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特許7654611植物生育モデルを用いて収穫機を操作するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】植物生育モデルを用いて収穫機を操作するための方法
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/127 20060101AFI20250325BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20250325BHJP
   A01D 91/04 20060101ALI20250325BHJP
   A01F 12/18 20060101ALI20250325BHJP
   A01F 12/44 20060101ALI20250325BHJP
   A01F 12/58 20060101ALI20250325BHJP
   A01F 12/60 20060101ALI20250325BHJP
【FI】
A01D41/127 130
A01B69/00 Z
A01D41/127 140
A01D91/04
A01F12/18 Z
A01F12/44 A
A01F12/58
A01F12/60
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022159779
(22)【出願日】2022-10-03
(62)【分割の表示】P 2018517414の分割
【原出願日】2016-09-30
(65)【公開番号】P2022180612
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】15188312.1
(32)【優先日】2015-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】オーレ、ペーテルス
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-175920(JP,A)
【文献】特開2005-211045(JP,A)
【文献】実開昭61-022446(JP,U)
【文献】特開平11-299351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/127
A01B 69/00
A01D 91/04
A01F 12/18
A01F 12/44
A01F 12/58
A01F 12/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場で作物を収穫するために収穫機を操作する方法であって、
収穫機の作動部の少なくとも1つの動作値が前記作物の少なくとも1つの植物特性の予測値または予測特徴に基づいて決定され、前記動作値は制御デバイスにより設定され前記植物特性の予測値または予測特徴はジオリファレンス様式で決定され、
前記植物特性は植物生育モデルにおいてマッピングされ、
前記植物生育モデルは、前記植物特性の経時的発育をモデル化しかつ収穫時の前記植物特性の予測値または予測特徴を決定し、
前記植物特性が分離デバイスを作動させるためのマイコトキシンの含量、分離デバイスを作動させるためのタンパク質の含量、脱穀扱胴と受網との間の脱穀間隙を設定するための個々の粒径または扱胴速度を設定するための脱粒性であり
前記圃場が区画に分けられ、第1群の区画と少なくとも1つの第2群の区画を前記植物特性に基づいて区別する、方法。
【請求項2】
コンバインハーベスタまたはフォレージハーベスタが収穫機として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物生育モデルが計測データを使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記植物生育モデルが土壌データを使用する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記植物生育モデルがリモートセンシングデータを使用する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
測定デバイスが前記収穫機に取り付けられ、前記植物特性の予測値または予測特徴が前記測定デバイスの信号に基づいて修正される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
以前の生育期間または以前の収穫からの過去値が前記植物特性のモデル化に使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
最初に第1群の区画、次に第2群の区画が収穫される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1の作物コンテナが第1群の区画の1つで収穫が実施される際に満たされ、および第2の作物コンテナが第2群の1つの区画で収穫が実施される際に満たされる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場で作物を収穫するために収穫機を操作する方法であって、収穫機の作動部の少なくとも1つの動作値が前記作物の植物特性に基づいて決定される方法に関する。
【0002】
収穫機がその前で植立している作物を収穫するために圃場を走行する走行速度は、収穫機の駆動モーターまたは歯車機構に関するこのような動作値の一例である。従来技術で、作物群落の高さまたは密度という形の植物特性に応じて走行速度の値を提示する制御装置が開示されている。
【0003】
DE4431824C1には、データレジスタに頼ったコンバインハーベスタの操作方法が開示されている。このデータレジスタに保存されているのは、位置座標に基づいて測定された過去のエリア固有の収量データである。この場合の作物の収量も植物特性に当たる。コンバインハーベスタのその時の位置座標に基づき、データレジスタからのデータがコンバインハーベスタの走行速度の設定値の計算に使用される。この方法では、結局のところ、その時の収穫状況にある程度転用可能であるに過ぎない過去のデータが使用される。
【0004】
DE102005000770B3には、ジオリファレンスデータを用いてコンバインハーベスタの作動部を制御するための方法が記載され、これらのデータはバイオマスの発育(Biomassenetwicklung)中に取得および記録される。このバイオマスデータは、リファレンスマップを作成するために使用され、これがコンバインハーベスタを制御するための基礎として役立つ。例示的実施態様では、バイオマス群落は、収穫に先立ち、バイオマスの発育中に衛星支援検知システムによりジオリファレンスベースで調査される。このバイオマス群落も同様に植物特性と見なすことができ、バイオマス群落マップに記録される。
しかしながら、この方式では、収穫機の様々な作動部の動作値に影響を及ぼす作物の総ての植物特性を検知できるわけではない。また、バイオマス群落の最後の記録と収穫時の間には一定の期間が存在する場合があり、その結果、穀粒含水量またはわら含水量(Kornfeuchte oder Strohfeuchte)などの植物特性に大きな影響を及ぼし得る乾燥期または強雨時などの収穫前の時点の事象が考慮されないこととなる。
【0005】
EP2586286B1には、収穫機に配置されたセンサ集成装置が作物の少なくとも1つの植物特性に対して非接触的に信号を発し、それらを使用して統計値を導出するという、収穫機により挟持される作物の予測調査のための方法が開示されている。さらに、測定デバイスが、収穫機に実際に挟持された作物の植物特性を検知する。この場合の評価ユニットは、センサ集成装置の信号と測定デバイスの信号の統計値の間の関係を自動的に決定する。次に、これらの関係は、挟持される収穫物の植物特性の計算において考慮される。センサ集成装置の信号は、決定された関係を考慮しつつ収穫機の走行速度を制御するために使用される。結果として、走行速度はセンサデバイスの非接触センサの絶対的測定値に依存するが、実施上、常に十分正確に作動するとは限らない。
【0006】
EP2803256A1には、収穫機の前で植立している作物の非接触検出を可能とするセンサが運転室の屋根に取り付けられたコンバインハーベスタが開示されている。これは予測マススループットに関するデータを準備するために使用される。さらに、実際のマススループットは測定デバイスによって決定される。走行速度の制御装置は、測定デバイスの測定値と予測マススループットが互いに比較され、その比較の結果が収穫機の走行速度を設定するためのフィードバック値として使用されるように設計される。しかしながら、コンバインハーベスタの特定の作動部の動作値は植物特性に依存し、測定手段によるその検知は極めて難しいので不正確である場合が多い。運転室の屋根に取り付けられたセンサは当然のことながら植物特性をある程度予測的に決定できるにすぎないという問題もあり、これはコンバインハーベスタの動作値の制御の必要が大きいことを意味する。
【0007】
よって、本発明は、収穫機の少なくとも1つの作動部の動作値が容易かつ十分に決定できる、作物を収穫するために収穫機を操作する方法を提供するという目的に基づく。
【0008】
本発明が基づく目的は、請求項1に従う特徴の組合せにより達成される。本発明の例示的実施態様は、従属クレームから理解することができる。上記ですでに述べたように、収穫中の収穫機の走行速度もまた、収穫機の運転の動作値として理解されるべきである。
【0009】
請求項1によれば、少なくとも1つの植物特性が植物生育モデルにおいてマッピングされ(die wenigstens eine Pflanzeneigenschaft in einem Pflanzenwachstumsmodell abgebildet)、前記植物生育モデルは、前記植物特性の経時的発育(Entwicklung)をモデル化し、かつ、収穫時の前記植物特性の予測値または予測特徴を決定する。
【0010】
少なくとも1つの植物特性は、作物のバイオマスであり得る。作物群落の高さまたは密度もまた、そこで経時的発育がモデル化される植物特性として植物生育モデルにマッピングされる。次に、例えば作物群落の高さに関する収穫日の予測値がこのモデル化から特定され得る。
【0011】
植物生育モデルにおいて記録可能な植物特性のさらなる例は、穀物の場合のわらに関する収量データおよび穀粒に関する収量データ、穀粒含水量およびわら含水量、トウモロコシ穂軸径、トウモロコシ穂軸の初期生育の高さ、トウモロコシ茎径、個々の粒径(千粒重(Tausendkorngewicht))、脱粒性(穂が崩壊する程度)、穀物の場合のタンパク質含量、および病害圧力(マイコトキシン含量)、群落の高さおよび位置リスクである。
【0012】
好ましくは、植物生育モデルは、多くの異なる植物特性を記録する。以下、植物特性または少なくとも1つの植物特性について言及される場合には、これは植物生育モデルによりモデル化される他の総ての植物特性を含む。
【0013】
例えば、作物としてのトウモロコシに関して、トウモロコシ穂軸径、トウモロコシ茎径およびトウモロコシ穂軸の初期生育の高さという植物特性が考慮され、植物生育モデルにおいてモデル化される。例えば、作物の収量データなどの1以上のさらなる植物特性を導出するために1以上の植物特性を使用することができる。一般に、このような第2の植物特性は、第1の植物特性に由来する。それに対応して、植物生育モデルは、第1の植物特性の経時的変動が入手可能であれば、導出された第2の植物特性がその経時的変動で表されることを可能とする。
【0014】
収穫機は、コンバインハーベスタ、フォレージハーベスタまたは植立しているもしくは横たわっている作物が圃場から挟持され、収集され、それによりおそらくはそのままさらなる工程段階に受け継がれる他の機械であり得る。
【0015】
コンバインハーベスタの場合、穀粒作物、特に穀物を刈り取るために高さ調節可能な切断ユニットを使用してもよく、これはその後、穀粒とわらを分離する目的で、回転脱穀扱胴付き受網を備えた脱穀ユニットに供給することができる。扱胴速度の設定および脱穀扱胴と受網の間の脱穀間隙の設定により、脱穀強度を増減することができる。脱穀ユニットの後に分離デバイスを置いてもよく、そこでは、完全に脱穀されなかった残留する穀粒および穂がわらから分離される。清掃デバイスでは、穀粒および非穀粒成分のさらなる分離が行われ得る。清掃デバイスは好ましくは篩と送風機を備え、空気流(風)が篩に作用する。この空気流は、非穀粒成分などのより軽い成分が篩を通って落下せずに吹き飛ばされ、結果として篩を通って落下した穀粒から分離されるという目的を果たす。
【0016】
例えば、植物生育モデルによりわら含水量がマッピングされる場合、本発明によれば、わら含水量の予測値が収穫時に関して決定され得る。植物生育モデルにより高い値が計算されれば、それに対応してより速い扱胴速度(動作値)が脱穀ユニット(作動部)に提供され得る。空気流もまた(ここで、空気流は、作動部としての送風機の、あり得る動作値に当たる)、それに対応して、含水量の高いわらほど重く、より強い空気流でしか飛ばすことができないので、より高く設定され得る。
【0017】
フォレージハーベスタの場合、わら含水量は、切断長を設定するための影響変数として使用され得る。ドライサイレージには、十分に圧密できるように切断長は短い方が有利である。
【0018】
植物生育モデルにより個々の粒径(千粒重)が植物特性として記録される場合、脱穀扱胴と受網の間の脱穀間隙は、このパラメーターに基づいて設定され得る。小粒の場合、送風機の空気流の強度は減じることができ、これはそうしなければ、清掃デバイス内で過度の割合の穀粒が非穀粒成分とともに吹き飛ばされるからである。脱粒性に関する値(穂が穂が崩壊する程度)が収穫時に利用可能であれば、脆い穂の場合には、このように脱穀ユニットの下流の清掃デバイスを弱めるために、扱胴速度をむしろ低い値に設定することができ、これは、より低い扱胴速度では一般に清掃デバイス内の短桿の割合が低くなるためである。
【0019】
挟持板の調節可能な間隔も同様に、本発明による方法により作物の植物特性に基づいて決定される動作値に当たる。例えば、植物生育モデルがトウモロコシ茎径の値を特定する場合、挟持板の間隔はそれに対応して適合するように設けることができる。設定の良い挟持板間隔はクリーンなフィードを確保し、詰まりのリスクを減らす。代わりにまたは加えて、本方法は、挟持板の間隔の影響変数としてトウモロコシ穂軸径も提供し得る。
【0020】
これもまた同様に植物生育モデルによりモデル化できるトウモロコシ穂軸の初期生育の高さが、切断ユニットの高さの影響変数として使用可能である。切断ユニットが高く運搬されるほど損傷のリスクは小さくなり、切断ユニットにおける電力要求が小さくなる。切断ユニットの高さは、植物生育モデルにより計算される作物群落の高さまたは収納リスクにも依存し得る。
【0021】
トウモロコシの場合、バイオマスは、フォレージハーベスタの好ましいまたは最適な走行速度の決定における影響変数として役立ち得る。穀物の場合のわらの収量データは、コンバインハーベスタの走行速度に影響を及ぼし得る。穀物の場合の穀粒に関する収量データは、清掃デバイス内の空気流の速度を設定するために使用することができる。植物生育モデルの結果が穀粒含水量に関して極めて低い値を示せば(極めて乾燥したトウモロコシ)、これに応じて崩壊穀粒が少なくなるように作動部の対応する設定を行うことができる。
【0022】
さらなる例はトウモロコシ植物の穂軸における収量形成である。開花期に短期の干魃ストレスがあれば、総ての初期粒が受精するとは限らない。これらの穂軸が含む穀粒は著しく少ない。この関係は植物シミュレーションモデルでは再現できるが、収穫機のリモートセンシングセンサまたは環境検知センサの手段によっては再現できない。
【0023】
圃場における植物特性の予測値または予測特徴は、ジオリファレンス様式で決定することができる。これは、植物特性の予測値または予測特徴が、ある特定の空間分解能で対応する位置座標に割り当て可能であることを意味する。このような割り当ての結果は、例えば100×100m、50×50mまたはさらには5×5mなどの高い空間分解能で植物特性の値を表すマップであり得る。1以上の植物特性の絶対値、または相対値であっても、各エリア要素に関して保存することができる。各エリア要素には、例えば、「1、2、…5」、最大5または「極めて小さい、小さい、中間、大きい、および極めて大きい」という、植物特性に関する量的クラスのみを割り当ててもよい。このマップまたは対応するデータ記録は収穫機の制御デバイスに供給されてよく、次にその制御デバイスは個々の作動部を、それらの動作値が収穫の最適結果をもたらすように設定する
【0024】
植物生育モデルは、収穫時に関する植物特性の予測値または予測特徴を決定し、この時機は例えば収穫が行われる週または日であり得る。しかしながら、1日の経過で変化する植物特性の値または特徴を正確にこのように特定可能とするためには、この期間はわずか数時間、例えば、3時間未満とすることもできる。よって、収穫時は、外部から支持される入力変数として理解することができる。別の例示的実施態様では、好ましいまたは最適な時期は植物生育モデルにより計算される。
【0025】
1つの例示的実施態様では、植物特性の特徴の値に影響を及ぼし得る気象データが使用される。例えば、気温、大気湿度、日照時間および/または降水量を、好ましくは高空間分解能で考慮することができる。これらの変数は一方で作物の生育に決定的な影響を及ぼし、結果として、多くの植物特性に影響を及ぼす。他方、これらの変数はまた、例えばわら含水量などのいくつかの植物特性に直接的影響を及ぼす場合もある。
【0026】
本発明による方法では、作物の生育に影響を及ぼす土壌データもまた使用され得る。例えば、土壌の含水量が、圃場のエリア要素として生育期間の異なる時点で計算され得る。
この値に基づき、植物生育モデルは次に作物がその土壌から抽出する水の量をモデル化することができる。土壌の含水量は、好ましくは、ここでも個々のエリア要素に関して高い空間分解能で表され、この場合にも、気象データを考慮しつつ計算することができる。
【0027】
1つの例示的実施態様では、植物生育モデルは、衛星により記録されたリモートセンシングデータを使用する。例えば、植生指数(例えば、NDVI)は、衛星データに基づきジオリファレンス様式で計算し、圃場のバイオマスを導出するために使用することができる。植生指数に関するこのようなデータは、一方でリモートセンシングによっては検知できない他の植物特性の基礎として役立ち得る。他方、リモートセンシングデータは、植物生育のモデル化において特定の仮定を検証し、それに対応して適合させるために使用することができる。例えば、植物生育モデルが圃場のバイオマスを計算する場合、この植物特性は、 衛星データを使用することにより確認およびおそらくは適合させることができる。
【0028】
加えて、地面の土壌の湿り気はリモートセンシングの手段によって測定することが可能である。地面の湿り気は、この場合、土壌の含水量の計算を考慮することができる。この場合、植物生育モデルは、地面の湿り気に関するデータを間接的に、具体的には、土壌の含水量をモデル化することによって使用しているだけとなる。測定デバイスを収穫機に取り付けることができ、その測定デバイスの信号に基づいて植物特性の予測値または予測特徴が計算される。測定デバイスは、非接触センサおよび/または実際に収穫された作物に対するセンサを含んでなり得る。例えば、非接触センサは収穫機の運転室の屋根に取り付けられ、作物群落の高さを測定するように設計され、その測定結果が、植物生育モデルにより計算された群落の高さを確認し、おそらくは適合させるために使用され得る。植物生育モデルにより計算された群落の高さが測定された群落の高さから逸脱していることが判明すれば、少なくともこの植物特性は、この逸脱に基づいて相応に修正することができる。このような修正(Kalibrierung)は他の植物特性にも影響を及ぼし得るので、次に、それも同様に適合させることができる。修正は収穫作業の開始時に一度または他には収穫中継続的に、すなわち、収穫機が圃場を走行し、作物を収集している際に行うことができる。
【0029】
修正はまた、実際に収穫された作物に対するセンサによって行ってもよい。例えば、このようにして、収穫された穀粒の重量を、収穫機の特定の穀粒損失を考慮しつつ、植物生育モデルに基づいて収穫されたかもしれない重量と比較することができる。その後、対応する植物特性を再調整することができる。この較正はまたジオリファレンス様式で行ってもよく、ここで、実際に収穫された作物に対するセンサのジオリファレンス収量データが、植物生育モデルのデータの対応するジオリファレンスと比較される。
【0030】
以前の生育期間または以前の収穫からの過去値を、植物特性のモデル化に使用してもよい。このようにして、植物特性のモデル化におけるある特定の仮定を検証し、より正確に公式化することができる。
【0031】
圃場は区画に分けることができ、次に、植物特性に関して互いに異なる第1群の区画と少なくとも1つの第2群の区画の間を区別することができる。例えば、作物のタンパク質含量の閾値を定義することができ、その結果、その閾値の下の総ての区画は第1群に割り当てられ、閾値の上のタンパク質含量を特徴とする総ての区画は第2群に割り当てられる。空間分解能に応じて、これらの区画は個々のエリア要素であり得るが、それらはまた複数のエリア要素から構成されてもよい。例示的実施態様では、まず第1群の区画、次に第2群の区画が収穫される。このようにして、異なるタンパク質含量を特徴とする選択的収穫を行うことが可能である。
【0032】
もう1つの可能性として、第1の作物コンテナが第1群の区画の1つで収穫が実施される際に満たされ、第2の作物コンテナが第2群の区画の1つで収穫が実施される際に満たされる。この場合、収穫機は、植物特性としてのタンパク質含量に応じて第1の作物コンテナまたは第2の作物コンテナを満たす分離デバイスを含んでなる。分離デバイスの制御において、収穫機の走行速度および圃場のあるエリア要素から収穫機の分離デバイスに作物を輸送するのに要される時間によって生じる一定の時間遅延が考慮され得る。
【0033】
上記の選択的収穫のためのもう1つの適用はマイコトキシンの含量であり、これも同様に植物生育モデルの計算の結果であり得る。ここでも、選択的収穫は、異なる時点で区画の収穫を行うことにより(まず、幾分か低いマイコトキシン含量を有する区画、次に、幾分か高いマイコトキシン含量を有する区画が収穫される)行うことができるか、または分離デバイスが作動され、第1の作物コンテナもしくは第2の作物コンテナのいずれかに作物を供給する方式により行うことができる。