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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】圃場作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20250325BHJP
【FI】
A01B69/00 303V
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021183665
(22)【出願日】2021-11-10
(65)【公開番号】P2023071074
(43)【公開日】2023-05-22
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】疋田 康貴
(72)【発明者】
【氏名】絹田 圭志
(72)【発明者】
【氏名】小田 佳穂
【審査官】小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-031558(JP,A)
【文献】特開2018-148857(JP,A)
【文献】特開2020-022398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0357269(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部に支持された圃場作業部と、
前記圃場作業部の動力を接続状態と切断状態に切り替える作業クラッチと、を含む圃場作業機であって、
前記圃場作業機は、前記圃場作業機の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記走行部の目標走行経路を設定する目標走行経路設定部と、
前記位置情報取得部が取得した位置情報に基づいて目標走行経路に沿って前記走行部を操向させる自動操向制御を実行する自動操向制御部と、
前記走行部が旋回動作することを検出する旋回検出部と、
作業者が、前記作業クラッチが前記切断状態から前記接続状態へ切り替えられてから前記走行部が所定の連動許可距離を走行した後の所定距離を任意に設定可能な所定距離設定部と、
前記走行部の旋回動作と前記自動操向制御との連動の可否を判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、作業者が前記所定距離設定部によって任意に設定した前記所定距離を前記走行部が走行することに基づいて前記判定を行うものであり、
前記走行部が旋回動作を開始した後、前記作業クラッチが切断状態から接続状態へ切り替えられてから、前記判定部の自動操向許可判定に基づいて、前記自動操向制御部による、自動操向制御を実行する、圃場作業機。
【請求項2】
前記判定部は、機体の自動操向に対する条件に基づいて判定する、請求項1に記載の圃場作業機。
【請求項3】
前記判定部は、前記所定距離に代えて、作業者が所定時間設定部によって任意に設定した所定時間を前記走行部が走行することに基づいて前記判定を行うものである、請求項1または2に記載の圃場作業機。
【請求項4】
前記自動操向制御を実行することを報知する報知手段を備える、請求項1~3のいずれか一つに記載の圃場作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行しながら圃場へ苗を移植する圃場作業機に関し、特に、目標方位に沿って自律走行を行う圃場作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、位置情報を取得し、設定した目標方位に沿って自動直進するよう制御する移植機が、特開2020-31558号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1では、旋回動作開始後に作業クラッチが「入」になったことを条件として自動直進制御が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-31558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の、位置情報を取得し、設定した目標方位に沿って自動直進するよう制御する移植機は、上記のように構成されていた。しかしながら、旋回動作は作業者の運転の癖などによって左右されるため、旋回動作後の作業クラッチ「入」時点では自動直進を開始するのに条件が適していないことがある。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、旋回開始後に、確実に自動直進を開始することが可能な圃場作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る圃場作業機は、走行部に支持された圃場作業部と、圃場作業部の動力を接続状態と切断状態に切り替える作業クラッチと、を含む。圃場作業機は、圃場作業機の位置情報を取得する位置情報取得部と、走行部の目標走行経路を設定する目標走行経路設定部と、取得した位置情報に基づいて目標走行経路に沿って走行部を操向させる自動操向制御を実行する自動操向制御部と、走行部が旋回動作することを検出する旋回検出部と、作業者が、作業クラッチが切断状態から接続状態へ切り替えられてから走行部が所定の連動許可距離を走行した後の所定距離を任意に設定可能な所定距離設定部と、走行部の旋回動作と自動操向制御との連動の可否を判定する判定部と、を備え、判定部は、作業者が所定距離設定部によって任意に設定した所定距離を走行部が走行することに基づいて判定を行うものであり、走行部が旋回動作を開始した後、作業クラッチが切断状態から接続状態へ切り替えられてから判定部の自動操向許可判定に基づいて自動操向制御を実行する。
【0007】
この発明によれば、走行部が旋回動作を開始した後、作業クラッチが切断状態から接続状態へ切り替えられてから判定部の自動操向許可判定に基づいて自動操向制御を実行する。
【0008】
その結果、旋回開始後に、任意の所定距離を走行部が走行するまでに作業者はハンドル等を操作して自動操向制御までに圃場作業機の条件を整えることが可能になるため、確実に自動直進を開始することが可能な圃場作業機を提供することができる。
【0009】
好ましくは、判定部は、機体の自動操向に対する条件(目標走行経路に対する機体の向きなど)に基づいて判定する。
【0010】
判定部は、作業者が所定時間設定部によって任意に設定した所定時間を走行部が走行することに基づいて判定してもよい。
【0011】
この発明の一実施の形態によれば、自動操向制御を実行することを報知する報知手段を備えてもよい。
【0012】
自動操向制御が実行されることを報知することで作業者は圃場作業機の動作を把握することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、走行部が旋回動作を開始した後、作業クラッチが切断状態から接続状態へ切り替えられてから判定部の自動操向許可判定に基づいて自動操向制御を実行する。作業クラッチ「入」から任意の所定距離を走行部が走行するまでに作業者はハンドル等を操作して自動操向制御までに圃場作業機の条件を整えることが可能になるため、旋回開始後に、確実に自動直進を開始することが可能な圃場作業機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】圃場作業機の側面図
図2】圃場作業機の平面図
図3】植付部の一側面図(機体右側面図)
図4】植付部の他側面図(機体左側面図)
図5】ダッシュボードを示す図
図6】スイッチボックスを示す図
図7】制御装置の制御ブロック図
図8】自動旋回を示す図
図9】旋回時作業機自動モードのアイコンを有するモニタを示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
<全体構成>
図1及び図2を参照して、圃場作業機1の全体構成について説明する。圃場作業機1は、走行機体(走行部)2と、その後部に装着される圃場作業部(植付部)3とを備え、走行機体2によって走行しつつ圃場作業部3によって植付作業を行うように構成されている。なお、本実施形態では、圃場作業機1の植付条数が6条である場合を例に示しているが、勿論、圃場作業機1の植付条数は何条であってもよい。
【0017】
走行機体2は、エンジン4、エンジン4からの動力を変速するトランスミッション5、エンジン4及びトランスミッション5を支持する機体フレーム6、エンジン4及びトランスミッション5から伝達される動力によって駆動される前輪7及び後輪8等を備える。
【0018】
エンジン4及びトランスミッション5からの動力は、それぞれフロントアクスルケース9、リアアクスルケース10に伝達される。フロントアクスルケース9は、機体フレーム6の前部に支持されるとともに、その左右両端部に前輪7が支承される。同様に、リアアクスルケース10は、機体フレーム6の後部に支持されるとともに、その左右両端部に後輪8が支承される。機体フレーム6の上部は、ステップ11によって被覆されており、作業者は、ステップ11上を移動可能である。
【0019】
また、エンジン4及びトランスミッション5からの動力は、株間設定器9a(図7参照)を経て圃場作業部3に伝達される。株間設定器9aは、走行機体2の進行方向に沿って植え付けられる苗の植付間隔を無段階に変更可能に構成される。後述の制御装置70は、株間設定器9aと接続され、苗の植付間隔を取得可能に構成される。
【0020】
また、走行機体2の圃場内での測位や実車速の算出のために、走行機体2には、測位装置としてGNSS受信機(位置情報取得部)49が設けられている。
【0021】
走行機体2の前後中途部に運転席12が配置され、その前方に操向ハンドル13、操作ペダル14、及び、ダッシュボード15等が設けられる。ダッシュボード15には、操向ハンドル13に加えて各種操作用の操作具、表示装置が配置されている。
【0022】
ここで、GNSS受信機49について説明する。走行機体2の前方には、予備苗載台本体部17a、および予備苗載台フレーム17bが設けられ、これから上方に延びるGNSS受信機支持フレーム50の上にGNSS受信機49が載置される。走行機体2は、GNSS受信機49によって圃場内での測位や実車速の算出が可能となっている。
【0023】
圃場作業部3は、走行機体2に対して、昇降リンク機構20を介して連結されている。昇降リンク機構20は、上リンク21及び左右一対の下リンク22、昇降シリンダ等を備える。昇降シリンダによって下リンク22、上リンク21を回動させて圃場作業部3を昇降させる。
【0024】
圃場作業部3は、植付アーム31、植付爪32、苗載台33、苗載台33を横方向(機体幅方向)に往復動させる横送り機構、苗載台33に置かれる苗マットを下端側に向かって縦方向(機体前後方向)に搬送する縦送り機構、フロート34等を備える。植付爪32は、植付アーム31に取り付けられている。本実施形態では、圃場作業機1の植付条数が6条であるため、6つの植付アーム31と12の植付爪32とを備えている。圃場作業部3は、トランスミッション5から後方に向けて延出されるPTO軸16によって駆動される。
【0025】
より詳細には、PTO軸16から植付センターケース35を介して圃場作業部3に設けられる3つの植付伝動ケース36に動力が伝達されて、3つの植付伝動ケース36の各々から植付伝動ケース36毎の左右一対の植付アーム31及び左右一対の植付爪32に動力が分配される。植付センターケース35には、作業クラッチ18が設けられ、作業クラッチ18はエンジン4から圃場作業部3への動力の伝達を断接するように構成される。
【0026】
植付アーム31は、植付伝動ケース36から伝達される動力によって回転する。植付爪32には、苗載台33から苗が供給される。植付アーム31の回転運動に伴って、植付爪32が圃場内に挿入され、所定の植え付け深さとなるように苗が植え付けられる。なお、本実施形態では、ロータリ式の植付爪を採用しているが、クランク式のものを用いても良い。
【0027】
苗載台33は、板状の部材によって構成され、機体側面視において前高後低状に傾斜するように配設される。苗載台33の後面には、苗マットMを載置する載置面が植付アーム31の数(圃場作業機1の条数)に応じて機体幅方向に並べて配置される。本実施形態の圃場作業機1は、植付条数が6条であるため、載置面が6つ形成される。載置面には、苗マットMが傾斜した状態で置かれる。
【0028】
フロート34は、植付フレーム37(図3および図4参照)に取り付けられる。具体的には、フロート34の前端は植付フレーム37に対して上下方向に揺動可能に支持され、フロート34の後端は植付フレーム37に設けられる回動支軸38(図7参照)に昇降リンク機構20を介して昇降可能に取り付けられる。
【0029】
フロート34において、植付爪32の植付位置の直前方には、圃場表面(田面)を検出する圃場表面検出センサ40(図7参照)が設けられる。センサ40は、前方から後方に向けて延出される。センサ40は、植付フレーム37にピッチング方向に沿う軸芯周りで揺動自在(つまり、上下方向に揺動自在)に支持され、その揺動支点を中心として重力によって垂れ下がるため、先端部が圃場表面に接触した状態が維持される。つまり、圃場作業機1は、センサ40の先端部が常に圃場表面に追従する状態で進行する。
【0030】
図3を用いて、苗載台33を機体幅方向に往復動させる横送り機構について説明する。
【0031】
図3に示すように、植付センターケース35から機体幅方向一側(機体左側)に向けて送りネジ41が延出される。送りネジ41の外周面には、軸芯方向に沿って交差状の溝が形成される。送りネジ41には、該溝に沿って摺動可能な滑り子42及び滑り子42を支持する滑り子受け43が設けられる。滑り子受け43は略T字状に形成される。滑り子受け43には、送りネジ41が貫設されるとともに、送りネジ41の溝に沿って摺動可能に滑り子42が収容される。
【0032】
苗載台33の前面(載置面の裏面)の下部には、下部レール44が取り付けられる。下部レール44は、機体幅方向を長手方向として配置される。下部レール44には、支持アーム45を介して滑り子受け43が固定される。
【0033】
下部レール44の下方には、下部レール44を機体幅方向に摺動可能に支持するガイドレール46が設けられる。ガイドレール46は、機体幅方向を長手方向として配置される。ガイドレール46は、下部レール44に係合する係合部46aと、係合部46aから苗載台33の底部の形状に沿って延出される延出部46bによって構成される。下部レール44がガイドレール46の係合部46aと係合することで、下部レール44はガイドレール46に沿って機体幅方向に摺動可能に構成される。ガイドレール46には、下部レール44がガイドレール46から外れることを阻止するためのストッパー47がボルトによって着脱可能に取り付けられる。
【0034】
植付センターケース35の送りネジ41が延出される側面には、苗載台33の横送り量を調節する横送り切替レバー48が設けられている。横送り切替レバー48には、横送り切替レバー48の位置を検出することで、苗載台33の横送り回数を検出する横送り回数検出センサ48a(図7参照)が設けられる。
【0035】
制御装置70は、横送り回数検出センサ48aと接続され、苗載台33の横送り回数を検出可能に構成され、横送り回数から後述する横取量を検出可能に構成される。また、横送り切替レバー48には、アクチュエータ48b(図7参照)が設けられる。アクチュエータ48bが駆動制御されることで、横送り切替レバー48は操作可能に構成される。したがって、アクチュエータ48bにより横送り切替レバー48が操作されることで、苗載台33の横送り量を調節し、苗載台33の横送り回数を変更することができる。
【0036】
苗載台33の横送り回数が変更されることで、苗載台33の横送り量(横送り速度)が変更され、植付爪32による苗マットMからの横取量を変更することができる。ここでの、横取量とは、植付爪32によって苗マットMを平面視で走行機体2の機体幅方向に掻き取る幅を指す。横取量が調節されることで、植付爪32による苗マットMからの苗取量を変更可能に構成される。
【0037】
図4を用いて、苗載台33に置かれる苗マットMを下方に送る縦送り機構について説明する。
【0038】
図4に示すように、植付センターケース35から機体幅方向他側(機体右側)に向けて、縦送りカム51が固定される縦送りカム軸52が延出される。縦送りカム軸52は、送りネジ41と連結されており、ストローク端に到達すると、従動カム53と当接される。従動カム53は、苗載台33下部で搬送ベルト54を駆動する搬送ベルト駆動軸55上に設けられている。縦送りカム軸52の回動に伴って、縦送りカム51と従動カム53とが当接されると、従動カム53は回動する。従動カム53の回動に伴って、搬送ベルト駆動軸55が回動されることで、搬送ベルト54が循環されて搬送ベルト54上に載置される苗マットMを所定の距離だけ搬送する。
【0039】
各植付伝動ケース36の前上部に苗台レール支持軸56が左右方向に回動自在に支持される。苗台レール支持軸56からは適宜間隔をあけて複数の支持フレーム57が後上方に突設され、該支持フレーム57にガイドレール46が左右水平方向に支持される。また、苗台レール支持軸56から前上方にアーム58が取付けられる。アーム58の他端には、苗台レール支持軸56の回転角度を検出する回転角度検出センサ59(図7参照)が設けられる。回転角度検出センサ59は、植付フレーム37に取り付けられる。苗台レール支持軸56には、アクチュエータ56a(図7参照)が設けられている。制御装置70は、回転角度検出センサ59と接続され、苗マットMからの縦取量を検出可能に構成される。
【0040】
アクチュエータ56aが駆動制御されることで、苗台レール支持軸56は回転可能に構成される。したがって、苗台レール支持軸56の回転に伴って支持フレーム57が回動されることで、ガイドレール46(苗載台33)が上下に移動(昇降可能に構成)され、植付爪32を支持する植付伝動ケース36と苗載台33との距離を変更することができる。
【0041】
ゆえに、植付爪32による苗マットMからの縦取量を変更することができる。ここでの、縦取量とは、苗マットMを平面視で走行機体2の進行方向に掻き取る幅を指す。縦取量が調節されることで、植付爪32による苗マットMからの苗取量を変更可能に構成される。
【0042】
また、苗台レール支持軸56は、連動ワイヤ60を介して従動カム53と接続されている。苗台レール支持軸56の回転に伴って、連動ワイヤ60に係る張力によって従動カム53を所定の角度だけ回転させることにより、苗マットMからの縦取量に応じて搬送ベルト54による送り量を調節している。
【0043】
以上の構成において、エンジン4からの動力が植付センターケース35を介して送りネジ41に動力が伝達されることで、送りネジ41の溝に対して滑り子42が摺動し、これとともに滑り子受け43が機体幅方向に摺動する。滑り子受け43が摺動されることで、支持アーム45を介して下部レール44がガイドレール46に沿って摺動し、これとともに苗載台33が機体幅方向に摺動する。そして、苗載台33が機体幅方向のストローク端に到達すると、縦送りカム51が従動カム53と当接して搬送ベルト駆動軸55が回動することで、搬送ベルト54が循環される。
【0044】
送りネジ41の溝に沿って滑り子42が往復動することで、苗載台33はガイドレール46に沿って往復動する。横送り機構によって、苗載台33がガイドレール46に沿って往復動することで、苗載台33に載置される苗マットMの機体幅方向一側(機体左側)から機体幅方向他側(機体右側)又は機体幅方向他側(機体右側)から機体幅方向一側(機体左側)に向けて植付爪32が苗を掻き取って、移植することを可能としている。植付爪32が苗マットMの機体幅方向一側(機体右側)又は機体幅方向他側(機体左側)にある苗を掻き取ると、縦送り機構によって、搬送ベルト54が作動して苗マットMを載置面の下端部(後端部)に向けて搬送することを可能としている。以上のように、苗マットMが機体幅方向に往復動されて、適宜下方に搬送されることで、苗載台33に載置される苗マットMから苗を掻き取り可能としている。
【0045】
次に、図5を参照して、ダッシュボード15について説明する。ダッシュボード15の左右中央部には、操向ハンドル13が配置され、操向ハンドル13の左方には、主変速レバー61が設けられ、操向ハンドル13の右方には、植付昇降レバー62が設けられる。操向ハンドル13の下方には、所定の条毎の植付爪32の駆動を停止する条止めスイッチ63、最高速度を設定する速度設定ボリューム64、フロート34の油圧感度を設定する感度設定ボリューム65、植深さや苗マットMからの苗取量(縦取量や横取量(横送り回数))等の各種の項目を設定するセレクトダイヤル66等が設けられる。操向ハンドル13の前方には、セレクトダイヤル66等の設定、走行機体2の速度等を表示するモニタ67が設けられる。
【0046】
セレクトダイヤル66は、植深さや苗取量(縦取量、横取量(横送り回数))、作業速度等の作業内容に関する各種の作業条件、苗継警報の報知基準値等を設定可能なダイヤルである。作業者は、セレクトダイヤル66を左右に回転させて各種の項目から設定したい項目を選択し、セレクトダイヤル66を押すことで決定する。例えば、苗取量として縦取量を設定したい場合、セレクトダイヤル66を左右に回転させて縦取量の項目を選択し、セレクトダイヤル66を押すことで該項目に決定して、セレクトダイヤル66を左右に回転させて縦取量の調節量を選択し、セレクトダイヤル66を押すことで該調節量に縦取量を設定する。セレクトダイヤル66は、制御装置70(図7参照)と接続される。
【0047】
すなわち、圃場面積と使用する苗マット枚数の入力に基づいて、圃場作業機1は、自動で縦取り量と横送り量を制御して苗を圃場に植付ける。具体的には、圃場作業機1は、苗載台33上の苗マットMから苗を掻き取って圃場に移植する植付部(圃場作業部3)と、苗の縦取量を設定する縦取量設定部と、苗の横取量を設定する横取量設定部(セレクトダイヤル66)と、縦取量設定部および横取量設定部で設定した苗の縦取量および横取量を表示する表示装置(モニタ67)と、を備える。
【0048】
次に、スイッチボックスについて説明する。図6は、スイッチボックスを示す図である。圃場作業機1は、自動操向に関する操作を行うためのスイッチボックス(操作部材)80と、そのスイッチボックス80を支持する支持アーム24とを備える。スイッチボックス80は、支持アーム24を介して予備苗載台本体17aの予備苗載台フレーム17bに固定されている。これにより、スイッチボックス80を強固に支持することができる。スイッチボックス80は、操作パネルとしてのダッシュボード15よりも機体幅方向外側に配置されている。スイッチボックス80は、運転席12の右側に配置されているが、左側に配置してもよい。但し、操作ペダル14と同じ側(一般には右側)にスイッチボックス80を配置することにより、直進作業を開始する際に加速するのと同じタイミングで、後述するスイッチボックス80のAUTOボタン81を押しやすくなり、操作性が向上する。
【0049】
なお、スイッチボックス80は、走行部2の目標走行経路を設定する目標走行経路設定部として作動する。
【0050】
支持アーム24は、予備苗載台フレーム17bに固定されたステー状の上腕部25aと、その上腕部25aに対してヒンジ25bを支点にして水平方向に回動する前腕部25cと、前腕部25cに対してヒンジ25dを支点にして水平方向に回動するホルダ25eとを備える。スイッチボックス80は、ホルダ25eに取り付けられている。
【0051】
本実施形態では、図6に示すように、スイッチボックス80が、自動操向の開始を指示するための指示具であるAUTOボタン81と、後述する報知部(報知手段)68を構成する表示具としての表示ランプ82とを有する。更に、スイッチボックス80は、圃場作業機1がA点とB点の2点間を基準として移動するときの基準線を設定するために、A点の位置情報の登録操作を行うための指示具であるAボタン83と、B点の位置情報の登録操作を行うための指示具であるBボタン84とを備える。AUTOボタン81は、スイッチボックス80の操作面80fの中心部に配置されており、その左上方に表示ランプ82が配置されている。Aボタン83及びBボタン84は、AUTOボタン81の下方で左右に並べて配置されている。
【0052】
AUTOボタン81は、自動操向を開始するとき及び停止するときに操作される。AUTOボタン81は、Aボタン83及びBボタン84に比べて操作頻度が高いため、押圧操作が容易になるよう、Aボタン83及びBボタン84よりも正面視で大きく形成されている。また、AUTOボタン81は、Aボタン83及びBボタン84よりも大きく突出している。Aボタン83とBボタン84とは同一形状のボタンであり、左右対称に配置されている。AUTOボタン81の周囲にはリング状の発光部85が設けられている。発光部85は、その光色や点灯パターンによって、自動操向に関する様々な状態を作業者に知らせる機能を有する。
【0053】
スイッチボックス80は、基本的に、自動直進のための目標方位を作成する機能を有する。そのため、上記したAボタン及びBボタン83,84を用いて、始点位置、終点位置を取得する操作や、作成した目標方位に沿って圃場作業機の自動直進を開始/終了させる操作等を行う。これらの操作は作業者が手動で行う。
【0054】
この実施の形態に係る圃場作業機1全体を制御する、制御装置70の制御ブロックを図7に示す。
【0055】
次に、この実施の形態における圃場作業機1の動作について説明する。この実施の形態においては、圃場作業機1の直進アシストモードと旋回時作業機自動モードとの連動時に、旋回時作業機自動モードによる、旋回後の作業クラッチ「入」、「自動操向準備完了」で、操作部材80のAUTOボタン81を押さなくても自動操向「入」となる自動操向入モードを有する。そこで、まず、この実施の形態における前提となる、直進アシストモードと、旋回時作業機自動モードについて説明する。
【0056】
直進アシストモードとは、圃場作業機1の直進移動をアシストするモードである。具体的には、上記した圃場作業機1の移動の始点となるA点と、圃場作業機1の移動の終点となるB点とを、上記した操作部材80のAボタン83とBボタン84で設定して、移動基準線を登録する。その後自動(AUTO)ボタン81を押せば、登録された移動基準線に平行に、圃場作業機1は操舵を開始するモードである。
【0057】
旋回時作業機自動モードとは、圃場の端で圃場作業機1が、旋回時の一連の操作を自動化するモードである。旋回時作業機自動モードにおいては、作業者がハンドルを切ると、植付けが停止し(作業クラッチ「切」)、植付部3が上昇し、マーカーを収納する、という作業を行なう。次に、作業者がハンドルを戻すと、植付部3が下降し、マーカーが出て、植付け作業を開始する(作業クラッチ「入」)モードである。
【0058】
次に、直進アシストモードと旋回時作業機自動モードとの連動時の自動操向入(自動旋回処理)モードについて説明する。
【0059】
ここでは、旋回時作業機自動モード終了後、圃場作業機1は、作業クラッチ「入」から0~10mの間、「連動許可距離」フラグをONとする。その間に自動操向準備が完了した状態で、一定以上操作ペダル14を踏み込むと、連動タイミング0~6m走行後、1.0s間切替アナウンスを報じ、自動操向をONする。
【0060】
図8は、自動旋回処理モードの内容を説明する図である。図8の左側の上向き矢印の部分を参照して、圃場作業機1は、自動操向「入」の状態で圃場を基準線に沿って直進する。圃場の端部(植付け終了・植付け開始位置)に近づいたとき、作業者は、AUTOボタン81を押し下げる(図中位置(A))。それに応じて、圃場作業機1は、180度旋回する(図中、A位置からB位置まで)。
【0061】
なお、本発明では、旋回走行は手動が前提なので、位置Aから作業者がハンドルを操作して旋回を開始する。また、実施の形態では、位置Aからのハンドル操作を検知して自動操向を自動的に終了するため、AUTOボタンの押下はしない。
【0062】
旋回走行が始まると、作業クラッチ18を「切」にして植付部3の作業を止めた後、作業クラッチ18を「入」にして植付部3の作業ができるようにする。
【0063】
なお、この圃場作業機1の旋回の検出は、旋回検出部29(図7参照)で行う。
【0064】
その後、圃場作業機1は、まず、連動許可距離(0~10m程度)移動し、この間(図中(C)の間)に、走行部2の旋回動作と自動操向制御との連動の可否を判定する判定部71(図7参照)が、走行部2の自動操向許可の可否を判定する。その後、連動タイミング距離(0~6m程度)移動し(図中(D)の間)、連動アナウンス(1.0秒)を行なう(図中(E))。
【0065】
ここで、図中(B)の位置から図中(C)の位置までの間(図中Fで示す間、自動操向準備完了期間)に自動操向の準備が完了する。
【0066】
すなわち、走行部2が旋回動作を開始した後、作業クラッチ18が切断状態から接続状態へ切り替えられてから、判定部71の自動操向許可判定に基づいて自動操向制御部28(図7参照)による自動操向制御を実行する。
【0067】
ここでは、自動操向に対する条件を、判定部71が連動許可距離としての0~10mを走行する間に判定している。なお、ここで判定部71が判定しているのは、圃場作業機1が、旋回後、自動操向に入れる状態か否か(例えば、圃場作業機1が所定の方向(目標走行経路に沿っているか否か等の機体の向きなど)である。
【0068】
図8中の(C)で示した最初の位置で作業クラッチ18が「入」になり、操作ペダル14の踏み込み量が一定以上継続すると、図中(D)の連動タイミングに入る。
【0069】
この連動タイミングは、作業者が、所定距離設定部30(図7参照)によって任意に設定可能な所定距離(0~6m)によって設定される。この連動タイミングは、圃場作業機1が所定の方向には向いているが、それ以前に植付けた隣の苗に近づきすぎて踏みそうだとか、離れすぎであるか等を、作業者が判断するために設けている。
【0070】
所定距離設定部30によって任意に設定した所定距離の走行は、作業者が自動操向への移行や機体の走行自体を中止することができる距離であり、機体の各種状態を検知して作業者が自動操向へ移行する意思があることを判定する。例えば、作業クラッチ18が「入」、所定距離走行中の機体の速度が所定値以上を継続しているなどの条件を適宜採用することが考えられる。
【0071】
また、一定以上操作ペダル14を踏み込むという条件としては、操作ペダルの踏み込み量が一定値以上、例えば、15%以上が継続されることを条件としてもよい。
【0073】
さらに、判定部71は、所定距離に代えて、作業者が所定時間設定部72(図7参照)によって任意に設定した所定時間を走行部が走行することに基づいて判定してもよい。
【0074】
自動操向制御部28による自動操向制御を実行することを報知する報知手段(報知部)68を備えてもよい。
【0075】
旋回時作業機自動モードに連動して、自動直進を「入」にする、旋回に伴う作業クラッチ18の自動「入」機能を有してもよい。これにより、通常、自動直進を開始させるために必要だった作業者の操作が簡略され負担が軽減する。
【0076】
この連動機能(オートターン機能)は連動させる/連動させないの切替えが可能で、「連動させる」状態のときはモニタ67にアイコンを点灯させ作業者に報知してもよい。
【0077】
なお、旋回動作後の作業クラッチ「入」と自動直進「入」の連動機能である、通称オートターンは、図示の無い、「連動させる」または「連動させない」をスイッチで選択可能であるようにしても良い。「連動させる」状態のとき、図9に示すように、モニタ67に、「連動させる」ことを表示する連動アイコン67aを点灯させてもよい。
【0078】
なお、上記実施の形態では、旋回時作業機自動モード終了後、自動操向をONするタイミングについて、具体的な数値を記載したが、これらの数値は、例示であって、これらに限定されるものでは無い。
【0079】
なお上記実施の形態においては、圃場作業機が前進する場合についてのみ説明したが、これに限らず、自動操向中で後進を伴う自動旋回(ドン付バック)を行った場合のみ、その旋回後のPTOが切→入になるタイミングと同時に自動直進を開始するようにしてもよい。
【0080】
さらに、従来、自動操向状態を作業者の意思で中断する方法は限られていたが、これに限らず、作業クラッチ18の入切、作業機上昇下降操作により自動操向開始状態が解除されるようにしても良い。
【0081】
同様に、自動操向開始するタイミングを調節できるようにしても良い。自動操向を開始するタイミングを調節できるようにすることにより、作業者が誤操作しても余裕をもって自動操向中断操作を行うことができる。
【0082】
また、誤操作により連動機能をONにした状態でも、一定距離走行することで自動操向待機状態を解除することができるようにしても良い。
【0083】
さらに、PTO切→入に連動して自動直進待機状態となる機能では、自動旋回機能(旋回時作業機自動モード)や連動機能スイッチを切にして、一定距離(時間)走行すると待機状態が解除される、ようにしても良い。
【0084】
さらに、連動および自動旋回機能の入→切操作で状態解除でき、安全に操作することができるようにしても良い。
【0085】
さらに、PTO切→入(旋回時作業機自動モード)に連動して自動操向を開始する連動機能では、自動直進に入る条件(進入角、エラー条件等)を満たしていても開始指示がない状態で一定距離(時間)走行した場合は連動による自動操向を中断するようにしてもよい。
【0086】
さらに、自動操向中断条件(速度固定入等)に加え、作業者ができる中断操作を追加するようにしても良い。連動機能による自動操向が開始されるまでの間に作業クラッチ入切、作業機上昇下降操作、連動および自動旋回機能入→切操作を行うことで、自動操向は中断されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 圃場作業機
2 走行機体(走行部)
3 圃場作業部(植付部)
14 操作ペダル
18 作業クラッチ
24 支持アーム
28 自動操向制御部
29 旋回検出部
30 所定距離設定部
49 GNSS受信機
67 モニタ
68 報知部
71 判定部
72 所定時間設定部
80 操作部材(スイッチボックス)
81 AUTOボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9