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特許7654593ウエザーストリップ用の成形型及びウエザーストリップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】ウエザーストリップ用の成形型及びウエザーストリップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/44 20060101AFI20250325BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20250325BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20250325BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20250325BHJP
   B60J 10/235 20160101ALI20250325BHJP
【FI】
B29C45/44
B29C33/12
B29C45/14
B29C45/17
B60J10/235
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022078455
(22)【出願日】2022-05-11
(65)【公開番号】P2023167341
(43)【公開日】2023-11-24
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】國近 孝彰
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 貴文
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-207325(JP,A)
【文献】特開2007-196572(JP,A)
【文献】特開2000-326377(JP,A)
【文献】特開平10-296831(JP,A)
【文献】特開平9-262836(JP,A)
【文献】特開平6-210764(JP,A)
【文献】特開平4-292920(JP,A)
【文献】実開昭63-31908(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/44
B29C 33/12
B29C 45/14
B29C 45/17
B60J 10/235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の押出成形体の少なくとも1つの端末に射出成形部を成形してなり、前記射出成形部に中空部が設けられたウエザーストリップを成形するための成形型であって、
前記成形型は、上型と下型と中型とを備え、
前記中型は、中芯と第1中板と第2中板とを有し、
前記中芯の端部は、前記中空部の内面を形成する内面側成形面を有し、
前記第1中板の端部及び前記第2中板の端部は、前記中空部の外面を形成する外面側成形面をそれぞれ有し、
前記外面側成形面間に前記押出成形体がセットされて前記成形型が閉じている状態において、前記第1中板の上側の少なくとも一部に前記中芯が重ねて配置され、かつ、前記中芯の前記内面側成形面及び前記第1中板の前記外面側成形面と、前記第2中板の前記外面側成形面とが空隙を介して対向することにより、前記射出成形部用の成形キャビティが形成され、
前記第1中板は、前記成形キャビティから離間する第1の方向に移動可能であり、
前記第2中板は、前記成形キャビティから離間する第2の方向に移動可能であり、
前記中芯は、前記第1中板から離間する第3の方向に移動可能であり、
前記第1中板が前記第1の方向に移動するのに連動して、前記第2中板が前記第2の方向に移動するとともに、前記中芯が前記第3の方向に移動する
ことを特徴とするウエザーストリップ用の成形型。
【請求項2】
前記成形型は、
前記第1中板、前記第2中板及び前記中芯をそれぞれ移動させるための動力を伝達する円形状のギアと、
前記ギアを回転させるレバーと
を有することを特徴とする請求項1に記載のウエザーストリップ用の成形型。
【請求項3】
前記ギアの側面に係止部が突設され、前記係止部は前記ギアの中心から偏心して配置され、
前記成形型は、前記第1中板に連結され、前記係止部が係止する被係止部を有する引き込みプレートを備え、
前記被係止部に前記係止部が係止した状態で、前記ギアの回転とともに前記係止部が回転することにより、前記引き込みプレートが、前記成形キャビティから離間する方向に移動する
ことを特徴とする請求項2に記載のウエザーストリップ用の成形型。
【請求項4】
前記引き込みプレートの移動が所定距離未満である場合、前記係止部は、前記被係止部に係止した状態で回転し、
前記引き込みプレートの移動が所定距離以上である場合、前記係止部と前記被係止部との係止が解除される
ことを特徴とする請求項3に記載のウエザーストリップ用の成形型。
【請求項5】
前記成形型は、前記第2中板に連結され、前記ギアと噛み合うラックギアを有するスライドプレートを備え、
前記ギアと前記ラックギアとが噛み合った状態で、前記ギアが回転することにより、前記スライドプレートが、前記成形キャビティから離間する方向に移動する
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のウエザーストリップ用の成形型。
【請求項6】
前記中芯は、前記内面側成形面と反対側の端部に回転軸を有し、前記回転軸を中心として前記第1中板から離間する第3の方向に回転可能であり、
前記中芯に突片が形成され、前記突片は前記回転軸を中心として回転可能であり、
前記スライドプレートに、前記突片を押圧して前記中芯を回転させる押圧部が設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載のウエザーストリップ用の成形型。
【請求項7】
前記中芯の上側に第3中板が重ねて配置され、前記第3中板の端部は、前記中空部の外面の少なくとも一部を形成する外面側成形面を有し、
前記第3中板は、前記中芯の移動と同様に移動可能である
ことを特徴とする請求項6に記載のウエザーストリップ用の成形型。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の成形型を用いてウエザーストリップを製造する方法であって、
前記上型を開いた状態で、前記成形型に前記押出成形体をセットする押出成形体セット工程と、
前記上型を閉じた状態で、前記中芯の前記内面側成形面及び前記第1中板の前記外面側成形面と、前記第2中板の前記外面側成形面と、前記押出成形体の端末との間に前記成形キャビティを形成する成形キャビティ形成工程と、
前記成形キャビティ内に前記射出成形部の形成材料を射出し、前記押出成形体の端末に前記射出成形部を形成する射出成形部形成工程と、
前記上型を開き前記第1中板が前記成形キャビティから離間する第1の方向に移動するのに連動させて、前記第2中板を前記成形キャビティから離間する第2の方向に移動させるとともに、前記中芯を前記第1中板から離間する第3の方向に移動させることにより、前記中型を開く中型開工程と
を含むことを特徴とするウエザーストリップの製造方法。
【請求項9】
前記中型開工程では、前記中芯の端部に前記ウエザーストリップの前記射出成形部が嵌まった状態で、前記中型を開くことを特徴とする請求項8に記載のウエザーストリップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の押出成形体の端末に射出成形部を成形してなるウエザーストリップ用の成形型、ウエザーストリップの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、アンダーカット形状を有するウエザーストリップを成形するための成形型は、上型と下型と中型(つまり、中板、中芯等の複数のパーツからなる)とによって構成されている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1に記載の従来技術では、中板を下型に対して起立させる際に、中板の成形面の下端部と中芯との接触を防ぐために、予め中板を手動操作で後方に所定長さだけスライドさせておくようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-69445号公報(段落[0009]、図1図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術では、中板を起立させる作業の前に、中板を後方にスライドさせる作業が必須であるため、作業工数が多いという問題がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、中板と中芯との接触を避けつつ、少ない作業工数で中型を開くことができるウエザーストリップ用の成形型及びウエザーストリップの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、長尺状の押出成形体の少なくとも1つの端末に射出成形部を成形してなり、前記射出成形部に中空部が設けられたウエザーストリップを成形するための成形型であって、前記成形型は、上型と下型と中型とを備え、前記中型は、中芯と第1中板と第2中板とを有し、前記中芯の端部は、前記中空部の内面を形成する内面側成形面を有し、前記第1中板の端部及び前記第2中板の端部は、前記中空部の外面を形成する外面側成形面をそれぞれ有し、前記外面側成形面間に前記押出成形体がセットされて前記成形型が閉じている状態において、前記第1中板の上側の少なくとも一部に前記中芯が重ねて配置され、かつ、前記中芯の前記内面側成形面及び前記第1中板の前記外面側成形面と、前記第2中板の前記外面側成形面とが空隙を介して対向することにより、前記射出成形部用の成形キャビティが形成され、前記第1中板は、前記成形キャビティから離間する第1の方向に移動可能であり、前記第2中板は、前記成形キャビティから離間する第2の方向に移動可能であり、前記中芯は、前記第1中板から離間する第3の方向に移動可能であり、前記第1中板が前記第1の方向に移動するのに連動して、前記第2中板が前記第2の方向に移動するとともに、前記中芯が前記第3の方向に移動することを特徴とするウエザーストリップ用の成形型をその要旨とする。
【0007】
従って、手段1に記載の発明によると、第2中板及び中芯が、第1中板に連動してそれぞれ異なる方向に移動するため、第1中板を移動させる一度の手動操作で、成形型の中型を開くことができる。また、中芯及び第1中板のそれぞれの端部(内面側成形面及び外面側成形面)と第2中板の端部(外面側成形面)とが対向し、中型を開く際に、第2中板が成形キャビティから離間する第2の方向に移動する。このため、中芯が第1中板から離れる第3の方向に移動したとしても、中芯と第2中板との接触を防止することができる。
【0008】
ここで、ウエザーストリップを形成するための材料としては、例えば、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、ゴムなどの材料を挙げることができる。熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系エラストマー(TPS)等が好適に使用される。また、熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)等が好適に使用される。さらに、ゴムとしては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が好適に使用される。
【0009】
手段2に記載の発明は、手段1において、前記成形型は、前記第1中板、前記第2中板及び前記中芯をそれぞれ移動させるための動力を伝達する円形状のギアと、前記ギアを回転させるレバーとを有することをその要旨とする。
【0010】
従って、手段2に記載の発明によると、レバーを手動操作してギアを回転させることにより、第1中板、第2中板及び中芯を簡単に移動させることができる。
【0011】
手段3に記載の発明は、手段2において、前記ギアの側面に係止部が突設され、前記係止部は前記ギアの中心から偏心して配置され、前記成形型は、前記第1中板に連結され、前記係止部が係止する被係止部を有する引き込みプレートを備え、前記被係止部に前記係止部が係止した状態で、前記ギアの回転とともに前記係止部が回転することにより、前記引き込みプレートが、前記成形キャビティから離間する方向に移動することをその要旨とする。
【0012】
従って、手段3に記載の発明によると、ギアを回転させることにより、係止部が回転して被係止部に係止し、引き込みプレートを移動させる。これにより、引き込みプレートが連結された第1中板を容易に移動させることができる。
【0013】
手段4に記載の発明は、手段3において、前記引き込みプレートの移動が所定距離未満である場合、前記係止部は、前記被係止部に係止した状態で回転し、前記引き込みプレートの移動が所定距離以上である場合、前記係止部と前記被係止部との係止が解除されることをその要旨とする。
【0014】
従って、手段4に記載の発明によると、係止部と被係止部との係止が解除されると、引き込みプレートが移動しなくなるため、必要以上に第1中板を移動させることを防止できる。
【0015】
手段5に記載の発明は、手段2乃至4のいずれか1つにおいて、前記成形型は、前記第2中板に連結され、前記ギアと噛み合うラックギアを有するスライドプレートを備え、前記ギアと前記ラックギアとが噛み合った状態で、前記ギアが回転することにより、前記スライドプレートが、前記成形キャビティから離間する方向に移動することをその要旨とする。
【0016】
従って、手段5に記載の発明によると、ギアとラックギアとが噛み合った状態で、ギアを回転させることにより、スライドプレートが移動する。このため、スライドプレートが連結された第2中板を、成形キャビティ(第1中板)から離間する第2の方向へ移動させることができる。
【0017】
手段6に記載の発明は、手段5において、前記中芯は、前記内面側成形面と反対側の端部に回転軸を有し、前記回転軸を中心として前記第1中板から離間する第3の方向に回転可能であり、前記中芯に突片が形成され、前記突片は前記回転軸を中心として回転可能であり、前記スライドプレートに、前記突片を押圧して前記中芯を回転させる押圧部が設けられていることをその要旨とする。
【0018】
従って、手段6に記載の発明によると、スライドプレートを移動させることにより、押圧部が突片を押圧して中芯を回転させることができる。
【0019】
手段7に記載の発明は、手段6において、前記中芯の上側に第3中板が重ねて配置され、前記第3中板の端部は、前記中空部の外面の少なくとも一部を形成する外面側成形面を有し、前記第3中板は、前記中芯の移動と同様に移動可能であることをその要旨とする。
【0020】
従って、手段7に記載の発明によると、第3中板が中空部の外面の少なくとも一部を形成しているため、射出成形部にアンダーカット形状の部分があったとしても、成形型を開くことができる。
【0021】
手段8に記載の発明は、手段1乃至4のいずれか1項に記載の成形型を用いてウエザーストリップを製造する方法であって、前記上型を開いた状態で、前記成形型に前記押出成形体をセットする押出成形体セット工程と、前記上型を閉じた状態で、前記中芯の前記内面側成形面及び前記第1中板の前記外面側成形面と、前記第2中板の前記外面側成形面と、前記押出成形体の端末との間に前記成形キャビティを形成する成形キャビティ形成工程と、前記成形キャビティ内に前記射出成形部の形成材料を射出し、前記押出成形体の端末に前記射出成形部を形成する射出成形部形成工程と、前記上型を開き前記第1中板が前記成形キャビティから離間する第1の方向に移動するのに連動させて、前記第2中板を前記成形キャビティから離間する第2の方向に移動させるとともに、前記中芯を前記第1中板から離間する第3の方向に移動させることにより、前記中型を開く中型開工程とを含むことを特徴とするウエザーストリップの製造方法をその要旨とする。
【0022】
従って、手段8に記載の発明によると、ウエザーストリップを成形後、一度の手動操作で成形型の中型を開くことができるため、生産性を上げることができる。
【0023】
手段9に記載の発明は、手段8において、前記中型開工程では、前記中芯の端部に前記ウエザーストリップの前記射出成形部が嵌まった状態で、前記中型を開くことをその要旨とする。
【0024】
従って、手段9に記載の発明によると、中型を開いたときには、中芯の端部にウエザーストリップが嵌まった状態となっている。このため、作業者は、ウエザーストリップが成形キャビティに残る場合よりも、ウエザーストリップを簡単に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0025】
以上詳述したように、請求項1~9に記載の発明によると、中板と中芯との接触を避けつつ、少ない作業工数で中型を開くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態のウエザーストリップを示す正面図。
図2】本実施形態の成形型を示す平面図。
図3図2の矢印Aから見たときの成形型を示す側面図。
図4図2のIV-IV線断面図。
図5】成形型の成形キャビティ付近を示す拡大断面図。
図6図2のVI-VI線断面図。
図7】ギアの周辺部分を示す平面図。
図8】中芯、第3中板及びシャフトの関係を示す側面図。
図9】中芯、第3中板及びシャフトの関係を示す斜視図。
図10】成形型を開いた状態を示す平面図。
図11図10のXI-XI線断面図。
図12図10のXII-XII線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0028】
本実施形態のウエザーストリップ1は、車体の開口部を開閉する車両用ドアに取り付けられており、車両用ドアのシール性を向上させる機能を有している。図1に示されるように、ウエザーストリップ1は、長尺状の押出成形体2,3の各端末2a,3a間に射出成形部4を成形してなり、射出成形部4に中空部5が設けられた構造を有している。また、中空部5の外面5a及び押出成形体3の外面からは、ヒレ部6が延設されている。なお、本実施形態のウエザーストリップ1は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)やオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等を用いて形成されている。但し、押出成形体2,3及び射出成形部4は、両者の接合を容易にするために、同じ材料を用いて形成されることが好ましい。
【0029】
次に、ウエザーストリップ1を成形するための成形型11について説明する。
【0030】
図2図6に示されるように、成形型11は、上型20、下型30及び中型40を備えている。固定型である下型30は、成形型11の取付板12に対して取り付けられている。下型30の上面31における所定位置には、ヒレ部6の外面6a(図1参照)を形成する外面側成形面32が設けられている。一方、可動型である上型20は、下型30の上方に配置されている。上型20の下面21における所定位置には、中空部5の外面5aを形成する外面側成形面22が設けられている。なお、図3図6に示されるように、上型20を下側及び上側に駆動させれば、上型20及び下型30を互いに接近及び離間させることが可能となる。
【0031】
また、可動型である中型40は、中芯41、第1中板42、第2中板43及び第3中板44を有している。図5に示されるように、中芯41の端部45は、中空部5の内面を形成する内面側成形面41aを有している。また、第1中板42の端部46は、中空部5の外面5a及びヒレ部6の外面6aを形成する外面側成形面42aを有し、第2中板43の端部47は、中空部5の外面5a及びヒレ部6の外面6aを形成する外面側成形面43aを有している。さらに、第3中板44の端部48は、中空部5の外面5aの一部を形成する外面側成形面44aを有している。
【0032】
なお、外面側成形面42a,43a間に押出成形体2,3がセットされて成形型11が閉じている状態(図2参照)において、第1中板42の上側の中央部に中芯41が重ねて配置され(図3参照)、中芯41の上側及び第1中板42の上側の両側部に第3中板44が重ねて配置される(図3参照)。そして、上型20の外面側成形面22と下型30の外面側成形面32とが空隙を介して対向し、かつ、中芯41の内面側成形面41a及び第1中板42の外面側成形面42aと、第2中板43の外面側成形面43aとが空隙を介して対向することにより、射出成形部4及びヒレ部6用の成形キャビティC1が形成される(図5参照)。
【0033】
また、第1中板42は、成形キャビティC1から離間する第1の方向F1(図2図4に示す手前側)に移動可能となっており、第2中板43は、成形キャビティC1から離間する第2の方向F2(図2図4に示す奥側)に移動可能となっている。詳述すると、第1中板42及び第2中板43は、それぞれの外面側成形面42a,43a同士が対向した状態で、それぞれ成形キャビティC1に接近または離間する方向に移動可能となっている。
【0034】
図6図8図9に示されるように、中芯41は、内面側成形面41a(端部45)と反対側に位置する一対の端部51に、回転軸52を有している。中芯41は、回転軸52を中心として第1中板42から離間する第3の方向F3(図8図11図12では反時計回り方向)に回転可能となっている。なお、本実施形態では、第1中板42が第1の方向F1に移動するのに連動して、第2中板43が第2の方向F2に移動するとともに、中芯41が第3の方向F3に回転する。また、中芯41の各端部51には、それぞれ突片53が形成されている。各突片53は、回転軸52を中心として回転可能となっている。
【0035】
また、第3中板44は、外面側成形面44a(端部48)と反対側に位置する端部54に、回転軸52を有している。即ち、第3中板44の回転軸52は、中芯41の回転軸52と共通の回転軸である。また、第3中板44は、中芯41の回転と同様に回転可能となっている。具体的に言うと、第3中板44は、回転軸52を中心として回転して、第1中板42から離間し、かつ中芯41から離間する第3の方向F3に回転可能となっている。なお、本実施形態では、中芯41が第3の方向F3に回転するのに連動して、第3中板44が回転し、90°回転すると自重で中芯41から離間する第3の方向F3に回転する。
【0036】
図2図4図7に示されるように、成形型11は、一対のギア61と一対のレバー62とを有している。各ギア61は、平面視略円形状をなしており、取付板12に突設した回転軸63を中心として回転するようになっている。各ギア61は、第1中板42、第2中板43、第3中板44及び中芯41を移動させるための動力を伝達するためのものである。また、各ギア61の側面61a(上面)には、円柱状をなすピン64(係止部)が突設されている。ピン64は、ギア61の中心O1(回転軸63)から偏心して配置されている。さらに、各レバー62は、基端部がギア61の外周部分に連結されており、先端部にグリップ62aを有している。各レバー62は、手動操作されることにより、ギア61を回転させる機能を有している。
【0037】
また、成形型11は、帯板状をなす一対の引き込みプレート65を備えている。両引き込みプレート65の基端部(図2図4では奥側の端部)は、ボルト(図示略)により第1中板42の手前側面42bに連結されている。図2に示されるように、右側の引き込みプレート65は、右側のギア61の回転軸63の右側に配置され、左側の引き込みプレート65は、左側のギア61の回転軸63の左側に配置されている。また、両引き込みプレート65の先端部(図2図4では手前側の端部)には、ギア61のピン64が係止する被係止凹部66(被係止部)が設けられている。図2に示されるように、右側の被係止凹部66は、右側の引き込みプレート65の左側部にて開口しており、左側の被係止凹部66は、左側の引き込みプレート65の右側部にて開口している。さらに、両引き込みプレート65において被係止凹部66よりも先端側(図2図4では手前側)の位置には、被係止凹部66が開口する方向と同一方向に延びる延出部67が形成されている。
【0038】
なお、被係止凹部66にピン64が係止した状態で、ギア61の回転とともにピン64が回転することにより、引き込みプレート65は、成形キャビティC1から離間する方向(図7に示す矢印A1方向)に移動する。また、引き込みプレート65の移動が所定距離(本実施形態では10mm)未満である場合、ピン64は、被係止凹部66に係止した状態で回転する。そして、引き込みプレート65の移動が所定距離以上になると、ピン64と被係止凹部66との係止が解除される(図10参照)。
【0039】
図2図4図6図7に示されるように、成形型11は、帯板状をなす1枚のスライドプレート71を備えている。スライドプレート71は、取付板12に設けられた溝部13内に配置されており、手前側及び奥側に移動可能となっている。なお、スライドプレート71は、一対のギア61及び一対の引き込みプレート65の間に配置されている。さらに、スライドプレート71の先端部(図2図4図6では奥側の端部)の上面71aには、一対の棒状部72が突設されている。また、第2中板43の奥側面43bから突出する突出部73には、一対の貫通孔74が設けられている。そして、各棒状部72が一対の貫通孔74にそれぞれ挿入されることにより、スライドプレート71が第2中板43の奥側面43bに連結される。
【0040】
また、スライドプレート71の基端部(図2図6では、第1中板42よりも手前側の端部)には、肉厚部75が形成されている。肉厚部75の両側部には、ギア61と噛み合うラックギア76がそれぞれ設けられている。そして、ギア61とラックギア76とが噛み合った状態で、ギア61が回転することにより、スライドプレート71が、奥側(図7に示す矢印A2方向)に移動する。
【0041】
さらに、肉厚部75の先端側(図2図6図7では奥側)には、上側に突出する突部77が設けられ、突部77には、突部77内を貫通して両側(図2では左側及び右側)に突出するシャフト78(押圧部)が設けられている。シャフト78は、中芯41の一対の突片53を押圧して中芯41を回転させるようになっている。
【0042】
次に、上記の成形型11を用いたウエザーストリップ1の製造方法を説明する。
【0043】
まず、押出成形体セット工程では、上型20を開き、第1中板42の上側に中芯41を重ねて配置し、中芯41の上側に第3中板44を重ねて配置し、成形型11が閉じた状態よりも第1中板42を僅かに(2mm程度)手前側に配置するとともに、第2中板43を僅かに(2mm程度)奥側に配置した状態にする。そして、作業者は、第1中板42の外面側成形面42aと第2中板43の外面側成形面43aとの間に、押出成形体2,3をセットする(図2参照)。
【0044】
続く成形キャビティ形成工程では、上型20を閉じる力を利用して、第1中板42を奥側に移動させるとともに、第2中板43を手前側に移動させる。そして、第2中板43及び第3中板44の上側に、上型20を重ねて配置する。その結果、中芯41の内面側成形面41a及び第1中板42の外面側成形面42aと、第2中板43の外面側成形面43aと、押出成形体2,3の端末2a,3aとの間に成形キャビティC1(図4図5参照)が形成される。
【0045】
続く射出成形部形成工程では、上型20及び下型30のいずれかに設けたゲート部(図示略)を介して、成形キャビティC1内に、溶融した射出成形部4の形成材料(EPDMやTPO等)を射出し、成形キャビティC1内に射出成形部4の形成材料を充填する。そして、射出成形部4を形成するとともに、射出成形部4を押出成形体2,3と接合する。その結果、押出成形体2の端末2aと押出成形体3の端末3aとの間に射出成形部4が配置されたウエザーストリップ1が形成される。
【0046】
続く中型開工程では、上型20を上側に移動させて上型20を開いた後(図11図12参照)、一対のレバー62を手前側(図7図10参照)に手動操作する。このとき、右側のレバー62を、時計回り方向F4(図2参照)に回転させるとともに、左側のレバー62を、反時計回り方向F5(図2参照)に回転させる。これにより、両レバー62が互いに接近した状態となる。また、レバー62の回転に伴ってギア61が同じ角度だけ回転する。さらに、ギア61の回転に伴ってピン64が回転し、ピン64が引き込みプレート65の被係止凹部66を押圧し、引き込みプレート65を手前側(図7に示す矢印A1方向)に移動させる。これに伴い、引き込みプレート65が締結された第1中板42も、手前側(図10図12に示す第1の方向F1)に移動する。
【0047】
また、ギア61が回転すると、ギア61と噛み合うラックギア76や、ラックギア76が設けられているスライドプレート71が、奥側(図7に示す矢印A2方向)に移動する。これに伴い、スライドプレート71の上面71aに突設された棒状部72が、第2中板43の奥側面43bから突出する突出部73を奥側に引っ張るため、第2中板43も奥側(図4図10図12に示す第2の方向F2)に移動する。その結果、第1中板42が第1の方向F1に移動するのに連動して、第2中板43が第2の方向F2に移動する。
【0048】
さらに、スライドプレート71が奥側に移動するのに伴い、スライドプレート71に設けられた突部77及びシャフト78も奥側に移動する。その結果、シャフト78が、中芯41の突片53の側面を奥側方向に押圧して突片53を第3の方向F3(図8図9参照)に回転させる。なお、シャフト78による突片53の押圧は、スライドプレート71が奥側へ所定距離だけ移動(即ち、第2中板43が第2の方向F2へ移動)した後に開始される。そして、突片53が押圧されることで、中芯41が回転軸52を中心として回転するとともに、第3中板44が中芯41に押されて同じ回転軸52を中心として回転し、90°回転した後は、第3中板44が自重で第3の方向F3へ回転して中芯41から離間する(図8図12参照)。その結果、第1中板42が第1の方向F1に移動するのに連動して、中芯41が第1中板42から離間する第3の方向F3(図11図12参照)に回転し、第3中板44が中芯41及び第1中板42から離間する方向に回転する。さらに、ギア61のピン64と引き込みプレート65の被係止凹部66との係止が解除されると、第1中板42は停止するが、第2中板43が移動し続けるとともに中芯41及び第3中板44が回転し続ける。そして、中芯41の端面51a及び第3中板44の端面54aがスライドプレート71の肉厚部75の上面に接すると、中芯41及び第3中板44が回転角度が異なる状態で停止し、中型40が開状態となる。なお、中型開工程では、中芯41の端部45にウエザーストリップ1の射出成形部4(中空部5)が嵌まった状態で、中型40を開いている。その後、端部45からウエザーストリップ1を取り外すことで、一連の製造手順が終了する。
【0049】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0050】
(1)本実施形態のウエザーストリップ1用の成形型11では、中芯41、第2中板43及び第3中板44が、第1中板42に連動してそれぞれ移動するため、第1中板42を移動させるレバー62の手動操作を一度行うだけで、成形型11の中型40を開くことができる。しかも、レバー62を元に戻す手動操作を一度行うだけで、中型40を閉じることもできる。よって、ウエザーストリップ1の生産性が向上する。
【0051】
また、中芯41及び第1中板42のそれぞれの端部45,46と第2中板43の端部47とが対向し、中型40を開く際に、第2中板43が成形キャビティC1から離間する第2の方向F2に移動する。これにより、中芯41が第1中板42から離れる第3の方向F3に移動したとしても、中芯41と第2中板43との接触を防止できるため、中芯41に嵌まっているウエザーストリップ1の傷付きを防止することができる。
【0052】
(2)本実施形態では、中型40を開いたときに、中芯41の端部45にウエザーストリップ1が嵌まった状態となっている。しかも、中芯41は、回転軸52を中心として第1中板42から離間する第3の方向F3に回転し、中型40を開いたときには端部45が上部に到達する(図11図12参照)。さらに、第3中板44が回転軸52を中心として中芯41及び第1中板42から離間する方向に回転するため、第3中板44を中芯41の端部45から離すことができる。このため、作業者は、ウエザーストリップ1が成形キャビティC1に残る場合よりも、ウエザーストリップ1を簡単に取り出すことができる。
【0053】
(3)本実施形態では、一対のレバー62を用いて、中芯41、第1中板42、第2中板43及び第3中板44を移動させている。このため、レバー62を1本だけを用いる場合よりも、1本当たりに加える力を小さくして、成形型11の両側から均等に力を加えることができるため、中芯41及び中板42~44の全てを容易に移動させることができる。また、各レバー62の長さは、ギア61の半径に対して十分に長くなっている。しかも、各レバー62の先端部にはグリップ62aが設けられている。これにより、グリップ62aを把持しやすくなり、レバー62に容易に力を加えて操作することができる。
【0054】
(4)本実施形態では、スライドプレート71のシャフト78による中芯41の突片53の押圧は、スライドプレート71(及び第2中板43)が奥側への移動を開始してから所定距離だけ移動した後に開始される。即ち、作業者が一対のレバー62の手動操作を開始した際には、第1中板42及び第2中板43のみが移動し、その後、中芯41及び第3中板44が回転するようになる。その結果、中芯41及び第3中板44が回転するときに、成形されたウエザーストリップ1が第1中板42や第2中板43に接触して損傷することを防止できる。
【0055】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0056】
・上記実施形態では、第1中板42が第1の方向F1(手前側)に直線移動するとともに、第2中板43が、第1の方向F1(手前側)と同軸上であって正反対の方向である第2の方向F2(奥側)に直線移動することにより、第1中板42及び第2中板43が互いに離間するようになっていた。しかし、第1の方向F1及び第2の方向F2は、手前側及び奥側とは異なる方向でもよく、第1中板42及び第2中板43は、手前側及び奥側とは異なる方向に直線移動することにより、互いに離間するようになっていてもよい。また、第1中板42及び第2中板43は、回転などにより、互いに離間するようになっていてもよい。
【0057】
・上記実施形態の中芯41は、回転軸52を中心として第1中板42から離間する第3の方向F3(反時計回り)に回転可能であった。しかし、第3の方向F3は反時計回りとは異なる方向でもよく、中芯41は、反時計回りとは別の方向に回転可能となっていてもよいし、第1中板42から離間する上側方向に直線移動可能となっていてもよい。同様に、第3中板44も、回転軸52を中心として第1中板42から離間する第3の方向F3(反時計回り)に回転可能であったが、第3の方向F3は反時計回りとは異なる方向でもよく、第3中板44は、反時計回りとは別の方向に回転可能となっていてもよいし、第1中板42から離間する上側方向に直線移動可能となっていてもよい。
【0058】
・上記実施形態の成形型11は、一対のギア61、一対のレバー62及び一対の引き込みプレート65を備えていたが、ギア61、レバー62及び引き込みプレート65は、それぞれ1つのみ備えていてもよい。なお、一対のレバー62があれば、それぞれのレバー62を同じ方向(手前側)に動かせばよいため、レバー62に力を加えやすくなる。
【0059】
・上記実施形態では、レバー62の手動操作によってギア61を回転させていたが、手動でなくてもよい。例えば、レバー62を省略し、モータ等のアクチュエータを用いてギア61を回転させてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、ギア61の側面61a(上面)にピン64(係止部)が突設され、引き込みプレート65に、ピン64が係止する被係止凹部66(被係止部)が設けられていた。しかし、引き込みプレート65の側面(下面)にピンを突設し、ギア61の側面61aに、ピンが係止する被係止凹部を設けてもよい。また、ピン64とは別の凸部を係止部として用いてもよいし、被係止凹部66とは別の凹部を被係止部として用いてもよい。
【0061】
・上記実施形態では、2本の押出成形体2,3のそれぞれの端末2a,3aの間に射出成形部4が配置されていた。しかし、1本の押出成形体を環状に形成し、押出成形体の両端末の間に射出成形部4を配置してもよい。
【0062】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0063】
(1)請求項1において、前記中芯の上側に第3中板が重ねて配置され、前記第3中板の端部は、前記中空部の外面の少なくとも一部を形成する外面側成形面を有し、前記第3中板は、前記中芯の回転と同じ第3の方向に回転可能であることを特徴とするウエザーストリップ用の成形型。
(2)請求項1において、前記中芯は、前記内面側成形面と反対側の端部に回転軸を有し、前記回転軸を中心として前記第1中板から離間する第3の方向に回転可能であることを特徴とするウエザーストリップ用の成形型。
(3)請求項1において、前記ウエザーストリップは、2つの前記押出成形体のそれぞれの端末の間に前記射出成形部を成形してなることを特徴とするウエザーストリップ用の成形型。
【符号の説明】
【0064】
1…ウエザーストリップ
2,3…押出成形体
2a,3a…押出成形体の端末
4…射出成形部
5…中空部
5a…中空部の外面
11…成形型
20…上型
30…下型
40…中型
41…中芯
41a…内面側成形面
42…第1中板
42a,43a…外面側成形面
43…第2中板
44…第3中板
45…中芯の端部
46…第1中板の端部
47…第2中板の端部
48…第3中板の端部
51…中芯における内面側成形面と反対側の端部
52…回転軸
53…突片
61…ギア
61a…ギアの側面
62…レバー
64…係止部としてのピン
65…引き込みプレート
66…被係止部としての被係止凹部
71…スライドプレート
76…ラックギア
78…押圧部としてのシャフト
C1…成形キャビティ
F1…第1の方向
F2…第2の方向
F3…第3の方向
O1…ギアの中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12