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特許7654984画像形成装置、および、画像形成装置の搬送量決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】画像形成装置、および、画像形成装置の搬送量決定方法
(51)【国際特許分類】
   D06H 3/12 20060101AFI20250326BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250326BHJP
   B41J 15/08 20060101ALI20250326BHJP
   B41J 15/16 20060101ALI20250326BHJP
   D06B 11/00 20060101ALI20250326BHJP
   D06H 3/08 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
D06H3/12
B41J2/01 303
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J15/08
B41J15/16
D06B11/00 B
D06H3/08
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021009671
(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公開番号】P2022113428
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】能見 亮太郎
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-294547(JP,A)
【文献】特開2007-196625(JP,A)
【文献】特開2002-138361(JP,A)
【文献】特開2003-193363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B 1/00 - 23/30
D06C 3/00 - 29/00
D06G 1/00 - 5/00
D06H 1/00 - 7/24
D06J 1/00 - 1/12
B41J 2/01
B41J 2/165 - 2/20
B41J 2/21 - 2/215
B41J 15/00 - 15/24
B65H 7/00 - 7/20
B65H 43/00 - 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布を把持して搬送する複数の搬送ローラと、
前記布に印画する印画部と、
前記印画部を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラ間における前記布の緯糸数を検出する布状態センサと、
前記印画部および前記布状態センサを布幅方向の全域に亘って走査させる走査部と、
前記布状態センサが検出した前記布の伸縮状態から、次の搬送量を決定するコントローラ部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
布を把持して搬送する複数の搬送ローラと、
前記布に印画する印画部と、
前記印画部を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラ間における前記布の伸縮状態を検出する布状態センサと、
前記印画部および前記布状態センサを布幅方向の全域に亘って走査させる走査部と、
前記布状態センサが検出した前記布の伸縮状態から、次の搬送量を決定するコントローラ部と、
前記印画部と前記布状態センサとを設けるキャリッジと、
を備える画像形成装置。
【請求項3】
布を把持して搬送する複数の搬送ローラと、
前記布に印画する印画部と、
前記印画部を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラ間における前記布の緯糸数をカウント可能である布状態センサと、
前記印画部および前記布状態センサを布幅方向の全域に亘って走査させる走査部と、
前記布状態センサが検出した前記布の伸縮状態から、次の搬送量を決定するコントローラ部と、
を備える画像形成装置。
【請求項4】
布を把持して搬送する複数の搬送ローラと、
前記布に印画する印画部と、
前記印画部を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラ間における前記布の面を撮像する布状態センサと、
前記布状態センサが撮像した撮像画像に含まれる前記布の緯糸数をカウントし、カウントした緯糸数から、次の搬送量を決定するコントローラ部と、
を備える画像形成装置。
【請求項5】
前記複数の搬送ローラは、下流側に配設された下流搬送ローラと、上流側に配設された上流搬送ローラとであり、
前記コントローラ部は、前記下流搬送ローラに対して、前記印画部の印画幅だけ前記布を搬送させ、前記上流搬送ローラに対して、前記カウントした緯糸数だけ前記布を搬送させる
請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記布状態センサは、前記印画部よりも前記布の搬送方向の上流側における張力を検出する、
請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記搬送ローラは、前記布を把持するグリップ構造を備える、
請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記搬送ローラの回転量を制御可能なモータを備える、
請求項1から請求項4のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記布状態センサは、布幅方向の複数箇所で前記布の状態を検出し、
前記コントローラ部は、前記布状態センサにより検出した複数箇所のデータから前記布の搬送量を決定する、
請求項1から請求項4のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記布状態センサは、前記印画部よりも上流側に設けられている、
請求項1から請求項4のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記布状態センサは、前記印画部の直近の上流側ローラと前記印画部との間の前記布の状態を検出する、
請求項1から請求項4のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記布状態センサは、前記布を照射する光源を有する、
請求項1から請求項4のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記布状態センサの直前と直後で前記布を把持する一対の搬送ローラで、前記布を間欠的に搬送する搬送機構を備え、
前記コントローラ部は、前記布状態センサが検出した前記布の伸縮状態から、前記布の張力を所定値とするように前記搬送機構を制御する、
請求項1から請求項4のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記搬送ローラは、前記布を把持するグリップ構造を有する、
請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記搬送ローラの回転量を制御可能なステッピングモータを有する、
請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項16】
布を把持して搬送する複数の搬送ローラと、
前記布に印画する印画部と、
前記印画部を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラ間における前記布の緯糸数を検出する布状態センサと、
前記印画部および前記布状態センサを布幅方向の全域に亘って走査させる走査部と、
コントローラ部と、
を備える画像形成装置の搬送量決定方法であって、
前記コントローラ部は、
記布状態センサの検出データから前記布の緯糸数を算出するステップと、
前記布の緯糸数から、次の搬送量を決定するステップと、
を実行する画像形成装置の搬送量決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布を搬送して画像を形成する画像形成装置、および、画像形成装置の搬送量決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいて、布を適正な張力で搬送をする装置および方法として、布の伸縮やシワ状態をCCD(Charge Coupling Device)カメラなどの非接触検出器で読取り、搬送量を補正するものがある。
【0003】
□特許文献1には、布地印刷システムが記載されおり、この文献の段落0029には、「布地114のウェブ(シート)の横方向に3個または5個のエリアCCDアレイ134を配置し、それを使用して、X及びY方向の両方の誘発張力Tx、Tyの関数として組織パターンの空間周波数変化を監視することができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-277995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の幅方向に固定されたカメラであるエリアCCDアレイは、実際に印画処理をする部分から離れた場所で布の状態を検出して、搬送処理を補正する。そのため、補正後の布の搬送の変動要因により補正精度が低下する。よって布地印刷システム(画像形成装置)は、適切に布の搬送を制御できない。
【0006】
そこで、本発明は、画像形成装置、および、画像形成装置の搬送量決定方法において、適正な補正値をフィードバックして布の搬送を制御することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の上記課題は、下記の構成により解決される。
【0008】
(1)
布を把持して搬送する複数の搬送ローラと、
前記布に印画する印画部と、
前記印画部を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラ間における前記布の緯糸数を検出する布状態センサと、
前記印画部および前記布状態センサを布幅方向の全域に亘って走査させる走査部と、
前記布状態センサが検出した前記布の伸縮状態から、次の搬送量を決定するコントローラ部と、
を備える画像形成装置。
(2)布を把持して搬送する複数の搬送ローラと、
前記布に印画する印画部と、
前記印画部を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラ間における前記布の伸縮状態を検出する布状態センサと、
前記印画部および前記布状態センサを布幅方向の全域に亘って走査させる走査部と、
前記布状態センサが検出した前記布の伸縮状態から、次の搬送量を決定するコントローラ部と、
前記印画部と前記布状態センサとを設けるキャリッジと、
を備える画像形成装置。
(3)布を把持して搬送する複数の搬送ローラと、
前記布に印画する印画部と、
前記印画部を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラ間における前記布の緯糸数をカウント可能である布状態センサと、
前記印画部および前記布状態センサを布幅方向の全域に亘って走査させる走査部と、
前記布状態センサが検出した前記布の伸縮状態から、次の搬送量を決定するコントローラ部と、
を備える画像形成装置。
(4)布を把持して搬送する複数の搬送ローラと、
前記布に印画する印画部と、
前記印画部を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラ間における前記布の面を撮像する布状態センサと、
前記布状態センサが撮像した撮像画像に含まれる前記布の緯糸数をカウントし、カウントした緯糸数から、次の搬送量を決定するコントローラ部と、
を備える画像形成装置。
(5)前記複数の搬送ローラは、下流側に配設された下流搬送ローラと、上流側に配設された上流搬送ローラとであり、
前記コントローラ部は、前記下流搬送ローラに対して、前記印画部の印画幅だけ前記布を搬送させ、前記上流搬送ローラに対して、前記カウントした緯糸数だけ前記布を搬送させる
前記(4)に記載の画像形成装置。
【0009】

前記布状態センサは、前記印画部よりも前記布の搬送方向の上流側における張力を検出する、
(1)から(3)のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0010】

前記搬送ローラは、前記布を把持するグリップ構造を備える、
(1)から(4)のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0011】

前記搬送部は更に、前記搬送ローラの回転量を制御可能なモータを備える、
(1)から()のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0012】
記布状態センサは、前記布の緯糸数をカウントする布目検出センサである、ことが好ましい
【0013】
記布状態センサは、布幅方向の複数箇所で前記布の状態を検出し、
前記コントローラ部は、前記布状態センサにより検出した複数箇所のデータから前記布の搬送量を決定する、ことが好ましい
【0014】
10
前記布状態センサは、前記印画部よりも上流側に設けられている、
(1)から()のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0015】
記印画部と前記布状態センサとはキャリッジに設けられている、ことが好ましい
【0016】
11
前記布状態センサは、前記印画部の直近の上流側ローラと前記印画部との間の前記布の状態を検出する、
(1)から()のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0017】
記布状態センサ、前記布の緯糸数をカウント可能である、ことが好ましい
【0018】
(1
前記布状態センサ、前記布を照射する光源を有する、
(1)から()のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0019】
(1
前記布状態センサの直前と直後で前記布を把持する一対の搬送ローラで、前記布を間欠的に搬送する搬送機構を備え、
前記コントローラ部は、前記布状態センサが検出した前記布の伸縮状態から、前記布の張力を所定値とするように前記搬送機構を制御する、
(1)から()のうち何れかに記載の画像形成装置。
【0020】
(1
前記搬送ローラは、前記布を把持するグリップ構造を有する、
(1)に記載の画像形成装置。
【0021】
(1
前記搬送ローラの回転量を制御可能なステッピングモータを有する、
(1)に記載の画像形成装置。
【0022】
(1
布を把持して搬送する複数の搬送ローラと、
前記布に印画する印画部と、
前記印画部を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラ間における前記布の緯糸数を検出する布状態センサと、
前記印画部および前記布状態センサを布幅方向の全域に亘って走査させる走査部と、
コントローラ部と、
を備える画像形成装置の搬送量決定方法であって、
前記コントローラ部は
記布状態センサの検出データから前記布の緯糸数を算出するステップと、
前記布の緯糸数から、次の搬送量を決定するステップと、
を実行する画像形成装置の搬送量決定方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、画像形成装置、および、画像形成装置の搬送量決定方法において、適正な補正値をフィードバックして布の搬送を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態における画像形成装置の概略を示す構成図である。
図2】布の搬送路を示す模式図である。
図3】キャリッジの走査を示す上面図である。
図4】布目検出センサが検出した布の状態を示す図である。
図5】布目検出センサが検出した布の状態を示す図である。
図6】図面代用写真で示したエンボスラバーローラである。
図7】図面代用写真で示した起毛ローラである。
図8】ローラの当接角を増やすためのローラ配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明者は、ロールトゥロール搬送方式で伸縮性布の張力コントロールができないという課題を解決するため、布幅方向の全域に亘る多数箇所の布の伸縮状態を検出し、検出した状態に基づき布の搬送量を補正するようにした。以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本実施形態における画像形成装置の概略を示す構成図である。
画像形成装置1は、補正コントローラ2と、インタフェース3と、搬送部4と、走査部5と、キャリッジ6とをそれぞれ備えて構成される。これら各部は、システムバスを介して接続されており、各種の信号、データを互いに入出力可能である。画像形成装置1は、印画部であるキャリッジ6が布幅方向に動作して、布に画像を形成(印画)するスキャン型印刷装置であり、布を間欠的に搬送するものである。
【0027】
補正コントローラ2は、CPU(Central Processing Unit)21、RAM(Random Access Memory)22、ROM(Read Only Memory)23、および、記憶部24を備える。
【0028】
CPU21(演算装置の一例)は、ROM23または記憶部24から読出したプログラムを実行することで画像形成装置1内の各部の動作を制御すると共に、各部から取得した信号、データ等に基づいて所定の処理を行うことが可能である。第1の実施形態では、補正コントローラ2のCPU21が、搬送部4、走査部5、キャリッジ6の動作を制御する。補正コントローラ2は、後述する布目検出センサ61で採取した複数のデータから、間欠搬送における次の搬送量を決定するコントローラ部である。
【0029】
ROM23には、CPU21が実行するプログラムまたはそのプログラムの実行時に使用するデータ等が保存される。CPU21は、ROM23に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、画像形成装置1に係る各種処理を実行する。
RAM22には、CPU21の演算処理の途中に発生した変数やパラメータなどが一時的に書き込まれる。
【0030】
記憶部24は、例えばハードディスクドライブやSSD(Solid State Drive)などの大容量の記憶装置であり、本実施の形態に係る各種データを記憶する記憶部として用いられる。この記憶部24には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、印画プログラム241と補正コントロールプログラム242が記録されている。
【0031】
印画プログラム241は、CPU21に、入力された画像データに基づき、走査部5を制御してインクジェットヘッド62を走査させて布7に印画させるためのプログラムである。
【0032】
補正コントロールプログラム242は、CPU21に、布7の布目状態に基づき、布7を間欠的に所定値ずつ搬送させると共に、搬送部4の搬送量を補正するためのプログラムである。
【0033】
ROM23と記憶部24は、不揮発性メモリであり、CPU21が動作するために必要なプログラムやデータ等を記録する。ROM23と記憶部24は、補正コントローラ2を構成するコンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータが読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0034】
インタフェース3は、NIC(Network Interface Card)やモデム等で構成される。インタフェース3は、LAN(Local Area Network)を介して、不図示のプリンタコントローラやパーソナルコンピュータ等の各装置との接続を確立し、補正コントローラ2が各種データの送受信を実行する通信部である。
【0035】
搬送部4は、上流搬送モータ411と下流搬送モータ412を含んで構成される。搬送部4は、布を搬送するための機構部であり、前述した補正コントローラ2によって制御される。上流搬送モータ411は、図2に示す上流搬送ローラ45aを駆動する。下流搬送モータ412は、図2に示す下流搬送ローラ46を駆動する。上流搬送モータ411および下流搬送モータ412は、例えばステッピングモータであり、回転量を正確に制御可能である。
【0036】
走査部5は、キャリッジ6を布幅方向に走査させる機構部であり、前述した補正コントローラ2によって制御される。補正コントローラ2は、走査部5により布目検出センサ61を布幅方向に走査させ、布目検出センサ61の検出データから布7の伸縮状態を算出し、布7の伸縮状態から次の搬送量を決定する。
キャリッジ6は、インクジェットヘッド62を含み、布目検出センサ61を装着して構成される印画部であり、走査部5によって布幅方向に走査されて布7に印画する。走査部5は、布目検出センサ61をキャリッジ6の動作と同一方向へ往復移動可能な機構部である。インクジェットヘッド62は、布に印画して画像を形成する印画部である。布目検出センサ61は、光学センサであり、インクジェットヘッド62を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラ間における布の伸縮状態を布幅方向の複数箇所で検出する布状態センサである。布目検出センサ61は布7の表面を撮像し、補正コントローラ2は、布7の表面画像から緯糸数をカウントする。布目検出センサ61によって検出した緯糸数と標準の緯糸数との違いにより、布の標準状態に対する現在の布の伸縮状態を検出可能である。なお、布目検出センサ61は、布に対して赤外光を照射する光源を有し、この赤外光の像を処理して緯糸数をカウントするとよい。これにより、設置環境の照度によらず安定して布の伸縮状態を検出可能となる。
つまり布目検出センサ61は、インクジェットヘッド62を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラ間における張力を検出する。そして、補正コントローラ2は、布目検出センサ61により検出した複数箇所のデータから布7の次の搬送量を決定する。そして補正コントローラ2は、布目検出センサ61が検出した布7の伸縮状態から、布7の張力を所定値とするように搬送部4を制御する。
キャリッジ6は、後述する図2から図3で詳細に説明する。
【0037】
図2は、布7の搬送路を示す模式図である。
図2には、布元巻き401と、ダンサーローラ48,49と、デカーラ91と、ガイドローラ44,441,442,443と、ガイドプレート47と、上流搬送ローラ45aおよびピンチローラ45bと、キャリッジ6と、下流搬送ローラ46と、電熱線ヒータ92と、布巻取り402とが図示されている。これらのうち、ダンサーローラ48,49と、ガイドローラ44,441,442,443と、上流搬送ローラ45aおよびピンチローラ45bと、下流搬送ローラ46とは、布7を間欠的に搬送するものである。これらのうち上流搬送ローラ45aおよびピンチローラ45bと、下流搬送ローラ46とは、布目検出センサ61の直前と直後で布7を把持する一対の搬送ローラである。
【0038】
布元巻き401は、未印画の布地ロールである。デカーラ91は、カールした布7を矯正する矯正部であり、例えば布7に水を塗布することで、布7のカールを矯正する。ダンサーローラ48,49は、搬送する布7の張力を所定値に保つ機能部である。ガイドローラ44,441,442,443は、布7の搬送をガイドする従動ローラであり、例えば金属で構成される。ガイドプレート47は、布7の搬送をガイドする金属板である。
【0039】
上流搬送ローラ45aと下流搬送ローラ46は、布7を搬送駆動する駆動ローラであり、後述するグリップ構造を備えて布7を把持する。上流搬送ローラ45aと下流搬送ローラ46は、印画部を挟んで対向した位置に設置された一対の搬送ローラである。
ピンチローラ45bは、上流搬送ローラ45aに対向する従動ローラであり、布7をニップしてスリップによる搬送誤差を低減する。上流搬送ローラ45aは、ガイドプレート47の直近の下流側、かつキャリッジ6の直近の上流側に設けられたローラであり、上流搬送モータ411によって駆動されて、布7を搬送する。
【0040】
上流搬送ローラ45aの表面は、布7を把持するためのグリップ構造を備えており、例えばサメ肌に加工されている。ピンチローラ45bは、上流搬送ローラ45aが搬送する布7に当接している。上流搬送ローラ45aとピンチローラ45bは、この布7を把持するものである。
ピンチローラ45bは、不図示の加圧機構により上流搬送ローラ45aに向けて付勢されている。これにより、上流搬送ローラ45aは、下流搬送ローラ46よりも、より強く布7を把持できる。
【0041】
下流搬送ローラ46は、キャリッジ6の直近の上流に設けられたローラであり、下流搬送モータ412によって駆動されて、布7を搬送する。下流搬送ローラ46の表面は、例えばサメ肌に加工されてグリップ構造を構成する。インクジェットヘッド62の上流側に上流搬送ローラ45aが、下流側に下流搬送ローラ46が設けられているので、補正コントローラ2は、インクジェットヘッド62が印画する位置における布7の張力を制御可能である。下流搬送ローラ46は、上流搬送ローラ45aよりも弱く布7を把持している。これにより、布7の張力が高くなりすぎた際に、布7は下流搬送ローラ46上を滑るので、布7の張力を所定値以下に保つことができる。
【0042】
キャリッジ6は、図5の走査部5によって布幅方向に走査されるものであり、インクジェットヘッド62を含み、布目検出センサ61を上流側に装着して構成される。これにより布目検出センサ61は、未だ印画されていない上流側の布7の状態を好適に検出できる。なお布目検出センサ61は、インクジェットヘッド62よりも下流側に装着されていてもよい。インクジェットヘッド62は、布幅方向(主走査方向)に走査されて、この布7に画像を形成する。布目検出センサ61は、インクジェットヘッド62とを挟んで対向した位置に設置された一対の上流搬送ローラ45aと下流搬送ローラ46との間の布7の状態を検出し、走査部5によって布幅方向に走査される。布目検出センサ61が、印画部であるインクジェットヘッド62の直前における布7の伸縮状態を検出する。これによりCPU21は、適正な補正値をフィードバックして搬送を制御することができる。
【0043】
電熱線ヒータ92は、印画済の布7を乾燥させるためのヒータである。布巻取り402は、印画済の布地ロールである。
【0044】
布7は、布元巻き401から巻き出されてダンサーローラ48によって所定の張力を印加しつつ、ガイドローラ441を通過する。そして、布7は、デカーラ91によりカールが矯正されたのち、ガイドローラ44とガイドプレート47を通過して、上流搬送ローラ45aとピンチローラ45bのニップ領域により搬送される。そして、布7は、インクジェットヘッド62によって印画されたのち、下流搬送ローラ46、ガイドローラ442を通過したのち、電熱線ヒータ92によって乾燥される。布7は、ガイドローラ443を通過し、ダンサーローラ49による所定の張力で、布巻取り402に巻き取られる。
【0045】
図2の実施形態において、キャリッジ6を挟んで設置された一対の上流搬送ローラ45aおよび下流搬送ローラ46は、それぞれ駆動制御されており、布7を確実にグリップした状態で保持する。これら上流搬送ローラ45aおよび下流搬送ローラ46は、布7の滑りなどが発生しないよう、適切に把持できるグリップ構造を有する。上流搬送ローラ45aと下流搬送ローラ46の区間にある布7は、最も張力の外乱を受けにくい。この区間に、布7の状態を検出する布目検出センサ61を設けて、補正コントローラ2は、布目検出センサ61が検出した布7の状態に基づいて搬送量を制御する。これにより、布7が移動することによって生じる搬送誤差を最小化して高品質な印画結果を得ることが出来る。
【0046】
つまり、画像形成装置1は、布7の張力の検出手段である布目検出センサ61と、この検出手段の前後で布7の搬送補正を行う一対の上流搬送ローラ45aおよび下流搬送ローラ46と、検出した布7の張力から搬送量(補正量)を決定するCPU21とを備える。
【0047】
布目検出センサ61により、印画部(インクジェットヘッド62を搭載したキャリッジ6)の直前で布7の状態を検出して、CPU21が、布7の搬送量にフィードバックすることで、補正精度を向上可能である。
【0048】
図3は、キャリッジ6の走査を示す上面図である。図3の横方向は、布幅方向である。布7は、図の上側に向けて搬送される。
走査部5は、キャリッジ6を、図3の横方向かつ布幅方向に往復運動して走査する。このキャリッジ6の上流側(図の下側)には、布目検出センサ61が設置されている。これにより、インクジェットヘッド62が布幅方向に往復して布7に印画すると同時に、布目検出センサ61も布幅方向に往復して移動する。そして、布目検出センサ61は、インクジェットヘッド62の直前にて、布7の幅全域に亘る多数の検出領域613に係る布目状態を検出する。
【0049】
図4図5は、布目検出センサ61が検出した布7の状態を示す図である。
具体的に例えば、図4は、布7の静的状態(伸びがゼロの場合)で撮像した画像であり、図の横方向が布幅方向であり、図の上方向が搬送方向である。図5は、布7が伸びている状態にて撮像した画像であり、図の横方向が布幅方向であり、図の上方向が搬送方向である。
【0050】
図4図5の画像中央に検出領域613があり、緯糸71が幅方向に、経糸72が上下方向(搬送方向)に張られている。
図4の検出領域613にて糸目をカウントすると、緯糸71の数は3本である。
【0051】
これに対して図5は、布7が伸びている状態で撮像した画像である。図5の検出領域613にて糸目をカウントすると、緯糸71の数は2本に変化する。この変化量を検出することで、図1のCPU21は、布7の伸び量を数値化する。この場合の布7の伸び量は、標準の緯糸数からの変化量を標準の緯糸数で割ったものであり、具体的には0.3333…である。これを布幅の複数の検出領域613にて行うことにより、CPU21は、布7の幅方向の全域にてサンプリングデータを採取する。
【0052】
CPU21は、この布7の状態に基づき、適正な搬送量をフィードバックして搬送を制御する。CPU21は、原則として下流搬送ローラ46の搬送量をインクジェットヘッド62の印画幅とし、上流搬送ローラ45aの搬送量を、前述した印画幅に上流搬送ローラ45aと下流搬送ローラ46との間の布7の伸び量をフィードバックしたものとする。図5の場合には、上流搬送ローラ45の搬送量を、インクジェットヘッド62の印画幅から、上流搬送ローラ45aと下流搬送ローラ46との間の距離に布7の伸び量とフィードバック係数を掛けたものを減じたものとなる。
【0053】
布7の前回の印画と今回の印画とを繋げる部分は、下流搬送ローラ46の近傍であるため、ここでは下流搬送ローラ46の搬送量を所定値としている。これにより、布7の間欠的な印画領域を連続的に繋げることができる。
【0054】
図6は、図面代用写真で示したエンボスラバーローラである。
図6のローラの表面には、エンボス状(凹凸状)に成型されたゴム製バンド(ラバー)が貼り付けられている。上流搬送ローラ45aや下流搬送ローラ46に、このようなグリップ構造を付与すると、布7を確実に把持することができる。
【0055】
図7は、図面代用写真で示した起毛ローラである。
図6のローラの表面には、毛長の短い起毛材が巻きつけられている。上流搬送ローラ45aや下流搬送ローラ46に、このようなグリップ構造を付与すると、布7を確実に把持することができる。
【0056】
図8は、ローラの当接角を増やすためのローラ配置を示す図である。
上流搬送ローラ45aの近傍(直前または直後)にガイドローラ44を設けて、布7の搬送路を折り曲げて上流搬送ローラ45aの当接角θを増やすことで、布7を確実に把持することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、グリップ構造として、上流搬送ローラ45aにピンチローラ45bを付勢してニップ領域を形成し、スリップによる搬送誤差を低減している。しかし、このようなニップには加圧機構が必要であり、印刷面に圧接痕を残すなどの弊害がある。しかし、図8に示した方法であれば、ニップに依らずに布7を把持しているので、加圧機構が不要であり、布7への圧接痕のおそれもない。
【0058】
本実施形態の画像形成装置1によれば、補正コントローラ2が適正な補正値をフィードバックして布の搬送を制御することができる。
【0059】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)~(b)のようなものがある。
【0060】
(a) 布を把持するグリップ構造は、エンボスラバーローラ単体に限られず、図8に示したローラ配置により当接角を増やす方法を組み合わせてもよく、限定されない。
(b) 布を把持するグリップ構造は、起毛ローラ単体に限られず、図8に示したローラ配置により当接角を増やす方法を組み合わせてもよく、限定されない。
【符号の説明】
【0061】
1 画像形成装置
2 補正コントローラ
21 CPU
22 RAM
23 ROM
24 記憶部
241 印画プログラム
242 補正コントロールプログラム
3 インタフェース
4 搬送部
401 布元巻き
402 布巻取り
411 上流搬送モータ
412 下流搬送モータ
44,441~443 ガイドローラ
45a 上流搬送ローラ
45b ピンチローラ
46 下流搬送ローラ
47 ガイドプレート
48,49 ダンサーローラ
5 走査部
6 キャリッジ
61 布目検出センサ (布状態センサ)
613 検出領域
62 インクジェットヘッド (印画部)
7 布地
71 緯糸
72 経糸
91 デカーラ
92 電熱線ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8