できないならばNOと判定し、ACT24へと進む。
ACT24として制御部114は、タイムアウトか否かを確認する。そして制御部114は、該当の事象を確認できないならばNOと判定し、ACT25へと進む。
ACT25として制御部114は、終了指示がなされたか否かを確認する。そして制御部114は、該当の事象を確認できないならばNOと判定し、ACT23へと戻る。
かくして制御部114はACT23~ACT25としては、タグデータの通知、タイムアウト、あるいは終了指示のいずれかが生じるのを待ち受ける。そして制御部114は、上述のように機械学習部113からタグデータが通知されたならば、ACT23にてYESと判定し、ACT26へと進む。
【0045】
ACT26として制御部114は、読取送信を停止する。
ACT27として制御部114は、通知されたタグデータのデータ部に関してチェックサムを算出する。
ACT28として制御部114は、通知されたタグデータのデータ部に誤りが有るか否かを確認する。制御部114は、例えばACT27で算出したチェックサムと、通知されたタグデータのチェックサム部とを比較し、一致するならば誤りが無いとしてNOと判定し、ACT29へと進む。
ACT29として制御部114は、通知されたタグデータを読取結果としてホストコンピュータ300に出力する。制御部114は、タグデータに基づく読取結果画面を操作部10で表示することにより、読取結果を読取操作者に直接通知するのでもよい。そして制御部114はこののち、ACT22へと戻り、次のRFIDタグ200の読み取りに備える。
なお制御部114は、例えばACT27で算出したチェックサムと通知されたタグデータのチェックサム部とが一致しない場合は、誤りが有るとしてACT28にてYESと判定し、ACT29を実行することなしにACT22へと戻る。
【0046】
一方、制御部114は、例えばACT22にて読取送信を開始してから規定の待受時間が経過するなどの予め定められた条件が成立したならば、タイムアウトとしてACT24にてYESと判定し、ACT30へと進む。
ACT30として制御部114は、読取送信を停止する。そして制御部114はこののち、ACT22へと戻り、読取送信を最初からやり直し、新たな読み取りを試行する。
【0047】
読取操作者は、RFIDタグ200の読み取りを終えるならば、操作部10又はホストコンピュータ300にて、読み取りの終了を指示する。
【0048】
制御部114は、読み取りの終了指示を操作部10で入力するか、ホストコンピュータ300から通知されると、ACT25にてYESと判定し、ACT31へと進む。
ACT31として制御部114は、読取送信を停止する。
ACT32として制御部114は、機械学習部113に対して復号の終了を指令する。そして制御部114は、これをもって読取制御処理を終了する。
機械学習部113は、復号の終了が指令されると、復号モードでの動作を終了する。
【0049】
以上のようにタグ読取装置100は、機械学習によってデータ信号に含まれるタグデータを判定する。これにより、無線タグにおいて符号化速度がばらつくとしてもタグデータを正しく復号できる可能性を高めることができる。
【0050】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
タグ読取装置100に備えた記憶デバイスにタグデータテーブルTAAを保存し、制御部114は当該記憶デバイスからの読み出しにより実データを取得してもよい。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1] データを符号化して得られたデータ信号を無線信号から抽出する抽出部と、
学習対象の無線タグが送信するタグデータを、当該学習対象の無線タグからの送信によらずに取得する取得部と、
学習対象の無線タグから送信された無線信号から前記抽出部により抽出されたデータ信号を、前記取得部により取得されたタグデータを正解データとして機械学習し、当該の機械学習した関係に基づいて、読み取り対象の無線タグから送信された無線信号から前記抽出部により抽出されたデータ信号に含まれる応答データを判定する機械学習部と、
を具備するタグ読取装置。
[付記2] 前記取得部は、前記学習対象の無線タグが送信するタグデータに含まれる無線タグ毎に固有のデータを取得し、当該の取得したデータに、複数の無線タグが送信するタグデータに共通のデータと、誤り検出用のデータとを付加してタグデータを生成する、
付記1に記載のタグ読取装置。
[付記3] 前記取得部は、前記学習対象の無線タグが送信するタグデータに含まれる無線タグ毎に固有のデータを、タグ読取装置の外部の記憶デバイスから取得する、
付記2に記載のタグ読取装置。
[付記4] 前記機械学習部は、前記読み取り対象の無線タグから送信された無線信号から前記抽出部により抽出されたデータ信号における1ビット期間の変動の特徴を学習する、
付記1に記載のタグ読取装置。
【符号の説明】
【0052】
1…発振器、2…DA変換器、3…変調器、4…電力増幅器、5…アンテナ共用器、6…アンテナ、7…直交検波器、8…増幅器、9…AD変換器、10…操作部、11…ベースバンド処理部、100…タグ読取装置、111…符号部、112…復調部、113…機械学習部、114…制御部、200…RFIDタグ、300…ホストコンピュータ、301…記憶ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6