(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】低分子量の両親媒性ブロック共重合体を含むナノ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/51 20060101AFI20250325BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20250325BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20250325BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20250325BHJP
【FI】
A61K9/51
A61K9/19
A61K47/34
A61K31/337
(21)【出願番号】P 2022540792
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(86)【国際出願番号】 KR2020019374
(87)【国際公開番号】W WO2021137610
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0179161
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521274533
【氏名又は名称】サムヤン ホールディングス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG HOLDINGS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】31,Jong-ro 33-gil,Jongno-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ゼヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボンオ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンシキ
(72)【発明者】
【氏名】イ,サウォン
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3556352(EP,A1)
【文献】特表2012-513985(JP,A)
【文献】特表2012-513984(JP,A)
【文献】特表2018-506518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-9/72
47/00-47/69
31/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)有効成分、数平均分子量
3000~3700の両親媒性ブロック共重合体及び
エタノールを混合する工程、
(2)得られた工程(1)の混合物から
エタノールを除去して、混合物中の
エタノール含量を
0.8w/v%以下に下げる工程
、
(3)得られた工程(2)の混合物に水性媒質を加えて、ミセルを形成させる工程
及び
(4)工程(3)で形成されたミセルを凍結乾燥する工程
を含
み、
両親媒性ブロック共重合体が、ポリエチレングリコール、モノメトキシポリエチレングリコール及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる親水性ブロック(A)、並びに
ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(乳酸-グリコリド)及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる疎水性ブロック(B)を含み、
エタノールの除去が30℃超45℃以下の温度で行われ、
ミセルの形成が35℃未満の温度で行われ、
工程(3)で形成されるミセルが3時間以内に凍結乾燥されることを特徴とするナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
ミセルを形成させる工程が、形成されたミセルをろ過する過程を含む請求項1に記載のナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
形成されたミセルが、凍結乾燥が行われる前まで0℃~15℃に維持される請求項
1に記載のナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
有効成分が、難水溶性薬物である請求項1~
3のいずれか1項に記載のナノ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子量の両親媒性ブロック共重合体を含むナノ粒子の製造方法に関し、より具体的には、低分子量を有する両親媒性ブロック共重合体を用いて薬物含有ナノ粒子を製造することにより、優れた安定性を有するナノ粒子を高収率で製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物活性剤の所望の治療効果を達成するために、適切な量で投与される薬物が体内の標的細胞に送達される必要がある。このため、生分解性高分子を用いたサブミクロン微粒子薬物送達システムが研究されており、代表的には、生分解性高分子を用いたナノ粒子システム及び高分子ミセルシステムが、静脈内投与された薬物の体内分布を変化させて副作用を軽減し、有効性を向上させる技術として報告されている。このような薬物送達システムは、標的器官、組織又は細胞への薬物の放出を制御し、優れた生体適合性を有し、難溶性薬物の可溶化能力及び薬物の生体内利用率(bioavailability)を向上させることが報告されている。
【0003】
現在、高分子ナノ粒子や高分子ミセルの製造に主に使用されている高分子は、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)などの親水性ブロック及びポリ乳酸(PLA)などの疎水性ブロックからなる二重ブロック両親媒性ブロック共重合体(mPEG-PLA)であり、この高分子は、水溶液中で加水分解する性質があるため、最終製品として凍結乾燥粉末又は固形物で提供される。前記高分子を薬物担体として使用するためには、凍結乾燥して固体状態で保管し、使用直前に蒸留水に再溶解する必要がある。このような高分子は、分子量が大きくなると再溶解に時間を要するという短所を有する。
【0004】
一方、分子量が小さくなって再溶解時間を短くすると、製造工程中に析出物の生成、保管又は輸送中の析出をもたらすナノ粒子の安定性の低下、又は患者に投与されたときに十分な生体利用率の達成の困難など、製品の品質が大幅に低くなる恐れがある。
【0005】
したがって、ナノ粒子の安定性に影響を与えることなく再溶解時間を短縮することができる低分子量高分子を含むナノ粒子薬物を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高収率で安定性を維持しながら、短縮された時間で再溶解できる薬物含有ナノ粒子の製造方法及びそのナノ粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、
(1)有効成分、数平均分子量3,800未満の両親媒性ブロック共重合体、及びC1~C5アルコールを混合する工程、(2)得られた工程(1)の混合物からC1~C5アルコールを除去して、混合物中のC1~C5アルコール含量を2.5w/v%未満に下げる工程、及び(3)得られた工程(2)の混合物に水性媒質を加えて、ミセルを形成させる工程を含むナノ粒子の製造方法を提供する。
【0008】
一実施形態において、前記C1~C5アルコールの除去が、30℃超の温度で行われてもよく、より具体的には、30℃超50℃未満の温度で、2時間未満で行われてもよい。
【0009】
一実施形態において、前記ミセルの形成が、35℃未満の温度で行われてもよく、より具体的には、10℃超35℃未満の温度で行われてもよい。
【0010】
一実施形態において、前記ミセルを形成する工程が、形成されたミセルをろ過する過程を含むことができる。
【0011】
一実施形態において、前記工程(3)で形成されたミセルを凍結乾燥する工程をさらに含むことができる。
【0012】
一実施形態において、前記形成されたミセルが、凍結乾燥が行われる前まで0℃~15℃に維持され得る。
【0013】
一実施形態において、前記形成されたミセルが、3時間以内に凍結乾燥され得る。
【0014】
一実施形態において、両親媒性ブロック共重合体が、ポリエチレングリコール又はその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる親水性ブロック(A);及びポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(乳酸-グリコリド)、ポリマンデル酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサン-2-オン、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカーボネート及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる疎水性ブロック(B)を含むことができる。
【0015】
一実施形態において、前記有効成分が、難水溶性薬物であってもよい。
【0016】
本発明の別の態様において、有効成分、数平均分子量3,800未満の両親媒性ブロック共重合体、及びC1~C5アルコールを含み、前記C1~C5アルコール含量が0~2.5w/v%未満であるナノ粒子を提供する。
【0017】
一実施形態において、前記ナノ粒子は、本発明の実施形態の製造方法によって製造されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ナノ粒子の製造工程中にカプセル化された薬物の析出が大幅に低減されることから、安定性が向上し、再溶解時間が大幅に短縮された薬物含有ナノ粒子を高収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、用語「ナノ粒子」は、ミセル又はミセル組成物と同じ意味で使用することができる。一実施形態では、「ナノ粒子」は、サブミクロンサイズ(例えば、粒径)、すなわち、1マイクロメートル未満(例えば、10~900nm、又は10~500nm)を有することができる。
【0020】
用語「両親媒性ブロック共重合体」は、水溶液中でミセルを形成することができ、「ミセル高分子」と同じ意味で使用することができる。両親媒性ブロック共重合体は、親水性ブロック(A)と疎水性ブロック(B)からなるA-B型の二重ブロック共重合体又はB-A-B型の三重ブロック共重合体であってもよい。
【0021】
一実施形態において、前記両親媒性ブロック共重合体中の親水性ブロックの含量は、共重合体の合計100重量%に対して、20~95重量%、より具体的には40~95重量%であってもよい。また、両親媒性ブロック共重合体中の疎水性ブロックの含量は、共重合体の合計100重量%に対して、5~80重量%、より具体的には5~60重量%であってもよい。
【0022】
本発明において、前記両親媒性ブロック共重合体の数平均分子量は、3,800未満である。両親媒性ブロック共重合体の数平均分子量が3,800以上の場合、再溶解時間が長くなることがある。
【0023】
一実施形態において、前記両親媒性ブロック共重合体の数平均分子量は、1,500以上、2,000以上、2,500以上、3,000以上又は3,300以上であってもよく、また、3,700以下、3,600以下、3,580以下、3,550以下、3,500以下、3,450以下又は3,400以下であってもよい。
【0024】
前記親水性ブロックは、生体適合性を有する高分子であり、具体的には、ポリエチレングリコール又はその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1つ以上を含んでいてもよく、より具体的には、ポリエチレングリコール、モノメトキシポリエチレングリコール及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1つ以上を含んでいてもよい。
【0025】
前記疎水性ブロックは、生分解性を有する高分子であり、アルファ(α)-ヒドロキシ酸由来単量体の高分子であってもよく、具体的には、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(乳酸-グリコリド)、ポリマンデル酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサン-2-オン、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカーボネート及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1つ以上を含んでいてもよく、より具体的には、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(乳酸-グリコリド)及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1つ以上を含んでいてもよい。
【0026】
一実施形態において、前記C1~C5アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はそれらの混合物であってもよい。前記アルコールは、水に溶解した水溶液であってもよく、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸、アセトニトリル、ジオキサン及びそれらの組み合わせなどの有機溶媒との混合物であってもよい。
【0027】
一実施形態において、前記工程(1)における有効成分、両親媒性ブロック共重合体及びアルコールの混合は、40℃~70℃の温度で1時間~6時間行うことができる。
【0028】
一実施形態において、前記工程(2)におけるC1~C5アルコールの除去は、30℃超の温度、より具体的には、30℃超50℃未満の温度で2時間未満で行うことができる。
【0029】
より具体的には、前記アルコールの除去は、30℃超45℃以下、又は32℃~42℃の温度で、30分~100分、40分~80分、又は50分~70分で行うことができる。アルコールの除去温度が高すぎると類縁物質が増加し、低すぎると十分なアルコール除去が困難になる場合がある。
【0030】
前記アルコール除去後に得られた混合物(すなわち、ミセル化前の混合物)中のC1~C5アルコール含量は、2.5w/v%未満(すなわち、0~2.5w/v%未満)であり、より具体的には、2.0w/v%以下、1.5w/v%以下、1.0w/v%以下、0.8w/v%以下、0.6w/v%以下、又は0.5w/v%以下であってもよい。ミセル化前に2.5w/v%以上の量のアルコールが混合物中に残っていると、薬物又は高分子の析出が発生する可能性がある。
【0031】
前記ミセルを形成する工程で使用される水性媒体は、例えば、通常の水、蒸留水、注射用蒸留水、生理食塩水、5%ブドウ糖、バッファー及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれるものであってもよいが、それに限定されない。
【0032】
一実施形態において、前記ミセルの形成は35℃未満の温度で行うことができ、より具体的には、10℃超35℃未満の温度で行うことができる。
【0033】
より具体的に、前記ミセルは15℃~32℃、20℃~30℃、又は25℃~28℃で形成することができる。ミセル形成時の温度が高すぎると類縁物質が増加したり、薬物が析出したりする可能性があり、温度が低すぎると高分子と薬物の混合物が十分に溶解せず、ミセルがうまく形成されないか、ミセル形成に時間がかかりすぎる可能性がある。また、前記ミセル化は、5時間未満、30分~4時間、60分~4時間、又は90分~3時間30分で行うことができる。
【0034】
一実施形態において、前記ミセルを形成する工程は、形成されたミセルをろ過する過程を含むことができる。
【0035】
一実施形態では、前記ろ過は、0.1~0.8μm、0.1~0.6μm、又は0.2~0.5μmフィルターを使用して、0℃~25℃、0℃~20℃、又は0℃~15℃で行うことができる。前記ろ過は、必要に応じて、続けて異なる温度条件で異なるフィルターを使用して行うことができ、又は各工程に応じてさらに数回繰り返すことができる。
【0036】
一実施形態において、前記形成されたミセル(又は形成されろ過されたミセル)が凍結乾燥される場合、形成されたミセルは、凍結乾燥が行われる前まで0℃~15℃に維持することができ、3時間以内に凍結乾燥することができる。より具体的に、前記形成されたミセルは、凍結乾燥が行われる前まで0℃~12℃、又は0℃~10℃に維持することができ、10分~3時間、30分~3時間、又は1時間~3時間で凍結乾燥工程に適用することができる。
【0037】
別の実施形態において、形成されたミセルは、保管せずに、直ちに凍結乾燥工程に適用することができる。「維持」は、保管と同じ意味で使用することができる。
【0038】
一実施形態において、凍結乾燥は、凍結乾燥助剤(凍結乾燥剤とも呼ばれる)の存在下で行うことができる。前記凍結乾燥助剤は、糖、糖アルコール及びそれらの混合物からなる群から選択できる。前記糖は、ラクトース、マルトース、スクロース及びトレハロースからなる群から選ばれる一つ以上であってもよく、前記糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール及びラクチトールからなる群から選ばれる一つ以上であってもよい。前記凍結乾燥助剤は、凍結乾燥組成物が固形物を維持できるように添加される。また、前記凍結乾燥助剤は、高分子ナノ粒子組成物の凍結乾燥後、再溶解過程において短時間で均一に溶解する。一実施形態では、凍結乾燥助剤の含量は、凍結乾燥組成物の全乾燥重量100%に対して、1~90重量%、より具体的には10~60重量%である。
【0039】
一実施形態において、前記有効成分は、難水溶性薬物であってもよい。
【0040】
一実施形態では、前記難水溶性薬物は、水(25℃)への溶解度が100mg/mL以下の薬物から選択できる。前記難水溶性薬物は、抗癌剤(antineoplastic agents)、抗真菌剤(antifungal agents)、免疫抑制剤(immunosuppressants)、麻酔剤(analgesics)、抗炎症剤(anti-inflammatory agents)、抗ウイルス剤(antiviral agents)、鎮静剤(anxiolytic sedatives)、造影剤(contrasting agents)、コルチコステロイド(corticosteroids)、診断用薬(diagnostic agents)、診断造影剤(diagnostic imaging agents)、利尿剤(diuretics)、プロスタグランジン(prostaglandins)、放射性医薬品(radiopharmaceuticals)、ステロイド(steroid)を含む性ホルモン剤(sex hormones)及びそれらの組み合わせから選ばれてもよいが、それに限定されない。
【0041】
一実施形態において、前記難水溶性薬物は、抗癌剤から選ぶことができ、具体的には、タキサン抗癌剤であってもよい。前記タキサン抗癌剤は、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、7-エピパクリタキセル、t-アセチルパクリタキセル、10-デスアセチルパクリタキセル、10-デスアセチル-7-エピパクリタキセル、7-キシロシルパクリタキセル、10-デスアセチル-7-グルタリルパクリタキセル、7-N,N-ジメチルグリシルパクリタキセル、7-L-アラニルパクリタキセル及びカバジタキセルよりなる群から選ばれる1種以上であってもよく、より具体的には、パクリタキセル、ドセタキセル又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0042】
本発明の別の態様によれば、有効成分、数平均分子量3,800未満の両親媒性ブロック共重合体、及びC1~C5アルコールを含み、前記C1~C5アルコール含量が0~2.5w/v%未満であるナノ粒子が提供される。
【0043】
前記ナノ粒子は、本発明の一実施形態による製造方法によって製造されたものであってもよい。
【0044】
一実施形態によるナノ粒子は、凍結乾燥物の場合、水溶液中での再溶解時間が、5分以内、4分以内、又は3分以内であってもよい。前記再溶解時間は、従来公知の方法によって測定することができ、例えば、水溶液中で凍結乾燥物であるナノ粒子を、溶液が透明になるまで、室温で400~600rpmで撹拌するのに要する時間として測定することができる。
【0045】
一実施形態によるナノ粒子は、溶液として調製された後、6時間以上、8時間以上、10時間以上又は12時間以上の薬物の析出時間を有していてもよい。前記析出時間は、従来公知の方法で測定することができ、例えば、ナノ粒子を水溶液に溶解して透明な溶液を製造し、次に溶液を室温に放置したとき、溶液が濁るまで、又は沈殿が観察されるまでに要する時間として測定することができる。
【0046】
本発明の理解を容易にするために、以下に例を提供する。しかし、以下の実施例は、本発明を理解するためだけのものであり、本発明の範囲は、それによっていかなる方法でも限定されない。
【実施例】
【0047】
実施例1~3及び比較例1:エタノール除去温度に応じたドセタキセルを含有する高分子ミセルの製造
モノメトキシポリエチレングリコール-(ポリ-D,L-乳酸)共重合体(mPEG-PDLLA)19gとドセタキセル1gを秤量し、エタノール(EtOH)4mLを加え、完全に溶解して透明な溶液になるまで60℃で撹拌した。次に、丸底フラスコ付きの回転式減圧蒸留器を利用して、下記表1に示す温度及び時間条件に従って、減圧蒸留によりエタノールを除去した。その後、温度を28℃に下げ、室温の蒸留水230mLを加え、溶液が青色で透明になるまで反応を行い、3時間以内に高分子ミセルを形成させた。
【0048】
凍結乾燥物として調製する際、前記生成された高分子ミセルに、凍結乾燥剤としてマンニトール5gを直接加えて完全に溶解し、空隙サイズが200nmを有するフィルターでろ過した後、凍結乾燥して、ドセタキセルを含有する高分子ミセル組成物を粉末で製造した。
【0049】
【0050】
実施例4及び比較例2、3:ミセル化条件に応じたドセタキセルを含有する高分子ミセルの製造
下記表2に示す条件に従って減圧蒸留によりエタノールを除去したことを除いて、前記実施例1~3及び比較例1と同様の手順を行った。エタノール除去後、残留エタノール含量は約0.50w/v%であった。その後、下記表2に示すミセル化温度まで温度を下げ、室温の蒸留水230mLを加え、所定時間反応させて、高分子ミセルを形成した。
【0051】
【0052】
実施例5及び比較例4:保管条件に応じたドセタキセルを含有する高分子ミセルの製造
ろ過したミセルを下記表3に示す条件下で保管したことを除いて、前記実施例1と同様の手順を行い、凍結乾燥剤としてのマンニトール5gを加えて完全に溶解し、空隙サイズ200nmのフィルターでろ過した後、凍結乾燥して、ドセタキセルを含有する高分子ミセル組成物を粉末で製造した。
【0053】
【0054】
試験例1:析出時間を比較するための試験
実施例1~3及び5、並びに比較例1、3、4のそれぞれで製造されたドセタキセルを含む高分子ミセル2gに生理食塩水38mLを加え、IKA VIBRAX撹拌機を使用して溶解した後、溶液を静置して、30分ごとにドセタキセルの析出を観察した。その結果を下記表4に示す。
【0055】
【0056】
前記表4から分かるように、エタノールの残留含量が多い場合(比較例1)、析出時間が大幅に短縮された。また、ミセル化温度が高すぎる場合(比較例3)、ミセル化中に薬物が析出するため、製造が不可能であった。さらに、ミセル化後、室温で長時間放置した場合(比較例4)、析出時間が著しく短縮された。
【0057】
試験例2:類縁物質含量を比較するための試験
試験溶液は、実施例1~4及び比較例2のそれぞれで製造されたドセタキセルが含まれた高分子ミセルの調製液を45μmのろ紙でろ過し、ろ過した溶液1mLをHPLC移動相溶液4mLと混合した。調製された試験液を以下の条件でHPLC分析し、類縁物質含量を比較した。類縁物質の含量(%)を下記表5に示す。
【0058】
HPLC条件:
カラム:粒径5μm、孔径100Åのシリカゲル粒子を有し、C18をコートした長さ250mm、内径4.6mmのステンレスカラム又はそれに類似したもの
移動相:アセトニトリル/メタノール/水混合液(26/32/42、v/v/v)
流速:1.5mL/分
検出器:紫外吸光光度計(測定波長232nm)
【0059】
【0060】
前記表5から分かるように、ミセル化温度が高すぎる場合(比較例2)、調製液中の類縁物質の含量が増加した。
【0061】
試験例3:再溶解時間を比較するための試験
実施例1~3及び比較例1、高分子の分子量が異なる比較例5のそれぞれで調製したドセタキセルが含まれた高分子ミセル2gに生理食塩水38mLを加え、IKA VIBRAX撹拌機を使用して500rpmの撹拌速度で凍結乾燥固形物が完全に溶解するのにかかる時間(再溶解時間)を測定した。その結果を下記表6に示す。
【0062】