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特許7654884通信管理装置、通信管理方法、および通信管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】通信管理装置、通信管理方法、および通信管理システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20230101AFI20250325BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20250325BHJP
   H04W 88/12 20090101ALI20250325BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20250325BHJP
【FI】
H04W72/04
H04W16/28 130
H04W88/12
H04B7/0413
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024178593
(22)【出願日】2024-10-11
【審査請求日】2024-10-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397036309
【氏名又は名称】株式会社インターネットイニシアティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】柿島 純
【審査官】吉倉 大智
(56)【参考文献】
【文献】特開2024-054220(JP,A)
【文献】岡本 英二,6Gシステムにおける非線形最適化技術適用の利点とその課題,電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review [online],17巻, 1号,2023年07月01日,pp. 26-35,[2025年03月11日検索],インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/essfr/17/1/17_26/_pdf/-char/ja>,Online ISSN 1882-0875, <DOI: https://doi.org/10.1587/essfr.17.1_26>
【文献】高橋 領 ほか2名,分散アンテナを用いる5G高度化超高密度RANのための干渉と無線リソース適応制御,電子情報通信学会論文誌 B [online],Vol.J105-B, No.10,2022年10月01日,pp. 726-740,[2025年03月11日検索],インターネット<URL:https://search.ieice.org/bin/pdf_link.php?category=B&lang=J&year=2022&fname=j105-b_10_726&abst=>,Online ISSN: 1881-0209, <DOI: 10.14923/transcomj.2021MJI0001>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0413
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信に関する要求が共通に適用される通信端末群ごとに割り当てる、MIMO伝送方式における無線リソースの割当て情報を教師データとして、前記無線通信に関する要求と、前記無線通信に関する要求に対応するための無線リソースの割当て情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習するように構成された学習部と、
前記学習部で構築された学習済みの機械学習モデルを含む通信管理情報を複数の前記通信端末群からなる管理対象の複数の通信端末に設定するように構成された設定部と
を備える通信管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信管理装置において、
前記無線リソースの割当て情報は、前記MIMO伝送方式で用いられる送受信アンテナ数および周波数帯を含み、
前記周波数帯は、1または複数の周波数帯である
ことを特徴とする通信管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信管理装置において、
前記無線通信に関する要求は、前記通信端末で実行されるアプリケーションの種別に応じて適用される要求である
ことを特徴とする通信管理装置。
【請求項4】
無線通信に関する要求が共通に適用される通信端末群ごとに割り当てる、MIMO伝送方式における無線リソースの割当て情報を教師データとして、前記無線通信に関する要求と、前記無線通信に関する要求に対応するための無線リソースの割当て情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習する学習ステップと、
前記学習ステップで構築された学習済みの機械学習モデルを含む通信管理情報を複数の前記通信端末群からなる管理対象の複数の通信端末に設定する設定ステップと
を備える通信管理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の通信管理方法において、
前記無線リソースの割当て情報は、前記MIMO伝送方式で用いられる送受信アンテナ数および周波数帯を含み、
前記周波数帯は、1または複数の周波数帯である
ことを特徴とする通信管理方法。
【請求項6】
請求項4に記載の通信管理方法において、
前記無線通信に関する要求は、前記通信端末で実行されるアプリケーションの種別に応じて適用される要求である
ことを特徴とする通信管理方法。
【請求項7】
請求項4に記載の通信管理方法において、
さらに、前記管理対象の複数の通信端末の各々が、
自端末に適用される前記無線通信に関する要求を取得する第1取得ステップと、
前記設定ステップで設定された前記通信管理情報に含まれる前記学習済み機械学習モデルを取得する第2取得ステップと、
前記第1取得ステップで取得された前記自端末に適用される無線通信に関する要求を未知の入力として前記学習済みの機械学習モデルに与え、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行って、前記自端末に割り当てられる、前記無線リソースの割当て情報を出力する演算ステップと、
前記演算ステップで出力された前記無線リソースの割当て情報に基づいて、前記MIMO伝送方式による通信を行う通信管理ステップと
を備える通信管理方法。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載の通信管理装置と、
前記管理対象の複数の通信端末と
を備える通信管理システムであって、
前記管理対象の複数の通信端末の各々は、
自端末に適用される前記無線通信に関する要求を取得するように構成された第1取得部と、
前記通信管理装置により設定された前記通信管理情報に含まれる前記学習済み機械学習モデルを取得するように構成された第2取得部と、
前記第1取得部で取得された前記自端末に適用される前記無線通信に関する要求を未知の入力として前記学習済みの機械学習モデルに与え、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行って、前記自端末に割り当てられる、前記無線リソースの割当て情報を出力するように構成された演算部と、
前記演算部によって出力された前記無線リソースの割当て情報に基づいて、前記MIMO伝送方式による通信を行うように構成された通信管理部と
を備える通信管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信管理装置、通信管理方法、および通信管理システムに関し、特に、無線リソースの管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信で用いられる無線リソースの管理技術が知られている。例えば、特許文献1は、通信端末が有するMIMO通信のアンテナ数、周波数帯などの通信能力や、サービス要求を基地局に通知することで、基地局が、通信端末に適切なアンテナ数、周波数帯、要素キャリアを割り当てるMIMO通信の無線リソース管理を開示している。
【0003】
特許文献1に記載された技術では、各通信端末と基地局との間で、サービス要求に対する適切な無線リソースの割り当てに関する管理が個別に行われており、その結果、複数の通信端末に対する無線リソース管理は全体として煩雑化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-065656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、より簡易な構成により、無線通信に関する要求が共通する複数の通信端末ごとに、MIMO通信で用いられる無線リソースの管理を行うことが困難であった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、より簡易な構成により、無線通信に関する要求が共通する複数の通信端末ごとに、MIMO通信で用いられる無線リソースの管理を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信管理装置は、無線通信に関する要求が共通に適用される複数の通信端末に対して割り当てる、MIMO伝送方式における無線リソースの割当て情報を教師データとして、無線通信に関する要求と、前記無線通信に関する要求に対応するための無線リソースの割当て情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習するように構成された学習部と、前記学習部で構築された学習済みの機械学習モデルを含む通信管理情報を前記複数の通信端末に設定するように構成された設定部とを備える。
【0008】
また、本発明に係る通信管理装置において、前記無線リソースの割当て情報は、前記MIMO伝送方式で用いられる送受信アンテナ数および周波数帯を含み、前記周波数帯は、1または複数の周波数帯であってもよい。
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信管理装置は、前記無線通信に関する要求は、前記複数の通信端末で実行されるアプリケーションの種別に応じて適用される要求であってもよい。
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信管理方法は、無線通信に関する要求が共通に適用される複数の通信端末に対して割り当てる、MIMO伝送方式における無線リソースの割当て情報を教師データとして、無線通信に関する要求と、前記無線通信に関する要求に対応するための無線リソースの割当て情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習する学習ステップと、前記学習ステップで構築された学習済みの機械学習モデルを含む通信管理情報を前記複数の通信端末に設定する設定ステップとを備える。
【0011】
また、本発明に係る通信管理方法において、前記無線リソースの割当て情報は、前記MIMO伝送方式で用いられる送受信アンテナ数および周波数帯を含み、前記周波数帯は、1または複数の周波数帯であってもよい。
【0012】
また、本発明に係る通信管理方法において、前記無線通信に関する要求は、前記複数の通信端末で実行されるアプリケーションの種別に応じて適用される要求であってもよい。
【0013】
また、本発明に係る通信管理方法において、前記複数の通信端末の各々が、自端末に適用される前記無線通信に関する要求を取得する第1取得ステップと、前記設定ステップで設定された前記通信管理情報に含まれる前記学習済み機械学習モデルを取得する第2取得ステップと、前記第1取得ステップで取得された前記自端末に適用される無線通信に関する要求を未知の入力として前記学習済みの機械学習モデルに与え、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行って、前記自端末に割り当てられる、前記無線リソースの割当て情報を出力する演算ステップと、前記演算ステップで出力された前記無線リソースの割当て情報に基づいて、前記MIMO伝送方式による通信を行う通信管理ステップとを備えていてもよい。
【0014】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信管理システムは、上記の通信管理装置と、前記複数の通信端末とを備える通信管理システムであって、前記複数の通信端末の各々は、自端末に適用される前記無線通信に関する要求を取得するように構成された第1取得部と、前記通信管理装置により設定された前記通信管理情報に含まれる前記学習済み機械学習モデルを取得するように構成された第2取得部と、前記第1取得部で取得された前記自端末に適用される無線通信に関する要求を未知の入力として前記学習済みの機械学習モデルに与え、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行って、前記自端末に割り当てられる、前記無線リソースの割当て情報を出力するように構成された演算部と、前記演算部によって出力された前記無線リソースの割当て情報に基づいて、前記MIMO伝送方式による通信を行うように構成された通信管理部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、無線通信に関する要求が共通に適用される複数の通信端末に割り当てる、MIMO伝送方式における無線リソースの割当て情報を教師データとして、無線通信に関する要求と、無線通信に関する要求に対応するための無線リソースの割当て情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習する。そのため、より簡易な構成により、無線通信に関する要求が共通する複数の通信端末ごとに、MIMO通信で用いられる無線リソースの管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る通信管理装置および通信端末を備える通信管理システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施の形態に係る通信端末の構成を示すブロック図である。
図3図3は、本実施の形態に係る通信管理システムの概要を説明するための図である。
図4図4は、本実施の形態に係る通信管理装置の管理テーブルの構成を説明するための図である。
図5図5は、本実施の形態に係る通信管理装置が備える学習部の構成を説明するための図である。
図6図6は、本実施の形態に係る通信管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7図7は、本実施の形態に係る通信端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
図8図8は、本実施の形態に係る通信管理システムの動作を示すシーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図8を参照して詳細に説明する。
【0018】
[通信管理システムの構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る通信管理装置1および通信端末2を備える通信管理システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る通信管理システムは、5G無線通信システムに対応する通信管理装置1、通信端末2、基地局3、コアネットワーク4を備える。通信管理システムは、無線通信に関する要求が共通に適用される複数の通信端末2単位で、MIMO伝送方式の無線リソースを管理する。
【0019】
通信管理装置1とコアネットワーク4とは、LAN、WAN、インターネットなどのネットワークNWを介して接続されている。また、基地局3とコアネットワーク4とは、バックホールリンクを介して接続されている。
【0020】
通信端末2は、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータなどのモバイル通信端末、スマートメータ、ウェアラブルデバイス、産業用センサなど5Gモバイル通信ネットワークを用いるIoT端末により実現される。本実施の形態では、通信端末2は、SIMを備え、さらに、固有のIPアドレスを持ちインターネットに接続することができる。本実施の形態では、通信端末2は、複数のアンテナ208を備え、基地局3との間でMIMO通信を行う。
【0021】
通信端末2は、複数台存在し、各通信端末2には無線通信に関する要求が適用される。無線通信に関する要求は、通信端末2で実行されるアプリケーションの種別に応じて適用される要求を含む。例えば、スマートメータなどは、低消費電力が要求されるが、広帯域である必要はなく、必要な場合にのみ低遅延が要求される。一方、映像配信などのストリーミングメディアでは、広帯域、低遅延、かつ、安定した高スループット等が要求される。各通信端末2には、それぞれのアプリケーションやサービスの要求に応じた最適なMIMO通信のアンテナ数や周波数帯が割り当てられることが無線リソースの効率的な利用につながる。
【0022】
本実施の形態では、無線通信に関する要求が共通する複数の通信端末2ごとに、通信端末2をグループ化して最適な無線リソースを管理する。図1に示すように、グループ1として、IPアドレスがIP01~IP0nのn台の通信端末2がグループ化されている。これらの通信端末2は、アプリケーションやサービスで要求される、帯域幅や遅延などの要求が共通する端末群である。また、図1の例では、無線通信に関する要求が共通するグループが、m個(mは1以上の整数)設定されている。なお、通信端末2の機能ブロックおよびハードウェア構成についての詳細は後述する。
【0023】
基地局3は、5G方式に対応した無線基地局で構成され、在圏する通信端末2とコアネットワーク4との間の通信を中継する。基地局3は、例えば、バスを介して接続されるプロセッサ、主記憶装置、通信インターフェース、補助記憶装置、入出力I/Oを備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。
【0024】
基地局3は、さらに、複数のアンテナを備え、MIMO通信により、通信端末2と無線通信を行う。また、本実施の形態では、通信端末2に対して割り当てられたMIMO通信のアンテナ数および周波数帯に基づいて、MIMO通信を実現する。基地局3は、チャネル状態に応じて周波数と時間のより詳細なリソース管理を行い、通信端末2と連携して、複数のデータストリームを同時に送受信するMIMO通信を実現する。
【0025】
コアネットワーク4は、通信端末2がモバイル通信ネットワークに接続する際の認証、およびその接続を管理する。また、コアネットワーク4は、通信端末2が、割り当てられた無線リソースを利用して、図示されないユーザプレーン機能(UPF)を介してインターネット等のデータネットワークに接続し、データ通信を行うためのデータセッションの開始、維持や終了を制御する。
【0026】
図3は、本実施の形態に係る通信管理システムの概要を説明するための図である。図3は、無線リソースが時間軸と周波数軸とで定義された二次元平面、および空間軸(アンテナ数)を示している。無線リソースは、図3に示すように、さらに、タイムスロットとサブキャリアとで構成されるリソースブロックに分割されている。例えば、送信アンテナが2つ、および受信アンテナが2つの2×2のMIMOが構成されている場合、図3の空間軸に沿って空間ストリームs、sが設けられる。なお、図3では説明の簡単のため、送受信のアンテナ数が空間ストリーム数と一致するものとし、空間ストリームs、sは、2×2のMIMO構成における2本のアンテナを表す。
【0027】
通信管理システムは、通信端末2に対して、通信端末2に適用される無線通信に関する要求に適したアンテナ数N(Nは、1以上の正の整数)、および1または複数の周波数帯を割り当てる。例えば、4×4のMIMO構成におけるアンテナ数N=4、周波数帯fおよびfが割り当てられると、通信端末2と基地局3とは、それぞれ4つのアンテナを使って、周波数帯fおよびfで4つのデータストリームを並行して送受信する。
【0028】
[通信管理装置の機能ブロック]
図1に示すように、通信管理装置1は、第3取得部10、グループ管理部11、第1記憶部12、学習部13、第2記憶部14、および設定部15を備える。
【0029】
第3取得部10は、同じアンテナ数や周波数帯を使う通信端末2をグループ分けするためのグループ化基準として、無線通信に関する要求を取得する。第3取得部10は、複数の通信端末2がそれぞれ実行するアプリケーションの種別をグループ化基準として取得することができる。第3取得部10は、例えば、管理者によるグループ化基準の入力を受け付けて取得する。
【0030】
グループ管理部11は、第3取得部10によって取得された無線通信に関する要求の情報に、グループIDを割り当ててグループ化情報を作成し、さらに、複数の通信端末2のグループ化を行う。グループ管理部11は、例えば、アプリケーションの種別ごとに、グループIDを割り当ててグループ化情報を作成することができる。
【0031】
グループ管理部11は、無線通信に関する要求についての情報と、通信端末2のIPアドレスとを、コアネットワーク4を介して管理対象の各通信端末2から取得する。そして、グループ管理部11は、複数の通信端末2のIPアドレスの各々に対して、グループ化情報に基づいてグループIDを発行する。
【0032】
図4は、グループ管理部11によって管理される管理テーブル110の構成を示す。まず、グループ管理部11は、管理テーブル110の「アプリケーション種別」に対して割り当てられた「グループID」の情報をグループ化情報として格納している。そして、例えば、通信端末2による「アプリケーション1」の起動に応じて、専用アプリケーション内で、無線通信に関する要求「アプリケーション1」を示す情報が生成され、通信端末2のIPアドレス「IP01」とともに、通信管理装置1へ送信される。この場合、グループ管理部11は、通信端末2から受信した「アプリケーション1」を示す情報に基づいて、通信端末2のIPアドレス「IP01」に対してグループID「1」を発行する。
【0033】
第1記憶部12は、管理テーブル110を記憶する。
【0034】
学習部13は、無線通信に関する要求が共通に適用される複数の通信端末2に割り当てる、MIMO伝送方式における無線リソースの割当て情報を教師データとして、無線通信に関する要求と、無線通信に関する要求に対応するための無線リソースの割当て情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習する。無線リソースの割当て情報は、MIMO通信のアンテナ数と周波数帯である。
【0035】
学習部13は、複数のグループIDの各々に正解ラベルが付された教師データのセットを用いて、各グループIDの無線通信に関する要求に対応するためのアンテナ数および周波数帯を、機械学習モデルにより学習する。
【0036】
図5は、学習部13が学習を行う機械学習モデルの一例として採用する、ニューラルネットワーク構造を示す。ニューラルネットワークは、入力層x、隠れ層h、および出力層yを備える。入力層xの入力ノードには、グループ管理部11によって通信端末2に発行されたグループIDの値が与えられる。通信端末2が実行するアプリケーションに応じて、各通信端末2には異なるグループIDが与えられており、また、グループIDごとに共通のMIMO通信のアンテナ数および周波数帯が割り当てられる。グループIDごとに割り当てられるアンテナ数および周波数帯は、グループIDに紐づけられているアプリケーションの要求に対応するための最適なアンテナ数および周波数帯である。したがって、グループIDと、グループIDが共通の複数の通信端末2に割り当てるアンテナ数および周波数帯との間には相関を見出すことができる。
【0037】
出力層yの各出力ノードy~y、o~oは、入力値であるグループIDの値に対するニューラルネットワークの予測値である。出力ノードy~yは、アンテナ数の予測値を出力する。出力ノードy~yのインデックス1~Nは、アンテナ数を表す。出力ノードo~oは、周波数帯の予測値を出力する。出力ノードo~oのインデックス1~Mは、周波数帯f~fに対応する(M≦k)。具体的には、出力ノードy~yの送受信アンテナ数の予測値として、送受信アンテナ数N=2本の場合、(y,y,y,・・・,y)=(0,1,0,・・・,0)との予測値が出力される。
【0038】
前述したように、本実施の形態では、1または複数の周波数帯がグループIDを共通とする通信端末2に割り当て可能であるため、出力ノードo~oは、複数の予測出力値が「1」の値をとる場合がある。例えば、周波数帯fおよびfが割り当てられる場合には、(o,o,o,・・・,o)=(1,0,1,・・・,0)との予測値が出力される。
【0039】
学習部13は、次の式(1)に示す目的関数Eを導入することで、通信端末2のグループIDに対するニューラルネットワークモデルからのアンテナ数と周波数帯との予測値が、教師データの正解ラベルの値となるように、ニューラルネットワークモデルのパラメータを学習する。教師データの正解ラベルは、グループIDに対して付与された最適なアンテナ数と周波数帯の値である。
【0040】
【数1】
【0041】
上式(1)において、y,y,・・・,y,o,o,・・・,oは各出力ノードの予測出力値を示す。また、Y,Y,・・・,Y,O,O,・・・,Oは教師データの正解ラベルであり、別途事前に用意される。学習部13は、上式(1)の目的関数Eが最小、つまり0となるように、ニューラルネットワークの重みパラメータを調整する。学習部13は、誤差逆伝播法などを用いて、目的関数Eを最適化することができる。
【0042】
第2記憶部14は、学習部13によって構築された学習済みの機械学習モデルを記憶する。
【0043】
設定部15は、学習部13で構築された学習済みの機械学習モデルを含む通信管理情報を通信端末2に設定する。具体的には、設定部15は、管理対象の通信端末2に対して、ネットワークNWを介して通信管理情報を送信し、設定することができる。
【0044】
[通信端末の機能ブロック]
次に、通信端末2の構成について、図2のブロック図を参照して説明する。図2に示すように、通信端末2は、第3記憶部20、第1取得部21、第2取得部22、演算部23、および通信管理部24を備える。複数の通信端末2の各々は、同一の構成を有する。
【0045】
第3記憶部20は、通信管理装置1の設定部15によって設定された通信管理情報を記憶する。
【0046】
第1取得部21は、自端末に適用される無線通信に関する要求を取得する。具体的には、第1取得部21は、通信管理装置1のグループ管理部11によって発行された、自端末のグループIDを、通信管理装置1から取得することができる。
【0047】
第2取得部22は、通信管理装置1により設定された通信管理情報に含まれる学習済みの機械学習モデルを取得する。具体的には、第2取得部22は、第3記憶部20に記憶された学習済みの機械学習モデルを読み出す。
【0048】
演算部23は、第1取得部21で取得された自端末に適用される無線通信に関する要求を未知の入力として学習済みの機械学習モデルに与え、学習済みの機械学習モデルの演算を行って、自端末に割り当てられる、無線リソースの割当て情報を出力する。より詳細には、演算部23は、第1取得部21で取得された自端末のグループIDを、学習済みの機械学習モデルに与え、演算を行って最適なアンテナ数と周波数帯とを出力する。
【0049】
通信管理部24は、演算部23によって出力された無線リソースの割当て情報に基づいて、MIMO伝送方式による通信を行う。より具体的には、通信管理部24は、自端末に割り当てられたアンテナ数と周波数帯とに基づいて、チャネル状態情報を取得し、基地局3に送信する。基地局3は、チャネル状態情報に応じて無線リソースの割り当てを最適化する。通信管理部24は、割り当てられたアンテナ数のアンテナ208を利用し、基地局3との間でMIMO通信を確立する。
【0050】
[通信管理装置のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する通信管理装置1を実現するハードウェア構成の一例について、図6を用いて説明する。
【0051】
図6に示すように、通信管理装置1は、例えば、バス101を介して接続されるプロセッサ102、主記憶装置103、通信インターフェース104、補助記憶装置105、入出力I/O106を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。さらに、通信管理装置1は、バス101を介して接続される表示装置107を備えることができる。
【0052】
プロセッサ102は、CPU、GPU、FPGA、ASICなどによって実現される。
【0053】
主記憶装置103には、プロセッサ102が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。プロセッサ102と主記憶装置103とによって、図1に示した第3取得部10、グループ管理部11、学習部13、設定部15など通信管理装置1の各機能が実現される。
【0054】
通信インターフェース104は、通信管理装置1と各種外部電子機器との間をネットワーク接続するためのインターフェース回路である。
【0055】
補助記憶装置105は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置とで構成されている。補助記憶装置105には、記憶媒体としてハードディスクやフラッシュメモリなどの半導体メモリを使用することができる。
【0056】
補助記憶装置105は、通信管理装置1が実行する通信管理プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。また、通信管理装置1が実行する機械学習プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。また、補助記憶装置105は、無線リソースに関する情報を格納する領域を有する。補助記憶装置105によって、図1で説明した第1記憶部12、第2記憶部14が実現される。さらには、例えば、上述したデータやプログラムなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0057】
入出力I/O106は、外部機器からの信号を入力したり、外部機器へ信号を出力したりする入出力装置である。
【0058】
表示装置107は、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイなどによって構成される。表示装置107は、グループ化された複数の通信端末2の管理情報を表示させることができる。
【0059】
[通信端末のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する通信端末2を実現するハードウェア構成の一例について、図7を用いて説明する。
【0060】
図7に示すように、通信端末2は、バス201を介して接続されるプロセッサ202、主記憶装置203、通信インターフェース204、補助記憶装置205、入出力I/O206を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。さらに、通信端末2は、バス201を介して接続される表示装置207、アンテナ208を備えることができる。
【0061】
主記憶装置203には、プロセッサ202が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。プロセッサ202と主記憶装置203とによって、図2に示した第1取得部21、第2取得部22、演算部23、通信管理部24など通信端末2の各機能が実現される。
【0062】
補助記憶装置205は、通信端末2が実行する演算プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。また、通信端末2が実行する通信管理プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。補助記憶装置205によって、図2で説明した第3記憶部20が実現される。さらには、例えば、上述したデータやプログラムなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0063】
[通信管理システムの動作]
次に、上述した構成を有する通信管理システムの動作を、図8のシーケンスを参照して説明する。
【0064】
まず、第3取得部10は、通信端末2に対して共通の送受信アンテナ数および周波数帯を割り当てるための、グループ化基準を取得する(ステップS1)。第3取得部10は、通信端末2で実行されるアプリケーションの種別をグループ化基準として取得することができる。さらに、グループ管理部11は、アプリケーションの種別ごとにグループIDを割り当てて、管理テーブル110に記憶する。
【0065】
次に、学習部13は、教師データを用意する(ステップS2)。教師データは、グループIDごとに、アンテナ数および周波数帯が正解ラベルとして付与されたデータである。学習部13は、外部で事前に設計された教師データを通信インターフェース104から受け付けることができる。
【0066】
続いて、学習部13は、ステップS2で得られた教師データを用いて、無線通信に関する要求を示すグループIDと、無線通信に関する要求に対応するためのアンテナ数および周波数帯の割当て情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習する(ステップS3)。学習部13は、ステップS3で、複数のグループIDの各々についての教師データを用いて、各グループIDの無線通信に関する要求に対応するためのアンテナ数および周波数帯を、機械学習モデルにより学習する。
【0067】
学習部13は、例えば、図5で示したニューラルネットワーク構造のモデルを機械学習モデルとして採用し、上式(1)で表される目的関数Eが最小、つまり0となるように、ニューラルネットワークの重みパラメータを調整する。学習部13は、誤差逆伝播法などを用いて、目的関数を勾配法で最適化することができる。学習部13によって構築された学習済みの機械学習モデルは、第1記憶部12に記憶される(ステップS4)。
【0068】
その後、グループ管理部11は、管理対象の通信端末2に対してプッシュ通知により、起動したアプリケーションの種別および通信端末2のIPアドレスを送信する指示を行う(ステップS5)。例えば、通信端末2のアプリケーションの起動などをトリガーとしてプッシュ通知を送信することができる。
【0069】
続いて、通信端末2は、ステップS5での指示に応じて、自端末のIPアドレス(IP01)、および起動したアプリケーションの種別(アプリケーション1)を通信管理装置1に通知する(ステップS6)。通信端末2は、通信管理の専用アプリケーション内で、ステップS6の処理を行う。その後、通信管理装置1のグループ管理部11は、管理テーブル110のグループ化情報を参照し、受信したアプリケーションの種別に基づいて、通信端末2のIPアドレスに対してグループIDを発行する(ステップS7)。図8の例では、グループID「1」が発行される。
【0070】
次に、通信管理装置1の設定部15は、ステップS3の学習処理で構築された学習済みの機械学習モデルを含む通信管理情報を通信端末2に設定する(ステップS8)。ステップS8では、通信管理情報を、ネットワークNWを介して通信端末2に送信する。
【0071】
その後、通信端末2の第3記憶部20は、通信管理情報に含まれる学習済みの機械学習モデルを記憶する(ステップS9)。次に、通信端末2の第1取得部21は、第3記憶部20から学習済みの機械学習モデルをロードすることで、学習済みの機械学習モデルを取得する(ステップS10)。次に、第2取得部22は、自端末のグループIDを取得する(ステップS11)。具体的には、ステップS7で通信管理装置1から受信したグループIDを取得する。
【0072】
次に、演算部23は、ステップS11で取得した自端末のグループIDを未知の入力として学習済みの機械学習モデルに与え、学習済みの機械学習モデルの演算を行って、自端末に割り当てられる、MIMO通信のアンテナ数および周波数帯の割当て情報を出力する(ステップS12)。
【0073】
その後、通信管理部24は、ステップS12で出力されたアンテナ数および周波数帯の割当て情報に基づいて、MIMO通信を行う(ステップS13)。通信管理部24は、ステップS13で、自端末に割り当てられたアンテナ数と周波数帯とに基づいてチャネル状態情報を取得し、基地局3に送信する。チャネル状態情報に応じて基地局3は無線リソースの割り当てを最適化する。そして、通信管理部24は、割り当てられたアンテナ数のアンテナ208を利用し、基地局3との間でMIMO通信を確立する。
【0074】
グループIDが「1」の、他の管理対象の複数の通信端末2(IP02~IP0n)についても同様に、それぞれステップS9からステップS13までの処理を行う。また、グループIDが異なる他の複数の通信端末2についても、同様に、それぞれステップS9からステップS13までの処理を行う。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態に係る通信管理装置1によれば、無線通信に関する要求が共通に適用される複数の通信端末2に割り当てる、MIMO伝送方式におけるアンテナ数および周波数帯の割当て情報を教師データとして、無線通信に関する要求と、無線通信に関する要求に対応するためのアンテナ数および周波数帯の割当て情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習する。そのため、より簡易な構成により、無線通信に関する要求が共通する複数の通信端末2ごとに、MIMO通信で用いる無線リソースの管理を行うことができる。
【0076】
また、本実施の形態に係る通信管理システムによれば、通信管理装置1が、学習済みの機械学習モデルを含む通信管理情報を、ネットワークNWを介して通信端末2に設定する。そのため、複数の通信端末2のMIMO通信の制御および管理を一元的に行うことができる。
【0077】
なお、説明した実施の形態では、機械学習モデルとして、ニューラルネットワークモデルを例示した。しかし、機械学習モデルは、ニューラルネットワーク以外にも、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、決定木等、さらにニューラルネットワークを多層化したディープラーニングを用いてもよい。
【0078】
また、上述の実施の形態では、5Gに準拠する通信管理システムである場合を例示したが、LTEや6Gに準拠する通信管理システムであってもよい。
【0079】
以上、本発明の通信管理装置、通信管理方法、および通信管理システムにおける実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…通信管理装置、10…第3取得部、11…グループ管理部、12…第1記憶部、13…学習部、14…第2記憶部、15…設定部、2…通信端末、3…基地局、4…コアネットワーク、101、201…バス、102、202…プロセッサ、103、203…主記憶装置、104、204…通信インターフェース、105、205…補助記憶装置、106、206…入出力I/O、107、207…表示装置、208…アンテナ、NW…ネットワーク。
【要約】
【課題】より簡易な構成により、無線通信に関する要求が共通する複数の通信端末ごとに、MIMO通信で用いられる無線リソースの管理を行うことを目的とする。
【解決手段】
無線通信に関する要求が共通に適用される複数の通信端末2に対して割り当てる、MIMO伝送方式における無線リソースの割当て情報を教師データとして、無線通信に関する要求と、無線通信に関する要求に対応するための無線リソースの割当て情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習するように構成された学習部13と、学習部13で構築された学習済みの機械学習モデルを含む通信管理情報を複数の通信端末2に設定するように構成された設定部15とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8