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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】発光装置及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10H 20/851 20250101AFI20250325BHJP
   H10H 20/855 20250101ALI20250325BHJP
   H10H 20/857 20250101ALI20250325BHJP
【FI】
H10H20/851
H10H20/855
H10H20/857
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021119298
(22)【出願日】2021-07-20
(65)【公開番号】P2023015492
(43)【公開日】2023-02-01
【審査請求日】2024-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田辺 麻衣子
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102636(JP,A)
【文献】特開2019-096872(JP,A)
【文献】特開2019-096675(JP,A)
【文献】特開2010-219324(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0325757(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10H 20/00 - 20/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載基板と、
矩形状の上面形状を有する支持基板、前記支持基板上に形成された発光層を含む発光機能層、及び前記支持基板上に前記発光機能層と間隙をもちかつ前記支持基板の1の辺に沿った端部領域に亘って延在している電極パッドを有し、前記搭載基板上に配された発光素子と、
前記発光素子上に樹脂部を介して配され、前記発光機能層の上面を覆う波長変換体と、
前記搭載基板上に配され、前記発光素子の側面及び前記波長変換体の側面を覆う光反射体と、を含み、
前記波長変換体は、前記電極パッドの側の側面に前記発光機能層と対向する底面の外縁から垂直方向に延伸する第1の側面部分と、前記第1の側面部分の上端から内方に延伸し上面の外縁に達する第2の側面部分と、を有し、
前記発光素子の前記電極パッド上には、導電ワイヤの接続された少なくとも1つの金属バンプが前記波長変換体と離間して形成されており、
前記第1の側面部分の上端の高さ位置は、前記金属バンプの上端高さ位置よりも高く、
前記樹脂部は、前記支持基板上における前記発光機能層と前記電極パッドとの間隙、前記電極パッド上の少なくとも一部、及び前記第1の側面部分を覆う流出樹脂部を備え、
前記流出樹脂部の上端は、前記波長変換体の第1の側面部分の上端位置以下に存在することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第2の側面部分には、前記第1の側面部分の上端から内方に延伸しかつ当該延伸方向において凹状の湾曲面と、前記湾曲面の上端から前記波長変換体の上面の外縁まで達する平坦面と、が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記湾曲面の前記第1の側面部分の上端と接する点の接平面と前記第1の側面部分を含む面とがなす劣角の角度が135°以下であることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記底面から前記第1の側面部分の上端までの高さは、前記波長変換体の厚みの1/3以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記波長変換体の外形は、前記発光素子の前記発光機能層と略同一形状および略同一サイズであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記金属バンプは、前記電極パッド上の互いに異なる領域に2以上配置されていることを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記光反射体は、前記波長変換体の前記第2の側面部分に密着していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記流出樹脂部は、前記金属バンプと接続された前記導電ワイヤに接していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記支持基板は、前記発光機能層からの出射光に対し不透光な材料から構成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
発光装置の製造方法であって、
矩形状の上面形状を有する支持基板と、前記支持基板上に形成された発光層を含む発光機能層及び前記支持基板上の端部領域に前記発光機能層と間隙をもちかつ前記支持基板上の1の辺に沿うように形成された電極パッドと、を有する発光素子を搭載基板に接合する素子接合工程と、
前記発光素子の前記電極パッド上に、導電性ワイヤと前記電極パッドを接続する金属バンプを形成するボンディング工程と、
前記発光素子の前記発光機能層上において、前記発光機能層の上面に樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、
前記発光機能層と対向する底面の外縁から垂直方向に延伸する第1の側面部分と、前記第1の側面部分の上端から内方に延伸し上面の外縁に達する第2の側面部分と、を有する側面を備えた波長変換体を、当該側面が前記電極パッド側となるように前記樹脂上に前記発光機能層を上方から覆うように接合する波長変換体接合工程と、
前記支持基板上に、前記発光素子の側面及び前記波長変換体の側面を覆うように光反射体を配する光反射体配置工程と、を含み、
前記波長変換体接合工程において、前記波長変換体は、前記波長変換体の前記第1の側面部分の上端の高さ位置は、前記金属バンプの上端高さ位置よりも高くなるように接合され、
前記波長変換体接合工程において、前記波長変換体は、前記金属バンプと離間するよう接合され、
前記波長変換体接合工程において、前記樹脂を前記支持基板上における前記発光機能層と前記電極パッドとの間隙、前記電極パッド上の少なくとも一部、及び前記第1の側面部分を覆うように前記発光機能層の上面から流出させて流出樹脂部を形成し、前記流出樹脂部の上端は、前記波長変換体の第1の側面部分の上端位置以下に存在させることを特徴とした発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂塗布工程において、前記樹脂を前記発光機能層の上面の中央から前記電極パッドの方向の側の位置に塗布することを特徴とする請求項10に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を含む発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置は、端子や配線などが設けられた基板と、当該基板上に実装された少なくとも1つの発光素子と、当該発光素子から放出された光の波長を変換する波長変換体と、を含む。例えば、特許文献1には、発光素子、波長変換体、及び発光素子と波長変換体を囲む反射体有する発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-535111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子と波長変換体とを、透明な接着樹脂を用いて接合する場合、十分な接合強度を得るため所望の塗布量よりも多く塗布されてしまう場合がある。これにより、接着樹脂が発光素子の側面に垂れる又は波長変換体の側面に這い上がりを起こす可能性がある。
【0005】
例えば、発光素子の側面に接着樹脂が垂れた場合、接着樹脂が導光体として機能してしまい、発光素子の発光面から放出される光が接着樹脂を介してシリコン等の発光素子の支持基板に吸収され、発光装置としての光取り出し効率が低下してしまう。
【0006】
また、波長変換体の側面に大きな接着樹脂の這い上がりが発生すると、光出射面である波長変換体上面周辺の反射体の体積が接着樹脂の這い上がり領域分減少するため、発光装置の発光部に当該這い上がった接着樹脂を介して、発光素子から出射された光が発光を意図していない反射体から出射してしまう光漏れが発生してしまう。
【0007】
上記接着樹脂の垂れや這い上がりを抑制するために、発光素子と波長変換体とを接着する接着樹脂の塗布量は高い精度で管理する必要があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、接着樹脂の発光素子側面への垂れ及び波長変換体側面への這い上がりによる光漏れ抑制し、発光装置の光取り出し効率を向上した発光装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る発光装置は、搭載基板と、矩形状の上面形状を有する支持基板、前記支持基板上に形成された発光層を含む発光機能層、及び前記支持基板上に前記発光機能層と間隙をもちかつ前記支持基板の1の辺に沿った端部領域に亘って延在している電極パッドを有し、前記搭載基板上に配された発光素子と、前記発光素子上に樹脂部を介して配され、前記発光機能層の上面を覆う波長変換体と、前記搭載基板上に配され、前記発光素子の側面及び前記波長変換体の側面を覆う光反射体と、を含み、前記波長変換体は、前記電極パッドの側の側面に前記発光機能層と対向する底面の外縁から垂直方向に延伸する第1の側面部分と、前記第1の側面部分の上端から内方に延伸し上面の外縁に達する第2の側面部分と、を有し、前記発光素子の前記電極パッド上には、導電ワイヤの接続された少なくとも1つの金属バンプが前記波長変換体と離間して形成されており、前記第1の側面部分の上端の高さ位置は、前記金属バンプの上端高さ位置よりも高く、前記樹脂部は、前記支持基板上における前記発光機能層と前記電極パッドとの間隙、前記電極パッド上の少なくとも一部、及び前記第1の側面部分を覆う流出樹脂部を備え、前記流出樹脂部の上端は、前記波長変換体の第1の側面部分の上端位置以下に存在することを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る発光装置の製造方法は、矩形状の上面形状を有する支持基板と、前記支持基板上に形成された発光層を含む発光機能層及び前記支持基板上の端部領域に前記発光機能層と間隙をもちかつ前記支持基板上の1の辺に沿うように形成された電極パッドと、を有する発光素子を搭載基板に接合する素子接合工程と、前記発光素子の前記電極パッド上に、導電性ワイヤと前記電極パッドを接続する金属バンプを形成するボンディング工程と、前記発光素子の前記発光機能層上において、前記発光機能層の上面に樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、前記発光機能層と対向する底面の外縁から垂直方向に延伸する第1の側面部分と、前記第1の側面部分の上端から内方に延伸し上面の外縁に達する第2の側面部分と、を有する側面を備えた波長変換体を、当該側面が前記電極パッド側となるように前記樹脂上に前記発光機能層を上方から覆うように接合する波長変換体接合工程と、前記支持基板上に、前記発光素子の側面及び前記波長変換体の側面を覆うように光反射体を配する光反射体配置工程と、を含み、前記波長変換体接合工程において、前記波長変換体は、前記波長変換体の前記第1の側面部分の上端の高さ位置は、前記金属バンプの上端高さ位置よりも高くなるように接合され、前記波長変換体接合工程において、前記波長変換体は、前記金属バンプと離間するよう接合され、前記波長変換体接合工程において、前記樹脂を前記支持基板上における前記発光機能層と前記電極パッドとの間隙、前記電極パッド上の少なくとも一部、及び前記第1の側面部分を覆うように前記発光機能層の上面から流出させて流出樹脂部を形成し、前記流出樹脂部の上端は、前記波長変換体の第1の側面部分の上端位置以下に存在させることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る発光装置の上面図である。
図2図1のA-A線に沿った発光装置の断面図である。
図3】本発明の実施例に係る発光装置の発光素子の断面拡大図である。
図4】本発明の実施例に係る発光装置の製造フローを示す図である。
図5】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の断面図である。
図6】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の断面図である。
図7】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の断面図である。
図8】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の上面図である。
図9】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の断面図である。
図10】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の接着樹脂の濡れ広がりを模式的に示した図である。
図11】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の接着樹脂の濡れ広がりを模式的に示した図である。
図12】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の接着樹脂の濡れ広がりを模式的に示した図である。
図13】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の接着樹脂の濡れ広がりを模式的に示した図である。
図14】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の接着樹脂の濡れ広がりを模式的に示した図である。
図15】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の接着樹脂の濡れ広がりを模式的に示した図である。
図16】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の断面図である。
図17】本発明の変形例に係る発光装置の製造時の上面図である。
図18図17のB-B線に沿った発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。なお、以下の説明において、「材料1/材料2」との記載は、材料1の上に材料2が積層された積層構造を示す。また、「材料1-材料2」との記載は、材料1及び2による合金を示す。
【実施例
【0013】
図1は、発光装置100の模式的な上面図を示している。また、図2は、図1の発光装置100のA-A線に沿った断面図を示している。
【0014】
(発光装置)
発光装置100は、一方の面に凹形状のキャビティが形成されている基板10を有する。また、発光装置100は、基板10のキャビティの底面に形成された第1の配線13及び第2の配線15と、第1の配線13上に配された発光素子20と、を有する。また、発光装置100は、発光素子20上に樹脂部50を介して配された波長変換体30と、波長変換体30の上面である出光面30Tを露出するように基板10のキャビティ内に充填された光反射体60と、を有する。なお、図1においては、基板10のキャビティ内の各要素の構造及び位置関係を明確にするために、光反射体60の図示を省略している。
【0015】
発光素子20の搭載基板としての基板10は、上面視において矩形上の上面形状を有する平板状の基板である。また、基板10は、一方の面が開口され、凹状のキャビティが形成されている。本実施例では、基板10は、底部と側壁部とからなる凹状のキャビティを一体に形成されているが、底部と側壁部は別体に構成してもよく、側壁部は任意に設けられる。なお、以後の説明において、基板10のキャビティ開口面を基板10の上面と称し、基板10のキャビティ開口面と反対の側の面を下面と称する。また、以後の説明において、基板10の上面の向いている方向を上方とし、基板10の下面の向いている方向を下方とする。
【0016】
基板10のキャビティは、例えば、矩形状の底面及び当該底面を囲繞する内側面によって形成されている。また、キャビティの内側面は、例えば、基板10の上面の開口部からキャビティ底面に向かって垂直に形成されているか、又は当該開口部から下に向かって窄むように傾斜して形成されている。
【0017】
また、基板10は、例えば、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁性の熱伝導性が高いセラミックス基材からなる。
【0018】
本実施例においては、基板10が平板状のアルミナを基材とし、当該基材に矩形状の底面及び当該底面を囲繞しかつ垂直方向に延伸する内側面を有するキャビティが形成された基板を用いた。
【0019】
なお、基板10の基材は、上記セラミックス材に限定されず、エポキシ樹脂(EP)、シリコーン樹脂(Si)、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂等の熱硬化性樹脂でもよい。また、基板10には、例えば、銅(Cu)等を基材とし、その表面を覆うように絶縁膜が形成された金属基板を用いてもよい。
【0020】
また、基板10は、1の基材から上記基板10のキャビティの形状を加工した一体的な基板であってもよい。また、基板10は、上記基板10の上面から下面まで貫通するように開口された枠体に当該枠体の下面において当該開口を塞ぐように平板を接合させることで上記キャビティが形成されている基板であってもよい。また、基板10のキャビティの内側面は、垂直面と傾斜面を組み合わせた形状を有していてもよい。
【0021】
基板10のキャビティの底面には、図1及び図2に示すように、第1の配線13及び第2の配線15が形成されている。
【0022】
第1の配線13は、例えば、基板10のキャビティの底面において、発光素子20を載置できる矩形状の上面形状を有するダイパッド部である。また、第2の配線15は、発光素子20と電気的に接続するボンディングワイヤBWを基板10の側に接続するためのボンディング領域である。
【0023】
また、第1の配線13及び第2の配線15は、図2に示すように、各々の一部が基板10を貫通して基板10の下面にまで至り露出している。当該下面に露出した部分の第1の配線13及び第2の配線15は、発光装置100の実装電極として機能する。なお、基板10の下面は発光装置100の底面でもある。
【0024】
また、第1の配線13及び第2の配線15は、銅(Cu)、アルミ(Al)、タングステン(W)のいずれかを含む金属又は合金である。また、第1の配線13及び第2の配線15は、キャビティの底面及び基板10の下面の各々に露出した部分に、ニッケル(Ni)/金(Au)の金属膜を積層している。本実施例においては、第1の配線13及び第2の配線15をCuを含む合金で形成した。
【0025】
発光素子20は、半導体発光素子である発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)である。なお、発光素子20にはLED又はLD(Laser Diode)等の半導体発光素子を用いることができ、好ましくは紫外光から青色光を発光するLEDである。本実施例においては青色光を出光するLEDを用いた。
【0026】
発光素子20は、矩形状の上面形状を有する支持基板21、支持基板21に形成された矩形状の上面形状を有する発光機能層23、当該支持基板21上に発光機能層23と離間しかつ支持基板21の1の辺に沿って短冊状に形成された電極パッド25と、を有する。
【0027】
支持基板21は、発光機能層23からの出射光に対して不透光な材料、例えば、不透光で導電性のシリコン基板から構成されている。また、この支持基板21は、発光機能層23からの出射光を吸収する材料から構成されるため、支持基板21上の発光機能層23が配置される領域には、反射層が形成され、支持基板21の上面での出射光の吸収を抑制している。支持基板21上の反射層は、発光素子への給電のための電極を兼ねた反射電極層として形成することができる。
【0028】
矩形状の支持基板21の1の辺に沿って伸延する短冊状の電極パッド25が配置され、残りの3辺に沿って矩形状の発光機能層23が配置されている。電極パッド25と反射電極層は、離間して配置されると共に、SiOなどの絶縁層により適宜電気的に分離されている。
【0029】
発光素子20は、例えば、シリコン(Si)からなる厚さ100μm程度の導電性の支持基板21の片面に、反射電極層を介して、p型半導体層、発光層、n型半導体層が積層された厚さ4~6μm程度の発光機能層23が貼り合わされた構造をしている。支持基板21の発光機能層23側が発光素子20の上面であり、反対側が発光素子20の下面又は底面である。また、発光機能層23の反射電極層と反対側の面、すなわち発光機能層23の上面が発光素子20の素子出光面となる。
【0030】
発光素子20は、底面に接合電極(図示せず)を備えており、素子接合層40を介して、第1の配線13へ接合及び電気的に接続されている。つまり、反射電極層は、支持基板21を介して第1の配線13へ電気的に接続されており、発光素子20のカソード電極として機能する。
【0031】
また、発光素子20は、支持基板21上の発光機能層23と間隙を介して離間するように形成された電極パッド25を有する。電極パッド25は、発光機能層23のp型半導体層と電気的に接続されており、発光素子20の各々のアノード電極として機能する。
【0032】
また、発光素子20の電極パッド25上には金属バンプBPが配置され、電極パッド25は、金属バンプBP及びボンディングワイヤBWを介して、第2の配線15と電気的に接続されている。金属バンプBPは、少なくとも1以上配置されるが、短冊状の電極パッド25の伸延方向に沿って複数配置されることが好ましい。ボンディングワイヤBW及び金属バンプBPは、例えば、同一の材料の金属線からなり、金(Au)、アルミ(Al)、プラチナ(Pt)、銅(Cu)等を含む金属線を用いることができる。
【0033】
金属バンプBPは、発光素子20の電極パッド25に設けられている。また、金属バンプBPは、金属線の先端にフリーボールを形成して電極パッド25の上に接合して形成される。
【0034】
ボンディングワイヤBWは、第2の配線15に接合された圧着ボールから上方に向かって立ち上がり、その後発光素子20の上面と略平行に延伸しかつ金属バンプBP上に接合している。本実施例においては、ボンディングワイヤBWとして直径が30μmのAu線を用い、約25μmの厚みの金属バンプBPを3個形成している。
【0035】
1の金属バンプBP及び1のボンディングワイヤBWが互いを一対とし、当該一対の金属バンプBP及びボンディングワイヤBWが、発光素子20の電極パッド25及び第2の配線15の互いに異なる領域に複数対形成されている。本実施例においては、一対の金属バンプBP及びボンディングワイヤBWが発光素子20の電極パッド25及び第2の配線15に3対を形成した。なお、給電抵抗を無視できる範囲において、金属バンプBPは、ボンディングワイヤBWを接続しないダミーバンプとしてもよい。
【0036】
素子接合層40は、導電性の金属であり、第1の配線13上に発光素子20を接合して固定すると同時に通電を可能としている。素子接合層40は、例えば、発光装置100を実装基板に実装する際に溶融しない高温はんだ、共晶合金、銀ペースト、金バンプ、ナノ粒子焼結体等を用いることができる。本実施例においては、素子接合層40として金錫(Au-Sn)からなる共晶合金を用いた。すなわち、発光素子20は基板10の第1の配線13と第2の配線15との間に通電することで発光する。
【0037】
波長変換体30は、入光した光より波長の長い光に変換して出光する蛍光体を含む部材から構成される。上面視における波長変換体30の外形は、発光素子20の発光機能層23と略同一形状、略同一サイズとされている。波長変換体30は、発光素子20の発光機能層23の上面を覆うように樹脂部50を介して配されている。また、波長変換体30は、発光機能層23の上面と対向しかつ発光機能層23から放射される光が入光する下面である入光面と発光装置100の外方に臨む上面である出光面30Tとの2つの主面を備えている。
【0038】
波長変換体30は、例えば、セリウム(Ce)又は/及びユーロピウム(Eu)をドープしたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)系蛍光体、サイアロン系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、酸化珪素系蛍光体を含む多結晶の焼結体等を用いることができる。本実施例において、波長変換体30は、セリウム(Ce)賦活剤をドープしたYAG:Ce蛍光体粒子と、アルミナ(Al)粒子をバインダ粒子とした多結晶の焼結体である場合について説明する。また、波長変換体30は、発光素子20が出光する青色の光の一部を吸収して黄色光を出光するように調整されており、発光装置100からの出射光、すなわち波長変換体30の出光面30Tからの出射光は白色光となる。
【0039】
また、波長変換体30は、図2に示すように略凸形状の断面形状を有する。すなわち、波長変換体30は、上面である出光面30Tの面積が下面の面積よりも小さい形状を有する。波長変換体30は、その側面において、下面の外縁から上方に垂直方向に延伸する第1の側面部分30S1と、第1の側面部分30S1の上端から出光面30Tの外縁まで延伸する第2の側面部分30S2を有する。また、波長変換体30の第2の側面部分30S2は、第1の側面部分30S1の上端から内方に延伸しかつ当該延伸方向において凹状に湾曲した湾曲面30Cと及び当該湾曲面30Cの上端から波長変換体30の出光面30Tの外縁まで達する平坦面30Fからなる。また、波長変換体30は、第1の側面部分30S1及び湾曲面30Cが角をなすように形成されており、湾曲面30C及び平坦面30Fが連続面となるように形成されている。本実施例においては、波長変換体30の全ての側面において第1の側面部分30S1及び第2の側面部分30S2を形成した。
【0040】
樹脂部50は、発光素子20の上面上に形成され、発光素子20の発光機能層23と波長変換体30とを接合する機能を有する。樹脂部50は、例えば、シリコーン系接着剤の前駆体ペーストを熱硬化させることにより発光素子20の各々の放射光を透過する透光性のシリコーン樹脂として形成される。
【0041】
樹脂部50は、上面視において発光素子20の上面とそれに対向する波長変換体30の下面とが重なり合う領域の空間を満たすように配されている。なお、以後の説明において、上面視における発光素子20の上面と波長変換体30の下面とが重なり合う領域を接合領域と称する。また、樹脂部50のうち、当該接合領域に配された部分を接合樹脂部51と称する。
【0042】
樹脂部50には、発光素子20の支持基板21の上面上において、接合領域の外側に、支持基板21上の発光機能層23と電極パッド25の間の間隙と電極パッド25の上面の少なくとも一部を覆う流出樹脂部52が形成されている。流出樹脂部52は、発光素子20上への波長変換体の接合の際に、発光素子20上へ供給した樹脂が接合領域から発光機能層23と電極パッド25との間の間隙を超えて、電極パッド25の上面上まで延在するように形成されたものである。
【0043】
すなわち、樹脂部50は、発光素子20の上面と波長変換体30との間の接合領域を満たす接合樹脂部51及び発光素子20の上面上にて接合樹脂部51の外側の電極パッド25側に形成される流出樹脂部52によって一体的に構成されている。
【0044】
流出樹脂部52は、波長変換体30の電極パッド25側の第1の側面部分の一部又は全部を覆うよう形成され、波長変換体30の第2の側面部分に達しないよう形成されている。
【0045】
なお、接合樹脂部51及び流出樹脂部52は、同一の前駆体ペーストからなる。後述の製造過程において、接合樹脂部51及び流出樹脂部52の前駆体ペーストが接合領域から電極パッド25上まで流出し、これを加熱硬化させることによって接合樹脂部51及び流出樹脂部52が形成される。すなわち、接合樹脂部51及び流出樹脂部52が連続して形成された樹脂部50として機能する。
【0046】
また、前駆体ペーストは、波長変換体30の第1の側面部分30S1に這い上がり、電極パッド25から第1の側面部分30S1まで延在する。このように、前駆体ペーストが電極パッド25から第1の側面部分30S1まで延在し貯留されることによって、当該前駆体ペーストが支持基板21の側面に垂れることが抑制され得る。すなわち、接合樹脂部51及び流出樹脂部52が発光素子20の支持基板21の側面に延在することを抑制され得る。
【0047】
これにより、発光機能層23及び波長変換体30から放射される光が支持基板21の側面まで導光され、当該光が支持基板21に吸収されることによって発光装置100の光取り出し効率が低減してしまうことを抑制することが可能となる。
【0048】
また、波長変換体30の形状が略凸状であることから、前駆体ペーストは、波長変換体30の側面部分への這い上がりを第1の側面部分30S1に留めることができ、波長変換体30の第2の側面部分30S2に達することがない。これにより、波長変換体30の第2の側面部分30S2を樹脂部50が覆うことがないため、波長変換体30の第2の側面部分30S2を確実に光反射体60で覆うことができ、光反射体60からの光漏れを抑制することができる。
【0049】
また、樹脂部50は、波長変換体30の電極パッド25の側以外の他の3つの側面において、第1の側面部分30S1を覆わないことが好ましく、第1の側面部分30S1に達した場合においても第2の側面部分30S2は覆わない。
【0050】
光反射体60は、図2に示すように、基板10のキャビティ内部に、発光素子20を封止しかつ波長変換体30の側面を覆うように充填されている。光反射体60は、発光素子20から出光される光及び波長変換体30から出光される光に対して反射性を有する樹脂材料である。また、光反射体60は、波長変換体30の上面である出光面30Tを露出するようにキャビティ内に充填されている。すなわち、光反射体60は、基板10のキャビティの内部において、発光素子20の側面及び波長変換体30の側面を覆うように配されている。
【0051】
本実施例の光反射体60は、熱硬化性のシリコーン樹脂に、光散乱性を有する粒子として二酸化チタン(TiO)を分散した白色樹脂を用いた。
【0052】
光反射体60は、少なくとも波長変換体30の第2の側面部分30S2を覆い、波長変換体30の第1の側面部分30S1を直接又は流出樹脂部52を介して覆う。
【0053】
光反射体60が発光素子20の側面及び波長変換体30の側面を覆うことにより、波長変換体30の上面を発光装置100の出光面として確定することができる。また、光反射体60が波長変換体30の第2の側面部分30S2を覆うことにより、光反射体60からの光漏れを抑制することができる。
【0054】
図3は、発光素子20、波長変換体30、接合樹脂部51及び流出樹脂部52の周辺を拡大した断面拡大図である。なお、図3は、図1のA-A線で示した断面の断面拡大図である。
【0055】
発光素子20と波長変換体30との接合領域において、当該支持基板21の上面と波長変換体30の下面とを接合する接合樹脂部51が形成されている。また、支持基板21上には接合樹脂部51と連続しかつ当該接合領域から発光機能層23と電極パッド25の間の間隙を超えて電極パッド25の上面上まで延在する流出樹脂部52が形成されている。
【0056】
また、支持基板21の上面上において、発光機能層23及び電極パッド25を除く部分には、保護膜CVが形成されている。保護膜CVは、酸化シリコン(SiO)等の絶縁膜であり、電極パッド25の側面及び当該電極パッド25の上面の外縁の一部を覆うように形成されている。
【0057】
また、電極パッド25上には、金属バンプBP及び当該金属バンプBPに接合したボンディングワイヤBWが形成されている。金属バンプBP及びボンディングワイヤBWは、波長変換体30と互いに離間して配置されるように形成される。ボンディングワイヤBWと波長変換体30が接触すると、金属バンプBP及びボンディングワイヤBWの破損、電極パッド25及び支持基板21上の発光機能層23並びに保護膜CVの破損又は波長変換体30の搭載位置ずれが生じるおそれがある。従って、金属バンプBP及びボンディングワイヤBWと波長変換体30とは互いに離間して配されることが好ましい。
【0058】
後述する製造工程において、樹脂部50の前駆体ペーストを塗布(以下、ポッティングとも称する)する際、発光機能層23の上面の中央から電極パッド25の方向の側に位置する領域に前駆体ペーストの塗布を行う。その後、波長変換体30が当該前駆体ペースト上に載置される。
【0059】
波長変換体30の載置後、前駆体ペーストは、波長変換体30の自重によって押し広げられる。この際、押し広げられる最中の前駆体ペーストの端部は、発光機能層23の上面の電極パッド25に臨む辺の外端に到達し、発光機能層23と電極パッド25との間の間隙(保護膜CV)を乗り越えて電極パッド25の上面上に流出する。
【0060】
なお、以後の説明において、前駆体ペーストは、発光素子20の上面と波長変換体30の下面との接合領域にある前駆体ペーストを接合部ペースト51Mとし、当該接合領域から流出した前駆体ペーストを流出部ペースト52Mとする。
【0061】
接合領域から流出した流出部ペースト52Mは、毛細管現象により、電極パッド25の外端部、特に電極パッド25の表面と保護膜CVの電極パッド25の側の側面を伝達して電極パッド25内に広がっていく。また、電極パッド25内に広がった流出部ペースト52Mは、毛細管現象により金属バンプBP及びボンディングワイヤBWの周囲に吸引、貯留される。また、この時、流出部ペースト52Mは波長変換体30の第1の側面部分30S1に這い上がりを起こす。言い換えれば、接合部ペースト51Mは、発光素子20の上面と波長変換体30の下面との接合領域に完全に濡れ広がるよりも前に接合領域から流出部ペースト52Mとして流出する。また、流出部ペースト52Mは、電極パッド25の上面上から波長変換体30の第1の側面部分30S1に至る領域に吸引(ドレイン)されて貯留される。なお、流出部ペースト52Mを吸引し貯留するために、金属バンプBPは、発光素子20の電極パッド25の上面上の互いに異なる領域に2以上形成することが好ましい。特に、発光機能層23の電極パッド25側の辺に沿って流出樹脂部52を均一に形成するため、電極パッド25の伸長方向に沿って2以上形成することがより好ましい。
【0062】
その後、接合部ペースト51Mは、毛細管現象によって発光素子20の上面と波長変換体30の下面との接合領域内の濡れ広がりが進み、当該接合領域の全体に濡れ広がりに必要な量の前駆体ペーストが流出部ペースト52Mから供給(リドレイン)される。
【0063】
流出部ペースト52Mから接合部ペースト51Mへのリドレインは、接合部ペースト51M及び流出部ペースト52Mの双方の露出面の表面張力が最も小さくなるまで自動的に行われる。すなわち、接合部ペースト51Mは、電極パッド25の上面上から波長変換体30の第1の側面部分30S1に至る領域に貯留された流出部ペースト52Mから前駆体ペーストがドレイン、リドレインされて適切な量にセルフボリュームコントロールされる。上記のように適切な量にセルフボリュームコントロールされた接合部ペースト51M及び流出部ペースト52Mは、その後加熱硬化されて接合樹脂部51及び流出樹脂部52となる。
【0064】
なお、上述の通り、波長変換体30の第1の側面部分30S1及び湾曲面30Cが角をなすように形成されているため、流出部ペースト52Mが第1の側面部分30S1の上端以上(湾曲面30Cの外端より内側)に這い上がりを起こすことを抑制できる。なお、湾曲面30Cの第1の側面部分30S1の上端と接する点における接平面(図中二点鎖線)と第1の側面部分30S1とがなす角度は、135°以下とすることが好ましい。より好ましくは、当該角度は120°以下である。このような角度となるように第1の側面部分30S1及び湾曲面30Cを形成することにより、流出部ペースト52Mが第1の側面部分30S1を乗り越えて湾曲面30Cまで這い上がることを抑制することが可能となる。
【0065】
また、波長変換体30の第1の側面部分30S1の上端の高さ位置は、金属バンプBPよりも高い位置であり、金属バンプBP上のボンディングワイヤBWの上端付近であることが好ましい。波長変換体30の第1の側面部分30S1の上端の高さ位置は、ボンディングワイヤBWの上端付近であって、ボンディングワイヤBWよりわずかに高い位置であることが好ましい。これにより、流出部ペースト52Mが金属バンプBP及びボンディングワイヤBWの周囲に吸引された際に、当該流出部ペースト52Mが第1の側面部分30S1の上端を乗り越えることを抑制することが可能となる。すなわち、流出部ペースト52M及び加熱硬化させた後の流出樹脂部52の上端は、波長変換体30の第1の側面部分30S1の上端の位置、又は第1の側面部分30S1の上端よりも下の位置となる。
【0066】
なお、第1の側面部分30S1の上端の高さ位置が低すぎる場合、流出部ペースト52Mが金属バンプBP及びボンディングワイヤBWの周囲に吸引された際に、第1の側面部分30S1の上端を乗り越える可能性がある。また、第1の側面部分30S1の上端の高さ位置が高すぎる場合、流出部ペースト52MがボンディングワイヤBWを伝って発光素子20の外端より外側まで流出してしまい、発光素子20の側面(支持基板21の側面)に垂れてしまう可能性がある。そのため、第1の側面部分30S1の上端位置と金属バンプBP及びボンディングワイヤBWの高さ位置との関係は、接合部ペースト51M及び流出部ペースト52Mの粘度や挙動に応じて調整する。
【0067】
これにより、波長変換体30の側面に流出樹脂部52の過剰な這い上がりが形成されることを抑制することが可能となる。従って、発光装置100の出光面以外から漏れる光を抑制することが可能となる。
【0068】
また、波長変換体30の下面から第1の側面部分30S1の上端までの高さは波長変換体30の厚みの1/3以下であることが好ましい。実寸法上においては、波長変換体30の上面である出光面30Tから第1の側面部分30S1の上端までの高さが100μm以上であることが好ましい。これにより、波長変換体30の側面から放射する光が光反射体60で反射しきれずに透過し、当該光反射体60の上面から漏れる光であるグレア光として出光することを低減させることが可能となる。すなわち、波長変換体30が上記の形状を有することにより、光反射体60が波長変換体30の側面、特に湾曲面30Cの表面から放射された光を効率的に反射させることができる。
【0069】
また、光反射体60が効率的に波長変換体30の側面から放射された光を反射することにより、光反射体60から波長変換体30に戻る戻り光を増加させることができる。従って、当該戻り光が波長変換体30の上面である出光面30Tから放射されることにより、発光装置100の光取り出し効率を向上させることが可能となる。
【0070】
なお、上述の効果を奏するために、光反射体60は、波長変換体30の側面、特に第2の側面部分30S2に密着するように配される。
【0071】
(実施例の発光装置の製造方法)
次に、図4及び図5~16を用いて、本願の実施例に係る発光装置100の製造手順について説明する。
【0072】
図4は、本発明の実施例に係る発光装置100の製造フローを示す図である。また、図5~7、図9及び図16は、図4に示す製造手順の各ステップにおける発光装置100の断面図を示す。また、図8は、図5に示す製造手順のステップS13終了時における発光装置100の上面図を示す。また、図10図15は、図5に示す製造手順のステップS14における前駆体ペーストの塗布位置及び濡れ広がりの詳細を示す図である。
【0073】
素子接合工程は、図5に示すように、基板10に発光素子20を接合する工程である(ステップS11)。まず、上面に凹形状のキャビティが形成され、当該キャビティの底面に第1の配線13及び第2の配線15が設けられた基板10を準備する。次に、第1の配線13の上面に金錫(Au-Sn)ペーストを塗布する。次に、塗布したAu-Snペースト上に、発光素子20の底面に設けられた接合電極(図示せず)を押し付けて仮付けする。この状態の基板10を300℃に過熱してAu-Snペーストを溶融及び固化させ、発光素子20を第1の配線13に固定しかつ電気的に接続する。
【0074】
ボンディング工程は、図6に示すように、発光素子20の電極パッド25と第2の配線15とを金属バンプBP及びボンディングワイヤBWで接続する工程である(ステップS12)。まず、金(Au)ワイヤの先端にフリーボールを形成して電極パッド25の上に圧着した後にAuワイヤを切断して金属バンプBPを形成する。次に、Auワイヤの先端にフリーボールを形成して第2の配線15の上面に接続し、発光素子20の電極パッド25の高さとなるまで上方に立ち上げる。次いで、発光素子20の上面と略水平となるようにAuワイヤを曲げて発光素子20の電極パッド25まで延伸させ、Auワイヤの他端を電極パッド25上の金属バンプBPに接続してボンディングワイヤBWを形成する。
【0075】
樹脂塗布工程は、図7及び図8に示すように、発光素子20の発光機能層23の上面に接合樹脂部51及び流出樹脂部52となる前駆体ペーストPPを塗布する工程である(ステップS13)。未硬化のシリコーン樹脂である前駆体ペーストPPを充填したディスペンサ等を用いて、発光機能層23の上面の中央から電極パッド25の側に位置する領域に当該前駆体ペーストPPを塗布する。なお、図7及び図8に示す一点鎖線は、発光素子20の発光機能層23の上面の中心を通る中心線である。
【0076】
波長変換体接合工程は、図9に示すように、発光素子20の発光機能層23上に塗布された前駆体ペーストPP上に波長変換体30を載置して接合する工程である(ステップS14)。まず、上述の通り、側面が第1の側面部分30S1と、湾曲面30C及び平坦面30Fからなる第2の側面部分30S2と、からなる波長変換体30を準備する。
【0077】
この波長変換体30を前駆体ペーストPP上に載置し、当該前駆体ペーストPPを電極パッド25上まで流出させかつ波長変換体30の第1の側面部分30S1に這い上がらせると共に、発光素子20の上面と波長変換体30の下面との接合領域の全体に濡れ広げる。その後、前駆体ペーストPPを150℃で15分間、加熱処理することによって前駆体ペーストPP硬化させ接合樹脂部51及び流出樹脂部52を形成した。
【0078】
なお、波長変換体30は、YAG蛍光体粉体及びアルミナ粉体を混合したものを平板上に焼結しダイシングすることで得ることができる。具体的には、先端が曲面である第1のブレードと、第1のブレードよりも厚みの小さい第2のブレードと、を用いて当該平板をステップカットすることにより、第1の側面部分30S1、湾曲面30C及び平坦面30Fを有する波長変換体30を形成する。
【0079】
以下に、ステップS14における前駆体ペーストPPの濡れ広がりの挙動と前駆体ペーストPPの流出、貯留及び供給の挙動とを図10~15を用いて説明する。
【0080】
図10図12及び図14は、発光素子20及び波長変換体30の上面拡大図である。また、図11図13及び図15は、図1に示したA-A線における発光素子20及び波長変換体30の断面拡大図である。なお、図10~15においては、基板10の図示を省略している。また、図10図12及び図14においては、ボンディングワイヤBWの図示を省略している。
【0081】
なお、図10より以後の説明において、前駆体ペーストPPは、波長変換体30を載置した後から、発光素子20の上面と波長変換体30の下面との接合領域にある前駆体ペーストPPを接合部ペースト51Mとする。
【0082】
まず、図10及び図11に示すように、上面視において波長変換体30の下面が発光機能層23の上面を覆うような位置に合わせ、波長変換体30の下面が前駆体ペーストPPに接するように載置する。図11に示すように、例えば、吸着コレットCT等によって保持された波長変換体30の外端を、支持基板21の電極パッド25が設けられている辺と反対の側の辺の外端である端部MPの位置に合わせて載置する。
【0083】
波長変換体30の載置後、接合部ペースト51Mは、図10に示すように発光機能層23の上面上において、図10に示す破線矢印のように同心円状に濡れ広がる。なお、吸着コレットCTによる波長変換体30の保持は、接合部ペースト51Mが接合領域から電極パッド25の側に流出する以前に開放することが好ましい。
【0084】
次に、図12に示すように、接合部ペースト51Mの濡れ広がりの外端は、前駆体ペーストPPの塗布位置により、発光機能層23の電極パッド25の側の辺に最も早く到達する。よって、図12に示す破線矢印のように、接合部ペースト51Mが発光機能層23の電極パッド25の側の辺から流出部ペースト52Mとして電極パッド25に流出する。
【0085】
また、図13に示すように、接合部ペースト51Mから流出した流出部ペースト52Mは、図13に示す矢印のように、毛細管現象によって、金属バンプBP及びボンディングワイヤBWの周囲に吸引されると共に波長変換体30の第1の側面部分30S1に這い上がる。これにより、流出部ペースト52Mが電極パッド25の上面上から波長変換体30の第1の側面部分30S1に至る領域に貯留される。
【0086】
なお、この時、吸着コレットCTの保持から解放された波長変換体30は、自重及び前駆体ペーストPPの塗布位置によって傾きが生じる。この波長変換体30の傾きによって、接合部ペースト51Mの流出が促進され、接合部ペースト51Mが完全に濡れ広がるよりも先に電極パッド25の上面上から波長変換体30の第1の側面部分30S1に至る領域に貯留される。
【0087】
その後、図14に示すように、接合部ペースト51Mが毛細管現象によって、図14に示す破線矢印のように、発光素子20の上面と波長変換体30の下面との接合領域に濡れ広がる。また、この時、図14に示す破線矢印及び図15に示す矢印のように、発光素子20の上面と波長変換体30の下面との接合領域に濡れ広がる際に不足する前駆体ペーストが流出部ペースト52Mから供給される。
【0088】
また、接合部ペースト51Mは、接合部ペースト51M及び流出部ペースト52Mの露出面の表面張力が最も小さくなるまで流出部ペースト52Mから前駆体ペーストが供給され、セルフボリュームコントロールされる。また、接合部ペースト51M及び流出部ペースト52Mの露出面の表面張力が最も小さくなることにより、波長変換体30が略水平な方向に安定する。
【0089】
また、波長変換体30は、接合部ペースト51Mの表面張力により発光素子20の発光機能層23の上面を覆う位置にセルフアライメントされる。具体的には、図15に示すように、支持基板21の電極パッド25のある側と反対の辺の端部MPに露出した接合部ペースト51Mの表面張力が最小となる(端部MPの接合部ペースト51Mの露出面積が最小となる)位置にセルフアライメントされる。すなわち、波長変換体30は、上面視において、端部MPの辺の側面及び当該端部MPの辺の側面に隣接する側面に最も近接するようにセルフアライメントされる。
【0090】
その後、この状態の接合部ペースト51M及び流出部ペースト52Mを加熱処理することによって硬化させた。
【0091】
光反射体配置工程は、図16に示すように、基板10のキャビティ内に、光反射体60を充填する工程である(ステップS15)。
【0092】
まず、光反射体60となる酸化チタン(TiO)ナノ粒子を分散させたシリコーン樹脂を、発光素子20の側面及び波長変換体30の側面を被覆しかつ出光面30Tを露出するように基板10のキャビティ内に充填注入する。なお、シリコーン樹脂はその充填位置又は充填速度が、キャビティ内に気泡を生じさせずかつ、発光素子20の支持基板21の側面、接合樹脂部51及び流出樹脂部52の露出面、波長変換体30の各々の面の第1の側面部分30S1の露出面及び第2の側面部分30S2の表面に密着するように設定される。
【0093】
次いで、キャビティ内に充填されたシリコーン樹脂を150℃で120分間、加熱処理することによって硬化させ光反射体60を形成した。
【0094】
この操作により、基板10のキャビティの底面に設けられた第1並びに第2の配線13並びに15、発光素子20、金属バンプBP並びにボンディングワイヤBW、及び波長変換体30の側面が封止される。
【0095】
以上、本実施例の製造方法によれば、ステップS11~S15までの工程を実施することにより発光装置100を製造することができる。
【0096】
特に、側面に第1の側面部分30S1並びに第2の側面部分30S2を有する波長変換体30を準備し、接合樹脂部51及び流出樹脂部52となる前駆体ペーストPPを発光素子20の発光機能層23の上面の中央から電極パッド25の側の位置にポッティングする。これにより、前駆体ペーストPPを発光機能層23から電極パッド25の側に流出部ペースト52Mとして流出させ、流出した流出部ペースト52Mを電極パッド25の上面から波長変換体30の第1の側面部分30S1に至る領域に貯留させることを可能としている。
【0097】
上記のように製造した実施例の発光装置100と比較例の発光装置との比較について説明する。比較例の発光装置は、波長変換体の側面形状を除き、他の構成要素及び製造方法は実施例と同様である。よって、比較例の発光装置においては、相違する点についてのみ説明する。
【比較例】
【0098】
比較例の発光装置における波長変換体は、実施例の波長変換体30の湾曲面30Cに相当する部分が平坦な傾斜面で形成されている。すなわち、比較例の波長変換体は、実施例の波長変換体30と同様に、第1の側面部分30S1及び第2の側面部分30S2の平坦面30Fを有する。従って、比較例の波長変換体は、第1の側面部分30S1の上端と第2の側面部分30S2の平坦面30Fとを結ぶ部分が平坦な傾斜面となっている点で実施例と異なる。また、比較例の波長変換体の傾斜面は、その勾配角度が60°である。すなわち、比較例の波長変換体の傾斜面と第1の側面部分30S1とがなす角は、150°である。
【0099】
まず、実施例の発光装置100及び比較例の発光装置の波長変換体側面における流出樹脂部52の這い上がりについて比較した。製造後の目視確認において、実施例の発光装置100は、流出樹脂部52の這い上がりが波長変換体30の第1の側面部分30S1の上端までであった。これに対し、比較例の発光装置は、流出樹脂部52が波長変換体の第1の側面部分30S1の上端を超え、傾斜面まで這い上がりが生じていた。
【0100】
次に、実施例の発光装置100及び比較例の発光装置の発光特性を比較した。発光装置の発光領域である波長変換体の出光面(上面)から放射される光束値(lm:ルーメン)においては、比較例の発光装置の光束値に対して実施例の発光装置100の光束値が2.8%増加する結果を得た。
【0101】
また、発光装置の光反射体60からの漏れ光であるグレア光を比較した。グレア光は、発光装置の発光領域からの光束値を1とした時、当該発光領域の外端から0.2mm外方に位置する点における相対的な光束値である。グレア光においては、比較例の発光装置のグレア光に対して実施例の発光装置100のグレア光が約27%低減する結果を得た。
【0102】
実施例の発光装置100及びその製造方法によれば、発光素子20と波長変換体30とを接着する接着樹脂の波長変換体30への過剰な這い上がりを抑制することが可能となる。また、これにより、発光装置100は発光領域(波長変換体30の出光面30T)からの光束を増加させかつ、発光領域外のグレア光を低減させることが可能となる。すなわち、実施例の発光装置100及びその製造方法は、接着樹脂の発光素子側面への垂れ及び波長変換体側面への這い上がりによる光漏れを抑制し、発光装置の光取り出し効率を向上させることが可能な発光装置及びその製造方法を提供することが可能となる。
【0103】
[変形例]
本実施例においては、波長変換体30のいずれの辺においても第1の側面部分30S1及び第2の側面部分30S2が形成されている場合について説明した。しかしながら、波長変換体30の形状はこれに限定されない。
【0104】
図17は、実施例の変形例に係る発光装置100Aの上面図である。また、図18は、図17に示した発光装置100AのB-B線に沿った断面図である。
【0105】
変形例の発光装置100Aにおいては、波長変換体70の第1の側面部分70S1及び第2の側面部分70S2が、電極パッド25の側の側面にのみ形成されている点で実施例と異なる。変形例の発光装置100Aは、上記の相違点を除き、他の構成要素及び製造方法は実施例と同様である。
【0106】
本変形例においても、製造時に接合樹脂部51及び流出樹脂部52となる前駆体ペーストPPが電極パッド25の上面上に流出し、電極パッド25の上面上から第1の側面部分70S1に至る領域に流出樹脂部52が延在する。すなわち、実施例と同様に、発光素子20の上面上に波長変換体30を載置した後に、接合領域から接合部ペースト51Mが流出部ペースト52Mとして流出し、電極パッド25の上面上から第1の側面部分70S1に至る領域に吸引(ドレイン)及び貯留される。また、接合部ペースト51Mの接合領域の濡れ広がり時において、流出部ペースト52Mから接合部ペースト51Mへ前駆体ペーストPPが供給(リドレイン)される。これにより、接合領域の接合部ペースト51Mをセルフボリュームコントロールすることが可能となる。
【0107】
従って、変形例の発光装置100Aにおいても、波長変換体70の側面に流出樹脂部52の過剰な這い上がりを抑制することができ、発光装置100Aから得られる光の色ムラ及びグレア光を抑制しかつ、発光装置100Aの光取り出し効率を向上させることが可能となる。
【0108】
以上、本発明の実施例及び変形例を説明したが、これらは実施例として掲示したものにすぎず、実施例に限定されるものではない。
【0109】
例えば、本実施例及び変形例においては、発光素子20がLEDである場合について説明したが、発光素子20は、面発光レーザであってもよい。また、製造方法においては、波長変換体接合工程の加熱処理で接合樹脂部51及び流出樹脂部52となる接合部ペースト51M及び流出部ペースト52Mを硬化させているが、後工程の被覆部材充填工程の加熱処理で硬化することもできる。
【0110】
また、本実施例及び変形例においては、基板10に1の発光素子20を搭載する場合について説明したが、基板10に複数の発光素子20を搭載してもよい。例えば、複数の発光素子20を基板10のキャビティ内に発光機能層23及び電極パッド25が配列方向に沿って1列に整列するように配置し、波長変換体30又は70の側面形状を有する波長変換体が複数の発光素子20の各々の発光機能層23上に亘って一体的に延在するように配されていてもよい。また、基板10に複数の発光素子20を搭載する場合、複数の発光素子20の各々の発光機能層23上にそれぞれ別個に波長変換体30又は70を配置するようにしてもよい。この場合においても、各々の発光素子20上で接合領域の接合部ペースト51Mと当該接合領域から流出した流出部ペースト52Mとの前駆体ペーストPPのドレイン及び接合部へのリドレインは実施例と同様に実現可能である。
【0111】
また、本実施例及び変形例においては、発光素子20の発光機能層23の放射する光に励起されて当該放射光の波長変換を行う波長変換体30又は70を備える発光装置100及び100Aについて説明した。しかし、波長変換体30又は70は、発光機能層23の放射する光の波長変換を行わない投光板であってもよい。
【0112】
このように、記載の実施例は発明の範囲を限定することは意図していない。記載の実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そして、それら変形例も、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0113】
100 発光装置
10 基板
13 第1の配線
15 第2の配線
20 発光素子
21 支持基板
23 発光機能層
25 電極パッド
30 波長変換体
40 素子接合層
50 樹脂部
51 接合樹脂部
52 流出樹脂部
60 光反射体
70 波長変換体
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