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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 57/00 20060101AFI20250325BHJP
【FI】
A01D57/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021172645
(22)【出願日】2021-10-21
(65)【公開番号】P2023062585
(43)【公開日】2023-05-08
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】阿部 大介
(72)【発明者】
【氏名】市谷 拓也
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-079628(JP,U)
【文献】特開平06-169628(JP,A)
【文献】特開2011-078385(JP,A)
【文献】特開2019-165674(JP,A)
【文献】実開平04-033322(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0254241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 57/00-57/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀部の前方に設けられた供給搬送装置と、前記供給搬送装置の前方に設けられ作物を前記供給搬送装置へと掻き込むための掻込オーガと、を備えたコンバインであって、
前記掻込オーガは、左右方向を回転軸方向とした円筒状のオーガ本体部と、前記オーガ本体部の外周面に設けられた螺旋状の羽根部と、前記オーガ本体部の外周面から突出した複数の掻込フィンガと、を有し、
前記複数の掻込フィンガのうち、前記供給搬送装置の前方に位置する複数の掻込フィンガは、前記羽根部の螺旋に沿うように螺旋状に配置されており、
前記掻込オーガの前方に、一対の搬送体により作物を搬送する複数の穀稈搬送装置を備え、
前記複数の前記穀稈搬送装置のうち、少なくとも前記供給搬送装置の前方に位置する前記穀稈搬送装置は、左右方向について搬送通路の位置が調整可能に設けられており、
前記供給搬送装置の前方に位置する前記穀稈搬送装置の位置調整による前記搬送通路の調整幅内に、螺旋状に配置された前記複数の掻込フィンガのうち少なくとも1つの前記掻込フィンガが位置している
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記掻込オーガは、前記羽根部として、前記オーガ本体部における前記供給搬送装置の前方の部位の左右一側に設けられた第1の羽根部と、前記オーガ本体部における前記部位の左右他側に設けられ、左右方向について前記第1の羽根部よりも短い範囲に形成された第2の羽根部と、を有し、
螺旋状に配置された前記複数の掻込フィンガは、左右方向についての配置範囲の一部を、前記第2の羽根部の左右方向についての形成範囲に重複させるように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記供給搬送装置の取込口には、前記掻込オーガにより掻き込まれる作物を前記供給搬送装置に案内するガイド部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈り取った作物を供給搬送装置へと掻き込むための掻込オーガを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刈取部により刈り取った作物を搬送して脱穀部へと供給する供給搬送装置の前方に、刈り取った作物を供給搬送装置へと掻き込むための掻込オーガを備えたコンバインがある。掻込オーガとしては、左右方向を回転軸方向とした円筒状のオーガ本体部と、オーガ本体部の外周面に設けられた螺旋状の羽根部と、オーガ本体部の外周面から突出する複数の棒状の掻込フィンガとを有する構成が知られている。
【0003】
掻込オーガを備えた構成に関し、刈取装置として、刈り取った作物である穀稈を穀稈搬送装置により掻込オーガに送り込むように構成されたロークロップヘッダがある(例えば、特許文献1参照。)特許文献1には、掻込オーガの掻込み性を向上すべく、穀稈搬送装置の搬送経路の幅内に掻込フィンガを設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭63-71625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された掻込オーガにおいて、オーガ本体部のうち、左右方向について供給搬送装置の入口の前方の部位に、刈り取った穀稈を供給搬送装置へと受け渡すための複数の掻込フィンガが設けられている。具体的には、オーガ本体部の軸方向である左右方向に並んだ状態(横並びの状態)で設けられた複数の掻込フィンガが、オーガ本体部の周方向について所定の間隔で複数組設けられている。
【0006】
このような構成によれば、複数の掻込フィンガが、オーガ本体部の周方向についての位相を共通とするように配置されているため、供給搬送装置の入口の前方において、刈り取った穀稈が掻込フィンガに対して絡み付きやすくなる。このため、穀稈がスムーズに供給搬送装置へと引き継がれず、穀稈が停滞して詰まりやすいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、刈り取った作物を掻込オーガによりスムーズに供給搬送装置へと取り込むことができ、作物を停滞させることなく脱穀部へと供給することができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンバインは、脱穀部の前方に設けられた供給搬送装置と、前記供給搬送装置の前方に設けられ作物を前記供給搬送装置へと掻き込むための掻込オーガと、を備えたコンバインであって、前記掻込オーガは、左右方向を回転軸方向とした円筒状のオーガ本体部と、前記オーガ本体部の外周面に設けられた螺旋状の羽根部と、前記オーガ本体部の外周面から突出した複数の掻込フィンガと、を有し、前記複数の掻込フィンガのうち、前記供給搬送装置の前方に位置する複数の掻込フィンガは、前記羽根部の螺旋に沿うように螺旋状に配置されているものである。
【0009】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記掻込オーガの前方に、一対の搬送体により作物を搬送する複数の穀稈搬送装置を備えたものである。
【0010】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記複数の前記穀稈搬送装置のうち、少なくとも前記供給搬送装置の前方に位置する前記穀稈搬送装置は、左右方向について搬送通路の位置が調整可能に設けられており、前記供給搬送装置の前方に位置する前記穀稈搬送装置の位置調整による前記搬送通路の調整幅内に、螺旋状に配置された前記複数の掻込フィンガのうち少なくとも1つの前記掻込フィンガが位置しているものである。
【0011】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記掻込オーガは、前記羽根部として、前記オーガ本体部における前記供給搬送装置の前方の部位の左右一側に設けられた第1の羽根部と、前記オーガ本体部における前記部位の左右他側に設けられ、左右方向について前記第1の羽根部よりも短い範囲に形成された第2の羽根部と、を有し、螺旋状に配置された前記複数の掻込フィンガは、左右方向についての配置範囲の一部を、前記第2の羽根部の左右方向についての形成範囲に重複させるように設けられているものである。
【0012】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記供給搬送装置の取込口には、前記掻込オーガにより掻き込まれる作物を前記供給搬送装置に案内するガイド部材が設けられているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、刈り取った作物を掻込オーガによりスムーズに供給搬送装置へと取り込むことができ、作物を停滞させることなく脱穀部へと供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの左側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの右側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るコンバインにおける動力伝達構成を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る刈取部の動力伝達構成を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る刈取部の前方斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係る刈取部の平面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る刈取搬送装置の左側面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る掻込オーガの平面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る掻込オーガの横断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る掻込オーガの内部構造を示す平面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る掻込オーガの構成を模式的に示した掻込オーガの展開図である。
図13】本発明の一実施形態に係るフィーダの取込口の部分を示す斜視図である。
図14】本発明の一実施形態に係るガイド部材の構成を示す左側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、刈り取った作物を供給搬送装置へと掻き込むための掻込オーガの構成等について改善を施すことにより、刈り取った作物を刈取部から脱穀部へと効率良く供給することを可能にしようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1から図8を用いて、本実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。なお、以下の説明では、コンバイン1の前方に向かって左側(図3における下側)および右側(図3における上側)を、それぞれコンバイン1における左側および右側とする。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るコンバイン1は、刈り取った圃場の作物(稲、麦、大豆、トウモロコシ等)を機体内に掻き込み、脱穀・選別・穀粒貯留し、適宜機外に搬出可能とした収穫機としての普通型コンバインである。コンバイン1は、自走可能な走行機体2と、走行機体2の前端部に設けられた刈取部3とを有する。刈取部3は、稲や麦等の未刈り穀稈を刈り取りながら取り込む刈取装置として構成されたものであり、走行機体2に対して昇降可能に取り付けられている。
【0018】
走行機体2は、左右一対のクローラ部5,5を有するクローラ式の走行装置として構成された走行部4を備える。左右のクローラ部5,5間の上方には、機体フレーム6が設けられている。各クローラ部5は、その前端部に設けられた駆動スプロケット5aを含む複数の回転体と、これらの回転体に巻回された履帯5cとを有する。駆動スプロケット5aは、コンバイン1が備えるエンジン25の動力の伝達を受けて回転駆動する。
【0019】
機体フレーム6上の左側には、刈取部3により刈り取られて供給された穀稈を脱穀する脱穀部7と、脱穀部7により脱穀された穀粒を選別する選別部8とが設けられている。脱穀部7および選別部8は、脱穀部7を上段、選別部8を下段とした態様で配設されている。
【0020】
機体フレーム6上において、脱穀部7および選別部8の右方には、選別部8で選別された穀粒(清粒)を貯留するグレンタンク10を有する穀粒貯留部9が設けられている。グレンタンク10内には、グレンタンク10の排出口に向けて貯溜穀粒を搬送する下部排出コンベヤ11が設けられている(図4参照)。グレンタンク10の排出口に連通するように、縦搬送コンベヤ12が上下方向に沿って立設されている。縦搬送コンベヤ12の上端部には、穀粒排出コンベヤ13が連設されている。穀粒排出コンベヤ13は、水平方向に旋回可能かつ水平軸回りに上下揺動可能に設けられている。これらのコンベヤにより、グレンタンク10内の穀粒が搬送され、穀粒排出コンベヤ13の先端部に設けられた籾投口14からトラックの荷台やコンテナ等に排出される。
【0021】
機体フレーム6上において、穀粒貯留部9の前方の位置、つまり機体フレーム6上における右側前部の位置には、オペレータが搭乗する運転部15が設けられている。運転部15は、キャビン16により覆われている。運転部15には、運転座席17と、運転座席17の前方に配置された操縦ハンドル18と、主変速レバー19、副変速レバー、作業クラッチレバー等の各種操作部とが設けられている(図2参照)。作業クラッチレバーは、脱穀クラッチ57および刈取クラッチ75(図4参照)を入り切り操作するための作業操作具である。
【0022】
機体フレーム6上における運転部15の下方には、駆動源としてのエンジン25が設けられている。エンジン25は、運転部15の下方の空間が用いられ、機体フレーム6上の前部の右側のスペースに設置されている。エンジン25は、例えばディーゼルエンジンである。
【0023】
刈取部3について説明する。刈取部3は、供給搬送装置としてのフィーダ30と、穀物ヘッダとしてのプラットホーム31と、作物の刈取りおよび搬送を行う刈取搬送装置32とを有する。
【0024】
本実施形態に係る刈取部3は、プラットホーム31の前方に刈取搬送装置32を取り付けた、いわゆるロークロップヘッダとして構成されている。ロークロップヘッダの構成は、主に大豆や小豆等の豆類の刈取りに用いられる。なお、コンバイン1において、フィーダ30に対しては、ロークロップヘッダの代わりに、プラットホーム、刈刃装置、分草体、掻込リール等を備えた構成を取り付けることが可能となっている。
【0025】
フィーダ30は、刈取部3にて刈り取られた穀稈を搬送して脱穀部7へと供給する。フィーダ30は、ハウジングとしてのフィーダハウス35と、フィーダハウス35内に設けられた穀稈搬送用のコンベヤ36(図4参照)とを有する。フィーダ30は、キャビン16の左方に位置し、平面視で長手方向を前後方向とする略四角筒状に構成されたフィーダハウス35の後端開口部を脱穀部7の前側の扱口7aに連通させた状態で設けられている。
【0026】
コンベヤ36は、フィーダハウス35内において左右両側に互いに平行に設けられたチェン95と、左右のチェン95間に架設された複数のスラット96を有するチェンコンベヤである。スラット96は、チェン95の延伸方向について適宜間隔をあけて、チェン95の外周側に設けられている。スラット96は、左右のチェン95間における架設方向(左右方向)を長手方向とする細長い部材であり、略「U」字状の横断面形状を有する屈曲板状の部材である(図14参照)。スラット96は、ボルト等の締結具によってチェン95に固定されている。
【0027】
コンベヤ36は、その送り終端側を軸支する駆動軸として、脱穀部7の前部に設けられ左右方向を軸方向とする刈取部入力軸(フィーダハウスコンベヤ軸)38を有する。コンベヤ36は、刈取部入力軸38に固設されたスプロケット97に、チェン95の後側の部分を巻回させている。一方、チェン95の前側の部分は、フィーダハウス35内の前端部に設けられた円筒形状の前ドラム98に巻回されている。
【0028】
前ドラム98は、フィーダハウス35の左右の側面部間に支持された回転軸であるコンベヤ従動軸98aを中心として回転可能に軸支されている。つまり、チェン95は、スプロケット97および前ドラム98に無端状に巻回されており、刈取部入力軸38の回転にともなうスプロケット97の回転により、巻回状態を維持しながらスラット96を移動させるように駆動する。
【0029】
フィーダ30の後端部は、刈取部入力軸38を回動軸として、走行機体2側に対して回動可能に支持されている。また、フィーダハウス35の下面部と機体フレーム6との間には、油圧シリンダである昇降用シリンダ39が介設されている。
【0030】
刈取部3は、昇降用シリンダ39の伸縮動作にともなう走行機体2に対するフィーダ30の回動により昇降動作するように設けられている。刈取部3の昇降動作により、刈取部3の高さ調節が行われる。刈取部3の昇降動作は、運転部15に設けられた所定の操作部により操作される。
【0031】
プラットホーム31は、横長バケット状に構成され、フィーダハウス35の前端開口部に連通するように、フィーダ30の前側に連設されている。プラットホーム31は、左側壁部201および右側壁部202と、後壁部203と、底面部204とを有し、穀稈の投入空間として前側と上側を開放させた空間を形成している。
【0032】
後壁部203は、角パイプ状の部材により構成され後壁部203の上縁部を構成する横フレーム部203aと、横フレーム部203aの下側に設けられた後壁面部203bとを有する。後壁部203には、フィーダハウス35の前端開口部を臨んで開口させた取込口205が形成されている(図6参照)。取込口205は、フィーダハウス35の前端開口部の形状に対応して矩形状の開口形状を有する。
【0033】
フィーダハウス35は、プラットホーム31に対して、左右方向について中央よりも左寄りの位置に設けられており、取込口205は、左右中央よりも左寄りの位置で、プラットホーム31内に開口している。詳細には、取込口205は、左右方向について、後壁部203を4等分したうちの左から2番目の範囲と略同じ範囲を開口させるように設けられている。
【0034】
プラットホーム31内には、掻込オーガ(プラットホームオーガ)37が設けられている。掻込オーガ37は、プラットホーム31の左側壁部201と右側壁部202の間に、左右方向を回転軸方向として回転可能に軸架されている。掻込オーガ37は、左右の両端部を、左側壁部201および右側壁部202それぞれに対して軸支させている。
【0035】
刈取搬送装置32は、穀稈搬送装置33および刈取装置34の組合せの構成を複数備えている。穀稈搬送装置33および刈取装置34は、刈取搬送装置32を構成する所定の刈取部フレーム210に支持された状態で設けられている。刈取部フレーム210は、所定のフレーム部材により枠組み構成されており、刈取搬送装置32において、プラットホーム31の前側に固定される部分となる。
【0036】
本実施形態では、刈取搬送装置32は、左右方向に連続した4条に対応して左右に並列的に配置された4組の穀稈搬送装置33および刈取装置34を有し、4条刈の刈取部3を構成している。つまり、刈取搬送装置32は、穀稈搬送装置33および刈取装置34の組合せを1つのロークロップユニット200(図5参照)として、4つのロークロップユニットを有する。
【0037】
穀稈搬送装置33は、搬送体としてのベルト搬送体220を左右一対備え、左右のベルト搬送体220間に穀稈を位置させて搬送するように構成されている。つまり、左右のベルト搬送体220間が、穀稈の搬送通路215となる。ベルト搬送体220は、平面視で前後方向を長手方向とするように配置された長手状の搬送ケース221に沿って、無端回動帯である搬送ベルト222を配した構成を有する。
【0038】
一対のベルト搬送体220は、刈取部フレーム210の所定の部位に対して固定された状態で設けられている。一対のベルト搬送体220は、掻込オーガ37の斜め前上方の位置から前下がりに傾斜状に設けられている。ベルト搬送体220の水平方向に対する傾斜角度は例えば約45°である。
【0039】
各ベルト搬送体220において、搬送ベルト222は、搬送下手側となる後側に設けられた駆動輪である駆動プーリ223、および搬送上手側となる前側に設けられた従動輪である従動プーリ224に巻き掛けられている。搬送ベルト222においては、複数のタイン222aが、周方向に所定の間隔をあけて外周側に突出するように形成されている。ベルト搬送体220において、搬送ベルト222は、タイン222aを搬送ケース221から穀稈搬送装置33の搬送経路側に突出させるように設けられている。
【0040】
一対の搬送ベルト222は、互いに対向する側のタイン222aによって穀稈を挟持し、駆動プーリ223の回転駆動により、互いに対向する側を穀稈の搬送方向に移動させる向きに回動する。駆動プーリ223および従動プーリ224は、機体側面視においてベルト搬送体220の傾斜に直交する方向を回転軸方向とする。駆動プーリ223は、エンジン25から所定の伝動機構を介して伝達される動力により回転駆動する。なお、ベルト搬送体220において、搬送ベルト222に対してはテンションプーリ等が設けられている。以上のように、コンバイン1は、掻込オーガ37の前方に、一対のベルト搬送体220により作物を搬送する複数の(4つの)穀稈搬送装置33を備えている。
【0041】
刈取装置34は、刈取部フレーム210の所定の部位に対して固定された状態で設けられた刈取伝動ケース225と、刈取伝動ケース225から突出した刈刃駆動軸226に取り付けられた回転刃227とを有する。
【0042】
刈取伝動ケース225は、一対のベルト搬送体220の下方に設けられている。刈取伝動ケース225は、ベルト搬送体220の傾斜に沿うように前下がりの傾斜状に配されたアーム状の傾斜ケース部を有し、その傾斜ケース部の前端部において、刈刃駆動軸226を上側に向けて突出させている。回転刃227は、一対のベルト搬送体220の搬送始端部(前端部)の後方に位置している。刈取伝動ケース225内には、エンジン25から伝達された動力を刈刃駆動軸226に伝達するための伝動機構(図5、回転刃伝動機構88)が設けられている。
【0043】
刈取搬送装置32において、各ベルト搬送体220の前方には、分草体としてのデバイダ228が設けられている。デバイダ228は、刈取部フレーム210の所定の部位から前方に向けて延設された棒状のデバイダ支持アーム229に支持された状態で設けられている。デバイダ支持アーム229は、一対のベルト搬送体220の左右外側から前方に向けて延出し、前端部を、ベルト搬送体220の前方に位置させている。デバイダ228は、デバイダ支持アーム229の前端部に設けられ前側を鋭角状とした支持板部と、この支持板部から後側にかけて互いの間の間隔を広げるように設けられた複数の(3本の)棒状の部分とを有する。
【0044】
刈取搬送装置32の左右両外側には、サイドデバイダ230が設けられている。サイドデバイダ230は、直線棒状の部材により構成されており、平面視で前側から後側にかけて徐々に左右内側から左右外側に向かうように傾斜状に設けられるとともに、側面視で前下がりの傾斜状に設けられている。サイドデバイダ230の側面視での傾斜は、ベルト搬送体220の傾斜より緩やかである。
【0045】
サイドデバイダ230は、前端部を、左右の最外側に位置するデバイダ支持アーム229の前端部に支持させている。また、サイドデバイダ230は、延伸方向の中間部を、左右の最外側に位置するデバイダ支持アーム229に対して支持プレート231を介して支持させている。
【0046】
また、刈取搬送装置32においては、左右両側に、ゲージ輪234が設けられている。左右のゲージ輪234は、刈取部3の前端部の対地高さを決める接地ホイールであり、畝の左右側方に接触した状態で、走行機体2を畝に沿って走行させる。ゲージ輪234は、左右方向について、左側の2つの穀稈搬送装置33の間の位置と、右側の2つの穀稈搬送装置33の間の位置とに設けられている。ゲージ輪234は、前後方向について、ベルト搬送体220よりも前側かつデバイダ228の前端よりも後側に位置している。
【0047】
ゲージ輪234は、刈取部フレーム210の所定の部位から前側に延出したゲージ輪支持アーム235により回転自在に支持されている。ゲージ輪234は、ゲージ輪支持アーム235に設けられた調節機構により高さ調節可能に設けられている。
【0048】
また、刈取搬送装置32において、複数の(4つの)穀稈搬送装置33のうち、左側の3つの穀稈搬送装置33は、左右方向について搬送通路215の位置が調整可能に設けられている。つまり、左側の3つの穀稈搬送装置33は、左右方向について位置調整可能に設けられている。本実施形態では、穀稈搬送装置33および刈取装置34を含むロークロップユニット200のうち、左側の3つのロークロップユニット200が、左右方向について位置調整可能に設けられている。
【0049】
図7に示すように、穀稈搬送装置33の左右位置の調整により、刈取搬送装置32における条間寸法T1が調整される。条間寸法T1は、隣り合う穀稈搬送装置33の搬送ラインT0間の左右方向の距離である。搬送ラインT0は、各穀稈搬送装置33における左右一対の搬送ベルト222間の搬送通路215の左右中心位置である。つまり、各穀稈搬送装置33の搬送ラインT0の左右方向の位置調整により、各条間寸法T1の調整が行われる。条間寸法T1の調整用の構造において、右端の穀稈搬送装置33(ロークロップユニット200)は、基準ユニットとなっており、刈取部フレーム210に対して固定状態で設けられている。
【0050】
ロークロップユニット200は、穀稈搬送装置33および刈取装置34を支持するフレーム部を有する。左側の3つの各ロークロップユニット200は、フレーム部を、刈取部フレーム210に対して、公知の位置調整機構により、左右方向に位置調整可能に取り付けている。位置調整機構は、刈取部フレーム210に対するロークロップユニット200のフレーム部の固定部において、固定具としてのボルトを貫通させる孔部を、左右方向を長手方向とした長孔とした構造である。
【0051】
このような位置調整機構によれば、ボルトを緩めた状態で、長孔の長さの範囲内で、ロークロップユニット200を左右にスライドさせて位置調整が行われた後、ボルトを締結することでロークロップユニット200が固定される。例えば、基準となる右端のロークロップユニット200に対して、右から2番目、3番目、4番目の順にロークロップユニット200の左右位置の調整が行われ、右側から順次条間寸法T1の調整が行われる。条間寸法T1の調整幅は、例えば100mm程度である。
【0052】
フィーダ30の後側には、コンベヤ36により搬送されてくる穀稈を扱口7aへと送り込むフロントロータ26が設けられている。フロントロータ26は、コンベヤ36の終端と扱口7aとの間に設けられている。フロントロータ26は、ビータ等と称される略円筒状のロータ本体と、左右方向を軸方向とするフロントロータ軸28(図4参照)とを有する。フィーダ30により搬送された穀稈は、コンベヤ36の終端から、フロントロータ26によって扱口7aから脱穀部7の扱室7b内へと投入される。
【0053】
脱穀部7および選別部8について説明する。脱穀部7は、扱口7aを前側に開口させた扱室7b内に設けられた扱胴40と、扱胴40の下方に配置された受網42とを有する。扱室7bは、機体フレーム6上に設けられた機枠によって形成されている。
【0054】
扱胴40は、前後方向を軸方向とする扱胴軸41(図4参照)により回転可能に支持されている。扱胴40は、扱胴軸41を中心軸に沿わせた円筒状の本体部を有し、本体部の外周面には、棒状の扱歯が設けられている。扱胴40の上側には、扱室内の脱穀物の搬送速度(滞留時間)を調節するための複数の送塵弁が角度調節可能に設けられている。受網42は、穀粒を漏下させるものであり、扱胴40の下部の外周面に沿うように設けられている。
【0055】
選別部8は、受網42の下方に配置された揺動部としての揺動選別盤43と、駆動源からの回転動力によって揺動選別盤43を揺動させる揺動軸44aを含む揺動機構44と、一番コンベヤ45と、二番コンベヤ46と、唐箕47とを有する(図4参照)。なお、図4に示すように、唐箕47の前方には、プレファン71が設けられており、唐箕47の後方には、セカンドファン72が設けられている。
【0056】
揺動選別盤43は、フィードパン、フィードパンの後方に配置され穀粒漏下量を調節するチャフシーブ、チャフシーブの下方に配置されたグレンシーブ等の比重選別用の構成を有する。一番コンベヤ45は、一番穀粒を集約するように機体幅方向に延びる一番樋内に配置されている。二番コンベヤ46は、一番コンベヤ45の後方の位置において、二番穀粒を集約するように機体幅方向に延びる二番樋内に配置されている。唐箕47は、揺動選別盤43に対して前下方から後上方へ抜ける選別風を送風する。
【0057】
また、脱穀部7および選別部8の配設部分の機体右側に、還元コンベヤ48が設けられている(図4参照)。還元コンベヤ48は、下端部を二番コンベヤ46近傍に位置させて二番コンベヤ46に連設されるとともに、上端部を扱胴40の前端部の近傍に位置させ、前上がりの傾斜状に延設されている。還元コンベヤ48の右側には、上下方向に延伸した揚穀コンベヤ49が設けられている。揚穀コンベヤ49は、一番コンベヤ45によって送られてくる一番物をグレンタンク10内に搬送する。
【0058】
以上のような構成を備えたコンバイン1は、圃場において、刈取部入力軸38を中心(支軸)としたフィーダ30の昇降動作により刈取部3を地上に対して所望の高さ(収穫作物である穀稈の刈取高さ)となるまで上昇させ、非作業状態から作業状態となり、その状態で走行機体2により走行する。これにより、コンバイン1は、デバイダ228およびサイドデバイダ230により収穫作物を刈取対象と非刈取対象とに分草し、刈取対象の穀稈を穀稈搬送装置33により取り込みながら刈取装置34により穀稈を刈り取る。
【0059】
刈取装置34により刈り取られた穀稈は、穀稈搬送装置33において搬送ベルト222のタイン222aによる送り作用によって後側に搬送され、穀稈搬送装置33の搬送後端部から、回転駆動する掻込オーガ37によりプラットホーム31内に掻き込まれる。プラットホーム31内に掻き込まれた穀稈は、掻込オーガ37の送り作用によってプラットホーム31内における取込口205付近に集められ、取込口205からフィーダハウス35内に取り込まれる。フィーダハウス35内に取り込まれた穀稈は、コンベヤ36によりフィーダハウス35内を通ってフロントロータ26により扱口7aに投入され、脱穀部7に供給される。
【0060】
脱穀部7に供給された穀稈の着莢部は、脱穀部7により脱穀処理される。具体的には、脱穀部7に供給された穀稈は、回転する扱胴40により後方に向けて搬送されながら、主に扱胴40と受網42との間で脱穀される。受網42の網目よりも小さい穀粒等の脱穀物は、受網42から漏下する。受網42から漏下しない藁屑等は、扱胴40の搬送作用によって、選別部8の後部に設けられた排塵口から圃場に排出される。
【0061】
一方、脱穀部7で脱穀処理され受網42から漏下した穀粒は、選別部8により選別処理される。具体的には、扱胴40にて脱穀されて受網42から漏下した脱穀物は、揺動選別盤43による比重選別作用と、唐箕47による風選別作用とにより、精粒等の穀粒(一番物)と、枝梗付き穀粒等の穀粒と藁の混合物(二番物)と、藁屑等とに選別されて取出される。
【0062】
選別部8における選別により揺動選別盤43から落下した穀粒(一番物)は、一番コンベヤ45とこれに連設された揚穀コンベヤ49とによってグレンタンク10へ搬送される。二番物は、二番コンベヤ46とこれに連設された還元コンベヤ48によって扱胴40の脱穀始端側に戻され、再度脱穀処理を受ける。藁屑等は、選別部8の後部に設けられた排塵口から圃場に排出される。
【0063】
次に、本実施形態に係るコンバイン1の動力伝達構成について、図4および図5を用いて説明する。コンバイン1は、エンジン25の回転動力により、刈取部3、走行部4、脱穀部7、選別部8、および穀粒貯留部9を駆動させる。
【0064】
図4に示すように、エンジン25は、第1出力軸25aおよび第2出力軸25bを有する。第1出力軸25aの回転動力は、走行部4、脱穀部7、選別部8、および刈取部3に伝達される。第2出力軸25bの回転動力は、穀粒貯留部9に伝達される。なお、第2出力軸25bの回転動力は、エンジン25に対して設けられた冷却ファン25dのファン軸に伝達される。また、エンジン25は、昇降用シリンダ39等を作動させるチャージポンプ54を駆動させる作業機ポンプ軸を有する。
【0065】
走行部4への動力伝達系に関し、第1出力軸25aの回転動力は、第1ベルト伝動機構51によりHST入力軸52に伝達され、走行用HSTおよび旋回用HSTを含むトランスミッション53に入力される。ここで、「HST」とは、油圧ポンプを駆動させることで発生させた油圧を油圧モータで再び回転力に変換する方式を採用した油圧式無段変速装置である。トランスミッション53の駆動力により、走行部4を構成するクローラ部5の駆動スプロケット5aが回転駆動させられる。
【0066】
脱穀部7への動力伝達系に関し、第1出力軸25aの回転動力は、第2ベルト伝動機構55により脱穀部入力軸56に伝達される。第2ベルト伝動機構55には、第1出力軸25aの回転動力を脱穀部入力軸56に任意に断続して伝える脱穀クラッチ57が設けられている。
【0067】
脱穀部入力軸56の回転動力は、第3ベルト伝動機構58により扱胴入力軸59に伝達される。扱胴入力軸59の回転動力は、脱穀変速装置60を介して扱胴軸41に伝達される。脱穀変速装置60は、扱胴入力軸59から扱胴軸41に入力される回転動力について、例えば高速・低速の2段階の変速を行う。
【0068】
このような構成により、エンジン25の駆動力が、脱穀部7へと伝達される。そして、運転部15に設けられた作業クラッチレバーの操作により、脱穀クラッチ57がON/OFFされ、脱穀部7への動力伝達の断続が行われる。
【0069】
選別部8への動力伝達系に関し、脱穀部入力軸56は、唐箕47の支持軸部を有し、脱穀部入力軸56の回転動力は、第4ベルト伝動機構61により、脱穀中間軸62に軸支されたプーリ回転体63に伝達される。プーリ回転体63の回転動力は、所定の伝動機構により、プレファン71および唐箕47に伝達される。また、脱穀部入力軸56の回転動力は、所定の伝動機構により、一番コンベヤ45を回転させる一番コンベヤ軸45a、セカンドファン72を回転させるセカンドファン軸72a、および二番コンベヤ46を回転させる二番コンベヤ軸46aにそれぞれ伝達される。
【0070】
一番コンベヤ軸45aの回転動力は、所定の伝動機構により揚穀コンベヤ49に伝達される。二番コンベヤ軸46aの回転動力は、第5ベルト伝動機構64により揺動機構44の揺動軸44aに伝達される。二番コンベヤ軸46aの回転動力は、ベベルギヤを介して還元コンベヤ48に伝達される。
【0071】
穀粒貯留部9への動力伝達系に関し、第2出力軸25bの回転動力は、グレンタンク中間軸77を含む動力伝達機構により、下部排出コンベヤ11の回転軸11aに伝達され、回転軸11aの回転動力は、ベベルギヤを介して縦搬送コンベヤ12の回転軸12aに伝達される。回転軸12aの回転動力は、所定の伝動機構により穀粒排出コンベヤ13の回転軸13aに伝達される。なお、穀粒貯留部9は、グレンタンク中間軸77の回転動力の伝達を受けて駆動する構成として、吸引ファン軸78aを有する吸引ファン78、およびコンプレッサ軸79aを有するコンプレッサ79を備えている。
【0072】
刈取部3への動力伝達系に関し、プーリ回転体63の回転動力は、第6ベルト伝動機構73によりフロントロータ軸28に伝達される。第6ベルト伝動機構73には、プーリ回転体63の回転動力をフロントロータ軸28に任意に断続して伝える刈取クラッチ75が設けられている。フロントロータ軸28の回転動力は、第1チェン伝動機構65により刈取部入力軸38に伝達される。刈取部入力軸38の回転駆動により、フィーダハウス35内のコンベヤ36が作動する。
【0073】
図5に示すように、刈取部入力軸38の回転動力は、第2チェン伝動機構66によりPF(プラットホーム)駆動軸67に伝達される。PF駆動軸67の回転動力は、第3チェン伝動機構68を介して、掻込オーガ37を回転させるPFオーガ軸37aに伝達される。また、PF駆動軸67の回転動力は、第7ベルト伝動機構69を介して、搬送カウンタ軸70に伝達され、搬送カウンタ軸70の回転動力は、第4チェン伝動機構74を介して、搬送入力軸76に伝達される。
【0074】
搬送入力軸76の回転動力は、ベベルギヤ等によって、4つの各ロークロップユニット200において穀稈搬送装置33を構成する一対のベルト搬送体220のそれぞれを駆動させる搬送駆動軸80に伝達される。各搬送駆動軸80の回転動力は、それぞれ第5チェン伝動機構81により駆動プーリ223に伝達され、搬送ベルト222を回転駆動させる。
【0075】
一方、PF駆動軸67の回転動力は、第6チェン伝動機構82を介して、刈取カウンタ軸83に伝達され、刈取カウンタ軸83の回転動力は、第8ベルト伝動機構84を介して、刈取入力軸85に伝達される。刈取入力軸85の回転動力は、刈取入力軸85に設けられた伝達ギヤ86により、搬送入力軸76に軸支された刈取駆動軸87に伝達される。刈取駆動軸87の回転動力は、各種ギヤやこれらを支持する回転軸等を含んで構成された回転刃伝動機構88により変速されて刈刃駆動軸226に伝達される。
【0076】
このような構成により、エンジン25の駆動力が、刈取部3へと伝達される。そして、運転部15に設けられた作業クラッチレバーの操作により、刈取クラッチ75(図4参照)がON/OFFされ、刈取部3への動力伝達の断続が行われる。なお、図5においては、便宜上、1つのロークロップユニット200のみについて動力伝達構成を示しているが、他の3つのロークロップユニット200も図5に示す構成と同様の動力伝達構成を備えている。
【0077】
以上のように、コンバイン1は、脱穀部7の前方に設けられたフィーダ30と、フィーダ30の前方に設けられ作物をフィーダ30へと掻き込むための掻込オーガ37とを備えている。以下、掻込オーガ37およびその周囲の構成について、図9から図14を用いて説明する。
【0078】
なお、図10は、図9におけるA-A矢視断面図である。また、図12は、掻込オーガ37を周壁部243の周方向について展開した展開図であり、掻込オーガ37の各構成を模式的に示した図である。図12において、展開図の外形を表す長方形状の長手方向(左右方向)は、オーガ本体部241の長さに対応しており、同長方形状の短手方向(上下方向)は、オーガ本体部241の周方向の360°の角度範囲に対応している。
【0079】
図9および図10に示すように、掻込オーガ37は、機体の左右方向を回転軸方向とした円筒状のオーガ本体部241と、オーガ本体部241の外周面241aに設けられた螺旋状の羽根部242(242L,242R)と、オーガ本体部241の外周面241aから突出した複数の掻込フィンガ240とを有する。
【0080】
掻込オーガ37は、オーガ本体部241の円筒形状の中心軸に一致する左右方向の軸線を回転軸線C1としている。掻込オーガ37は、左側面視で反時計方向に回転(図10、矢印F1参照)することで、プラットホーム31内に投入された穀稈に対して羽根部242により送り作用を与え、穀稈を取込口205(図6参照)へと送り込む。
【0081】
オーガ本体部241は、プラットホーム31内の空間に納まる外径を有する。オーガ本体部241は、プラットホーム31の左側壁部201と右側壁部202の間の寸法と略同じ寸法の長さを有し、左右方向についてプラットホーム31内の略全体にわたるように設けられている。オーガ本体部241は、外周面241aをなす周壁部243と、いずれも回転軸線C1に対して垂直な面部である左端面部244および右端面部245とを有し、これらの面部によって円筒状の空間を形成し、中空状の部分をなしている。
【0082】
羽根部242は、オーガ本体部241の外周面241aに沿って、回転軸線C1を中心とした螺旋形状をなす板状の部分である。羽根部242は、螺旋形状を有する板状の部材をオーガ本体部241の外周面241aに対して溶接等により固定することで設けられている。羽根部242に対しては、外周面241aに対する支持強度を補強するための補強部材として略三角形状のリブ板246が適宜間隔をあけて設けられている。
【0083】
掻込オーガ37は、羽根部242として、オーガ本体部241の右側に設けられた第1の羽根部としての右側羽根部242Rと、オーガ本体部241の左側に設けられた第2の羽根部としての左側羽根部242Lとを有する。
【0084】
左側羽根部242Lおよび右側羽根部242Rは、それぞれ一体的に連続した螺旋形状をなすように設けられている。右側羽根部242Rは、左右方向について、オーガ本体部241の全体の長さに対してオーガ本体部241の右端から半分以上の範囲(略3/5の範囲)で設けられている。左側羽根部242Lは、左右方向について、オーガ本体部241の全体の長さに対してオーガ本体部241の左端から略1/3の範囲で設けられている。
【0085】
したがって、図9に示すように、掻込オーガ37は、左右方向について、右側羽根部242Rが形成された範囲である右羽根部形成領域D1と、左側羽根部242Lが形成された範囲である左羽根部形成領域D2と、これらの領域の間の領域であって羽根部242の非形成部位の範囲である羽根部非形成領域D0との3つの領域に区分される。羽根部非形成領域D0は、左右方向について、フィーダ30の取込口205の開口範囲E1の範囲内に含まれており、開口範囲E1の中間部に位置している。つまり、掻込オーガ37のうち羽根部非形成領域D0の部分は、取込口205の前方に位置している。
【0086】
右側羽根部242Rおよび左側羽根部242Lは、外周面241aからの突出高さを略一定とし、略一定のピッチで設けられている。本実施形態では、右側羽根部242Rの巻き数は、略3であり、左側羽根部242Lの巻き数は、略1.5である。ただし、各羽根部の巻き数やピッチは特に限定されるものではない。
【0087】
以上のように、掻込オーガ37は、羽根部242として、オーガ本体部241におけるフィーダ30の前方の部位(以下、「フィーダ前方部位」という。)の左右一側である右側に設けられた右側羽根部242Rと、オーガ本体部241におけるフィーダ前方部位の左右他側である左側に設けられた左側羽根部242Lとを有する。左側羽根部242Lは、右側羽根部242Rよりも左右方向について短い範囲に形成されている。このような左右の羽根部242の左右非対称の構成は、プラットホーム31に対するフィーダ30の左側寄りの配置に対応したものである。なお、オーガ本体部241におけるフィーダ前方部位は、左右方向について、フィーダ30の取込口205の開口範囲E1に対応した部位である。
【0088】
このような構成において、掻込オーガ37が左側面視で反時計方向に回転することで(図10、矢印F1参照)、右側羽根部242Rおよび左側羽根部242Lにより、プラットホーム31内に送り込まれた穀稈が取込口205側へと横送りされる。すなわち、右側羽根部242Rにより、プラットホーム31の右側の部分に送り込まれた穀稈が羽根部非形成領域D0側である左側に向けて搬送され、左側羽根部242Lにより、プラットホーム31の左側の部分に送り込まれた穀稈が羽根部非形成領域D0側である右側に向けて搬送される。
【0089】
掻込フィンガ240は、直線棒状の部材により構成されており、オーガ本体部241の周壁部243を貫通し、外周面241aから突出するように設けられている。周壁部243における掻込フィンガ240の貫通部には、樹脂製のスライドブッシュ247が設けられている。スライドブッシュ247は、掻込フィンガ240を貫通させる貫通孔を有し、周壁部243にボルト等の固定具によって取り付けられている。掻込フィンガ240は、スライドブッシュ247を貫通した状態でスライドブッシュ247に支持されている。
【0090】
図11に示すように、掻込フィンガ240は、オーガ本体部241内に設けられたフィンガ支持軸250(250A,250B)に対して、支持ボス251を介して相対回転可能に支持されている。支持ボス251は、図10および図11に示すように、フィンガ支持軸250を貫通させる円筒状の軸支部251aと、掻込フィンガ240の基端部を螺挿させた状態で締結固定するフィンガ支持部251bとを有する。
【0091】
フィンガ支持軸250は、左右方向を軸方向とする直線棒状の軸であり、掻込オーガ37の回転軸線C1に対して偏心した位置に軸線C2を位置させた偏心軸である。フィンガ支持軸250の軸線C2は、掻込オーガ37の回転軸線C1に対して前下方に位置している(図10参照)。フィンガ支持軸250は、回転軸線C1に対する位置を一定とした固定軸である。
【0092】
掻込フィンガ240は、軸線C2の軸方向視で、軸線C2を中心とした円周形状の径方向に延伸方向を沿わせ、フィンガ支持軸250から径方向の外側に向けて延出している。掻込フィンガ240は、支持ボス251により基端部をフィンガ支持軸250に支持させるとともに、先端側をスライドブッシュ247に貫通させ、フィンガ支持軸250と周壁部243との間に架設された態様で設けられている。
【0093】
フィンガ支持軸250の偏心構造により、掻込フィンガ240が、掻込オーガ37の回転軸線C1回りの回転にともなって周壁部243から出没するように構成されている。掻込フィンガ240の周壁部243からの出没動作においては、スライドブッシュ247の貫通孔が、掻込フィンガ240を摺動させる支持孔となる。
【0094】
すなわち、支持ボス251によりフィンガ支持軸250に対して回転可能に支持されるとともに、スライドブッシュ247を介して周壁部243に支持された状態の掻込フィンガ240は、軸線C2を中心として周壁部243と共回りすることで、周壁部243から出没する。周壁部243からの掻込フィンガ240の突出量(以下「フィンガ突出量」という。)は、回転軸線C1の軸方向視において、回転軸線C1を中心とした円周方向の位置について、掻込フィンガ240の延伸方向が回転軸線C1と軸線C2とを結ぶ直線に沿う位置のうち、前側の位置で最大となり、その逆位相である後側の位置で最小となる。
【0095】
図10に示す例では、軸線C2の位置に対して前下を向いた掻込フィンガ240の位置が、フィンガ突出量が最大となる位置であり、その反対側の位置、つまり軸線C2の位置に対して後上を向いた掻込フィンガ240の位置が、フィンガ突出量が最小となる位置である。最大のフィンガ突出量は、掻込フィンガ240の全長の3/4程度である。掻込フィンガ240は、フィンガ突出量を最小とした状態で、先端部をスライドブッシュ247の貫通孔内に位置させる。図10においては、掻込フィンガ240の先端の軌跡S1を二点鎖線で示している。
【0096】
図11に示すように、掻込オーガ37は、掻込オーガ37の右側を支持する回転支軸261と、掻込オーガ37の左側を支持する固定支軸262とにより、プラットホーム31の右側壁部202と左側壁部201との間で回転軸線C1回りに回転可能に支持されている。
【0097】
回転支軸261は、回転軸線C1に軸心を一致させるように、掻込オーガ37の右端部に設けられており、右側の端部を、オーガ本体部241の右端面部245から右方に突出させている。回転支軸261は、右端面部245に対して、取付板263を介して固定されている。取付板263は、回転支軸261を貫通させるとともに回転支軸261に固定された板状の部材であり、ボルト等の固定具によって右端面部245の左右外側(右側)に固定されている。
【0098】
回転支軸261は、右端面部245の左方に設けられた第1中間支持板265を貫通している。第1中間支持板265は、回転軸線C1に対して垂直な板状の部分であり、周壁部243に固設されている。回転支軸261は、第1中間支持板265に対して、取付板266を介して固定されている。取付板266は、回転支軸261を貫通させるとともに回転支軸261に固定された板状の部材であり、ボルト等の固定具によって第1中間支持板265の左右外側(右側)に固定されている。このように、回転支軸261は、右端面部245および第1中間支持板265に対して固定されることで、オーガ本体部241と一体的に回転する部分となる。
【0099】
回転支軸261の右側の端部は、右側壁部202に対して、取付板267およびベアリング等の軸受部材268を介して回転可能に支持されている。取付板267は、軸受部材268を介して回転支軸261を回転可能に支持した板状の部材であり、ボルト等の固定具によって右側壁部202の外側(右側)に固定されている。右側壁部202の内側(左側)には、周壁部243の右側の開口縁部を塞ぐように、円板状の巻付き防止板269が設けられている。巻付き防止板269は、右側壁部202に対して、取付板267とともに固定具によって共締めされ固定されている。回転支軸261の右側壁部202からの右方への突出部分には、第3チェン伝動機構68を構成するスプロケット259が固設されている。
【0100】
第1中間支持板265を貫通した回転支軸261の左側の端部には、第1連結アーム271の基端部が相対回転可能に支持されている。第1連結アーム271は、回転支軸261の軸方向に対して直角状をなすように設けられており、第1連結アーム271の先端部には、フィンガ支持軸250のうち右側に位置する第1フィンガ支持軸250Aの右側の端部が相対回転不能に支持されている。
【0101】
第1中間支持板265の左方には、オーガ本体部241の左右方向の略中央部に位置する第2中間支持板272が設けられている。第2中間支持板272は、回転軸線C1に対して垂直な板状の部分であり、周壁部243に固設されている。第2中間支持板272には、軸心を回転軸線C1に一致させた中間支持軸275が、ベアリング等の軸受部材276を介して貫通した状態で相対回転可能に支持されている。
【0102】
中間支持軸275の右側の端部には、第2連結アーム277を介して、第1フィンガ支持軸250Aの左側の端部が連結されている。第2連結アーム277は、固定ボルト277aにより、中間支持軸275および第1フィンガ支持軸250Aの両軸に対して相対回転不能に連結されている。固定ボルト277aは、第2連結アーム277を長手方向に貫通するとともに中間支持軸275および第1フィンガ支持軸250Aの両軸を径方向に貫通した状態でナット等により締結固定されている。
【0103】
中間支持軸275の左側の端部には、第2連結アーム277介した第1フィンガ支持軸250Aの連結構造と略左右対称的な構造により、第3連結アーム278を介して、フィンガ支持軸250のうち左側に位置する第2フィンガ支持軸250Bの右側の端部が連結されている。第3連結アーム278は、固定ボルト278aにより、中間支持軸275および第2フィンガ支持軸250Bの両軸に対して相対回転不能に連結されている。固定ボルト278aは、第3連結アーム278を長手方向に貫通するとともに中間支持軸275および第2フィンガ支持軸250Bの両軸を径方向に貫通した状態でナット等により締結固定されている。
【0104】
第2フィンガ支持軸250Bの左側の端部には、第4連結アーム279を介して、固定支軸262の右側の端部が連結されている。第4連結アーム279は、固定ボルト279aにより、第2フィンガ支持軸250Bおよび固定支軸262の両軸に対して相対回転不能に連結されている。固定ボルト279aは、第4連結アーム279を長手方向に貫通するとともに第2フィンガ支持軸250Bおよび固定支軸262の両軸を径方向に貫通した状態でナット等により締結固定されている。
【0105】
固定支軸262の左側の端部は、左側壁部201に対して、取付板280を介して固定されている。取付板280は、固定支軸262を貫通させるとともに固定支軸262に固定された板状の部材であり、ボルト等の固定具によって左側壁部201の外側(左側)に固定されている。左側壁部201の内側(右側)には、周壁部243の左側の開口縁部を塞ぐように、円板状の巻付き防止板281が設けられている。巻付き防止板281は、左側壁部201に対して、取付板280とともに固定具によって共締めされ固定されている。また、固定支軸262は、オーガ本体部241の一部をなす左端面部244に対して、ベアリング等の軸受部材282を介して貫通した状態で相対回転可能に支持されている。
【0106】
以上のような構成においては、左側から順に、固定支軸262、第4連結アーム279、第2フィンガ支持軸250B、第3連結アーム278、中間支持軸275、第2連結アーム27、第1フィンガ支持軸250A、および第1連結アーム271を含む軸構造部分が、プラットホーム31の左側壁部201に対して固定状態で設けられた部分であり、プラットホーム31内における固定軸構造部となる。この固定軸構造部の右側は、右側壁部202に対して回転可能に設けられた回転支軸261により支持されている。そして、固定軸構造部に対して、オーガ本体部241、羽根部242、および回転支軸261が、回転軸線C1回りに一体的に回転する回転部となり、複数の掻込フィンガ240は、上記の回転部の回転にともなって、偏心した位置で軸線C2回りに回転する偏心回転部となる。
【0107】
以上のような構成において、第1フィンガ支持軸250Aおよび第2フィンガ支持軸250Bの各軸に、掻込フィンガ240が支持されている。図11に示すように、本実施形態では、第1フィンガ支持軸250Aに1本の掻込フィンガ240が設けられており、第2フィンガ支持軸250Bに8本の掻込フィンガ240が設けられており、合計で9本の掻込フィンガ240が設けられている。
【0108】
第1フィンガ支持軸250Aにおいては、右側の端部に掻込フィンガ240が設けられている。第2フィンガ支持軸250Bにおいては、右側の部分に7本の掻込フィンガ240が左右方向に連続的に配置された状態で設けられており、左側の部分に1本の掻込フィンガ240が設けられている。以下では、掻込フィンガ240を特定する便宜上、9本の掻込フィンガ240を、右側から左側にかけて順に、第1~9フィンガ240a~240iとする。すなわち、第1フィンガ支持軸250Aには、第1フィンガ240aが設けられており、第2フィンガ支持軸250Bには、第2~9フィンガ240b~240iが設けられている。
【0109】
各掻込フィンガ240を支持するスライドブッシュ247は、回転軸線C1の軸方向視において、オーガ本体部241の周方向について90°間隔で設けられている。つまり、9本の掻込フィンガ240は、オーガ本体部241の周方向について、90°間隔の第1~4の位相位置のいずれかに位置している。
【0110】
本実施形態では、図11および図12に示すように、掻込オーガ37の左側面視において、オーガ本体部241の周方向について、時計方向に順番に、第1の位相位置P1に、第1フィンガ240a、第2フィンガ240bおよび第5フィンガ240eが位置している。また、第2の位相位置P2に、第3フィンガ240cおよび第7フィンガ240gが位置している。また、第3の位相位置P3に、第4フィンガ240d、第8フィンガ240hおよび第9フィンガ240iが位置している。また、第4の位相位置P4に、第6フィンガ240fが位置している。
【0111】
また、掻込オーガ37においては、オーガ本体部241の内部の構造の組み立てやメンテナンス等に用いられる複数の開口部285が設けられている。開口部285は、周壁部243に形成された孔部を蓋体286により塞いだ構造を有する。蓋体286は、周壁部243の曲面形状に沿うように湾曲しており、周壁部243に対してボルト等によって着脱可能に設けられている。本実施形態では、開口部285は、オーガ本体部241において、羽根部242および掻込フィンガ240に干渉しない位置に7箇所に設けられている。
【0112】
以上のような構成を備えた掻込オーガ37によれば、穀稈搬送装置33の搬送後端部からプラットホーム31内に送られる刈取穀稈について、複数の掻込フィンガ240による掻込み作用が得られ、プラットホーム31内においては、羽根部242による取込口205側への送り作用とともに、複数の掻込フィンガ240による取込口205側への送り込みの作用が得られる。ここで、掻込オーガ37の前側においては、周壁部243から比較的大きく突出した掻込フィンガ240により穀稈を掻き込む作用が得られ、掻込オーガ37の後側においては、掻込フィンガ240の周壁部243からの突出量が小さくなり、掻込フィンガ240と他の部材との干渉が防止される。
【0113】
以上のような構成を備えたコンバイン1は、掻込オーガ37における掻込フィンガ240の配置に関し、次のような構成を備えている。すなわち、複数の掻込フィンガ240のうち、フィーダ30の前方に位置する複数の掻込フィンガ240は、羽根部242の螺旋に沿うように螺旋状に配置されている。
【0114】
図12に示すように、掻込オーガ37において、フィーダ30の取込口205の開口範囲E1に対応したオーガ本体部241のフィーダ前方部位には、第2~8フィンガ240b~240hの7本が設けられている。これらの7本の掻込フィンガ240のうち、第3フィンガ240c、第5フィンガ240e、第6フィンガ240f、および第8フィンガ240hの4本の掻込フィンガ240が、左右の羽根部242のうち左側羽根部242Lの螺旋形状に沿うように螺旋状に配置されている。以下では、螺旋状に配置された4本の掻込フィンガ240を総称して「螺旋配置フィンガ」という。
【0115】
図12に示すように、螺旋配置フィンガは、掻込オーガ37の展開図において、回転軸線C1に垂直な面に沿う方向(図12における上下方向、以下「横断面方向」という。)に対して、左側羽根部242Lを表す直線と同じ向きに傾斜した螺旋直線L1に沿うように設けられている。図12において、螺旋直線L1は破線で示している。
【0116】
螺旋配置フィンガの各掻込フィンガ240は、図12に示す展開図において、円周状の外形における中心上またはその近傍を螺旋直線L1が通るように設けられている。ただし、螺旋配置フィンガの各掻込フィンガ240は、円周状の外形の範囲内に螺旋直線L1が通るように設けられていればよい。つまり、螺旋配置フィンガの各掻込フィンガ240は、少なくとも一部を螺旋直線L1に重ねる位置に設けられていればよい。
【0117】
図12に示す展開図において、螺旋直線L1の傾斜角度は、左側羽根部242Lの傾斜角度と略同じとなっている。ここで、傾斜角度は、掻込オーガ37の展開図において横断面方向に対してなす角度である。本実施形態では、具体的には、左側羽根部242Lの傾斜角度θ1は、略25°であり、螺旋直線L1の傾斜角度θ2は、略20°である。螺旋配置フィンガの配置を規定する螺旋直線L1の傾斜角度は、例えば、左側羽根部242Lの傾斜角度θ1に対して、傾斜角度θ1±10°の範囲内となるように、より好ましくは傾斜角度θ1±5°の範囲内となるように設定される。
【0118】
螺旋配置フィンガは、左右方向について順番に、オーガ本体部241の周方向について90°間隔に(等間隔で)位置している。すなわち、オーガ本体部241の周方向について、右側から左側にかけて順番に、第3フィンガ240cは、第2の位相位置P2に位置しており、第5フィンガ240eは、第1の位相位置P1に位置しており、第6フィンガ240fは、第4の位相位置P4に位置しており、第8フィンガ240hは、第3の位相位置P3に位置している。このように、螺旋配置フィンガは、巻き数が1となる範囲、つまりオーガ本体部241の周方向について360°の範囲にわたって設けられている。
【0119】
コンバイン1は、螺旋配置フィンガと羽根部242との位置関係について、次のような構成を有する。図12に示すように、左右方向について、螺旋配置フィンガの配置範囲G1は、羽根部非形成領域D0の範囲を含んでいる。すなわち、左右方向について、螺旋配置フィンガの配置範囲G1の左端位置Gaは、羽根部非形成領域D0の左端の位置を規定する左側羽根部242Lの右端の位置Daよりも左側に位置している。また、左右方向について、螺旋配置フィンガの配置範囲G1の右端位置Gbは、羽根部非形成領域D0の右端の位置を規定する右側羽根部242Rの左端の位置Dbよりも右側に位置している。
【0120】
このように、螺旋配置フィンガは、左右方向についての配置範囲G1の一部を、左側羽根部242Lの左右方向についての形成範囲に重複させるように設けられている。つまり、図12に示すように、螺旋配置フィンガは、左右方向について、配置範囲G1と左羽根部形成領域D2の範囲との間に重複範囲H1が存在するように設けられている。ここで、螺旋配置フィンガのうち、最も左側に位置する第8フィンガ240hは、左右方向について、左側羽根部242Lの右端の位置Daよりも左側に位置している。
【0121】
また、螺旋配置フィンガは、左右方向についての配置範囲G1を、右側羽根部242Rの左右方向についての形成範囲に重複させるように設けられている。つまり、図12に示すように、螺旋配置フィンガは、左右方向について、配置範囲G1と右羽根部形成領域D1との間に重複範囲H2が存在するように設けられている。ここで、螺旋配置フィンガのうち、最も右側に位置する第3フィンガ240cは、左右方向について、右側羽根部242Rの左端の位置Dbと略同じ位置に位置している。
【0122】
このように、螺旋配置フィンガの配置範囲G1は、右羽根部形成領域D1および左羽根部形成領域D2それぞれに対して領域的に重複した部分を有する。すなわち、螺旋配置フィンガは、その配置範囲G1によって右羽根部形成領域D1と左羽根部形成領域D2との間の領域をカバーするように配置されている。
【0123】
次に、螺旋配置フィンガと穀稈搬送装置33との位置関係について説明する。上述のとおり、左側の3つの穀稈搬送装置33は、左右方向について位置調整可能に設けられている。また4つの穀稈搬送装置33のうち、フィーダ30の前方に位置する穀稈搬送装置33は、左から2番目の穀稈搬送装置33(以下、「フィーダ前穀稈搬送装置33A」とする。)である。
【0124】
そして、螺旋配置フィンガの配置に関し、フィーダ前穀稈搬送装置33Aの位置調整による搬送通路215の調整幅内に、螺旋配置フィンガのうち少なくとも1つの掻込フィンガ240が位置している。穀稈搬送装置33について、位置調整による搬送通路215の調整幅は、搬送ラインT0の調整幅となる。
【0125】
図12において、左側の3つの穀稈搬送装置33の搬送ラインT0の調整幅を、ハッチングを施した帯状の領域部分U2,U3,U4で示している。つまり、右端位置する穀稈搬送装置33を1条目とした場合、領域部分U2,U3,U4は、それぞれ2条目、3条目、4条目の穀稈搬送装置33の搬送ラインT0の左右方向についての移動可能な範囲を表している。なお、3つの穀稈搬送装置33の調整幅の寸法は、共通の寸法V1となっている。また、右端に位置する穀稈搬送装置33は、搬送ラインT0の位置を固定としたものであるため、搬送ラインT0の調整幅を直線U1で示している。
【0126】
図12において、フィーダ前穀稈搬送装置33Aの調整幅は、領域部分U3により表されている。そして、螺旋配置フィンガのうち、右側の2本の第3フィンガ240cおよび第5フィンガ240eが、領域部分U3の領域内に位置している。また、領域部分U3の領域内においては、螺旋配置フィンガの他、第2フィンガ240bおよび第4フィンガ240dが位置している。
【0127】
なお、本実施形態では、螺旋配置フィンガのうちの2本の掻込フィンガ240が領域部分U3の領域内に位置しているが、螺旋配置フィンガのうち少なくとも1本の掻込フィンガ240が領域部分U3の領域内に位置していればよい。また、本実施形態では、左側の3つの穀稈搬送装置33が左右方向について位置調整可能に設けられているが、穀稈搬送装置33と螺旋配置フィンガとの位置関係の観点からは、少なくともフィーダ30の前方に位置する穀稈搬送装置33(フィーダ前穀稈搬送装置33A)が左右方向について位置調整可能に設けられていればよい。
【0128】
以上のように、本実施形態に係るコンバイン1は、掻込オーガ37において、羽根部242の螺旋に沿うように螺旋状に配置された4本の掻込フィンガ240を備えている。なお、羽根部242の螺旋に沿うように螺旋状に配置される掻込フィンガ240の本数は、特に限定されるものではない。羽根部242の螺旋に沿うように螺旋状に配置された複数の掻込フィンガ240は、例えば図12に示すような展開図において、左側羽根部242Lの傾斜と同様に傾斜した直線上に位置する少なくとも2本の掻込フィンガ240であればよく、好ましくは同直線上に位置する3本以上の掻込フィンガ240である。
【0129】
また、本実施形態では、螺旋状に配置された掻込フィンガ240として、オーガ本体部241の周方向について90°間隔で配置された4本の掻込フィンガ240が設けられているが、オーガ本体部241の周方向についての掻込フィンガ240の配置間隔は特に限定されるものではない。螺旋状に配置された掻込フィンガ240として、例えば周方向について60°間隔で配置された6本の掻込フィンガ240が設けられてもよい。
【0130】
また、本実施形態では、螺旋状に配置される掻込フィンガ240は、左側羽根部242Lの螺旋の向きに応じて螺旋に沿うように設けられているが、右側羽根部242Rの螺旋に沿うように設けられてもよい。
【0131】
図6図13図14に示すように、本実施形態に係る刈取部3において、フィーダ30の取込口205には、ガイド部材100が設けられている。ガイド部材100は、取込口205の上部に設けられており、掻込オーガ37により掻き込まれる作物をフィーダ30に案内する案内板である。
【0132】
ガイド部材100は、板状の部材を所定の形状に屈曲形成した部材であり、正面視で左右方向を長手方向とした矩形状の形状を有し、左右対称または略左右対称に形成されている。ガイド部材100は、矩形状の開口形状をなす取込口205の上縁部を前側から塞ぐように設けられている。ガイド部材100は、上下方向について一定の幅を有し、取込口205の上縁部を左右方向について全体的に被覆するように設けられている。
【0133】
ガイド部材100は、その本体部分であるガイド面部101と、ガイド面部101の左右両側に設けられた左右の側面部102とを有する。また、ガイド部材100は、後壁部203の後壁面部203bにおける取込口205の開口縁部203cに対する取付け部分として、ガイド面部101の上縁部に沿ってガイド面部101の上側に形成された上方固定面部103と、左右の側面部102の後縁部に沿って側面部102に対して屈曲形成された側方固定面部104とを有する。
【0134】
ガイド面部101は、後壁面部203bに対して、上側から下側にかけて徐々に前側に離間するように傾斜状に設けられている。前傾姿勢状のプラットホーム31において、ガイド面部101は、鉛直状に垂下した状態の面部となる(図14参照)。側面視においてガイド面部101が後壁面部203bに対してなす角度は、例えば20°程度である。
【0135】
左右の側面部102は、ガイド面部101の左右の縁部においてガイド面部101とともに直角状をなすように屈曲形成された面部である。左右の側面部102は、後壁面部203bに対するガイド面部101の傾斜に対応して、後壁面部203bとガイド面部101との間の隙間を覆うように後下側の角部を直角部とした略二等辺三角形状を有する。
【0136】
ガイド部材100は、後壁面部203bの開口縁部203cに対して、前側から上方固定面部103および側方固定面部104をボルト105により固定させている。ボルト105は、開口縁部203cを貫通するとともに、開口縁部203cの後側に設けられたナット部106に螺挿されている。ボルト105による固定部は、上方固定面部103において左右両側および中央の3箇所、各側方固定面部104において1箇所、計5箇所設けられている。
【0137】
以上のように取込口205にガイド部材100を設けた構成によれば、取込口205の上部がガイド部材100により覆われるため、フィーダハウス35内からプラットホーム31側へと穀稈が戻ること、つまり穀稈の逆流が防止される。具体的には次のとおりである。
【0138】
図14に示すように、コンベヤ36は、刈取部入力軸38(図4参照)が左側面視で反時計方向に回転することで正転方向に駆動し(矢印R1参照)、掻込オーガ37によりフィーダハウス35内に取り込まれた穀稈をスラット96に引っかけて斜め後上方に向けて搬送する。すなわち、コンベヤ36の正転方向の駆動時においては、スプロケット97および前ドラム98の下側に位置する直線状のチェン95の経路部分が、前側から後側に移動する往路部分となり、スプロケット97および前ドラム98の上側に位置する直線状のチェン95の経路部分が、後側から前側に移動する復路部分となる。
【0139】
このようなコンベヤ36による穀稈の搬送態様において、前ドラム98の上側の部分では、後方へ折り返すに際して後側から前側に移動するスラット96により、スラット96に引っかかった穀稈が前ドラム98と連れ回りし、プラットホーム31内の掻込オーガ37側に向けて放たれて逆流する場合がある(矢印R2参照)。そこで、コンベヤ36により逆流しようとする穀稈の逆流の経路上にガイド部材100を設けることにより、逆流しようとする穀稈がせき止められる。ガイド部材100によりせき止められた穀稈は、落下してコンベヤ36によりフィーダ30内に取り込まれる。このように、ガイド部材100は、フィーダ30からプラットホーム31への穀稈の逆流を防止する逆流防止板として機能する。
【0140】
以上のような構成を備えた本実施形態に係るコンバイン1によれば、刈り取った作物を掻込オーガ37によりスムーズにフィーダ30へと取り込むことができ、作物を停滞させることなく脱穀部7へと供給することができる。
【0141】
掻込オーガ37は、オーガ本体部241のフィーダ前方部位において、螺旋配置フィンガを有する。このような構成によれば、掻込フィンガ240の本来の掻込みの作用に加えて、掻込フィンガ240の螺旋状の配置による送り作用が得られる。これにより、フィーダ30の取込口205の前方において、刈り取った穀稈を掻込フィンガ240に対して絡み付きにくくすることができ、穀稈の停滞や詰まりを抑制することができ、穀稈をスムーズにフィーダ30へと引き継ぐことができる。
【0142】
掻込オーガ37において、羽根部非形成領域D0の部位は、羽根部242が無いことから穀稈がうまく倒れずに穀稈が滞留し、間欠的な搬送となりやすい部位であり、その一方で、羽根部242を羽根部非形成領域D0側に延長することで左右の羽根部242間の間隔が狭くなることは、穀稈の詰まりを生じさせる原因となり得る。そこで、羽根部非形成領域D0を含む領域において、掻込フィンガ240を羽根部242に沿うように螺旋状に配置することにより、羽根部242が無い領域でも穀稈を倒す作用を得ることができ、穀稈の滞留を抑制することができるとともに、左右の羽根部242の間隔を確保できることから穀稈の詰まりを抑制することができる。これにより、穀稈の良好な取込み性・搬送性を得ることができる。
【0143】
また、コンバイン1において、刈取部3は、掻込オーガ37の前方に複数の穀稈搬送装置33を備えたロークロップヘッダとして構成されている。このような構成によれば、例えば大豆や小豆等の豆類の刈取り作業において、掻込オーガ37の螺旋配置フィンガによる穀稈の良好な取込み性・搬送性を効果的に得ることができる。
【0144】
また、刈取部3において、フィーダ前穀稈搬送装置33Aは、左右方向に位置調整可能に設けられており、フィーダ前穀稈搬送装置33Aの搬送ラインT0の調整幅内に、螺旋配置フィンガの一部の掻込フィンガ240が位置している。このような構成によれば、条間寸法T1の調整にともなうフィーダ前穀稈搬送装置33Aの位置の変更に関わらず、掻込オーガ37の螺旋配置フィンガによる穀稈の良好な取込み性・搬送性を得ることができる。
【0145】
また、螺旋配置フィンガは、その配置範囲G1の左側を、左側羽根部242Lの形成範囲に重複させるように設けられている。このような構成によれば、左側羽根部242Lによる送り作用と螺旋配置フィンガによる作用とを連続的かつ相乗的に穀稈に対して作用させることができるので、掻込オーガ37の螺旋配置フィンガによる穀稈の良好な取込み性・搬送性を効果的に得ることができる。
【0146】
また、本実施形態では、螺旋配置フィンガは、その配置範囲G1の右側を、右側羽根部242Rの形成範囲に対しても重複させるように設けられている。このような構成によれば、右側羽根部242Rによる送り作用と螺旋配置フィンガによる作用とを相乗的に穀稈に対して作用させることができるので、掻込オーガ37の螺旋配置フィンガによる穀稈の良好な取込み性・搬送性を効果的に得ることができる。
【0147】
また、刈取部3において、取込口205には、刈り取った穀稈をフィーダ30に案内するガイド部材100が設けられている。このような構成によれば、フィーダ30からプラットホーム31への穀稈の逆流を防止することができるので、刈り取った穀稈を効率良くフィーダ30内に取り込むことができ、穀稈を停滞させることなく脱穀部7へと供給することができる。
【0148】
また、ガイド部材100において、ガイド面部101は、プラットホーム31の後壁面部203bに対する傾斜により、鉛直状に垂下した面部として設けられている。このような構成によれば、ガイド部材100に当たった穀稈をガイド面部101から下方の位置へと案内することができる。これにより、ガイド部材100とコンベヤ36との間で穀稈が詰まることを抑制することができる。
【0149】
また、ガイド部材100は、前後方向について、逆流する穀稈を受けるガイド面部101の下方への延長線X1を、掻込オーガ37のオーガ本体部241に対して後方に位置させるように設けられている。このような構成によれば、ガイド面部101に沿って落下する穀稈がオーガ本体部241に接触することを抑制することができ、穀稈の逆流を効果的に抑制することができる。
【0150】
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係るコンバインは、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
【符号の説明】
【0151】
1 コンバイン
3 刈取部
7 脱穀部
30 フィーダ(供給搬送装置)
31 プラットホーム
33 穀稈搬送装置
33A フィーダ前穀稈搬送装置
34 刈取装置
36 コンベヤ
37 掻込オーガ
100 ガイド部材
200 ロークロップユニット
205 取込口
215 搬送通路
220 ベルト搬送体(搬送体)
240 掻込フィンガ
241 オーガ本体部
241a 外周面
242 羽根部
242L 左側羽根部(第2の羽根部)
242R 右側羽根部(第1の羽根部)
D2 左羽根部形成領域
G1 配置範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14