IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キューラブ・メディカル・リミテッドの特許一覧

特許7654673層状マイクロプローブを備えた感知システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】層状マイクロプローブを備えた感知システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1486 20060101AFI20250325BHJP
【FI】
A61B5/1486
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022543520
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 IB2021000012
(87)【国際公開番号】W WO2021144651
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】62/962,677
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522012592
【氏名又は名称】キューラブ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QuLab Medical Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】レフラー,シャロン
(72)【発明者】
【氏名】タミル,イダン
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】マササ,ヒラ
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-514615(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0199873(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0259652(US,A1)
【文献】WELTIN et al.,Microfabiricated, amperometric, enzyme-based biosensors for in vivo applications,Anal Bioanal Chem,2016年,408,4503-4521
【文献】YANG et al.,Multifunctional Freestanding Microprobes for Potential Biological Applications,Sensors,2019年,19, 2328
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538、5/06-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのマイクロプローブを備える感知システムであって、
前記マイクロプローブは、層状構造と、少なくとも1つの封止材とを備え、
前記層状構造は、
作用電極を有する少なくとも1つのセンサを備え、前記層状構造の積層方向から見たときに第1の外周部を備え、第1の材料靱性を有する第1材料を備え、第1の面と第1の面とは反対側の第2の面とを備える感知ユニットと、
前記感知ユニットの前記第1の面上に位置づけられ、応力下で変形するように構成された変形可能層と、
前記感知ユニットとは反対側において前記変形可能層上に位置づけられ、前記層状構造の積層方向から見たときに第2の外周部を備え、該第2の外周部の中に前記第1の外周部が完全に収まり、前記第1の材料靱性よりも大きい第2の材料靱性を有する第2材料を備える延性層と、
前記感知ユニットの前記第2の面上に位置づけられたセンサインターフェース層と、を含み、
前記少なくとも1つの封止材は、前記層状構造を少なくとも部分的に封入し、前記層状構造を周囲環境から機械的に隔離するように構成されている、感知システム。
【請求項2】
前記封止材は、前記第1材料、前記第2材料、前記変形可能層の材料、又は前記センサインターフェース層の材料のうちの少なくとも1つに由来するデブリを封じ込めるように構成されている、請求項1に記載の感知システム。
【請求項3】
前記封止材は、化学的不活性、生体適合性、生分解性、防汚性、疎水性、又は親水性のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の感知システム。
【請求項4】
前記封止材は、前記層状構造を前記周囲環境から電気的に絶縁するように構成されている、請求項1に記載の感知システム。
【請求項5】
前記封止材は、前記センサインターフェース層に対して開放された開口部を備える、請求項1に記載の感知システム。
【請求項6】
前記開口部は、液体に接触すると体積が増大するように構成されたヒドロゲルを包含している、請求項5に記載の感知システム。
【請求項7】
前記封止材は、前記層状構造を完全に封入している、請求項1に記載の感知システム。
【請求項8】
前記感知ユニットの先端の少なくとも一部は封入されていない、請求項1に記載の感知システム。
【請求項9】
前記センサインターフェース層は、化学的不活性、生体適合性、生分解性、防汚性、疎水性、又は親水性のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の感知システム。
【請求項10】
前記センサインターフェース層は、10ナノメートルから200ミクロンまでの範囲内の厚さを有する、請求項1に記載の感知システム。
【請求項11】
前記変形可能層は、接着剤である、請求項1に記載の感知システム。
【請求項12】
前記変形可能層は、1ミクロンから100ミクロンまでの範囲内の厚さを有する、請求項1に記載の感知システム。
【請求項13】
前記感知ユニットは、第1接着剤、変形可能材料、及び第2接着剤を有する多層構造を介して前記延性層に接着されている、請求項1に記載の感知システム。
【請求項14】
前記変形可能層の厚さは、前記感知ユニット及び前記延性層のそれぞれの表面粗さよりも大きい、請求項1に記載の感知システム。
【請求項15】
前記変形可能層は、前記感知ユニットを前記延性層から電気的に絶縁している、請求項1に記載の感知システム。
【請求項16】
前記延性層は、金属を含む、請求項1に記載の感知システム。
【請求項17】
前記延性層は、前記感知ユニットに隣接する表面に凹部を備え、
前記感知ユニットは、前記凹部内に受け入れられ、前記凹部によって少なくとも部分的に包囲されている、請求項1に記載の感知システム。
【請求項18】
前記感知ユニットは、シャフトと先端を備える、請求項1に記載の感知システム。
【請求項19】
前記延性層は、シャフトと先端を備える、請求項18に記載の感知システム。
【請求項20】
前記延性層の前記先端は、前記感知ユニットの前記先端を越えて突出しており、これにより、前記延性層は、使用中に加えられる軸方向の挿入力を吸収するように構成されている、請求項19に記載の感知システム。
【請求項21】
層状構造と、少なくとも1つの封止材とを備え、
前記層状構造は、
作用電極を有する少なくとも1つのセンサを備え、前記層状構造の積層方向から見たときに第1の外周部を備え、第1の材料靱性を有する第1材料を備え、第1の面と第1の面とは反対側の第2の面とを備える感知ユニットと、
前記感知ユニットの前記第1の面上に位置づけられ、応力下で変形するように構成された変形可能層と、
前記感知ユニットとは反対側において前記変形可能層上に位置づけられ、前記層状構造の積層方向から見たときに第2の外周部を備え、該第2の外周部の中に前記第1の外周部が完全に収まり、前記第1の材料靱性よりも大きい第2の材料靱性を有する第2材料を備える延性層と、
前記感知ユニットの前記第2の面上に位置づけられたセンサインターフェース層と、を含み、
前記少なくとも1つの封止材は、前記層状構造を少なくとも部分的に封入し、前記層状構造を周囲環境から機械的に隔離するように構成されている、マイクロプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2020年1月17日に出願されて「層状マイクロプローブを備えた感知システム」と題された、自己所有の同時係属中の米国仮出願第62/962,677号に関連し、その利益を主張する国際特許(PCT)出願であり、当該仮出願の内容は、その全体における参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[分野]
本開示は、1つまたは複数の層状マイクロプローブまたはマイクロニードルを備えたセンシングおよび感知システム、並びに、これらに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロニードル、マイクロプローブ、または神経プローブに取り付けられるセンサなどのマイクロセンシングシステムは、生物学的および他の用途に一般的に使用されている。
【発明の概要】
【0004】
本概要は、本発明の様々な態様の上位の概要であり、以下の詳細な説明のセクションでさらに詳細に説明されるいくつかの概念を紹介する。本概要は、主張事項の重要または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、主張事項の範囲を決定するために単独で使用されることも意図されていない。発明特定事項は、明細書全体、任意または全ての図面、および各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【0005】
本開示の実施形態は、少なくとも1つのマイクロプローブを備える感知システムに関する。前記マイクロプローブは、少なくとも1つのセンサを有する感知ユニットを含む層状構造(重層構造)からなる。前記少なくとも1つのセンサは作用電極を含み、前記感知ユニットは、前記層状構造の積層方向から見たときに第1の外周部(周縁部)を有し、前記感知ユニットは、第1の材料靭性を有する第1の材料を含み、前記感知ユニットは、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面とを有する。前記層状構造は、前記感知ユニットの第1の面に配置された変形可能層をさらに備える。前記変形可能層は、応力下(ストレス下)で変形するように構成される。前記層状構造は、前記感知ユニットとは反対側において前記変形可能層上に配置された延性層をさらに備える。前記延性層は、前記層状構造の積層方向から見たときに第2の外周部(周縁部)を有する。前記第1の外周部は完全に第2の外周部内にある。前記延性層は、前記第1の材料靭性よりも大きい第2の材料靭性を有する第2の材料を含む。前記変形可能層はまた、前記感知ユニットを前記延性層に結合し、前記感知ユニットに加えられたストレス(応力)から生じるひずみを前記延性層に部分的に伝達するように構成される。前記層状構造は、前記感知ユニットの前記第2の面に配置されたセンサインターフェース層(センサ接合層、センサ連絡層)をさらに備える。前記マイクロプローブは、少なくとも1つの封止材(カプセル材料)をさらに備える。前記少なくとも1つの封止材は、前記層状構造を少なくとも部分的に封入(カプセル化)する。前記少なくとも1つの封止材は、前記層状構造を周囲環境から隔離するように構成される。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記封止材は、前記第1材料、前記第2材料、変形可能層の材料、又はセンサインターフェースの材料のうちの少なくとも1つに由来するデブリ(破片)を封じ込める(包含する)ように構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記封止材は、化学的不活性、生体適合性、生分解性、防汚性、疎水性、又は親水性のうちの少なくとも1つを有する。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記封止材は、前記層状構造を前記周囲環境から機械的に隔離するように構成されている。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記封止材は、前記層状構造を前記周囲環境から電気的に絶縁(隔離)するように構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記封止材は、100ナノメートルから200ミクロンまでの範囲内の厚さを有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記封止材は、前記センサインターフェース層に対して開放された開口部を備える。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記開口部は、液体に接触すると体積(容量)が増大するように構成されたヒドロゲルで覆われるか又は満たされている。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記封止材は、前記層状構造を完全に封入(カプセル化)している。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記感知ユニットの先端の少なくとも一部は封入(カプセル化)されていない。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記封止材は、ポリアミド、パリレン、ポリウレタン、又はこれらの組み合わせを備える。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記センサインターフェース層は、化学的不活性、生体適合性、生分解性、防汚性、疎水性、又は親水性のうちの少なくとも1つを有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記センサインターフェース層は、10ナノメートルから200ミクロンまでの範囲内の厚さを有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記センサインターフェース層は、ヒドロゲルを包含している。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記変形可能層は、接着剤である。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記変形可能層は、ポリアクリレート、ポリアミド、SU-8、ポリメチルメタクリレート、パリレン、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、又はこれらの組み合わせからなる。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記変形可能層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、又はこれらの組み合わせによって補強されている。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記変形可能層は、1ミクロンから100ミクロンまでの範囲内の厚さを有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記感知ユニットは、第1接着剤、変形可能材料(前記変形可能層の材料)、及び第2接着剤を有する多層構造(層状構造)を介して前記延性層に接着されている。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記変形可能層の厚さは、前記感知ユニット及び前記延性層のそれぞれの表面粗さよりも小さい。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記変形可能層は、前記感知ユニットを前記延性層から電気的に絶縁している。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記感知ユニット及び前記延性層の少なくとも一方は、酸化物(酸化膜)、金属酸化物(金属酸化膜)、自然酸化物(自然酸化膜)、ポリマー、又はこれらの組み合わせによって封止(カプセル化)されている。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記延性層は、例えば、ステンレス鋼、コバルト、チタン、アルミニウム、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、および、これらの合金を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記延性層は、前記感知ユニットに隣接する表面に凹部を備え、前記感知ユニットは、前記凹部内に受け入れられ、前記凹部によって少なくとも部分的に包囲されている。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記凹部の深さは、前記延性層に隣接している前記感知ユニットの第1の面と、前記第1の面とは反対側における前記感知ユニットの第2の面との間の寸法に等しい。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記凹部の深さは、前記延性層に隣接している前記感知ユニットの第1の面と、前記第1の面とは反対側における前記感知ユニットの第2の面との間の寸法よりも大きい。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記凹部の深さは、前記延性層に隣接している前記感知ユニットの第1の面と、前記第1の面とは反対側における前記感知ユニットの第2の面との間の寸法よりも小さい。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記感知ユニットは、シャフトと先端を備える。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記延性層は、シャフトと先端を備える。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記延性層の前記先端は、前記感知ユニットの前記先端を越えて突出しており、これにより、前記延性層は、使用中に加えられる軸方向の挿入力を吸収するように構成されている。
【0035】
また、本開示の実施形態は、層状構造を備えたマイクロプローブに関する。前記層状構造は、少なくとも1つのセンサを有する感知ユニットを備え、前記少なくとも1つのセンサは作用電極を有し、前記感知ユニットは、前記層状構造の積層方向から見たときに第1の外周部を有し、前記感知ユニットは、第1の材料靱性を有する第1材料を含み、前記感知ユニットは、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面とを有する。前記層状構造は、前記感知ユニットの前記第1の面上に位置づけられた変形可能層をさらに備え、前記変形可能層は、応力下(ストレス下)で変形するように構成されている。前記層状構造は、前記感知ユニットとは反対側において前記変形可能層上に位置づけられた延性層をさらに備える。前記延性層は、前記層状構造の積層方向から見たときに第2の外周部を有する。前記第1の外周部は、前記第2の外周部の中に完全に収まる。前記延性層は、前記第1の材料靱性よりも大きい第2の材料靱性を有する第2材料を含む。また、前記変形可能層は、前記感知ユニットを前記延性層に結合して、前記感知ユニットに加えられたストレス(応力)から生じるひずみを前記延性層に部分的に伝達するように構成される。前記層状構造は、前記感知ユニットの前記第2の面上に位置づけられたセンサインターフェース層(センサ接合層、センサ連絡層)をさらに備える。また、前記マイクロプローブは、少なくとも1つの封止材(カプセル材料)を備える。前記少なくとも1つの封止材は、前記層状構造を少なくとも部分的に封入し、前記層状構造を周囲環境から隔離するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
添付図面を参照して、本開示のいくつかの実施形態が例としてのみ本明細書に記載されている。ここで詳細に図面を具体的に参照して、本発明の実施形態の例示的な議論を目的として、例として詳細が示される。これに関して、図面とともに受け取られる説明により、本発明の実施形態がどのように実施され得るかが当業者に明らかになる。
図1A】本開示の例示的な実施形態に係る、複数の層状マイクロプローブを含む感知システムの上面図である。
図1B】本開示の例示的な実施形態に係る、層状マイクロプローブを有する感知システムを含む、皮膚に取り付けられたパッチの斜視図である。
図2】本開示の例示的な実施形態に係る層状構造を含むマイクロプローブの断面図である。
図3】本開示の例示的な実施形態に係る感知ユニットのシャフトおよび先端を示す、走査型電子顕微鏡で得られる上面図である。
図4】本開示の第1の例示的な実施形態に係るマイクロプローブのシャフトおよび先端の上面図である。
図5】本開示の第2の例示的な実施形態に係るマイクロプローブのシャフトおよび先端の上面図である。
図6】本開示の第3の例示的な実施形態に係るマイクロプローブのシャフトおよび先端の上面図である。
図7】本開示の例示的な実施形態に係る、様々な形状を有する複数の層状マイクロプローブの斜視図である。
図8】本開示の第1の例示的な実施形態に係る感知ユニットの先端および延性層の先端を示す断面図である。
図9】本開示の第2の例示的な実施形態に係る感知ユニットの先端および延性層の先端を示す断面図である。
図10】本開示の第3の例示的実施形態に係る感知ユニットの先端および延性層の先端を示す断面図である。
図11】本開示の第4の例示的な実施形態に係る感知ユニットの先端および延性層の先端を示す断面図である。
図12】本開示の第1の例示的な実施形態に係る感知ユニットおよび延性層の断面図である。
図13】本開示の第2の例示的な実施形態に係る感知ユニットおよび延性層の断面図である。
図14】本発明の第3の例示的な実施形態に係る感知ユニットおよび延性層の断面図である。
図15】本開示の例示的な実施形態に係るマイクロプローブの側方視断面図である。
図16】本開示の例示的な実施形態に係る図15のマイクロプローブの正面視断面図である。
図17】本開示の第1の例示的な実施形態に係るマイクロプローブのシャフトおよび先端の一部の断面図である。
図18】本開示の第2の例示的な実施形態に係るマイクロプローブのシャフトおよび先端の一部の断面図である。
図19】本開示の第3の例示的な実施形態に係るマイクロプローブのシャフトおよび先端の一部の断面図である。
図20】本開示の第4の例示的な実施形態に係るマイクロプローブのシャフトおよび先端の一部の断面図である。
図21】本開示の第5の例示的な実施形態に係るマイクロプローブのシャフトおよび先端の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下における好ましい実施形態の説明は、本質的に単なる例示に過ぎず、本発明、その適用または使用を制限することを決して意図するものではない。全体を通して、範囲の記載は、その範囲内にあるすべての値を説明するための省略表現として用いられている。範囲内の任意の値は、範囲の端として選択され得る。さらに、本明細書で引用されるすべての文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示と引用される文献との間に定義の矛盾がある場合、本開示が優先される。
【0038】
本発明の原理に係る例示的な実施形態の説明は、添付図面と関連づけて読まれることを意図したものであり、記載された説明全体の一部と見なされるべきである。本明細書に開示される本発明の実施形態の説明において、方向または方向づけへの言及は、単に説明の便宜のために意図されたものであり、本発明の範囲を限定することは決して意図されていない。
【0039】
「下側」、「上側」、「水平」、「鉛直」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「左」、「右」、「頂」、「底」、およびその派生語(例えば、「水平方向」、「下向き」、「上向き」など)などの相対的な用語は、議論中の説明または図面に示されている向き(方向)を指すと解釈されるべきである。これらの相対的な用語は、説明の便宜上のものであり、明示的に示されていない限り、装置が特定の向き(方向)で構築または操作される必要はない。
【0040】
本明細書で使用される場合、「近位」という用語は、装置またはシステムにおけるユーザに向かう方向を意味し、「遠位」という用語は、ユーザから離れる方向を意味する。
【0041】
「付着」、「貼付」、「接続」、「結合」、「相互接続」、「取付」、及びこれらと同様の用語は、構造体同士が直接、または介在する構造物を介して間接的に互いに固定または取り付けられる関係を指し、特に明記されていない限り、可動または固定の取付または関係の両方を指す。
【0042】
明細書および特許請求の範囲で使用されるように、単数形での記載は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数の対象物を含む。
【0043】
「左」、「右」、「内側」、「外側」、「上」、「下」などのような空間的または方向的な用語は、限定的であると見なされるべきではなく、本発明は、さまざまな代替の方向づけを想定し得る。
【0044】
明細書および特許請求の範囲で使用されるすべての数字は、いかなる場合にも「約」という用語によって変更され得るものとして理解されるべきである。「約」という用語は、記載された値のプラスマイナス10パーセントの範囲を意味する。
【0045】
別段の記述がない限り、本明細書に開示されるすべての範囲または比率は、そこに含まれる部分的な範囲または比率を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」と記載された範囲、または「1対10」と記載された比率は、最小値1と最大値10との間(これらの値を含む)のあらゆる部分的な範囲、つまり、最小値が1以上で始まり、最大値が10以下で終わるあらゆる部分的な範囲または比率を含むとみなされるべきであり、例えば、1~6.1、3.5~7.8、5.5~10などが含まれるが、これらに限定されるものでない。
【0046】
「第1」、「第2」などの用語は、特定の序列または順序を指すことを意図するものではなく、代わりに、異なる条件、特性、または要素を指す。
【0047】
本明細書で参照されるすべての文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0048】
「少なくとも」という用語は、「以上」を意味する。「以下」という用語は、「未満または等しい」を意味する。
【0049】
「含む」という用語は、「備える」と同義である。
【0050】
本明細書で使用される場合、「マイクロプローブ」という用語は、「マイクロニードル」および「神経プローブ」という用語に置き換え可能である。
【0051】
本明細書で使用される場合、「作用電極」という用語は、典型的には、例えば、金、銀、スズ、亜鉛、銅、カドミウム、クロム、ニッケル、プラチナ、パラジウム、ロジウム、タンタル、チタン、および窒化チタンなどの金属の堆積電極であり、電源に接続された該電極上では、電気化学センサにおける酸化還元反応が生じる可能性がある。
【0052】
本明細書で使用される場合、「材料靭性」という用語は、破壊前に吸収することができる単位体積あたりのエネルギーとして定義される。
【0053】
本明細書で使用される場合、「ゼロデブリ」プロセスという用語は、最小、ほぼゼロ、またはゼロのデブリ(破片)をもたらすプロセスとして定義される。マイクロプローブの設計は、例えば、封止材(カプセル材料)を使用するか、あるいは、脆性材料の先端を機械的に保護すること、および/または、脆性材料にかかる力およびトルクを低減し得る柔軟材料を層状構造に提供することによって、ゼロデブリプロセスをサポートすることである。
【0054】
本明細書で使用される場合、「先端」という用語は、あるユニットの鋭く狭い遠位部分として定義され、当該ユニットは、マイクロプローブ、感知ユニット、層状構造、または延性層であってもよい。
【0055】
本明細書で使用される場合、「遠位端」という用語は、ユニットの最遠位の点または線として定義される。例えば、マイクロプローブの先端の遠位端は、最初に皮膚に接触するマイクロプローブの部分である。
【0056】
本明細書で使用される場合、「シャフト」という用語は、ユニットの先端を基部(ベース)に接続するユニットの一部として定義される。いくつかの実施形態では、先端およびシャフトは、形状の変化によって区別され得る。場合によって、先端とシャフトは、これらを隔てる厳密な境界線が存在しないように幾何学的に合流し得る。
【0057】
生物学的および他の用途の場合、しばしば、マイクロニードル、マイクロプローブ、または神経プローブに製造または取り付けられたセンサなど、マイクロセンシングシステムを使用する必要があることが多い。標準的な半導体製造プロセスによって製造され得るセンサと、該センサが取り付けられた構造とを含む、マイクロチップを用いたセンサシステムを設計することには利点がある。いくつかの用途では、検出される媒体のできるだけ近くにセンサ要素を配置することが有益である。マイクロチップを用いたセンサシステムの場合、マイクロプローブの先端の近くに感知要素が配置されてもよく、これにより、感知要素の組織内への挿入および配置が可能になる。
【0058】
使用中、製造中、および/または操作中には、マイクロチップを用いたセンサシステムおよびマイクロニードルに、力またはトルクが加えられるか、または生じ得る。例えば、図1Bに示されるように、マイクロプローブ100を備えた例示的な感知システム10などの、マイクロチップを用いたセンサシステムにおいて、マイクロプローブ10は、例えば、皮膚に取り付けられたパッチ20を介して皮膚に挿入されて、表皮層を貫通する。パッチが配置されて、表皮および/または真皮の一部を通してマイクロプローブが挿入される間、あるいは、パッチが装着されている間、並びに、皮膚からパッチが取り外されるとき、例えば、パッチに対する肢の動きおよび/または筋肉の動きに起因して、(図1Bにおける矢印で示されるような)力及びトルクがマイクロプローブに加えられる。
【0059】
一般に、マイクロプローブが薄く、その寸法が小さいほど、マイクロニードル挿入中に感じられる痛みは少なくなる。この痛みの軽減は、マイクロプローブが皮膚を貫通するのに必要な挿入力が小さく、そのような挿入によって影響を受ける神経終末の数が全体的に少ないためである。ただし、マイクロプローブ構造の機械的なサイズ、および形状の要件は、用途によって異なる場合があり、矛盾する設計要件を含むことが多い。
【0060】
一例では、挿入力を最小にするために、マイクロプローブは、鋭く尖った先端を持たなければならない。ただし、マイクロプローブは、例えばシリコンなどの脆性材料から形成されることが多く、この場合、鋭く尖った先端は、必要な挿入力に耐えることができない可能性がある。
【0061】
別の例では、感知を改善するために、センサ要素をマイクロプローブ先端に近接して配置することが有益であり、この配置によって、マイクロプローブ先端の形状および最小サイズが決定される。これらの形状とサイズの要件は、マイクロプローブ挿入時の痛みを最小限に抑えるための望ましい形状とサイズの要件と矛盾することがある。
【0062】
さらに、材料特性は、マイクロプローブ設計への貢献の重要な一因である。具体的には、ほとんどのマイクロチップを用いたセンサシステムは脆性材料で形成されているため、機械的に信頼できる構造を形成するには、マイクロプローブのサイズと形状を大きくする必要がある。マイクロプローブの機械的信頼性は、設計上の重要な懸念事項である。具体的には、マイクロプローブの設計は、マイクロプローブの断片または痕跡が有毒またはその他の有害である可能性があるため、その一部が破損して、操作中、挿入中、利用中、および/または除去中に潜在的な破損につながることがないようにする必要がある。
【0063】
本開示は、機械的に頑丈なマイクロプローブセンサを備えた層状マイクロプローブを含む、新規で信頼性の高い感知システムに関し、前記マイクロプローブセンサは、標準的な半導体製造プロセスを使用して製造され得る。説明される感知システムは、挿入中の痛みを最小限に抑えながら、使用中および操作中に加えられるかまたは生じ得る力およびトルクに耐えるように構成される。さらに、該感知システムは、マイクロプローブの挿入、利用、および除去が「ゼロデブリ」プロセスであることを保証する。
【0064】
上記のように、図1Aは、感知システム10を示している。図1Aに示されるように、感知システム10は、基部(ベース)155および複数の層状マイクロプローブ100を有する平面的な配列150を含む。感知システム10はまた、コネクタ160および配線165を含む電気部品を含む。ただし、他の実施形態において、感知システム10は、6個よりも多いか又は少ない層状マイクロプローブを有する。他の実施形態では、感知システム10は、1つの層状マイクロプローブ100を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、感知システム10は、一定期間皮膚に装着されるパッチに組み込まれてもよい。図1Bは、例示的なセンサパッチ20を示し、該センサパッチ20は、ユーザの皮膚30に挿入された少なくとも1つの層状マイクロプローブ100を有する感知システム10を備える。いくつかの実施形態では、センサパッチ20は、挿入システム、電源ユニット、および電子機器を収容するシェルまたはカバーを含む。図1Bはまた、挿入中にパッチ20およびマイクロプローブ100に加えられ得る力F1、F2およびトルクT1、T2を示す。具体的には、力F1およびトルクT1は、例えば、挿入中および取り付け中にパッチに作用し、一方、力F2およびトルクT2は、F1およびT1によって皮膚内のマイクロプローブ100に作用する反力である。
【0066】
図2は、層状構造101を有するマイクロプローブ100を示し、層状構造101は、感知ユニット102、延性層104、変形可能層106、およびセンサインターフェース層108を含む。マイクロプローブ100はまた、少なくとも1つの封止材(カプセル材料)110を備え、以下でさらに詳細に説明されるように、封止材110は、マイクロプローブ100の層状構造101を少なくとも部分的に封入(カプセル化)する。
【0067】
本開示のいくつかの態様によれば、感知ユニット102は、少なくとも1つのセンサ112を含む。例えば、いくつかの実施形態では、センサ112は、電界効果トランジスタ(FET)をベースとするセンサであり、作用電極を有する。いくつかの実施形態では、センサ112は、シリコンベースのFETセンサである。他の実施形態では、センサ112は、電気化学バイオセンサ、温度センサ、感光性センサ、音響センサ、インピーダンスセンサ、電磁センサ、磁気センサ、または放射線センサのうち、いずれかのタイプである。
【0068】
図3に示されるように、いくつかの実施形態では、感知ユニット102は、対象の皮膚に挿入するために形作られている。具体的に、感知ユニット102は、いくつかの実施形態では、基部(ベース)113と、遠位の先端116まで延びる細長いシャフト114とを備える。遠位の先端116は、以下でさらに詳細に説明するように、様々な構成を有し得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.01mm~0.3mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.05mm~0.3mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.1mm~0.3mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.15mm~0.3mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.1mm~0.3mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.25mm~0.3mmである。
【0070】
いくつかの実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.01mm~0.25mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.01mm~0.2mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.01mm~0.15mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.01mm~0.1mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.01mm~0.05mmである。
【0071】
いくつかの実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.05mm~0.25mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.1mm~0.15mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.1mm~0.25mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.15mm~0.2mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.05mm~0.25mmである。他の実施形態では、感知ユニット102の厚さは、0.05mm~0.1mmである。
【0072】
従来、半導体ベースの感知ユニットは、脆性材料を含む。例えば、いくつかの実施形態では、脆性材料は、周期表のIV族元素(第14族元素)であるシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、およびスズ(Sn)、並びに、VI族元素(第16族元素)であるセレン(Se)およびテルル(Te)などの任意の半導体材料であってもよいし、2つ以上の元素で構成される化合物半導体(たとえば、ヒ素ガリウム(GaAs))、または、三元化合物であるテルル化水銀インジウム(HgIn2Te4)であってもよいし、半導体酸化物(シリコン酸化物)、金属酸化物(アルミニウム酸化物)、及び半導体金属酸化物(亜鉛酸化物)であってもよい。これらの感知ユニットは、皮膚に挿入するための鋭利な先端を備えていてもよい。ただし、このような感知ユニットのシリコン(Si)材料は脆いため、小さな力やトルクによってシリコン(Si)が破壊され、この結果、破損して、シリコン(Si)の破片が放出される可能性がある。シリコン(Si)の鋭利な先端は、破砕または破壊せずに、皮膚への挿入に必要な軸方向またはその他の外力を維持できないことが多く、顕微鏡サイズのデブリないし破片が残る可能性がある。さらに、シリコンベースの先端は、鋭利な先端になるように製造して研ぐことが非常に難しい。
【0073】
脆いシリコン(Si)が破壊および/または破砕するのを防ぐために、いくつかの実施形態では、シリコン(Si)ベースの感知ユニット102は、延性層104上に取り付けられる。いくつかの実施形態では、延性層104は、操作中および挿入中にマイクロプローブ100に加えられる外力のほとんどを吸収可能な材料を含む。いくつかの実施形態では、延性層104は、例えば、任意の金属、金属合金、または複合材料を含む。いくつかの実施形態では、延性層104はステンレス鋼を含む。延性層材料の材料靭性は、いくつかの実施形態では、シリコンベースの感知ユニットの材料靭性よりも著しく大きいため、感知ユニット102と延性層104の組み合わされた構造は、個々の単独の材料よりも高い外力/トルクに耐えることができる。例えば、いくつかの実施形態では、延性層材料の材料靭性は、感知ユニット材料の材料靭性よりも一桁大きい。したがって、延性層104は、脆い感知ユニット102を支持するように機能し、これにより、そのような脆性材料からなる感知ユニットの微細構造を機能させることができる。さらに、感知ユニット102と延性層104の組み合わせの靭性により、感知ユニット102の脆性材料(例えば、シリコン(Si))を単独で使用するマイクロプローブに比べて、薄いマイクロプローブの設計が可能になる。
【0074】
上記のように、いくつかの実施形態では、延性層104は、その使用中および/または操作中にマイクロプローブ100に加えられる力およびトルクを吸収するように構成されている。したがって、延性層104は、その使用中および/または操作中にマイクロプローブ100に加えられる力およびトルクを低減または放散するように形作られている。具体的には、図4に示されるように、延性層104は、いくつかの平面において感知ユニット102の形状に実質的に追従しており、感知ユニット102に支持を提供しつつ、他の態様での保護を提供するように形作られている。
【0075】
図4図7に示されるように、例示的な実施形態では、延性層104は、延性層104の基部(ベース)121から先端122まで延びる細長いシャフト120を備え、シャフト120は、感知ユニット102と部分的に一致する。図7に示されるように、感知ユニット102及び延性層104のシャフト114,120は、共に、層状構造101のシャフト124を形成する。いくつかの実施形態では、感知ユニットのシャフト114は、その全長に亘って延性層104のシャフト120に接続される。これにより、感知ユニット102が機械的に拘束されるように、感知ユニット102のシャフト114の長さに沿って感知ユニット102に支持がもたらされ、感知ユニットのシャフト120に作用する力が最小化される。さらに、いくつかの実施形態では、延性層104は、層状構造101の積層方向D図2参照)から見たときに、感知ユニット102と比較して増大された面積を有する。例えば、感知ユニット102は、層状構造101の積層方向Dから見たときに第1の外周部(周縁部)Pを有し、延性層104は、層状構造101の積層方向Dから見たときに第2の外周部(周縁部)Pを有する。第1の外周部Pは、完全に第2の外周部Pの内側にある。図4図6は、感知ユニット102に取り付けられた状態における延性層104の様々な形状およびサイズを示している。
【0076】
図4に示される第1の例示的な実施形態において、延性層104の幅は、積層方向Dから見たときに、感知ユニット102の幅と実質的に同じである。ただし、延性層104のシャフト120および/または先端122は、感知ユニット102のシャフトおよび/または先端よりも長く、これにより、延性層104は、感知ユニット102の遠位端118を越えて延びている。
【0077】
図5に示される第2の例示的な実施形態では、延性層104の幅は、積層方向Dから見たときに、その遠位端に向かってテーパ状になっている。ただし、図に見られるように、延性層104の幅は、延性層のシャフト120の近位基部(ベース)において、感知ユニットのシャフト114の幅よりも大きい。
【0078】
図6に示される第3の例示的な実施形態では、延性層104の幅は、積層方向Dから見たときに、部分的には実質的に均一であり、それよりも遠位側では、その遠位端に向かってテーパ状になっている。ただし、延性層104の幅は、その全長に亘って、感知ユニット102の幅よりも大きい。
【0079】
いくつかの実施形態では、延性層104の形状は、用途に基づいて、破砕または破壊を引き起こし得る予見可能および/または予見不可能な力から感知ユニット102の先端を保護するように調整されてもよい。具体的には、上記のように、いくつかの実施形態では、延性層104の遠位部分は、感知ユニット102の先端116の遠位端118を越えて延びている。これらの実施形態では、延性層104は、感知ユニット102の遠位端118を越えて遠位に突出するため、延性層104は、感知ユニット102よりも先に皮膚に挿入され、これにより、感知ユニット102が軸方向および横方向の挿入力から保護され、感知ユニットの先端116を破壊するリスクが最小限に抑えられる。図7図11は、以下でさらに詳細に説明するように、延性層104が感知ユニットの先端116および遠位端118を保護するように形作られている様々な例示的な設計を示している。
【0080】
いくつかの実施形態では、例えば図8図9に示されるように、感知ユニット102および延性層104のそれぞれの先端116、122は、両方とも、対象の皮膚に挿入するために鋭利に形成されている。このような実施形態では、延性層の先端122は、感知ユニット102の遠位端118を越えて突出または延びるように構成されている。したがって、感知ユニット102ではなく、延性層104が最初に挿入力の大部分を受ける。さらに、延性層104は、感知ユニット102よりも先に皮膚に挿入されるため、延性層104は、皮膚に最初の穴または開口部を形成する。結果として、感知ユニット102の先端116は、先に形成された穴に挿入されることになり、これにより、感知ユニット102の先端116に加えられる軸方向の力が最小化され、この結果、比較的脆い感知ユニット102の破砕、破壊、または粉砕のリスクが低減される。図7は、同様の先端116、222の構成を有する層状構造のシャフト124aの斜視図を示している。
【0081】
他の実施形態では、例えば図10図11に示されるように、感知ユニット102の先端116は、延性層104による潜在的な挿入力/操作力から2つの平面において保護される。第1に、図8及び図10の延性層104と同様、延性層104は、感知ユニット102の遠位端118を越えて延びる鋭利な先端122を含む。第2に、延性層104は、積層方向Dにおいて、感知ユニットの先端116遠位端118または表面を覆うか、または取り囲む。したがって、延性層104が単独で対象の皮膚に開口部を作成および拡大するため、感知ユニット102の先端116は、軸方向の挿入力からほぼ完全に保護されている。図7は、軸方向の挿入力から先端116を完全に保護する、同様の先端116、222の構成を備えた層状構造のシャフト124bの斜視図を示している。
【0082】
いくつかの実施形態では、感知ユニット102は、図12図14に示されるように、感知ユニット102の側面においても、延性層104によって保護されている。具体的に、延性層104は、感知ユニットのシャフト114および先端116の側面の少なくとも一部を覆って、操作中および使用中に加えられる横方向の力または側面に向かう力を最小限に抑える。いくつかの実施形態では、延性層104は、感知ユニット102に隣接する表面136に凹部134を備え、これにより、感知ユニット102は、凹部134内に受け入れられ、凹部134によって少なくとも部分的に取り囲まれる。図12に示されるように、いくつかの実施形態では、凹部134は、深さDを有する。深さDは、感知ユニット102における延性層104に隣接する第1の面126と、感知ユニット102における第1の面126とは反対側の第2の面128との間の寸法Wに等しい。図13に示されるように、他の実施形態では、凹部134は、感知ユニット102の寸法Wよりも小さい深さDを有する。図13に見られるように、該実施形態において、延性層104は、感知ユニット102の側面の一部のみを覆う。図14に示されるように、他の実施形態では、凹部134は、感知ユニット102の寸法Wよりも大きい深さDを有する。図14に見られるように、該実施形態では、延性層104は、感知ユニット102の側面を覆い、該側面を越えて突出する。図7は、両側面で先端116を保護する先端116、222の構成を備えた層状構造のシャフト124cの斜視図を示している。なお、図7は、異なるマイクロプローブ設計を有する複数の層状マイクロプローブ100を示しているが、他の実施形態では、すべてのマイクロプローブ100が同じ設計を有してもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、延性層の長さ、すなわち、延性層104の基部(ベース)121から先端122までの寸法は、0.8mm~2.0mmである。他の実施形態では、延性層104の長さは、0.8mm~1.8mmである。他の実施形態では、延性層104の長さは、0.8mm~1.6mmである。他の実施形態では、延性層104の長さは、0.8mm~1.4mmである。他の実施形態では、延性層104の長さは、0.8mm~1.2mmである。他の実施形態では、延性層104の長さは、0.8mm~1.0mmである。
【0084】
いくつかの実施形態では、延性層104の長さは、1.0mm~2.0mmである。他の実施形態では、延性層104の長さは、1.2mm~2.0mmである。他の実施形態では、延性層104の長さは、1.4mm~2.0mmである。他の実施形態では、延性層104の長さは、1.6mm~2.0mmである。他の実施形態では、延性層104の長さは、1.8mm~2.0mmである。
【0085】
いくつかの実施形態では、延性層104の長さは、1.2mm~1.6mmである。他の実施形態では、延性層104の長さは、1.0mm~1.4mmである。他の実施形態では、延性層104の長さは、1.4mm~1.6mmである。他の実施形態では、延性層104の長さは、1.6mm~1.8mmである。他の実施形態では、延性層104の長さは、1.2mm~1.8mmである。
【0086】
いくつかの実施形態では、延性層104の厚さは、0.01mm~0.3mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.05mm~0.3mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.1mm~0.3mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.15mm~0.3mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.1mm~0.3mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.25mm~0.3mmである。
【0087】
いくつかの実施形態では、延性層104の厚さは、0.01mm~0.25mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.01mm~0.2mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.01mm~0.15mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.01mm~0.1mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.01mm~0.05mmである。
【0088】
いくつかの実施形態では、延性層104の厚さは、0.05mm~0.25mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.1mm~0.15mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.1mm~0.25mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.15mm~0.2mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.15mm~0.25mmである。他の実施形態では、延性層104の厚さは、0.05mm~0.1mmである。
【0089】
上記の例示的な構成では、感知ユニット102のシリコン(Si)の幅および厚さは、加えられる外力およびトルクの減少に応じて減少させることができる。したがって、いくつかの実施形態では、感知ユニット102および延性層104の合計の厚さおよび/または幅は、感知ユニットが単独で操作力および挿入力に耐えるのに必要な厚さおよび/または幅よりも小さくてもよい。このような寸法の低減は、より少ない力で皮膚または他の組織に挿入することができ、痛みを軽減できる点で有益である。
【0090】
いくつかの実施形態では、マイクロプローブ100の層状構造は、感知ユニット102と延性層104との間において、感知ユニット102の第1の面126に配置された変形可能層106を備える。いくつかの実施形態では、変形可能層106は、感知ユニット102の側面142にも配置されている。本明細書で使用される場合、変形可能層106は、感知システム10の通常の動作手順の下で少なくとも1つの所望の機能を実行するのに十分な材料特性(例えば、感知システム10に加えられる応力下(ストレス下)で変形するのに十分な材料特性)(例えば、弾性)を有する材料からなる層として定義される。いくつかの実施形態では、変形可能層106は、感知ユニット102のシリコン(Si)を延性層104の材料から電気的に絶縁する。いくつかの実施形態では、延性層104は、感知ユニット102を電気ノイズから保護し、且つ/又は、少なくとも1つのセンサ112のための接地として機能する。感知ユニット102および延性層104の相互に対する正確な位置決めなどのために、感知ユニット102および延性層104が互いに接触していることが好ましい他の実施形態では、変形可能層106の厚さに対するプロセス制御が少ない場合、感知ユニット102のシリコン(Si)と延性層104との表面に窪みまたはチャネルが組み込まれてもよい。この場合、変形可能層106がチャネル内に配置されつつ、感知ユニット102と延性層104との表面の他の部分が物理的に接触させられてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、変形可能層106は、例えば、ポリウレタン、シリコン、ポリアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、SU-8、パリレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサンなどの高分子物質を含む。いくつかの実施形態では、変形可能層106は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、または酸窒化ケイ素などの金属酸化物で補強されている。いくつかの実施形態では、変形可能層106は、アモルファスポリマー、半結晶性ポリマー、または生体高分子などの粘弾性材料を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、変形可能層106は接着剤である。いくつかの実施形態では、変形可能層106は、第1の接着剤、変形可能材料、および第2の接着剤を含む。具体的には、いくつかの実施形態では、変形可能層106は、第1の接着剤と第2の接着剤との間に配置される変形可能材料を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、変形可能層106の厚さは、1ミクロン~100ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは5ミクロン~100ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは、10ミクロン~100ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは、50ミクロン~100ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは、90ミクロン~100ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは、95ミクロン~100ミクロンである。
【0094】
いくつかの実施形態では、変形可能層106の厚さは、1ミクロン~100ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは、1ミクロン~95ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは、1ミクロン~75ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは、1ミクロン~50ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは、1ミクロン~10ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは、1ミクロン~5ミクロンである。
【0095】
いくつかの実施形態では、変形可能層106の厚さは5ミクロン~10ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは、10ミクロン~50ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは、50ミクロン~75ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは5ミクロン~50ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは、10ミクロン~95ミクロンである。他の実施形態では、変形可能層106の厚さは、25ミクロン~50ミクロンである。
【0096】
いくつかの実施形態では、変形可能層106の厚さは、感知ユニット102の表面粗さRaおよび延性層104の表面粗さRaのうちのいずれか大きい方よりも大きく、これにより、感知ユニット102および延性層104は、互いに接触しないようになっている。
【0097】
いくつかの実施形態では、マイクロプローブ100の層状構造は、センサインターフェース層108をさらに備える。いくつかの実施形態では、センサインターフェース層108は、例えば分析物特異性(検体特異性)などの特定の機能をセンサ112に提供する。具体的には、センサインターフェース層108は、酵素抗体、小分子、およびヒドロゲルを含んでもよい。いくつかの実施形態では、センサインターフェース層はまた、センサ112と周囲環境との間にバリアを提供する。いくつかの実施形態では、センサインターフェース層108は生分解性であり、経時的に、またはその適用寿命にわたって特性を変化させる。図2に示されるように、センサインターフェース層108は、第1の面126とは反対側において、感知ユニット102の第2の面128に配置される。いくつかの実施形態では、センサインターフェース層108は、感知ユニット102の材料(例えばシリコン(Si))と、センサ112の構成要素とに接触している。一実施形態では、センサインターフェース層108は、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、ブラッシング、ディッピング、化学蒸着、または物理蒸着などの半導体コーティングプロセスを使用して、センサ製造プロセスの一部として感知ユニット102に塗布(付加)される。
【0098】
いくつかの実施形態では、センサインターフェース層108は、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、または他の材料を含む。いくつかの実施形態では、センサインターフェース層108は、高い引張強度を有する材料を含む。他の実施形態では、センサインターフェース層108は、可撓性材料を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、センサインターフェース層108の材料は、ギャップ(隙間)、穴、開口部、ビア(ビアホール)、配線、クレバス、またはチャネルを含む平面構造が形成され得るようなパターン形成を可能にするものであってもよい。いくつかの実施形態では、前記開口部または前記ギャップは、円形、楕円形、長方形、または他の形状である。いくつかの実施形態では、センサ112の一部の上に前記開口部がある。いくつかの実施形態では、例えば、電極、導電性配線、またはナノワイヤなど、センサ112の電気的、電気化学的、または光電的な構成要素の上に前記開口部がある。いくつかの実施形態では、電界効果トランジスタセンサの一部の上に前記開口部がある。
【0100】
いくつかの実施形態では、センサインターフェース層108は、化学的不活性、生体適合性、生分解性、防汚性、疎水性、親水性、または低摩擦係数のうちの1つ以上を有する。
【0101】
いくつかの実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、10ナノメートル~200ミクロンである。他の実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、100ナノメートル~200ミクロンである。他の実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、1ミクロン~200ミクロンである。他の実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、10ミクロン~200ミクロンである。他の実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、50ミクロン~200ミクロンである。他の実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、100ミクロン~200ミクロンである。
【0102】
いくつかの実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、10ナノメートル~150ミクロンである。他の実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、10ナノメートル~100ミクロンである。他の実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、10ナノメートル~50ミクロンである。他の実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、10ナノメートル~10ミクロンである。他の実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、10ナノメートル~1ミクロンである。他の実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、10ナノメートル~100ナノメートルである。
【0103】
いくつかの実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、100ナノメートル~1ミクロンである。他の実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、1ミクロン~10ミクロンである。他の実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、10ミクロン~50ミクロンである。他の実施形態では、センサインターフェース層108の厚さは、50ミクロン~100ミクロンである。
【0104】
いくつかの実施形態では、図15図16に示されるように、センサインターフェース層108は、感知ユニット102のセンサ112のみを覆う。具体的には、積層方向Dから見たとき、センサインターフェース層108の外周部(周縁部)は、センサ112の外周部(周縁部)と実質的に同じであり、これにより、感知ユニット102の他の部分がセンサインターフェース層108によって覆われていない。いくつかの実施形態では、センサインターフェース層108は、感知ユニット102のセンサ112および感知ユニット102の一部を覆う。具体的には、積層方向Dから見たとき、センサインターフェース層108の外周部は、センサの外周部よりも小さい。
【0105】
いくつかの実施形態では、図2に示されるように、マイクロプローブ100は、マイクロプローブ100の層状構造を少なくとも部分的に封入(カプセル化)する少なくとも1つの封止材(カプセル材料)110を備える。いくつかの実施形態では、封止材110は、その中に封入された層状構造の構成要素によって形成され得る(例えば、該構成要素に由来する)任意のデブリ(破片)を封じ込める(包含する)ように構成されている。また、いくつかの実施形態では、封止材110は、前記層状構造によって形成されるあらゆるデブリが、対象の皮膚からの除去中に感知システム10によって取り出され得ることを確実にするように構成されている。
【0106】
いくつかの実施形態では、封止材110は、周囲の環境からマイクロプローブの構成要素を隔離(分離)して、これらの使用可能な寿命を延ばすように設計されている。いくつかの実施形態では、封止材110は電気的絶縁(電気的隔離)を提供する。他の実施形態では、封止材110は、機械的または空間的な隔離を提供するが、電気的隔離は提供しない。いくつかの実施形態では、封止材110は、マイクロプローブ100の全ての表面に均一な摩擦係数を提供する。マイクロプローブのすべての表面の摩擦係数が均一であることにより、マイクロプローブのシャフト124の座屈またはねじれを引き起こし得る非対称の横方向の力が低減され得る。さらなる実施形態では、封止材110は、機械的隔離を提供するが、液体、気体、化学物質、および/または生化学物質の通過または拡散を許容する。
【0107】
いくつかの実施形態では、封止材110は、層状構造101を部分的に封入(カプセル化)する。例えば、いくつかの実施形態では、封止材110は、層状構造101の表面の10%~99%を覆う。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の20%~99%を覆う。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の25%~99%を覆う。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の50%~99%を覆う。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の75%~99%を覆う。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の90%~99%を覆う。
【0108】
いくつかの実施形態では、封止材110は、層状構造101の10%~90%を覆う。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の10%~75%を覆う。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の10%~50%を覆う。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の10%~25%を覆う。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の10%~20%を覆う。
【0109】
いくつかの実施形態では、封止材110は、層状構造101の20%~90%をカバーする。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の25%~75%を覆う。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の50%~75%を覆う。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の20%~5%を覆う。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の75%~90%を覆う。
【0110】
いくつかの実施形態では、封止材110は、層状構造101のいくつかの面の一部を封入する。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の上面の一部を封入する。他の実施形態では、封止材110は、層状構造101の上面と側面の一部とを封入する。さらなる実施形態では、封止材110は、以下でさらに詳細に説明するように、層状構造101の先端122の一部を除いて、層状構造101の全体を封入する。
【0111】
いくつかの実施形態では、封止材110は、その一部において、液体環境に接触すると体積が増加するヒドロゲルを含む。例えば、いくつかの実施形態では、封止材110は、センサ112の周りの固定領域にヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態では、封止材の材料にヒドロゲルが含まれない。体積の変化には、次のような多くの利点がある。例えば、組織または液体環境からセンサへの分析物および生体分子の拡散、体積組織の変位、組織内へのマイクロプローブ100の固定の容易化、目詰まり防止、抗炎症特性および抗増殖特性などが可能になり、抗増殖特性によれば、組織の成長によるセンサの目詰まりが抑制される。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルの体積は、1%~1000%増加することができる。他の実施形態では、ヒドロゲルの体積は、10%~1000%増加することができる。他の実施形態では、ヒドロゲルの体積は、100%~1000%増加することができる。他の実施形態では、ヒドロゲルの体積は、500%~1000%増加することができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、ヒドロゲルの体積は、1%~500%増加することができる。他の実施形態では、ヒドロゲルの体積は、1%~100%増加することができる。他の実施形態では、ヒドロゲルの体積は、1%~10%増加することができる。他の実施形態では、ヒドロゲルの体積は、1%~5%増加することができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、ヒドロゲルの体積は、10%~100%増加することができる。他の実施形態では、ヒドロゲルの体積は、100%~500%増加することができる。他の実施形態では、ヒドロゲルの体積は5%~10%増加することができる。他の実施形態では、ヒドロゲルの体積は、10%~500%増加することができる。
【0114】
封止材110の厚さは、いくつかの実施形態では、100ナノメートル~200ミクロンである。他の実施形態では、封止材110の厚さは、1ミクロン~200ミクロンである。他の実施形態では、封止材110の厚さは、10ミクロン~200ミクロンである。他の実施形態では、封止材110の厚さは、50ミクロン~200ミクロンである。他の実施形態では、封止材110の厚さは、100ミクロン~200ミクロンである。
【0115】
いくつかの実施形態では、封止材110の厚さは、100ナノメートル~100ミクロンである。他の実施形態では、封止材110の厚さは、100ナノメートル~50ミクロンである。他の実施形態では、封止材110の厚さは、100ナノメートル~10ミクロンである。他の実施形態では、封止材110の厚さは、100ナノメートル~1ミクロンである。
【0116】
いくつかの実施形態では、封止材110の厚さは、1ミクロン~100ミクロンである。他の実施形態では、封止材110の厚さは、10ミクロン~50ミクロンである。他の実施形態では、封止材110の厚さは、50ミクロン~150ミクロンである。他の実施形態では、封止材110の厚さは、1ミクロン~10ミクロンである。
【0117】
いくつかの実施形態において、封止材110は、酸化物、金属酸化物、天然酸化物、ポリマー、パリレン、プライマー剤、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリアミドのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、封止材110は、2つ以上の材料を含む。
【0118】
封止材110は、浸漬、化学蒸着、物理蒸着、ブラッシング、スプレーコーティング、または他の方法を介して、マイクロプローブ100の層状構造101に付着(塗布)され得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、封止材110は、化学的不活性、生体適合性、生分解性、防汚性、疎水性、親水性、または低摩擦係数のうちの1つ以上を有し得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、封止材110の材料は、ギャップ(隙間)、穴、開口部、ビア(ビアホール)、配線、クレバス、またはチャネルを含む平面構造が形成され得るようなパターン形成を可能にするものであってもよい。いくつかの実施形態では、前記開口部または前記ギャップは、円形、楕円形、長方形、または他の形状である。いくつかの実施形態では、図3に示されるように、センサ112の一部の上に開口部140が存在する。いくつかの実施形態では、開口部140は、マイクロプローブ100のシャフト上に配置される。他の実施形態では、開口部140は、マイクロプローブ100の先端上に配置される。
【0121】
いくつかの実施形態において、マイクロプローブ100は、選択的に封入(カプセル化)される。例えば、いくつかの実施形態では、マイクロプローブ100の層状構造101の底面および垂直面は封入されているが、感知ユニット102およびセンサインターフェース層108は封入されていない。別の実施形態では、層状構造101の底面および垂直面は、第1の封止材料(第1のカプセル化材料)で封入されつつ、感知ユニット102およびセンサインターフェース層106は、第2の封止材料(第2のカプセル化材料)で封入される。
【0122】
いくつかの実施形態では、層状構造101内の異なる層または異なる構成要素もまた、選択的に封入(カプセル化)されてもよい。例えば、いくつかの層は、デブリ(破片)を防止するために、該層を電気的に絶縁するために、または、該層を環境から隔離するために、封入されてもよい。いくつかの実施形態では、感知ユニット102および延性層104の一方または両方は、酸化物、金属酸化物、天然酸化物、ポリマー、プライマー剤、パリレン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリアミドで封入されている。
【0123】
封止材110の厚さも、層状構造101の周りで異なってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、封止材110の厚さは、層状構造101のすべての面について均一である。ただし、他の実施形態では、封止材110の厚さは、層状構造101のすべての面について均一ではない。例えば、一実施形態では、層状構造のシャフト124の先端における封止材110の厚さは、上面および底面における封止材110の厚さよりも薄い。
【0124】
いくつかの実施形態では、層状構造101に沿った封止材110の形状および厚さは、部位によって異なっていてもよい。具体的には、シャフト124および層状構造101の先端130に沿った封止材110の形状および厚さは、多くの要因によって決定される。該要因には、例えば、層状構造の先端130の寸法、封止材料(カプセル材料)の特性、層状構造110に封止材110が付着(塗布)される方法が含まれる。層状構造の先端130の封入(カプセル化)には、次の3つの要件がある。第1の要件は、封止材(カプセル材料)が、層状構造の先端130の寸法を著しく増加させず、皮膚への痛みのない挿入を可能にすることである。第2の要件は、封止材が、層状構造の先端130に強固に付着(接着)することである。第3の要件は、封止材の材料が、操作中、挿入中、または使用中に、層状構造の先端130の近くにデブリ(破片)を生成しないこと(すなわち、封止材の材料の剥離、クラッキング、引き裂き、または破壊がないこと)である。
【0125】
図17に示されるように、いくつかの実施形態では、封止材110の厚さは、層状構造101のシャフト124に沿って、層状構造101の先端に近づくにつれて減少する。したがって、層状構造の先端130の遠位端132において、封止材は、延性層104の形状に収束する。別の実施形態では、封止材110の厚さは、層状構造101のシャフト124に沿って均一であり、先端130の遠位端132を越えて延びる。具体的には、図18に示されるように、封止材110は、層状構造101の先端130を越えて延在し、該先端130を封入する。さらなる実施形態では、封止材110の厚さは、層状構造101のシャフト124に沿って、先端130に近づくにつれて減少する。ただし、図19に示すように、封止材110は、層状構造101の先端130の遠位端132まで延びるのではなく、遠位端132の近傍で先端130に収束する。図20に示すように、別の実施形態では、封止材110の厚さは、層状構造101のシャフト124の一部に沿って均一であり、層状構造の先端130の近傍において真っすぐな輪郭で途切れる。
【0126】
図21に示すように、封止材が2つ以上の封止材料(カプセル材料)を含む場合において、いくつかの実施形態では、第1の封止材料(第1のカプセル材料)110aは、シャフト124および/または先端130の近位部に沿って提供され、第2の封止材料(第2のカプセル材料)110bは、シャフト124および/または先端130の遠位部に沿って提供される。
【0127】
いくつかの実施形態では、(図1Aに示されるように)隣接するマイクロプローブ100間の距離Mは、0.1mm~3.0mmである。他の実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、0.1mm~2.5mmである。他の実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、0.1mm~2.0mmである。他の実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、0.1mm~1.5mmである。他の実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、0.1mm~1.0mmである。他の実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、0.1mm~0.5mmである。
【0128】
いくつかの実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、0.5mm~3.0mmである。他の実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、1.0mm~3.0mmである。他の実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、1.5mm~3.0mmである。他の実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、2.0mm~3.0mmである。他の実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、2.5mm~3.0mmである。
【0129】
いくつかの実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、0.5mm~2.5mmである。他の実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、1.0mm~2.0mmである。他の実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、1.5mm~2.5mmである。他の実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、0.5mm~1.0mmである。他の実施形態では、隣接するマイクロプローブ100間の距離は、2.0mm~2.5mmである。
【0130】
前述のように、感知システムが小さければ小さいほど、挿入中および使用中に感じられる痛みは少なくなる。したがって、本発明の目的は、開示された感知システム10の寸法を最小化することである。本実施形態の感知システム10の新規構造によれば、感知システム10の寸法は、従来のマイクロプローブシステムと比較して最小化されている。
【0131】
例えば、いくつかの実施形態では、(図1Aに示されている)感知システム10の長さLは、2mm~10mmである。他の実施形態では、感知システム10の長さは、2mm~8mmである。他の実施形態では、感知システム10の長さは、2mm~6mmである。他の実施形態では、感知システム10の長さは、2mm~4mmである。
【0132】
いくつかの実施形態では、感知システム10の長さは4mm~10mmである。他の実施形態では、感知システム10の長さは、6mm~10mmである。他の実施形態では、感知システム10の長さは、8mm~10mmである。
【0133】
他の実施形態では、感知システム10の長さは4mm~8mmである。いくつかの実施形態では、感知システム10の長さは4mm~6mmである。他の実施形態では、感知システム10の長さは、6mm~8mmである。
【0134】
いくつかの実施形態では、(図1Aに示されるように)感知システム10の幅Wは、0.5mm~5mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、0.5~4.5mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、0.5~4.0mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、0.5~3.5mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、0.5~3.0mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、0.5~2.5mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、0.5~2.0mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、0.5~1.5mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、0.5~1.0mmである。
【0135】
いくつかの実施形態では、感知システム10の幅は、1.0mm~5.0mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、1.5~5.0mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、2.0~5.0mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、2.5~5.0mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、3.0~5.0mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、3.5~5.0mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は4.0~5.0mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、4.5~5.0mmである。
【0136】
いくつかの実施形態では、感知システム10の幅は、1.0mm~4.5mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、1.5~4.0mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、3.5~4.0mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は、2.0~3.5mmである。他の実施形態では、感知システム10の幅は4.0~4.5mmである。
【0137】
いくつかの実施形態では、感知システム10の厚さは、0.05mm~0.4mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.1mm~0.4mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.15mm~0.4mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.2mm~0.4mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.25mm~0.4mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.3mm~0.4mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.35mm~0.4mmである。
【0138】
いくつかの実施形態では、感知システム10の厚さは、0.05mm~0.35mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.05mm~0.3mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.05mm~0.25mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.05mm~0.2mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.05mm~0.15mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.05mm~0.1mmである。
【0139】
いくつかの実施形態では、感知システム10の厚さは、0.05mm~0.35mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.1mm~0.15mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.15mm~0.25mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.2mm~0.3mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.05mm~0.35mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.3mm~0.35mmである。他の実施形態では、感知システム10の厚さは、0.5mm~0.1mmである。
【0140】
本開示における複数の特徴は、明確化のために別個の実施形態の文脈で説明されているものであっても、単一の実施形態でも提供され得ることが理解される。逆に、本開示の種々の特徴は、簡潔化のために単一の実施形態の文脈で説明されているものであっても、別個に提供されたり、任意の部分的な組み合わせで提供されたり、本開示の他の任意の実施形態において適切に提供されたりしてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、それらの要素なしでは当該実施形態が成り立たない場合を除いて、当該実施形態の本質的な特徴とみなされるべきでない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5-6】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-14】
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21