IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-燃焼制御システム 図1
  • 特許-燃焼制御システム 図2
  • 特許-燃焼制御システム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】燃焼制御システム
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20250325BHJP
【FI】
F23N5/24 106A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022006116
(22)【出願日】2022-01-19
(65)【公開番号】P2023105355
(43)【公開日】2023-07-31
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】日比野 知久
(72)【発明者】
【氏名】西山 武志
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180863(JP,A)
【文献】米国特許第3266026(US,A)
【文献】米国特許第3111160(US,A)
【文献】米国特許第2692962(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/24
F23N 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼制御開始指令もしくは燃焼制御停止指令を受けて、複数のバーナに対する燃料の供給および遮断を一括して切り替える共通の安全遮断弁の開閉を制御する遮断弁制御装置と、
前記複数のバーナの各々に対応して設けられ、前記燃焼制御開始指令もしくは前記燃焼制御停止指令を受けて、対応するバーナの点火を制御するとともに、着火後の対応するバーナの火炎状態を監視し、燃焼制御中の断火が検知された場合に、対応するバーナの燃焼制御を停止する複数のバーナ制御装置と、
前記遮断弁制御装置に設けられた接点入力と、
前記複数のバーナ制御装置の各々に設けられた複数の接点出力と
を備え、
前記接点入力の一端側から他端側にかけて、前記複数の接点出力が数珠つなぎにループ接続され、
前記複数のバーナ制御装置の各々は、対応するバーナの点火制御中の不着火および着火後の燃焼制御中の断火の何れかが検知された場合に自装置の接点出力を開放し、
前記遮断弁制御装置は、前記接点入力の開放を検出して前記安全遮断弁を閉状態とする
ことを特徴とする燃焼制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃焼制御システムにおいて、
前記遮断弁制御装置は、前記接点入力の短絡を検出して前記安全遮断弁を開状態とする
ことを特徴とする燃焼制御システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の燃焼制御システムにおいて、
前記遮断弁制御装置は、電圧または電流の有無により前記接点入力の開放または短絡を検出することを特徴とする燃焼制御システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の燃焼制御システムにおいて、
前記燃焼制御開始指令、前記燃焼制御停止指令を前記遮断弁制御装置および前記複数のバーナ制御装置に通知する主制御装置を備える
ことを特徴とする燃焼制御システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の燃焼制御システムにおいて、
前記複数のバーナ制御装置の各々は、対応するバーナの火炎の有無を検知する火炎検出器が接続され、
前記複数のバーナ制御装置の各々は、自装置に接続される前記火炎検出器による火炎の有無検知に基づいて対応するバーナの火炎の有無を判定する
ことを特徴とする燃焼制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバーナへの燃料の供給を制御する燃焼制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼炉、加熱炉、および脱臭炉などの燃焼炉では、燃焼炉に設けられたバーナの燃焼状態や、炉内温度、燃焼用空気の圧力、バーナに供給される燃料の圧力などを、燃焼制御システムによって監視および燃焼制御を実施している。燃焼制御システムとしては、共通の燃焼室内に設置された複数のバーナの燃焼を制御するマルチバーナシステムがある。
【0003】
マルチバーナシステムには、バーナ毎に遮断弁を設けず、元弁で一括制御する構成のシステムがある。このような燃焼システムを制御するために、元弁を制御するマスタ装置と、バーナ毎の点火装置・火炎検出器を制御するスレーブ装置と、その上位となる安全制御装置が用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
このシステムでは、マスタ装置とスレーブ装置は、点火信号を受けて点火を行い、スレーブ装置は、点火に成功しているかどうかをマスタ装置に通知する。よって、点火に成功しなかった場合にマスタ装置は、遮断弁を閉じることができ、安全に制御ができる。従来、このシステムでは、マスタ装置とスレーブ装置との間は、通信バスによって接続され、この通信バスによって上述した相互の情報の授受を実現していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-180863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した技術では、マスタ装置とスレーブ装置との間の点火信号や点火されている状態信号の授受に、通信を使っていたため、通信による遅れやノイズによる誤った通知がなされるなどの課題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、通信の遅れやノイズによる問題などがない状態で、燃焼の制御ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃焼制御システムは、燃焼制御開始指令もしくは燃焼制御停止指令を受けて、複数のバーナに対する燃料の供給および遮断を一括して切り替える共通の安全遮断弁の開閉を制御する遮断弁制御装置と、複数のバーナの各々に対応して設けられ、燃焼制御開始指令もしくは燃焼制御停止指令を受けて、対応するバーナの点火を制御するとともに、着火後の対応するバーナの火炎状態を監視し、燃焼制御中の断火が検知された場合に、対応するバーナの燃焼制御を停止する複数のバーナ制御装置と、遮断弁制御装置に設けられた接点入力と、複数のバーナ制御装置の各々に設けられた複数の接点出力とを備え、接点入力の一端側から他端側にかけて、複数の接点出力が数珠つなぎにループ接続され、複数のバーナ制御装置の各々は、対応するバーナの点火制御中の不着火および着火後の燃焼制御中の断火の何れかが検知された場合に自装置の接点出力を開放し、遮断弁制御装置は、接点入力の開放を検出して安全遮断弁を閉状態とする。
【0009】
上記燃焼制御システムの一構成例において、遮断弁制御装置は、接点入力の短絡を検出して安全遮断弁を開状態とする。
【0010】
上記燃焼制御システムの一構成例において、遮断弁制御装置は、電圧または電流の有無により接点入力の開放または短絡を検出する。
【0011】
上記燃焼制御システムの一構成例において、燃焼制御開始指令、燃焼制御停止指令を遮断弁制御装置および複数のバーナ制御装置に通知する主制御装置を備える。
【0012】
上記燃焼制御システムの一構成例において、複数のバーナ制御装置の各々は、対応するバーナの火炎の有無を検知する火炎検出器が接続され、複数のバーナ制御装置の各々は、自装置に接続される火炎検出器による火炎の有無検知に基づいて対応するバーナの火炎の有無を判定する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、複数のバーナ制御装置の各々に設けられた複数の接点出力が、数珠つなぎにループ接続されている遮断弁制御装置に設けられた接点入力が開放されると、安全遮断弁が閉状態とされるので、通信の遅れやノイズによる問題などがない状態で、燃焼の制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る燃焼制御システムの一部構成を示す構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る燃焼制御システムの構成を示す構成図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る燃焼制御システムの動作例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る燃焼制御システムについて図1を参照して説明する。この燃焼制御システムは、遮断弁制御装置101、複数のバーナ制御装置102a、102b、102c、102dを備える。この例では、4つのバーナ制御装置102a、102b、102c、102dを備える場合を示しているが、これに限るものではない。
【0016】
遮断弁制御装置101は、燃焼制御開始指令もしくは燃焼制御停止指令を受けて、複数のバーナに対する燃料の供給および遮断を一括して切り替える共通の安全遮断弁103の開閉を制御する。
【0017】
複数のバーナ制御装置102a、102b、102c、102dは、複数のバーナの各々に対応して設けられ、燃焼制御開始指令もしくは燃焼制御停止指令を受けて、対応するバーナの点火を制御するとともに、着火後の対応するバーナの火炎状態を監視し、燃焼制御中の断火が検知された場合に、対応するバーナの燃焼制御を停止する。
【0018】
また、このシステムは、図2に示すように、燃焼制御開始指令、燃焼制御停止指令を遮断弁制御装置101および複数のバーナ制御装置102a、102b、102c、102dに通知する主制御装置106を備える。
【0019】
複数のバーナ制御装置102a、102b、102c、102dの各々は、燃焼室120の内部に配置されたバーナ121a、121b、121c、121dの点火を制御する。バーナ121a、121b、121c、121dの各々には、点火装置122a、122b、122c、122dが対応して設けられている。また、バーナ121a、121b、121c、121dの各々には、火炎検出器123a、123b、123c、123dが対応して設けられている。また、燃焼室120には、温度センサなどの燃焼制御に必要な装置が設けられている。
【0020】
複数のバーナ制御装置102a、102b、102c、102dの各々は、自装置に接続される火炎検出器123a、123b、123c、123dによる火炎の有無検知に基づいて対応するバーナ121a、121b、121c、121dの火炎の有無を判定する。
【0021】
バーナ121a、121b、121c、121dは、燃焼室120の内部を加熱する機器である。なお、バーナ121a、121b、121c、121dは、パイロットバーナを有さず、主バーナを直接点火するダイレクト点火方式のバーナである場合を一例としている。バーナ121a、121b、121c、121dは、バーナ毎に対応して設けられた点火装置122a、122b、122c、122dによって点火されることにより、着火する。
【0022】
点火装置122a、122b、122c、122dの各々は、例えば、点火トランスと、点火トランスの二次側配線に接続された点火用電極棒(スパークロッド)とを備えている。点火装置122a、122b、122c、122dの各々は、バーナ制御装置102a、102b、102c、102dからの制御信号に応じて、例えば数kV~十数kVの高電圧をスパークロッドに発生させることにより、対応するバーナ121a、121b、121c、121dを点火させる。
【0023】
火炎検出器123a、123b、123c、123dは、バーナ121a、121b、121c、121d毎に対応して設けられ、対応するバーナの火炎の有無を検出する機器である。火炎検出器123a、123b、123c、123dの各々は、火炎の有無を示す火炎検出信号を出力する。
【0024】
主燃料流路131,分岐燃料流路132は、バーナ121a、121b、121c、121dに燃料を供給するための流路である。主燃料流路131に、外部から燃料が供給され、主燃料流路131から複数に分岐した分岐燃料流路132により、各バーナ121a、121b、121c、121dに燃料が供給される。主燃料流路131に、安全遮断弁103が設置され、分岐燃料流路132は、バーナ121a、121b、121c、121dの各々に接続されている。ここで、燃料は、例えば、ガス(気体)や油(液体)とすることができる。燃料種は特に限定されない。
【0025】
安全遮断弁103は、複数のバーナ121a、121b、121c、121dに対する燃料の供給と遮断を一括して切り替える。安全遮断弁103が開いているとき、主燃料流路131から分岐燃料流路132へ燃料が送出され、各バーナ121a、121b、121c、121dに燃料が供給される。安全遮断弁103が閉じているとき、主燃料流路131から分岐燃料流路132への燃料の流入が遮断され、バーナ121a、121b、121c、121dには燃料が供給されない。安全遮断弁103は、例えば、二重遮断を行うために2つの遮断弁を一組とした構成を有し、主燃料流路131における一ヶ所に配置されている。
【0026】
なお、図示はしないが、分岐燃料流路132とは別に、バーナ121a、121b、121c、121dの各々に空気(エア)を供給するための空気流路が設けられており、ブロアから吐出されたエアが空気流路を介して各バーナ121a、121b、121c、121dに供給される。
【0027】
主制御装置106は、遮断弁制御装置101、バーナ制御装置102a、102b、102c、102dの安全運転のために、バーナ121a、121b、121c、121dの燃焼状態や、各リミット・インターロック(図示せず)の状態等や、上位機器からのバーナの燃焼要求および遮断要求などに基づいて、燃焼室120内の121a、121b、121c、121dの運転の許可および不許可を、遮断弁制御装置101、およびバーナ制御装置102a、102b、102c、102dに指示を出力し、遮断弁制御装置101、およびバーナ制御装置102a、102b、102c、102dを介して各バーナ121a、121b、121c、121dの運転を制御する。
【0028】
または、遮断弁制御装置は101、バーナ121a、121b、121c、121dの燃焼状態や、各リミット・インターロック(図示せず)の状態等を監視し、これらが正常な状態であることを確認した場合のみ、安全遮断弁103を開状態とする。
【0029】
主制御装置106としては、工業用燃焼炉に関する安全規格(例えば、工業用燃焼炉の安全通則 JIS B 8415等)に基づいて製造されたリミット・インターロックを監視するためのリミット・インターロックモジュールや、上記安全通則に対応した専用のソフトウェアを設定したプログラマブルロジックコントローラ(所謂安全PLC)等を例示することができる。
【0030】
ここで、実施の形態に係る燃焼制御システムでは、遮断弁制御装置101は、接点入力104を備え、複数のバーナ制御装置102a、102b、102c、102dの各々は、接点出力105を備える。また、配線151により、接点入力104の一端側から他端側にかけて、複数の接点出力105が数珠つなぎにループ接続されている。
【0031】
複数のバーナ制御装置102a、102b、102c、102dの各々は、対応するバーナの燃焼制御中の不着火および着火後の燃焼制御中の断火の何れかが異常検知された場合に、自装置の接点出力105を開放する。また、遮断弁制御装置101は、接点入力104の開放を検出して安全遮断弁103を閉状態とする。遮断弁制御装置101は、接点入力104の短絡を検出して安全遮断弁103を開状態とする。遮断弁制御装置101は、電圧または電流の有無により接点入力104の開放または短絡を検出する。
【0032】
次に、燃焼制御システムの動作例について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0033】
まず、ステップS101で、点火指令を受け付けると(ステップS101のyes)、ステップS102で、バーナ制御装置102a、102b、102c、102dが、対応するバーナ121a、121b、121c、121dの点火が可能か否かを確認する。バーナ121a、121b、121c、121dの点火の可能が確認されると(ステップS102のyes)、ステップS103で、バーナ制御装置102a、102b、102c、102dの各々は、接点出力105を短絡状態とし、点火装置を駆動させる。
【0034】
上述したことにより、接点入力104が短絡状態となり、この状態(接点入力104の短絡)が遮断弁制御装置101に検出され(ステップS104のyes)、ステップS105で、遮断弁制御装置101は、安全遮断弁103を開状態とする。この後、ステップS106で、バーナ121a、121b、121c、121dを点火させる。
【0035】
この後、火炎検出器123a、123b、123c、123dの測定などにより、バーナ制御装置102a、102b、102c、102dが、バーナ121a、121b、121c、121dのいずれかが着火していない状態(不着火、断火)を把握すると(ステップS107のno)、ステップS108で、少なくとも1つの接点出力105が開放される。この状態を検出した遮断弁制御装置101は、ステップS110で、安全遮断弁103を閉状態とする。または、主制御装置106から停止指令が出力されると(ステップS109のyes)、遮断弁制御装置101は、ステップS110で、安全遮断弁103を閉状態とする。この結果、バーナ121a、121b、121c、121dの全てが消火状態となる。
【0036】
以上に説明したように、本発明によれば、複数のバーナ制御装置の各々に設けられた複数の接点出力が、数珠つなぎにループ接続されている遮断弁制御装置に設けられた接点入力が開放されると、安全遮断弁が閉状態とされるので、通信の遅れやノイズによる問題などがない状態で、燃焼の制御ができるようになる。
【0037】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0038】
101…遮断弁制御装置、102a、102b、102c、102d…バーナ制御装置、103…安全遮断弁、104…接点入力、105…接点出力、151…配線。
図1
図2
図3