(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】容器詰め飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20250325BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20250325BHJP
C12G 3/04 20190101ALI20250325BHJP
【FI】
A23L2/00 A
A23L2/00 T
A23L2/00 W
A23L2/54
C12G3/04
(21)【出願番号】P 2024172004
(22)【出願日】2024-10-01
(62)【分割の表示】P 2024093722の分割
【原出願日】2024-06-10
【審査請求日】2024-10-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】松田 巧
(72)【発明者】
【氏名】井上 明大
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-172534(JP,A)
【文献】[アサヒビール]“世界初”スライスレモン入りサワー発表, [online], [video],YouTube,2024年06月03日,[2024年7月2日検索], Retrieved from the internet:<URL: https://www.youtube.com/watch?v=g7uKo5GgHgg>
【文献】“世界初”本物のレモンスライス入り『未来のレモンサワー』 6月11日数量限定発売開始, [online],アサヒビール株式会社,2024年01月10日,[2024年7月2日検索], Retrieved from the internet:<URL: https://www.asahibeer.co.jp/news/2024/0110_2.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-2/84
C12G 3/00-3/08
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸飲料および乾燥果実が容器に入れられている容器詰め飲料の製造方法であって、
前記容器に、乾燥果実と、炭酸飲料と、を入れる第1工程と、
その後に、前記容器に缶蓋を取り付ける第2工程と、
その後に、前記炭酸飲料を加熱して
、最大直径が前記容器の開口部直径より大きくなるよう乾燥果実を膨潤させる第3工程と、を含
み、
前記容器の容器の蓋が外されると、前記乾燥果実が炭酸飲料の液面まで浮く、容器詰め飲料の製造方法。
【請求項2】
前記第3工程では、炭酸飲料を10分以上加熱する、請求項1に記載の容器詰め飲料の製造方法。
【請求項3】
前記第3工程では、炭酸飲料を50度以上とする、請求項1または2に記載の容器詰め飲料の製造方法。
【請求項4】
前記第3工程では、炭酸飲料を10分以上60度以上とする、請求項3に記載の容器詰め飲料の製造方法。
【請求項5】
前記第3工程により、炭酸飲料に浸かる前の乾燥状態である前記乾燥果実の最長直径d0maxと、炭酸飲料に浸かった後の前記乾燥果実の最長直径d1maxと、が下記(1)式を満たす、請求項1または2に記載の容器詰め飲料の製造方法
1.10d0max<d1max<1.30d0max ・・・(1)。
【請求項6】
炭酸飲料に浸かる前の乾燥状態である乾燥果実の重量Wが下記(2)式を満たす、請求項1または2に記載の容器詰め飲料の製造方法
1.5g<W<5.0g ・・・(2)。
【請求項7】
前記乾燥果実の乾燥させる前の厚さDが下記(3)式を満たす、請求項1または2に記載の容器詰め飲料の製造方法
4.5mm<D<5.5mm。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰め飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、開封時に視覚的に楽しむことができる容器詰め飲料として、容器が密閉
状態のときには炭酸飲料中に乾燥果実が浸漬しており、容器が開封されたときには浸漬し
ている乾燥果実が炭酸飲料液面に向かって浮き上がる容器詰め飲料の発明について特許出
願した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願出願人は、容器の蓋を外した時に乾燥果実が単に浮かび上がってくるというだけで
なく、水平方向を維持したまま炭酸飲料の液面まで浮いたり、水平方向を維持したまま浮
いて容器上部に水平方向に引っかかたりすることで、視覚的な楽しみがさらに増すととも
に、かつ美観が得られることに気付いた。
すなわち、容器の蓋を外した時に、乾燥果実が水平方向を維持したまま炭酸飲料の液面
まで浮くようにする、あるいは、乾燥果実が水平方向を維持したまま浮いて容器上部に水
平方向に引っかかるようにする、という新たな課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示として、以下の解決手段が提供される。
【0006】
[1]
炭酸アルコール飲料および糖コーティングされたレモンスライスがフルオープンエンド
缶に入れられた容器詰め飲料であって、
炭酸アルコール飲料に浸かる前の乾燥状態である前記レモンスライスの重量Wは下記(
1)式を満たし、
前記フルオープンエンド缶の蓋が外されると、前記レモンスライスがほぼ水平状態を維
持したまま炭酸アルコール飲料の液面まで浮く、容器詰め飲料
1.5g<W<5.0g ・・・(1)。
【0007】
[2]
炭酸アルコール飲料および糖コーティングされたレモンスライスがフルオープンエンド
缶に入れられた容器詰め飲料であって、
前記フルオープンエンド缶には、
直径が約66mmである大径部と、
前記大径部の上部にあって直径が約66mmから約55mmに漸減するテーパー面と
、前記テーパー面から内側に延びる開口部直径が約43.5mmである円環部と、を有す
る小径部と、が設けられ、
炭酸アルコール飲料に浸かる前の乾燥状態である前記レモンスライスの重量W、最短直
径d0minおよび最長直径d0max、ならびに、炭酸アルコール飲料に浸かった後の
前記レモンスライスの最長直径d1maxは下記(1)~(4)式を満たし、
前記フルオープンエンド缶の蓋が外されると、前記レモンスライスがほぼ水平状態を維
持したまま浮いて、前記フルオープンエンド缶の上部の小径部に水平状態で引っかかる、
容器詰め飲料
1.5g<W<5.0g ・・・(1)
35mm<d0min ・・・(2)
d0max<50mm ・・・(3)
1.10d0max<d1max<1.30d0max ・・・(4)。
【0008】
[3]
さらに下記(5)式を満たす、[2]に記載の容器詰め飲料
d0max<43.5mm<d1max ・・・(5)。
【0009】
[4]
前記レモンスライスの乾燥させる前の厚さは、約5.0mmである、[1]乃至[3]
のいずれかに記載の容器詰め飲料。
【0010】
[5]
炭酸飲料および乾燥果実が容器に入れられた容器詰め飲料であって、
炭酸飲料に浸かる前の乾燥状態である前記乾燥果実の重量Wは下記(1)を満たし、
前記容器の蓋が外されると、前記乾燥果実がほぼ水平状態を維持したまま炭酸飲料の液
面まで浮く、容器詰め飲料
1.5g<W<5.0g ・・・(1)。
【0011】
[6]
炭酸飲料および乾燥果実が容器に入れられた容器詰め飲料であって、
前記容器には、大径部と、前記大径部の上部に設けられた小径部と、が設けられ、
炭酸飲料に浸かる前の乾燥状態である前記乾燥果実の最短直径d0minおよび最長直
径d0maxは下記(1)および(2)式を満たし、
前記容器の蓋が外されると、前記乾燥果実がほぼ水平状態を維持したまま浮いて、前記
容器の上部の小径部に水平状態で引っかかる、容器詰め飲料
0.8D<d0min ・・・(1)
d0max<1.15D ・・・(2)
(ここで、Dは前記小径部の直径)。
【0012】
[7]
炭酸アルコール飲料およびレモンスライスがフルオープンエンド缶に入れられており、
前記フルオープンエンド缶の容器の蓋が外されると、前記レモンスライスがほぼ水平状
態を維持したまま炭酸アルコール飲料の液面まで浮く、容器詰め飲料の製造方法であって
、
前記フルオープンエンド缶に、乾燥状態の重量Wが下記(1)式を満たすレモンスライ
スと、炭酸アルコール飲料と、を入れる第1工程と、
その後に、前記フルオープンエンド缶に蓋を取り付ける第2工程と、
その後に、前記レモンスライスが膨潤して最長直径d1maxが下記(2)式を満たす
よう、前記炭酸アルコール飲料を10分以上60度以上に加熱する第3工程と、を含む容
器詰め飲料の製造方法
1.5g<W<5.0g ・・・(1)
1.10d0max<d1max<1.30d0max ・・・(2)
(ここで、d0maxは乾燥状態のレモンスライスの最長直径)。
【0013】
[8]
炭酸アルコール飲料およびレモンスライスがフルオープンエンド缶に入れられており、
前記フルオープンエンド缶には、
直径が約66mmである大径部と、
前記大径部の上部にあって直径が約66mmから約55mmに漸減するテーパー面と
、前記テーパー面から内側に延びる開口部直径が約43.5mmである円環部と、を有す
る小径部と、が設けられ、
前記フルオープンエンド缶の容器の蓋が外されると、前記レモンスライスがほぼ水平状
態を維持したまま浮いて、前記フルオープンエンド缶の上部の小径部に水平状態で引っか
かる、容器詰め飲料の製造方法であって、
前記フルオープンエンド缶に、乾燥状態の重量W、最短直径d0minおよび最長直径
d0maxが下記(1)~(3)式を満たすレモンスライスと、炭酸アルコール飲料と、
を入れる第1工程と、
その後に、前記フルオープンエンド缶に蓋を取り付ける第2工程と、
その後に、前記レモンスライスが膨潤して最長直径d1maxが下記(4)式を満たす
よう、前記炭酸アルコール飲料を10分以上60度以上にとする第3工程と、を含む容器
詰め飲料の製造方法
1.5g<W<5.0g ・・・(1)
35mm<d0min ・・・(2)
d0max<50mm ・・・(3)
1.10d0max<d1max<1.30d0max ・・・(4)。
【0014】
[9]
炭酸飲料および乾燥果実が容器に入れられており、前記容器の容器の蓋が外されると、
前記乾燥果実がほぼ水平状態を維持したまま炭酸飲料の液面まで浮く、容器詰め飲料の製
造方法であって、
前記容器に、乾燥果実と、炭酸飲料と、を入れる第1工程と、
その後に、前記容器に缶蓋を取り付ける第2工程と、
その後に、前記炭酸飲料を加熱して乾燥果実を膨潤させる第3工程と、を含む容器詰め
飲料の製造方法。
【0015】
[10]
炭酸飲料および乾燥果実が容器に入れられており、前記容器の容器の蓋が外されると、
前記乾燥果実がほぼ水平状態を維持したまま浮いて、前記容器の上部の小径部に水平状態
で引っかかる、容器詰め飲料の製造方法であって、
前記容器に、乾燥果実と、炭酸飲料と、を入れる第1工程と、
その後に、前記容器に缶蓋を取り付ける第2工程と、
その後に、前記炭酸飲料を加熱して乾燥果実を膨潤させる第3工程と、を含む容器詰め
飲料の製造方法。
【0016】
[11]
前記第3工程では、炭酸飲料を50度以上とする、[9]または[10]に記載の容器
詰め飲料の製造方法。
【0017】
[12]
前記第3工程では、炭酸飲料を10分以上60度以上とする、[11]に記載の容器詰
め飲料の製造方法。
【0018】
[13]
前記第3工程により、炭酸飲料に浸かる前の乾燥状態である前記乾燥果実の最長直径d
0maxと、炭酸飲料に浸かった後の前記乾燥果実の最長直径d1maxと、が下記(1
)式を満たす、[9]乃至[12]のいずれかに記載の容器詰め飲料の製造方法
1.10d0max<d1max<1.30d0max ・・・(1)。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】蓋を開ける前の容器詰め飲料の鉛直断面図。
【
図1B】蓋を開ける前の容器詰め飲料の上方からの平面図。
【
図2A】蓋を開けた後の容器詰め飲料の鉛直断面図。
【
図2B】蓋を開けた後の容器詰め飲料の上方からの平面図。
【
図3A】蓋を開けた後の容器詰め飲料の鉛直断面図。
【
図3B】蓋を開けた後の容器詰め飲料の上方からの平面図。
【
図4】容器詰め飲料を製造する方法の一例を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一実施形態に係る容器詰め飲料は、炭酸飲料と乾燥果実とを含み、当該容器が密閉状態
のときには炭酸飲料中に乾燥果実が浸漬しており、容器が開封されたときには浸漬してい
る乾燥果実が炭酸飲料液面に向かって浮き上がる。
乾燥果実が炭酸飲料中に浸漬している状態とは、乾燥果実が炭酸飲料の液面に浮かずに
炭酸飲料中に浸っている状態であればよく、乾燥果実が容器の底部に沈んでいる状態でも
よく、乾燥果実が炭酸飲料中を漂っている状態でもよい。容器が開封された時点から、乾
燥果実が炭酸飲料液面に浮き上がった時点までの所要時間は特に限定されないが、例えば
0(直後)~120秒間であってもよいし、0.1~60秒間であってもよいし、0.5
~30秒間であってもよいし、1~10秒間であってもよい。容器が開封されてから、ふ
わふわと浮き上がってくる乾燥果実の動作を視覚的に楽しむことができる。
浮き上がった後の乾燥果実は、炭酸飲料液面に浮いたままであってもよいし、再び炭酸
飲料中に浸漬されてもよい。また、本発明の容器詰め飲料に含まれる乾燥果実には、その
組織中に炭酸飲料が含侵されているために、当該乾燥果実の食感は水分含有量が低い乾燥
状態の場合とは異なる嗜好性を有していてもよい。
【0021】
さらに本願出願人は、容器の蓋を外した時に、乾燥果実が水平方向を維持したまま炭酸
飲料の液面まで浮くようにする、という新たな課題を解決すべく検討を行った結果、以下
の発明に想到した。
すなわち、
図1A(鉛直断面図)および
図1B(上方からの平面図)に示すように、本
発明の第1実施形態に係る容器詰め飲料は、炭酸飲料11および乾燥果実12が容器10
0に入れられた容器詰め飲料であって、炭酸飲料11に浸かる前の乾燥状態である前記乾
燥果実12の重量Wは下式を満たし、
図2A(鉛直断面図)および
図2B(上方からの平
面図)に示すように、前記容器100の蓋3が外されると、前記乾燥果実12がほぼ水平
状態を維持したまま炭酸飲料の液面まで浮く、容器詰め飲料である。
1.5g<W<5.0g
【0022】
さらに本願出願人は、容器の蓋を外した時に、乾燥果実が水平方向を維持したまま浮い
て容器上部に水平方向に引っかかるようにする、という新たな課題を解決すべく検討を行
った結果、以下の発明に想到した。
すなわち、
図1A(鉛直断面図)および
図1B(上方からの平面図)に示すように、本
発明の第2実施形態に係る容器詰め飲料は、炭酸飲料11および乾燥果実12が容器10
0に入れられた容器詰め飲料であって、前記容器100には、大径部1と、前記大径部1
の上部に設けられた小径部2と、が設けられ、炭酸飲料11に浸かる前の乾燥状態である
前記乾燥果実12の最短直径d0minおよび最長直径d0maxは下式を満たし、
図3
A(鉛直断面図)および
図3B(上方からの平面図)に示すように、前記容器100の蓋
3が外されると、前記乾燥果実12がほぼ水平状態を維持したまま浮いて、前記容器10
0の上部の小径部2に水平状態で引っかかる、容器詰め飲料である。
0.8D<d0min,d0max<1.15D
(ここで、Dは前記小径部の直径)。
【0023】
なお、乾燥果実は、液面まで浮いて安定状態となることもあるし(第1実施形態)、乾
燥果実が軽い場合や炭酸飲料の発泡量が多い場合には液面より高い位置にある小径部に引
っかかるまで浮くこともある(第2実施形態)。
【0024】
第1および第2実施形態に共通する例として、炭酸飲料は炭酸アルコール飲料であり、
乾燥果実はレモンスライスであり、容器はフルオープンエンド缶である。レモンスライス
の乾燥させる前の厚さは、約5.0mmであってよい。
【0025】
第2実施形態においては、フルオープンエンド缶は、例えば直径が約66mmである大
径部と、前記大径部の上部にあって直径が約66mmから約55mmに漸減するテーパー
面と、前記テーパー面から内側に延びる開口部直径が約43.5mmである円環部と、を
有する小径部と、が設けられ、以下の式を満たす。
35mm<d0min,d0max<50mm
また、以下の式を満たすのがより望ましい(d1maxは、炭酸アルコール飲料に浸か
った後のレモンスライスの最大直径)。
1.10d0max<d1max<1.30d0max
d0max<43.5mm<d1max
さらに、炭酸アルコール飲料に浸かる前の乾燥果実12の重量Wは下式を満たすのが望
ましい。
1.5g<W<5.0g
【0026】
また、本発明の一実施形態に係る容器詰め飲料の製造方法は、炭酸飲料および乾燥果実
が容器に入れられており、前記容器の容器の蓋が外されると、(1)前記乾燥果実がほぼ
水平状態を維持したまま炭酸飲料の液面まで浮く、または、(2)前記乾燥果実がほぼ水
平状態を維持したまま浮いて、前記容器の上部の小径部に水平状態で引っかかる、容器詰
め飲料の製造方法であって、前記容器に、乾燥果実と、炭酸飲料と、を入れる第1工程と
、その後に、前記容器に蓋を取り付ける第2工程と、その後に、前記炭酸飲料を加熱して
乾燥果実を膨潤させる第3工程と、を含む。
【0027】
具体例として、炭酸飲料は炭酸アルコール飲料であり、乾燥果実はレモンスライスであ
り、容器はフルオープンエンド缶である。この場合、乾燥状態であるレモンスライスの重
量Wは下式を満たすのが望ましい。
1.5g<W<5.0g
【0028】
また、例えば前記フルオープンエンド缶には、直径が約66mmである大径部と、前記
大径部の上部にあって直径が約66mmから約55mmに漸減するテーパー面と、前記テ
ーパー面から内側に延びる開口部直径が約43.5mmである円環部と、を有する小径部
と、が設けられ、下式を満たすのが望ましい。
35mm<d0min,d0max<50mm
(d0min,d0maxは乾燥状態であるレモンスライスの最短直径および最長直径)
。
【0029】
第3工程は、望ましくは炭酸飲料を50度以上、より望ましくは60度以上とする。そ
の時間は、望ましくは10分以上である。第3工程により、レモンスライスは下式を満た
すよう膨潤する。
1.10d0max<d1max<1.30d0max
(d0maxは乾燥状態であるレモンスライスの最長直径、d1maxは炭酸アルコール
飲料に浸かった後のレモンスライスの最長直径)。
【0030】
このような容器入り飲料は、容器の蓋を外した時に、乾燥果実が単に浮かび上がってく
るというだけでなく、水平方向を維持したまま炭酸飲料の液面まで浮く、あるいは、乾燥
果実が水平方向を維持したまま浮いて容器上部に水平方向に引っかかる、という動きまで
をも視覚的に楽しむことができ、かつ美観も得られる。以下、具体的に説明する。
【0031】
<容器>
本発明の容器詰め飲料において使用される容器に特に制限はなく、ツーピース飲料缶、
スリーピース飲料缶、ボトル缶、可撓性容器、ガラス瓶などを用いることができる。可撓
性容器としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVOH(エチレン
・ビニルアルコール共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の可撓性樹脂
をボトル形状等に成形してなる容器が挙げられる。可撓性容器は、単層樹脂からなるもの
であってもよく、多層樹脂からなるものであってもよい。乾燥果実が炭酸飲料中、例えば
底部から浮き上がってくる様子を視覚的に楽しむため、容器はフルオープンエンド缶又は
透明な容器であってもよい。また、乾燥果実を容器に入れる際の開口部によって、入れら
れる乾燥果実の大きさに制限されないために、フルオープンエンド缶であってもよい。
図1Aおよび
図1Bに例示する好適な容器100は、フルオープンエンド缶であり、例
えば350mlあるいは500mlの飲料を収容する。容器100は、大径部1と、小径
部2と、蓋3とを有する。
大径部1は鉛直方向に延びる円筒形状である。
小径部2は大径部1の上部に設けられ、大径部1の直径より小さい径を有する。
図1A
および
図1Bに例示する小径部2はテーパー面21および円環部22を有する。テーパー
面21は大径部1から上方内側に延びており、上部ほど小径になるよう傾斜している。円
環部22はテーパー面21から容器100の内側に向かって延びている。円環部22より
下側は容器100の内部であり、円環部22より上側は容器100の外部ということもで
きる。
円環部22の外縁から上方に向かって円筒状の巻締部23が延びている。蓋3、円環部
22および巻締部23は、缶の上面全体を覆う缶蓋を構成する。
一例として、大径部1の直径(内径)は約66mmである。円環部22の幅は約5.7
5mm(巻締部23を含むと約6.75mm)であり、開口部の直径Dは約43.5mm
である。テーパー面21は直径が約66mmから約55mm(=43.5+2*5.75
)に漸減する。なお、本明細書および特許請求の範囲における「約」とは、寸法誤差、設
計誤差、個体差、計測誤差等により、その値ちょうどにならないこともあり得ることを含
意するものであり、±10%の範囲を含み得るものとする。
なお、上述した小径部2の構成は一例にすぎない。小径部2は、円筒形状であってもよ
いし、段差を有していてもよい。
炭酸飲料11は、大径部1と小径部2との境界部分、あるいは、それよりやや上まで入
れられる。
蓋3は小径部2の上部に設けられ、容器100の上部全体を閉じている。
図1Aおよび
図1Bに例示する容器100では、円環部22の内周面と蓋3の外周面とが取り外し可能
に接合されており、両者はほぼ同一平面上にある。そして、蓋3の上面には蓋3を取り外
すためのプルタブ3aが設けられている。蓋3が外されると、容器100の上部全体、す
なわち、円環部22の内側が開口する。これにより、容器100の上部に円形開口部4(
図2A)が現れる。
蓋3が外されると、乾燥果実12が水平方向を維持して浮くが、炭酸飲料11の発泡量
が多い場合には、小径部2まで浮き、水平状態で引っかかる。乾燥果実12は小径部2の
任意の位置に引っかかってよく、テーパー面21に引っかかってもよいし、円環部22の
下面に引っかかってもよい。後者の場合、円環部22の開口部全体を乾燥果実12が下方
から覆うのが美観上、好ましい。
【0032】
<乾燥果実>
本発明の乾燥果実の原料となる果実の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、
飲料に一般的に使用される果実等、例えば、レモン、ライム、及びオレンジ等の柑橘類や
、リンゴ、ブルーベリー、ウメ(梅干しを含む)、モモ、イチゴ、パイナップル、ブドウ
、マンゴー、イチジク、アプリコット、ナシ、バナナ、キウイ等を適宜選択して使用する
ことができる。乾燥果実は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。また、
乾燥果実が柑橘類の場合、アルベド及び外果皮を含んでいてもよいし、アルベド及び外果
皮を除去していてもよい。
また、柑橘類以外の果実の場合であっても、外果皮は、含んでいてもよいし、除去して
もよい。
乾燥果実の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、そのままの形状であっても
よく、スライスされていてもよいし、くし切りにされていてもよい。
【0033】
また、本発明における「乾燥果実」は、乾燥処理を受けた果実材料全般を指し、当該乾
燥果実が、例えば本発明における炭酸飲料を含侵した状態にあっても、便宜上「乾燥果実
」と呼ぶ。
乾燥果実をスライスする場合において、乾燥前の厚さは1.0~8.0mmであっても
よく、2.0~6.0mmであってもよい。ここで、本発明においては「乾燥果実の厚さ
」は、便宜上、炭酸飲料に乾燥果実を添加した時点での厚さとし、当該乾燥果実の厚さは
0.5~5.0mmであってもよく、1.0~3.0mmであってもよい。また、本発明
の容器詰め飲料中の乾燥果実は、炭酸飲料が含侵されることによってその厚さが1.0~
8.0mmであってもよく、2.0~6.0mmであってもよい。
本発明における乾燥果実の厚さを上記の数値範囲に調製することで破損しにくく、浮き
上がる動作の制御がしやすくなる。
【0034】
また、本発明における「乾燥果実」は、糖コーティングされていてもよい。乾燥果実の
種類によっては、糖コーティングされることで、飲料中に長期間浸漬された状態で保管し
た後であっても、飲料に添加した時点の形状や硬度、またはそれに近い形状や硬度をより
保持できることから、容器の開封時の視覚的な楽しみを補うことができる。特に、スライ
ス形状の乾燥果実は、飲料中に浸漬した状態で長期間保管すると麩のような状態になる場
合があるので、乾燥果実の美観を保つ観点から糖コーティングされてもよい。また、糖コ
ーティングによって、乾燥果実の強度を増してもよい。乾燥果実の強度を向上させること
で、例えば容器詰め飲料の製造において、容器に乾燥果実を投入してからガッシング(酸
化抑制目的で容器内の空気を窒素に置換する工程)を行い、その後、飲料を添加するとい
う工程を経る場合に、ガッシングで乾燥果実が吹き付けられた窒素ガスによって跳ね上が
り、容器内壁にぶつかり破損することを防止してもよい。糖コーティングに用いる糖は、
本分野で一般に使用されるものであれば、特に限定されないが、例えば砂糖(ショ糖、ス
クロース)、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、麦芽糖(マルトース)、
トレハロース、及び乳糖などであってもよい。
【0035】
乾燥果実を製造する方法は、特に限定されるものではなく、本発明の乾燥果実は、例え
ば、熱風乾燥法(エアドライ)、真空凍結乾燥法(フリーズドライ)、真空乾燥法(バキ
ュームドライ)等の一般的な乾燥手法を用いて製造することができる。また、真空凍結乾
燥法や、真空乾燥法により製造された乾燥果実は、熱風乾燥法により製造された乾燥果実
に比べて、多孔質となり、炭酸飲料中に浸漬させにくくなる傾向にあるため、熱風乾燥法
により製造された乾燥果実を使用してもよい。本発明の乾燥果実は、乾燥処理直後におけ
る水分含有量が、例えば20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい
。
糖コーティングされた乾燥果実を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、上記
糖を含む水溶液などの糖液に浸漬した果実(生果実を含む)を、上記のような乾燥法で乾
燥させる工程を含んでいてもよい。
【0036】
以下、乾燥果実がレモンスライスである具体例を述べる。発明者らの検討によれば、レ
モンスライスが水平方向を維持して浮くためには、以下のパラメータを満たすのが望まし
い。
レモンスライスの炭酸飲料に浸かる前の乾燥状態において、重量は1.5gより大きく
5.0g未満であるのが好適である。また、レモンスライスの乾燥前の厚さは約5mmで
あるのが好適である。
また、乾燥状態の最長直径d0maxおよび最短直径d0minは下記(1)式を満た
すものが好適である。
0.8D<d0min,d0max<1.15D ・・・(1)
図1Aに例示するように、円環部22の開口部直径Dが43.5mmである場合、上記
(A)式は概ね下記(1’)式となる。
35mm<d0min,d0max<50mm ・・・(1’)
また、乾燥状態におけるレモンスライス最長直径d0maxは円環部22の開口部直径
Dより小さいのが望ましい。製造時に、乾燥状態のレモンスライスを容器100に入れや
すいためである。具体的には、下記(2)式(円環部22の開口部直径Dが43.5mm
である場合は(2’)式)を満たすのが望ましい。
0.87D<d0max<0.97D ・・・(2)
38mm<d0max<42mm ・・・(2’)
なお、最長直径とは、レモンスライスの任意の縁から他の任意の縁までの線分のうち最
長となる距離である。また、最短直径とは、最長直径となる場合の縁と縁の中心をレモン
スライスの中心としたとき、レモンスライスの任意の縁から他の任意の縁までの線分であ
って、レモンスライスの中心を通る線分のうち最短となる距離である。
【0037】
<炭酸飲料>
本発明における炭酸飲料は、炭酸を含有する飲料であれば、特に限定されない。炭酸飲
料の炭酸含有量は、炭酸飲料と乾燥果実とを含有する容器が密閉状態のときには炭酸飲料
中に乾燥果実が浸漬しており、かつ、容器が開封されたときには浸漬している乾燥果実が
炭酸飲料液面に向かって浮き上がるようなガスボリュームであれば特に限定されない。当
該炭酸含有量は、例えば乾燥果実の種類や厚さや大きさや質量などに応じて調整されても
よい。また、本発明における炭酸飲料は、ベースとなる炭酸非含有飲料に、必要に応じて
炭酸ガスを一般的な方法で圧入することにより製造してもよい。当該炭酸含有量は、20
℃において0.5GV以上であってもよいし、1.0GV以上であってもよいし、1.5
GV以上であってもよいし、2.0GV以上であってもよい。また、当該炭酸含有量は、
5.0GV以下であってもよいし、4.0GV以下であってもよい。本発明における炭酸
飲料中の炭酸含有量は、本分野で一般に使用されるGVテスター、例えば、GVA-50
0B(京都電子株式会社製)で測定した値としてもよい。
【0038】
なお、炭酸飲料のガスボリュームは容器の耐圧や製造条件によっても制限され、例えば
、製造工程において加熱殺菌を行う場合は、加熱中の容器内の圧力を、容器の耐圧以下に
する必要があるため、加熱殺菌を行わない場合に比べて、ガスボリュームは制限される。
また、炭酸ガスが静菌作用を有することから、容器内の炭酸ガス圧力が20℃で98kP
a以上であり、飲料に果汁や果実、乳等の植物又は動物の組織成分を含まない場合、加熱
殺菌が不要であり、ガスボリュームを高くすることができる。
【0039】
炭酸飲料は、ノンアルコール飲料であってもよく、アルコール飲料であってもよい。ま
た、発酵工程を経て製造される飲料であってもよく、発酵工程を経ずに製造される飲料で
あってもよい。本発明における炭酸飲料がアルコール飲料である場合、アルコール度数(
エタノールの体積濃度)は特に制限されず、目的とする製品品質に応じて適宜決定される
。例えば、アルコール度数を、0.7容量%以上、または、1容量%以上、または、2容
量%以上、または、3容量%以上になるように、炭酸飲料の酒類含有量を調整してもよい
。また、本発明における炭酸飲料がアルコール飲料である場合、エキス分は0~15度で
あってもよく、1~10度であってもよく、3~7度でもよい。
また、本発明における炭酸飲料は、容器詰め飲料に含まれる乾燥果実と同種又は異種の
果実等の香料や、果実系フレーバー以外の香料を含有していてもよい。
【0040】
本発明における炭酸飲料のpHは、微生物制御や香気成分の劣化抑制などの目的に応じ
て調整されてもよい。一般に、飲料のpHが低いほど微生物が発育し難くなるが、pHが
低すぎると、酸味が強くなりすぎる。また、香気成分の中には、pHが低くなると劣化し
やすいものもある。飲料として適した酸味の強さや香気成分の劣化抑制の点から、炭酸飲
料のpHは、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.
0以上である。また、微生物の生育抑制や殺菌条件の強度等を考慮し、本発明における炭
酸飲料のpHは、アルコールを含有していない場合は、好ましくは5.0以下、より好ま
しくは4.0以下、さらに好ましくは4.0未満である。当該炭酸飲料がアルコールを含
有している場合は、そのpHは、好ましくは6.5以下、より好ましくは5.0以下であ
る。
例えば、飲料にpHが低いほど劣化しやすくなる香気成分が多く含有されている場合は
、当該炭酸飲料のpHを比較的高くすることが好ましい。例えば、シトラールはpHが低
いほど劣化しやすくなるため、本発明に係る容器詰め飲料が、シトラールを含むレモン風
味の飲料の場合、当該炭酸飲料のpHを3.0以上にすることが好ましく、3.5以上に
することがより好ましく、微生物の発育を充分に抑制でき、かつレモン風味として好まし
い酸味を達成しやすいため、pHを3.0~4.0にすることが好ましく、3.5~3.
7にすることが特に好ましい。
【0041】
本発明における炭酸飲料は、例えば、酒類、炭酸水、果実、野菜類、ハーブ、糖類、香
味料、その他の食品素材、食品添加物などの任意成分を含んでいてもよい。以下に当該任
意成分について説示する。
【0042】
≪含有してもよい任意成分≫
任意成分の前記酒類としては、原料用アルコール;ウォッカ、ウイスキー、ブランデー
、焼酎、ラム酒、スピリッツ、及びジン等の蒸留酒;ワイン、シードル、ビール、日本酒
等の醸造酒;リキュール、ベルモットなどの混成酒等が挙げられる。炭酸飲料に含有させ
る酒類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。なお、本発明に係る容器
詰め飲料が酒類と食品素材を混合した液体の炭酸飲料である場合には、当該飲料は、日本
国の酒税法(平成三十年四月一日施行)上、リキュール(エキス分が二度以上)又はスピ
リッツ(エキス分が二度未満)に分類される。
【0043】
任意成分の前記果実、野菜類、及びハーブは、特に限定されるものではなく、飲料に一
般的に使用される果実等を適宜選択して使用することができる。炭酸飲料に含有させる果
実、野菜類、ハーブは、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
また、当該炭酸飲料は、果実等の細断物をそのまま含有してもよいし、果汁や野菜汁の
ような搾汁を原料として添加してもよい。なお、果汁は、日本国においては果実飲料の日
本農林規格、国際的には果汁及びネクターに関するコーデックス規格(CODEX ST
AN 247-2005)に定義されている。前記果実としては、濃縮果汁や還元果汁等
を使用してもよく、不溶性固形分の一部が除去されて清澄化された果汁を用いてもよい。
また、前記果実や野菜類として、果実エキス、野菜エキスを原料として添加してもよい。
特に、容器詰め飲料に含まれる乾燥果実と同種の果実等の果汁やエキスを含有することが
好ましい。果実エキス、野菜エキスは、果実や野菜の細断物から水やアルコールを用いて
果実や野菜に含まれる成分を抽出したものである。これらのエキスは、例えば、熱水抽出
による方法や、液化ガスを用いて果実成分を溶出させた後、液化ガスを気化させ、果実成
分を分離、回収する方法などによって製造される。
【0044】
任意成分の糖類(単糖類・二糖類の総称)としては、砂糖(ショ糖、スクロース)、ブ
ドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、異性化糖などを含んでもよい。これらの
糖類を炭酸飲料に含有させることで、甘味やボディ感等を付与することができる。含有さ
せる糖類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0045】
任意成分の香味料やその他の食品素材としては、例えば、食物繊維、酵母エキス、タン
パク質若しくはその分解物等が挙げられる。中でも、水溶性食物繊維は、飲料にボディ感
やその他の機能性を付与するために広く使用されている。水溶性食物繊維とは、水に溶解
し、かつヒトの消化酵素により消化されない又は消化され難い炭水化物を意味する。水溶
性食物繊維としては、例えば、大豆食物繊維、ポリデキストロース、難消化性デキストリ
ン、ガラクトマンナン、イヌリン、グアーガム分解物、ペクチン、アラビアゴム等が挙げ
られる。これらの水溶性食物繊維は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用して
もよい。
【0046】
任意成分の食品添加物は、国の法令に基づいて使用可能な物品を用いることができ、そ
の範囲において特に制限されない。例えば、食品の品質を保つための保存料や酸化防止剤
等、食品の嗜好性の向上を目的とした着色料、香料、甘味料、酸味料、乳化剤等、食品の
製造または加工のために必要なpH調整剤、消泡剤、起泡剤等や、栄養成分の補充、強化
に使われる栄養強化剤を、必要に応じて含有させることができる。
【0047】
一部の食品添加物について簡単に説明する。
着色料は、食品の色調を改善する食品添加物であり、化学合成系着色料と天然系着色料
に大別され、日本国の食品衛生法では、指定添加物、既存添加物、一般飲食物添加物に分
類される。着色料としては、食品を褐色に着色するカラメル色素が多く使用されている。
なお、カラメル色素の副次効果として、飲料にロースト感やコク等を付与することができ
る。
【0048】
香料は、食品に香気を与える、又は増強するために用いられる。食品用香料には、天然
物から抽出した天然香料と化学的に合成された合成香料がある。天然香料は、日本国の食
品衛生法では、「動植物より得られる物又はその混合物で、食品の着香の目的で使用され
る添加物」と定義され、使用できる動植物名が例示として「天然香料基原物質リスト」に
記載されている。また、合成香料のほとんどは食品に存在するものと同一成分を化学合成
した化合物であり、「食品衛生法施行規則別表第1」のなかで指定されている。
【0049】
食品用香料は、単品で使用されることは少なく、通常、多数の香料化合物を組み合わせた
調合製品が用いられる。香料製品の形態としては、水溶性香料、油溶性香料、乳化香料、
粉末香料などがある。水溶性香料は、香料ベースを水溶性溶剤である含水アルコール、プ
ロピレングリコールなどで抽出・溶解したものである。油溶性香料は、香料ベースを植物
油などで溶解したものである。乳化香料は、乳化剤や安定剤を使用し、香料ベースを水に
乳化させ微粒子状態にしたものである。飲料ににごりを与えることもありクラウディーと
も呼ばれる。粉末香料は、香料ベースをデキストリンや天然ガム質、糖、でんぷんなどの
賦形剤とともに乳化させた後、噴霧乾燥させて粉末化したり乳糖などに香料ベースを付着
させたりしたものである。飲料には、通常、水溶性香料と乳化香料が用いられる。
【0050】
甘味料は、食品に甘味をつける目的で使用されるものであるが、前述した糖類や一部の
低甘味度物質(水あめ、エリスリトール、マルチトール、ラクチトールなど)は、食品に
区分され、食品添加物には区分されない。食品添加物に区分される低甘味度物質としては
、L-アラビノース、D-キシロース、トレハロース、D-ソルビトール、キシリトール
、マンニトールなどがあり、高甘味度物質としてはアスパルテーム、ネオテーム、アセス
ルファムカリウム、サッカリン類、スクラロース、グリチルリチン酸二ナトリウム、ステ
ビア抽出物、カンゾウ抽出物、タウマチンなどがある。なお、日本国の食品衛生法では、
甘味料は、指定添加物、既存添加物、一般飲食物添加物に分類される。飲料には、従来か
整理番号:Y2G-0066 特願2022-084422 提出日:令和 4年 5月24日 6ら飲料に用いられる糖
類である砂糖、ブドウ糖、及び果糖などと甘味特性の近いアスパルテーム、アセスルファ
ムカリウム、スクラロースなどがよく用いられる。本発明における炭酸飲料においても、
これらの飲料に汎用されている甘味料の1種以上を使用することが好ましい。
【0051】
酸味料は、食品に酸味を与えたり、酸味を増強したりするために用いられる。酸味料に
は、クエン酸や乳酸のような有機酸及びそれらの塩類と、リン酸、二酸化炭素のような無
機酸がある。有機酸とその塩を併用すると、緩衝作用によって特定のpHを保持しやすく
することができる。
なお、日本国において酸味料として一括名表示ができる物質は、指定添加物では、アジ
ピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グル
コン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二
ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L
-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸
一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸、既存添加物では、
イタコン酸、フィチン酸、α-ケトグルタル酸が挙げられる。
飲料に用いる酸味料は、飲料の風味(フレーバー)に応じて選択される。例えば、柑橘
類風味の飲料では柑橘類に多く含まれるクエン酸及びクエン酸塩、ブドウ風味の飲料では
ブドウに多く含まれる酒石酸及び酒石酸塩、リンゴ風味の飲料ではリンゴに多く含まれる
リンゴ酸及びリンゴ酸塩が選択される場合が多い。
【0052】
乳化剤は、食品に乳化、分散、浸透、洗浄、起泡、消泡、離型などの目的で使用される
が、飲料では液中に油を分散(乳化)させる目的で使用される場合が多い。例えば、疎水
性成分を水中に均一に分散させたり、原材料由来の油脂成分の分離を抑制したりするため
に用いられる。
上述した食品素材や食品添加物は一例であり、本発明に係る容器詰め飲料に含有させる
ものはこれらに限定されるものではない。使用する食品素材や食品添加物の種類や含有量
は、目的に応じて適宜選択、調整すればよい。
具体例として、炭酸飲料は、適宜の任意成分を含み、リキュールまたはスピリッツに分
類されるレモンサワーである。
【0053】
<製造方法>
図4は、上述した容器詰め飲料を製造する方法の一例を示す工程図である。必要に応じ
て、乾燥果実を糖コーティングする(ステップS1)。そして、乾燥果実と炭酸飲料を容
器に入れる(ステップS2)。これらを容器に入れる順序に制限はないが、例えばまず乾
燥果実を容器に挿入し、次いで炭酸飲料を容器に充填する。さらに、容器に缶蓋を取り付
けて密封する(ステップS3)。
その後、炭酸飲料を加熱して乾燥果実を膨潤させる(ステップS4)。この工程は、例
えば炭酸飲料を50度以上、望ましくは60度以上、より望ましくは65度以上とする。
加熱時間は10分以上であるのが望ましい。加熱により殺菌効果も得られる。
この膨潤工程は、乾燥果実の炭酸飲料に浸かる前の乾燥状態における最長直径d0ma
xと、炭酸飲料に浸かった後(膨潤工程の後)における最長直径d1maxとが以下の関
係を満たすようにするのが望ましい(最短直径も同様である。)。
1.10d0max<d1max<1.30d0max
乾燥果実は、炭酸飲料中で徐々に水分を含み生果実様の状態に変化するが、単に炭酸飲
料に浸すだけでなく、熱を加えて膨潤させることで、水平方向に浮く確率が高くなる。
ここで、膨潤後の乾燥果実の最大直径d1maxが容器の開口部直径Dより大きいのが
望ましい。蓋を外した後、発泡量が多い場合に乾燥果実が容器外に飛び出してしまうのを
抑制できるためである。
【0054】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定さ
れるものではない。
【実施例】
【0055】
1.ベース液の調製
表1に示すように原料を配合して、アルコール度数6%、エキス分3.5度、pH3.
5であるベース液を調整した。
【0056】
【0057】
2.実験(1)
本実験では、厚さ3mmの生レモンスライスを熱風乾燥して得た乾燥レモン(厚さ1m
m)を用いた。
次に、ベース液に炭酸を添加して、表2に示すような各炭酸含有量(GV)の飲料を調
製し、飲料缶に乾燥レモン1枚を入れてから当該飲料を充填して、フルオープンエンドの
缶蓋を巻締して、容器詰め飲料サンプルを製造した。
製造した容器詰め飲料サンプルを、25℃で48時間、静置保管した後、開封した。開
封時に、浸漬している乾燥レモンが飲料表面に浮き上がるかどうかを目視で確認した。結
果を表2に示す。開封した後、浸漬していた乾燥レモンが飲料表面に向かって浮き上がっ
たサンプルには、浮き上がり評価を〇とし、浸漬したまま浮き上がってこなかったサンプ
ルには、浮き上がり評価を×とした。
【0058】
【表2】
乾燥レモンの厚さと炭酸飲料のガスボリュームを調整することで、乾燥レモンが所望の
動作に制御できることを確認した。
【0059】
3.実験(2)
厚さ6mmの生レモンスライスを熱風乾燥して得た乾燥レモン(厚さ2mm)を用いた
以外は、上記実験(1)と同様の実験を行なった。結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
乾燥レモンの厚さに応じて炭酸飲料のガスボリュームを調整することで、乾燥レモンが
所望の動作に制御できることを確認した。
【0061】
4.実験(3)
表4に示す各生果実を、表4に示す乾燥前厚さでスライスし、熱風乾燥して各乾燥果実
を得た。但し、ブルーベリーについてはスライスせずにそのままの状態で、梅干しについ
ては梅干しの種を除去したのちそのままの状態で、それぞれ同条件で熱風乾燥して得た(
サンプル22及び23)。乾燥梅干しの直径は約35mmだった。
次に、ベース液の炭酸含有量を、表4に示す炭酸含有量(GV)に調製して各飲料缶に
充填後、得られた各乾燥果実を入れて、当該乾燥果実が浸漬したのを確認してから、フル
オープンエンドの缶蓋を巻締して、容器詰め飲料サンプルを製造した。
製造した容器詰め飲料サンプルを、25℃で48時間、静置保管した後、開封した。開
封時に、浸漬している各乾燥果実が飲料表面に浮き上がるかどうかを目視で確認した。評
価は、上記実験(1)と同様にした。
【0062】
【表4】
果実の種類に関わらず、炭酸飲料のガスボリュームを調整することで、各乾燥果実が所
望の動作に制御できることを確認した。
【0063】
5.実験(4)
本実験では、厚さ6mmの生レモンスライスを、ブドウ糖10%水溶液に浸漬した後、
熱風乾燥して得られた糖コーティング乾燥レモン(厚さ2mm)と、厚さ6mmの生レモ
ンスライスを、ブドウ糖10%水溶液に浸漬せずに、熱風乾燥して得られた乾燥レモン(
厚さ2mm)を使用した。
次に、ベース液に炭酸を添加して、2.3GVの飲料を調製し、糖コーティング乾燥レ
モン1枚を入れた飲料缶と乾燥レモン1枚を入れた飲料缶にそれぞれ充填後、フルオープ
ンエンドの缶蓋を巻締して、容器詰め飲料サンプルを製造した。
製造した容器詰め飲料サンプルを、65℃で20分間殺菌し、37℃で1週間静置保管
した後、開封した。開封後に、各乾燥果実の状態を確認した。
試験の結果、糖コーティング乾燥レモンを入れた容器詰め飲料サンプルでは、乾燥レモ
ンを入れた容器詰め飲料サンプルに比べて、乾燥果実の形状や硬さが維持されていた。
【0064】
6.実験(5)
本実験では、厚さ6mmの生レモンスライスを、ブドウ糖10%水溶液に浸漬した後、
熱風乾燥して得られた糖コーティング乾燥レモン(厚さ2mm)と、厚さ6mmの生レモ
ンスライスを、ブドウ糖10%水溶液に浸漬せずに、熱風乾燥して得られた乾燥レモン(
厚さ2mm)を使用した。
次に、飲料缶に糖コーティング乾燥レモン1枚と、乾燥レモン1枚をそれぞれ入れた後
、缶内の空気を窒素に置換するため、窒素ガスを缶内に吹き付けた。その際、乾燥果実は
、缶の内壁に衝突した。各条件で、10回ずつ試験を行い、乾燥果実が破損するか否かを
確認した。
試験の結果、糖コーティング乾燥レモンを入れたサンプルでは乾燥果実の破損は確認さ
れなった一方で、乾燥レモンを入れたサンプルでは10回中8回の乾燥果実の破損が確認
された。
【0065】
7.実験(6)
本実験では、乾燥状態における最大直径d0max(乾燥前の厚さ約5.0mm)のレ
モンスライスをベース液(GVは2.3とした)に浸し、10分間65度に加熱して、加
熱後のレモンスライスの最大直径d1maxを測定した。
【0066】
【0067】
実験(6)の結果、最大直径は約1.178~1.199倍に膨潤した。すなわち、ベ
ース液を加熱することにより、レモンスライスの最大直径が約1.10~1.30倍にな
ることが確認された。
【0068】
8 実験(7)
本実験では、容器として、大径部1の直径が66mmであり、円環部22の開口部直径
が43.5mmのフルオープンエンド缶を用いた。乾燥前の厚さが約5mmの生レモンス
ライスを、ブドウ糖10%水溶液に浸漬した後、熱風乾燥して得られた、乾燥状態におけ
る最大直径が38~42mmの糖コーティング乾燥レモンスライスを、ベース液(GVは
2.3とした)とともに容器に入れて密封し、比較例では常温で24時間載置し、実施例
では膨潤工程として60度の湯に10分間載置した。その後、比較例および実施例のいず
れも、4度に設定した冷蔵庫に24時間入れ、蓋を外した。サンプル数は、比較例および
実施例のいずれも100本とした。
ほぼ水平状態を維持して浮いたものを〇、やや傾斜して浮上するが製品化には支障がな
いものを△、ほぼ垂直状態で浮いたものを×として目視評価した結果は下表のとおりであ
った。
【0069】
【0070】
実験(7)の結果、適切なパラメータのレモンスライスを用い、適切な条件で膨潤工程
を行うことで、レモンスライスが水平方向を維持して浮くことについて高い再現可能性が
得られた。
【0071】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形例を想到で
きるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態には限定されるものでは
ない。例えば、各実施形態の一部のみを取り出した発明や、複数の実施形態を組み合わせ
た発明も当然に想定される。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き
出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的
削除が可能である。
【0072】
また、本明細書に記載された事項の全てが必須の要件というわけではない。特に、本明
細書に記載され、特許請求の範囲に記載されていない事項は任意の付加的事項ということ
ができる。
【0073】
なお、本出願人は本明細書の「先行技術文献」欄の文献に記載された文献公知発明を知
っているにすぎず、本発明は必ずしも同文献公知発明における課題を解決することを目的
とするものではないことにも留意されたい。本発明が解決しようとする課題は本明細書全
体を考慮して認定されるべきものである。例えば、本明細書において、特定の構成によっ
て所定の効果を奏する旨の記載がある場合、当該所定の効果の裏返しとなる課題が解決さ
れるということもできる。ただし、必ずしもそのような特定の構成を必須の要件とする趣
旨ではない。
【符号の説明】
【0074】
1 大径部
2 小径部
21 テーパー面
22 円環部
3 蓋
3a プルタブ
4 開口部
11 炭酸飲料
12 乾燥果実
100 容器
【要約】
【課題】容器の蓋を外した時に、乾燥果実が水平方向を維持したまま炭酸飲料の液面まで
浮くようにする、あるいは、乾燥果実が水平方向を維持したまま浮いて容器上部に水平方
向に引っかかるようにする。
【解決手段】炭酸飲料および乾燥果実が容器に入れられており、前記容器の容器の蓋が外
されると、前記乾燥果実がほぼ水平状態を維持したまま炭酸飲料の液面まで浮く、容器詰
め飲料の製造方法であって、前記容器に、乾燥果実と、炭酸飲料と、を入れる第1工程と
、その後に、前記容器に蓋を取り付ける第2工程と、その後に、前記炭酸飲料を加熱して
乾燥果実を膨潤させる第3工程と、を含む容器詰め飲料の製造方法が提供される。
【選択図】
図4