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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/05 20060101AFI20250325BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20250325BHJP
   C08K 5/5425 20060101ALI20250325BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20250325BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20250325BHJP
【FI】
C08L83/05
C08L83/07
C08K5/5425
C08K5/5419
C08K3/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022549297
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 CN2020079448
(87)【国際公開番号】W WO2021184149
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シン、チョン
(72)【発明者】
【氏名】バーグワーガー、ドラブ エドゥル
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、チアン
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ、ルー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ルイ
(72)【発明者】
【氏名】チュー、チュンミン
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/181657(WO,A1)
【文献】特開2011-178821(JP,A)
【文献】特開2013-071961(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021824(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0239758(US,A1)
【文献】特開2016-011322(JP,A)
【文献】特開2020-002236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性シリコーン組成物であって、
(A)1分子当たり少なくとも2つの、2~12個の炭素原子を有するケイ素原子結合アルケニル基を有する、100質量部のオルガノポリシロキサンと、
(B)1分子当たり少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有し、以下の一般式によって表される、オルガノポリシロキサンであって、
【化1】
式中、各Rが、独立して、1~12個の炭素原子を有し、脂肪族不飽和結合を含まない一価の炭化水素基であり、各Rが、独立して、上記のRから選択され、この構成成分中のケイ素原子結合水素原子の数が、構成成分(A)中の総アルケニル基1モル当たり0.01~0.5モルであるような量で、「m1」が、10~200の整数であり、「m2」が、~50の整数である、オルガノポリシロキサンと、
(C)1分子当たり2個のケイ素原子結合水素原子を有し、以下の一般式によって表される、オルガノポリシロキサンであって、
【化2】
式中、Rが、上記のとおりであり、各Rが、独立して、上記のRから選択され、この構成成分中のケイ素原子結合水素原子の数が、構成成分(A)中の総アルケニル基1モル当たり0.1~5モルであるような量で、「n1」が、5~50の整数であり、「n2」が、2の整数である、オルガノポリシロキサンと、
(D)200~2,500質量部の水酸化アルミニウム粉末と、
(E)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、を含む、熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項2】
構成成分(D)が、(D-1)少なくとも0.1μmかつ5μm未満の平均粒径を有する水酸化アルミニウム粉末、及び(D-2)5μm~50μmの平均粒径を有する水酸化アルミニウム粉末を含み、構成成分(D-1)の量が、構成成分(D)の最大50質量%であり、構成成分(D-2)の量が、構成成分(D)の50質量%超である、請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項3】
構成成分(A)100質量部当たり0.01~50質量部の量で、以下の一般式によって表される(F)アルコキシシラン化合物を更に含み、
Si(OR(4-a-b)
式中、各Rが、独立して、6~15個の炭素原子を有するアルキル基であり、各Rが、独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基又は2~6個の炭素原子を有するアルケニル基であり、各Rが、独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、「a」が、1~3の整数であり、「b」が、0~2の整数であり、ただし、「a+b」が、1~3の整数であることを条件とする、請求項1又は2に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項4】
構成成分(A)100質量部当たり0.001~5質量部の量で、(G)ヒドロシリル化反応阻害剤を更に含む、請求項1又は2に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項5】
構成成分(A)100質量部当たり0.01~5質量部の量で、(H)顔料を更に含む、請求項1又は2に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーン組成物を硬化させることによって得られる、熱伝導性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロシリル化反応によって硬化させることができる熱伝導性シリコーン組成物は、優れた耐熱性を有する熱伝導性材料を形成し、したがって多様な用途で使用される。
【0003】
例えば、そのような熱伝導性シリコーン組成物として、特許文献1は、シリコーンエラストマー組成物であって、1分子に平均少なくとも0.1個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子に平均少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、白金族金属触媒と、水酸化アルミニウム粉末などの熱伝導性充填剤と、1個の分子にアルケニル基及びケイ素原子結合アルコキシ基を有するオルガノシロキサンと、アルコキシシラン化合物と、を含み、組成物が、熱エージング後でさえも低減された硬度変化を特徴とするエラストマーの生成に好適である、シリコーンエラストマー組成物について記載している。
【0004】
特許文献2は、熱伝導性シリコーン組成物であって、1分子に少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、≧0.1μmかつ<5μmの平均粒径を有する15~25質量%の水酸化アルミニウム、≧5μmかつ<40μmの平均粒径を有する35~45質量%の水酸化アルミニウム、及び≧40μmかつ<100μmの平均粒径を有する35~45質量%の水酸化アルミニウムを含む熱伝導性充填剤と、白金族金属系硬化触媒と、を含む、熱伝導性シリコーン組成物について記載している。
【0005】
特許文献3は、ポリシロキサン組成物であって、1分子に平均少なくとも0.1個のアルケニル基を有するオルガノアルキルポリシロキサンと、1分子に平均少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンと、ヒドロシリル化反応触媒と、水酸化アルミニウム粉末などの熱伝導性充填剤と、金属を含まないフタロシアニン化合物及び金属含有フタロシアニン化合物からなる群から選択される添加剤と、を含む、ポリシロキサン組成物について記載している。
【0006】
特許文献4は、電力変換器の封入剤(pottant)としての使用のための硬化性ポリマー組成物であって、1分子当たり平均少なくとも0.5個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子当たり少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン硬化剤と、ヒドロシリル化触媒と、水酸化アルミニウム粉末などの熱伝導性充填剤と、を含み、任意選択的に充填剤処理剤と、ヒドロシリル化安定剤と、を更に含む、硬化性ポリマー組成物について記載している。
【0007】
最近、自動車及び電子機器/電動分野などの用途において、10~70のショアOO硬度を有する熱伝導性軟質材料が評価されている。
【0008】
しかしながら、長期貯蔵後に組成物を硬化させると、これらの熱伝導性シリコーン組成物は、硬度が変化した熱伝導性軟質材料を形成するという問題がある。
【0009】
先行技術文献
特許文献
特許文献1:米国特許出願公開第2010/0140538(A1)号
特許文献2:特開2011-089079(A)号公報
特許文献3:米国特許出願公開第2013/0248163(A1)号
特許文献4:米国特許出願公開第2016/0009954(A1)号
【発明の概要】
【0010】
技術的問題
本発明の目的は、熱伝導性シリコーン組成物を提供することであり、この組成物は、組成物を長期貯蔵後に硬化させた場合であっても硬度の変化が小さい、熱伝導性軟質材料を形成する。
【0011】
問題に対する解決策
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、
(A)1分子当たり2~12個の炭素原子を有する少なくとも2つのケイ素原子結合アルケニル基を有する、100質量部のオルガノポリシロキサンと、
(B)1分子当たり少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有し、以下の一般式によって表される、オルガノポリシロキサンであって、
【0012】
【化1】
式中、各Rが、独立して、1~12個の炭素原子を有し、脂肪族不飽和結合を含まない一価の炭化水素基であり、各Rが、独立して、水素原子又は上記のRから選択され、この構成成分中のケイ素原子結合水素原子の数が、構成成分(A)中の総アルケニル基1モル当たり0.01~0.5モルであるような量で、「m1」が、10~200の整数であり、「m2」が、1~50の整数である、オルガノポリシロキサンと、
(C)1分子当たり最大2個のケイ素原子結合水素原子を有し、以下の一般式によって表される、オルガノポリシロキサンであって、
【0013】
【化2】
式中、Rが、上記のとおりであり、各Rが、独立して、水素原子又は上記のRから選択され、この構成成分中のケイ素原子結合水素原子の数が、構成成分(A)中の総アルケニル基1モル当たり0.1~5モルであるような量で、「n1」が、5~50の整数であり、「n2」が、0~2の整数である、オルガノポリシロキサンと、
(D)200~2,500質量部の水酸化アルミニウム粉末と、
(E)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、を含む。
【0014】
様々な実施形態では、構成成分(D)は、(D-1)少なくとも0.1μmかつ5μm未満の平均粒径を有する水酸化アルミニウム粉末、及び(D-2)5μm~50μmの平均粒径を有する水酸化アルミニウム粉末を含み、構成成分(D-1)の量が、構成成分(D)の最大50質量%であり、構成成分(D-2)の量が、構成成分(D)の50質量%超である。
【0015】
様々な実施形態では、熱伝導性シリコーン組成物は、以下の一般式によって表される(F)アルコキシシラン化合物を更に含み、
Si(OR(4-a-b)
式中、各Rが、独立して、6~15個の炭素原子を有するアルキル基であり、各Rが、独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基又は2~6個の炭素原子を有するアルケニル基であり、各Rが、独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、「a」が、1~3の整数であり、「b」が、0~2の整数であり、ただし、「a+b」が、構成成分(A)100質量部当たり0.01~50質量部の量で、1~3の整数であることを条件とする。
【0016】
様々な実施形態では、熱伝導性シリコーン組成物は、構成成分(A)100質量部当たり0.001~5質量部の量で、(G)ヒドロシリル化反応阻害剤を更に含む。
【0017】
様々な実施形態では、熱伝導性シリコーン組成物は、構成成分(A)100質量部当たり0.01~5質量部の量で、(H)顔料を更に含む。
【0018】
上記の熱伝導性シリコーン組成物を硬化させることによって得られることを特徴とする本発明の熱伝導性材料。
【0019】
発明の効果
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、硬化して、組成物を長期貯蔵後に硬化させた場合であっても硬度の変化が小さい、熱伝導性軟質材料を形成する。なおかつ、本発明の熱伝導性シリコーン材料は、期待される柔軟性を呈する。
【0020】
定義
「含む(comprising)又は含む(comprise)」という用語は、本明細書において広義に使用され、「含む(including)又は含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」を意味し、それらの概念を包含する。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25%、±0~10%、±0~5%、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に当てはまることがある。
【0021】
添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」を表現するために、かつそこに記載される特定の化合物、組成物、又は方法に限定されず、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態間で異なり得ることを理解されたい。様々な実施形態の詳細な特徴又は態様を説明するために、本明細書で依拠されたあらゆるマーカッシュ群に関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果が、他の全マーカッシュ要素から独立してそれぞれのマーカッシュ群の各要素から得ることができることは理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0022】
本発明の様々な実施形態の記載で依拠された任意の範囲及び部分的範囲は、独立して、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきであり、その中に整数値及び/又は分数値を含む全ての範囲を、そのような値が本明細書で明確に書かれていない場合であっても、記述し、想定すると理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、かつ添付の特許請求の範囲内の具体的な実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、かつ十分なサポートを提供している。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、かつ各部分範囲は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、かつ十分なサポートを提供している。最終的に、開示した範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に依拠され得、かつ十分なサポートを提供している。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点(又は分数)を含む個々の数、例えば4.1を含み、これは、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に依拠され得、かつ十分なサポートを提供している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、本発明の熱伝導性シリコーン組成物について詳細に説明する。
【0024】
構成成分(A)は、本組成物中の主成分であり、1分子当たり2~12個の炭素原子を有する少なくとも2つのケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基が挙げられ、その中でもビニル基が好ましい。更に、構成成分(A)中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基などの1~12個の炭素原子を有するアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基などの6~12個の炭素原子を有するアリール基;ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基などの7~12個の炭素原子を有するアラルキル基;並びに、これら基の水素原子の一部又は全てが、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子などのハロゲン原子で置換された基が挙げられる。更に、構成成分(A)中のケイ素原子は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量のヒドロキシル基又はアルコキシ基、例えばメトキシ基又はエトキシ基を有してもよい。
【0025】
構成成分(A)の分子構造の例としては、直鎖状構造、一部分岐した直鎖状構造、分岐鎖状構造、環状構造、及び三次元網状構造が挙げられる。構成成分(A)は、これらの分子構造を有するオルガノポリシロキサンの1種であってもよく、又はこれらの分子構造を有する2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0026】
構成成分(A)の例としては、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がメチルフェニルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン及びメチルフェニルシロキサンのコポリマー、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン及びメチルフェニルシロキサンのコポリマー、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン及びメチルビニルシロキサンのコポリマー、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン及びメチルビニルシロキサンのコポリマー、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたメチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたジメチルシロキサン及びメチルビニルシロキサンのコポリマー、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたジメチルシロキサン及びメチルフェニルシロキサンのコポリマー、式:CHSiO3/2によって表されるシロキサン単位及び式:(CHSiO2/2によって表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、式:CSiO3/2によって表されるシロキサン単位及び式:(CHSiO2/2によって表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、式:(CHSiO1/2によって表されるシロキサン単位、式:CHSiO3/2によって表されるシロキサン単位、及び式:(CHSiO2/2によって表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、式:(CHSiO1/2によって表されるシロキサン単位、式:(CH(CH=CH)SiO1/2によって表されるシロキサン単位、式CHSiO3/2によって表されるシロキサン単位、及び式:(CHSiO2/2によって表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、並びにこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0027】
加えて、構成成分(A)の25℃での粘度は、約10~約100,000mPa・sの範囲、好ましくは10~50,000mPa・sの範囲、あるいは10~10,000mPa・sの範囲、あるいは50~10,000mPa・sの範囲である。これは、構成成分(A)の粘度が前述の範囲の下限以上である場合、シリコーン組成物を硬化させることによって得られる熱伝導性材料の機械的特性が改善され、構成成分(A)の粘度が前述の範囲の上限以下である場合、本組成物のハンドリング性が改善されることが理由である。
【0028】
構成成分(B)は、本組成物中の構成成分(A)の架橋剤であり、1分子当たり少なくとも3つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。構成成分(B)のオルガノポリシロキサンは、以下の一般式によって表される。
【0029】
【化3】
【0030】
式中の各Rは、独立して、1~12個の炭素原子を有し、脂肪族不飽和結合を含まない、一価の炭化水素基である。一価の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基などの1~12個の炭素原子を有するアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基などの6~12個の炭素原子を有するアリール基;ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基などの7~12個の炭素原子を有するアラルキル基;並びに、これら基の水素原子の一部又は全てが、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子などのハロゲン原子で置換された基が挙げられる。更に、構成成分(B)中のケイ素原子は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量のヒドロキシル基又はアルコキシ基、例えばメトキシ基又はエトキシ基を有してもよい。
【0031】
式中の各Rは、独立して、水素原子又は上記のRから選択される。
【0032】
式中の「m1」は、10~200の整数、任意選択的に50~200の整数、又は任意選択的に50~150の整数である。これは、「m1」が上記の範囲の下限以上である場合、有機ケイ素化合物の分子量を増加させることができ、有機ケイ素化合物の揮発性を低減することができることが理由である。一方、「m1」が上記の範囲の上限以下である場合、熱伝導性シリコーン組成物のハンドリング特性を向上することができる。
【0033】
式中の「m2」は、1~50の整数、任意選択的に3~30の整数、又は任意選択的に5~20の整数である。これは、「m2」が上記の範囲の下限以上である場合、有機ケイ素化合物の分子量を増加させることができ、有機ケイ素化合物の揮発性を低減することができることが理由である。一方、「m2」が上記の範囲の上限以下である場合、熱伝導性シリコーン組成物の硬化性を向上することができる。「m2」が1である場合、両方のRは、水素原子であり、「m2」が2である場合、少なくとも1つのRは、水素原子である。
【0034】
構成成分(B)の含有量は、この構成成分中のケイ素原子結合水素原子の数が、構成成分(A)中の総アルケニル基1モル当たり0.01~0.5モル、任意選択的に0.01~0.3モル、又は任意選択的に0.01~0.2モルであるような量である。これは、構成成分(B)の含有量が上記の範囲の下限以上である場合、生じる組成物は、十分に硬化することが理由である。一方、構成成分(B)の含有量が上記の範囲の上限以下である場合、生じる熱伝導性材料の耐熱性が向上する。
【0035】
構成成分(C)は、本組成物中の構成成分(A)の鎖延長剤であり、1分子当たり最大2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。オルガノポリシロキサン形態構成成分(C)は、以下の一般式によって表される。
【0036】
【化4】
【0037】
式中の各Rは、上記のとおりである。
【0038】
式中の各Rは、独立して、水素原子又は上記のRから選択される。
【0039】
式中の「n1」は、5~50の整数、任意選択的に5~30の整数、又は任意選択的に10~30の整数である。これは、「n1」が上記の範囲の下限以上である場合、有機ケイ素化合物の分子量を増加させることができ、有機ケイ素化合物の揮発性を低減することができることが理由である。一方、「n1」が上記の範囲の上限以下である場合、熱伝導性シリコーン組成物のハンドリング特性を向上することができる。
【0040】
式中の[n2]は、0~2の整数である。これは、「n2」が上記の範囲の下限以上である場合、有機ケイ素化合物の分子量を増加させることができ、有機ケイ素化合物の揮発性を低減することができることが理由である。一方、「n2」が上記の範囲の上限以下である場合、熱伝導性シリコーン組成物を硬化させることによって得られる熱伝導性材料の弾性を向上することができる。「n2」が0である場合、両方のRは、水素原子であり、「n2」が2である場合、1つのRは、水素原子である。
【0041】
構成成分(C)の含有量は、この構成成分中のケイ素原子結合水素原子の数が、構成成分(A)中の総アルケニル基1モル当たり0.1~5モル、任意選択的に0.1~3モル、又は任意選択的に0.1~2モルであるような量である。これは、構成成分(C)の含有量が上記の範囲の下限以上である場合、生じる組成物は、十分に硬化することが理由である。一方、構成成分(C)の含有量が上記の範囲の上限以下である場合、生じる熱伝導性材料の耐熱性が向上する。
【0042】
構成成分(D)は、本組成物にチキソ特性を提供するための、熱伝導性充填剤としての水酸化アルミニウム粉末である。構成成分(D)は、好ましくは、(D-1)少なくとも0.1μmかつ5μm未満の平均粒径を有する水酸化アルミニウム粉末、及び(D-2)5μm~50μmの平均粒径を有する水酸化アルミニウム粉末を含む。
【0043】
構成成分(D-1)の含有量は、限定されないが、好ましくは、構成成分(D)の最大50質量%の量、あるいは最大40質量%の量である。一方、構成成分(D-2)の含有量は、限定されないが、好ましくは、構成成分(D)の50質量%超の量、あるいは60質量%超の量である。これは、構成成分(D-1)の含有量が上記の範囲の上限以下である場合、生じる熱伝導性材料の熱伝導特性が向上することが理由である。一方、構成成分(D-2)の含有量が上記の範囲の下限以上である場合、組成物のチキソ特性が向上することが理由である。
【0044】
構成成分(D)の含有量は、構成成分(A)100質量部に対して、約200~約2,500質量部の範囲、任意選択的に約300~約2,000質量部の範囲、又は任意選択的に約300~約1,500質量部の範囲である。これは、構成成分(D)の含有量が上記の範囲の下限以上である場合、組成物の熱伝導特性が改善され、構成成分(D)の含有量が上記の範囲の上限以下である場合、組成物のハンドリング性が改善されることが理由である。
【0045】
構成成分(E)は、本組成物の硬化を促進するためのヒドロシリル化触媒である。構成成分(E)の例としては、白金族元素触媒及び白金族元素化合物触媒が挙げられ、具体例としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒、及びそれらの少なくとも2種の組み合わせが挙げられる。特に、本組成物の硬化を劇的に促進できる点で、白金系触媒が好ましい。これらの白金系触媒の例としては、白金微粉末;白金黒;塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸;塩化白金酸/ジオレフィン錯体;白金/オレフィン錯体;白金ビス(アセトアセテート)及び白金ビス(アセチルアセトネート)などの白金/カルボニル錯体;塩化白金酸/ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、及び塩化白金酸/テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体などの塩化白金酸/アルケニルシロキサン錯体;白金/ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、及び白金/テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体などの白金/アルケニルシロキサン錯体;塩化白金酸とアセチレンアルコールとの錯体;及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。特に、白金-アルケニルシロキサン錯体は、本組成物の硬化を促進できる点で好ましい。
【0046】
白金-アルケニルシロキサン錯体に使用されるアルケニルシロキサンの例としては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、アルケニルシロキサンのメチル基の一部がエチル基、フェニル基などによって置換されたアルケニルシロキサンオリゴマー、及びアルケニルシロキサンのビニル基がアリル基、ヘキセニル基などによって置換されたアルケニルシロキサンオリゴマーが挙げられる。特に、生成される白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であるという点で、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが好ましい。
【0047】
白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性を改善するために、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジアリル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、又は1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサンなどのアルケニルシロキサンオリゴマー、又はジメチルシロキサンオリゴマーなどのオルガノシロキサンオリゴマーに、これらの白金-アルケニルシロキサン錯体を溶解させることが好ましく、当該錯体をアルケニルシロキサンオリゴマーに溶解することが特に好ましい。
【0048】
構成成分(E)の含有量は、本組成物の硬化を促進する触媒量であるが、好ましくは、本組成物に対する質量単位の観点で、この構成成分中約0.01~約1,000ppmの量の白金族金属である。具体的には、含有量は、好ましくは、構成成分(E)中の白金族金属の含有量が、本組成物に対する質量単位の観点で、約0.01~約500ppmの範囲、あるいは約0.1~約100ppmの範囲であるような量である。これは、構成成分(E)の含有量が上記の範囲の下限以上である場合、組成物の硬化性が良好であるのに対し、構成成分(E)の含有量が上記の範囲の上限以下である場合、熱伝導性材料の着色が抑制されることが理由である。
【0049】
組成物は、大量の構成成分(C)を用いるために、(F)アルコキシシラン化合物を含み得る。構成成分(F)は、以下の一般式によって表されるアルコキシシランである。
Si(OR(4-a-b)
【0050】
式中のRは、独立して、6~15個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基の例としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基が挙げられる。
【0051】
式中のRは、独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基、又は2~6個の炭素原子を有するアルケニル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、及びネオペンチル基が挙げられる。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、及びヘキセニル基が挙げられる。
【0052】
式中のRは、独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。
【0053】
式中の「a」は、1~3の整数であり、「b」は、0~2の整数であり、ただし、「a+b」が、1~3の整数であるか、あるいは「a」が1であり、「b」が、0若しくは1の整数であるか、あるいは「a」が1であり、「b」が0であることを条件とする。
【0054】
構成成分(F)のアルコキシシランの例としては、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルメチルジメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ノナデシルトリメトキシシラン、又はそれらの少なくとも2つの任意の組み合わせが挙げられる。
【0055】
構成成分(F)の含有量は、限定されないが、好ましくは、構成成分(A)100質量部当たり、0.01~50質量部の量、あるいは約0.01~20質量部の量、あるいは0.1~10質量部の量である。これは、構成成分(F)の含有量が上記の範囲の下限以上である場合、本組成物の貯蔵安定性が良好であるのに対し、構成成分(F)の含有量が上記の範囲の上限以下である場合、低温での本組成物の硬化性が良好であることが理由である。
【0056】
組成物は、環境温度での使用可能時間を延長し、貯蔵安定性を改善するために、(G)ヒドロシリル化反応阻害剤を含み得る。構成成分(G)の例としては、1-エチニル-シクロヘキサン-1-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、2-エチニル-イソプロパン-2-オール、2-エチニル-ブタン-2-オール、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールなどのアセチレンアルコール;トリメチル(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)シラン、ジメチルビス(3-メチル-1-ブチン-オキシ)シラン、メチルビニルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン、及び((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシランなどのシリル化アセチレンアルコール;ジアリルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルフマレート、ジアリルフマレート、及びビス(2-メトキシ-1-メチルエチル)マレエート、モノ-オクチルマレエート、モノ-イソオクチルマレエート、モノ-アリルマレエート、モノ-メチルマレエート、モノ-エチルフマレート、モノ-アリルフマレート、及び2-メトキシ-1-メチルエチルマレエートなどの不飽和カルボン酸エステル;2-イソブチル-1-ブテン-3-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3-メチル-3-ヘキセン-1-イン、1-エチニルシクロヘキセン、3-エチル-3-ブテン-1-イン、及び3-フェニル-3-ブテン-1-インなどのエン-イン化合物;並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0057】
構成成分(G)の含有量は、構成成分(A)100質量部当たり、約0.001~5質量部の量、任意選択的に約0.001~約2質量部の量、又は任意選択的に約0.001~約1質量部の量である。これは、構成成分(G)の含有量が上記の範囲の下限以上である場合、本組成物のハンドリング性が良好であるのに対し、構成成分(G)の含有量が上記の範囲の上限以下である場合、低温での本組成物の硬化性が良好であることが理由である。
【0058】
組成物は、熱伝導性シリコーン材料の所望の物理的特徴、すなわち、適切な柔軟性及び適合する性質を維持する効果を有す顔料(H)を含み得る。構成成分(H)の例としては、赤色の酸化鉄、白色のチタン、カーボンブラック、及びフタロシアニン化合物が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、フタロシアニン化合物である。フタロシアニン化合物の例としては、銅フタロシアニン及び塩素化銅フタロシアニンが挙げられる。Stan-tone(商標)40SP03などのフタロシアニン化合物は、PolyOne Corporation、Avon Lake,Ohio,USAから市販されている。
【0059】
構成成分(H)の含有量は、限定されないが、好ましくは、質量単位の観点で、顔料が、構成成分(A)100質量部当たり、0.01~5質量部の範囲、あるいは0.05~5質量部の範囲、あるいは0.05~1質量部の範囲の量であるような量である。
【0060】
組成物は、補強性充填剤及び/又は非補強性充填剤を含んでもよい。充填剤の例としては、微粉化された処理又は未処理の沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ、沈殿又は粉砕炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、微粉化カオリンなどの粘土、石英粉末、ケイ酸ジルコニウム、珪藻土、珪灰石、葉ろう石(pyrophylate)、及びヒュームド又は沈殿二酸化チタン、酸化セリウム、酸化マグネシウム粉末、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物の1つ以上が挙げられる。これらはまた、ガラス繊維、タルク、アルミナイト、硫酸カルシウム(硬石膏)、石膏、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム(ブルーサイト)、グラファイト、硫酸バリウムの一形態であるバーライト、マラカイトなどの炭酸銅、ザラカイト(zarachite)などの炭酸ニッケル、毒重石などの炭酸バリウム、ストロンチアナイトなどの炭酸ストロンチウム、又は同様の無機充填剤を含んでもよい。
【0061】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、全ての成分を環境温度で組み合わせることによって調製することができる。先行技術に記載されている、混合技術及び装置のいずれかをこの目的に用いることができる。使用する具体的な装置は、成分及び最終的な組成物の粘度によって決定される。混合中に成分を冷却することが、早期硬化を避けるために望ましい場合がある。
【0062】
次に、本発明の熱伝導性材料について、詳細に説明する。
【0063】
本発明の熱伝導性材料は、上記の熱伝導性シリコーン組成物を硬化させることによって得られることを特徴とする。熱伝導性材料の硬度は、ショアOO硬度において、限定されないが、好ましくは10~70の範囲、あるいは10~75の範囲である。これは、熱伝導性材料が上記の範囲内の硬度を有する場合、発熱材料に対する良好な柔軟性が理由である。なお、本明細書において、ショアOO硬度は、ASTM D 2240に従ってOO硬度を用いて23±2℃において測定した値である。
【実施例
【0064】
以下、実施例及び比較例を使用して、本発明の熱伝導性シリコーン組成物について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下に列挙する実施例の説明により限定されるものではない。
【0065】
<粘度>
23±2℃での粘度を、ASTM D 1084「Standard Test Methods for Viscosity of Adhesive」に従って、タイプB粘度計(Brookfield HA Type Rotational Viscometer)を1s-1及び10s-1で使用することによって測定した。
【0066】
<チキソ指数>
チキソ指数は、10s-1で測定した25±2℃での粘度に対して、1s-1で測定した25±2℃での粘度の比として計算した。
【0067】
<ショアOO硬度>
熱伝導性シリコーン組成物を120℃の空気循環オーブン内で1時間熱硬化させることによって、熱伝導性材料を得た。デュロメータ測定のために、熱伝導性材料を少なくとも6mmの厚さになるように積層した。熱伝導性材料の25℃での硬度を、ASTM D 2240-00によって指定の方法に従って、タイプOO硬度によって測定した。
【0068】
[実施例1~3及び比較例1~2]
以下に記載の構成成分を使用して、表1に示される熱伝導性シリコーン組成物を調製した。更に、表1において、「SiH/Vi(1)」は、構成成分(A)中のビニル基1モル当たりの構成成分(B)中のケイ素原子結合水素原子のモルを表し、「SiH/Vi(2)」は、構成成分(A)中のビニル基1モル当たりの構成成分(C)中のケイ素原子結合水素原子のモルを表す。
【0069】
以下の構成成分を、構成成分(A)として使用した。
構成成分(a-1):約450mPa・sの粘度を有し、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で末端ブロックされたジメチルポリシロキサン。
【0070】
以下の構成成分を、構成成分(B)として使用した。
構成成分(b-1):150mPa・sの粘度を有し、以下の式によって表されるオルガノポリシロキサン。
【0071】
【化5】
【0072】
以下の構成成分を、構成成分(C)として使用した。
構成成分(c-1):20mPa・sの粘度を有し、以下の式によって表されるオルガノポリシロキサン。
【0073】
【化6】
【0074】
以下の構成成分を、構成成分(D)として使用した。
構成成分(d-1):約1μmの平均粒子直径を有する水酸化アルミニウム粉末。
構成成分(d-2):約25μmの平均粒子直径を有する水酸化アルミニウム粉末。
【0075】
以下の構成成分を、構成成分(E)として使用した。
構成成分(e-1):1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン及び上記の構成成分(a-1)との白金錯体の触媒マスターバッチ(白金含有量=0.1質量%)。
【0076】
以下の構成成分を、構成成分(F)として使用した。
構成成分(f-1):n-デシルトリメトキシシラン
【0077】
以下の構成成分を、構成成分(G)として使用した。
構成成分(g-1):0.5質量%の2-フェニル-3-ブチン-2-オール及び99.5質量%の上記の構成成分(a-1)のヒドロシリル化反応阻害剤マスターバッチ。
【0078】
以下の構成成分を、構成成分(H)として使用した。
構成成分(h-1):40質量%の銅フタロシアニン及び60質量%の上記の構成成分(a-1)の顔料マスターバッチ。
【0079】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、長期貯蔵中にチキソ特性の優れた安定性を呈し、硬化して、組成物を長期貯蔵後に硬化させた場合であっても硬度の変化が小さい、熱伝導性軟質材料を形成する。したがって、熱伝導性シリコーン組成物は、電気/電子装置用の熱伝導性材料において有用である。