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7654932環状オレフィンポリマー、環状オレフィンポリマーのモノマー、及び光学製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】環状オレフィンポリマー、環状オレフィンポリマーのモノマー、及び光学製品
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/08 20060101AFI20250326BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
C08G61/08
G02B1/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023526146
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2021107058
(87)【国際公開番号】W WO2022088773
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202011175631.9
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ゾォウ,ハイリアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ホォイホォイ
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-196779(JP,A)
【文献】特開2015-199939(JP,A)
【文献】特開2020-105333(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0004276(KR,A)
【文献】米国特許第06677419(US,B1)
【文献】The synthesis of cyclic olefin copolymers (COCs) by ethylene copolymerisations with cyclooctene, cycloheptene, and with tricyclo[6.2.1.0(2,7)]undeca-4-ene: the effects of cyclic monomer structures on thermal properties,Polymer Chemistry,2020年08月21日,Vol. 11, Issue 35,pages 5590-5600
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08F
G02B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(6)
【化1】
に示される構造式に由来する繰り返し単位を含み、かつ、不飽和シクロヘキセン構造に由来する構造及び飽和ジメタノオクタヒドロナフタレンを含む、環状オレフィンポリマーであって、ここで、前記飽和ジメタノオクタヒドロナフタレンとC4鎖セグメントとの交互共重体であり、質量平均分子量が、42000~65000である、環状オレフィンポリマー。
【請求項2】
前記環状オレフィンポリマーにおいて、前記式(6)に示される構造式の繰り返し単位の合計質量パーセントが、50%以上である、請求項1に記載の環状オレフィンポリマー。
【請求項3】
前記環状オレフィンポリマーの屈折率が、1.53~1.58である、請求項1又は2に記載の環状オレフィンポリマー。
【請求項4】
前記環状オレフィンポリマーのアッベ数が、53以上である、請求項1~3のいずれかに記載の環状オレフィンポリマー。
【請求項5】
前記環状オレフィンポリマーのヘイズが、0.2%未満である、請求項1~4のいずれかに記載の環状オレフィンポリマー。
【請求項6】
前記環状オレフィンポリマーの可視透過率が、90%以上である、請求項1~5に記載の環状オレフィンポリマー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の環状オレフィンポリマーを含む、光学材料。
【請求項8】
前記光学材料が添加剤を更に含み、前記添加剤が、抗酸化剤、可塑剤、熱安定剤、及び抗劣化剤の1以上を含む、請求項7に記載の光学材料。
【請求項9】
前記光学材料において、前記環状オレフィンポリマーの質量パーセントが、60%以上である、請求項7に記載の光学材料。
【請求項10】
請求項1~6のいずれかに記載の環状オレフィンポリマー又は請求項7~9のいずれかに記載の光学材料を含む、光学製品。
【請求項11】
請求項10に記載の光学製品を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月28日に中国国家知識産権局に出願され、「環状オレフィンポリマー、環状オレフィンポリマーのモノマー、及び光学製品」と題された中国特許出願第202011175631.9号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願の実施形態は、環状オレフィンポリマー技術の分野、特に、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンポリマーのモノマー、及び光学製品に関する。
【背景技術】
【0003】
環状オレフィンポリマーは、優れた光学的性質を有する熱可塑性樹脂材料であり、電子製品や包装等の分野で広く使用されている。主に2種類の環状オレフィンポリマー材料がある。1つは、環状オレフィン及びα-オレフィン(二重結合が分子鎖の端部にあるモノオレフィン)等の複数のオレフィンモノマーに付加重合(ビニル付加重合、VAP)を行う後に得られるポリマー生成物である、環状オレフィンコポリマー(Cyclic Olefin Copolymer、COC)である。具体的には、化学方程式(1)で示されるように、COCは、VAPによってノルボルネンとエチレンを合成することで得られる。別のタイプは、単一の環状オレフィンモノマーに対して開環メタセシス重合(Ring-opening metathesis polymerization、ROMP)を行った後、水素化によって得られるポリマー生成物である、環状オレフィンポリマー(Cyclo Olefin Polymer、COP)である。具体的には、化学方程式(2)に示されるように、COPは、ノルボルネンで行われるROMP-水素化によって合成される。
【0004】
環状オレフィンポリマーは、剛性な環状構造及び柔軟な脂肪族基鎖セグメントの両方を含む。脂肪族基鎖セグメントに基づき、環状オレフィンポリマー材料は、優れた耐薬品性、優れた耐水性、良好な機械的強度、及び良好な電気的絶縁性等の特徴を有することができる。更に、剛性な環状構造に基づき、環状オレフィンポリマー材料は、高いガラス転移温度(Tg)を有することができる。これにより耐熱性が向上し、ポリエチレンの結晶化が破壊され、優れた光学的性質が得られる。化学方程式から、ノルボルネンとエチレンの2つのモノマーの相対含有量を調節するので、環状オレフィンとα-オレフィンの相対含有量を制御することができ、COCは、良好な機械的特性を得ることができることが分かる。しかしながら、重合過程では、複数のエチレンモノマーの単独重合は必然的にエチレン鎖のスタッキングを引き起こす。このスタッキングにより、ポリマー中にポリエチレンの結晶化領域が発生する。その結果、ヘイズや複屈折率を含む光学的性質が低下する。COPを合成する過程で、ノルボルネンの環状構造を破壊し、(1:1)に従って交互に配置された5員環構造とエチレン鎖セグメントの構造を形成し、環状オレフィンとαオレフィンの配列分布を実現する。この構造では、エチレン鎖セグメントのスタッキングは起こらない。このようにして、良好な光学的性質を得ることができる。しかしながら、COPにおける環状構造モノマーのモル比は50%であり、剛性な基の割合が高い。この場合、材料は、射出成形後の内部応力が高く、機械的性質が影響され、剛性-柔軟比が固定され、調節できない。
【0005】
上述の環状オレフィンポリマーの合成方法では、ポリマー中の環状オレフィンとα-オレフィン(即ち、剛性な環状構造及び柔軟な脂肪族基鎖セグメント)の配列分布と相対含有量を同時に制御することができない。そのため、環状オレフィンポリマーの機械的性質と光学的性質を同時に最適化することは困難である。これは、電子製品への環状オレフィンポリマーの適用を制限する。
【発明の概要】
【0006】
この観点から、本出願の実施形態は、ポリマー中の剛性な環状構造及び柔軟な脂肪族基鎖セグメントの配列分布と相対含有量の両方を制御するための環状オレフィンポリマーを提供する。したがって、環状オレフィンポリマーは、優れた機械的特性及び優れた光学的性質の両方を有する。
【0007】
具体的に、第1の態様によれば、本出願の実施形態は、環状オレフィンポリマーを提供する。環状オレフィンポリマーは、式(1)に示される構造式の繰り返し単位及び/又は式(2)に示される構造式の繰り返し単位を含む。
【化2】

【化3】
【0008】
式(1)において、p及びqは、0以上6以下の整数であり;x及びyは、0以上の整数であり;p及びqは、0以上6以下の整数であり、p及びqは、同時に0ではなく;R~R12、R、R、R、及びRは、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択され;R13、R14、R15、及びR16は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される;又はR13、R14、R15、及びR16のいずれか2つ、3つ、又は4つは、結合して、環状構造を形成し、R13、R14、R15、及びR16において前記環状構造の形成に関与しない基は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される。
【0009】
式(2)において、p’及びq’は、0以上6以下の整数であり;x’及びy’は、0以上の整数であり;p’及びq’は、0以上6以下の整数であり、p’及びq’は、同時に0ではなく;R’~R12’、R’、R’、R’、及びR’は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択され;R13’、R14’、R15’、及びR16’は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される;又はR13’、R14’、R15’、及びR16’のいずれか2つ、3つ、又は4つは、結合して、環状構造を形成し、R13’、R14’、R15’、及びR16’において前記環状構造の形成に関与しない基は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される。
【0010】
本出願の本実施形態で提供される環状オレフィンポリマーによれば、環状オレフィンポリマーの分子構造は、柔軟な脂肪族基鎖セグメント及び剛性な二環構造の両方を含む。脂肪族基鎖セグメントに基づき、材料の内部応力及びガラス転移温度(T)は、効果的に低減されることができ、環状オレフィンポリマーは、良好な機械的強度、良好な電気的絶縁性、優れた耐薬品性、及び優れた耐水性等の特徴を有する。二環構造に基づき、環状オレフィンポリマーの剛性、熱耐性、及びガラス転移温度を向上させることができ、脂肪族基鎖セグメントの結晶化を破壊することができるため、環状オレフィンポリマーは優れた光学的性質を得る。本出願の本実施形態で提供される環状オレフィンポリマーにおいて、分子構造における二環構造及び脂肪族基鎖セグメントの配列分布及び相対含有量は、制御可能である。したがって、環状オレフィンポリマーは、優れた機械的特性及び優れた光学的性質の両方を有し、更に良好な加工性を有する。
【0011】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーにおいて、式(1)に示される構造式の繰り返し単位及び式(2)に示される構造式の繰り返し単位の合計質量パーセントが、50%以上である。式(1)の繰り返し単位と式(2)の繰り返し単位の合計質量パーセントが大きいほど、環状オレフィンポリマーの光学的性質が高いことを示す。
【0012】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーは、式(3)に示される構造式の繰り返し単位を更に含む。
【化4】
【0013】
式(3)では、mは、0以上10以下の整数であり、A及びAは、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択され;A、A、A、及びAは、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される;又はA、A、A、及びAのいずれか2つ、3つ、又は4つは、結合して、環状構造を形成し、A、A、A、及びAにおいて前記環状構造の形成に関与しない基は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される。式(3)に示される繰り返し単位のモノマーを容易に得ることができる。シンプルな市販のモノマーを用いることで、環状オレフィンポリマーのコストを低減できる。更に、材料の剛性をある程度向上させ、機械的性質を両立させることができる。
【0014】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーでは、式(3)に示される構造式の繰り返し単位の質量パーセントが、50%以下である。
【0015】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーの重量平均分子量は、10000~200000である。分子量は適切に制御され、ポリマーの機械的性質と成形性とのバランスがより良くなる。
【0016】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーの屈折率は、1.53~1.58である。環状オレフィンポリマーは、高い屈折率を有する。光学レンズを環状オレフィンポリマーで作ると、光学レンズのレンズ厚みを薄くすることができる。
【0017】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーのアッベ数は、53以上である。環状オレフィンポリマーは適切なアッベ数を有するため、材料の分散現象を低レベルに制御することができる。
【0018】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーのヘイズは、0.2%未満である。小さなヘイズに基づき、光学レンズを環状オレフィンポリマーで作ると、光学レンズの視覚効果を向上することができる。
【0019】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーの可視透過率は、90%以上である。
【0020】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーのガラス転移温度は、100℃超である。環状オレフィンポリマーは、適切なガラス転移温度を有し、環状オレフィンポリマー材料の成形性及び加工性を向上させる。
【0021】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーにおいては、引張強さは30MPa以上であり、破断時の伸び率は6%以上であり、曲げ弾性率は2000MPa超である。
【0022】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーの曲げ強さは40MPa以上である。
【0023】
本出願の本実施形態で提供される環状オレフィンポリマーは、優れた機械的特性を有する。光学レンズを環状オレフィンポリマーで作ると、光学レンズは、外力に対してより抵抗することができるので、光学レンズの寿命を長くすることができる。
【0024】
第2の態様によれば、本出願の実施形態は、環状オレフィンポリマーのモノマーを提供する。環状オレフィンポリマーのモノマーの化学構造式は、式(4)に示される。
【化5】
【0025】
式(4)では、p及びqは、0以上6以下の整数であり;x及びyは、0以上の整数であり;p及びqは、0以上6以下の整数であり、p及びqは、同時に0ではなく;R~R12、R、R、R、及びRは、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択され;R13、R14、R15、及びR16は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される;又はR13、R14、R15、及びR16のいずれか2つ、3つ、又は4つは、結合して、環状構造を形成し、R13、R14、R15、及びR16において前記環状構造の形成に関与しない基は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される。
【0026】
本出願の本実施形態で提供される環状オレフィンポリマーのモノマーは、飽和二環構造及び不飽和脂肪族環状構造の両方を含む。本出願の実施形態の第1の態様の環状オレフィンポリマーは、環状オレフィンポリマーのモノマーで行われるROMPプロセス又はROMP-水素化プロセスによって得られることができる。環状オレフィンポリマーは、環状オレフィンポリマーのモノマーで行われるROMPプロセス又はROMP-水素化プロセスによって調製され、優れた光学的性質を確保し、機械的特性の調節性を実現する。詳細は以下のとおりである。(1)重合によって得られた環状オレフィンポリマーは、柔軟な脂肪族基鎖セグメント及び剛性な二環構造鎖セグメントの両方を含み、複屈折を減少させる。(2)剛性な二環構造の相対含有量を制御できるので、環状オレフィンポリマーの剛性及び柔軟性、機械的性質、並びに加工性を制御することができる。(3)剛性な二環構造及び柔軟な脂肪族基鎖セグメントの交互配列を制御し、脂肪族基鎖セグメントのスタッキングを減少又は回避し、微結晶化を減少させることができる。このように、良好な光学的性質を得ることができる。
【0027】
第3の態様によれば、本出願の実施形態は、本出願の実施形態の第1の態様の環状オレフィンポリマーを含む光学材料を提供する。
【0028】
本出願の実装では、光学材料は、添加剤を更に含み、添加剤は、抗酸化剤、可塑剤、熱安定剤、及び抗劣化剤の1以上を含む。
【0029】
本出願の実装では、光学材料では、環状オレフィンポリマーの質量パーセントは、60%以上である。
【0030】
第4の態様によれば、本出願の実施形態は、光学製品を提供する。光学製品は、本出願の実施形態の第1の態様の環状オレフィンポリマーを含む、又は本出願の実施形態の第3の態様の光学材料を含む。
【0031】
本出願の実装では、光学製品は、光学レンズ、光学フィルム、光ディスク、導光板、又は表示パネルを含む。
【0032】
本出願の実装では、光学レンズは、眼鏡レンズ、カメラレンズ、センサーレンズ、照明レンズ、及び撮像レンズを含む。
【0033】
本出願の実施形態は、本出願の実施形態の第4の態様の光学製品を含む装置を更に提供する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本出願の実施形態における技術的解決策を具体的に記載する。
【0035】
本出願の実施形態は、環状オレフィンポリマーを提供する。環状オレフィンポリマーは、式(1)に示される構造式の繰り返し単位及び/又は式(2)に示される構造式の繰り返し単位を含む。
【化6】
【0036】
式(1)において、p及びqは、0以上6以下の整数であり;x及びyは、0以上の整数であり;p及びqは、0以上6以下の整数であり、p及びqは、同時に0ではなく;R~R12、R、R、R、及びRは、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択され;R13、R14、R15、及びR16は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される;又はR13、R14、R15、及びR16のいずれか2つ、3つ、又は4つは、結合して、環状構造を形成し、R13、R14、R15、及びR16において前記環状構造の形成に関与しない基は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される。
【0037】
式(2)において、p’及びq’は、0以上6以下の整数であり;x’及びy’は、0以上の整数であり;p’及びq’は、0以上6以下の整数であり、p’及びq’は、同時に0ではなく;R’~R12’、R’、R’、R’、及びR’は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択され;R13’、R14’、R15’、及びR16’は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される;又はR13’、R14’、R15’、及びR16’のいずれか2つ、3つ、又は4つは、結合して、環状構造を形成し、R13’、R14’、R15’、及びR16’において前記環状構造の形成に関与しない基は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される。
【0038】
本出願の実装では、前述の基を置換できる原子又は原子基は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、及びチオール基を置換できる原子又は原子基であり;具体的に、例えば水素原子(重水素等)、ホウ素の同位体原子又は金属配位子であることができる。
【0039】
本出願の実装では、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であることができる。本出願の実装では、アルキル基は、炭素原子の量が1~20であるアルキル基であることができる。幾つかの実装では、アルキル基の炭素原子の量は、2~10である。幾つかの他の実装では、アルキル基の炭素原子の量は、8~20である。幾つかの他の実装では、アルキル基の炭素原子の量は、8~15である。アルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状構造を有するアルキル基であることができる。具体的には、アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基であることができる。アルキル基は、非置換アルキル基であることができる、又は置換アルキル基であることができる。本出願の実装では、アリール基は、炭素原子の量が6~20であるアリール基であることができる。更に、アリール基の炭素原子の量は、6~10であることができる。又は、アリール基の炭素原子の量は、7又は8であることができる。アリール基は、非置換アリール基であることができる、又は置換アリール基であることができる。本出願の実装では、アルコキシ基の炭素原子の量は、1~20であることができる。幾つかの実装では、アルコキシ基の炭素原子の量は2~10であることができる。幾つかの他の実装では、アルコキシ基の炭素原子の量は8~20である。幾つかの他の実装では、アルコキシ基の炭素原子の量は、8~15である。アルコキシ基は、直鎖、分岐鎖、又は環状構造を有するアルコキシ基であることができる。
【0040】
本出願の実装では、式(1)に示される繰り返し単位における置換基:R~R12、R、R、R、R、R13、R14、R15、及びR16、及び式(2)に示される繰り返し単位における置換基:R’~R12’、R’、R’、R’、R’、R13’、R14’、R15’、及びR16’は、実際の機能要件に応じて、具体的に選択されることができる。主鎖に6個以上の炭素原子を有する長鎖アルキル基を選択し、鎖セグメントの柔軟性を増加させ、ポリマーの機械的性質を調整し、内部応力を低減する。エステル基やアミノ基等の極性基を選択し、環状オレフィンポリマーと他のポリマーとの親和性を増加させ、環状オレフィンポリマーの結合性を向上させる。環状構造及びアリール基を含む置換基を選択し、材料の剛性及び耐熱性を向上させる。
【0041】
本出願の実装では、式(1)において、p及びqは、0以上6以下の整数である。式(2)において、p’及びq’は、0以上6以下の整数である。具体的には、p、q、p’、及びq’は、それぞれ0、1、2、3、4、5、又は6である。p、q、p’、q’の値を小さく制御すれば、脂肪族基鎖セグメントの長さを短く制御でき、脂肪族基鎖セグメントのスタッキングによる微結晶化を効果的に回避できる。これにより、ヘイズ、光透過率等における環状オレフィンポリマーの良好な光学的性質を得ることができる。本出願の幾つかの他の実装では、p=q=1である。本出願の幾つかの他の実装では、p+q=1である。本出願の幾つかの他の実装では、p=q=2である。本出願の幾つかの他の実装では、p=q=0である。同様に、本出願の幾つかの他の実装では、p’=q’=1である。本出願の幾つかの他の実装では、p’+q’=1である。本出願の幾つかの他の実装では、p’=q’=2である。本出願の幾つかの他の実装では、p’=q’=0である。本出願の実装では、p、q、p’、及びq’が0に等しい場合、対応する位置に単結合が存在する。
【0042】
本出願の幾つかの他の実装では、環状オレフィンポリマーは、式(1)に示される繰り返し単位のみを含み、pとqの両方が0に等しい。この場合、環状オレフィンポリマーは、二環構造とエチレンとの交互共重合の生成物に相当する。
【0043】
本出願の実装では、式(1)において、p及びqは、0以上6以下の整数であり、p及びqは、同時に0ではない。式(2)において、p’及びq’は、0以上6以下の整数であり、p’及びq’は、同時に0ではない。具体的には、p、q、p’、及びq’は、それぞれ、0、1、2、3、4、5、又は6であることができる。
【0044】
本出願の実装では、式(1)において、x及びyは、0以上の整数である。幾つかの実装では、xは、0以上3以下の整数である。幾つかの実装では、yは、0以上5以下の整数である。具体的には、xは、例えば、0又は1であることができ、yは、例えば、0、1、又は2であることができる。幾つかの実装では、x及びyは、いずれも0に等しい。幾つかの他の実装では、x及びyは、いずれも1に等しい。
【0045】
本出願の実装では、式(2)において、x’及びy’は、0以上の整数である。幾つかの実装では、x’は、0以上3以下の整数である。幾つかの実装では、y’は、0以上5以下の整数である。具体的には、x’は、例えば、0又は1であることができ、y’は、例えば、0、1、又は2であることができる。幾つかの実装では、x’及びy’は、いずれも0に等しい。幾つかの他の実装では、x’及びy’は、いずれも1に等しい。
【0046】
本出願の実装では、R13、R14、R15、及びR16の任意の2つ、3つ、又は4つを結合することによって形成される環状構造は、飽和又は不飽和炭素環、又は飽和又は不飽和ヘテロ環であることができる。ヘテロ環におけるヘテロ原子は、窒素、硫黄、酸素、ホウ素、ケイ素等であることができる。例えば、R13及びR15、R13及びR16、R14及びR15、又はR14及びR16は、結合して、環状構造を形成し、環状構造の形成に関与しない他の2つの基は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される。他の例として、R13、R14、及びR15は、結合して、環状構造を形成する。
【0047】
本出願の実装では、R13’、R14’、R15’、及びR16’の任意の2つ、3つ、又は4つを結合することによって形成される環状構造は、飽和又は不飽和炭素環、又は飽和又は不飽和ヘテロ環であることができる。ヘテロ環におけるヘテロ原子は、窒素、硫黄、酸素、ホウ素、ケイ素等であることができる。例えば、R13’及びR15’、R13’及びR16’、R14’及びR15’、又はR14’及びR16’は、結合して、環状構造を形成し、R13’、R14’、R15’、及びR16’において、環状構造の形成に関与しない他の2つの基は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される。他の例として、R13’、R14’、及びR15’は、結合して、環状構造を形成する。
【0048】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーは、環状オレフィンホモポリマーであることができる、又は環状オレフィンコポリマーであることができる。
【0049】
本出願の幾つかの他の実装では、環状オレフィンポリマーは、式(1)に示される繰り返し単位を含むが、式(2)に示される繰り返し単位を含まない。具体的には、環状オレフィンポリマーは、式(1)に示される1以上の異なる構造を含む繰り返し単位を含むことができる。本出願の幾つかの他の実装では、環状オレフィンポリマーは、式(2)に示される繰り返し単位を含むが、式(1)に示される繰り返し単位を含まない。同様に、環状オレフィンポリマーは、式(2)に示される1以上の異なる構造を含む繰り返し単位を含むことができる。
【0050】
本出願の幾つかの他の実装では、環状オレフィンポリマーは、式(1)に示される繰り返し単位及び式(2)に示される繰り返し単位の両方を含むことができ、具体的には、ROMPプロセス後に同じ環状オレフィンポリマーのモノマーに部分的な水素化を行うことによって得られることができる。式(1)に示される構造を有する繰り返し単位は、ROMPプロセス後に形成される。水素化後、式(1)に示される幾つかの繰り返し単位は、水素化され、式(2)に示される繰り返し単位を得る。2つの繰り返し単位の主要な構造は同じである。唯一の違いは、式(1)で示される脂肪族基鎖セグメントの不飽和炭素結合及び繰り返し単位における各置換基の不飽和炭素結合が、式(2)に示される繰り返し単位では飽和炭素結合であることである。他の置換基が不飽和炭素結合を含まない場合、式(1)に示される繰り返し単位と式(2)に示される繰り返し単位との違いは、脂肪族基鎖セグメントのみにある(即ち、オレフィン結合は水素化されているか、水素化されていない)。式(1)に示される繰り返し単位と式(2)に示される繰り返し単位との間で、対応する位置の置換基は完全に同じである。幾つかの実施形態では、環状オレフィンポリマーは、式(1)に示される繰り返し単位及び式(2)に示される繰り返し単位の両方を含む、又はROMPプロセス後に2つ以上の異なるモノマーに部分水素化を行うことによって得られることができる。この場合、環状オレフィンポリマーは、式(1)に示される複数の異なる構造を有する繰り返し単位と式(2)に示される複数の異なる構造を有する繰り返し単位の両方を含むことができる。
【0051】
本出願の幾つかの他の実装では、式(2)に示される繰り返し単位では、R’、R’、R’、及びR’は、水素原子である。この場合、式(2)に示される繰り返し単位の構造式は、式(5)に示される。
【化7】
【0052】
式(5)に示される繰り返し単位は、二環構造と、
【数1】

個のエチレンとの交互共重合の生成物と考えることができる。二環構造のモルパーセントは、以下:
【数2】

である。したがって、p’とq’の値を制御することで二環構造の相対含有量を調節することができ、ポリマーの剛性を調節することができる。
【0053】
本出願の本実装では、式(5)に示される繰り返し単位の構造式は、具体的には、式(A)~式(K)に示されることができる。
【化8】
【0054】
式(A)に示される繰り返し単位の二環構造のモルパーセントは50%である。式(C)、式(F)、式(G)、及び式(H)に示される繰り返し単位の二環構造のモルパーセントは40%である。式(B)、式(D)、式(I)、式(J)、及び式(K)に示される繰り返し単位の二環構造のモルパーセントは33%である。式(E)に示される繰り返し単位の二環構造のモルパーセントは25%である。
【0055】
環状オレフィンポリマーが式(5)に示される繰り返し単位のみを含む場合、環状オレフィンポリマーは、二環構造と、
【数3】

個のエチレンとの交互共重合の生成物と考えることができる(VAPプロセスにおけるポリマーと同様)。既存のROMP-水素化プロセスでは剛性な環状オレフィンモノマーと柔軟なα-オレフィンとの比率を調整できないという欠点を克服する。環状オレフィンポリマー中の二環構造の配列分布と相対含有量の両方を制御できる。したがって、環状オレフィンポリマーの熱力学的性質及び光学的性質の両方を調整する効果が得られる。
【0056】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーは、式(1)に示される繰り返し単位及び/又は式(2)に示される繰り返し単位のみを含むことができる、又は実際の特性要件に従って別の構造を有する繰り返し単位を含むこともできる。本出願の実装では、環状オレフィンポリマーにおいて、式(1)に示される構造式の繰り返し単位及び式(2)に示される構造式の繰り返し単位の合計質量パーセントが、50%以上である。具体的には、式(1)に示される構造式の繰り返し単位及び式(2)に示される構造式の繰り返し単位の合計質量パーセントは、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、及び100%であることができる。式(1)の繰り返し単位及び式(2)の繰り返し単位の合計質量パーセントが大きいほど、環状オレフィンポリマーの光学的性質(例えば、ヘイズ)が高いことを示す。幾つかの実装では、環状オレフィンポリマーにおける式(1)及び式(2)の2つの繰り返し単位の合計質量パーセントは、100%であることができる。具体的には、幾つかの実装では、環状オレフィンポリマーは、式(1)に示される繰り返し単位のみを含むことができる。幾つかの他の実装では、環状オレフィンポリマーは、式(2)に示される繰り返し単位のみを含むことができる。幾つかの他の実装では、環状オレフィンポリマーは、式(1)に示される繰り返し単位及び式(2)に示される繰り返し単位のみを含むことができる。
【0057】
本出願の幾つかの他の実装では、環状オレフィンポリマーは、式(3)に示される構造式の繰り返し単位を更に含む。
【化9】
【0058】
式(3)では、mは、0以上10以下の整数であり、A及びAは、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択され;A、A、A、及びAは、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される;又はA、A、A、及びAのいずれか2つ、3つ、又は4つは、結合して、環状構造を形成し、A、A、A、及びAにおいて前記環状構造の形成に関与しない基は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される。ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、又はチオール基等の置換基の具体的な選択範囲は、式(1)及び式(2)の置換基のものと同じであることができる。式(3)に示される繰り返し単位のモノマーを容易に得ることができる。シンプルな市販のモノマーを用いることで、環状オレフィンポリマーのコストを低減できる。更に、材料の剛性をある程度向上させ、機械的性質を両立させることができる。
【0059】
本出願の本実装では、式(3)において、mの値が大きいほど、得られる環状オレフィンポリマーのガラス転移温度が高く、内部応力が大きいことを示す。環状オレフィンポリマーが適切なガラス転移温度を得て、内部応力を低いレベルで制御し、成形性と加工性を向上させるために、本出願の本実施形態では、mの値の範囲を0~10の範囲内で制御する。本出願の幾つかの他の実装では、mは、0~5の整数である。具体的には、mは、0、1、2、3、4、又は5である。A、A、A、及びAのいずれか2つ、3つ、又は4つを結合することによって形成される環状構造は、飽和又は不飽和炭素環、又は飽和又は不飽和ヘテロ環であることができる。ヘテロ環におけるヘテロ原子は、窒素、硫黄、酸素、ホウ素、ケイ素等であることができる。
【0060】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーでは、式(3)に示される構造式の繰り返し単位の質量パーセントが、50%以下である。具体的には、環状オレフィンポリマーでは、式(3)に示される構造式の繰り返し単位の質量パーセントは、50%、40%、30%、20%、10%、及び5%であることができるが、これらに限定されない。
【0061】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーの重量平均分子量は、10000~200000である。分子量が大きいほど機械的性質が良く、材料の強度が高いことを示す。しかしながら、この場合、加工の難易度が高くなり、溶融状態では粘度が高くなる。これは加工や成形に不利である。分子量が小さいと加工が容易であり、成形の歩留まりが高い。機械的性質と成形性のバランスを取るために、本出願の幾つかの他の実装では、環状オレフィンポリマーの重量平均分子量を30000~60000内に制御する。
【0062】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーの屈折率は、1.53~1.58であり、具体的には、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、又は1.58であることができる。環状オレフィンポリマーは、高い屈折率を有する。光学レンズを環状オレフィンポリマーで作ると、光学レンズのレンズ厚みを薄くすることができる。環状オレフィンポリマーの屈折率は、ASTM D542試験規格に従って、試験されることができる。
【0063】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーのアッベ数は53以上である。具体的には、アッベ数は、例えば、53、54、55、56、又は57であることができる。アッベ数は、透明材料の分散能力の指標を示す。アッベ数が低いほど分散が大きいことを示す。アッベ数が適切であれば、材料の分散現象を低いレベルまで制御できることを示す。
【0064】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーのヘイズは、0.2%未満である。ヘイズ、即ち、かすみ(haziness)は、材料の通過光束に対する材料の散乱光束の割合として定義される。ヘイズは、透明な材料又は半透明の材料の不明瞭さ又はかすみの程度を測定するために使用されることができ、散乱を示す指標である。ヘイズは、材料の内部又は材料の外部表面での光の散乱による曇りの外観又はかすみの外観によって発生される。低いヘイズを基に、光学レンズを環状オレフィンポリマーで作ると、光学レンズの視覚効果を向上することができる。本出願の幾つかの他の実装では、環状オレフィンポリマーのヘイズは、0.1%未満である。本出願の幾つかの他の実装では、環状オレフィンポリマーのヘイズは、0.05%未満である。
【0065】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーの可視透過率は、90%以上である。本出願の幾つかの他の実装では、環状オレフィンポリマーの透過率は、92%以上である。本出願の幾つかの他の実装では、環状オレフィンポリマーの透過率は、95%以上である。
【0066】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーのガラス転移温度は、100℃超である。具体的には、ガラス転移温度は、100℃超160℃以下であることができる。より具体的には、ガラス転移温度は、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、又は160℃であることができる。環状オレフィンポリマーは、適切なガラス転移温度を有し、環状オレフィンポリマー材料の成形性及び加工性を改善する。
【0067】
本出願の本実装では、環状オレフィンポリマーは、優れた機械的特性を更に有する。
【0068】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーの引張強さは、30MPa以上である。具体的には、引張強さは、例えば、30MPa~150MPaであることができる。引張強さは、最大均一塑性変形における材料の応力を示す。引張試験では、サンプルが壊れる前のサンプルの最大引張応力は引張強さである。引張強さが大きいほど、材料の耐損傷性が強いことを示す。
【0069】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーの破断時の伸び率は6%以上である。具体的には、破断時の伸び率は、例えば、6%から15%であることができる。破断時の伸び率は、引張速度を示す。外力によって材料が伸びて破断する場合、伸長前の長さに対する伸長後の伸び長さの比を破断時の伸び率という。破断時の伸び率が大きいということは、材料が、高い靭性、低い脆性、小さい内部応力を有するので、射出成形を容易にすることを示す。
【0070】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーの曲げ弾性率は、2000MPa超である。曲げ弾性率は、曲げひずみに対する曲げ応力の比率である。
【0071】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーの曲げ強さは、40MPa以上である。具体的には、曲げ強さは、例えば、40MPa~120MPaであることができる。曲げ強さは、材料が曲げられて破壊される前、又は材料が指定された曲げモーメントに達したときに、材料が耐えられる最大応力を示す。この応力は、曲げ時の最大正応力である。曲げ強さは、材料の曲げ抵抗能力を反映し、材料の屈曲性を測定するために使用されることができる。曲げ強さが大きいほど、材料の曲げ抵抗能力が強いことを示す。
【0072】
本出願の本実装では、環状オレフィンポリマーのヘイズ及び光透過率は、ASTM D1003試験規格に従って試験される。環状オレフィンポリマーの引張強さ及び破断時の伸び率は、ASTM D638試験規格に従って試験される。環状オレフィンポリマーの曲げ強さは、ASTM D790試験規格に従って試験される。曲げ弾性率は、ASTM D256試験規格に従って試験される。
【0073】
以上のことから、本出願の本実施形態で提供される環状オレフィンポリマーは、優れた光学的性質及び優れた機械的特性の両方を有し、優れた加工性及び優れた成形性を有することが分かることができる。
【0074】
対応して、本出願の実施形態は、環状オレフィンポリマーのモノマーを更に提供する。環状オレフィンポリマーのモノマーの化学構造式は、式(4)に示される。
【化10】
【0075】
式(4)では、p及びqは、0以上6以下の整数であり;x及びyは、0以上の整数であり;p及びqは、0以上6以下の整数であり、p及びqは、同時に0ではなく;R~R12、R、R、R、及びRは、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択され;R13、R14、R15、及びR16は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される;又はR13、R14、R15、及びR16のいずれか2つ、3つ、又は4つは、結合して、環状構造を形成し、R13、R14、R15、及びR16において前記環状構造の形成に関与しない基は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される。
【0076】
本出願の本実装では、環状オレフィンポリマーのモノマーにおける置換基:R~R12、R、R、R、R、R13、R14、R15、及びR16は、実際の機能要件に応じて、具体的に選択されることができる。異なる性質を有する環状オレフィンポリマーは、環状オレフィンポリマーのモノマーにおける異なる位置に異なる置換基を導入してポリマーを修飾することによって、得られることができる。
【0077】
本出願の実装では、前述の基を置換できる原子又は原子基は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、及びチオール基を置換できる原子又は原子基であり;具体的に、例えば水素原子(重水素等)、ホウ素の同位体原子又は金属配位子であることができる。
【0078】
本出願の実装では、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であることができる。本出願の実装では、アルキル基は、炭素原子の量が1~20であるアルキル基であることができる。幾つかの実装では、アルキル基の炭素原子の量は、2~10である。幾つかの他の実装では、アルキル基の炭素原子の量は、8~20である。幾つかの他の実装では、アルキル基の炭素原子の量は、8~15である。アルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状構造を有するアルキル基であることができる。具体的には、アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基であることができる。アルキル基は、非置換アルキル基であることができる、又は置換アルキル基であることができる。本出願の実装では、アリール基は、炭素原子の量が6~20であるアリール基であることができる。更に、アリール基の炭素原子の量は、6~10であることができる。又は、アリール基の炭素原子の量は、7又は8であることができる。アリール基は、非置換アリール基であることができる、又は置換アリール基であることができる。本出願の実装では、アルコキシ基の炭素原子の量は、1~20であることができる。幾つかの実装では、アルコキシ基の炭素原子の量は2~10であることができる。幾つかの他の実装では、アルコキシ基の炭素原子の量は8~20である。幾つかの他の実装では、アルコキシ基の炭素原子の量は、8~15である。アルコキシ基は、直鎖、分岐鎖、又は環状構造を有するアルコキシ基であることができる。
【0079】
本出願の実装では、式(4)において、p及びqは、0以上6以下の整数である。具体的には、p及びqは、それぞれ、0、1、2、3、4、5、又は6であることができる。ここでは、p及びqは、同時に0であることができる。本出願の幾つかの他の実装では、p=q=1である、即ち、オレフィン結合が位置される環状構造は、6員環構造である。本出願の幾つかの他の実装では、p+q=1である、即ち、オレフィン結合が位置される環状構造は、5員環構造である。本出願の幾つかの他の実装では、p=q=2である、即ち、オレフィン結合が位置される環状構造は、8員環構造である。
【0080】
本出願の実装では、式(4)において、p及びqは、0以上6以下の整数であり、p及びqは、同時に0ではない。具体的には、p及びqは、それぞれ、0、1、2、3、4、5、又は6であることができる。本出願の幾つかの他の実装では、p=q=1である、即ち、対応する環状構造は、6員環構造である。本出願の幾つかの他の実装では、p+q=1である、即ち、対応する環状構造は、5員環構造である。本出願の幾つかの他の実装では、p=q=2、即ち、対応する環状構造は、8員環構造である。
【0081】
本出願の実装では、p、q、p、及びqが0に等しい場合、対応する位置に単結合が存在する。
【0082】
本出願の実装では、式(4)において、x及びyは、0以上の整数である。幾つかの実装では、xは、0以上3以下の整数である。幾つかの実装では、yは、0以上5以下の整数である。具体的には、xは、例えば、0又は1であることができ、yは、例えば、0、1、又は2であることができる。幾つかの実装では、x及びyは、いずれも0に等しい。幾つかの他の実装では、x及びyは、いずれも1に等しい。
【0083】
本出願の実装では、R13、R14、R15、及びR16のいずれか2つ、3つ、又は4つは、結合することによって形成される環状構造は、飽和又は不飽和炭素環、又は飽和又は不飽和ヘテロ環であることができる。ヘテロ環におけるヘテロ原子は、窒素、硫黄、酸素、ホウ素、ケイ素等であることができる。例えば、R13及びR15、R13及びR16、R14及びR15、又はR14及びR16は、結合して、環状構造を形成し、環状構造の形成に関与しない他の2つの基は、別々に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミノ基、チオール基、及び前述の基を置換できる原子又は原子基から選択される。
【0084】
本出願の本実施形態で提供される環状オレフィンポリマーのモノマーは、飽和二環構造及び不飽和二重結合を有する脂肪族環状構造の両方を含む。本出願の本実施形態における式(1)に示される繰り返し単位及び/又は式(2)に示される繰り返し単位を含む環状オレフィンポリマーは、環状オレフィンポリマーのモノマーに行われるROMPプロセス又はROMP-水素化プロセスによって、調製されることができる。プロセスを式(a)に示す。ROMP-重合反応プロセスでは、剛性な二環構造がポリマー構造中に保持され、不飽和二重結合を有する脂肪族環状構造が開かれ、柔軟な脂肪族基鎖セグメントを形成する。水素化プロセスでは、不飽和二重結合が飽和炭素結合に変わる。
【化11】
【0085】
水素化プロセスで、置換基:R~R12、R、R、R、R、R13、R14、R15、及びR16における不飽和炭素結合も飽和炭素結合に変わることができることに注意すべきである。したがって、式(a)に示される水素化前後の環状オレフィンポリマーの繰り返し単位において、対応する位置の置換基:R~R12、R、R、R、R、R13、R14、R15、及びR16は、R’~R12’、R’、R’、R’、R’、R13’、R14’、R15’、及びR16’と同一でも異なっていてもよいと理解すべきである。モノマー中の置換基が不飽和炭素結合を含む場合、水素化後に不飽和炭素結合が部分的又は完全に飽和炭素結合に変化することができる。
【0086】
本出願の本実施形態で提供される新しい環状オレフィンポリマーのモノマーは、不飽和脂肪族環状構造及び飽和二環構造の両方を含む。モノマーに行われる重合によって、環状オレフィンポリマーを調製する場合、環状オレフィンポリマー中の剛性な二環構造及び柔軟な脂肪族基鎖セグメントの相対含有量及び配列分布を同時に制御し、剛性な二環構造及び特定の長さの脂肪族基鎖セグメントが交互に配列された状オレフィンポリマーを得ることができる。このように、環状オレフィンポリマーの熱力学的性質及び光学的性質を同時に制御し、優れた熱力学的性質及び優れた光学的性質の両方を有する環状オレフィンポリマーが得られる。
【0087】
本出願の具体的な実装では、環状オレフィンポリマーのモノマーの構造式は、式(6)に示され、不飽和シクロヘキセン構造及び飽和ジメタノオクタヒドロナフタレン構造を含む。
【化12】
【0088】
ROMP-水素化プロセス後、式(6)に示される環状オレフィンポリマーのモノマーにおいて、ポリマー中のジメタノオクタヒドロナフタレンとC4鎖セグメントとの交互共重合構造が得られ、得られる環状オレフィンポリマーは、ジメタノオクタヒドロナフタレンと2つのエチレンとの交互共重合の生成物に相当する。
【0089】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーのモノマーを調製するために使用される主な原料は、エチレン、ノルボルネン、シクロペンタジエン、ブタジエン、脂環式ジオレフィン、α-置換オレフィン、プロピオル酸メチル、アクリレート等を含むが、これらに限定されない。
【0090】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーのモノマーは、主にディールス・アルダー反応([4+2]環状付加反応)によって合成されることができる。確実に、環状オレフィンポリマーのモノマーには、他の既存のよく知られた方法を使用することもできる。
【0091】
本出願の実装では、環状オレフィンポリマーのモノマーにROMP重合反応を行うと、不活性雰囲気中でROMP重合反応が発生する。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が選択されることができる。重合反応系は、主に環状オレフィンモノマー、触媒、溶媒、停止剤を含む。本出願では、環状オレフィンモノマーには、前述の環状オレフィンポリマーのモノマーを含む。或いは、他の環状オレフィンモノマー、例えばノルボルネンとその誘導体、又は脂環式オレフィンを共重合に選択することもできる。触媒は、W化合物、Ru化合物、Mo化合物、Re化合物、V化合物等の1つ以上であることができる。Ru化合物は、グラブス触媒等であることができ、例えば、第一世代触媒:ベンジリデン-ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウムであることができる、又は第二世代触媒:(1,3-ビス-(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン)ジクロロ(o-イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムであることができる。Mo化合物は、シュロック触媒、MoO、MoCl等であることができる。W化合物は、WCl、WOCl、W(CO)等であることができる。Re化合物は、ReCl、Re、ReOCl等であることができる。V化合物は、VCl、VOCl、V等であることができる。溶媒は、全ての反応物及び生成されたポリマーを溶解できる一般的な有機溶媒であることができ、例えば、分岐鎖アルカン、シクロアルカン、芳香族炭化水素(ベンゼン及びトルエン等)、塩素化パラフィン(ジクロロメタン、クロロブタン、及び、ブロモヘキサン等)、飽和カルボン酸塩(酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、及びプロピオン酸メチル等)、エーテル(ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、及び1,1-ジメトキシエタン等)等の1つ以上の溶媒であることができる。本出願の幾つかの他の実装では、溶媒は、前述の環状オレフィンモノマー、触媒、及び生成された環状オレフィンポリマーを溶解できるシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン等の芳香族炭化水素、又は複数の溶媒の混合物である。停止剤の主な機能は2つある。1つは、ポリマーの鎖セグメントの末端から遷移金属を選択的に除去し、反応を終了させることである。もう1つは、鎖セグメントの末端に特定の官能基を導入することである。本出願で選択される停止剤は、ビニルエーテル化合物であることができる。
【0092】
本出願の実装では、ROMP反応系における環状オレフィンモノマーの質量濃度は2wt%~20wt%であることができ、更に5wt%~15wt%であることができる。触媒のモル数に対する環状オレフィンモノマーの総モル数の比は、500/1超であることができ、更に1000/1超であることができる。ROMPの反応温度は、25℃~180℃であることができ、更に40℃~100℃であることができる。反応時間は、実際の要求に応じて設定されることができ、具体的には、0.1時間~10時間であることができ、更に0.1時間から5時間であることができ、更に0.1時間~3時間であることができる。
【0093】
本出願の実装では、ROMP重合反応後に得られる不飽和ポリマーの水素化工程にもよく知られた方法を用いることができる。本出願の実装では、不飽和ポリマーの水素化率は80%超である。本出願の幾つかの他の実装では、水素化速度は90%超であり、更に95%超であり、更に99%超である。
【0094】
本出願の実装では、式(A)~式(E)に示される繰り返し単位を含む環状オレフィンポリマーを調製する調製プロセスは、以下であることができる。
【化13】
【0095】
本出願の実装では、2以上の異なる構造を有する環状オレフィンポリマーのモノマーを共重合し、環状オレフィンポリマーを得ることができる。本出願の具体的な実装では、2つの異なる構造を有する環状オレフィンポリマーのモノマーを共重合し、環状オレフィンポリマーを得る。化学方程式は、式(b)に示される。
【化14】
【0096】
本明細書では、k及びpは、重合度を表し、rは、ランダム共重合を表す。更に、k:pは、1:4~4:1の範囲であることができる。材料の機械的性質及び耐熱性は、k:pの比率を調整することで制御されることができる。具体的には、k:pは、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、又は4:1であることができる。
【0097】
本出願の本実施形態で提供される環状オレフィンポリマーは、優れた機械的特性及び優れた光学的性質、並びに優れた加工性及び優れた成形性の両方を有する。環状オレフィンポリマーを使用して、様々な光学材料を調製することができる。本出願の実施形態は、本出願の実施形態における前述の環状オレフィンポリマーを含む光学材料を更に提供する。
【0098】
本出願の実装では、光学材料は、添加剤を更に含むことができる。添加剤は、抗酸化剤、可塑剤、抗劣化剤、及び熱安定剤の1つ以上を含むことができ;充填剤、染料、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、及び抗菌剤の1つ以上を更に含むことができる。確実に、光学材料は、更に別のポリマーを含むことができる。他のポリマーは、本出願の実施形態のものとは異なる他の環状オレフィンポリマーであることができ、又は非環状オレフィンポリマーであることもできる。具体的には、必要に応じて適切な量のポリマーを添加することができる。
【0099】
本出願の実装では、光学材料において、本出願の本実施形態における環状オレフィンポリマーの質量パーセントは、60%以上である。具体的には、光学材料において、本出願の本実施形態における環状オレフィンポリマーの質量パーセントは、60%、70%、80%、又は90%である。
【0100】
本出願の実施形態は、光学製品を更に提供する。光学製品は、本出願の実施形態において前述の環状オレフィンポリマーを含む、又は本出願の実施形態において前述の光学材料を含む。前述の環状オレフィンポリマー又は光学材料を加工し、様々な既知の成形方法を使用して光学製品を得ることができる。光学製品は、前述の環状オレフィンポリマー又は光学材料を加工することによって部分的に得られることができる、又は前述の環状オレフィンポリマー又は光学材料を加工することによって完全に得られることもできる。
【0101】
本出願の実装では、光学製品は、具体的には、光学レンズ、光学フィルム、光ディスク、導光板、又は表示パネルを含むことができる。
【0102】
本出願の実装では、光学レンズは、具体的には、眼鏡レンズ、カメラレンズ、センサーレンズ、照明レンズ、撮像レンズ等を含むことができる。カメラレンズは、具体的には、携帯電話カメラレンズ、ノートパソコンカメラレンズ、デスクトップカメラレンズ、車両カメラレンズ等であることができる。メガネレンズは、近視用眼鏡のレンズ、老眼用眼鏡のレンズ、サングラスのレンズ、コンタクトレンズの補正レンズ、ゴーグルのレンズ等を含むことができる。センサーレンズは、動作検出器レンズ、近接センサーレンズ、姿勢制御レンズ、赤外線センサーレンズ等であることができる。照明レンズは、屋内照明レンズ、屋外照明レンズ、車両ヘッドライトレンズ、車両フォグライトレンズ、車両テールライトレンズ、車両走行灯レンズ、車両フォグライトレンズ、車両内部レンズ、発光ダイオード(LED)レンズ、有機発光ダイオード(OLED)レンズ等であることができる。撮像レンズは、スキャナーレンズ、プロジェクターレンズ、望遠鏡レンズ、顕微鏡レンズ、拡大鏡レンズ等であることができる。
【0103】
本出願の実装では、光学フィルムは、導光フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、拡散フィルム、光フィルタフィルム、偏光フィルム、光分割(light splitting)フィルム、位相フィルム等を含むことができる。光学フィルムは、ディスプレイ分野、照明分野等で使用されることができる。例えば、光学フィルムを液晶基板のフィルムとして使用されることができる。
【0104】
本出願の実施形態は、本出願の実施形態における前述の光学製品を含む装置を更に提供する。装置は、具体的には、モバイル端末、眼鏡、カメラ、車両(たとえば、自動車、オートバイ、電車等)、照明装置(例えば、電気スタンド、天井灯、街灯等)、撮像装置(例えば、顕微鏡、望遠鏡、プロジェクター、又はスキャナー)等を含むことができる。モバイル端末は、具体的には、無線通信機能を備えた様々な携帯用装置(様々な携帯電話、タブレットコンピュータ、モバイルノートパソコン、及びネットブック等)、ウェアラブル装置(スマートウォッチ等)、又は無線モデムに接続されたその他の処理デバイス、及び様々な形態のユーザ機器(user equipment、UE)、移動局(mobile station、MS)、端末装置(terminal device)等を含むことができる。
【0105】
本出願の特定の実施形態では、装置は携帯端末であり、携帯端末はカメラモジュールを含み、カメラモジュールはカメラレンズを含み、カメラレンズは、本出願の実施形態における前述の環状オレフィンポリマーを使用して調製される。
【0106】
本出願の特定の実施形態では、装置は車両であり、車両はカメラモジュールを含み、カメラモジュールはカメラレンズを含み、カメラレンズは、本出願の実施形態における前述の環状オレフィンポリマーを使用して調製される。
【0107】
以下、本出願の実施形態を複数の実施形態を通して更に記載する。
実施形態1
【0108】
環状オレフィンポリマーを調製する方法は、以下の工程を含む。
【0109】
(1)ジシクロペンタジエンをフラスコに入れ、210℃で減圧蒸留を行い、留分を回収し、シクロペンタジエンを得る。モル比1:1.1で、ノルボルネン及びシクロペンタジエンをフラスコに入れ、200℃で10時間加熱・撹拌し、減圧蒸留によりテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、TCD)を得る。本プロセスを化学方程式3に示す。
【0110】
(2)TCD、4-メチルベンゼンメタノール(1wt%)、ブタジエン(ブタジエンに対するノルボルネンのモル比は1:1.2である)をフラスコに入れ、250℃で10時間加熱・撹拌し、減圧蒸留によりペンタシクロ[6.6.1.110,13.02,7.09,14]-ヘキサデカ-4-エン(ペンタシクロ[6.6.1.110,13.02,7.09,14]-ヘキサデカ-4-エン、PCH)を得る。本プロセスを化学方程式3に示す。
【化15】
【0111】
(3)丸底フラスコでPCHをトルエンに溶解し、グラブス触媒(0.5wt%)を添加し、フラスコ内の空気を窒素で置換し、反応系を窒素雰囲気に保つ。室温で2時間反応が進行した後、過剰のエチルビニルエーテルを添加し、更に室温で20分間撹拌する。
【0112】
後処理:メタノールに反応液を徐々に滴下して再沈殿させ、沈殿物を得て、沈殿物を3回メタノールで溶出させ、40℃の真空オーブンで一晩乾燥を行い、不飽和環状オレフィンポリマーを得る。
【0113】
(4)水素化:モル比1:5:5.5で、不飽和環状オレフィンポリマー、p-トルエンスルホニルヒドラジド、及びトリプロピルアミンを丸底フラスコに添加し、少量のブチルヒドロキシトルエンを添加し、フラスコ内の空気を窒素で置換し、窒素雰囲気中で特定量のトルエンを添加する。再蒸留のために、反応系を110℃で6時間撹拌・加熱する。反応後の混合溶液を更にメタノール中で沈殿させ、濾過により白色の固体を得る。白色固体を脱イオン水で洗浄した後、高温のトルエンに溶解する。その後、トルエン中で再沈殿を行う。上記の濾過、溶解、再沈殿の工程を2回繰り返す。濾過後に得られた白色固体を50℃の真空オーブンで24時間乾燥し、得られた固体は飽和環状オレフィンポリマーである。本プロセスを化学方程式4に示す。
【化16】
【0114】
本出願の実施形態1で得られた環状オレフィンポリマーは、ジメタノオクタヒドロナフタレンと2つのエチレン分子との交互共重合の生成物に相当する。ジメタノオクタヒドロナフタレンのモルパーセントは33%である。環状オレフィンポリマーの重量平均分子量Mwは、50000である。PDI(高分子分散指数(Polymer dispersity index)、高分子分散指数(polymer dispersion index))は2.0である。環状オレフィンポリマーは、優れた射出成形性を有する。ここでは、Tgは約135℃である。得られた射出成形部品は、内部応力が低い。更に、環状オレフィンポリマーは、優れた光学的性質を有する(可視透過率が90%超であり、屈折率が1.53~1.5であり、アッベ数が56であり、ヘイズが0.1%未満である)。更に、環状オレフィンポリマー材料は、優れた機械的特性を更に有する。引張強さが60MPaであり、破断時の伸び率が7%であり、曲げ強さが100MPaであり、曲げ弾性率が2900MPaである。
実施形態2
【0115】
(1)ジシクロペンタジエンをフラスコに入れ、210℃で減圧蒸留を行い、留分を回収し、シクロペンタジエンを得る。1,4-シクロヘキサジエン及びシクロペンタジエン(1.1当量)を比率に従ってフラスコに入れ、200℃で10時間加熱し、減圧蒸留によりトリシクロ[4.4.0.12,5]-ウンデカ-3,8-ジエン(トリシクロ[4.4.0.12,5]-ウンデカ-3,8-ジエン、TCUD)を得る。
【0116】
(2)TCUDE及びシクロペンタジエン(モル比は1:1.2である)、並びに4-メチルベンゼンメタノール(1wt%)を比率に従ってフラスコに入れ、200℃で10時間加熱を行い、減圧蒸留によりペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-ヘキサデカ-4,11-ジエン(ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-ヘキサデカ-4,11-ジエン、PCHD)を得る。
【0117】
(3)250mLの丸底フラスコにおいて、PCHDをシクロヘキサンに溶解し、触媒(Pd-B/γ-Al非晶質混合物、1wt%)を添加する。反応系における空気を窒素で置換した後、水素が反応系に入り、水素圧を1.5MPaで維持する。反応系を110℃で4時間激しく撹拌した後、減圧蒸留により純粋なペンタシクロ[6.6.1.110,13.02,7.09,14]-ヘキサデカ-4-エン(ペンタシクロ[6.6.1.110,13.02,7.09,14]-ヘキサデカ-4-エン、PCH)を得る。本プロセスを化学方程式5に示す。その後の凝集工程は、実施形態1のものと同様である。詳細はここでは再度説明しない。
【化17】
【0118】
本出願の実施形態2で得られた環状オレフィンポリマーは、実施形態1のものと同じである。
実施形態3
【0119】
(1)ジシクロペンタジエンをフラスコに入れ、210℃で減圧蒸留を行い、留分を回収し、シクロペンタジエンを得る。1:2.2のモル比に従って、1,5-シクロオクタジエン及びシクロペンタジエンをフラスコに添加し、4-メチルベンゼンメタノール(1wt%)を添加し、200℃で10時間加熱を行い、減圧蒸留によりペンタシクロ[8.6.1.112,15.02,9.011,16]-オクタデカ-5,13-ジエン(ペンタシクロ[8.6.1.112,15.02,9.011,16]-オクタデカ-5,13-ジエン、PCOD)を得る。
【0120】
(2)250mLの丸底フラスコにおいて、PCODをシクロヘキサンに溶解し、触媒(Pd-B/γ-Al非晶質混合物、1wt%)を添加する。反応系における空気を窒素で置換した後、水素が反応系に入り、水素圧を1.5MPaで維持する。反応系を110℃で4時間激しく撹拌した後、減圧蒸留により純粋なペンタシクロ[8.6.1.112,15.02,9.011,16]-オクタデカ-5-エン(ペンタシクロ[8.6.1.112,15.02,9.011,16]-オクタデカ-5-エン、PCO)を得る。本プロセスを化学方程式6に示す。その後のPCOの重合、水素化、及び後処理工程は、実施形態1のものと同様である。
【化18】
【0121】
本出願の本実施形態で得られた環状オレフィンポリマーは、ジメタノオクタヒドロナフタレンと3つのエチレン分子との交互共重合の生成物に相当する。ジメタノオクタヒドロナフタレンのモルパーセントは25%である。環状オレフィンポリマーの重量平均分子量Mwは48000である。PDIは1.8である。環状オレフィンポリマーは、優れた射出成形性を有する。ここでは、Tgは約130℃である。得られた射出成形部品は、内部応力が低い。更に、環状オレフィンポリマーは、優れた光学的性質を有する(可視透過率が90%超であり、屈折率が1.53~1.55であり、アッベ数が55であり、ヘイズが0.2%未満である)。更に、環状オレフィンポリマー材料は、優れた機械的特性を更に有する。引張強さが57MPaであり、破断時の伸び率が8%であり、曲げ強さが88MPaであり、曲げ弾性率が2800MPaである。
実施形態4
【0122】
(1)250mLの丸底フラスコにおいて、ジシクロペンタジエンをシクロヘキサンに溶解し、触媒(Pd-B/γ-Al非晶質混合物、1wt%)を添加する。反応系における空気を窒素で置換した後、水素が反応系に入り、水素圧を1.5MPaで維持する。反応系を110℃で4時間激しく撹拌した後、減圧蒸留により純粋なトリシクロ[4.3.0.12,5]-デカ-7-エン(トリシクロ[4.3.0.12,5]-デカ-7-エン、TCDE)を得た。本プロセスを化学方程式7に示す。その後のTCDEの重合、水素化、及び後処理工程は、実施形態1のものと同様である。
【化19】
【0123】
本出願の本実施形態で得られた環状オレフィンポリマーは、ノルボルネンと1.5個のエチレン分子との交互共重合の生成物に相当する。ノルボルネンのモルパーセントは、40%である。環状オレフィンポリマーの重量平均分子量Mwは、44000である。PDIは2.0である。環状オレフィンポリマーは、優れた射出成形性を有する。ここでは、Tgは、約125℃である。得られた射出成形部品は、内部応力が低い。更に、環状オレフィンポリマーは、優れた光学的性質を有する(可視透過率が90%超であり、屈折率が1.53~1.55であり、アッベ数が54であり、ヘイズが0.1%未満である)。更に、環状オレフィンポリマー材料は、優れた機械的特性を更に有する。引張強さは52MPaであり、破断時の伸び率は12%であり、曲げ強さは70MPaであり、曲げ弾性率は2100MPaである。
実施形態5
【0124】
(1)ジシクロペンタジエンをフラスコに入れ、210℃で減圧蒸留を行い、留分を回収し、シクロペンタジエンを得る。1:1.1のモル比に従って、ジシクロペンタジエン及びシクロペンタジエンをフラスコに添加し、200℃で10時間加熱を行い、減圧蒸留によりペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-ペンタデカ-4,10-ジエン(ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-ペンタデカ-4,10-ジエン、PCPD)を得る。
【0125】
(2)250mLの丸底フラスコにおいて、PCPDをシクロヘキサンに溶解し、触媒(Pd-B/γ-Al非晶質混合物、1wt%)を添加する。反応系における空気を窒素で置換した後、水素が反応系に入り、水素圧を1.5MPaで維持する。反応系を110℃で4時間激しく撹拌した後、減圧蒸留により純粋なペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-ペンタデカ-10-エン(ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-ペンタデカ-10-エン、PCP)を得る。本プロセスを化学方程式8に示す。その後のPCPの重合、水素化、及び後処理工程は、実施形態1のものと同様である。
【化20】
【0126】
本出願の本実施形態で得られた環状オレフィンポリマーは、ジメタノオクタヒドロナフタレンと1.5個のエチレン分子との交互共重合の生成物に相当する。ジメタノオクタヒドロナフタレンのモルパーセントは40%である。環状オレフィンポリマーの重量平均分子量Mwは60000である。PDIは2.4である。環状オレフィンポリマーは、高いTgを有する。ここでは、Tgは約160℃である。更に、環状オレフィンポリマーは、優れた光学的性質を有する(可視透過率が90%超であり、屈折率が1.53~1.5であり、アッベ数が56であり、ヘイズが0.1%未満である)。更に、環状オレフィンポリマー材料は、優れた機械的特性を更に有する。引張強さは82MPaであり、破断時の伸び率は6%であり、曲げ強さは137MPaであり、曲げ弾性率は3300MPaである。
実施形態6
【0127】
化学方程式9に示されるように、TCDE及びPCPを特定の比率(モル比TCDE/PCPは1/9~9/1に等しい)で250mLの丸底フラスコに入れ、トルエンを添加し、TCDEとPCPを溶かした後、グラブス触媒(登録商標)M102(0.5wt%)を添加する。フラスコ内の空気を窒素で置換し、反応系を窒素雰囲気にする。室温で2時間反応が進行した後、過剰のエチルビニルエーテルを添加し、更に室温で20分間撹拌する。その後、ポリマーの後処理及び水素化プロセスは、実施例1ものと同様である。
【化21】
【0128】
本出願の本実施形態で得られた環状オレフィンポリマーは、ジメタノオクタヒドロナフタレン、ノルボルネン、及び1.5個のエチレン分子との交互共重合の生成物に相当する。ジメタノオクタヒドロナフタレン及びノルボルネンの合計モルパーセントは40%である。環状オレフィンポリマーの重量平均分子量Mwは42000~65000である。PDIは1.9~2.5である。環状オレフィンポリマー材料は優れた光学的性質を有する(可視透過率が90%超であり、屈折率が1.53~1.55であり、アッベ数が54~56であり、ヘイズが0.1%未満である)。2種類の環状オレフィンモノマーの比率を調整する。具体的には、pに対するkの比率を制御すると、ポリマーのTgを125℃~160℃の範囲内で調節することができる。更に、環状オレフィンポリマー材料は、優れた機械的特性を更に有する。引張強さは52MPa~82MPaであり、破断時の伸び率は6%~12%であり、曲げ強さは70MPa~137MPaであり、曲げ弾性率は2100MPa~3300MPaである。
【0129】
本出願の本実施形態で得られる環状オレフィンポリマーにおいては、環状オレフィンポリマー中の剛性な二環構造及び柔軟な脂肪族基鎖セグメントの相対含有量と配列分布を同時に調節することができる。優れた光学的性質が得られると、材料の内部応力が低減され、機械的特性を調節することができ、良好な加工性と良好な成形性が実現される。