(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】光ファイバ接続用治具及び光コネクタ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/24 20060101AFI20250325BHJP
G02B 6/38 20060101ALI20250325BHJP
【FI】
G02B6/24
G02B6/38
(21)【出願番号】P 2022546308
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2021031752
(87)【国際公開番号】W WO2022050224
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2020148895
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231936
【氏名又は名称】日本通信電材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】浮田 義生
(72)【発明者】
【氏名】今泉 剛
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-163303(JP,A)
【文献】特開2011-027760(JP,A)
【文献】特表2015-515028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0264381(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
6/255
6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと内蔵ファイバとを互いに接続するメカニカルスプライスを備えた光コネクタに用いられる光ファイバ接続用治具であって、
前記光ファイバ及び前記内蔵ファイバが延びる方向に延在しており、前記光コネクタを覆うように前記光コネクタに載せられる板状のベースと、
前記ベースから突出しており、前記メカニカルスプライスに挿入されるクサビ部と、
前記ベースの幅方向の両側のそれぞれに設けられており、前記光コネクタよりも前記幅方向に突出する操作部と、
前記ベースの長手方向の一方側において前記ベースの幅方向の両側のそれぞれに設けられており、前記光コネクタに向かって突出する一対の第1係合部と、
前記ベースの長手方向の他方側において前記ベースの幅方向の両側のそれぞれに設けられており、前記光コネクタに向かって突出する一対の第2係合部と、
を備え、
前記光コネクタは、前記メカニカルスプライスを収容するインナーハウジングと、前記インナーハウジングを収容するアウターハウジングと、を含んでおり、
前記一対の第1係合部のそれぞれは、前記インナーハウジングに係合し、
前記一対の第2係合部のそれぞれは、前記アウターハウジングに係合
し、
前記一対の第2係合部の高さ方向の長さは、前記一対の第1係合部の高さ方向の長さよりも短い、
光ファイバ接続用治具。
【請求項2】
前記ベースに対する前記操作部の前記幅方向の両端部における高さは、前記ベースに対する前記操作部の前記幅方向の中央部における高さよりも高い、
請求項1に記載の光ファイバ接続用治具。
【請求項3】
前記操作部は、前記ベースにおける前記光ファイバ及び前記内蔵ファイバが互いに接続する接続部に近い部分に位置している、
請求項1または請求項2に記載の光ファイバ接続用治具。
【請求項4】
前記ベース及び前記クサビ部の少なくとも一部が透明樹脂によって構成されている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバ接続用治具。
【請求項5】
前記ベースから前記クサビ部の反対側に突出する凸レンズを備える、
請求項4に記載の光ファイバ接続用治具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ファイバ接続用治具と前記メカニカルスプライスとを備え、
前記光ファイバ接続用治具のクサビ部が前記メカニカルスプライスに挿入されている、
光コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバ接続用治具及び光コネクタに関する。
本出願は、2020年9月4日の日本出願第2020-148895号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、メカニカルスプライス型の光コネクタ及び光コネクタ用治具が記載されている。光コネクタは、短尺光ファイバが内蔵されたキャピラリを有する。キャピラリには、V溝基板と押さえ蓋とが並べて設けられている。V溝基板と押さえ蓋はU字状のクランプバネにより挟持されている。V溝基板と押さえ蓋にはスリット状のくさび挿入穴が形成されている。
【0003】
光コネクタ用治具は、くさび板部の下面に凸状のくさびを備える。くさびがくさび挿入穴に挿入されると、V溝基板及び押さえ蓋が互いに離間して光ファイバを挿入可能な状態となる。光コネクタ治具は、くさび板部から突出する一対のアームと、一対の支柱と、ロック部とを備える。一対の支柱のそれぞれは光コネクタに係合し、ロック部は一対のアームが互いに接近することを規制する。
【0004】
特許文献2には、光コネクタ用工具、及び工具付き光コネクタが記載されている。光コネクタ用工具は、コネクタホルダ部と、介挿部材駆動部と、介挿部材とを備える。コネクタホルダ部は、光コネクタの外側に組み付けられる。介挿部材駆動部は、コネクタホルダ部が組み込まれたリング状を呈する。介挿部材は、介挿部材駆動部から突出すると共にコネクタホルダ部に保持される光コネクタに挿し込まれる。介挿部材は、リング状の介挿部材駆動部に側圧が与えられることによって光コネクタから引き抜かれる。
【0005】
特許文献3には、光ファイバ接続用工具、及び光ファイバ接続用工具付き光コネクタが記載されている。光ファイバ接続用工具は、光コネクタのクランプ部を開閉する介挿部と、光コネクタを保持する一対のアームと、光コネクタの外側に形成された凸部が差し込まれる差込部とを備える。アームは、光コネクタを保持する保持部と、介挿部をクランプ部から抜去する駆動部とを有する。駆動部が介挿部を抜去するときに、保持部は駆動部に連動して光コネクタの保持を解除する。
【0006】
特許文献4には、メカニカルスプライス型の光コネクタに光ファイバを接続するときに用いられる光ファイバ接続用治具が記載されている。光ファイバ接続用治具は、略直方体形状のベースと、回動アームとを備える。ベースの上面には、光コネクタプラグが載置されるコネクタ載置部と、光ファイバ素線を案内するファイバガイド部とが設けられている。回動アームの上面には一対のくさびが設けられる。くさびは、メカニカルスプライスの下部に設けられたくさび挿入口に挿入され、メカニカルスプライスのファイバ挿入空間が開状態となる。回動アームは操作部を有し、操作部の操作によって回動アームが回動してくさび挿入口からくさびが引き抜かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-061121号公報
【文献】特開2006-139212号公報
【文献】特開2018-163303号公報
【文献】特開2007-121886号公報
【発明の概要】
【0008】
本開示の一側面に係る光ファイバ接続用治具は、光ファイバと内蔵ファイバとを互いに接続するメカニカルスプライスを備えた光コネクタに用いられる光ファイバ接続用治具である。光ファイバ接続用治具は、光ファイバ及び内蔵ファイバが延びる方向に延在しており、光コネクタを覆うように光コネクタに載せられる板状のベースと、ベースから突出しており、メカニカルスプライスに挿入されるクサビ部と、ベースの幅方向の両側のそれぞれに設けられており、光コネクタよりも幅方向に突出する操作部と、ベースの長手方向の一方側においてベースの幅方向の両側のそれぞれに設けられており、光コネクタに向かって突出する一対の第1係合部と、ベースの長手方向の他方側においてベースの幅方向の両側のそれぞれに設けられており、光コネクタに向かって突出する一対の第2係合部と、を備える。
【0009】
本開示の一側面に係る光コネクタは、前述した光ファイバ接続用治具とメカニカルスプライスとを備え、光ファイバ接続用治具のクサビ部がメカニカルスプライスに挿入されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る光
ファイバ接続用治具及び光コネクタを示す斜視図である。
【
図2】
図1の光
ファイバ接続用治具及び光コネクタを示す断面図である。
【
図3】
図1の光
ファイバ接続用治具及び光コネクタを示す
図2とは異なる断面図である。
【
図4】
図1の光
ファイバ接続用治具と光コネクタのハウジングと示す斜視図である。
【
図5】
図1の光コネクタのメカニカルスプライス、フェルール、内蔵ファイバ、及びケーブルから伸びる光ファイバを模式的に示す断面図である。
【
図6】
図5のメカニカルスプライスにクサビ部が挿入される状態を模式的に示す図である。
【
図7】
図6のメカニカルスプライスからクサビ部が抜去される状態を模式的に示す図である。
【
図8】実施形態に係る光
ファイバ接続用治具を示す斜視図である。
【
図9】
図8の光
ファイバ接続用治具をその長手方向の一方側から見た側面図である。
【
図10】
図8の光
ファイバ接続用治具をその長手方向の他方側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ところで、光ファイバ接続用治具が光コネクタに取り付けられている状態において、光ファイバ接続用治具が光コネクタからの脱落を防止する機能を有しない場合、光コネクタを輸送するときに振動又は衝撃等によって光ファイバ接続用治具が脱落することが懸念される。一方、前述したくさびを有する光ファイバ接続用治具は、光コネクタからの脱落を防止するための別部品を備えていることがある。この場合、当該別部品を解除した後にくさびを外すことが必要となるので、くさびを外すまでに2アクションの作業が必要となる。従って、くさびを外す操作の操作性において改善の余地がある。
【0012】
本開示は、光ファイバ接続用治具が光コネクタから脱落することを抑制すると共に、光コネクタから光ファイバ接続用治具を外す際の操作性を向上させることができる光ファイバ接続用治具及び光コネクタを提供することを目的とする。
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る光ファイバ接続用治具は、光ファイバと内蔵ファイバとを互いに接続するメカニカルスプライスを備えた光コネクタに用いられる光ファイバ接続用治具である。光ファイバ接続用治具は、光ファイバ及び内蔵ファイバが延びる方向に延在しており、光コネクタを覆うように光コネクタに載せられる板状のベースと、ベースから突出しており、メカニカルスプライスに挿入されるクサビ部と、ベースの幅方向の両側のそれぞれに設けられており、光コネクタよりも幅方向に突出する操作部と、ベースの長手方向の一方側においてベースの幅方向の両側のそれぞれに設けられており、光コネクタに向かって突出する一対の第1係合部と、ベースの長手方向の他方側においてベースの幅方向の両側のそれぞれに設けられており、光コネクタに向かって突出する一対の第2係合部と、を備える。
【0014】
この光ファイバ接続用治具は、ベースの長手方向の一方側においてベースの幅方向の両側のそれぞれに設けられた第1係合部と、ベースの長手方向の他方側においてベースの幅方向の両側のそれぞれに設けられた第2係合部とを備える。従って、ベースの長手方向の一方側及び他方側、並びにベースの幅方向の一方側及び他方側のそれぞれにおいて光コネクタに係合されるので、光ファイバ接続用治具が光コネクタから脱落することを抑制できる。光ファイバ接続用治具の4箇所のそれぞれの係合部が光コネクタに係合することによって振動又は衝撃等を受けた場合であっても、光ファイバ接続用治具の脱落を生じにくくすることができる。この光ファイバ接続用治具は、光コネクタよりも幅方向の両側に突出する操作部を備える。従って、幅方向の両側に突出する操作部を摘まんで光コネクタから光ファイバ接続用治具を引き上げる操作を行うことにより、1アクションで光ファイバ接続用治具を外すことができる。よって、光ファイバ接続用治具を外す操作の操作性を向上させることができる。
【0015】
一対の第1係合部のそれぞれは、メカニカルスプライスを収容するインナーハウジングに係合してもよい。一対の第2係合部のそれぞれは、インナーハウジングを収容するアウターハウジングに係合してもよい。この場合、第1係合部が係合する光コネクタの部分を、第2係合部が係合する光コネクタの部分と異ならせることができる。
【0016】
ベースに対する操作部の幅方向の両端部における高さは、ベースに対する操作部の幅方向の中央部における高さよりも高くてもよい。この場合、操作部の一対の両端部の高さが中央部の高さよりも高いので、一対の両端部を摘まんで操作部をより引き上げやすくすることができる。従って、光ファイバ接続用治具の引き抜きの操作性をより高めることができる。
【0017】
操作部は、ベース部における光ファイバ及び内蔵ファイバが互いに接続する接続部に近い部分に位置していてもよい。この場合、操作部が接続部寄りの位置に設けられる。よって、操作部によって光ファイバ接続用治具を光コネクタから引き上げるときに、接続部における光ファイバ及び内蔵ファイバの接続を直ちに行うことができる。従って、光ファイバと内蔵ファイバの接続を先行して行うことができる。
【0018】
ベース及びクサビ部の少なくとも一部が透明樹脂によって構成されていてもよい。この場合、ベース及びクサビ部を介して光コネクタを視認することができる。その結果、光ファイバ及び内蔵ファイバの接続状態を接続点からの漏洩光によって確認することができる。
【0019】
前述した光ファイバ接続用治具は、ベースからクサビ部の反対側に突出する凸レンズを備えてもよい。この場合、光ファイバ及び内蔵ファイバの接続点からの漏洩光を凸レンズによって拡大することができるので、接続状態の確認を一層容易に行うことができる。
【0020】
一実施形態に係る光コネクタは、前述した光ファイバ接続用治具とメカニカルスプライスとを備え、光ファイバ接続用治具のクサビ部がメカニカルスプライスに挿入されていてもよい。この場合、光ファイバ接続用治具が光コネクタに取り付けられているので、接続作業の現場における光ファイバ接続用治具の取付を不要とすることができる。従って、光コネクタ1に対する光ファイバの接続作業を一層容易に行うことができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
実施形態に係る光ファイバ接続用治具及び光コネクタの具体例を以下で図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、後述する各例に限定されるものではなく、請求の範囲に示され、請求の範囲と均等の範囲における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0022】
図1は、実施形態に係る例示的な光コネクタ1を示す斜視図である。
図2は、
図1の光コネクタ1の縦断面図である。
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る光コネクタ1は、例えば、コネクタ本体2と、コネクタ本体2に組み込まれる光ファイバ接続部3と、コネクタ本体2の内部に配置されるバネ4と、コネクタ本体2を覆うアウターハウジング10(以下、「つまみ」ともいう。)とを備える。
【0023】
光ファイバ接続部3は、例えば、メカニカルスプライス5と、メカニカルスプライス5に取り付けられたフェルール6とを有する。以下では、メカニカルスプライス5から見てフェルール6が設けられる方向を「前」、「前側」、「前方」、その反対方向を「後」、「後側」、「後方」として説明することがある。しかしながら、これらの方向は、説明の便宜のためのものであり、部品の位置又は配置態様を限定するものではない。
【0024】
光コネクタ1は、例えば、光ケーブルCに沿って延びる長尺状とされている。コネクタ本体2は、例えば、光コネクタ1の長手方向D1に沿って延びるインナーハウジング7と、インナーハウジング7を覆うリアカバー8とを備える。以下では、インナーハウジング7に対してリアカバー8が設けられる方向を「上」、「上側」、「上方」、その反対方向を「下」、「下側」、「下方」として説明することがある。また、インナーハウジング7とリアカバー8が並ぶ方向を高さ方向D2、長手方向D1及び高さ方向D2の双方に直交する方向を幅方向D3として説明する。しかしながら、これらの方向は部品の位置又は配置態様を限定するものではない。
【0025】
一例として、光コネクタ1は、現場設置型の光コネクタである。例えば、接続作業の現場において光コネクタ1は光ファイバC1を有する光ケーブルCに接続される。光ケーブルCは、例えば、光ファイバ芯線を有する光ファイバC1と、光ファイバC1を被覆する外被C2とを備える。コネクタ本体2は、例えば、インナーハウジング7とリアカバー8の間に収容される外被固定部9を備える。光ケーブルCの外被C2が外被固定部9に固定されている。リアカバー8は、例えば、軸部8bを介してインナーハウジング7に対して回動自在とされている。軸部8bは、リアカバー8の前側の端部に位置しており幅方向D3に延びる。
【0026】
光ケーブルCの光ファイバC1は、外被固定部9からインナーハウジング7の内部空間7bを通ってメカニカルスプライス5の内部にまで延在している。光ファイバC1は、インナーハウジング7の内部空間7bにおいて高さ方向D2及び幅方向D3のいずれかの方向に撓んでいる。高さ方向D2に沿って見た内部空間7bの形状、及び幅方向D3に沿って見た内部空間7bの形状は、例えば、円弧状となっている。
【0027】
インナーハウジング7は、光ファイバ接続部3を収容する接続部収容部7cと、光ケーブルCから延びる光ファイバC1をガイドするガイド部7dとを有する。インナーハウジング7は、例えば、樹脂の一体成形によって構成されており、継ぎ目を有しない。接続部収容部7cには、バネ4、メカニカルスプライス5及びフェルール6が収容される。例えば、フェルール6には、フェルール6をメカニカルスプライス5の反対側から封止するフェルールキャップ11が着脱可能に設けられている。ガイド部7dは、撓んでいる光ファイバC1に対向する曲面7fを有する。曲面7fによって前述したインナーハウジング7の内部空間7bが画成される。
【0028】
図2は、長手方向D1及び高さ方向D2に延びる平面によって光コネクタ1を切断したときの断面図である。
図3は、長手方向D1及び幅方向D3に延びる平面によって光コネクタ1を切断したときの断面図である。
図1~
図3に示されるように、メカニカルスプライス5はアウターハウジング10に収容されている。
【0029】
アウターハウジング10には、貫通孔10bが形成されている。貫通孔10bには、メカニカルスプライス5の光ファイバ配置空間5bを押し広げる光ファイバ接続用治具20のクサビ部21が挿通される。アウターハウジング10は、例えば、長手方向D1に沿って並ぶ2つの貫通孔10bを有し、それぞれの貫通孔10bにクサビ部21が挿通される。アウターハウジング10は、例えば、長手方向D1に沿って並ぶ2つの貫通孔10bを有し、それぞれの貫通孔10bにクサビ部21が挿通される。光ファイバ接続用治具20については、後に詳述する。
【0030】
メカニカルスプライス5は、一対の保持部材5cと、V溝5dと、クランプ5fとを有する。一対の保持部材5cは、幅方向D3に沿って並ぶ。V溝5dは、一対の保持部材5cの間に形成される光ファイバ配置空間5bを画成する。クランプ5fは、一対の保持部材5cを光ファイバ配置空間5bが閉じる方向に付勢するバネ部材である。V溝5dから外被固定部9まで延びる内部空間7bは、光ファイバC1の撓み領域とされている。インナーハウジング7は、接続部収容部7c及びガイド部7dを仕切る隔壁7gを備える。隔壁7gは、接続部収容部7cに突出する筒状の突起7hを有する。突起7hはガイド部7dの反対側に突出している。この突起7hにより光ファイバC1の撓み領域である内部空間7bが接続部収容部7c側に延長されている。
【0031】
メカニカルスプライス5は、隔壁7gからフェルール6側に離隔するように配置されている。バネ4の一部は、突起7hを囲むように配置されている。バネ4は、メカニカルスプライス5と隔壁7gとの間に介在しており、メカニカルスプライス5と、それに連結するフェルール6を前側に付勢している。これにより、メカニカルスプライス5は長手方向D1に沿って移動可能な状態でインナーハウジング7の接続部収容部7cに収容されている。光ファイバC1の撓み空間である内部空間7bは、突起7hの内側に形成された孔部7sからガイド部7dまで延びている。ガイド部7dの曲面7fは、隔壁7gから円錐状に広がっている。例えば、高さ方向D2に沿って見た曲面7fの形状、及び幅方向D3に沿って見た曲面7fの形状は、円弧状とされている。
【0032】
図4は、アウターハウジング10及び光
ファイバ接続用治具20を示す斜視図である。
図5は、アウターハウジング10の内部に位置するメカニカルスプライス5及びフェルール6を含む光ファイバ接続部3を模式的に示す断面図である。
図4及び
図5に示されるように、アウターハウジング10の貫通孔10bに光
ファイバ接続用治具20のクサビ部21が挿入された状態では光ファイバ配置空間5bが広げられている。
【0033】
フェルール6の内部、及びメカニカルスプライス5の光ファイバ配置空間5bには内蔵ファイバFが保持されている。すなわち、内蔵ファイバFはフェルール6の内部に予め設けられている。メカニカルスプライス5は、内蔵ファイバF及び光ファイバC1を互いに接続する。光ファイバC1と内蔵ファイバFとの接続部Pは、例えば、前側(フェルール6側)のクサビ部21の下部に位置している。
【0034】
アウターハウジング10の貫通孔10bに挿通された光
ファイバ接続用治具20のクサビ部21は、一対の保持部材5cの間に入り込む。これにより、光ファイバ配置空間5bが押し広げられた状態となる。例えば、
図6に模式的に示されるように、光
ファイバ接続用治具20のクサビ部21は予めメカニカルスプライス5に挿入されている。すなわち、接続作業の現場に光コネクタ1が搬送されるまでの間において、光
ファイバ接続用治具20のクサビ部21が予め光ファイバ配置空間5bを押し広げた状態とされている。
【0035】
図6及び
図7に示されるように、光ケーブルCからの光ファイバC1が光ファイバ配置空間5bに挿通され、内蔵ファイバFに光ファイバC1が接続された後に光
ファイバ接続用治具20が外されると、光ファイバ配置空間5bが閉じる。そして、V溝5dに入り込んだ光ファイバC1が内蔵ファイバFと共にメカニカルスプライス5に保持された状態となる。
【0036】
図8は、光
ファイバ接続用治具20を示す斜視図である。
図8に示されるように、光
ファイバ接続用治具20は、ベース22と、光
ファイバ接続用治具20を引き抜く操作を行うときに操作される操作部23と、光コネクタ1に係合する一対の第1係合部24及び一対の第2係合部25を備える。クサビ部21及びベース22は、例えば、透明樹脂によって構成されている。光
ファイバ接続用治具20の全体が透明樹脂によって構成されていてもよい。ベース22は、光ファイバC1及び内蔵ファイバFが延びる長手方向D1に沿って延びている板状の部分である。ベース22は、幅方向D3に幅を有すると共に高さ方向D2に厚みを有する板状とされている。
【0037】
図9は、光
ファイバ接続用治具20を前側から見た正面図である。
図1、
図8及び
図9に示されるように、操作部23は、前側(光コネクタ1の長手方向D1の端部側)に位置する。操作部23は、ベース22の幅方向D3の両側のそれぞれに設けられる。操作部23は、光コネクタ1よりも幅方向D3に突出している。操作部23は、光
ファイバ接続用治具20の幅方向D3の中央に位置する中央部26と、中央部26の幅方向D3の両端側のそれぞれに位置する両端部27とを有する。
【0038】
中央部26は、ベース22の長手方向D1の延長上に設けられる。すなわち、中央部26は、ベース22から前方に突出した部位に相当する。中央部26は、例えば、上方に向けられる平坦面26bと、下方に突出すると共に幅方向D3に沿って並ぶ一対の凸部26cとを有する。一対の凸部26cの間には、例えば、上方に円弧状に窪む凹部26dが形成されている。
【0039】
両端部27は、高さ方向D2に貫通する貫通孔27bを有する。この貫通孔27bによって、操作部23は軽量化されており指等で両端部27を上方に撓めやすくなっている。両端部27は、中央部26から幅方向D3の両端側に向かうに従って斜め上方に傾斜する傾斜面27cと、各傾斜面27cの幅方向D3の両端側の端部に位置する頂面27dとを有する。傾斜面27cは、例えば、幅方向D3の両端側に向かうに従って徐々に高くなる湾曲面とされている。頂面27dは、例えば、平坦面である。
【0040】
ベース22に対する操作部23の幅方向D3の両端部27における高さHは、ベース22に対する操作部23の中央部26における高さよりも高い。中央部26の高さは、例えば、ベース22の上面の高さと同一である。ベース22の上面を基準として両端部27が中央部26より高いことにより、中央部26に対して各両端部27を上方に撓めやすくなっている。両端部27の厚さ、すなわち、高さ方向D2の長さは、幅方向D3の両端側に向かうに従って厚くなっており、この点でも両端部27を上方に撓めやすくなっている。
【0041】
第1係合部24は、ベース22の長手方向D1の一方側(例えば後側)に位置する。
図4に示されるように、第1係合部24は、インナーハウジング7の幅方向D3の外側に向けられる側部7tに係合する。例えば、側部7tは、平坦面7vと、平坦面7vから幅方向D3に突出する凸部7wとを含んでおり、第1係合部24は凸部7wの下面に係合する。
【0042】
図10は、後方から光
ファイバ接続用治具20を見た背面図である。
図8及び
図10に示されるように、一対の第1係合部24は幅方向D3に沿って並ぶように設けられる。例えば、光
ファイバ接続用治具20は、一対の第1係合部24を互いに接続する接続部28を備える。接続部28は、ベース22の後方において上方に突出する凸部28bと、凸部28bの幅方向D3の中央を含む領域において後方に突出する突出部28cと、凸部28bにおいて窪む穴部28dとを有する。凸部28bの上面は、例えば、平坦面とされており、突出部28cは凸部28bから斜め下方に延びている。例えば、穴部28dは円形状とされている。
【0043】
第1係合部24は、接続部28の幅方向D3の両端のそれぞれに設けられる。第1係合部24は、例えば、下方に向かうに従って小さくなっており、第1係合部24の下端に凸部24fが形成されている。第1係合部24は、例えば、接続部28の幅方向D3の両端側に位置する根元部24bと、根元部24bから下方に延びる第1板状部24cと、第1板状部24cから下方に延びる第2板状部24dとを備える。第2板状部24dの長手方向D1における幅は、下方に向かうに従って狭くなっている。
【0044】
第2板状部24dの幅方向D3の内側には、幅方向D3の内側に突出する凸部24fが形成されている。第1係合部24は、凸部24fの上面がインナーハウジング7の凸部7wの下面に当接することにより、インナーハウジング7の側部7tに係合する。一例として、凸部24fの表面は曲面状とされており、凸部24fは長手方向D1に延在している。凸部24fの表面が曲面状とされていることにより、比較的弱い力で第1係合部24を光コネクタ1から引き抜くことが可能となる。
【0045】
第2係合部25は、ベース22の長手方向D1の他方側(例えば前側)に位置する。
図4に示されるように、第2係合部25は、アウターハウジング10に係合する。例えば、アウターハウジング10は幅方向D3の外側に向けられる側部10dを有する。側部10dは、高さ方向D2に沿って並ぶ一対の凸部10cと、一対の凸部10cの間に形成された凹部10fと、凹部10fの後側においてインナーハウジング7を露出する開口10gとを有する。第2係合部25は、アウターハウジング10の幅方向D3の外側に向けられる一対の凸部10cのうち、上側の凸部10cの下面に係合する。
【0046】
図8及び
図9に示されるように、一対の第2係合部25が幅方向D3に沿って並ぶように設けられる。第2係合部25は、例えば、操作部23の幅方向D3の両端側のそれぞれに設けられる。具体的には、第2係合部25は、操作部23における中央部26の凸部26cの幅方向D3の両端側に位置する操作部23の下面23bから下方に突出している。第2係合部25は下面23bにおける幅方向D3の両端寄りの位置に設けられており、操作部23は第2係合部25から幅方向D3の両端側に突出している。
【0047】
例えば、第2係合部25の高さ方向D2の長さは、第1係合部24の高さ方向D2の長さよりも短い。第2係合部25は、一例として、第1係合部24よりも幅方向D3の両端側に設けられている。第2係合部25は、例えば、操作部23から下方に直線状に延びており、第2係合部25の下端に凸部25cが形成されている。第2係合部25は、例えば、操作部23の下面23bから下方に延びる板状部25bと、板状部25bの下端において幅方向D3の内側に突出する凸部25cとを備える。
【0048】
第2係合部25は、凸部25cの上面がアウターハウジング10の凸部10cの下面に当接することにより、アウターハウジング10の側部10dに係合する。一例として、凸部25cの表面は曲面状とされており、凸部25cは長手方向D1に延在している。凸部25cの表面が曲面状とされていることにより、比較的弱い力で第2係合部25を光コネクタ1から引き抜くことができる。
【0049】
図4及び
図5に示されるように、光
ファイバ接続用治具20は、長手方向D1に沿って並ぶ一対のクサビ部21を備える。例えば、一対のクサビ部21のうち、第1係合部24側に位置するクサビ部21は、光ファイバC1の被覆C3が通る光ファイバ配置空間5bを押し広げる。一方、一対のクサビ部21のうち第2係合部25側に位置するクサビ部21は、光ファイバC1が内蔵ファイバFに接続する接続部Pにおける光ファイバ配置空間5bを押し広げる。
【0050】
光ファイバ接続用治具20は、ベース22からクサビ部21の反対側に突出する凸レンズ29を備える。凸レンズ29は、接続部Pの光ファイバ配置空間5bを押し広げるクサビ部21の上方に位置する。例えば、クサビ部21及び凸レンズ29は透明樹脂によって構成されている。よって、接続部Pから光が漏れている場合には、当該光がクサビ部21を介して凸レンズ29に到達するので、凸レンズ29の発光を視認することで接続部Pからの光の漏れを確認することができる。
【0051】
次に、本実施形態に係る光ファイバ接続用治具20及び光コネクタ1の作用効果について説明する。光ファイバ接続用治具20は、ベース22の長手方向D1の一方側においてベース22の幅方向D3の両側のそれぞれに設けられた第1係合部24と、ベース22の長手方向D1の他方側においてベース22の幅方向D3の両側のそれぞれに設けられた第2係合部25とを備える。従って、ベース22の長手方向D1の一方側及び他方側、並びにベース22の幅方向D3の一方側及び他方側のそれぞれにおいて光コネクタ1に係合される。その結果、光ファイバ接続用治具20が光コネクタ1から脱落することを抑制することができる。
【0052】
光ファイバ接続用治具20の4箇所のそれぞれの係合部(一対の第1係合部24及び一対の第2係合部25)が光コネクタ1に係合することによって、振動又は衝撃を受けた場合であっても光ファイバ接続用治具20の脱落を生じにくくすることができる。光ファイバ接続用治具20は、光コネクタ1よりも幅方向D3の両側に突出する操作部23を備える。従って、幅方向D3の両側に突出する操作部23を摘まんで光コネクタ1から光ファイバ接続用治具20を引き上げる操作を行うことにより、1アクションで光ファイバ接続用治具20を外すことができる。よって、光ファイバ接続用治具20を外す操作の操作性を向上させることができる。
【0053】
一対の第1係合部24のそれぞれは、メカニカルスプライス5を収容するインナーハウジング7に係合してもよい。一対の第2係合部25のそれぞれは、インナーハウジング7を収容するアウターハウジング10に係合してもよい。この場合、第1係合部24が係合する光コネクタ1の部分を、第2係合部25が係合する部分と異ならせることができる。
【0054】
ベース22に対する操作部23の幅方向D3の両端部27における高さHは、ベース22に対する操作部23の幅方向D3の中央部26における高さよりも高くてもよい。この場合、操作部23の一対の両端部27の高さHが中央部26の高さよりも高いので、一対の両端部27を摘まんで操作部23をより引き上げやすくすることができる。従って、光ファイバ接続用治具20の引き抜きの操作性をより高めることができる。
【0055】
操作部23の長手方向D1の位置は、光ファイバC1及び内蔵ファイバFが互いに接続する接続部P側の端部と一致してもよい。この場合、操作部23が接続部P寄りの位置に設けられる。よって、操作部23によって光ファイバ接続用治具20を光コネクタ1から引き上げるときに、接続部Pにおける光ファイバC1及び内蔵ファイバFの接続を直ちに行うことができる。すなわち、操作部23を引き上げると、接続部P側(前側)のクサビ部21が後側のクサビ部21よりも先に抜けるので、接続部Pにおける固定を先に行うことができる。従って、光ファイバC1と内蔵ファイバFのガラスファイバ同士の固定を先行して行うことができる。
【0056】
ベース22及びクサビ部21の少なくとも一部が透明樹脂によって構成されていてもよい。この場合、ベース22及びクサビ部21を介して光コネクタ1を視認することができ、光ファイバC1及び内蔵ファイバFの接続状態を接続部Pからの漏洩光によって確認することができる。
【0057】
光ファイバ接続用治具20は、ベース22からクサビ部21の反対側に突出する凸レンズ29を備えてもよい。この場合、光ファイバC1及び内蔵ファイバFの接続部Pからの漏洩光を凸レンズ29によって拡大できるので、接続状態の確認を一層容易に行うことができる。
【0058】
光コネクタ1は、光ファイバ接続用治具20とメカニカルスプライス5とを備え、光ファイバ接続用治具20のクサビ部21が挿入されていてもよい。この場合、光ファイバ接続用治具20が光コネクタ1に取り付けられている。よって、接続作業の現場における光ファイバ接続用治具20の取付を不要とすることができる。従って、光コネクタ1に対する光ケーブルCの光ファイバC1の接続作業を一層容易に行うことができる。
【0059】
以上、本開示に係る光ファイバ接続用治具及び光コネクタの実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した実施形態に限定されない。すなわち、本発明が請求の範囲に記載された要旨の範囲内において種々の変形及び変更が可能であることは当業者によって容易に理解される。例えば、光ファイバ接続用治具及び光コネクタの各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0060】
例えば、前述の実施形態では、第1係合部24がインナーハウジング7の凸部7wの下面に係合し、第2係合部25がアウターハウジング10の幅方向D3の外側に向けられる一対の凸部10cのうち、上側の凸部10cの下面に係合する例について説明した。しかしながら、例えば、第1係合部がインナーハウジング7全体を抱え込むように係合し、第2係合部がアウターハウジング10全体を抱え込むように係合してもよい。第1係合部及び第2係合部が光コネクタ全体を抱え込むように係合してもよい。このように、第1係合部が係合する対象の部位、及び第2係合部が係合する対象の部位は、特に限定されない。
【符号の説明】
【0061】
1…光コネクタ
3…光ファイバ接続部
4…バネ
5…メカニカルスプライス
5b…光ファイバ配置空間
5c…保持部材
5d…V溝
5f…クランプ
6…フェルール
7…インナーハウジング
7b…内部空間
7c…接続部収容部
7d…ガイド部
7f…曲面
7g…隔壁
7h…突起
7s…孔部
7t…側部
7v…平坦面
7w…凸部
8…リアカバー
8b…軸部
9…外被固定部
10…アウターハウジング
10b…貫通孔
10c…凸部
10d…側部
10f…凹部
10g…開口
11…フェルールキャップ
20…光ファイバ接続用治具
21…クサビ部
22…ベース
23…操作部
23b…下面
24…第1係合部
24b…根元部
24c…第1板状部
24d…第2板状部
24f…凸部
25…第2係合部
25b…板状部
25c…凸部
26…中央部
26b…平坦面
26c…凸部
26d…凹部
27…両端部
27b…貫通孔
27c…傾斜面
27d…頂面
28…接続部
28b…凸部
28c…突出部
28d…穴部
29…凸レンズ
C…光ケーブル
C1…光ファイバ
C2…外被
C3…被覆
D1…長手方向
D2…高さ方向
D3…幅方向
F…内蔵ファイバ
P…接続部