(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】撮像環境調整装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G05B 19/19 20060101AFI20250325BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20250325BHJP
【FI】
G05B19/19 H
B23Q17/24 Z
(21)【出願番号】P 2023520720
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2021018418
(87)【国際公開番号】W WO2022239233
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】杉田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】相澤 誠彰
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-509779(JP,A)
【文献】特開2020-075354(JP,A)
【文献】特開2012-250304(JP,A)
【文献】特開2015-232481(JP,A)
【文献】特開2020-169963(JP,A)
【文献】特開平03-239487(JP,A)
【文献】特開2021-053788(JP,A)
【文献】特開2012-028949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B19/18-19/416
G05B19/42-19/46
B23Q17/24
G01B11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の、
加工機の状態変化を伴って該加工機から出力される信号による撮像環境を調整する契機となるトリガを検知するトリガ検知部と、
前記加工機における撮像環境を規定する少なくとも1つの環境設定項目を記憶する設定テーブルと、
前記少なくとも1つの環境設定項目が示す制御状態となるように前記撮像環境を調整するか否かの判断結果を取得する判断結果取得部と、
前記トリガ検知部が前記少なくとも1種類のトリガを検知し、かつ、前記判断結果取得部が取得した前記判断結果が前記撮像環境を調整することを示す場合、前記少なくとも1つの環境設定項目が示す前記制御状態となるように
、前記加工機を構成する部材を制御して前記撮像環境を調整する撮像環境調整部と、
を備える撮像環境調整装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの環境設定項目が示す前記制御状態となるように前記撮像環境を調整するか否かを判断する判断部をさらに備え、
前記判断結果取得部は、前記判断部から前記判断結果を取得する請求項1に記載の撮像環境調整装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの環境設定項目が示す前記制御状態となるように前記撮像環境を調整するか否かを示す前記判断結果の入力を受け付ける受付部をさらに備え、
前記判断結果取得部は、前記受付部から前記判断結果を取得する請求項1に記載の撮像環境調整装置。
【請求項4】
前記少なくとも1種類のトリガは、複数種類のトリガを含み、
前記設定テーブルは、前記複数種類のトリガのそれぞれに関連付けて前記少なくとも1つの環境設定項目を記憶する請求項1~3のいずれか1項に記載の撮像環境調整装置。
【請求項5】
前記トリガ検知部が前記少なくとも1種類のトリガを検知したときの、前記少なくとも1つの環境設定項目に対応付けて記憶された加工機の動作状態を示す動作情報を取得する動作状態取得部をさらに備え、
前記判断結果取得部は、前記動作情報に基づいて判断された前記判断結果を取得する請求項1~4のいずれか1項に記載の撮像環境調整装置。
【請求項6】
前記動作情報は、工具主軸、テーブル、ロボット、およびローダの少なくともいずれかの位置を示す位置情報を含み、
前記撮像環境調整部は、前記位置情報に基づいて、前記工具主軸、前記テーブル、前記ロボット、および前記ローダの少なくともいずれかを退避位置に移動させる請求項5に記載の撮像環境調整装置。
【請求項7】
前記撮像環境調整部によって調整された前記撮像環境において画像を取得する画像取得部をさらに備える請求項1~6のいずれか1項に記載の撮像環境調整装置。
【請求項8】
少なくとも1種類の、
加工機の状態変化を伴って該加工機から出力される信号による撮像環境を調整する契機となるトリガを検知することと、
前記加工機における撮像環境を規定する少なくとも1つの環境設定項目が示す制御状態となるように前記撮像環境を調整するか否かの判断結果を取得することと、
前記少なくとも1種類のトリガを検知され、かつ、取得された前記判断結果が前記撮像環境を調整することを示す場合、前記少なくとも1つの環境設定項目が示す前記制御状態となるように
、前記加工機を構成する部材を制御して前記撮像環境を調整することと、
をコンピュータに実行させる命令を記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像環境調整装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加工機の内部を撮像する撮像装置が知られている(特許文献1)。撮像装置は、あらかじめ設定された方向からあらかじめ設定された倍率で加工機の一部または全体を撮像する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、撮像装置が加工機の撮像を行うときに、必ずしも撮像環境が撮像に適しているとは限らない。例えば、撮像対象が工具であっても、工具がクーラントなどに遮られて、撮像装置が工具を撮像できない場合がある。
【0005】
本開示は、加工機の撮像を行う際に、撮像環境を撮像に適した状態に調整することが可能な撮像環境調整装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
撮像環境調整装置が、少なくとも1種類の、加工機の状態変化を伴って該加工機から出力される信号による撮像環境を調整する契機となるトリガを検知するトリガ検知部と、前記加工機における撮像環境を規定する少なくとも1つの環境設定項目を記憶する設定テーブルと、前記少なくとも1つの環境設定項目が示す制御状態となるように前記撮像環境を調整するか否かの判断結果を取得する判断結果取得部と、前記トリガ検知部が前記少なくとも1種類のトリガを検知し、かつ、前記判断結果取得部が取得した前記判断結果が前記撮像環境を調整することを示す場合、前記少なくとも1つの環境設定項目が示す前記制御状態となるように、前記加工機を構成する部材を制御して前記撮像環境を調整する撮像環境調整部と、を備える。
【0007】
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体が、少なくとも1種類の、加工機の状態変化を伴って該加工機から出力される信号による撮像環境を調整する契機となるトリガを検知することと、前記加工機における撮像環境を規定する少なくとも1つの環境設定項目が示す制御状態となるように前記撮像環境を調整するか否かの判断結果を取得することと、前記少なくとも1種類のトリガを検知され、かつ、取得された前記判断結果が前記撮像環境を調整することを示す場合、前記少なくとも1つの環境設定項目が示す前記制御状態となるように、前記加工機を構成する部材を制御して前記撮像環境を調整することと、をコンピュータに実行させる命令を記憶する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様により、加工機の撮像を行う際に、撮像環境を撮像に適した状態に調整することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】加工機のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図2】撮像環境調整装置の機能の一例を示すブロック図である。
【
図4】撮像環境調整装置において実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】撮像環境調整装置の機能の一例を示すブロック図である。
【
図6】表示画面に表示される受付画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態で説明する特徴のすべての組み合わせが課題解決に必ずしも必要であるとは限らない。また、必要以上の詳細な説明を省略する場合がある。また、以下の実施形態の説明、および図面は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲を限定することを意図していない。
【0011】
図1は、加工機のハードウェア構成の一例を示す図である。加工機1は、例えば、工作機械、ワイヤ放電加工機、射出成形機である。工作機械には、旋盤、マシニングセンタおよび複合加工機が含まれる。
【0012】
加工機1は、数値制御装置2と、入出力装置3と、サーボアンプ4およびサーボモータ5と、スピンドルアンプ6およびスピンドルモータ7と、補助機器8と、撮像装置9とを備える。
【0013】
数値制御装置2は、本開示の撮像環境調整装置の機能を備える。つまり、撮像環境調整装置は、数値制御装置2に実装されている。以下では、撮像環境調整装置が数値制御装置2に実装されている実施形態について説明する。ただし、撮像環境調整装置は、PC(Personal Computer)、サーバに実装されてもよい。
【0014】
数値制御装置2は、加工機1全体を制御する装置である。数値制御装置2は、CPU(Central Processing Unit)201と、バス202と、ROM(Read Only Memory)203と、RAM(Random Access Memory)204と、不揮発性メモリ205とを備えている。
【0015】
CPU201は、システムプログラムに従って数値制御装置2全体を制御するプロセッサである。CPU201は、バス202を介してROM203に格納されたシステムプログラムなどを読み出し、システムプログラムに基づいて、各種処理を行う。また、CPU201は、加工プログラムに基づいて、サーボモータ5およびスピンドルモータ7を制御する。
【0016】
CPU201は、制御周期ごとに、例えば、加工プログラムの解析、ならびに、サーボモータ5、およびスピンドルモータ7に対する制御指令の出力を行う。
【0017】
バス202は、数値制御装置2内の各ハードウェアを互いに接続する通信路である。数値制御装置2内の各ハードウェアはバス202を介してデータをやり取りする。
【0018】
ROM203は、数値制御装置2全体を制御するためのシステムプログラムなどを記憶する記憶装置である。ROM203は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。
【0019】
RAM204は、各種データを一時的に格納する記憶装置である。RAM204は、CPU201が各種データを処理するための作業領域として機能する。
【0020】
不揮発性メモリ205は、加工機1の電源が切られ、数値制御装置2に電力が供給されていない状態でもデータを保持する記憶装置である。不揮発性メモリ205は、例えば、加工プログラム、および入出力装置3から入力される各種パラメータを記憶する。不揮発性メモリ205は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。不揮発性メモリ205は、例えば、SSD(Solid State Drive)で構成される。
【0021】
数値制御装置2は、さらに、インタフェース206と、軸制御回路207と、スピンドル制御回路208と、PLC(Programmable Logic Controller)209と、I/Oユニット210とを備えている。
【0022】
インタフェース206は、バス202と入出力装置3とを接続する。インタフェース206は、例えば、CPU201が処理した各種データを入出力装置3に送る。
【0023】
入出力装置3は、インタフェース206を介して各種データを受け、各種データを表示する装置である。また、入出力装置3は、各種データの入力を受け付けてインタフェース206を介して各種データをCPU201に送る。入出力装置3は、LCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイ、キーボード、およびマウスなどを含む。入出力装置3は、タッチパネルであってもよい。
【0024】
軸制御回路207は、サーボモータ5を制御する回路である。軸制御回路207は、CPU201からの制御指令を受けてサーボモータ5を駆動させるための指令をサーボアンプ4に出力する。軸制御回路207は、例えば、サーボモータ5のトルクを制御するトルクコマンドをサーボアンプ4に送る。
【0025】
サーボアンプ4は、軸制御回路207からの指令を受けて、サーボモータ5に電流を供給する。サーボアンプ4はサーボモータ5に供給される電流の電流値を測定する電流計41を内蔵している。
【0026】
電流計41は、サーボモータ5に供給される電流の電流値を検出する。電流計41は、検出した電流値を示すデータをCPU201に送る。
【0027】
サーボモータ5は、サーボアンプ4から電流の供給を受けて駆動する。サーボモータ5は、例えば、刃物台を駆動させるボールねじに連結される。サーボモータ5が駆動することにより、刃物台などの加工機1の構造物は、例えば、X軸方向、Y軸方向、またはZ軸方向に移動する。なお、サーボモータ5は、各制御軸の送り速度を検出する速度検出器(不図示)を内蔵していてもよい。
【0028】
スピンドル制御回路208は、スピンドルモータ7を制御するための回路である。スピンドル制御回路208は、CPU201からの制御指令を受けてスピンドルモータ7を駆動させるための指令をスピンドルアンプ6に出力する。スピンドル制御回路208は、例えば、スピンドルモータ7のトルクを制御するトルクコマンドをスピンドルアンプ6に送る。
【0029】
スピンドルアンプ6は、スピンドル制御回路208からの指令を受けて、スピンドルモータ7に電流を供給する。スピンドルアンプ6はスピンドルモータ7に供給される電流の電流値を測定する電流計61を内蔵している。
【0030】
電流計61は、スピンドルモータ7に供給される電流の電流値を検出する。電流計61は、検出した電流値を示すデータをCPU201に送る。
【0031】
スピンドルモータ7は、スピンドルアンプ6から電流の供給を受けて駆動する。スピンドルモータ7は、主軸に連結され、主軸を回転させる。
【0032】
PLC209は、ラダープログラムを実行して補助機器8を制御する装置である。PLC209は、I/Oユニット210を介して補助機器8に対して指令を送る。
【0033】
I/Oユニット210は、PLC209と補助機器8とを接続するインタフェースである。I/Oユニット210は、PLC209から受けた指令を補助機器8に送る。
【0034】
補助機器8は、加工機1に設置され、加工機1において補助的な動作を行う機器である。補助機器8は、加工機1に設置される機器ではなく、加工機1の周辺に設置される機器であってもよい。補助機器8は、I/Oユニット210から受けた指令に基づいて動作する。補助機器8は、例えば、工具交換装置、切削液噴射装置、または開閉ドア駆動装置である。
【0035】
撮像装置9は、加工機1の全体、または一部を撮像する装置である。撮像装置9は、動画、および静止画を撮像するカメラである。撮像装置9は、例えば、加工プログラムの実行が開始されたタイミングで動画の撮像を開始する。撮像装置9は、例えば、加工機1における加工領域を撮像する。
【0036】
撮像装置9によって取得された画像は、例えば、バス202を介して不揮発性メモリ205に記憶される。また、撮像装置9は、画像とともに時間情報を取得する。時間情報は、例えば、撮像が行われている時刻、撮像開始からの経過時間である。
【0037】
次に、数値制御装置2に実装された撮像環境調整装置の機能の一例について説明する。
【0038】
図2は、撮像環境調整装置の機能の一例を示すブロック図である。撮像環境調整装置20は、トリガ検知部211と、設定テーブル212と、動作状態取得部213と、判断部214と、判断結果取得部215と、撮像環境調整部216と、画像取得部217とを備える。
【0039】
トリガ検知部211、動作状態取得部213、判断部214、判断結果取得部215、撮像環境調整部216、および画像取得部217は、例えば、CPU201が、ROM203に記憶されているシステムプログラムならびに不揮発性メモリ205に記憶されている各種データを用いて演算処理することにより実現される。
【0040】
設定テーブル212は、例えば、入出力装置3から入力されたデータ、およびパラメータが、RAM204、または不揮発性メモリ205に記憶されることにより実現される。
【0041】
トリガ検知部211は、少なくとも1種類のトリガを検知する。トリガとは、撮像環境調整装置20が、撮像環境を調整する契機となる信号または指令である。また、トリガは、画像取得部217が画像を取得する契機となる信号または指令であってもよい。
【0042】
撮像環境を調整する契機となる信号または指令は、例えば、撮像ボタン(不図示)が押下されることによって出力される信号、工具折損アラームが発生したことを示す信号、ワークローダアラームが発生したことを示す信号である。トリガ検知部211がトリガを検知することによって、撮像環境が調整され、加工機1の画像が取得される。
【0043】
設定テーブル212は、加工機1における撮像環境を規定する少なくとも1つの環境設定項目を記憶する。撮像環境とは、画像取得部217によって取得される画像に影響を与える加工機1の制御状態である。つまり、環境設定項目として記憶された制御状態に加工機1を制御することにより、撮像環境が形成される。なお、少なくとも1種類のトリガは、複数種類のトリガを含み、設定テーブル212が、複数種類のトリガのそれぞれに関連付けて少なくとも1つの環境設定項目を記憶するようにしてもよい。
【0044】
図3は、設定テーブル212の一例を示す図である。設定テーブル212は、複数種類のトリガのそれぞれに関連付けて、環境設定項目を記憶する。
【0045】
「撮像ボタン」には、環境設定項目として「クーラント停止」、「主軸回転停止」および「ローダ移動」が関連付けて記憶される。「工具折損アラーム」には、環境設定項目として、「主軸を撮像装置の前に移動」および「機内灯を点灯」が関連付けて記憶される。「ワークローダアラーム」には、環境設定項目として、「ローダを撮像装置の前に移動」および「機内灯点灯」が関連付けて記憶される。
【0046】
動作状態取得部213は、トリガ検知部211が少なくとも1種類のトリガを検知したときの、少なくとも1つの環境設定項目に対応付けて記憶された加工機1の動作状態を示す動作情報を取得する。
【0047】
図3に示すように、トリガとして撮像ボタンの押下が検知されたときの環境設定項目に関連付けて、「加工中」、「ローダ使用中」および「ローダの位置」が動作情報として記憶されている。したがって、動作状態取得部213は、トリガとして撮像ボタンの押下が検知された場合、加工機1においてワークの加工中であるか否かを示す情報、ローダが使用中であるか否かを示す情報、およびローダの位置を示す情報を取得する。
【0048】
また、トリガとして工具折損アラームが検知されたときの環境設定項目に関連付けて、「ローダの位置」が動作情報として記憶されている。したがって、動作状態取得部213は、トリガとして工具折損アラームが検知された場合、ローダの位置を示す情報を取得する。
【0049】
また、トリガとしてワークローダアラームが検知されたときの環境設定項目には、「主軸の位置」が対応付けて記憶されている。したがって、動作状態取得部213は、トリガとしてワークローダアラームが検知された場合、主軸の位置を示す情報を取得する。
【0050】
判断部214は、少なくとも1つの環境設定項目が示す制御状態となるように撮像環境を調整するか否かを判断する。判断部214は、動作状態取得部213によって取得された動作情報に基づいて、撮像環境を調整するか否かを判断する。判断部214は、判断結果を所定の記憶領域(不図示)に記憶させる。
【0051】
例えば、トリガ検知部211によって撮像ボタンが押下されたことが検知され、動作状態取得部213が動作情報として、ワークが加工中ではないことを示す情報を取得する場合がある。この場合、クーラントの吐出が停止され、主軸の回転が停止されても不具合は生じない。したがって、ワークが加工中ではないときに撮像ボタンが押下された場合、判断部214は、環境設定項目に記憶された制御状態となるように撮像環境を調整すると判断する。つまり、判断部214は、クーラントを停止させ、主軸の回転を停止させると判断する。
【0052】
また、トリガ検知部211によって撮像ボタンが押下されたことが検知され、動作状態取得部213が動作情報として、ローダが使用中ではないことを示す情報を取得する場合がある。この場合、ローダを退避位置に移動させても不具合は生じない。したがって、ローダが使用されていないときに撮像ボタンが押下された場合、判断部214は、環境設定項目に記憶された制御状態となるように撮像環境を調整すると判断する。つまり、判断部214は、ローダを退避位置に移動させると判断する。
【0053】
また、トリガ検知部211によって撮像ボタンが押下されたことが検知され、動作状態取得部213が動作情報として、ワークが加工中であることを示す情報を取得する場合がある。この場合、クーラントの吐出が停止されると、工具の温度が上昇して工具寿命が短くなるおそれがある。したがって、ワークの加工中に撮像ボタンが押下された場合、判断部214は環境設定項目に記憶された制御状態となるように撮像環境を調整しないと判断する。つまり、判断部214は、クーラントを停止させないと判断する。
【0054】
また、トリガ検知部211によって撮像ボタンが押下されたことが検知され、動作状態取得部213が動作情報として、ワークが加工中であることを示す情報を取得する場合がある。この場合、主軸の回転が停止されると、工具に大きな負荷がかかり、工具が折損するおそれがある。したがって、ワークの加工中に撮像ボタンが押下された場合、判断部214は環境設定項目に記憶された制御状態となるように撮像環境を調整しないと判断する。つまり、判断部214は、主軸の回転を停止させないと判断する。
【0055】
また、トリガ検知部211によって撮像ボタンが押下されたことが検知され、動作状態取得部213が動作情報として、ローダが使用中であることを示す情報を取得する場合がある。この場合、ローダを退避位置に移動させてしまうと、ローダとワークテーブルとの間でワークの受け渡しができないおそれがある。あるいは、ワークの受け渡しに失敗する可能性がある。したがって、ローダの使用中に撮像ボタンが押下された場合、判断部214は環境設定項目に記憶された制御状態となるように撮像環境を調整しないと判断する。つまり、判断部214は、ローダを移動させないと判断する。
【0056】
また、トリガ検知部211によって撮像ボタンが押下されたことが検知され、動作状態取得部213が動作情報として、ローダが使用中ではなく、かつ、ローダが画像に映り込む位置にあることを示す情報を取得する場合がある。この場合、ローダが撮像装置9の視界を遮って、撮像対象の工具が画像に映らないおそれがある。したがって、ローダが使用中ではなく、かつ、ローダが画像に映り込む位置にあるときに撮像ボタンが押下された場合、判断部214は環境設定項目に設定された制御状態となるように撮像環境を調整すると判断する。つまり、判断部214は、ローダを退避位置に移動させると判断する。
【0057】
また、トリガ検知部211によって工具折損アラームが検知され、動作状態取得部213が、動作情報としてローダが退避位置にあることを示す情報を取得する場合がある。この場合、主軸を撮像装置9付近に移動させても主軸とローダとの衝突は生じない。したがって、ローダが退避位置にあるときに、工具折損アラームが検出された場合、判断部214は環境設定項目に記憶された制御状態となるように撮像環境を調整すると判断する。つまり、判断部214は、主軸を撮像装置9の前に移動させると判断する。なお、トリガ検知部211によって工具折損アラームが検知された場合、判断部214は機内灯を点灯すると判断する。
【0058】
また、トリガ検知部211によって工具折損アラームが検知され、動作状態取得部213が動作情報として、ローダが退避位置にないことを示す情報を取得する場合がある。この場合、主軸を撮像装置9付近に移動させると主軸とローダとが衝突するおそれがある。したがって、ローダが退避位置にないときに工具折損アラームが検出された場合、判断部214は環境設定項目に記憶された制御状態となるように撮像環境を調整しないと判断する。つまり、判断部214は、主軸を撮像装置9の前に移動させないと判断する。なお、この場合でも、判断部214は機内灯を点灯すると判断する。
【0059】
また、トリガ検知部211によってワークローダアラームが検知され、動作状態取得部213が、動作情報として主軸が退避位置にあることを示す情報を取得する場合がある。この場合、ローダを撮像装置9付近に移動させてもローダと主軸との衝突は生じない。したがって、主軸が退避位置にあるときに、ワークローダアラームが検出された場合、判断部214は環境設定項目に記憶された制御状態となるように撮像環境を調整すると判断する。つまり、判断部214は、ローダを撮像装置9の前に移動させると判断する。なお、トリガ検知部211によってワークローダアラームが検知された場合、判断部214は機内灯を点灯すると判断する。
【0060】
また、トリガ検知部211によってワークローダアラームが検知され、動作状態取得部213が動作情報として、主軸が退避位置にないことを示す情報を取得する場合がある。この場合、ローダを撮像装置9付近に移動させるとローダと主軸とが衝突するおそれがある。したがって、主軸が退避位置にないときにワークローダアラームが検出された場合、判断部214は環境設定項目に記憶された制御状態となるように撮像環境を調整しないと判断する。つまり、判断部214は、ローダを撮像装置9の前に移動させないと判断する。なお、この場合でも、判断部214は機内灯を点灯すると判断する。
【0061】
判断結果取得部215は、少なくとも1つの環境設定項目が示す制御状態となるように撮像環境を調整するか否かの判断結果を取得する。つまり、判断結果取得部215は、判断部214によって判断された判断結果を取得する。判断結果取得部215は、所定の記憶領域に記憶された判断結果を読み込むことによって判断結果を取得する。
【0062】
撮像環境調整部216は、トリガ検知部211が少なくとも1種類のトリガを検知し、かつ、判断結果取得部215が取得した判断結果が撮像環境を調整することを示す場合、少なくとも1つの環境設定項目が示す制御状態となるように撮像環境を調整する。撮像環境調整部216は、判断結果取得部215によって取得された判断結果に基づいて撮像環境を調整する。なお、撮像環境調整部216は、判断結果取得部215によって取得された判断結果が、撮像環境を調整しないことを示す場合、撮像環境を調整しない。また、撮像環境調整部216は、判断結果が環境設定項目に設定された制御状態のうち一部の制御状態のみを変更することによって撮像環境を調整することを示す場合、一部の制御状態を変更することによって撮像環境を調整する。
【0063】
画像取得部217は、撮像環境調整部216によって調整された撮像環境において画像を取得する。画像取得部217は、撮像環境調整部216が撮像環境を調整しない場合、調整がされていない撮像環境において画像を取得する。画像取得部217は、撮像装置9が撮像する画像を取得する。画像取得部217は、例えば、撮像装置9に撮像開始指令を出力し、撮像装置9によって撮像された動画、および静止画のうち少なくともいずれかを取得する。
【0064】
画像取得部217によって取得された画像は、画像記憶部(不図示)に記憶されるようにしてもよい。また、画像取得部217によって取得された画像は、例えば、表示部(不図示)によって入出力装置3の表示画面に表示されるようにしてもよい。
【0065】
次に、撮像環境調整装置20において実行される処理の一例について説明する。
【0066】
図4は、撮像環境調整装置20において実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【0067】
数値制御装置2において加工が行われているときに、トリガ検知部211が撮像環境を調整するためのトリガを検知する(ステップS1)。
【0068】
次に、動作状態取得部213が、設定テーブルにおいてトリガに対応付けて記憶された動作情報が示す加工機1の動作状態を示す情報を取得する(ステップS2)。
【0069】
次に、判断部214が、動作状態取得部213によって取得された動作状態を示す情報に基づいて、環境設定項目に設定された制御状態となるように撮像環境を調整するか否かを判断する(ステップS3)。
【0070】
次に、判断結果取得部215が、判断部214によって判断された、撮像環境を調整するか否かの判断結果を取得する(ステップS4)。
【0071】
判断結果が撮像環境を調整することを示す場合(ステップS5においてYesの場合)、撮像環境調整部216が、撮像環境を調整する(ステップS6)。
【0072】
最後に、画像取得部217が、撮像環境調整部216によって調整された撮像環境のもとで画像を取得して(ステップS7)、処理を終了する。
【0073】
一方、判断結果が撮像環境を調整しないことを示す場合(ステップS5においてNoの場合)、調整されない撮像環境のもとで画像取得部217が画像を取得して(ステップS7)、処理を終了する。
【0074】
なお、上述した実施形態では、画像取得部217が撮像装置9によって撮像された画像を取得するが、撮像環境調整装置20は、必ずしも画像取得部217を備えていなくてもよい。例えば、撮像環境調整装置20は、撮像環境の調整を行った後に、処理を終了してもよい。この場合、撮像環境が調整された後、作業者がカメラで加工機1の内部を撮像するようにすればよい。
【0075】
以上説明したように、撮像環境調整装置20は、少なくとも1種類のトリガを検知するトリガ検知部211と、加工機1における撮像環境を規定する少なくとも1つの環境設定項目を記憶する設定テーブル212と、少なくとも1つの環境設定項目が示す制御状態となるように撮像環境を調整するか否かの判断結果を取得する判断結果取得部215と、トリガ検知部211が少なくとも1種類のトリガを検知し、かつ、判断結果取得部215が取得した判断結果が撮像環境を調整することを示す場合、少なくとも1つの環境設定項目が示す制御状態となるように撮像環境を調整する撮像環境調整部216と、を備える。
【0076】
したがって、撮像環境調整装置20は、加工機1の撮像を行う際に、撮像環境を撮像に適した状態に調整することが可能になる。その結果、撮像対象を確実に撮像することができる。
【0077】
また、撮像環境調整装置20は、少なくとも1つの環境設定項目が示す制御状態となるように撮像環境を調整するか否かを判断する判断部214をさらに備え、判断結果取得部215は、判断部214から判断結果を取得する。したがって、撮像環境調整装置20は、自動的に撮像環境の調整を行うか否か判断して撮像環境の調整をすることができる。
【0078】
また、少なくとも1種類のトリガは、複数種類のトリガを含み、設定テーブル212は、複数種類のトリガのそれぞれに関連付けて少なくとも1つの環境設定項目を記憶する。したがって、撮像環境調整装置20は、複数のトリガのそれぞれに対応するように撮像環境を調整することができる。
【0079】
また、トリガ検知部211が少なくとも1種類のトリガを検知したときの、少なくとも1つの環境設定項目に対応付けて記憶された加工機1の動作状態を示す動作情報を取得する動作状態取得部213をさらに備え、判断結果取得部215は、動作情報に基づいて判断された判断結果を取得する。したがって、判断部214は、加工機1の動作状態に応じて撮像環境を調整するか否かを判断することができる。
【0080】
上述した実施形態では、トリガ検知部211が、トリガを検知した場合に、撮像環境調整部216が、主軸またはローダを退避位置に移動させる。しかし、撮像環境調整部216は、主軸またはローダに限らず、テーブル、ロボットを退避位置に移動させるようにしてもよい。例えば、撮像対象がワークである場合、主軸、ロボット、およびローダを退避位置に移動させるようにしてもよい。
【0081】
上述した実施形態では、判断部214が、少なくとも1つの環境設定項目が示す制御状態となるように撮像環境を調整するか否かを判断する。しかし、少なくとも1つの環境設定項目が示す制御状態となるように撮像環境を調整するか否かの判断は、作業者など人が行うようにしてもよい。
図5および
図6を用いて、人が撮像環境を調整するか否かの判断を行う例について説明する。
【0082】
図5は、撮像環境調整装置20の機能の一例を示すブロック図である。
図5に示す撮像環境調整装置20は、
図2に示す判断部214に代えて、受付部218を備えている。受付部218以外の機能は
図2の撮像環境調整装置20が有する各部の機能と同じである。
【0083】
受付部218は、少なくとも1つの環境設定項目が示す制御状態となるように撮像環境を調整するか否かを示す判断結果の入力を受け付ける。受付部218は、例えば、判断結果の入力を受け付ける受付画像を入出力装置3の表示画面に表示させる。
【0084】
図6は、表示画面に表示された受付画像の一例を示す図である。
図6に示す例では、環境設定項目として「機内灯を点灯」、「クーラント停止」、および「主軸を撮像装置の前へ移動」が記憶されている。受付部218は、これらの環境設定項目が示す制御状態となるように撮像環境を調整するか否かを入力するための受付画像を表示画面に表示する。作業者は、例えば、撮像ボタンを押下してこの受付画像が表示画面に表示されると、各環境設定項目が示す制御状態となるように撮像環境を調整するか否かを判断し、判断結果を受付画像を介して入力する。これにより、受付部218は、判断結果を受け付ける。
【0085】
判断結果取得部215は、受付部218から判断結果を取得する。これにより、作業者が環境設定項目のうちいずれの項目を変更するかを決定することができる。
【0086】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。本開示では、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 加工機
2 数値制御装置
20 撮像環境調整装置
201 CPU
202 バス
203 ROM
204 RAM
205 不揮発性メモリ
206 インタフェース
207 軸制御回路
208 スピンドル制御回路
209 PLC
210 I/Oユニット
211 トリガ検知部
212 設定テーブル
213 動作状態取得部
214 判断部
215 判断結果取得部
216 撮像環境調整部
217 画像取得部
218 受付部
3 入出力装置
4 サーボアンプ
41 電流計
5 サーボモータ
6 スピンドルアンプ
61 電流計
7 スピンドルモータ
8 補助機器
9 撮像装置