(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】配線基板の補修方法および配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/22 20060101AFI20250326BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20250326BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
H05K3/22 A
H05K3/28 B
H05K3/46 V
(21)【出願番号】P 2020190148
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安達 貴良
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-99283(JP,A)
【文献】特開2005-166750(JP,A)
【文献】特開2016-72362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0341077(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板の補修方法であって、
配線パターンの欠落箇所を検出する工程と、
前記欠落箇所を含む配線パターンの周囲に前記配線パターンの厚さより高い樹脂の土手を形成する工程と、
前記欠落箇所の基材の表面にレーザ光を照射して基材の凹部を形成する工程と、
前記基材の凹部の上の前記樹脂の土手の間に導電性ペーストを塗布して前記導電性ペーストと前記配線パターンを導通させる工程と、
前記樹脂の土手の間に塗布した前記導電性ペーストを硬化させる工程
と、
前記樹脂の土手と前記導電性ペーストを研磨する工程を有することを特徴とする配線基板の補修方法。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板の補修方法であって、前記導電性ペーストは、銅の微粒子を含むことを特徴とする配線基板の補修方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の配線基板の補修方法であって、前記基材の凹部の深さが4μm以下であることを特徴とする配線基板の補修方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の配線基板の補修方法であって、前記欠落箇所を検出する工程が、前記欠落箇所の前記配線パターンの欠落形状データを作成する工程を有し、
前記基材の凹部を形成する工程が、前記欠落形状データの指定する形の基材の表面にレーザ光を走査して照射することで前記基材の凹部を形成する工程を有し、
前記導電性ペーストを塗布して前記導電性ペーストと前記配線パターンを導通させる工程が、前記欠落形状データの指定する形の前記基材の凹部の上の前記樹脂の土手の間に前記導電性ペーストを塗布する工程を有する
ことを特徴とする配線基板の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の配線パターンの補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器で用いられる配線基板は、絶縁性樹脂層の表面に導電性の材料の配線を配設したものである。さらに、この配線を形成した絶縁性樹脂層を何層も積み重ねることで、多数の配線をより少ない表面積の基板内に収めることができる。
【0003】
絶縁樹脂層上に配線を形成する方法としては、めっき技術や銅箔の貼り合せ工法により絶縁性樹脂の表面に導体を全面形成した後、エッチング技術を用いて配線となる形状を残すように導体を取り除く方法(サブトラクティブ法)やめっき技術を用いて絶縁性樹脂の表面に配線となる形状に導体を析出させる方法(アディティブ法)が用いられる。
【0004】
上記の方法で形成した配線は、その一部が欠落していることがある。欠落により配線の一部が幅方向に細くなる場合は、導通はあるものの、抵抗値が高くなる。また、欠落により配線の一部が幅方向に完全に欠落すると導通が失われて断線となり、いずれにしても配線基板としては不良である。
【0005】
配線の欠落が1から3本程度であれば、その部分に導体材料を塗布して補修する技術がある(特許文献1)。
【0006】
この補修技術では、導電性材料が含まれる流動性のある導電性ペーストを用いることが多い。補修は、前記導電性ペーストを塗布し、乾燥・硬化して行われる。導電性ペーストは塗布手段により形状、面積への対応の自由度が高いため、こうした補修方法としてよく用いられている。
【0007】
また、複数の配線を同一面内に並べて配置した基板では、隣接する配線同志の距離を一定の間隔とする必要があるので、補修する領域の周囲に導電性ペーストの流動を制限する土手を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
導電層の欠落する原因としては、導体を取り除くエッチング処理を過剰に行った場合や、めっきの工程で導体の析出が進まなかったなどの原因が考えられる。この原因として絶縁性樹脂表面に導体の形成を妨げる要因があった場合は、取り除くことなく補修をしても補修した導体が欠落してしまう。
【0010】
本発明の課題は、配線基板の配線パターンの欠落部分の絶縁樹脂表面を除去した上で隣接する配線の間隔を一定に保った配線を形成することで信頼性の高い配線基板とする、配線基板の補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、配線基板の補修方法であって、
配線パターンの欠落箇所を検出する工程と、
前記欠落箇所を含む配線パターンの周囲に前記配線パターンの厚さより高い樹脂の土手を形成する工程と、
前記欠落箇所の基材の表面にレーザ光を照射して基材の凹部を形成する工程と、
前記基材の凹部の上の前記樹脂の土手の間に導電性ペーストを塗布して前記導電性ペーストと前記配線パターンを導通させる工程と、
前記樹脂の土手の間に塗布した前記導電性ペーストを硬化させる工程と、
前記樹脂の土手と前記導電性ペーストを研磨する工程を有することを特徴とする配線基板の補修方法である。
【0012】
また、本発明は、上記の配線基板の補修方法であって、前記導電性ペーストは、銅の微粒子を含むことを特徴とする配線基板の補修方法である。
【0013】
また、本発明は、上記の配線基板の補修方法であって、前記基材の凹部の深さが4μm以下であることを特徴とする配線基板の補修方法である。
【0015】
また、本発明は、上記の配線基板の補修方法であって、前記欠落箇所を検出する工程が、前記欠落箇所の前記配線パターンの欠落形状データを作成する工程を有し、前記基材の凹部を形成する工程が、前記欠落形状データの指定する形の基材の表面にレーザ光を走査して照射することで前記基材の凹部を形成する工程を有し、前記導電性ペーストを塗布して前記導電性ペーストと前記配線パターンを導通させる工程が、前記欠落形状データの指定する形の前記基材の凹部の上の前記樹脂の土手の間に前記導電性ペーストを塗布する工程を有することを特徴とする配線基板の補修方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る配線基板の補修方法は、配線パターンの欠落箇所の基材の表面をレーザ光で除去して凹部とすることで基材と導電性ペーストとの接触面積が大きくなるので接着強度を確保できるので、補修された配線部の信頼性を高くできるという効果が得られる。
【0017】
また、樹脂の土手が、導電性ペーストを塗布する水平方向の範囲を制御した上で、絶縁樹脂をレーザで凹部を成型した後、導電性ペーストで補修するので補修した部分の配線を厚くすることができる。また、導電性ペーストを研磨する量を増やすことで配線を薄くすることができるので、配線の抵抗値を正確に調整しつつ補修できるという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態の配線基板の断面模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の配線基板の製造工程を示す断面模式図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の配線基板の補修方法を説明するための(a)断面図と(b)第1の平面図(c)第2の平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の配線基板の補修方法を説明するための(a)第1の平面図(b)第2の平面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の配線基板の補修方法を説明するための(a)平面図と(b)断面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の配線基板の補修方法を説明するための断面図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態の配線基板の断線箇所の補修方法を説明するための(a)断面図と(b)平面図と、(c)図(b)のA-A’部拡大断面図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態の配線基板の断線箇所の補修方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について
図1から
図7を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の配線基板の断面模式図である。
【0020】
配線基板は、有機基板等のコア基板1を貫通して形成した孔にスルーホールめっきによりスルーホール配線2が形成されている。そして、そのスルーホール配線2の上端に接続する配線パターン3aと、下端に接続する配線パターン3bを有する。配線パターン3aの上層と、配線パターン3bの下層にそれぞれ厚さが20μmから40μmの層間絶縁樹脂層4が形成されている。その配線パターン3aが、層間絶縁樹脂層4を貫通するビアホール5を介して上層のパッド6に接続されている。
【0021】
また、配線パターン3bが、ビアホール5を介して、下面にグリッド状に設けた複数のはんだパッド7に接続されている。
【0022】
図1には、配線基板に半導体チップCHを実装するはんだ接続構造を示す。
【0023】
配線基板は半導体チップCHを実装する面にはんだバンプ9を有し、半導体チップCHのパッド部CHbとはんだバンプ9が接合することで、半導体チップCHと配線基板が電気的に接続する。
【0024】
(配線基板の製造方法)
図2に上記の配線基板の製造工程を示す。
【0025】
(工程1)
積層樹脂基板であるコア基板1に貫通孔2aを形成する(
図2(a))。
【0026】
(工程2)
コア基板1に形成した貫通2a孔に銅の電気めっき膜を形成することでスルーホール配線2を形成する(
図2(b))。
【0027】
(工程3)
スルーホール配線2を形成した貫通孔2aに穴埋め材11を充填して孔を埋める(
図2(c))。
【0028】
(工程4)
コア基板1の表面及び裏面の銅の電気めっき膜をパターニングすることでスルーホール配線2に電気接続するランドパターン12と、そのランドパターン12に接続する配線パターン3aと配線パターン3bを形成し、この工程で形成した配線パターン3a、配線パターン3bを後述する様に検査し、配線パターンの欠けた部分について後述する手順で補修を行う(
図2(d))。
【0029】
配線パターン3aと配線パターン3bは、ランドパターン12を形成した後に、そのランドパターン12上の層間絶縁樹脂層上に形成する(
図2(d))。 配線パターン3aと配線パターン3bの構成は、
図2(d)の構成に限定されず、ランドパターン12と一体にしたパターンでコア基板1の上に配線パターン3aと配線パターン3bを形成することもできる。
【0030】
(工程5)
配線パターン3aの上層と、配線パターン3bの下層にそれぞれ層間絶縁樹脂層4を形成した後、層間絶縁樹脂層4に、配線パターン3aや配線パターン3bに達する穴を形成する。その穴と層間絶縁樹脂層4の全面に銅の電気めっきを形成して、その電気めっき層をエッチングすることで、ビアホール5と、上面のパッド6と、下面のはんだパッド7を形成する。最後に、パッド6と、はんだパッド7が形成された場所を除いた配線基板の表裏面全面を覆うソルダーレジスト層8を形成する(
図2(e))。
【0031】
(工程6)
パッド6上、はんだバンプ9を、はんだパッド7に、はんだボール10をそれぞれ形成する。
【0032】
(配線パターン3の欠落箇所の補修工程)
図3から
図7に、上記(工程4)で形成した配線パターンの補修方法の手順を示す。
【0033】
(工程4a)配線パターンの検査
まず、
図2(d)の配線パターン3a、配線パターン3bを、光学検査装置によって検査する。
【0034】
図3(b)の配線パターン3が完全に分断している、または、
図3(c)の配線パターンは、その線幅が50%より細くなっている。図示しない光学検査装置では、欠損箇所20、欠損箇所20aをそれぞれ検出する。そして、検出した断線箇所20及び欠損箇所20aとその周辺の配線パターン3の形状データを適宜の方法で記憶する。
【0035】
(配線パターンの欠落箇所の補修)
以下、検出した断線箇所20及び欠損箇所20aの補修の手順について説明する。
【0036】
(工程4b)基板の配線の欠落形状データを含む補修情報の作成
断線箇所20及び欠損箇所20aは、予め光学検査装置により検査した結果から、その位置とその形状データ(欠落形状データ)を準備する。これらのデータから、補修する位置、補修するサイズ、をリスト化する。また、設計データから、レーザで加工する深さや研磨で削る量を予め決めておく。レーザで加工する深さは概ね2~4μmの範囲とした。
【0037】
(工程4c)
次に、
図4(a)及び
図4(b)は樹脂の土手22を形成した状態を示したものであり、土手22と配線バターン3により断線箇所20が囲まれた状態とするように土手22は断線箇所20近傍の配線パターン3の両端に沿って形成したものである。この土手22は、粘度の高い液状の紫外線硬化樹脂を吐出口の開口が矩形形状にしたディスペンス装置で紫外線硬化樹脂を吐出することで形成した後、紫外線ランプで硬化させた。
【0038】
土手22とする紫外線硬化樹脂としては、ドライフィルムタイプ樹脂を配線パターン3の両端に沿って貼り付けてもよい。
【0039】
樹脂の土手22は配線パターン3の厚さよりも高く形成する(
図5(b))。
【0040】
(工程4d)
図6に、断線箇所20の層間絶縁樹脂層4を、レーザを用いて均一な深さで樹脂を除去する工程を示す。配線の欠落形状データの指定する形の基材部分21の表面にレーザ光Lを走査して照射することで基材の凹部23を形成する。
【0041】
レーザ光Lを照射することで、基材の凹部23の表面が粗化されるだけでなく、密着強度を低下させる異物の除去も行われる。
【0042】
(工程4e)
図7に導電性ペースト41を塗布する工程を示す。ディスペンサ40を用いて、配線の欠落形状データの指定する形に形成した基材の凹部23に導電性ペースト41を塗布する(
図7(a))。この際、導電性ペースト41は、土手22の上部にまで乗り上げる程度に塗布する(
図7(b)、(c))。
【0043】
本実施例では、補修に使用した導電性ペースト41は導体と同じ材質である銅を微粒子として含むものを用いたが、導電性ペースト41に含まれる導電性材料としては、表面を銀でコーティングした銅の微粒子を含むものを用いることも可能である。
【0044】
(工程4f)
塗布した導電性ペースト41を硬化されるため、窒素雰囲気下で基板全体を150℃15分で加熱した。この加熱工程は、局所加熱とすることも可能である。
【0045】
(工程4g)
硬化した導電性ペースト41の上面を、図示しないベルト式の研磨装置にて研磨を行い、余分な導電性ペースト41を除去する(
図8)。
【0046】
この工程により補修した部分の配線パターン3の配線の高さを決められた高さ(厚み)でかつ、均一に仕上げることができる。
【0047】
次に、土手22を適宜の方法を用いて剥離する。また、土手22が配線保護などとして使える場合は、剥離せずに残しておくことも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・コア基板
2・・・スルーホール配線
2a・・・貫通孔
3、3a、3b・・・配線パターン
4・・・層間絶縁樹脂層
5・・・ビアホール
6・・・パッド
7・・・はんだパッド
8・・・ソルダーレジスト層
9・・・はんだバンプ
10・・・はんだボール
11・・・穴埋め材
12・・・パッド
20・・・断線箇所
20a・・・欠損箇所
21・・・基材部分
22・・・土手
23・・・基材の凹部
30・・・レーザ照射装置
40・・・ディスペンサ
41・・・導電性ペースト
CH・・・半導体チップ
CHb・・・パッド
L・・・レーザ光